(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(A)成分が、(A1)不飽和有機酸変性ロジンの水素添加物と、(A2)完全水添ロジンとを含有する、請求項1又は2に記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
さらに、前記合金組成が、Ag:0質量%以上4質量%以下及びCu:0質量%以上0.9質量%以下の少なくとも1種を含有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
前記合金組成が、Ni:0質量ppm以上600質量ppm以下、Fe:0質量ppm以上100質量ppm以下、及びIn:0質量ppm以上1200質量ppm以下の少なくとも2種を更に含有する、請求項10〜13のいずれか1項に記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
前記合金組成が、Ag:0質量%以上4質量%以下及びCu:0質量%以上0.9質量%以下の少なくとも1種を更に含有する、請求項10〜17のいずれか1項に記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物は、ジェットディスペンサーにより塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、はんだ飛び散り及びフラックス分離を抑制できる。しかしながら、はんだ飛び散りについては、更なる抑制が求められており、特許文献1に記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物では、未だ必ずしも十分なものではなかった。
【0006】
そこで、本発明は、ジェットディスペンサーにより塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、はんだ飛び散りを十分に抑制できるジェットディスペンサー用はんだ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]〜[20]に関する。
[1]
(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤及び(D)チクソ剤を含有するフラックス組成物と、(E)はんだ粉末とを含有し、
当該はんだ組成物中に測定棒を浸漬し、前記測定棒を500mm/minの速度で引き上げる曳糸性試験で求められる値が、42mm以上であり、
前記(E)成分が、
As:25質量ppm以上300質量ppm以下と、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下と、Sb:0質量ppm超え3000質量ppm以下及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも1種と、残部:Snと、からなる合金組成を有し、下記(1−1)式及び(1−2)式:
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1−1)
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (1−2)
[上記(1−1)式及び(1−2)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。]
を満たすはんだ合金(E1)、又は、
As:10質量ppm以上40質量ppm未満と、Bi:0質量ppm超え10000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下、及びSb:0質量ppm超え3000質量ppm以下の少なくとも1種と、残部:Snと、からなる合金組成を有し、下記(2−1)式及び(2−2)式:
300≦3As+Sb+Bi+Pb (2−1)
0.1≦{(3As+Sb)/(Bi+Pb)}×100≦200 (2−2)
[上記(2−1)式及び(2−2)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。]
を満たすはんだ合金(E2)
を含有する、ジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[2]
前記曳糸性試験が、
(i)当該はんだ組成物を60秒間攪拌し、
(ii)当該はんだ組成物(温度25℃)中に曳糸部を有する測定棒を、前記曳糸部が全て浸漬するように、浸漬し、
(iii)前記測定棒を500mm/minの速度で引き上げ、このときに、前記曳糸部と当該はんだ組成物との間に形成される糸が切断したときの長さ(mm)を測定する試験であり、
前記曳糸部は、先端に円錐形状の円錐部と、円柱形状の円柱部と、前記円柱部と前記測定棒とを繋ぐ連結部とを備え、
前記円錐部及び前記円柱部の直径が10mmであり、前記円錐部の高さが5mmであり、前記円柱部の長さが9mmであり、前記連結部の長さが3mmである
[1]に記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[3]
当該はんだ組成物のE型粘度計により測定した35℃における粘度が、5Pa・s以上30Pa・s以下であり、
当該はんだ組成物のE型粘度計により測定したチクソ指数が、0.60以上0.90以下である、[1]又は[2]に記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[4]
前記(A)成分が、(A1)不飽和有機酸変性ロジンの水素添加物と、(A2)完全水添ロジンとを含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[5]
前記(C)成分が、
(C1)ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルを含有し、かつ、
(C2)炭素数8〜12のジカルボン酸と炭素数4〜12のアルコールとのエステル化合物、及び、ガムテレピン油から誘導されたアルコール類からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、[1]〜[4]のいずれかに記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[6]
前記(D)成分が、(D1)アマイド系チクソ剤を含有する、[1]〜[5]のいずれかに記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[7]
前記(E)成分が、前記はんだ合金(E1)である、[1]〜[6]のいずれかに記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[8]
前記はんだ合金(E1)が、下記(1−1a)式:
275≦2As+Sb+Bi+Pb≦25200 (1−1a)
[上記(1−1a)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たす、[7]に記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[9]
前記はんだ合金(E1)が、下記(1−1b)式:
275≦2As+Sb+Bi+Pb≦5300 (1−1b)
[上記(1−1b)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たす、[7]又は[8]に記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[10]
前記はんだ合金(E1)が、下記(1−2a)式:
0.31≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (1−2a)
[上記(1−2a)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たす、[7]〜[9]のいずれかに記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[11]
さらに、前記合金組成が、Ag:0質量%以上4質量%以下及びCu:0質量%以上0.9質量%以下の少なくとも1種を含有する、[7]〜[10]のいずれかに記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[12]
前記(E)成分が、前記はんだ合金(E2)である、[1]〜[6]のいずれかに記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[13]
前記合金組成が、Ni:0質量ppm以上600質量ppm以下を更に含有する、[12]に記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[14]
前記合金組成が、Fe:0質量ppm以上100質量ppm以下を更に含有する、[12]又は[13]に記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[15]
前記合金組成が、In:0質量ppm以上1200質量ppm以下を更に含有する、[12]〜[14]のいずれかに記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[16]
前記合金組成が、Ni:0質量ppm以上600質量ppm以下、Fe:0質量ppm以上100質量ppm以下、及びIn:0質量ppm以上1200質量ppm以下の少なくとも2種を更に含有する、[12]〜[15]のいずれか1項に記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[17]
前記合金組成が、Ni:0質量ppm以上600質量ppm以下及びFe:0質量ppm以上100質量ppm以下を更に含有し、下記(2−3)式:
0≦Ni/Fe≦50 (2−3)
[上記(2−3)式中、Ni及びFeは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。]
を満たす、[12]〜[16]のいずれか1項に記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[18]
前記合金組成が、下記(2−1a)式:
300≦3As+Sb+Bi+Pb≦18214 (2−1a)
[上記(2−1a)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。]
を満たす、[12]〜[17]のいずれかに記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[19]
前記合金組成が、下記(2−2a)式:
0.1≦{(3As+Sb)/(Bi+Pb)}×100≦158.5 (2−2a)
[上記(2−2a)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。]
を更に満たす、[12]〜[18]のいずれかに記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
[20]
前記合金組成が、Ag:0質量%以上4質量%以下及びCu:0質量%以上0.9質量%以下の少なくとも1種を更に含有する、[12]〜[19]のいずれかに記載のジェットディスペンサー用はんだ組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ジェットディスペンサーにより塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、はんだ飛び散りを十分に抑制できるジェットディスペンサー用はんだ組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
本実施形態のジェットディスペンサー用はんだ組成物(以下、単に「はんだ組成物」ともいう。)は、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤及び(D)チクソ剤を含有するフラックス組成物と、(E)はんだ粉末とを含有する。
本実施形態のジェットディスペンサー用はんだ組成物は、当該はんだ組成物中に測定棒を浸漬し、前記測定棒を500mm/minの速度で引き上げる曳糸性試験で求められる値が、42mm以上である。
当該(E)成分は、
As:25質量ppm以上300質量ppm以下と、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下と、Sb:0質量ppm超え3000質量ppm以下及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも1種と、残部:Snと、からなる合金組成を有し、下記(1−1)式及び(1−2)式:
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1−1)
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (1−2)
[上記(1−1)式及び(1−2)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。]
を満たすはんだ合金(E1)、又は、
As:10質量ppm以上40質量ppm未満と、Bi:0質量ppm超え10000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下、及びSb:0質量ppm超え3000質量ppm以下の少なくとも1種と、残部:Snと、からなる合金組成を有し、下記(2−1)式及び(2−2)式:
300≦3As+Sb+Bi+Pb (2−1)
0.1≦{(3As+Sb)/(Bi+Pb)}×100≦200 (2−2)
[上記(2−1)式及び(2−2)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。]
を満たすはんだ合金(E2)
を含有する。
以上の構成によれば、ジェットディスペンサーにより塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、はんだ飛び散りを十分に抑制できるジェットディスペンサー用はんだ組成物を提供することができる。
【0012】
第1の実施形態に係るジェットディスペンサー用はんだ組成物は、前記(E)成分が、はんだ合金(E1)を含有する。
第2の実施形態に係るジェットディスペンサー用はんだ組成物は、前記(E)成分が、はんだ合金(E2)を含有する。
以下、各実施形態について説明する。
【0013】
本実施形態においては、このはんだ組成物中に測定棒を浸漬し、前記測定棒を500mm/minの速度で引き上げる曳糸性試験で求められる値が、42mm以上である。この曳糸性試験で求められる値が42mm未満であると、ジェットディスペンサーにより塗布する場合に、はんだ飛び散りを十分に抑制できない。なお、本発明者らは、曳糸性試験で求められる値と、はんだ飛び散りの評価結果との間に、相関関係があることを見出した。
また、はんだ飛び散りをより確実に抑制するという観点から、曳糸性試験で求められる値は、45mm以上であることが好ましい。なお、曳糸性試験で求められる値の上限は、特に限定されないが、例えば100mm以下である。
【0014】
前記曳糸性試験は、次の方法により測定できる。すなわち、まず、
図1に示すように、容器3中にはんだ組成物2を投入し、(i)はんだ組成物2を60秒間攪拌する。その後、(ii)はんだ組成物2中に曳糸部11(
図2参照)を有する測定棒1を、この曳糸部11が全て浸漬するように、浸漬する。その後、(iii)測定棒1を500mm/minの速度で引き上げ、このときに、曳糸部11とはんだ組成物2との間に形成される糸が切断したときの長さ(mm)を測定する試験である。
曳糸部11は、
図2に示すように、先端に円錐形状の円錐部11Aと、円柱形状の円柱部11Bと、円柱部11Bと測定棒1とを繋ぐ連結部11Cとを備えている。
また、円錐部11A及び円柱部11Bの直径D1は10mmであり、円錐部11Aの高さHは5mmであり、円柱部11Bの長さL1は9mmであり、連結部11Cの長さL2は3mmである。さらに、測定棒1の直径D2は3mmである。
【0015】
本実施形態においては、はんだ組成物のE型粘度計により測定した35℃における粘度が、5Pa・s以上30Pa・s以下であることが好ましく、10Pa・s以上25Pa・s以下であることがより好ましい。粘度が前記範囲内であれば、ジェットディスペンサーにより塗布する場合において、十分な塗布性を維持できる。
また、本実施形態においては、はんだ組成物のE型粘度計により測定したチクソ指数が、0.60以上0.90以下であることが好ましく、0.65以上0.85以下であることがより好ましい。チクソ指数が前記範囲内であれば、ジェットディスペンサーにより塗布する場合において、十分な塗布性を維持できる。
粘度及びチクソ指数は、JIS Z3284−3:2014に準拠して、E型粘度計により測定できる。
【0016】
なお、はんだ組成物の曳糸性試験で求められる値、粘度及びチクソ指数を上述した範囲に調整する方法としては、以下のような方法が挙げられる。
曳糸性試験で求められる値は、ロジン系樹脂、溶剤及びチクソ剤の種類や配合量を変更することにより調整できる。例えば、ロジン系樹脂として、重合ロジンなどを用いると、曳糸性試験で求められる値が低くなる傾向にある。チクソ剤として、グリセリンエステル系チクソ剤、又はベンジリデンソルビトール系チクソ剤を用いると、曳糸性試験で求められる値が低くなる傾向にある。
粘度及びチクソ指数は、いずれもロジン系樹脂、溶剤及びチクソ剤の種類や配合量を変更することにより調整できる。
【0017】
<フラックス組成物>
本実施形態に用いるフラックス組成物は、はんだ組成物における前記(E)成分以外の成分であり、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤及び(D)チクソ剤を含有するものである。
【0018】
前記フラックス組成物の配合量は、はんだ組成物100質量%に対して、10質量%以上25質量%以下であることが好ましく、12質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、14質量%以上18質量%以下であることが特に好ましい。フラックスの配合量が10質量%未満の場合(はんだ粉末の配合量が90質量%を超える場合)には、ジェットディスペンサーでの塗布性が不十分となる傾向にあり、他方、フラックスの配合量が25質量%を超える場合(はんだ粉末の配合量が75質量%未満の場合)には、得られるはんだ組成物を用いた場合に、十分なはんだ接合を形成できにくくなる傾向にある。
【0019】
((A)成分)
本実施形態に用いる(A)ロジン系樹脂としては、ロジン類及びロジン系変性樹脂が挙げられる。ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジンなどが挙げられる。ロジン系変性樹脂としては、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジン(完全水添ロジン、部分水添ロジン、並びに、不飽和有機酸((メタ)アクリル酸などの脂肪族の不飽和一塩基酸、フマル酸、マレイン酸などのα,β−不飽和カルボン酸などの脂肪族不飽和二塩基酸、桂皮酸などの芳香族環を有する不飽和カルボン酸など)の変性ロジンである不飽和有機酸変性ロジンの水素添加物(「水添酸変性ロジン」ともいう))及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
本実施形態においては、曳糸性試験で求められる値を高めるという観点から、(A)ロジン系樹脂として、(A1)不飽和有機酸変性ロジンの水素添加物と、(A2)完全水添ロジンとを併用することが好ましい。また、前記(A1)成分の配合量は、前記(A1)成分及び前記(A2)成分の合計量100質量%に対して、30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。
前記(A)成分は、本実施形態の目的に影響のない範囲であれば、前記(A1)成分及び前記(A2)成分以外の他のロジン系樹脂((A3)成分)を含有していてもよい。ただし、この(A3)成分を用いる場合、その配合量は、(A)成分100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
なお、重合ロジンについては、はんだ組成物の曳糸性試験で求められる値が低下しやすい傾向にあるので、使用しないことが好ましい。
【0021】
前記(A)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、25質量%以上60質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましく、35質量%以上52質量%以下であることが特に好ましい。(A)成分の配合量が前記下限以上であれば、はんだ付ランドの銅箔面の酸化を防止してその表面に溶融はんだを濡れやすくする、いわゆるはんだ付け性を向上でき、はんだボールを十分に抑制できる。また、(A)成分の配合量が前記上限以下であれば、フラックス残さ量を十分に抑制できる。
【0022】
((B)成分)
本実施形態に用いる(B)活性剤としては、有機酸、非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤、アミン系活性剤などが挙げられる。これらの活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記有機酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸などの他に、その他の有機酸が挙げられる。
モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸などが挙げられる。
その他の有機酸としては、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸などが挙げられる。
【0023】
前記非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤としては、ハロゲン原子が共有結合により結合した非塩系の有機化合物が挙げられる。このハロゲン化化合物としては、塩素化物、臭素化物、フッ化物のように塩素、臭素、フッ素の各単独元素の共有結合による化合物でもよいが、塩素、臭素及びフッ素の任意の2つ又は全部のそれぞれの共有結合を有する化合物でもよい。これらの化合物は、水性溶媒に対する溶解性を向上させるために、例えばハロゲン化アルコールやハロゲン化カルボキシルのように水酸基やカルボキシル基などの極性基を有することが好ましい。ハロゲン化アルコールとしては、例えば2,3−ジブロモプロパノール、2,3−ジブロモブタンジオール、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール(TDBD)、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、トリブロモネオペンチルアルコールなどの臭素化アルコール、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,4−ジクロロ−2−ブタノールなどの塩素化アルコール、3−フルオロカテコールなどのフッ素化アルコール、その他これらに類する化合物が挙げられる。ハロゲン化カルボキシルとしては、2−ヨード安息香酸、3−ヨード安息香酸、2−ヨードプロピオン酸、5−ヨードサリチル酸、5−ヨードアントラニル酸などのヨウ化カルボキシル、2−クロロ安息香酸、3−クロロプロピオン酸などの塩化カルボキシル、2,3−ジブロモプロピオン酸、2,3−ジブロモコハク酸、2−ブロモ安息香酸などの臭素化カルボキシル、その他これらに類する化合物が挙げられる。
【0024】
前記アミン系活性剤としては、アミン類(エチレンジアミンなどのポリアミンなど)、アミン塩類(トリメチロールアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミンなどのアミンやアミノアルコールなどの有機酸塩や無機酸塩(塩酸、硫酸、臭化水素酸など))、アミノ酸類(グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、バリンなど)、アミド系化合物などが挙げられる。具体的には、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩(塩酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、セバシン酸塩など)、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、これらのアミンの臭化水素酸塩などが挙げられる。
【0025】
前記(B)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。(B)成分の配合量が前記下限以上であれば、はんだボールがより確実に抑制できる。また、(B)成分の配合量が前記上限以下であれば、フラックス組成物の絶縁性を確保できる。
【0026】
((C)成分)
本実施形態に用いる(C)溶剤としては、以下説明する(C1)成分及び(C2)成分を組み合わせて用いることが好ましい。
前記(C1)成分は、好ましくは、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルであり、適宜公知のものを用いることができる。
【0027】
前記(C2)成分は、炭素数8〜12のジカルボン酸と炭素数4〜12のアルコールとのエステル化合物、及び、ガムテレピン油から誘導されたアルコール類からなる群から選択される少なくとも1種である。
前記エステル化合物の中でも、炭素数8〜10のジカルボン酸と炭素数6〜10のアルコールとのエステル化合物がより好ましく、炭素数10のジカルボン酸と炭素数8のアルコールとのエステル化合物が特に好ましい。具体的には、セバシン酸ビス(2−エチルへキシル)(DOS)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)などが挙げられる。
前記アルコール類としては、適宜公知のものを用いることができる。具体的には、α,β,γ−ターピネオールなどが挙げられる。
前記(C)溶剤は、本実施形態の目的に影響のない範囲であれば、前記(C1)成分及び前記(C2)成分以外の他の溶剤を含有していてもよい。ただし、この他の溶剤を用いる場合、その配合量は、(C)成分100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0028】
前記(C)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、30質量%以上60質量%以下であることが好ましく、35質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。(C)成分の配合量が前記下限以上であれば、はんだ組成物の粘度及びチクソ性を適切な範囲に調整しやすい。他方、(C)成分の配合量が前記上限以下であれば、はんだ組成物の溶融時に残るフラックスの残さ中に溶剤が残存しにくくなり、フラックスの残さが粘着性を有し、空気中を漂う埃や粉塵などが付着してしまうことで漏電の不具合を生じることを十分に防止できる。
また、前記(C1)成分の配合量は、前記(C1)成分及び前記(C2)成分の合計量100質量%に対して、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上60質量%以下であることが特に好ましい。(C1)成分の配合量が前記下限以上であれば、はんだ組成物のチクソ性を確保できる。他方、(C1)成分の配合量が前記上限以下であれば、はんだ飛び散りの抑制効果を確保できる。
【0029】
((D)成分)
本実施形態に用いる(D)チクソ剤は、(D1)アマイド系チクソ剤を含有することが好ましい。この(D1)成分によれば、はんだ組成物の降伏値の上昇を抑えつつ、粘性やチクソ性を向上できる傾向にある。
前記(D1)成分としては、N,N’−ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスカプリン酸アミド、N,N’−エチレンビスラウリン酸アミド、N,N’−エチレンビスベヘン酸アミド、N,N’−ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−エチレンビスエルカ酸アミド、N,N’−ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−m−キシリレンビスステアリン酸アミド、N,N’−m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、及び、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。これらの中でも、はんだ組成物の降伏値の観点から、N,N’−ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記(D)成分は、本実施形態の目的に影響のない範囲であれば、前記(D1)成分以外の他のチクソ剤((D2)成分)を含有していてもよい。ただし、この(D2)成分を用いる場合、その配合量は、(D)成分100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
前記(D2)成分としては、グリセリンエステル系チクソ剤(硬化ひまし油など)、無機系チクソ剤(カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、ガラスフリットなど)が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、グリセリンエステル系チクソ剤又はベンジリデンソルビトール系チクソ剤については、はんだ組成物の曳糸性試験で求められる値が低下しやすい傾向にあるので、使用しないことが好ましい。
【0030】
前記(D)成分の配合量は、前記フラックス組成物100質量%に対して、3質量%以上15質量%以下であることが好ましく、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。(D)成分の配合量が前記下限以上であれば、十分なチクソ性が得られ、ダレを十分に抑制できる。他方、(D)成分の配合量が前記上限以下であれば、チクソ性が高すぎて、塗布不良となることはない。
【0031】
(他の成分)
本実施形態に用いるフラックス組成物には、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分及び前記(D)成分の他に、必要に応じて、その他の添加剤、更には、その他の樹脂を加えることができる。その他の添加剤としては、酸化防止剤、消泡剤、改質剤、つや消し剤、発泡剤などが挙げられる。その他の樹脂としては、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0032】
<(E)成分>
本実施形態において、(E)はんだ粉末は、はんだ合金(E1)又ははんだ合金(E2)を含有する。
【0033】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に用いる(E)はんだ粉末は、As:25質量ppm以上300質量ppm以下と、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下と、Sb:0質量ppm超え3000質量ppm以下及びBi:0質量ppm超え10000質量ppm以下の少なくとも1種と、残部:Snと、からなる合金組成を有し、下記(1−1)式及び(1−2)式:
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1−1)
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (1−2)
[上記(1−1)式及び(1−2)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す]
を満たすはんだ合金(E1)を含有する。
【0034】
第1の実施形態のはんだ組成物は、上記のはんだ合金(E1)を含むことにより、増粘抑制効果を向上できる。また、当該はんだ合金は、上記の構成を備えることにより、液相線温度(T
L)と固相線温度(T
S)との差(ΔT=T
L−T
S)を小さくできる。このため、例えば、上記はんだ合金(E1)を含有するはんだ組成物を電子機器の基板に塗布し、凝固させても、はんだ組成物は、はんだ合金の組織の均一性を保つことができる。その結果、はんだ組成物は、サイクル特性等の信頼性に優れる。更に、第1の実施形態のはんだ組成物を構成するはんだ合金(E1)は、上記の構成を備えることにより、濡れ性に優れるため、はんだ付け不良の発生を抑制できる。このように、はんだ組成物は、上記構成を備えることにより、増粘抑制効果を有し、濡れ性に優れ、液相線温度と固相線温度との温度差が小さくなる。
【0035】
Asは、はんだ組成物の粘度の経時変化を抑制することができる元素である。Asは、フラックスとの反応性が低く、またSnに対して貴な元素であるために増粘抑制効果を発揮することができると推察される。Asが25質量ppm以上であることで、優れた増粘抑制効果を発揮することができる。As含有量の下限は25質量ppm以上であり、好ましくは50質量ppm以上であり、より好ましくは100質量ppm以上である。一方、Asが多すぎるとはんだ合金の濡れ性が劣化する。As含有量の上限は300質量ppm以下であり、このましくは250質量ppm以下であり、より好ましくは200質量ppm以下である。
【0036】
第1の実施形態に係るはんだ合金(E1)は、Pbが存在すれば、Asによる濡れ性の劣化を抑えることができる。Pbは、フラックスとの反応性が低く増粘抑制効果を示す元素である。また、Pbは、はんだ合金の液相線温度を下げるとともに溶融はんだの粘性を低減させるため、Asによる濡れ性の劣化を抑えることができる元素である。第1の実施形態に係るはんだ合金(E1)におけるPb含有量の下限は0質量ppm超えであり、好ましくは25質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、さらに好ましくは75質量ppm以上であり、特に好ましくは100質量ppm以上であり、最も好ましくは250質量ppm以上である。一方、第1の実施形態に係るはんだ合金(E1)におけるPb含有量の上限は5100質量ppm以下であり、好ましくは5000質量ppm以下であり、より好ましくは1000質量ppm以下であり、さらに好ましくは850質量ppm以下であり、特に好ましくは500質量ppm以下である。
【0037】
Sbは、フラックスとの反応性が低く増粘抑制効果を示す元素である。第1の実施形態に係るはんだ合金(E1)がSbを含有する場合、Sb含有量の下限は0質量ppm超えであり、好ましくは25質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、さらに好ましくは100質量ppm以上であり、特に好ましくは300質量ppm以上である。一方、Sb含有量が多すぎると、濡れ性が劣化するため、適度な含有量にすることが好ましい。Sb含有量の上限は3000質量ppm以下であり、好ましくは1150質量ppm以下であり、より好ましくは500質量ppm以下である。
【0038】
Biは、Sbと同様に、フラックスとの反応性が低く増粘抑制効果を示す元素である。また、Biは、はんだ合金の液相線温度を下げるとともに溶融はんだの粘性を低減させるため、Asによる濡れ性の劣化を抑えることができる元素である。
【0039】
Sb及びBiの少なくとも1元素が存在すれば、Asによる濡れ性の劣化をより抑えることができる。第1の実施形態に係るはんだ合金(E1)がBiを含有する場合、Bi含有量の下限は0質量ppm超えであり、好ましくは25質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、さらに好ましくは75質量ppm以上であり、特に好ましくは100質量ppm以上であり、最も好ましくは250質量ppm以上である。
【0040】
一方、これらの元素の含有量が多すぎると、固相線温度が著しく低下するため、液相線温度と固相線温度との温度差であるΔTが広くなりすぎる。ΔTが広すぎると、溶融はんだの凝固過程において、Biの含有量が少ない高融点の結晶相が析出するために液相のBiが濃縮される。その後、さらに溶融はんだの温度が低下すると、Biの濃度が高い低融点の結晶相が偏析してしまう。このため、はんだ合金の機械的強度等が劣化し、信頼性が劣ることになる。特に、Bi濃度が高い結晶相は硬くて脆いため、はんだ合金中で偏析すると信頼性が著しく低下する。
【0041】
このような観点から、第1の実施形態に係るはんだ合金(E1)がBiを含有する場合、Bi含有量の上限は10000質量ppm以下であり、好ましくは1000質量ppm以下であり、より好ましくは600質量ppm以下であり、さらに好ましくは500質量ppm以下である。
【0042】
第1の実施形態に係るはんだ合金(E1)は、下記(1−1)式を満たす。
【0043】
275≦2As+Sb+Bi+Pb (1−1)
上記(1−1)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0044】
As、Sb、Bi及びPbは、いずれも増粘抑制効果を示す元素である。(1−1)式中、As含有量を2倍にしたのは、AsがSbやBiやPbと比較して増粘抑制効果が高いためである。
【0045】
(1−1)式が275以上であると、増粘抑制効果が向上する。第1の実施形態における(1−1)式の下限は275以上であり、好ましくは350以上であり、より好ましくは1200以上である。一方、(1−1)の上限は、増粘抑制効果の観点では特に限定されることはないが、ΔTを適した範囲にする観点から、好ましくは25200以下であり、より好ましくは10200以下であり、さらに好ましくは5300以下であり、特に好ましくは3800以下である。
【0046】
上記好ましい態様の中でも、はんだ合金(E1)は、下記(1−1a)式及び(1−1b)式を満たすことが好ましい。
【0047】
275≦2As+Sb+Bi+Pb≦25200 (1−1a)
275≦2As+Sb+Bi+Pb≦5300 (1−1b)
上記(1−1a)及び(1−1b)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0048】
第1の実施形態に係るはんだ合金(E1)は、下記(1−2)式を満たす。
【0049】
0.01≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (1−2)
上記(1−2)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0050】
As及びSbは含有量が多いとはんだ合金の濡れ性が劣化する。一方、Bi及びPbは、Asを含有することによる濡れ性の劣化を抑制するが、含有量が多すぎるとΔTが上昇してしまうため、厳密な管理が求められる。特に、Bi及びPbを同時に含有する合金組成では、ΔTが上昇しやすい。これらを鑑みると、Bi及びPbの含有量を増加させて過度に濡れ性を向上させようとするとΔTが広がってしまう。一方、AsやSbの含有量を増加させて増粘抑制効果を向上させようとすると濡れ性が劣化してしまう。そこで、第1の実施形態では、As及びSbのグループ、Bi及びPbのグループに分け、両グループの合計量が適正な所定の範囲内である場合に、増粘抑制効果、ΔTの狭窄化、及び濡れ性のすべてが同時に満たされるのである。
【0051】
(1−2)式が0.01以上であることで、Bi及びPbの含有量の合計がAs及びSbの含有量の合計と比較して相対的に少なくなるため、ΔTを狭めることができる。(1−2)式の下限は0.01以上であり、好ましくは0.02以上であり、より好ましくは0.41以上であり、さらに好ましくは0.90以上であり、特に好ましくは1.00以上であり、最も好ましくは1.40以上である。一方、(1−2)式が10.00以下であることで、As及びSbの含有量の合計がBi及びPbの含有量の合計より相対的に少なくなるため、濡れ性が向上する。(1−2)の上限は10.00以下であり、好ましくは5.33以下であり、より好ましくは4.50以下であり、さらに好ましくは4.18以下であり、さらにより好ましくは2.67以下であり、特に好ましくは2.30以下である。
【0052】
なお、(1−2)式の分母は「Bi+Pb」であり、これらを含有しないと(1−2)式が成立しない。すなわち、第1の実施形態に係るはんだ合金は、Bi及びPbの少なくとも1種を含有することになる。
上記好ましい態様の中から上限及び下限を適宜選択したものが、下記(1−2a)式である。
【0053】
0.31≦(2As+Sb)/(Bi+Pb)≦10.00 (1−2a)
上記(1−2a)式中、As、Sb、Bi及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0054】
Agは、結晶界面にAg
3Snを形成してはんだ合金の信頼性を向上させることができる任意元素である。また、Agはイオン化傾向がSnに対して貴な元素であり、As、Pb、及びBiと共存することによりこれらの増粘抑制効果を助長する。Ag含有量は好ましくは0質量%以上4質量%以下であり、より好ましくは0質量%超え4質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上3.5質量%以下であり、さらにより好ましくは1.0質量%以上3.0質量%以下である。
【0055】
Cuは、はんだ継手の接合強度を向上させることができる任意元素である。また、Cuはイオン化傾向がSnに対して貴な元素であり、As、Pb、及びBiと共存することによりこれらの増粘抑制効果を助長する。Cu含有量は好ましくは0質量%以上0.9質量%以下であり、より好ましくは0質量%超え0.9質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上0.8質量%以下であり、さらにより好ましくは0.2質量%以上0.7質量%以下である。
【0056】
第1の実施形態に係るはんだ合金の残部はSnである。前述の元素の他に不可避的不純物を含有してもよい。不可避的不純物を含有する場合であっても、前述の効果に影響することはない。また、後述するように、第1の実施形態では含有しない元素が不可避的不純物として含有されても前述の効果に影響することはない。Inは、例えば、1000質量ppm以下であってもよい。
【0057】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に用いる(E)はんだ粉末は、As:10質量ppm以上40質量ppm未満と、Bi:0質量ppm超え10000質量ppm以下、Pb:0質量ppm超え5100質量ppm以下、及びSb:0質量ppm超え3000質量ppm以下の少なくとも1種と、残部:Snと、からなる合金組成を有し、下記(2−1)式及び(2−2)式:
300≦3As+Sb+Bi+Pb (2−1)
0.1≦{(3As+Sb)/(Bi+Pb)}×100≦200 (2−2)
[上記(2−1)式及び(2−2)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々前記合金組成での含有量(質量ppm)を表す。]
を満たすはんだ合金(E2)を含有する。
【0058】
Asは、はんだペーストの粘度の経時変化を抑制することができる元素である。Asは、フラックスとの反応性が低く、またSnに対して貴な元素であるために増粘抑制効果を発揮することができると推察される。Asが10質量ppm未満であると、増粘抑制効果を十分に発揮することができない。As含有量の下限は10質量ppm以上であり、好ましくは14質量ppm以上である。一方、Asが多すぎるとはんだ合金の濡れ性が劣化する。As含有量の上限は40質量ppm未満であり、好ましくは38質量ppm以下であり、より好ましくは25質量ppm未満であり、さらに好ましくは24質量ppm以下であり、さらにより好ましくは18質量ppm以下である。
【0059】
Sbは、フラックスとの反応性が低く増粘抑制効果を示す元素である。第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)がSbを含有する場合、Sb含有量の下限は0質量ppm以上であり、0質量ppm超えであってもよく、50質量ppm以上であってもよい。また、Sb含有量は、好ましくは82質量ppm以上であり、より好ましくは123質量ppm以上であり、さらに好ましくは150質量ppm以上である。一方、Sb含有量が多すぎると、濡れ性が劣化するため、適度な含有量にする必要がある。Sb含有量の上限は3000質量ppm以下であり、好ましくは1000質量ppm以下であり、より好ましくは700質量ppm以下であり、さらに好ましくは300質量ppm以下である。
【0060】
Bi及びPbは、Sbと同様に、フラックスとの反応性が低く増粘抑制効果を示す元素である。また、Bi及びPbは、はんだ合金の液相線温度を下げるとともに溶融はんだの粘性を低減させるため、Asによる濡れ性の劣化を抑えることができる元素である。
【0061】
Sb、Bi及びPbの少なくとも1種が存在すれば、Asによる濡れ性の劣化を抑えることができる。第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)がBiを含有する場合、Bi含有量の下限は0質量ppm以上であり、0質量ppm超えであってもよく、50質量ppm以上であってもよい。Bi含有量は好ましくは82質量ppm以上であり、より好ましくは123質量ppm以上であり、さらに好ましくは150質量ppm以上である。第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)がPbを含有する場合、Pb含有量の下限は0質量ppm以上であり、0質量ppm超えであってもよく、50質量ppm以上であってもよい。Pb含有量は好ましくは82質量ppm以上であり、より好ましくは123質量ppm以上であり、さらに好ましくは150質量ppm以上であり、最も好ましくは250質量ppm以上である。
【0062】
一方、Bi又はPbの含有量が多すぎると、固相線温度が著しく低下するため、液相線温度と固相線温度との温度差であるΔTが広くなりすぎる。ΔTが広すぎると、溶融はんだの凝固過程において、BiやPbの含有量が少ない高融点の結晶相が析出するために液相のBiやPbが濃縮される。その後、さらに溶融はんだの温度が低下すると、BiやPbの濃度が高い低融点の結晶相が偏析してしまう。このため、はんだ合金の機械的強度等が劣化し、信頼性が劣ることになる。特に、Bi濃度が高い結晶相は硬くて脆いため、はんだ合金中で偏析すると信頼性が著しく低下する。
【0063】
このような観点から、第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)がBiを含有する場合、Bi含有量の上限は10000質量ppm以下であり、好ましくは5000質量ppm以下であり、より好ましくは1000質量ppm以下であり、さらに好ましくは300質量ppm以下である。第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)がPbを含有する場合、Pb含有量の上限は5100質量ppm以下であり、好ましくは5000質量ppm以下であり、より好ましくは1000質量ppm以下であり、さらに好ましくは500質量ppm以下であり、特に好ましくは350質量ppm以下であり、最も好ましくは300質量ppm以下である。
【0064】
第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)は、下記(2−1)式を満たす。
300≦3As+Sb+Bi+Pb (2−1)
上記(2−1)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0065】
As、Sb、Bi及びPbは、いずれも増粘抑制効果を示す元素である。(2−1)式中、As含有量を3倍にしたのは、Sb、Bi及びPbの少なくとも1種を含有する場合にAs含有量がこれらの含有量より少なく、また、AsがSbやBiやPbと比較して増粘抑制効果が高いためである。
【0066】
(2−1)式が300質量ppm以上であることで、増粘抑制効果が向上する。(2−1)式の下限は300質量ppm以上であり、好ましくは318質量ppm以上であり、より好ましくは360質量ppm以上であり、さらに好ましくは392質量ppm以上であり、特に好ましくは464質量ppm以上であり、最も好ましくは714質量ppm以上である。一方、(2−1)の上限は、増粘抑制効果の観点では特に限定されることはないが、ΔTを適した範囲にする観点から、好ましくは18214質量ppm以下であり、より好ましくは15130質量ppm以下であり、さらに好ましくは11030質量ppm以下であり、特に好ましくは6214質量ppm以下である。
【0067】
なお、第2の実施形態では、As含有量の上限は40質量ppm未満であるため、第2の実施形態に係るはんだ合金は、Sb、Bi、及びPbの少なくとも1種を合計で180質量ppmより多く含有することになる。このように、第2の実施形態ではAs含有量が少ないものの、Sb、Bi及びPbの含有量が多めに設定されており、十分な増粘抑制効果が発揮される。
【0068】
第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)は、好ましくは下記(2−1a)式を満たす。
300≦3As+Sb+Bi+Pb≦18214 (2−1a)
上記(2−1a)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0069】
第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)は、下記(2−2)式を満たす。
0.1≦{(3As+Sb)/(Bi+Pb)}×100≦200 (2−2)
上記(2−2)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
As及びSbは含有量が多いとはんだ合金の濡れ性が劣化する。一方、Bi及びPbは、Asを含有することによる濡れ性の劣化を抑制するが、含有量が多すぎるとΔTが広がるため、厳密な管理が必要である。特に、Bi及びPbを同時に含有する合金組成では、ΔTが広がりやすい。つまり、Bi及びPbの含有量を増加させて過度に濡れ性を向上させようとするとΔTが広がってしまう。一方、AsやSbの含有量を増加させて増粘抑制効果を向上させようとすると濡れ性が劣化してしまう。そこで、第2の実施形態では、As及びSbのグループ、Bi及びPbのグループに分け、両グループの合計量が適正な所定の範囲内である場合に、増粘抑制効果、ΔTの狭窄化、及び濡れ性に優れる組成物が得られる。
【0070】
(2−2)式が0.1以上であることで、Bi及びPbの含有量の合計がAs及びSbの含有量の合計と比較して相対的に少なくなるため、ΔTが狭くなる。(2−2)式の下限は0.1以上であり、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.5以上であり、特に好ましくは0.8以上であり、最も好ましくは10.3以上である。一方、(2−2)式が200以下であることで、As及びSbの含有量の合計がBi及びPbの含有量の合計より相対的に少なくなるため、濡れ性が向上する。(2−2)の上限は200以下であり、好ましくは192.7以下であり、より好ましくは158.5以下であり、さらに好ましくは143.9以下であり、さらにより好ましくは102.0以下であり、特に好ましくは96.0以下である。なお、(2−2)式の分母は「Bi+Pb」であり、これらを含有しないと(2−2)式が成立しない。すなわち、第2の実施形態に係るはんだ合金は、Bi及びPbの少なくとも1種を含有する。
【0071】
第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)は、好ましくは下記(2a)式を満たす。
0.1≦{(3As+Sb)/(Bi+Pb)}×100≦158.5 (2−2a)
(2−2a)式中、As、Sb、Bi、及びPbは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
【0072】
FeとNiは、金属間化合物の成長を抑制することができる任意元素である。Niは、第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)がCu電極を接合する場合や後述するようにCuを含有する場合には、接合界面に形成されるCu
6Sn
5層を(Cu、Ni)
6Sn
5層にして金属間化合物層の膜厚を薄くすることができる。また、Feは溶融はんだの凝固時に結晶核の生成を促進し、Cu
6Sn
5、Cu
3Sn、Ag
3Snなどの金属間化合物相の成長を抑制することができる。
【0073】
これらの元素の含有量が所定の範囲内であれば、液相線温度が上昇し過ぎずΔTが許容範囲に収まり、高い機械的特性を維持することができる。第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)がNiを含有する場合には、Ni含有量の上限は好ましくは600質量ppm以下であり、より好ましくは500質量ppm以下であり、さらに好ましくは100質量ppm以下であり、特に好ましくは50質量ppm以下である。第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)がFeを含有する場合には、Fe含有量の上限は好ましくは100質量ppm以下であり、より好ましくは80質量ppm以下であり、さらに好ましくは50質量ppm以下である。
【0074】
NiとFeの含有量の下限は特に限定されないが、金属間化合物の成長を抑制する効果が十分に発揮されるため、Ni含有量の下限は、0質量ppm以上であり、好ましくは0質量ppm超えであり、より好ましくは10質量ppm以上であり、さらに好ましくは40質量ppm以上である。Fe含有量の下限は、0質量ppm以上であり、好ましくは0質量ppm超えであり、より好ましくは10質量ppm以上であり、さらに好ましくは20質量ppm以上である。
【0075】
InはSnの固溶強化型元素体であるために高い機械的特性を維持することができる任意元素である。In含有量が所定の範囲内であれば、ΔTが許容範囲に収まり、高い機械的特性を維持することができる。第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)がInを含有する場合には、In含有量の上限は好ましくは1200質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppm以下である。In含有量の下限は特に限定されないが、十分に固溶体が形成されるようにするため、In含有量の下限は、0質量ppm以上であり、好ましくは0質量ppm超えであり、より好ましくは20質量ppm以上であり、さらに好ましくは30質量ppm以上であり、さらよりに好ましくは50質量ppm以上である。
【0076】
第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)は、Ni:0質量ppm以上600質量ppm以下、Fe:0質量ppm以上100質量ppm以下、及びIn:0質量ppm以上1200質量ppm以下の少なくとも2種を含有することが好ましく、Ni:0質量ppm超え600質量ppm以下、Fe:0質量ppm超え100質量ppm以下、及びIn:0質量ppm超え1200質量ppm以下の少なくとも2種を含有することがより好ましい。Ni、Fe、及びInは、各々の含有量が所定の範囲内であればΔTが許容範囲に収まりやすく、高い機械的特性を維持することができる。第2の実施形態では、これらの中から少なくとも2種以上を所定の範囲内で含有してもよく、3種を同時に含有してもよい。
【0077】
第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)は、好ましくは下記(2−3)式を満たす。
0≦Ni/Fe≦50 (2−3)
(2−3)式中、Ni及びFeは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
FeとNiは金属間化合物の成長を抑制することができるが、Niは接合界面の金属間化合物層の成長を抑制し、Feははんだ合金中の金属間化合物相の成長を抑制することができる。はんだ継手全体として金属間化合物の成長が抑制されるようにするため、両元素の含有量はある程度のバランスを有することが望ましい。第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)は、(2−3)式を満たすことが好ましい。このような効果を発揮するため、(2−3)式の下限は好ましくは0以上であり、より好ましくは0.1以上であり、さらに好ましくは2以上であり、特に好ましくは7.5以上である。(2−3)式の上限は好ましくは50以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは8.0以下である。
【0078】
第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)は、金属間化合物の成長を抑制するとともに液相線温度が上昇し過ぎずΔTが許容範囲に収まり、高い機械的特性を維持するため、好ましくは下記(2−4)式を満たす。
0≦Ni+Fe≦680 (2−4)
(2−4)式中、Ni及びFeは各々合金組成での含有量(質量ppm)を表す。
金属間化合物の成長が抑制されるようにするため、(2−4)式の下限は好ましくは0質量ppm以上であり、より好ましくは0質量ppm超えであり、さらに好ましくは20質量ppm以上であり、さらにより好ましくは40質量ppm以上であり、特に好ましくは50質量ppm以上であり、最も好ましくは60質量ppm以上である。また、液相線温度が上昇し過ぎないようにするため、(2−4)式の上限は好ましくは680質量ppm以下であり、より好ましくは500質量ppm以下であり、さらに好ましくは200質量ppm以下であり、特に好ましくは150質量ppm以下であり、最も好ましくは110質量ppm以下である。
【0079】
Agは、結晶界面にAg
3Snを形成してはんだ合金の信頼性を向上させることができる任意元素である。また、Agはイオン化傾向がSnに対して貴な元素であり、As、Pb、及びBiと共存することによりこれらの増粘抑制効果を助長する。Ag含有量の下限は好ましくは0質量%以上であり、より好ましくは0質量%超えであり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、さらにより好ましくは1.0質量%以上である。Ag含有量の上限は好ましくは4質量%以下であり、より好ましくは3.5質量%以下であり、さらに好ましくは3.0質量%以下である。
【0080】
Cuは、接合強度を向上させることができる任意元素である。また、Cuはイオン化傾向がSnに対して貴な元素であり、As、Pb、及びBiと共存することによりこれらの増粘抑制効果を助長する。Cu含有量の下限は好ましくは0質量%以上であり、より好ましくは0質量%超えであり、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、さらにより好ましくは0.2質量%以上である。Cu含有量の上限は好ましくは0.9質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下であり、さらに好ましくは0.7質量%以下である。
【0081】
第2の実施形態に係るはんだ合金(E2)の残部はSnである。前述の元素の他に不可避的不純物を含有してもよい。不可避的不純物を含有する場合であっても、前述の効果に影響することはない。また、後述するように、第2の実施形態では含有しない元素が不可避的不純物として含有されても前述の効果に影響することはない。
【0082】
前記はんだ粉末の平均粒子径は、1μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上35μm以下であることがより好ましく、15μm以上25μm以下であることが特に好ましい。平均粒子径が上記範囲内であれば、はんだ付けランドのピッチの狭くなってきている最近のプリント配線基板にも対応できる。なお、平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定できる。
【0083】
<各成分の含有量>
はんだ組成物中のはんだ合金及びフラックス組成物の含有量に限定はなく、例えば、はんだ合金を5質量%以上95質量%以下、フラックス組成物を5質量%以上95質量%以下とすることができる。
【0084】
[はんだ組成物の製造方法]
本実施形態のジェットディスペンサー用はんだ組成物は、上記説明したフラックス組成物と上記説明した(E)はんだ粉末とを上記所定の割合で配合し、撹拌混合することで製造できる。
【0085】
[はんだ組成物を用いた接続方法]
次に、本実施形態のジェットディスペンサー用はんだ組成物を用いた、配線基板及び電子部品などの電極同士の接続方法について説明する。ここでは、配線基板及び電子部品の電極同士を接続する場合を例に挙げて説明する。
このように配線基板及び電子部品の電極同士を接続する方法としては、前記配線基板上に前記はんだ組成物を塗布する塗布工程と、前記はんだ組成物上に前記電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱して、前記電子部品を前記配線基板に実装するリフロー工程と、を備える方法を採用できる。
【0086】
塗布工程においては、前記配線基板上に前記はんだ組成物を塗布する。
ここで用いる塗布装置は、
図3に示すようなジェットディスペンサー4である。ジェットディスペンサー4は、シリンジ41と、ノズル42と、ニードル43と、バルブ44とを備えている。ジェットディスペンサー4によりはんだ組成物が吐出される場合、先ず、シリンジ41からはんだ組成物が供給され、ノズル42にはんだ組成物が充填される。そして、バルブ44によりニードル43が
図3の下方向に押され、ノズル42中のはんだ組成物が吐出される。
前記本実施形態のジェットディスペンサー用はんだ組成物は、塗布性が優れており、このようなジェットディスペンサーで良好に塗布できる。
【0087】
リフロー工程においては、前記はんだ組成物上に前記電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱する。このリフロー工程により、電子部品及び配線基板の間に十分なはんだ接合を行うことができる。その結果、前記電子部品を前記配線基板に実装することができる。
【0088】
リフロー条件は、はんだの融点に応じて適宜設定すればよい。例えば、Sn−Ag−Cu系のはんだ合金を用いる場合には、プリヒートを温度150〜180℃で60〜120秒行い、ピーク温度を240〜250℃に設定すればよい。
【0089】
また、本実施形態のはんだ組成物を用いた接続方法は、前記接続方法に限定されるものではなく、本実施形態の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本実施形態に含まれるものである。
例えば、前記接続方法では、リフロー工程により、配線基板と電子部品とを接着しているが、これに限定されない。例えば、リフロー工程に代えて、レーザー光を用いてはんだ組成物を加熱する工程(レーザー加熱工程)により、配線基板と電子部品とを接着してもよい。この場合、レーザー光源としては、特に限定されず、金属の吸収帯に合わせた波長に応じて適宜採用できる。レーザー光源としては、例えば、固体レーザー(ルビー、ガラス、YAGなど)、半導体レーザー(GaAs、InGaAsPなど)、液体レーザー(色素など)、気体レーザー(He−Ne、Ar、CO2、エキシマーなど)が挙げられる。
【実施例】
【0090】
次に、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0091】
[実施例A1]
(A)ロジン系樹脂として、アクリル酸変性ロジンの水素添加物36.0質量%、完全水添ロジン6.5質量%、(D)チクソ剤として、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アマイド7.0質量%、ヒンダードフェノール系酸化防止剤1.0質量%、(B)活性剤として、コハク酸1.0質量%、グルタル酸3.0質量%、水添ダイマー酸5.0質量%、(C)溶剤として、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル12.5質量%及びα,β,γ−ターピネオール28.0質量%をそれぞれ容器に投入し、マントルヒーターにて160℃に加熱しつつ、混練機(プラネタリーミキサー)にて混合してフラックス組成物を得た。
その後、得られたフラックス組成物17質量%及びはんだ粉末(平均粒子径18μm、はんだ融点217〜219℃、実施例B1のはんだ合金)83質量%(合計で100質量%)を容器に投入し、混練機(プラネタリーミキサー)にて混合することで、下記表1に示す組成を有するはんだ組成物を調製した。
そして、得られたはんだ組成物の曳糸性試験で求められる値を測定した。具体的には、容器中の得られたはんだ組成物を投入し、はんだ組成物を60秒間攪拌した。その後、はんだ組成物中に曳糸部を有する測定棒を、この曳糸部が全て浸漬するように、浸漬した。その後、測定棒を500mm/minの速度で引き上げ、このときに、曳糸部とはんだ組成物との間に形成される糸が切断したときの長さ(mm)を測定した。得られた結果を表1に示す。
なお、円錐部及び円柱部の直径は10mmであり、円錐部の高さは5mmであり、円柱部の長さは9mmであり、連結部の長さは3mmであり、測定棒の直径は3mmである。また、測定棒を引き上げる装置としては、SHIMADZU社製の「EZ−L」を用いた。
また、得られたはんだ組成物について、JIS Z3284−3:2014に準拠し、E型粘度計により測定を行った。回転数を10rpm、温度を35℃にして、粘度値η(単位:mPa・s)を読み取った。また、上記と同様にして、回転数を30rpmに調整した場合の粘度値(30rpm粘度)と、回転数を3rpmに調整した場合の粘度値(3rpm粘度)とを読み取った。そして、下記式に基づいて、チクソ指数を算出した。得られた結果を表1に示す。
チクソ指数=log[(3rpm粘度)/(30rpm粘度)]
【0092】
[実施例A2、A3及び比較例A1〜A4]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例A1と同様にしてはんだ組成物を得た。
また、得られたはんだ組成物について、実施例A1と同様にして、曳糸性試験で求められる値、粘度及びチクソ指数を測定した。
【0093】
<はんだ組成物の評価>
はんだ組成物の性能(塗布形状、はんだ飛び散り)を以下のような方法で評価又は測定した。得られた結果を表1に示す。
【0094】
(1)塗布形状及び(2)はんだ飛び散り(サテライト)
40gのはんだ組成物が充填された10mLシリンジ、及び、直径0.26mmφのノズルを有するジェットディスペンサーを用い、ノズル先端から基板までの距離を1.5mmで、1点あたりの塗布時間を0.09秒間に設定して、基板(材質:アルミニウム、大きさ:150mm×150mm、厚み:0.5mm)上の100mm×100mmの範囲内に等間隔で10000点の吐出(100点×100列)を行って試験基板を得た。
そして、得られた試験基板を目視にて観察し、以下の基準に従って、塗布形状を評価した。
(塗布形状の評価基準)
○:塗布形状が円状である。
×:塗布形状が楕円状であるか、糸引きがある。
【0095】
さらに、はんだ飛び散りについては、得られた試験基板について、吐出物から離れて存在する直径70μm以上の凝集粉をはんだ飛び散りとし、その個数(10000ショットあたりの個数)をカウントし、以下の基準に従って、はんだ飛び散りを評価した。
(はんだ飛び散りの評価基準)
A:直径70μm以上の凝集紛が3個未満である。
B:直径70μm以上の凝集紛が3個以上10個未満である。
C:直径70μm以上の凝集紛が10個以上30個未満である。
D:直径70μm以上の凝集紛が30個以上100個未満である。
E:直径70μm以上の凝集紛が100個以上である。
【0096】
【表1】
【0097】
表1に示す結果からも明らかなように、本実施形態のジェットディスペンサー用はんだ組成物を用いた場合(実施例A1〜A3)には、塗布形状が良好で、はんだ飛び散りが少ないことが確認された。このことから、本実施形態のジェットディスペンサー用はんだ組成物は、ジェットディスペンサーにより塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、はんだ飛び散りを十分に抑制できることが確認された。
一方で、はんだ組成物の曳糸性試験で求められる値が42mm未満の場合(比較例A1〜A4)には、はんだ飛び散りが十分に抑制できず、また塗布形状が悪い場合もあることが分かった。
【0098】
[はんだ合金の検討]
表1で調整した実施例A1のフラックス組成物と、表2〜表7に示す合金組成からなりJIS Z 3284−1:2014における粉末サイズの分類(表2)において記号4を満たすサイズ(粒度分布)のはんだ合金とを混合してはんだペーストを作製した。フラックスとはんだ合金との質量比は、フラックス:はんだ合金=11:89である。各はんだペーストについて、粘度の経時変化を測定した。また、はんだ合金の液相線温度及び固相線温度を測定した。さらに、作製直後のはんだペーストを用いて濡れ性の評価を行った。詳細は以下のとおりである。
【0099】
<増粘抑制>
レオメーター装置「HAAKE MARS Rheometer」(製品名、Thermo Fisher Scientific Inc.製)により、60℃にて600分間、せん断速度6[1/s](dγ/dt)で連続粘度を測定し、最低粘度値と最高粘度値を得た。得られた最低粘度値と最高粘度値から、以下の基準で増粘抑制を評価した。
(評価基準)
〇:最高粘度値が最低粘度値と比較して1.2倍未満
×:最高粘度値が最低粘度値と比較して1.2倍以上
【0100】
<液相線温度と固相線温度との温度差(ΔT)>
フラックスと混合する前のはんだ合金について、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、型番:EXSTAR DSC7020を用い、サンプル量:約30mg、昇温速度:15℃/minにてDSC測定を行い、固相線温度及び液相線温度を得た。得られた液相線温度から固相線温度を引いてΔTを求めた。ΔTが10℃以下の場合に「○」と評価し、10℃を超える場合に「×」と評価した。
【0101】
<濡れ性>
作製直後の各はんだペーストをCu板上に印刷し、リフロー炉でN
2雰囲気中、1℃/sの昇温速度で25℃から260℃まで加熱した後、室温まで冷却した。冷却後のはんだバンプの外観を光学顕微鏡で観察することで濡れ性を評価した。溶融しきれていないはんだ粉末が観察されない場合に「○」と評価し、溶融しきれていないはんだ粉末が観察された場合に「×」と評価した。
【0102】
<総合評価>
〇:上記の各評価が全て〇
×:上記の各評価において×あり
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
【表7】
【0109】
表1に示す各実施例のフラックスと、所定のはんだ合金とを使用したはんだペーストでは、はんだペーストの塗布形状及びはんだ飛び散りの評価において優れた効果が得られた。
実施例A1で使用したフラックスと、表2に示す各種実施例のはんだ合金とを使用したはんだペーストでは、増粘抑制効果を有し、液相線温度と固相線温度との温度差(ΔT)が小さく、濡れ性に優れる。
【0110】
表2〜7に示すように、全ての実施例Bでは、増粘抑制効果、ΔTの狭窄化、及び優れた濡れ性を示すことがわかった。
【0111】
これに対して、比較例B1、B14、B27、B40、B53、及びB66は、Asを含有しないため、増粘抑制効果が発揮されなかった。
【0112】
比較例B2、B15、B28、B41、B54、及びB67は、(1−1)式が下限未満であるため、増粘抑制効果が発揮されなかった。
【0113】
比較例B3、B16、B29、B42、B55、及びB68は、(1−2)式が上限を超えるため、濡れ性が劣った。
【0114】
比較例B4、B5、B17、B18、B30、B31、B43、B44、B56、B57、B69、及びB70は、As含有量及び(1−2)式が上限を超えているため、濡れ性が劣る結果を示した。
【0115】
比較例B6〜B8、B19〜B21、B32〜B34、B45〜B47、B58〜B60、及びB71〜B73は、Sb含有量が上限を超えているため、濡れ性が劣った。
【0116】
比較例B9、B10、B22、B23、B35、B36、B48、B49、B61、B62、B74、及びB75は、Bi含有量が上限を超えているため、ΔTが10℃を超える結果を示した。
【0117】
比較例B11、B13、B24、B26、B37、B39、B50、B52、B63、B65、B76、及びB78は、Pb含有量が上限を超えているため、ΔTが10℃を超える結果を示した。
【0118】
比較例B12、B25、B38、B51、B64、及びB77は、Bi及びPbを含有せず(1−2)式が成立しなかったため、濡れ性が劣った。
【0119】
<フラックスとはんだ合金の組み合わせ>
実施例A1のフラックス組成物に代えて、実施例A2〜A3の各種フラックス組成物をそれぞれ、実施例B1に示したはんだ合金と使用した場合も、塗布性、飛び散り抑制性、増粘抑制効果、ΔT、濡れ性においても良好な結果が得られた。
【0120】
同様に、実施例A1〜A3の各種フラックスに対して、その他の実施例Bの各種はんだ合金をそれぞれ組み合わせた場合も、塗布性、飛び散り抑制性、増粘抑制効果、ΔT、濡れ性においても良好な結果が得られた。
【0121】
[実施例C1〜C498、比較例C1〜C78]
表1で調整した実施例A1のフラックス組成物と、表8〜表29に示す合金組成からなりJIS Z 3284−1:2014における粉末サイズの分類(表2)において記号4を満たすサイズ(粒度分布)のはんだ粉末とを混合してはんだペーストを作製した。フラックスとはんだ粉末との質量比は、フラックス:はんだ粉末=11:89である。各はんだペーストについて、粘度の経時変化を測定した。また、はんだ粉末の液相線温度及び固相線温度を測定した。さらに、作製直後のはんだペーストを用いて濡れ性の評価を行った。詳細は以下のとおりである。
【0122】
なお、増粘抑制、ΔT及び濡れ性の評価方法、並びに総合評価の基準は、上述の実施例Bにおける評価方法と同様である。
【0123】
【表8】
【0124】
【表9】
【0125】
【表10】
【0126】
【表11】
【0127】
【表12】
【0128】
【表13】
【0129】
【表14】
【0130】
【表15】
【0131】
【表16】
【0132】
【表17】
【0133】
【表18】
【0134】
【表19】
【0135】
【表20】
【0136】
【表21】
【0137】
【表22】
【0138】
【表23】
【0139】
【表24】
【0140】
【表25】
【0141】
【表26】
【0142】
【表27】
【0143】
【表28】
【0144】
【表29】
【0145】
表8〜29中、下線は本発明の範囲外であることを表す。
表8〜29に示すように、実施例C1〜C498は、いずれの合金組成においても本発明の要件をすべて満たすため、増粘抑制効果、ΔTの狭窄化、及び優れた濡れ性を示すことがわかった。一方、比較例C1〜C78は、いずれの合金組成においても本発明の要件の少なくとも1つを満たさないため、増粘抑制効果、ΔTの狭窄化、及び優れた濡れ性の少なくとも1つが劣ることがわかった。
【0146】
<フラックスとはんだ合金の組み合わせ>
実施例A1のフラックス組成物に代えて、実施例A2〜A3の各種フラックス組成物をそれぞれ、実施例C1に示したはんだ合金と使用した場合も、塗布性、飛び散り抑制性、増粘抑制効果、ΔT、濡れ性においても良好な結果が得られた。
【0147】
同様に、実施例A1〜A3の各種フラックスに対して、その他の実施例Cの各種はんだ合金をそれぞれ組み合わせた場合も、塗布性、飛び散り抑制性、増粘抑制効果、ΔT、濡れ性においても良好な結果が得られた。