(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高圧法ポリエチレン(A)と、下記の条件(B−1)〜(B−5)を満足することを特徴とするエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を含有することを特徴とするポリエチレン系樹脂組成物。
(B−1)MFRが0.001g/10分を超え、20g/10分以下である
(B−2)密度が0.895〜0.940g/cm3である
(B−3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布Mw/Mnが3.0〜7.0である
(B−4)示差屈折計、粘度検出器および光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数g’の分子量10万から100万の間での最低値(gc)が0.40〜0.85である
(B−5)クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち、分子量が重量平均分子量以上の成分の割合(W2)及び、前記積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち、分子量が重量平均分子量未満の成分の割合(W3)の和(W2+W3)が、40重量%を超え、80重量%未満である
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のα−オレフィンは、炭素数が3〜10であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリエチレン樹脂組成物。
該樹脂組成物中の前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の含有量が1〜59重量%、前記高圧法ポリエチレン(A)の含有量が41〜99重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリエチレン系樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を項目毎に、詳細に説明する。
[1] ポリエチレン系樹脂組成物の構成成分
1.高圧法ポリエチレン(A)
本発明で用いる高圧法ポリエチレン(以下、「HPLD」ともいう。)(A)は、高圧ラジカル重合法によってエチレンを重合することによって製造される、多数の枝分かれ状の長鎖分岐を有するポリエチレンであり、例えば、エチレンモノマーを、圧力500〜3500Kg/cm
2Gの範囲、重合温度は100〜400℃の範囲、重合開始剤として酸素または有機過酸化物を用いたラジカル重合で、オートクレーブ型あるいはチューブラー型反応器にて製造することができる。高圧法低密度ポリエチレン、または高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンとも呼称される。高圧法低密度ポリエチレンは、枝分かれ状の長鎖分岐を多数有することから、本願発明で定義するgcを測定すると、約0.26以下の低い値が検出される。
本発明における高圧法ポリエチレン(A)の物性としては特に規定されず、従来公知の高圧法低密度ポリエチレンを用いることができるが、その中でも、下記に説明する条件(A−1)〜(A−3)を全て満たす高圧法ポリエチレンを用いると好ましい。なお、用いられる高圧法ポリエチレン(A)は1種類に限られず、2種類以上用いてもよい。
【0019】
1−1.条件(A−1)
高圧法ポリエチレン(A)のメルトフローレイト(MFR
A)は0.1〜20.0g/10分であり、0.1〜5.0g/10分が好ましい。MFR
Aが低過ぎると、成形加工性が劣り、一方、MFR
Aが高過ぎると、耐衝撃性、機械的強度等が低下する恐れがある。
ここで、高圧法ポリエチレン(A)のMFR
Aは、JIS K7210の「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)およびメルトボリュームレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定したときの値をいう。
【0020】
1−2.条件(A−2)
また、高圧法ポリエチレン(A)の密度
Aは、0.910〜0.940g/cm
3であり、0.915〜0.935g/cm
3が好ましく、0.915〜0.930g/cm
3がより好ましい。密度
Aがこの範囲内にあると、耐衝撃性と剛性のバランスが優れる。また、密度
Aが低過ぎると、剛性が低下する。一方、密度
Aが高過ぎると、耐衝撃性を損なう恐れがある。
【0021】
ここで、高圧法ポリエチレン(A)の密度
Aは、以下の方法で測定したときの値をいう。
ペレットを熱プレスして2mm厚のプレスシートを作成し、該シートを1000ml容量のビーカーに入れ蒸留水を満たし、時計皿で蓋をしてマントルヒーターで加熱した。蒸留水が沸騰してから60分間煮沸後、ビーカーを木製台の上に置き放冷した。この時間は60分以下にならないように調整した。また、試験シートは、ビーカーおよび水面に接しないように水中のほぼ中央部に浸漬した。シートを23℃、湿度50%の条件で、16時間以上24時間以内でアニーリングを行った後、縦横2mmになるように打ち抜き、試験温度23℃で、JIS K7112の「プラスチック−非発泡プラスチックの密度および比重の測定方法」に準拠して、測定した。
【0022】
1−3.条件(A−3)
さらに、高圧法ポリエチレン(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比[Mw/Mn]
A(以下、Q値ともいう。)は2.0〜10.0である。Q値が2.0未満の場合、高圧法ポリエチレン(A)と他の重合体成分が混ざり難い可能性がある。Q値が10.0を超えると、耐衝撃性の改良効果が充分でなく、耐衝撃性と剛性のバランスが損なわれる。耐衝撃性と剛性のバランス上、Q値の上限は、好ましくは7.5以下、より好ましくは5.0以下である。Q値の下限は、好ましくは2.3以上、より好ましくは2.5以上である。
なお、高圧法ポリエチレン(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比[Mw/Mn]
Aは、以下の条件(以下、「分子量分布の測定方法」と言うこともある)で測定した時の値をいう。Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で定義されるものである。
【0023】
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
【0024】
なお、GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、
図1に例示されるように行う。
【0025】
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)
本発明のポリエチレン樹脂組成物に用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、エチレンと一種以上のα−オレフィンとの共重合体であって、特殊な長鎖分岐構造を有するエチレン・α−オレフィン共重合体である。
すなわち、本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、下記に説明する条件(B−1)〜(B−5)を全て満たすことを必須とする。好ましくは更に条件(B−6)、(B−7)、(B−8)又は(B−9)を満たす。すなわち、特定の、比較的低いMFR(B−1)と比較的低い密度(B−2)において、分子量分布が狭く(B−3)、更に適切な範囲の長鎖分岐が導入されており(B−4)、比較的狭い逆コモノマー組成分布(B−5)を有する、従来市販等されていた重合体には見られない新しい特徴を有する重合体である。
【0026】
2−1.条件(B−1)MFR
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、0.001g/10分以上20g/10分以下である。その中でも、1つの好ましい態様は、0.1g/10分を超え、10g/10分以下、好ましくは0.1g/10分を超え、5.0g/10分以下、より好ましくは0.1g/10分を超え、2.0g/10分以下である共重合体が挙げられる。
MFRがこの範囲にあると、フィルムに加工する際の加工特性や加工したフィルムの衝撃強度に優れるとともに、両者のバランスに優れ、かつ比較的容易な製造工程によって該共重合体を得ることができる。
一方、他の好ましい態様としては、MFRが、0.001g/10分以上0.1g/10分以下のエチレン・α−オレフィン共重合体が挙げられる。好ましくは、0.005〜0.1g/10分、更に好ましくは0.009〜0.09g/10分である。
MFRがこの範囲にあると、該共重合体をブレンドしたフィルムの衝撃強度と剛性のバランスにおいて、格段に優れた効果を奏することができる。
MFRが低すぎると、製造が困難であり、成形加工性等の点で好ましくない場合があり、MFRが大きすぎると、フィルムに加工する際の成形加工性が悪化し加工したフィルムの衝撃強度が十分発現し難いので好ましくない。
なお、本発明で、エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、JIS K7210の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定したときの値をいう。
MFRの調整は、エチレン重合中に共存させる連鎖移動剤(水素等)の量を変化させるか、重合温度を変化させることによって、調整することができ、水素の量を増加させる又は重合温度を高くすることにより、大きくすることができる。
【0027】
2−2.条件(B−2)密度
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、0.895〜0.940g/cm
3であり、好ましく0.898g/cm
3以上、0.934g/cm
3未満、より好ましくは0.900〜0.930g/cm
3、更にこのましくは0.910〜0.930g/cm
3、特に好ましくは0.915〜0.930g/cm
3である。
密度が0.895g/cm
3未満ではポリオレフィン系樹脂の剛性が低下し、製品が柔らか過ぎて、必要以上に肉厚な設計を迫られるので好ましくない。また、ベトツキがひどくて取り扱いが困難となるなどのため好ましくない。また、密度が0.940g/cm
3より大きいと加工したフィルムの衝撃強度が十分発現し難いので好ましくない。
本明細書において、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、JIS K7112(1999年版):A法(水中置換法)により測定することができる。
密度は、エチレン・α−オレフィンの重合時のα−オレフィンの量により調整することができる。
【0028】
2−3.条件(B−3)分子量分布
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、3.0〜7.0、好ましくは3.0〜5.5、更に好ましくは3.2〜5.5、より好ましくは3.2以上5.3未満、特に好ましくは3.2以上、5.1未満、特に好ましくは3.3〜5.0である。Mw/Mnが低すぎると、押出成形時の加工性に劣り、メルトフラクチャー等の外観不良の原因となる為、避けるべきである。
Mw/Mnが大きすぎると該ポリエチレン系樹脂組成物やその成形体の衝撃強度の低下につながる。また、ベトツキしやすくなるので好ましくない。
【0029】
なお、本発明で、エチレン・α−オレフィン共重合体のMwやMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したものをいう。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式[η]=K×M
αは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10
−4、α=0.7
PE:K=3.92×10
−4、α=0.733
【0030】
なお、GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、
図1に例示されるように行う。
分子量分布(Mw/Mn)は、主に、重合触媒及び重合条件を選択することにより、所定の範囲とすることができ、また、異なる分子量の複数成分を混合することにより、所定の範囲とすることができる。
【0031】
2−4.条件(B−4)分岐指数gc
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、上記条件(B−1)〜(B−3)に加えて更に、示差屈折計、粘度検出器及び光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)が、0.40〜0.85、好ましくは0.45〜0.80、更に好ましくは0.45〜0.77、特に好ましくは0.45〜0.75である。g
C値が0.85より大きいと成形加工性が十分に発現しないので好ましくない。g
C値が0.40より小さいと、該ポリエチレン系樹脂組成物の成形加工性は向上するが、衝撃強度が低下したり、透明性が悪化したりするので好ましくない。
なお、本発明で、エチレン・α−オレフィン共重合体のg
C値は、下記のGPC−VIS測定から算出する分子量分布曲線や分岐指数(g’)を用いた長鎖分岐量の評価手法である。
【0032】
[GPC−VISによる分岐構造解析]
示差屈折計(RI)及び粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いた。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いることができる。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続する。移動相溶媒は、1,2,4−trichlorobenzene(酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。流量は1mL/分である。カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いることができる。カラム、試料注入部及び各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとし、注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。MALLSから得られる絶対分子量(M)、慣性二乗半径(Rg)及びViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行うことができる。
【0033】
参考文献:
1.Developments in polymer characterization,vol.4.Essex:Applied Science;1984.Chapter1.
2.Polymer,45,6495−6505(2004)
3.Macromolecules,33,2424−2436(2000)
4.Macromolecules,33,6945−6952(2000)
【0034】
[分岐指数(g
C)等の算出]
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度(ηbranch)と、別途、線形ポリマーを測定して得られる極限粘度(ηlin)との比(ηbranch/ηlin)として算出する。
ポリマー分子に長鎖分岐が導入されると、同じ分子量の線形のポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると極限粘度が小さくなることから、長鎖分岐が導入されるに従い同じ分子量の線形ポリマーの極限粘度(ηlin)に対する分岐ポリマーの極限粘度(ηbranch)の比(ηbranch/ηlin)は小さくなっていく。したがって分岐指数(g’=ηbranch/ηlin)が1より小さい値になる場合には分岐が導入されていることを意味し、その値が小さくなるに従い導入されている長鎖分岐が増大していくことを意味する。特に本発明では、MALLSから得られる絶対分子量として、分子量10万から100万における上記g’の最低値を、g
Cとして算出する。
図2に上記GPC−VISによる解析結果の一例を示した。
図2は、分子量(M)における分岐指数(g’)を表す。ここで、線形ポリマーとしては、直鎖ポリエチレンStandard Reference Material 1475a(National Institute of Standards & Technology)を用いることができる。
分岐指数g’の分子量10万から100万の間での最低値(gc)は、主に、重合触媒及び重合条件を選択することにより、所定の範囲とすることができ、好ましくは、特定のメタロセン触媒を使用することにより、所定の範囲とすることができる。
【0035】
2−5.条件(B−5)W
2+W
3
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、上記条件(B−1)〜(B−4)に加えて更に、(B−5)クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合(W
2)及び積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合(W
3)の和(W
2+W
3)が、40重量%を超え、80重量%未満であることが挙げられる。さらに好ましくは40重量%を超え、56重量%未満である範囲が挙げられる。特に好ましくは43重量%を超え、56重量%未満、更に好適には45重量%を超え、56重量%未満であることが好ましい。
クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から得られる上記のW
1 等の数値は、共重合体全体中に含まれる個々のポリマーの、コモノマー量と分子量の分布を総合して指標する“コモノマー組成分布”を示すために用いられる手法である。すなわち、コモノマーの量が多く分子量が小さいポリマー(W
1)、コモノマーの量が多く分子量が大きいポリマー(W
2)、コモノマーの量が少なく分子量が小さいポリマー(W
3)、コモノマーの量が少なく分子量が大きいポリマー(W
4)が、共重合体全体中に占める割合を示している。
図6にW
1〜W
4についての概略図を示す。
W
2+W
3値が小さすぎると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるポリオレフィン系樹脂の衝撃強度向上に効果的に作用する低密度高分子量成分の割合が減少したり、該エチレン・α−オレフィン共重合体の剛性向上に効果的に作用する高密度低分子量成分が減少したりするので好ましくない。一方、W
2+W
3値が大きすぎると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる該高密度低分子量成分と該低密度高分子量成分の含有量のバランスが崩れ、透明性の悪化やゲルが発生したりするので好ましくない。なお、特に、(B−5’)W
2+W
3が40重量%を超え、56重量%未満である範囲のエチレン・α−オレフィン共重合体は、剛性と衝撃強度の改良効果において顕著な効果を示すため好ましい。
【0036】
[CFCの測定条件]
クロス分別クロマトグラフィー(CFC)は、結晶性分別を行う昇温溶出分別(TREF)部と分子量分別を行うゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)部とから成る。
このCFCを用いた分析は、次のようにして行われる。
まず、ポリマーサンプルを0.5mg/mLのBHTを含むオルトジクロロベンゼン(ODCB)に140℃で完全に溶解した後、この溶液を装置のサンプルループを経て140℃に保持されたTREFカラム(不活性ガラスビーズ担体が充填されたカラム)に注入し、所定の第1溶出温度まで徐々に冷却しポリマーサンプルを結晶化させる。所定の温度で30分保持した後、ODCBをTREFカラムに通液することにより、溶出成分がGPC部に注入されて分子量分別が行われ、赤外検出器(FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器、測定波長3.42μm)によりクロマトグラムが得られる。その間、TREF部では次の溶出温度に昇温され、第1溶出温度のクロマトグラムが得られた後、第2溶出温度での溶出成分がGPC部に注入される。以下、同様の操作を繰り返すことにより、各溶出温度での溶出成分のクロマトグラムが得られる。
【0037】
なお、CFCの測定条件は、以下の通りである。
装置:ダイヤインスツルメンツ社製CFC−T102L
GPCカラム:昭和電工社製AD−806MS(3本を直列に接続)
溶媒:ODCB
サンプル濃度:3mg/mL
注入量:0.4mL
結晶化速度:1℃/分
溶媒流速:1mL/分
GPC測定時間:34分
GPC測定後安定時間:5分
溶出温度:0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140
【0038】
[データ解析]
測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムから、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)が求められる。
さらに、溶出温度に対する積分溶出曲線が計算される。この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が求められる。
また、各クロマトグラムから、次の手順により分子量分布が求められる。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式[η]=K×M
αは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10
−4、α=0.7
PE:K=3.92×10
−4、α=0.733
なお、第1溶出温度でのクロマトグラムでは、溶媒に添加したBHTによるピークと溶出成分の低分子量側とが重なる場合があるが、その際は、
図1のようにベースラインを引き分子量分布を求める区間を定める。
さらに、下記の表1のように、各溶出温度における溶出割合(表中のwt%)と重量平均分子量(表中のMw)からwhole(全体)の重量平均分子量を求める。
【0040】
また、各溶出温度における分子量分布及び溶出量から、文献(S.Nakano,Y.Goto,”Development of automatic Cross Fractionation:Combination of Crystallizability Fractionation and Molecular Weight Fractionation”,J.Appl.Polym.Sci.,vol.26,pp.4217−4231(1981))の方法に従って、溶出温度と分子量に関する溶出量を等高線として示すグラフ(等高線図)を得る。
上記の等高線図を用いて、以下の成分量を求める。
W
1:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合。
W
2:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合。
W
3:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合。
W
4:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合。
なお、W
1+W
2+W
3+W
4=100である。
W
2+W
3の値は、主に、重合触媒及び重合条件を選択することにより、所定の範囲とすることができ、好ましくは、特定のメタロセン触媒を使用することにより、所定の範囲とすることができる。
【0041】
2−6.条件(B−6)W
2+W
4
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、(2−5)で前記したW
2及びW
4の和(W
2+W
4)が、25重量%を超え、50重量%未満、好ましくは29重量%を超え、50重量%未満、より好ましくは29重量%を超え、45重量%未満、更に好ましくは30〜43重量%、特に好ましくは30〜42重量%である。W
2+W
4が25重量%以下であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる衝撃強度向上に効果的に作用する高分子量成分が減少するので好ましくなかったり、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる成型加工性向上に特に効果的に作用する高分子量の長鎖分岐成分が減少するので好ましくなかったり、それら高分子量成分や長鎖分岐成分の割合が減少するので好ましくない。一方、W
2+W
4値が50重量%以上であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる高分子量成分や高分子量の長鎖分岐成分の割合が多いため、透明性の悪化やゲルが発生したりするので好ましくない。
【0042】
2−7.条件(B−7)W
2−W
4
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、(2−6)で前記したW
2とW
4の差(W
2−W
4)が、0重量%を超え、20重量%未満、好ましくは0重量%を超え、15重量%未満、より好ましくは1重量%を超え、15重量%未満、更に好ましくは2重量%を超え、14重量%未満、特に好ましくは2重量%を超え、13重量%未満である。W
2−W
4が0重量%以下であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる衝撃強度向上に特に効果的に作用する低密度高分子量成分が減少するので好ましくない。一方、W
2−W
4値が20重量%以上であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる高密度高分子量成分と低密度高分子量成分の含有量のバランスが崩れ、透明性の悪化やゲルが発生したりするので好ましくない。
【0043】
2−8.条件(B−8)X
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、好ましくは、昇温溶出分別(TREF)により85℃以上で溶出する成分の割合(X)が2〜15重量%、好ましくは3〜14重量%、更に好ましくは4〜13重量%である。X値が15重量%より大きいと、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる衝撃強度向上に効果的に作用する低密度成分の割合が減少してしまうので好ましくない。X値が2重量%より小さいと、剛性が悪化したりする場合があるので好ましくない場合がある。
[TREFの測定条件]
試料を140℃でオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)に溶解し、溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却し、更に続いて1℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、20分間保持する。その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。この時、85℃から140℃までの間に溶出する成分量をX(単位wt%)とする。
【0044】
使用装置は、下記のとおりである。
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000
(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ、4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル、光路長1.5mm、窓形状2φ×4mm長丸、合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
測定条件
溶媒:オルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
【0045】
2−9.溶融張力(MT)
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、溶融張力(メルトテンション:MT)が高く、好ましくは40mN以上である。MTが40mN未満では、成形加工特性、特にTダイ成形やインフレーション成形時の安定性が低下する傾向がある。
MTは、溶融させたエチレン・α−オレフィン共重合体を一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定される値であり、以下の条件において測定できる。試験機として、東洋精機社製キャピログラフ1Bを使用し、オリフィス:L/D=8.0/2.095、流入角フラット、設定温度:190℃、ピストンスピード:10mm/分、引取り速度4.0m/分の条件にて測定される。
MTは、特に、ポリエチレンの分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)を適宜選択することにより調製することが可能である。
【0046】
2−10.エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の組成
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体である。ここで用いられる共重合成分であるα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1等が挙げられる。また、これらα−オレフィンは1種のみでもよく、また2種以上が併用されていてもよい。これらのうち、より好ましいα−オレフィンは炭素数3〜8のものであり、具体的にはプロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等が挙げられる。更に好ましいα−オレフィンは炭素数4又は炭素数6のものであり、具体的にはブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1が挙げられる。特に好ましいα−オレフィンは、ヘキセン−1である。
【0047】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体中におけるエチレンとα−オレフィンの割合は、エチレン約75〜99.8重量%、α−オレフィン約0.2〜25重量%であり、好ましくはエチレン約80〜99.6重量%、α−オレフィン約0.4〜20重量%であり、より好ましくはエチレン約82〜99.2重量%、α−オレフィン約0.8〜18重量%であり、更に好ましくはエチレン約85〜99重量%、α−オレフィン約1〜15重量%であり、特に好ましくはエチレン約88〜98重量%、α−オレフィン約2〜12重量%である。エチレン含量がこの範囲内であれば、ポリエチレン系樹脂への改質効果が高い。
共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであっても差し支えない。もちろん、エチレンやα−オレフィン以外のコモノマーを少量使用することも可能であり、この場合、スチレン、4−メチルスチレン、4−ジメチルアミノスチレン等のスチレン類、1,4−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等のジエン類、ノルボルネン、シクロペンテン等の環状化合物、ヘキセノール、ヘキセン酸、オクテン酸メチル等の含酸素化合物類、等の重合性二重結合を有する化合物を挙げることができる。ただしジエン類を使用する場合は長鎖分岐構造や分子量分布が上記の条件を満たす範囲内において使用しなくてはいけないことは言うまでもない。
【0048】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)の製法
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、上記の条件を全て満たすように製造して使用される。その製造は、オレフィン重合用触媒を用いてエチレンと上述のα−オレフィンとを共重合する方法によって実施される。
【0049】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体が有する特定の長鎖分岐構造、組成分布構造、MFR、密度を同時に実現するための好適な製造方法例として、以下に説明する特定の触媒成分(X)、(Y)及び(Z)を含むオレフィン重合用触媒を用いる方法を挙げることができる。
成分(X):遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物
成分(Y):成分(X)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物
成分(Z):無機化合物担体
【0050】
3−1.触媒成分(X)
本発明のエチレン・α−オレフィン重合体(B)を製造するのに好ましい触媒成分(X)は、遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物であり、より好ましくは下記の一般式[1]で表されるメタロセン化合物であり、更に好ましくは下記の一般式[2]で表されるメタロセン化合物である。
【0052】
[但し、式[1]中、MはTi、ZrまたはHfのいずれかの遷移金属を示す。A
1はシクロペンタジエニル環(共役五員環)構造を有する配位子を、A
2はインデニル環構造を有する配位子を、Q
1はA
1とA
2を任意の位置で架橋する結合性基を示す。XおよびYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基または炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。]
【0054】
[但し、式[2]中、MはTi、ZrまたはHfのいずれかの遷移金属を示す。Q
1はシクロペンタジエニル環とインデニル環を架橋する結合性基を示す。XおよびYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基または炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。10個のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。]
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を製造するのに特に好ましい触媒成分(X)は、特開2013−227271号公報に記載された一般式(1c)で表されるメタロセン化合物である。
【0056】
[但し、式(1c)中、略号の説明は全て特開2013−227271号公報の記載に従う。すなわち、M
1cは、Ti、ZrまたはHfのいずれかの遷移金属を示す。X
1cおよびX
2cは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基または炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。Q
1cとQ
2cは、各々独立して、炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子を示す。R
1cは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示し、4つのR
1cのうち少なくとも2つが結合してQ
1cおよびQ
2cと一緒に環を形成していてもよい。m
cは、0または1であり、m
cが0の場合、Q
1cは、R
2cを含む共役5員環と直接結合している。R
2cおよびR
4cは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。R
3cは、下記一般式(1−ac)で示される置換アリール基を示す。]
【0057】
【化4】
[但し、式(1−ac)中、Y
1cは、周期表14族、15族または16族の原子を示す。R
5c、R
6c、R
7c、R
8cおよびR
9cは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素若しくは窒素を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示し、R
5c、R
6c、R
7c、R
8cおよびR
9cは隣接する基同士で結合して、それらに結合している原子と一緒に環を形成していてもよい。n
cは、0または1であり、n
cが0の場合、Y
1cに置換基R
5cが存在しない。p
cは、0または1であり、p
cが0の場合、R
7cが結合する炭素原子とR
9cが結合する炭素原子は直接結合している。Y
1cが炭素原子の場合、R
5c、R
6c、R
7c、R
8c、R
9cのうち少なくとも1つは水素原子ではない。]
【0058】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を製造するのに最も好ましい触媒成分(X)は、特開2013−227271号公報に記載された一般式(2c)で表されるメタロセン化合物である。
【0060】
上記の一般式(2c)で示されるメタロセン化合物において、M
1c、X
1c、X
2c、Q
1c、R
1c、R
2cおよびR
4cは、前述の一般式(1c)で示されるメタロセン化合物の説明で示した原子および基と同様な構造を選択することができる。また、R
10cは前述の一般式(1c)で示されるメタロセン化合物の説明で示したR
5c、R
6c、R
7c、R
8c、R
9cの原子および基と同様な構造を選択することができる。
【0061】
上記メタロセン化合物の具体例として、特開2013−227271号公報の表1cの一般式(4c)と表1c−1〜5、および一般式(5c)、(6c)と表1c−6〜9で記載された化合物を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0062】
上記具体例の化合物はジルコニウム化合物またはハフニウム化合物であることが好ましく、ジルコニウム化合物であることが更に好ましい。
【0063】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を製造するのに好ましい触媒成分(X)として、上述の架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物を2種以上用いることもできる。
【0064】
3−2.触媒成分(Y)
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を製造するのに好ましい触媒成分(Y)は、成分(X)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物であり、より好ましくは特開2013−227271号公報[0064]〜[0083]に記載された成分(B)であり、更に好ましくは同[0065]〜[0069]に記載された有機アルミニウムオキシ化合物である。
【0065】
3−3.触媒成分(Z)
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を製造するのに好ましい触媒成分(Z)は、無機化合物担体であり、より好ましくは特開2013−227271号公報[0084]〜[0088]に記載された無機化合物である。この時、無機化合物として好ましいのは該公報[0085]に記載された金属酸化物である。
【0066】
3−4.エチレン・α−オレフィン共重合体(B)重合用触媒の製法
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、上記触媒成分(X)〜(Z)を含むオレフィン重合用触媒を用いてエチレンと上述のα−オレフィンとを共重合する方法によって好適に製造される。本発明の上記触媒成分(X)〜(Z)からオレフィン重合用触媒を得る際の各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下に示す(I)〜(III)の方法が任意に採用可能である。
【0067】
(I)上記遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物である触媒成分(X)と、上記触媒成分(X)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物である触媒成分(Y)とを接触させた後、無機化合物担体である触媒成分(Z)を接触させる。
(II)触媒成分(X)と触媒成分(Z)とを接触させた後、触媒成分(Y)を接触させる。
(III)触媒成分(Y)と触媒成分(Z)とを接触させた後、触媒成分(X)を接触させる。
【0068】
これらの接触方法の中で(I)と(III)が好ましく、さらに(I)が最も好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数は6〜12)、ペンタン、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5〜12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下または非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。この接触は、通常−100℃〜200℃、好ましくは−50℃〜100℃、さらに好ましくは0℃〜50℃の温度にて、5分〜50時間、好ましくは30分〜24時間、さらに好ましくは30分〜12時間で行うことが望ましい。
【0069】
また、触媒成分(X)、触媒成分(Y)および触媒成分(Z)の接触に際しては、上記した通り、ある種の成分が可溶ないしは難溶な芳香族炭化水素溶媒と、ある種の成分が不溶ないしは難溶な脂肪族または脂環族炭化水素溶媒とがいずれも使用可能である。
【0070】
各成分同士の接触反応を段階的に行う場合にあっては、前段で用いた溶媒などを除去することなく、これをそのまま後段の接触反応の溶媒に用いてもよい。また、可溶性溶媒を使用した前段の接触反応後、ある種の成分が不溶もしくは難溶な液状不活性炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素あるいは芳香族炭化水素)を添加して、所望生成物を固形物として回収した後に、あるいは一旦可溶性溶媒の一部または全部を、乾燥等の手段により除去して所望生成物を固形物として取り出した後に、この所望生成物の後段の接触反応を、上記した不活性炭化水素溶媒のいずれかを使用して実施することもできる。本発明では、各成分の接触反応を複数回行うことを妨げない。
【0071】
本発明において、触媒成分(X)、触媒成分(Y)および触媒成分(Z)の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
【0072】
触媒成分(Y)として、有機アルミニウムオキシ化合物を用いる場合、触媒成分(X)中の遷移金属(M)に対する有機アルミニウムオキシ化合物のアルミニウムの原子比(Al/M)は、通常、1〜100,000、好ましくは100〜1000、さらに好ましくは210〜800、特に好ましくは250〜500の範囲が望ましく、また、ボラン化合物やボレート化合物を用いる場合、触媒成分(X)中の遷移金属(M)に対する、ホウ素の原子比(B/M)は、通常、0.01〜100、好ましくは0.1〜50、さらに好ましくは0.2〜10の範囲で選択することが望ましい。さらに、触媒成分(Y)として、有機アルミニウムオキシ化合物と、ボラン化合物、ボレート化合物との混合物を用いる場合にあっては、混合物における各化合物について、遷移金属(M)に対して上記と同様な使用割合で選択することが望ましい。
【0073】
触媒成分(Z)の使用量は、触媒成分(X)中の遷移金属0.0001〜5ミリモル当たり、好ましくは0.001〜0.2ミリモル当たり、さらに好ましくは0.005〜0.1ミリモル当たり、特に好ましくは0.01〜0.04ミリモル当たり1gである。
また、本発明において、触媒成分(Z)1gに対する触媒成分(Y)の金属のモル数の割合は、好ましくは、0.005を超え0.020(モル/g)以下、より好ましくは、0.006を超え〜0.015(モル/g)以下、更に好ましくは、0.006を超え0.012(モル/g)以下、特に好ましくは、0.007〜0.010(モル/g)である。
【0074】
触媒成分(X)、触媒成分(Y)および触媒成分(Z)を、前記した接触方法(I)〜(III)を適宜選択して相互に接触させ、しかる後、溶媒を除去することで、オレフィン重合用触媒を固体触媒として得ることができる。溶媒の除去は、常圧下または減圧下、0〜200℃、好ましくは20〜150℃、更に好ましくは20〜100℃で1分〜100時間、好ましくは10分〜50時間、更に好ましくは30分〜20時間で行うことが望ましい。
【0075】
なお、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)重合用触媒は、以下に示す(IV)、(V)の方法によっても得ることができる。
(IV)触媒成分(X)と触媒成分(Z)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物またはこれらの混合物と接触させる。
(V)触媒成分(Y)である有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物またはこれらの混合物と触媒成分(Z)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で触媒成分(X)と接触させる。
上記(IV)、(V)の接触方法の場合も、成分比、接触条件および溶媒除去条件は、前記と同様の条件が使用できる。
【0076】
また、本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を得るのに好適なエチレン・α−オレフィン共重合体(B)重合用触媒として、触媒成分(X)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる触媒成分(Y)と触媒成分(Z)とを兼ねる成分として、特開平05−301917号公報、同08−127613号公報等に記載されてよく知られている層状珪酸塩を用いることもできる。層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物である。大部分の層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、層状珪酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
【0077】
触媒成分(X)と層状珪酸塩担体の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。触媒成分(X)の担持量は、層状珪酸塩担体1gあたり、0.0001〜5ミリモル、好ましくは0.001〜0.5ミリモル、さらに好ましくは0.01〜0.1ミリモルである。
こうして得られるオレフィン重合用触媒は、必要に応じてモノマーの予備重合を行った後に使用しても差し支えない。
【0078】
3−5.エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の重合方法
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、好適には上記3−4に記載された製法により準備されたオレフィン重合用触媒を用いて、エチレンと上述のα−オレフィンとを共重合して製造される。
【0079】
コモノマーであるα−オレフィンとしては、[2−12.エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の組成]で述べたように、炭素数3〜10のα−オレフィンが使用可能であり、2種類以上のα−オレフィンをエチレンと共重合させることも可能であり、該α−オレフィン以外のコモノマーを少量使用することも可能である。
【0080】
本発明において、上記共重合反応は、好ましくは気相法またはスラリー法にて、行うことができる。気相重合の場合、実質的に酸素、水等を断った状態で、エチレンやコモノマーのガス流を導入、流通、または循環した反応器内においてエチレン等を重合させる。また、スラリー重合の場合、イソブタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で、エチレン等を重合させる。また、液状エチレンや液状プロピレン等の液体モノマーも溶媒として使用できることは言うまでもない。本発明において、更に好ましい重合は、気相重合である。重合条件は、温度が0〜250℃、好ましくは20〜110℃、更に好ましくは60〜100℃であり、圧力が常圧〜10MPa、好ましくは常圧〜4MPa、更に好ましくは0.5〜2MPaの範囲にあり、重合時間としては5分〜20時間、好ましくは30分〜10時間が採用されるのが普通である。
【0081】
生成共重合体の分子量は、触媒成分(X)や触媒成分(Y)の種類、触媒のモル比、重合温度等の重合条件を変えることによってもある程度調節可能であるが、重合反応系に水素を添加することで、より効果的に分子量調節を行うことができる。また、重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えても何ら支障なく実施することができる。
なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、前記有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。
生成共重合体の長鎖分岐構造(すなわちg
C)やコモノマー共重合組成分布(すなわちXやW
1〜W
4)は、触媒成分(X)や触媒成分(Y)の種類、触媒のモル比、重合温度や圧力、時間等の重合条件や重合プロセスを変えることによって調節可能である。長鎖分岐構造を形成しやすい触媒成分種を選択しても、例えば重合温度を下げたりエチレン圧力を上げたりして長鎖分岐構造の少ない共重合体を製造することも可能である。また、分子量分布や共重合組成分布の広い触媒成分種を選択しても、例えば触媒成分モル比、重合条件や重合プロセスを変えることによって分子量分布や共重合組成分布の狭い共重合体を製造することも可能である。
【0082】
水素濃度、モノマー量、重合圧力、重合温度等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合方式においても、重合条件を適切に設定するならば、本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を製造することが可能であり得るだろうが、本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、一段階重合反応により製造される場合、複雑な重合運転条件を設定することなく、より経済的に製造できるので好ましい。
【0083】
4.ポリエチレン系樹脂組成物
次に、本発明のポリエチレン系樹脂組成物における樹脂成分の配合割合について説明する。
高圧法ポリエチレン(A)/エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の重量比は、(A)と(B)の合計を100重量%とした場合、(41〜99重量%)/(1〜59重量%)、好ましくは(51〜99重量%)/(1〜49重量%)、より好ましくは(61〜99重量%)/(1〜39重量%)である。高圧法ポリエチレン(A)が多すぎると、耐衝撃性が低下し、少なすぎると樹脂圧が上昇し生産性が低下する。また、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)が多すぎると樹脂圧が上昇し生産性が低下し、少なすぎると耐衝撃性が低下する。
【0084】
4−1.MFR
上記成分(A)、(B)からなる、本発明のポリエチレン系樹脂組成物のMFRは、0.1〜20g/10分の範囲であることが好ましく、更に好ましくは0.05〜10g/10分であり、より好ましくは0.10〜5g/10分である。
MFRが0.1g/10分より低いと、流動性が悪く、押出機のモーター負荷が高くなりすぎ、一方、MFRが20g/10分より大きくなると、バブルが安定せず、成形し難くなると共に、フィルムの強度が低くなる。
なお、ポリエチレン樹脂組成物のMFRは、JIS K 7210に準拠し、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定される値であるが、おおよそのMFRは成分(A)、(B)のそれぞれのMFRと割合から、加成則に従って算出することが出来る。
【0085】
4−2.密度
上記成分(A)、(B)からなる、本発明のポリエチレン樹脂組成物の密度は、0.910〜0.940g/cm
3の範囲であることが必要であり、好ましくは0.910〜0.935g/cm
3であり、より好ましくは0.915〜0.930g/cm
3である。
ポリエチレン樹脂組成物の密度が0.910g/cm
3より低いと、フィルムの剛性が低くなり、自動製袋機適性が悪化する。また、ポリエチレン樹脂組成物の密度が0.940g/cm
3より高いと、フィルムの強度が低下する。
なお、ポリエチレン樹脂組成物の密度は、JIS K 7112に準拠し、成分(A)、(B)からなる樹脂組成物を熱プレスして、2mm厚のプレスシートを作成し、該シートを1000ml容量のビーカーに入れ蒸留水を満たし、時計皿で蓋をしてマントルヒーターで加熱した。蒸留水が沸騰してから60分間煮沸後、ビーカーを木製台の上に置き放冷した。この時60分間煮沸後の沸騰蒸留水は500mlとし室温になるまでの時間は60分以上にならないように調整した。また、試験シートは、ビーカー及び水面に接しないように水中のほぼ中央部に浸漬した。シートを23℃、湿度50%の条件で、16時間以上24時間以内でアニーリングを行った後、縦横2mmになるように打ち抜き、試験温度23℃で測定した。おおよその密度は、成分(A)、(B)のそれぞれの密度と割合から、加成則に従って算出することが出来る。
【0086】
4−3.その他配合物等
本発明においては、本発明の特徴を損なわない範囲において、必要に応じ、帯電防止剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、核剤、滑剤、防曇剤、有機あるいは無機顔料、紫外線防止剤、分散剤などの公知の添加剤を、添加することが出来る。
【0087】
本発明のポリエチレン樹脂組成物は、上記の高圧法ポリエチレン(A)、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)、必要に応じて、添加又は配合される各種の添加剤及び樹脂成分を、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等を用いて混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー等で加熱混練し、ペレット化してもよい。
【0088】
5.ポリエチレン樹脂組成物の用途
本発明のポリエチレン系樹脂組成物の成形体は、上記4.に記載された本発明のポリエチレン系樹脂組成物を成形することによって製造され、その成形の方法は、従来知られている射出成形、圧縮射出成形、回転成形、押出成形、中空成形、ブロー成形、インフレーション成形等といったポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂組成物の全ての成形方法のいずれをも参照することが可能である。
これら本発明のポリエチレン系樹脂組成物の成形体の用途としては、具体的に例を記すと、紙袋の内袋やゴミ袋など寸法規格の定まった規格袋、重袋、ラップフィルム、砂糖袋、米袋、油物包装袋、漬物などの水物包装袋における食品包装用フィルム、自動充填性が求められる包材、輸液バッグ、農業用フィルム等、ナイロン、ポリエステル、金属箔、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物などの各種基材との積層体、スタンディングパウチ、発泡体やその成形体として使用されたり、バッグインボックス等、公知のポリエチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂組成物の成形体の用途を参照することが出来る。
【0089】
本発明の成形体の成形方法については、本発明のポリエチレン系樹脂組成物の優れた成形加工特性や機械的諸特性、透明性を有効に活用できる方法であれば特に制限されるものではないが、本発明のポリエチレン系樹脂組成物の主に意図したる用途の一例であるフィルム、袋、シートの場合、その好ましい成形方法、成形条件、用途として、例えば、日本国特開2007−197722号公報、日本国特開2007−177168号公報、日本国特開2007−177187号公報、日本国特開2010−31270号公報等に詳細に記載されているような各種のインフレーション成形法、Tダイフィルム成形法、カレンダー成形法、多層共押出成形機やラミネート処理による多層フィルム成形法等および各種用途を具体的に挙げることができる。勿論、インフレーション成形において空気以外の気体や、液体を冷媒として用いることができ、ストレッチ(インフレ同時二軸延伸)成形や多段ブロー等の特殊なインフレーション成形にも用いることができる。
【0090】
このようにして得られる製品のフィルム(又はシート)の厚みは特に制限されず、成形方法・条件により好適な厚みは異なる。たとえば、インフレーション成形の場合、5〜300μm程度であり、Tダイ成形の場合、5μm〜5mm程度のフィルム(又はシート)とすることができる。
【実施例】
【0091】
以下においては、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明し、本発明の卓越性と本発明の構成における優位性を実証するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において使用した測定方法は、以下の通りである。また、以下の触媒合成工程および重合工程は、すべて精製窒素雰囲気下で行い、かつ、使用した溶媒は、モレキュラーシーブ4Aで脱水精製したものを用いた。
【0092】
[物性の測定方法]
(1)MFR
JIS K7210の「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定した。
(2)密度
JIS K7112(1999年版):A法(水中置換法)により測定した。
(3)GPCにより測定される分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、
図1に例示されるように行った。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行った。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いた。その際使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いた。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
【0093】
(4)示差屈折計、粘度検出器及び光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)
示差屈折計(RI)及び粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いた。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いた。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続した。移動相溶媒は、1,2,4−trichlorobenzene(酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。流量は1mL/分である。カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いた。カラム、試料注入部及び各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとした。注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。MALLSから得られる絶対分子量(M)、慣性二乗半径(Rg)及びViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、上述した文献を参考にして計算を行った。
【0094】
[分岐指数(gc)等の算出]
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度(ηbranch)と、別途、線形ポリマーを測定して得られる極限粘度(ηlin)との比(ηbranch/ηlin)として算出した。
MALLSから得られる絶対分子量として、分子量10万から100万における上記g’の最低値を、gCとして算出した。ここで、線形ポリマーとしては、直鎖ポリエチレンStandard Reference Material 1475a(National Institute of Standards & Technology)を用いた。
【0095】
(5)昇温溶出分別(TREF)により85℃以上で溶出する成分の割合(X)
試料を140℃でオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)に溶解し、溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却し、更に続いて1℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、20分間保持する。その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。この時、85℃から140℃までの間に溶出する成分量をX(単位wt%)とする。
【0096】
使用装置は、下記のとおりである。
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000
(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ、4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル、光路長1.5mm、窓形状2φ×4mm長丸、合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
測定条件
溶媒:オルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
【0097】
(6)W
2+W
3,W
2+W
4,W
2‐W
4,
結晶性分別を行う昇温溶出分別(TREF)部と分子量分別を行うゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)部とから成る、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により行った。
即ち、ポリマーサンプルを0.5mg/mLのBHTを含むオルトジクロロベンゼン(ODCB)に140℃で完全に溶解した後、この溶液を装置のサンプルループを経て140℃に保持されたTREFカラム(不活性ガラスビーズ担体が充填されたカラム)に注入し、所定の第1溶出温度まで徐々に冷却しポリマーサンプルを結晶化させた。
所定の温度で30分保持した後、ODCBをTREFカラムに通液することにより、溶出成分がGPC部に注入されて分子量分別が行われ、赤外検出器(FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器、測定波長3.42μm)によりクロマトグラムが得た。その間、TREF部では次の溶出温度に昇温され、第1溶出温度のクロマトグラムが得られた後、第2溶出温度での溶出成分がGPC部に注入された。以下、同様の操作を繰り返すことにより、各溶出温度での溶出成分のクロマトグラムが得られた。
【0098】
なお、CFCの測定条件は、以下の通りである。
装置:ダイヤインスツルメンツ社製CFC−T102L
GPCカラム:昭和電工社製AD−806MS(3本を直列に接続)
溶媒:ODCB
サンプル濃度:3mg/mL
注入量:0.4mL
結晶化速度:1℃/分
溶媒流速:1mL/分
GPC測定時間:34分
GPC測定後安定時間:5分
溶出温度:0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140
【0099】
データ解析
測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムから、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)を求めた。
また、各クロマトグラムから、上述のGPCと同じ手順により分子量分布を求めた。
各溶出温度における分子量分布及び溶出量から、文献(S.Nakano,Y.Goto,”Development of automatic Cross Fractionation:Combination of Crystallizability Fractionation and Molecular Weight Fractionation”,J.Appl.Polym.Sci.,vol.26,pp.4217−4231(1981))の方法に従って、溶出温度と分子量に関する溶出量を等高線として示すグラフ(等高線図)を得た。
【0100】
上記の等高線図を用いて、以下の成分量を求めた。
W
1:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合。
W
2:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合。
W
3:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合。
W
4:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合。
なお、W
1+W
2+W
3+W
4=100である。
【0101】
(7)メルトテンション(MT)
メルトテンション(MT)を、下記条件にて評価した。
試験機として東洋精機社製キャピログラフ1Bを使用し、オリフィス:L/D=8.0/2.095、流入角フラット、設定温度:190℃、ピストンスピード:10mm/分、引取り速度4.0m/分にてメルトテンション(MT)を測定した。
【0102】
[フィルムの評価方法]
(1)引張弾性率:
JIS K7127−1999に準拠して、フィルムの加工方向(MD方向)の1%変形したときの引張弾性率(MPa)を測定した。
(2)ダート落下衝撃強度(DDI)
JIS K 7124 1 A法に準拠して測定した。
【0103】
[インフレーションフィルムの成形条件]
以下の50mmφ押出機を有するインフレーションフィルム製膜機(成形装置)を用いて、下記の成形条件で、インフレーションフィルムを成形し、評価した。
装置:インフレーション成形装置
押出機スクリュー径:50mmφ
ダイ径:75mmφ
押出量:15kg/hr
ダイリップギャップ:1.0mm
引取速度:20.0m/分
ブローアップ比:2.0
成形樹脂温度:170℃
フィルム厚み:30μm
【0104】
[評価樹脂]
HPLD−1:市販の高圧ラジカル法低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製LF440B;MFR=2.8g/10分、密度0.924g/cm
3)
サンプル1:下記製造例1により製造した、長鎖分岐を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(MFR=0.21g/10分、密度0.920g/cm
3)
LL−1:市販の線状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製SF240;MFR=2.0g/10分、密度0.920g/cm
3)
LL−2:市販の線状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製NF464N;MFR=2.0g/10分、密度0.918g/cm
3)
比較LCB:長鎖分岐を有する市販のエチレン系重合体(住友化学社製CU5001;MFR=0.3g/10分、密度0.922g/cm
3)
【0105】
[製造例1(長鎖分岐を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(B)の製造例)]
(1)架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物の合成;
ジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを、特開2013−227271号公報[0140]〜[0143]記載の方法に従い合成した。
(2)オレフィン重合用触媒の合成;
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに400℃で5時間焼成したシリカ30グラムを入れ、次いで脱水トルエン195mlを追加してスラリーとした。別途用意した200ml二口フラスコに窒素雰囲気下で、上記(1)で合成したジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド410ミリグラムを入れ、脱水トルエン80.4mlで溶解した後、更に室温でアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液82.8mlを加え30分間撹拌した。シリカのトルエンスラリー液の入った500ml三口フラスコを40℃のオイルバスで加熱および撹拌しながら、上記ジルコノセン錯体とメチルアルミノキサンの反応物のトルエン溶液を全量加えた。40℃で1時間撹拌した後、40℃に加熱したまま15分静沈して上澄み224mlを除去し、次いでトルエン溶媒を減圧留去して粉状触媒を得た。
(3)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造;
上記(2)で得た粉状触媒を使用してエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。すなわち、温度75℃、ヘキセン/エチレンモル比0.24%、水素/エチレンモル比0.72%、窒素濃度を26mol%、全圧を0.8MPaに準備された気相連続重合装置(内容積100L、流動床直径10cm、流動床種ポリマ−(分散剤)1.8kg)に該粉状触媒を0.21g/時間の速さで間欠的に供給しながらガス組成と温度を一定にして重合を行った。また、系内の清浄性を保つためトリエチルアルミニウム(TEA)のヘキサン稀釈溶液0.03mol/Lを15.7ml/hrでガス循環ラインに供給した。その結果、生成ポリエチレンの平均生成速度は370g/時間となった。累積5kg以上のポリエチレンを生成した後に得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体のMFRと密度は各々0.21g/10分、0.920g/cm
3であった。重合条件を下記表2に示した。また、この製造例1で得られたサンプル1と、比較用に用いた市販の長鎖分岐を有するエチレン系重合体(比較LCB:CU5001)の物性を下記表3に示す。
【0106】
【表2】
※メタロセン1; ジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
【0107】
【表3】
【0108】
(実施例1)
高圧法低密度ポリエチレンであるHPLD−1(LF440B)を単独で用いてフィルム成形した例(対照例)と高圧法低密度ポリエチレンであるHPLD−1に対して、上記製造例1で製造した長鎖分岐を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(サンプル1;MFR=0.21g/10分、密度0.920g/cm
3)を表4に示す比率でドライブレンドし、フィルム成形を行った。各種物性測定結果を表4に示す。
【0109】
(比較例1)
上記サンプル1の代わりに市販の線状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製SF240;MFR=2.0g/10分、密度0.920g/cm
3)を用いたことを除いては、実施例1と同様の試験を行った。各種物性測定結果を表4に示す。
【0110】
(比較例2)
上記サンプル1の代わりに市販の長鎖分岐を有するエチレン系重合体(比較用LCB:住友化学社製CU5001;MFR=0.3g/10分、密度0.922g/cm
3)を用いたことを除いては、実施例1と同様の試験を行った。各種物性測定結果を表4に示す。
【0111】
(比較例3)
上記製造例1で製造した長鎖分岐を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(サンプル1;MFR=0.3g/10分、密度0.922g/cm
3)の代わりに市販の線状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製NF464N;MFR=2.0g/10分、密度0.918g/cm
3)を用いたことを除いては、実施例1と同様の試験を行った。各種物性測定結果を表4に示す。
【0112】
【表4】
【0113】
[考察]
実施例1、比較例1,2,3の結果の引張弾性率と、DDIの結果を図示したグラフを
図7として示す。このグラフからも明らかなように、本願発明の実施例1は、比較例に比べて下記の有利な効果を示している。
実施例1と比較例1の比較:実施例1では試作品添加量を増やすにしたがって弾性率、DDIとも上がっているが、比較例1では弾性率の変化は小さくDDIは下がっている。
実施例1と比較例2の比較:実施例1では試作品添加量を増やすにしたがって弾性率、DDIとも上がっているが、比較例2では弾性率の上昇は見られるもののDDIは向上しない。
実施例1と比較例3:実施例1では試作品添加量を増やすにしたがって弾性率、DDIとも上がっているが、比較例3ではDDIの向上は見られるが弾性率の変化は小さい。