特許第6690160号(P6690160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6690160耐久性に優れた制電性ポリアミド芯鞘複合繊維
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6690160
(24)【登録日】2020年4月13日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】耐久性に優れた制電性ポリアミド芯鞘複合繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/12 20060101AFI20200421BHJP
   D03D 15/00 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   D01F8/12 A
   D03D15/00 A
   D03D15/00 101
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-181692(P2015-181692)
(22)【出願日】2015年9月15日
(65)【公開番号】特開2017-57513(P2017-57513A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】▲たか▼木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佳史
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−306709(JP,A)
【文献】 特公昭48−000291(JP,B1)
【文献】 国際公開第2006/042904(WO,A1)
【文献】 特公昭43−019625(JP,B1)
【文献】 特開平02−307914(JP,A)
【文献】 特開昭59−144616(JP,A)
【文献】 特開昭58−132121(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/010709(WO,A1)
【文献】 特開平10−008348(JP,A)
【文献】 特開2015−007297(JP,A)
【文献】 特開昭62−276048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 8/00− 8/18
D03D 1/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞘部にポリアミド、芯部にポリエーテルエステルアミド共重合体である同心円芯鞘複合繊維において、鞘部ポリアミドのα型結晶配向パラメーターが1.90以上2.80以下、強度が4.2cN/dtex以上、伸度が40%以上であって、温度10℃×湿度10%、経密度210本/2.54cm、緯密度160本/2.54cm平組織の条件における洗濯後の摩擦帯電圧が0V以上1000V以下である耐久性に優れた制電性ポリアミド芯鞘複合繊維。
【請求項2】
芯鞘複合繊維中の無機物の含有量が5重量%以下である請求項1載の耐久性に優れた制電性ポリアミド芯鞘複合繊維。
【請求項3】
請求項1または2に記載の耐久性に優れた制電性ポリアミド芯鞘複合繊維を少なくとも一部に有する布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性に優れた制電性ポリアミド芯鞘複合繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドやポリエステルなどの熱可塑性樹脂から成る合成繊維は、強度、耐薬品性、耐熱性などに優れるために、衣料用途や産業用途など幅広く用いられている。
特にポリアミド繊維はその独特な柔らかさ、高い引っ張り強度、染色時の発色性、高い耐熱性等の特性に優れており、アウターウエア、スポーツウエアなどの用途に広く使用されている。しかしながら、ポリアミド繊維は電気抵抗が著しく、静電気を帯びやすいという欠点を有しており、特に低温度・低湿度下で使用されるアウターウエアなどの用途では、制電性に優れたポリアミド繊維が要望されている。
【0003】
従来からこの欠点を解消するための手段が種々研究され、提案されている。例えば、特許文献1には、繊維形成性樹脂を鞘部とし、ポリエーテルブロックアミド共重合物を芯部とした複合繊維であり、芯部と鞘部の面積比率が5/95〜95/5であり、芯部の表面への露出角度が5°〜90°である複合繊維が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、芯部と鞘部からなり芯部が繊維表面に露出しない形状の芯鞘複合繊維であり、ハードセグメントが6−ナイロンであるポリエーテルブロックアミド共重合物を芯部とし、6−ナイロン樹脂を鞘部とした、繊維横断面における芯部と鞘部の面積比率が3/1〜1/5である芯鞘複合繊維が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/123586号
【特許文献2】国際公開第2014/10709号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の繊維は、温度20℃×湿度33%RHの条件下で優れた制電性を有しているものの、冬場を想定した温度10℃×湿度10%RHの条件下での性能は十分に満足できるものでなく、織物に加工した際に芯部が露出したり、洗濯等の実使用によって芯部が脱落するなど、高次加工工程や繰り返し使用による制電性の低下も課題であった。
【0007】
また、特許文献2に記載の繊維は、温度22℃×湿度33%RHの条件下で優れた制電性を有しているものの、冬場を想定した温度10℃×湿度10%RHの条件下での性能は十分に満足できるものでなく、アウターウエアなどの高次加工製品において実用に耐えうる強度を有しておらず、また、芯部が繰り返しの実使用によって劣化し、繰り返し使用による制電性の低下も課題であった。さらには、芯部の高吸放湿性ポリマーは染料の出入りが容易な高分子構造であるため、染色堅牢性が劣る欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記従来技術の問題点を克服し、高い制電性を有するとともに、実使用に耐えうる強力と制電性の洗濯耐久性と染色堅牢性を有するポリアミド芯鞘複合繊維を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、下記の構成からなる。
(1)鞘部にポリアミド、芯部にポリエーテルエステルアミド共重合体である同心円芯鞘複合繊維において、鞘部ポリアミドのα型結晶配向パラメーターが1.90以上2.80以下、強度が4.2cN/dtex以上、伸度が40%以上であって、温度10℃×湿度10%、経密度210本/2.54cm、緯密度160本/2.54cm平組織の条件における洗濯後の摩擦帯電圧が0V以上1000V以下である耐久性に優れた制電性ポリアミド芯鞘複合繊維。
(2繊維中に無機物が5重量%以下含有する(1記載の耐久性に優れた制電性ポリアミド芯鞘複合繊維。
(3(1)または(2)に記載の耐久性に優れた制電性ポリアミド芯鞘複合繊維を少なくとも一部に有する布帛。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い制電性を有するとともに、実使用に耐えうる強力と制電性の洗濯耐久性と染色堅牢性を有するポリアミド芯鞘複合繊維を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の芯鞘複合糸は、鞘部にポリアミド、芯部に高い吸湿性能を有する熱可塑性ポリマーを用いる。芯部の高い吸湿性能を有する熱可塑性ポリマーとは、ペレット形状で測定したΔMRが10%以上のポリマーを指し、ポリエーテルエステルアミド共重合体やポリビニルアルコール、セルロース系熱可塑性樹脂等があげられる。その中でも、熱安定性や鞘部のポリアミドとの相溶性が良く耐剥離性に優れる観点から、ポリエーテルエステルアミド共重合体が好ましい。
【0012】
ポリエーテルエステルアミド共重合体とは、同一分子鎖内にエーテル結合、エステル結合およびアミド結合を持つブロック共重合体である。より具体的にはラクタム、アミノカルボン酸、ジアミンとジカルボン酸の塩から選ばれた1種もしくは2種以上のポリアミド成分(A)およびジカルボン酸とポリ(アルキレンオキシド)グリコールからなるポリエーテルエステル成分(B)を重縮合反応させて得られるブロック共重合体ポリマーである。
【0013】
ポリアミド成分(A)としては、ε−カプロラクタム、ドデカノラクタム、ウンデカノラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸,11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのω−アミノカルボン酸、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等の前駆体であるジアミン−ジカルボン酸のナイロン塩類があり、好ましいポリアミド形成性成分はε−カプロラクタムである。
【0014】
ポリエーテルエステル成分(B)は、炭素数4〜20のジカルボン酸とポリ(アルキレンオキシド)グリコールとからなるものである。炭素数4〜20のジカルボン酸としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカジ酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸をあげることができ、1種または2種以上混合して用いることができる。好ましいジカルボン酸はアジピン酸、セバシン酸、ドデカジ酸、テレフタル酸、イソフタル酸である。またポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−および1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール等があげられ、特に良好な吸湿性能を有するポリエチレングリコールが好ましい。
【0015】
ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平均分子量は300〜10000が好ましく、より好ましくは500〜5000である。分子量が300以上であると、重縮合反応中に系外に飛散しにくく、吸湿性能が安定した繊維となるため好ましい。また、10000以下であると、均一なブロック共重合体が得られ製糸性が安定するため好ましい。
【0016】
ポリエーテルエステル成分(B)の構成比率はmol比にて、20〜80%であることが好ましい。20%以上であると、良好な吸湿性が得られるため好ましい。また、80%以下であると、良好な染色堅牢性や洗濯耐久性が得られるため好ましい。
【0017】
このようなポリエーテルエステルアミド共重合体として、アルケマ社製“MH1657”や“MV1074”等が市販されている。
【0018】
鞘部のポリアミドには、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン9、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン612等、あるいはそれらとアミド形成官能基を有する化合物、例えばラウロラクタム、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の共重合成分を含有する共重合ポリアミドがあげられる。中でも、ナイロン6および、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612が、ポリエーテルエステルアミド共重合体との融点の差が小さく、溶融紡糸時にポリエーテルエステルアミド共重合体の熱劣化が抑制でき、製糸性の観点から好ましい。中でも好ましくは、染色性に富むナイロン6である。本発明の鞘部のポリアミドには、各種の添加剤、たとえば、艶消剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、螢光増白剤、帯電防止剤、吸湿性ポリマー、カーボンなどを、総添加物含有量が5重量%以下で必要に応じて共重合または混合していてもよい。
【0019】
本発明のポリアミド芯鞘複合繊維は、鞘部のポリアミドのα型結晶配向パラメーターが1.90以上2.80以下であることが好ましい。鞘部のポリアミドのα型結晶は安定した結晶型であり、高い応力が加わった際にα型結晶が形成される。かかる範囲とするには、後述するように特定条件(芯鞘の組成比や粘度比など)で紡糸して、鞘部のポリアミドに紡糸から引取時の延伸および引取りローラー間で鞘部の延伸を優先的に加えることにより、安定した結晶型であるα型結晶を鞘部に存在させることが可能となる。その結果、芯鞘複合糸の染色後の染着強度が上昇し、染色堅牢度が良好となるばかりか、紡糸時の延伸力が鞘部のポリアミドに集中し、芯部の高い吸湿性能を有する熱可塑性ポリマーの結晶化が抑制されることで、ポリアミド芯鞘複合繊維の制電性を高めることが出来るため、好ましい。
【0020】
更に、ポリエーテルエステルアミド共重合体の場合は、結晶化によりポリエーテルエステル成分が局在化した構造を形成し易く、局在部はアルカリ性液体への耐久性が劣るため、鞘部のポリアミドのα型結晶配向パラメーターをかかる範囲とし、芯部のポリエーテルエステルアミド共重合体の結晶化を抑制することで、実使用に耐えうる制電性の洗濯耐久性を発現させることが可能となる。
【0021】
α型結晶配向パラメーターが1.90以上であると、鞘部のポリアミドの結晶化が進み、複合糸としての染色堅牢度も良好であり、かつ芯部の高い吸湿性能を有する芯部の熱可塑性ポリマーの結晶化が進まず、制電性が良好である。更に、ポリエーテルエステルアミド共重合体の場合は、結晶化が進まないため、実使用に耐えうる制電性の洗濯耐久性が良好となる。一方、α型結晶配向パラメーターが2.80以下であると、鞘部のポリアミドの結晶化が進まず、紡糸の際に糸切れや毛羽の発生を抑制できるので生産性が向上する。より好ましくは2.00以上2.75以下、さらに好ましくは2.10以上2.70以下である。
【0022】
本発明のポリアミド芯鞘複合繊維は、高い制電性を有するとともに、実使用に耐えうる強力と制電性の洗濯耐久性と染色堅牢性の点から、繊維横断面における芯部の面積比率が1%以上15%以下であることが好ましい。より好ましくは1%以上10%以下、さらに好ましくは1%以上5%以下である。この範囲であると鞘部が空気中の限られた水分を多く吸収しやすくなり、芯部にその吸収した水分を伝達する割合が増加する。また、芯部の面積比率が小さいことで、帯電した静電気が吸水した芯部を素早く伝達するため、優れた制電性を発現する。また、芯部の面積比率が小さいことで、実使用に耐えうる強力を得ることができる。
本発明のポリアミド芯鞘複合繊維は、温度10℃×湿度10%の条件における摩擦布(綿)との摩擦帯電圧が0V以上1000V以下であることが好ましい。より好ましくは、0V以上700V以下、さらに好ましくは0V以上500Vである。摩擦帯電圧が低くなるほど制電性能に優れるということであるが、一般的なポリアミド繊維の10℃×10%RH環境下での摩擦布が綿の摩擦帯電圧は、8000V程度である。かかる範囲とすることにより静電気による着用時のまつわり付きやほこり付着の少ない制電性に優れる、すなわち、快適性に優れる衣料が提供可能となる。本発明のポリアミド芯鞘複合繊維は、洗濯20回後の温度10℃×湿度10%の条件における摩擦帯電圧が0V以上1000V以下であることが好ましい。より好ましくは、0V以上700V以下、さらに好ましくは0V以上500Vである。かかる範囲とすることで、実使用に耐えうる洗濯耐久性が得られるため、優れた快適性を保持した衣料を提供可能となる。
本発明のポリアミド芯鞘複合繊維は、繊維中の無機物の含有量が5重量%以下であることが好ましい。かかる範囲とすることで、染色時に優れた発色性が得られ、かつ審美性に優れた衣料の提供が可能となる。
【0023】
本発明のポリアミド芯鞘複合繊維は、洗濯堅牢度(変退色、色落ち)が3級以上5級以下であることが好ましい。かかる範囲とすることで、実使用に耐えうる洗濯耐久性が得られるため、染色堅牢性に優れた衣料の提供が可能となる。本発明の芯鞘複合糸は、鞘部ポリマーのアミノ末端基量が3.0×10−5mol/g以上8.0×10−5mol/g以下であることが好ましい。親水性に富むアミノ末端基量が3.0×10−5mol/g以上であると、制電性が高まり好ましく、またアミノ末端基は染料着座となるため衣料用途に適した発色性や染色堅牢度が得られる。一方、アミノ末端基量が8.0×10−5mol/g以下であると、染色時に染め斑になり難い繊維となり好ましい。より好ましくは3.5×10−5mol/g以上7.5×10−5mol/g以下、さらに好ましくは4.0×10−5mol/g以上7.0×10−5mol/g以下である。
【0024】
本発明のポリアミド芯鞘複合繊維は、引っ張り強度が4.2cN/dtex以上であることが好ましい。より好ましくは4.5cN/dtex以上である。また、強度は高いほど好ましいが、本発明におけるその上限値は6.5cN/dtex程度である。かかる範囲とすることで、主にアウター衣料用途やスポーツ衣料用途である衣料用途において、実使用に耐えうる強力に優れた衣料を提供可能となる。発明のポリアミド芯鞘複合繊維は、伸度が40%以上であることが好ましい。より好ましくは42〜65%である。かかる範囲とすることで、製織、製編、仮撚りといった高次加工工程での工程通過性が良好となる。
【0025】
本発明のポリアミド芯鞘複合繊維の総繊度、フィラメント数(長繊維の場合)、長さ・捲縮数(短繊維の場合)も特に限定はなく、断面形状も得られる布帛の用途等に応じて任意の形状とすることができる。衣料用長繊維素材として使用することを考慮すると、マルチフィラメントとしての総繊度は5デシテックス以上235デシテックス以下、フィラメント数は1以上144フィラメント以下が好ましい。また、断面形状は円形、三角、扁平、Y型、星形や偏芯型、貼り合わせ型が好ましい。
【0026】
本発明のポリアミド芯鞘複合繊維は、公知の溶融紡糸、複合紡糸の手法により得ることができるが、例示すると以下のとおりである。
例えば、ポリアミド(鞘部)と高い吸湿性能を有する熱可塑性ポリマー(芯部)を別々に溶融しギヤポンプにて計量・輸送し、そのまま通常の方法で芯鞘構造をとるように複合流を形成して紡糸口金から吐出し、チムニー等の糸条冷却装置によって冷却風を吹き当てることにより糸条を室温まで冷却し、給油装置で給油するとともに集束し、第1流体交絡ノズル装置で交絡し、引き取りローラー、延伸ローラーを通過し、その際引き取りローラーと延伸ローラーの周速度の比に従って延伸する。さらに、糸条を延伸ローラーにより熱セットし、ワインダー(巻取装置)で巻き取る。
本発明のポリアミド芯鞘複合繊維の鞘部のα型結晶配向パラメーターをかかる範囲に制御するためには、ポリマー選択に加えて、紡糸の際の芯鞘複合比率、芯鞘ポリマー粘度、延伸工程等で好ましく制御することができる。
【0027】
本発明の鞘部に使用するポリアミドチップは、硫酸相対粘度にて2.3以上3.3以下とする必要がある。好ましくは、2.6以上3.3以下である。かかる範囲とすることにより、鞘部のポリアミドに適切な延伸を加えることが可能となる。硫酸相対粘度が2.3以上であると、実用可能な原糸強度が得られるばかりか、最適な延伸が加わるため、鞘部のポリアミドの結晶化が進み、α型結晶配向パラメーターが適切な値となり、染色堅牢度が向上するため、好ましい。一方、硫酸相対粘度が3.3以下であると、紡糸に適した溶融粘度であるため、芯部の高い吸湿性能を有する熱可塑性ポリマーに適した紡糸温度にて生産が可能であり、好ましい。
【0028】
本発明の芯部に使用する高い吸湿性能を有する熱可塑性ポリマーのチップは、オルトクロロフェノール相対粘度にて1.2以上2.0以下であることが好ましい。オルトクロロフェノール相対粘度が1.2以上であると、鞘部に最適な延伸が加わり、鞘部のポリアミドの結晶化が進み、α型結晶配向パラメーターが適切な値となり、糸切れや毛羽が発生し難くなり好ましい。一方、オルトクロロフェノール相対粘度が2.0以下であると、過度な延伸が芯部に加わらず、鞘部のポリアミドの結晶化が進み、α型結晶配向パラメーターが適切な値となり、染色堅牢度が向上し好ましい。
【0029】
延伸工程において、引き取りローラーによって引き取られる糸条の速度(紡糸速度)に、引き取りローラーと延伸ローラーの周速度比の値である延伸倍率の積が、3300m/min以上4500m/min以下となるように紡糸条件を設定することが好ましい。さらに好ましくは3500m/min以上4500m/min以下、さらに好ましくは4000m/min以上4500m/min以下である。この数値は口金より吐出されたポリマーが、口金吐出線速度から引き取りローラーの周速度まで、さらに引き取りローラーの周速度から延伸ローラーの周速度まで延伸される総延伸量を表している。かかる範囲とすることにより、鞘部のポリアミドに適切な延伸を加えることが可能となる。3300m/min以上であると鞘部のポリアミドの結晶化が進み、染色堅牢度が向上するとともに、芯部の高い吸湿性能を有する熱可塑性ポリマーの結晶化を抑制できるため、制電性能が向上する。一方、4500m/min以下であると鞘部のポリアミドの結晶化が適度に進行し、所定の結晶化度とすることが可能になるとともに、製糸の際に糸切れや毛羽の発生が少なく、好ましい。
【0030】
給油工程においては、給油装置によって付与される紡糸油剤は非含水系油剤であることが好ましい。芯部の熱可塑性ポリマーは、吸湿性能に優れるため、非含水系油剤を付与した場合、徐々に空気中の水分を吸収するため、膨潤が発生し難く、安定した巻き取りが可能となるので好ましい。
【0031】
以上のようにして得られるポリアミド芯鞘複合繊維の構造体としては前述したものに限らず、フィラメント、ステープル、不織布等でも良く、用途によって選択される。
【0032】
本発明のポリアミド芯鞘複合繊維は、布帛、衣料品に好ましく用いられ、布帛形態としては、織物、編物、不織布など目的に応じて選択でき、衣料も含まれる。また、衣料品としては、インナーウエア、スポーツウエアなどの各種衣料用製品とすることができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお実施例における特性値の測定法等は次のとおりである。
【0034】
(1)硫酸相対粘度
試料0.25gを濃度98wt%の硫酸100mlに対して1gになるように溶解し、オストワルド型粘度計を用いて25℃での流下時間(T1)を測定した。引き続き、濃度98wt%の硫酸の流下時間(T2)を測定した。T2に対するT1の比、すなわちT1/T2を硫酸相対粘度とした。
【0035】
(2)オルトクロロフェノール相対粘度(OCP相対粘度)
試料0.5gをオルトクロロフェノール100mlに対して1gになるように溶解し、オストワルド型粘度計を用いて25℃での流下時間(T1)を測定した。引き続き、オルトクロロフェノールの流下時間(T2)を測定した。T2に対するT1の比、すなわちT1/T2を硫酸相対粘度とした。
【0036】
(3)繊度
1.125m/周の検尺器に繊維試料をセットし、200回転させて、ループ状かせを作成し、熱風乾燥機にて乾燥(105±2℃×60分)した後、天秤にてかせ質量を量り、公定水分率を乗じた値から繊度を算出した。なお、芯鞘複合繊維の公定水分率は、4.5%とした。
【0037】
(4)強度・伸度
繊維試料を、オリエンテック(株)製“TENSILON”(登録商標)、UCT−100でJIS L1013(化学繊維フィラメント糸試験方法、2010年)に示される定速伸長条件で測定した。伸度は、引張強さ−伸び曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。また、強度は、最大強力を繊度で除した値を強度とした。測定は10回行い、平均値を強度および伸度とした。
【0038】
(5)α晶配向パラメーター
繊維試料を、レーザーラマン分光法にて測定し、1120cm−1付近に認められるナイロンのα晶に由来するラマンバンドの平行偏光での強度比(I1120)平行)と、垂直偏光での強度比(I1120)垂直)の比をとることで、配向度評価のパラメーターとした。また、配向に対する異方性が小さいCH変角バンド(1440cm−1付近)のラマンバンド強度を基準とし、各偏光条件(平行/垂直)の散乱強度を規格化した。
α晶配向パラメーター=(I1120/I1440)平行/(I1120/I1440)垂直
なお、配向測定用の試料は樹脂包埋後(ビスフェノール系エポキシ樹脂、24時間硬化)、ミクロトームにより切片化した。切片厚みは2.0μmとした。切片試料は切断面が楕円形になるように繊維軸から僅かに傾けて切断し、楕円形の短軸の厚みが一定厚になる箇所を選択して測定した。測定は顕微モードで行い、試料位置におけるレーザーのスポット径は1μmである。 芯、鞘層中心部の配向性解析を行い、配向の測定は偏光条件下で行った。偏光方向が繊維軸と一致する場合を平行条件、直行する場合を垂直条件として、それぞれ得られるラマンバンド強度の比から配向の程度を評価した。なお、各測定点につきn=3の測定を行った。詳細条件を以下に示す。
レーザーラマン分光法
装置:T−64000(Joobin Yvon/愛宕物産)
条件:
測定モード;顕微ラマン
対物レンズ;×100
ビーム径;1μm
光源;Ar+レーザー/514.5nm
レーザーパワー;50mW
回折格子;Single 600gr/mm
スリット;100μm
検出器;CCD/Jobin Yvon 1024×256 。
【0039】
(6)鞘部ポリマーチップのアミノ末端基濃度
試料1gを50mLのフェノール/エタノール混合溶液(フェノール/エタノール=80/20)に、30℃で振とう溶解させて溶液とし、この溶液を0.02Nの塩酸で中和滴定し要した0.02N塩酸量を求めた。また、上記フェノール/エタノール混合溶媒(上記と同量)のみを0.02N塩酸で中和滴定し要した0.02N塩酸の量を求める。そしてその差から試料1gあたりのアミノ末端基量を求めた。
【0040】
(7)芯鞘複合繊維の鞘部ポリマーのアミノ末端基濃度
A.鞘部の重量比率測定
パラフィン、ステアリン酸、エチルセルロースからなる包理剤を溶解し、芯鞘複合糸を導入後室温放置により固化させ、包理剤中の原糸を横断面方向に切断したものを東京電子(株)製のCCDカメラ(CS5270)にて繊維横断面を撮影し、その単糸中で任意に選定した10本(単糸数が10以下の場合は全て)の芯鞘複合糸について、三菱電機製のカラービデオプロセッサー(SCT−CP710)にて1500倍でプリントアウトした断面写真を鞘部および芯部に切り抜き、重量測定後、以下の式にて算出した。
鞘部の重量比率=鞘部の重量/(鞘部の重量+芯部の重量)×100
B.芯鞘複合繊維のアミノ末端基濃度
上記(6)記載の方法にてアミノ末端基量を求めた。
C.鞘部ポリマーのアミノ末端基濃度
上記Bで得られたアミノ末端基量を、上記Aで得られた鞘部の重量比率にて除し、算出した。
鞘部ポリマーのアミノ末端基濃度
=芯鞘複合繊維のアミノ末端基量/鞘部の重量比率/100 。
【0041】
(8)芯鞘複合繊維(繊維全体)の無機粒子含有量
繊維試料を、JIS L1013(化学繊維フィラメント糸試験方法、2010年)、8.25項 灰分に準じ測定した。
【0042】
(9)鞘部ポリアミドの無機粒子含有量
上記(8)で得られた無機粒子含有量を、上記(7)−Aで得られた鞘比率にて除し、算出した。
鞘部ポリアミドの無機粒子含有量(重量%)=芯鞘複合繊維の無機粒子含有量/鞘比率/100 。
【0043】
(10)筒編み地作製
A.筒編地の作製
筒編機にて度目が50となるように調整して作製した。繊維の正量繊度が低い場合は、筒編機に給糸する繊維の総繊度が50〜100dtexとなるように適宜合糸し、総繊度が100dtexを超える場合は、筒編機への給糸を1本で行い、前記同様度目が50となるように調整して作製した。
B.筒編み地の精錬
上記Aで得られた筒編み地をノニオン界面活性剤(第一工業製薬社製、ノイゲンSS)2g/l水溶液を編み地1gに対し100ml用意し、60℃にて30分洗浄した後、流水にて20分水洗し、脱水機にて脱水、風乾した。
C.筒編み地の染色
上記A,Bで得られた筒編み地を、以下の染料及び染色助剤を用いて染色した。
酸性染料:Erionyl Blue A−R 2.0質量%
染色助剤:酢酸 1.5%
酸性染料、染色助剤を含む染色浴に常圧98℃設定で45分間染色した後、流水にて20分水洗し、脱水機にて脱水、風乾した。
D.発色性
上記Cにて得られた、染色後の筒編み地の発色性について、以下の4段階で評価した。
◎:均一に全体が濃色に着色
○:均一に全体が中色(淡〜濃色)〜濃色に着色
△:均一に全体が淡色〜中色(淡〜濃色)に着色
×:均一に全体が淡色に着色 。
【0044】
(11)染色堅牢度
染色筒編み地(C)を、JIS L0844(2009)7.1項A法に従い、表7中のA−2条件にて測定した。判定はJIS L0801(2009)10項(a)の視感法に従って、変退色および色落ちについて級判定を実施した。変退色および色落ち判定のいずれも3級以上の場合は染色堅牢度は合格、少なくとも変退色か色落ち判定の1つが2−3級以下の場合は染色堅牢度は不合格とした。
【0045】
(12)制電性
(織物の作製) 該芯鞘複合繊維を経糸、緯糸に用い、経密度188本/2.54cm、緯密度155本/2.54cmに設定し平組織で製織した。得られた生機地を常法に従って、1リットル当たり2gの苛性ソーダ(NaOH)を含む溶液でオープンソーパーにより精練し、シリンダー乾燥機にて120℃で乾燥し、次いで170℃にてプレセット、ジッガー染色機にて染色し、フッ素系樹脂化合物を浸漬(パディング法)、乾燥(120℃)、仕上げセット(175℃)した。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、加熱ロール表面温度180℃、加熱ロール加重147kN、布走行速度20m/min)を織物の両面に1回施し、密度が経210本/2.54cm、緯で160本/2.54cmである織物を得た。
前記織物を、JIS L1094(織物及び編物の帯電性試験方法、2014年)A法(半減期測定法)、B法(摩擦帯電圧測定法)に従い測定した。尚、環境条件は10℃×10%RH、摩擦布は綿(金巾3号)、たて方向で測定した。
摩擦耐電圧が1000V以下の場合、着用時に良好な制電性能が得られると判断した。
【0046】
(13)洗濯後制電性
(12)記載の織物を、JIS L0217(2010)付表1記載の番号103記載の方法にて、繰り返し20回洗濯を実施した後、上記記載の制電性を測定した。
【0047】
(14)織物の引裂強力
(12)記載の織物の引裂強力は、JIS L1096(2010)8.14.1に規定されている引裂強さJIS法D法(湿潤時グラブ法)に準拠して、経緯の両方向において測定し、経緯の引裂強力がそれぞれ6.0N以上の場合、実用に耐えうる強力が得られると判断した。
【0048】
実施例1
(ポリアミド芯鞘複合繊維の製造)
ポリアミド成分がナイロン6、ポリエーテル成分(ポリ(アルキレンオキシド)グリコール)が分子量1500のポリエチレングリコールであり、ポリエーテル成分の構成比率はmol比にて約76%であるポリエーテルエステルアミド共重合体(アルケマ社製、MH1657、オルトクロロフェノール相対粘度:1.69)を芯部とし、硫酸相対粘度が2.71、アミノ末端基量が5.95×10−5mol/gであるナイロン6を鞘部とし、270℃にて溶融し、同心円芯鞘複合用口金から芯/鞘比率(重量部)=5/95になるように紡糸した。なお、アミノ末端基量は重合時にヘキサメチレンジアミンおよび酢酸にて調整した。
この時、得られる芯鞘複合繊維の総繊度が22dtexとなるようにギヤポンプの回転数を選定し、それぞれ9g/minの吐出量とした。そして糸条冷却装置で糸条を冷却固化し、給油装置により非含水油剤を給油したのち、第1流体交絡ノズル装置で交絡を付与し、第1ロールである引き取りローラーの周速度を2339m/min、第2ロールである延伸ローラーの周速度を4210m/minで延伸、延伸ローラー150℃により熱セットを行い、巻き取り速度を4000m/minで巻き取り、22デシテックス20フィラメントの芯鞘複合繊維を得た。得られた繊維の物性を表1に示す。
(織物の製造)
該芯鞘複合繊維を経糸、緯糸に用い、経密度188本/2.54cm、緯密度155本/2.54cmに設定し平組織で製織した。
【0049】
得られた生機地を常法に従って、1リットル当たり2gの苛性ソーダ(NaOH)を含む溶液でオープンソーパーにより精練し、シリンダー乾燥機にて120℃で乾燥し、次いで170℃にてプレセット、ジッガー染色機にて染色し、フッ素系樹脂化合物を浸漬(パディング法)、乾燥(120℃)、仕上げセット(175℃)した。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、加熱ロール表面温度180℃ 、加熱ロール加重147kN、布走行速度20m/min)を織物の両面に1回施し、密度が経210本/2.54cm、緯で160本/2.54cmである織物を得た。得られた織物について、引裂強力を前記方法で評価した。結果を表1に示す。
得られた織物の引裂強力は、経/緯=7.4N/6.8Nであり、実用に耐えうる強力を有し、10℃×10%RH環境下での摩擦帯電圧は420V、洗濯後摩擦帯電圧は420Vと優れた制電性能を有した。また、得られた筒編みの洗濯堅牢度変退色および汚染判定いずれも4−5級と極めて良好であった。すなわち、実使用に耐えうる洗濯耐久性を持った制電性能に優れた快適衣料が得られる。
【0050】
実施例2
芯/鞘比率(重量部)=10/90になるように紡糸した以外、実施例1と同様の方法で22デシテックス20フィラメントの芯鞘複合繊維と密度が経210本/2.54cm、緯で160本/2.54cmである織物を得た。得られた繊維と織物の物性を表1に示す。
得られた織物の引裂強力は、経/緯=7.2N/6.5Nであり、実用に耐えうる強力を有し、10℃×10%RH環境下での摩擦帯電圧は570V、洗濯後摩擦帯電圧は570Vと優れた制電性能を有した。また、得られた筒編みの洗濯堅牢度変退色および汚染判定いずれも4級と良好であった。すなわち、実使用に耐えうる洗濯耐久性を持った制電性能に優れた快適衣料が得られる。
【0051】
実施例3
芯/鞘比率(重量部)=15/85になるように紡糸した以外、実施例1と同様の方法で22デシテックス20フィラメントの芯鞘複合繊維と密度が経210本/2.54cm、緯で160本/2.54cmである織物を得た。得られた繊維と織物の物性を表1に示す。
得られた織物の引裂強力は、経/緯=6.8N/6.2Nであり、実用に耐えうる強力を有し、10℃×10%RH環境下での摩擦帯電圧は650V、洗濯後摩擦帯電圧は650Vと優れた制電性能を有した。また、得られた筒編みの洗濯堅牢度変退色および汚染判定いずれも4級と良好であった。すなわち、実使用に耐えうる洗濯耐久性を持った制電性能に優れた快適衣料が得られる。
【0052】
実施例4
硫酸相対粘度が2.40、アミノ末端基量が5.30×10−5mol/gであるナイロン6を鞘部成分としたこと、第1ロールである引き取りローラーの周速度を2476m/minとしたこと以外、実施例1と同様の方法で22デシテックス20フィラメントの芯鞘複合繊維と密度が経210本/2.54cm、緯で160本/2.54cmである織物を得た。得られた繊維と織物の物性を表1に示す。
得られた織物の引裂強力は、経/緯=6.9N/6.3Nであり、実用に耐えうる強力を有し、10℃×10%RH環境下での摩擦帯電圧は500V、洗濯後摩擦帯電圧は500Vと優れた制電性能を有した。また、得られた筒編みの洗濯堅牢度変退色および汚染判定いずれも3級と良好であった。すなわち、実使用に耐えうる洗濯耐久性を持った制電性能に優れた快適衣料が得られる。
【0053】
実施例5
硫酸相対粘度が3.30、アミノ末端基量が4.80×10−5mol/gであるナイロン6を鞘部成分としたこと、第1ロールである引き取りローラーの周速度を2276m/minとしたこと以外、実施例1と同様の方法で22デシテックス20フィラメントの芯鞘複合繊維と密度が経210本/2.54cm、緯で160本/2.54cmである織物を得た。得られた繊維と織物の物性を表1に示す。
得られた織物の引裂強力は、経/緯=7.6N/7.1Nであり、実用に耐えうる強力を有し、10℃×10%RH環境下での摩擦帯電圧は450V、洗濯後摩擦帯電圧は450Vと優れた制電性能を有した。また、得られた筒編みの洗濯堅牢度変退色および汚染判定いずれも4−5級と極めて良好であった。すなわち、実使用に耐えうる洗濯耐久性を持った制電性能に優れた快適衣料が得られる。
【0054】
実施例6
酸化チタン3.2重量%、硫酸相対粘度が2.71、アミノ末端基量が6.08×10−5mol/gであるナイロン6チップを鞘部成分としたこと、第1ロールである引き取りローラーの周速度を2460m/minとしたこと以外、実施例1と同様の方法で22デシテックス20フィラメントの芯鞘複合繊維と密度が経210本/2.54cm、緯で160本/2.54cmである織物を得た。得られた繊維と織物の物性を表1に示す。
得られた織物の引裂強力は、経/緯=6.7N/6.3Nであり、実用に耐えうる強力を有し、10℃×10%RH環境下での摩擦帯電圧は470V、洗濯後摩擦帯電圧は470Vと優れた制電性能を有した。また、得られた筒編みの洗濯堅牢度変退色および汚染判定いずれも4−5級と極めて良好であり、かつ審美性にも優れていた。すなわち、実使用に耐えうる洗濯耐久性を持った制電性能に優れた快適衣料が得られる。
【0055】
実施例7
硫酸相対粘度が2.69、アミノ末端基量が3.00×10−5mol/gであるナイロン610チップを鞘部成分としたこと以外、実施例1と同様の方法で22デシテックス20フィラメントの芯鞘複合繊維と密度が経210本/2.54cm、緯で160本/2.54cmである織物を得た。得られた繊維と織物の物性を表1に示す。
得られた織物の引裂強力は、経/緯=7.6N/7.2Nであり、実用に耐えうる強力を有し、10℃×10%RH環境下での摩擦帯電圧は770V、洗濯後摩擦帯電圧は770Vと優れた制電性能を有した。また、得られた筒編みの洗濯堅牢度変退色および汚染判定いずれも4級と良好であった。すなわち、実使用に耐えうる洗濯耐久性を持った制電性能に優れた快適衣料が得られる。
【0056】
比較例1
芯/鞘比率(重量部)=50/50になるように紡糸したこと、第1ロールである引き取りローラーの周速度を3368m/minとしたこと以外、実施例1と同様の方法で22デシテックス20フィラメントの芯鞘複合繊維と密度が経210本/2.54cm、緯で160本/2.54cmである織物を得た。得られた繊維と織物の物性を表2に示す。
得られた織物の引裂強力は、経/緯=3.5N/2.8Nであり、実用に耐えうる強力を有しておらず、10℃×10%RH環境下での摩擦帯電圧は1200V、洗濯後摩擦帯電圧は1200Vと制電性能に劣っていた。また、得られた筒編みの洗濯堅牢度変退色および汚染判定いずれも4級と良好であった。すなわち、得られた織物は、実用に耐えうる強力を有しておらず、低温低湿度の環境下において着用時のまつわり付きやほこり付着しやすく快適性に劣ることがわかる。
【0057】
比較例2
硫酸相対粘度が2.14、アミノ末端基量が4.70×10−5mol/gであるナイロン6チップを鞘部成分としたこと、芯/鞘比率(重量部)=10/90になるように紡糸したこと、第1ロールである引き取りローラーの周速度を3368m/minとしたこと以外、実施例1と同様の方法で22デシテックス20フィラメントの芯鞘複合繊維と密度が経210本/2.54cm、緯で160本/2.54cmである織物を得た。得られた繊維と織物の物性を表2に示す。
得られた織物の引裂強力は、経/緯=3.0N/2.5Nであり、実用に耐えうる強力を有しておらず、10℃×10%RH環境下での摩擦帯電圧は700V、洗濯後摩擦帯電圧は1100Vと洗濯後の制電性能に劣っていた。また、得られた筒編みの洗濯堅牢度変退色および汚染判定いずれも2−3級で、染色堅牢性に劣っていた。すなわち、得られた織物は、実用に耐えうる強力および洗濯耐久性(制電性、染色性)を有しておらず、低温低湿度の環境下において着用時のまつわり付きやほこり付着しやすく快適性に劣ることがわかる。
【0058】
比較例3
硫酸相対粘度が3.45、アミノ末端基量が3.35×10−5mol/gであるナイロン6チップを鞘部成分としたこと、芯/鞘比率(重量部)=15/85になるように紡糸したこと以外、実施例1と同様の方法で22デシテックス20フィラメントの芯鞘複合繊維と密度が経210本/2.54cm、緯で160本/2.54cmである織物を得た。得られた繊維と織物の物性を表2に示す。
得られた織物の引裂強力は、経/緯=6.7N/6.1Nであり、実用に耐えうる強力を有していた。また、10℃×10%RH環境下での摩擦帯電圧は1100V、洗濯後摩擦帯電圧は1600Vと制電性能に劣っていた。また、得られた筒編みの洗濯堅牢度変退色および汚染判定いずれも2−3級で、染色堅牢性に劣っていた。すなわち、得られた織物は、実用に耐えうる洗濯耐久性(制電性、染色性)を有しておらず、低温低湿度の環境下において着用時のまつわり付きやほこり付着しやすく快適性に劣ることがわかる。
【0059】
比較例4
硫酸相対粘度が2.80、アミノ末端基量が2.45×10−5mol/gであるナイロン610チップを鞘部成分としたこと、芯/鞘比率(重量部)=50/50になるように紡糸したこと、第1ロールである引き取りローラーの周速度を3368m/minとしたこと以外、実施例1と同様の方法で22デシテックス20フィラメントの芯鞘複合繊維と密度が経210本/2.54cm、緯で160本/2.54cmである織物を得た。得られた繊維と織物の物性を表2に示す。
得られた織物の引裂強力は、経/緯=3.7N/3.0Nであり、実用に耐えうる強力を有しておらず、10℃×10%RH環境下での摩擦帯電圧は1300V、洗濯後摩擦帯電圧は1300Vと制電性能に劣っていた。また、得られた筒編みの洗濯堅牢度変退色および汚染判定いずれも2−3級で、染色堅牢性に劣っていた。すなわち、得られた織物は、実用に耐えうる強力および洗濯耐久性(制電性、染色性)を有しておらず、低温低湿度の環境下において着用時のまつわり付きやほこり付着しやすく快適性に劣ることがわかる。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の芯鞘複合繊維は、高い制電性能を有する快適性と、実使用に耐えうる強力と制電性能の洗濯耐久性と染色堅牢性を有する芯鞘複合繊維を提供することができる。そのため、インナーウエア、スポーツウエアとして好適であるが、その応用範囲は、これらに限られるものではない。