特許第6690168号(P6690168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6690168
(24)【登録日】2020年4月13日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】ポリエチレン系樹脂組成物及びフィルム
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/02 20060101AFI20200421BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20200421BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20200421BHJP
   C08F 210/02 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   B65D30/02
   C08J5/18
   C08L23/08
   C08F210/02
【請求項の数】10
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2015-188935(P2015-188935)
(22)【出願日】2015年9月25日
(65)【公開番号】特開2017-61655(P2017-61655A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小玉 和史
(72)【発明者】
【氏名】林 大翔
(72)【発明者】
【氏名】石濱 由之
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 隆浩
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−021112(JP,A)
【文献】 特開2012−214781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/02
C08L 23/08
C08F 210/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の条件(1)〜(5)を満足することを特徴とするエチレン・α−オレフィン共重合体(A)を1〜59重量%と、1種類以上の(A)以外の他のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を99〜41重量%含有することを特徴とするポリエチレン系樹脂組成物より得られるスタンディングパウチ用シーラントフィルム。
(1)MFRが0.1g/10分を超え、10g/10分以下である
(2)密度が0.895〜0.940g/cmである
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布Mw/Mnが3.0〜5.5である
(4)示差屈折計、粘度検出器および光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数g’の分子量10万から100万の間での最低値(gc)が0.40〜0.85である
(5)クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が重量平均分子量以上の成分の割合(W)及び前記積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が重量平均分子量未満の成分の割合(W)の和(W+W)が、40重量%を超え、56重量%未満である
【請求項2】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)が更に下記の条件(6)を満足することを特徴とする請求項1に記載のスタンディングパウチ用シーラントフィルム。
(6)前記W及びCFCにより測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高温で溶出する成分のうち分子量が重量平均分子量以上の成分の割合(W)の和(W+W)が、25重量%を超え、50重量%未満である
【請求項3】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)が更に下記の条件(7)を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載のスタンディングパウチ用シーラントフィルム。
(7)前記W及びWの差(W−W)が、0重量%を超え、20重量%未満である
【請求項4】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)が更に下記の条件(8)を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ用シーラントフィルム。
(8)昇温溶出分別(TREF)により85℃以上で溶出する成分の割合(X)が2〜15重量%である
【請求項5】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)のα−オレフィンは、炭素数が3〜10であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ用シーラントフィルム。
【請求項6】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)が、下記条件(B−1)および(B−2)を満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ用シーラントフィルム。
(B−1)MFRが0.01〜20g/10分である
(B−2)密度が0.880〜0.970g/cmである
【請求項7】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)が、更に下記条件(B−2’)を満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ用シーラントフィルム。
(B−2’)密度が0.890〜0.940g/cmである
【請求項8】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)が、更に、下記条件(B−3)を満足することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ用シーラントフィルム。
(B−3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布Mw/Mnが2.0〜5.0である
【請求項9】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)とが、下記条件のいずれか1つ以上を満たすことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ用シーラントフィルム。
(AB−1)MFR>MFR
(AB−2)[Mw/Mn]<[Mw/Mn]
(式中、MFR及び[Mw/Mn]は、夫々、エチレン・αーオレフィン共重合体(A)のMFR及びゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布Mw/Mnを表し、MFR及び[Mw/Mn]は、夫々、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のMFR及びゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布Mw/Mnを表す。)
【請求項10】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)が、MFRが0.1〜5.0未満のチーグラー系線状低密度ポリエチレン、又はMFRが0.1〜10以下のメタロセン系ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のスタンディングパウチ用シーラントフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、フィルム向けに高い機械的強度と成形性のバランスを有したフィルム用ポリエチレン系樹脂組成物及びそれにより得られるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
包装材料に汎用される、従来のエチレン系重合体においては、各種のいずれの成形方法にも適した、成形加工性と併せて物性のさらなる向上が強く要望されているが、成形加工性においては、成形加工性を律する溶融流動特性は、剪断応力下での溶融樹脂圧に関わる押出し性と、伸長変形時の溶融弾性に関わる成形安定性に大別され、具体的には例えば、押出成形の高剪断応力下で低粘性が得られ、インフレーション成形の高速成形下でバブルが安定し、押出ラミネート成形のTダイにおけるネックインが小さいなど、各種の成形方法に応じての成形加工性がそれぞれ要求されており、これらを全て満たすことは非常に困難である。
【0003】
従来、いわゆる線状の低密度ポリエチレン(LLDPE又はメタロセンPE)は、線状の分子構造を有するため、従来の枝分かれ分岐鎖を多数有する高圧法ポリエチレンに比べると、強度が優れると知られている。しかし一般に、ポリエチレン系樹脂の成形加工は、溶融状態において実施されるが、単位時間当たりの樹脂押出量を多くする必要があり、単独のLLDPEやメタロセンPEの場合その溶融特性は、流動性の面で不十分であったり、伸長粘度が不十分であったりして、成形加工性を十分に確保することが困難である。
【0004】
これらを補うための対策としては、成形性に優れる高圧法ポリエチレンをブレンドしたり、分子量や密度の異なるエチレン系重合体をブレンドしたりして、溶融特性や固体物性の改良がおこなわれてきた(例えば、特許文献1〜3参照)
しかしながら、これらのブレンド物(エチレン系樹脂組成物)では、成形加工性は得られるものの、高圧法ポリエチレンのブレンドによる衝撃強度の低下を招くという問題があった。
【0005】
また、最近の容器リサイクル法施行や省資源化の流れにおいて原料樹脂使用量を削減する必要性の観点から、成形体の薄肉化の需要が高まっているが、このためには、衝撃強度とともに剛性(弾性率)の向上が必要となる。
衝撃強度を向上する方法としては、エチレン系重合体の密度を低下させる方法がよく知られているが、剛性も一緒に低下してしまう(柔らかくなる)ので好ましくなく、薄肉化の目的のためには、例えば、密度の異なる二種類の特定のエチレン・α−オレフィン共重合体の組み合わせへ、更に、成形加工性や透明性を向上させるために特定のHPLDを加えた三成分系ブレンド組成物を使用する試みがなされている(特許文献4参照)。
この方法によれば、従来よりも衝撃強度と剛性のバランスに優れ、成形加工特性にも優れたポリエチレン樹脂組成物が得られるものの、やはり高圧法ポリエチレンのブレンドに伴う衝撃強度の低下は避けられず、更に、三種類のエチレン系重合体のブレンドは、一定品質の製品を工業レベルで安定供給する上では従来よりも経済的に不利と考えられる。
このように、従来の技術では、包装袋のフィルムとして求められる基本的な性能を十分満足することが困難な状況にあった。
【0006】
近年、長鎖分岐構造をエチレン系重合体中に形成可能なメタロセン触媒による重合設計技術を活用することによって、成形加工性と樹脂強度を同時に改良するためのポリオレフィン系樹脂改質用エチレン系重合体の開発が報告されている。例えば、特定の伸長粘度挙動を発現する長鎖分岐を含むエチレン系重合体をポリオレフィン系樹脂向け改質材として対象とするポリオレフィン系樹脂にブレンドして使用する例(特許文献5参照)や、特定のポリマー分子構造指標と極限粘度比で規定される長鎖分岐構造を有する低密度エチレン・プロピレン共重合体を改質材とする樹脂組成物の例(特許文献6参照)や、高い流動活性化エネルギーを示す広分子量分布の長鎖分岐ポリエチレンを改質材とする例(特許文献7参照)等が知られている。これらの方法によれば、従来のHPLDによる改質で起こるようなポリオレフィン系樹脂の衝撃強度の大幅な低下は無いものの、長鎖分岐含有エチレン系重合体の設計が不十分なため、やはり強度や透明性の低下が避けられず、その改良レベルは未だ不十分であった。
【0007】
こうした状況下に、従来のエチレン系樹脂組成物のもつ問題点を解消し、成形加工性に優れ、かつ衝撃強度と剛性のバランスおよび透明性に優れた成形体を製造することが可能なポリエチレン系フィルムの開発が望まれていた。
【0008】
こうした状況下、従来の改質用エチレン系重合体のもつ問題点を解消し、成形加工性付与に優れ、かつ衝撃強度と剛性のバランスおよび透明性の付与にも優れた改質用エチレン系重合体の開発、更には、それらの特性を有するエチレン系重合体の開発に有用な長鎖分岐構造制御が可能なメタロセン重合触媒の研究が継続されている(特許文献8〜11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−149962号公報
【特許文献2】特開平9−31260号公報
【特許文献3】特開2006−312753号公報
【特許文献4】特開2010−31270号公報
【特許文献5】特開2012−214781号公報
【特許文献6】特開平09−031260号公報
【特許文献7】特開2007−119716号公報
【特許文献8】特開2004−217924号公報
【特許文献9】特開2004−292772号公報
【特許文献10】特開2005−206777号公報
【特許文献11】特開2013−227271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上記した従来技術の問題点に鑑み、耐衝撃性と剛性とのバランスに優れるとともに、透明性、成形加工性にも優れるポリエチレン系樹脂組成物、特にフィルム用ポリエチレン系樹脂組成物を提供すること、更には、該ポリエチレン系樹脂組成物をTダイ成形、インフレーション成形して得られる、衝撃強度と剛性のバランスおよび透明性に優れたフィルムおよび該フィルムの用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の長鎖分岐構造、すなわち特定の分岐指数と比較的狭い逆コモノマー組成分分布指数を有し、かつ特定のMFR、密度を有するエチレン・α−オレフィン共重合体を他のエチレン・α−オレフィン共重合体にブレンドした樹脂組成物が、衝撃強度と剛性のバランス改良効果の点で優れた効果を有することを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。本願発明の要旨は下記のとおりである。
【0012】
すなわち第1の発明は、下記の条件(1)〜(5)を満足することを特徴とするエチレン・α−オレフィン共重合体(A)を1〜59重量%と、1種類以上の(A)以外の他のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を99〜41重量%含有することを特徴とするポリエチレン系樹脂組成物に存する。
(1)MFRが0.1g/10分を超え、10g/10分以下である
(2)密度が0.895〜0.940g/cmである
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布Mw/Mnが3.0〜5.5である
(4)示差屈折計、粘度検出器および光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数g’の分子量10万から100万の間での最低値(gc)が0.40〜0.85である
(5)クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が重量平均分子量以上の成分の割合(W)及び前記積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が重量平均分子量未満の成分の割合(W)の和(W+W)が、40重量%を超え、56重量%未満である
【0013】
第2の発明は、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)が更に下記の条件(6)を満足することを特徴とする第1の発明に記載のポリエチレン系樹脂組成物に存する。
(6)前記W及びCFCにより測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高温で溶出する成分のうち分子量が重量平均分子量以上の成分の割合(W)の和(W+W)が、25重量%を超え、50重量%未満である
【0014】
第3の発明は、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)が更に下記の条件(7)を満足することを特徴とする第1又は第2の発明に記載のポリエチレン系樹脂組成物に存する。
(7)前記W及びCFCにより測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高温で溶出する成分のうち分子量が重量平均分子量以上の成分の割合(W)の差(W−W)が、0重量%を超え、20重量%未満である
【0015】
第4の発明は、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)が更に下記の条件(8)を満足することを特徴とする第1〜3のいずれかの発明に記載のポリエチレン系樹脂組成物に存する。
(8)昇温溶出分別(TREF)により85℃以上で溶出する成分の割合(X)が2〜15重量%である
【0016】
第5の発明は、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)のα−オレフィンは、炭素数が3〜10であることを特徴とする第1〜4のいずれかの発明に記載のポリエチレン系樹脂組成物に存する。
【0017】
第6の発明は、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)が、下記条件(B−1)および(B−2)を満足することを特徴とする第1〜5のいずれかの発明に記載のポリエチレン系樹脂組成物に存する。
(B−1)MFRが0.01〜20g/10分である
(B−2)密度が0.880〜0.970g/cmである
【0018】
第7の発明は、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)が、更に下記条件(B−2’)を満足することを特徴とする第1〜6のいずれかの発明に記載のポリエチレン系樹脂組成物に存する。
(B−2’)密度が0.890〜0.940g/cmである
【0019】
第8の発明は、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)が、更に、下記条件(B−3)を満足することを特徴とする第1〜7のいずれかの発明に記載のポリエチレン系樹脂組成物に存する。
(B−3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布Mw/Mnが2.0〜5.0である
【0020】
第9の発明は、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)とが、下記条件のいずれか1つ以上を満たすことを特徴とする第1〜8のいずれかの発明に記載のポリエチレン系樹脂組成物に存する。
(AB−1)MFR>MFR
(AB−2)[Mw/Mn]<[Mw/Mn]
(式中、MFR及び[Mw/Mn]は、夫々、エチレン・αーオレフィン共重合体(A)のMFR及びゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布Mw/Mnを表し、MFR及び[Mw/Mn]は、夫々、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のMFR及びゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布Mw/Mnを表す。)
【0021】
第10の発明は、 前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)が、MFRが0.1〜5.0未満のチーグラー系線状低密度ポリエチレン、又はMFRが0.1〜10以下のメタロセン系ポリエチレンであることを特徴とする第1〜9のいずれかの発明に記載のポリエチレン系樹脂組成物に存する。
【0022】
第11の発明は、前記樹脂組成物が、フィルム用の樹脂組成物であることを特徴とする、第1〜10のいずれかの発明に記載のポリエチレン系樹脂組成物に存する。
第12の発明は、第1〜11のいずれかの発明に記載の樹脂組成物より得られるフィルムに存する。
【0023】
第13の発明は、第1〜11のいずれかの発明に記載の樹脂組成物より得られるスタンディングパウチ用シーラントフィルムに存する。
【0024】
第14の発明は、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、触媒成分(X)、(Y)及び(Z)を含むオレフィン重合用触媒によって製造されるエチレン・α−オレフィン共重合体であることを特徴とする第1〜12のいずれかの発明に記載のポリエチレン系樹脂組成物の製造方法に存する。
触媒成分(X):遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物。
触媒成分(Y):成分(X)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物。
触媒成分(Z):無機化合物担体。
【発明の効果】
【0025】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、成形加工特性に優れ、同時に、衝撃強度と剛性のバランスにも優れ、更には透明性にも優れる効果を有し、また、該ポリエチレン系樹脂組成物をTダイ成形又はインフレーション成形して得られる成形体も、衝撃強度と剛性のバランスおよび透明性に優れているので、薄肉化された成形製品を経済的に有利に提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で用いられるクロマトグラムのベースラインと区間を示すグラフである。
図2】GPC−VIS測定(分岐構造解析)から算出する分岐指数(g’)と分子量(M)との関係を示すグラフである。
図3】昇温溶出分別(TREF)による溶出温度分布を示すグラフである。
図4】クロス分別クロマトグラフィー(CFC)法で測定される溶出温度と分子量に関する溶出量を等高線図として示すグラフである。
図5】クロス分別クロマトグラフィー(CFC)法で測定される溶出温度と各溶出温度における溶出割合(wt%)との関係を示すグラフである。
図6】W〜Wについての概略図である。当該において横軸が分子量の対数(logM)であり、横軸は溶出温度(Temp.)である。
図7】本発明の実験例イの実施例及び比較例の共重合をブレンドしたフィルムについて得られた弾性率及び衝撃強度の関係を示すグラフである。
図8】本発明の実験例ロの実施例及び比較例の共重合をブレンドしたフィルムについて得られた弾性率及び衝撃強度の関係を示すグラフである。
図9】本発明の実験例ハの実施例及び比較例の共重合をブレンドしたフィルムについて得られたフィルムインパクト及び衝撃強度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、特定の長鎖分岐指数と比較的狭い逆コモノマー組成分布指数を有し、かつ、特定のMFR,密度を有するオレフィン系樹脂改質剤として良好なエチレン・α−オレフィン共重合体を含むオレフィン系樹脂組成物に係るものである。以下、本発明を項目毎に、詳細に説明する。
【0028】
1.本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、下記に説明する条件(1)〜(4)及び(6)、好ましくは更に条件(5)又は/更に(7)、(8)を満たす。
【0029】
1−1.条件(1)MFR
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、0.1g/10分を超え、10g/10分以下、好ましくは0.1g/10分を超え、5.0g/10分以下、より好ましくは0.1g/10分を超え、2.0g/10分以下である。
MFRがこの範囲にあると、ポリオレフィン系樹脂にブレンドした場合の成形加工性の改良効果や、衝撃強度と剛性のバランスの改良効果が優れる。一方、MFRが0.1g/10分以下では成形加工性等の点で好ましくない場合があり、MFRが10g/10分より大きいと、衝撃強度や剛性の改良効果が十分発現し難いので好ましくない。なお、本発明で、エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、JIS K7210の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定したときの値をいう。
【0030】
1−2.条件(2)密度
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、0.895〜0.940g/cmであり、好ましく0.898g/cm以上、0.934g/cm未満、より好ましくは0.900〜0.930g/cm、更に好ましくは0.905〜0.930g/cm、特に好ましくは0.910〜0.925g/cmである。
密度がこの範囲にあると、改質対象となるポリオレフィン系樹脂にブレンドした場合の衝撃強度と剛性のバランスの改良効果が優れる。一方、密度が0.895g/cm未満では剛性の点で好ましくない場合があり、また、密度が0.940g/cmより大きいと衝撃強度等の改良効果が十分ではなく好ましくない。
なお、本発明で、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、以下の方法で測定したときの値をいう。
【0031】
ペレットを熱プレスして2mm厚のプレスシートを作成し、該シートを1000ml容量のビーカーに入れ蒸留水を満たし、時計皿で蓋をしてマントルヒーターで加熱した。蒸留水が沸騰してから60分間煮沸後、ビーカーを木製台の上に置き放冷した。この時60分煮沸後の沸騰蒸留水は500mlとし室温になるまでの時間は60分以下にならないように調整した。また、試験シートは、ビーカー及び水面に接しないように水中のほぼ中央部に浸漬した。シートを23℃、湿度50%の条件で、16時間以上24時間以内でアニーリングを行った後、縦横2mmになるように打ち抜き、試験温度23℃で、JIS K7112の「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」に準拠して、測定した。
【0032】
1−3.条件(3)分子量分布
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、3.0〜5.5、好ましくは3.0〜5.3、より好ましくは3.3以上5.3未満、更に好ましくは3.5以上、5.3未満である。Mw/Mnが3.0未満では、ポリオレフィン系樹脂にブレンドした場合の成形加工性、特に溶融流動性が劣ったり、他の重合体成分と混ざり難かったりするので避けるべきである。Mw/Mnが5.5より大きいと該ポリオレフィン系樹脂やその成形体の剛性や衝撃強度の改良の効果が不十分となったり、透明性が悪化したり、ベトツキしやすくなるので好ましくない。
Mw/Mnは、共重合体中の分子量分布を示す指標の一つであり、触媒上の重合反応が比較的均一なサイトで行われると数値が小さく、比較的マルチなサイトで行われていると数値が大きくなる。重合に用いる触媒種と触媒の調整条件を選定することにより概略、適宜制御できる。
なお、本発明で、エチレン・α−オレフィン共重合体のMwやMnは、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したものをいう。
【0033】
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
【0034】
なお、GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図1に例示されるように行う。
【0035】
1−4.条件(4)gc
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、上記条件(1)〜(3)に加えて更に、示差屈折計、粘度検出器および光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数g’の分子量10万から100万の間での最低値(gc)が、0.40〜0.85、好ましくは0.45〜0.85又は0.50〜0.85、更に好ましくは0.50〜0.77、特に好ましくは0.51〜0.75である。g値が0.85より大きいとポリオレフィン系樹脂にブレンドした場合の成形加工性の改良効果が十分に発現しないので好ましくない。g値が0.40より小さいと、該ポリオレフィン樹脂の成形加工性は向上するが、衝撃強度が低下したり、透明性が悪化したりするので好ましくない。
なお、本発明で、エチレン・α−オレフィン共重合体のg値は、共重合体に導入された長鎖分岐の発達度を指標する物性値であり、g値が大きいと、長鎖分岐が少なく、g値が小さいと長鎖分岐の導入量が多いことを示す。なお、gの値は、重合に用いる触媒の選定により概略制御することができる。エチレン・α−オレフィン共重合体のg値は、下記のGPC−VIS測定から算出する分子量分布曲線や分岐指数(g’)を用いた長鎖分岐量の評価手法である。
【0036】
[GPC−VISによる分岐構造解析]
示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いた。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いた。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続した。移動相溶媒は、1,2,4−trichlorobenzene(酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。流量は1mL/分である。カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いた。
カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとした。注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。MALLSから得られる絶対分子量(M)、慣性二乗半径(Rg)およびViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行った。
【0037】
参考文献:
1.Developments in polymer characterization,vol.4.Essex:Applied Science;1984.Chapter1.
2.Polymer,45,6495−6505(2004)
3.Macromolecules,33,2424−2436(2000)
4.Macromolecules,33,6945−6952(2000)
【0038】
[分岐指数(g)等の算出]
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度(ηbranch)と、別途、線形ポリマーを測定して得られる極限粘度(ηlin)との比(ηbranch/ηlin)として算出する。
ポリマー分子に長鎖分岐が導入されると、同じ分子量の線形のポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると極限粘度が小さくなることから、長鎖分岐が導入されるに従い同じ分子量の線形ポリマーの極限粘度(ηlin)に対する分岐ポリマーの極限粘度(ηbranch)の比(ηbranch/ηlin)は小さくなっていく。したがって分岐指数(g’=ηbranch/ηlin)が1より小さい値になる場合には分岐が導入されていることを意味し、その値が小さくなるに従い導入されている長鎖分岐が増大していくことを意味する。特に本発明では、MALLSから得られる絶対分子量として、分子量10万から100万における上記g’の最低値を、gとして算出する。図2に上記GPC−VISによる解析結果の一例を示した。図2の左は、MALLSから得られる分子量(M)とRIから得られる濃度を元に測定された分子量分布曲線を、図2の右は、分子量(M)における分岐指数(g’)を表す。ここで、線形ポリマーとしては、直鎖ポリエチレンStandard Reference Material 1475a(National Institute of Standards & Technology)を用いた。
【0039】
1−5.条件(5)W+W
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、上記条件(1)〜(4)に加えて更に、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が重量平均分子量以上の成分の割合(W)及び積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が重量平均分子量未満の成分の割合(W)の和(W+W)が、40重量%を超え、56重量%未満である。好ましくは41重量%を超え、56重量%未満、更に好ましくは43重量%を超え、56重量%未満、特に好ましくは45重量%を超え、56重量%未満である。
【0040】
クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から得られる上記のW等の数値は、共重合体全体中に含まれる個々のポリマーの、コモノマー量と分子量の分布を総合して指標する“コモノマー組成分布”を示すために用いられる手法である。すなわち、コモノマーの量が多く分子量が小さいポリマー(W)、コモノマーの量が多く分子量が大きいポリマー(W)、コモノマーの量が少なく分子量が小さいポリマー(W)、コモノマーの量が少なく分子量が大きいポリマー(W)が、共重合体全体中に占める割合を示している。図6にW〜Wについての概略図を示す。
【0041】
+W値が40重量%以下であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるポリオレフィン系樹脂の衝撃強度向上に効果的に作用する低密度高分子量成分の割合が減少したり、該ポリオレフィン系樹脂の剛性向上に効果的に作用する高密度低分子量成分が減少したりして、物性改良効果を発現させるためにより多量のエチレン・α−オレフィン共重合体のブレンドが必要となって経済的でないので好ましくない。一方、W+W値が56重量%以上であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる該高密度低分子量成分と該低密度高分子量成分の含有量のバランスが崩れ、ポリオレフィン系樹脂の物性改質効果が期待通り発現しなかったり、該高密度低分子量成分と該低密度高分子量成分の分散性が悪くなって、透明性の悪化やゲルが発生したりするので好ましくない。
【0042】
[CFCの測定条件]
クロス分別クロマトグラフィー(CFC)は、結晶性分別を行う昇温溶出分別(TREF)部と分子量分別を行うゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)部とから成る。
このCFCを用いた分析は、次のようにして行われる。
まず、ポリマーサンプルを0.5mg/mLのBHTを含むオルトジクロロベンゼン(ODCB)に140℃で完全に溶解した後、この溶液を装置のサンプルループを経て140℃に保持されたTREFカラム(不活性ガラスビーズ担体が充填されたカラム)に注入し、所定の第1溶出温度まで徐々に冷却しポリマーサンプルを結晶化させる。所定の温度で30分保持した後、ODCBをTREFカラムに通液することにより、溶出成分がGPC部に注入されて分子量分別が行われ、赤外検出器(FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器、測定波長3.42μm)によりクロマトグラムが得られる。その間、TREF部では次の溶出温度に昇温され、第1溶出温度のクロマトグラムが得られた後、第2溶出温度での溶出成分がGPC部に注入される。以下、同様の操作を繰り返すことにより、各溶出温度での溶出成分のクロマトグラムが得られる。
【0043】
なお、CFCの測定条件は、以下の通りである。
装置:ダイヤインスツルメンツ社製CFC−T102L
GPCカラム:昭和電工社製AD−806MS(3本を直列に接続)
溶媒:ODCB
サンプル濃度:3mg/mL
注入量:0.4mL
結晶化速度:1℃/分
溶媒流速:1mL/分
GPC測定時間:34分
GPC測定後安定時間:5分
溶出温度:0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140
【0044】
[データ解析]
測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムから、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)が求められる。
さらに、溶出温度に対する積分溶出曲線が計算される。この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が求められる。
また、各クロマトグラムから、次の手順により分子量分布が求められる。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
なお、第1溶出温度でのクロマトグラムでは、溶媒に添加したBHTによるピークと溶出成分の低分子量側とが重なる場合があるが、その際は、図1のようにベースラインを引き分子量分布を求める区間を定める。
さらに、下記の表1のように、各溶出温度における溶出割合(表中のwt%)と重量平均分子量(表中のMw)からwhole(全体)の重量平均分子量を求める。
【0045】
【表1】
【0046】
また、各溶出温度における分子量分布及び溶出量から、文献(S.Nakano,Y.Goto,”Development of automatic Cross Fractionation:Combination of Crystallizability Fractionation and Molecular Weight Fractionation”,J.Appl.Polym.Sci.,vol.26,pp.4217−4231(1981))の方法に従って、溶出温度と分子量に関する溶出量を等高線として示すグラフ(等高線図)を得る。
上記の等高線図を用いて、以下の成分量を求める。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合。
なお、W+W+W+W=100である。
+Wの値は、主に、重合触媒及び重合条件を選択することにより、所定の範囲とすることができ、好ましくは、特定のメタロセン触媒を使用することにより、所定の範囲とすることができる。
【0047】
1−6.条件(6)W+W
本発明におけるエチレン系・α−オレフィン共重合体は、(1−5)で前記したW及びWの和(W+W)が、25重量%を超え、50重量%未満、好ましくは29重量%を超え、50重量%未満、より好ましくは29重量%を超え、45重量%未満、更に好ましくは30〜43重量%、特に好ましくは30〜42重量%である。W+Wが25重量%以下であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるポリオレフィン系樹脂の衝撃強度向上に効果的に作用する高分子量成分が減少するので好ましくなかったり、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるポリオレフィン系樹脂の成型加工性向上に特に効果的に作用する高分子量の長鎖分岐成分が減少するので好ましくなかったり、それら高分子量成分や長鎖分岐成分の割合が減少するのでポリオレフィン系樹脂の改質により多量のブレンドが必要となるので経済性を悪化させる。一方、W+W値が50重量%以上であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる高分子量成分や高分子量の長鎖分岐成分の割合が多いためポリオレフィン系樹脂への分散性が悪くなって、透明性の悪化やゲルが発生したりするので好ましくない。
【0048】

1−7.条件(7)W−W
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、(1−6)で前記したWとWの差(W−W)が、0重量%を超え、20重量%未満、好ましくは0重量%を超え、15重量%未満、より好ましくは1重量%を超え、15重量%未満、更に好ましくは2重量%を超え、14重量%未満、特に好ましくは2重量%を超え、13重量%未満である。W−Wが0重量%以下であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるポリオレフィン系樹脂の衝撃強度向上に特に効果的に作用する低密度高分子量成分が減少するので好ましくない。一方、W−W値が20重量%以上であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる高密度高分子量成分と低密度高分子量成分の含有量のバランスが崩れ、ポリオレフィン系樹脂の物性改質効果が期待通り発現しなかったり、該ポリオレフィン系樹脂への分散性が悪くなって、透明性の悪化やゲルが発生したりするので好ましくない。
【0049】
1−5.条件(5)X
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、昇温溶出分別(TREF)により85℃以上で溶出する成分の割合(X値)が2〜15重量%であり、好ましくは3〜14重量%である。更に好ましくは4〜14重量%である。X値が15重量%より大きいと、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるポリオレフィン系樹脂の衝撃強度向上に効果的に作用する低密度成分の割合が減少し、衝撃強度向上にはより多量のエチレン・α−オレフィン共重合体のブレンドが必要となって経済的でないので好ましくない。X値が2重量%より小さいと、ポリオレフィン系樹脂へのブレンド時の相容性が悪くなったり、ポリオレフィン系樹脂の剛性が悪化したりする場合があるので好ましくない場合がある。X値の量は、共重合体に含まれる比較的高分子量の成分の割合を指標する数値であり、触媒の調整方法と重合条件の制御により調整可能である。
【0050】
[TREFの測定条件]
試料を140℃でオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)に溶解し、溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却し、更に続いて1℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、20分間保持する。その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。この時、85℃から140℃までの間に溶出する成分量をX(単位wt%)とする。
【0051】
使用装置は、下記のとおりである。
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000
(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ、4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル、光路長1.5mm、窓形状2φ×4mm長丸、合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
測定条件
溶媒:オルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
1−9.本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の組成
【0052】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体である。ここで用いられる共重合成分であるα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1等が挙げられる。また、これらα−オレフィンは1種のみでもよく、また2種以上が併用されていてもよい。これらのうち、より好ましいα−オレフィンは炭素数3〜8のものであり、具体的にはプロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等が挙げられる。更に好ましいα−オレフィンは炭素数4又は炭素数6のものであり、具体的にはブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1が挙げられる。特に好ましいα−オレフィンは、ヘキセン−1である。
【0053】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体中におけるエチレンとα−オレフィンの割合は、エチレン約75〜99.8重量%、α−オレフィン約0.2〜25重量%であり、好ましくはエチレン約80〜99.6重量%、α−オレフィン約0.4〜20重量%であり、より好ましくはエチレン約82〜99.2重量%、α−オレフィン約0.8〜18重量%であり、更に好ましくはエチレン約85〜99重量%、α−オレフィン約1〜15重量%であり、特に好ましくはエチレン約88〜98重量%、α−オレフィン約2〜12重量%である。エチレン含量がこの範囲内であれば、ポリエチレン系樹脂への改質効果が高い。
共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであっても差し支えない。もちろん、エチレンやα−オレフィン以外のコモノマーを少量使用することも可能であり、この場合、スチレン、4−メチルスチレン、4−ジメチルアミノスチレン等のスチレン類、1,4−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等のジエン類、ノルボルネン、シクロペンテン等の環状化合物、ヘキセノール、ヘキセン酸、オクテン酸メチル等の含酸素化合物類、等の重合性二重結合を有する化合物を挙げることができる。ただしジエン類を使用する場合は長鎖分岐構造や分子量分布が上記の条件を満たす範囲内において使用しなくてはいけないことは言うまでもない。
【0054】
2.本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の製法
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、上記の条件を全て満たすように製造して使用される。その製造は、オレフィン重合用触媒を用いてエチレンと上述のα−オレフィンとを共重合する方法によって実施される。
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体が有する特定の長鎖分岐構造、組成分布構造、MFR、密度を同時に実現するための好適な製造方法例として、以下に説明する特定の触媒成分(X)、(Y)及び(Z)を含むオレフィン重合用触媒を用いる方法を挙げることができる。
触媒成分(X):遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物。
触媒成分(Y):成分(X)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物。
触媒成分(Z):無機化合物担体。
【0055】
2−1.触媒成分(X)
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造するのに好ましい触媒成分(X)は、遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物であり、より好ましくは下記の一般式[1]で表されるメタロセン化合物であり、更に好ましくは下記の一般式[2]で表されるメタロセン化合物である。
【0056】
【化1】
【0057】
[但し、式[1]中、MはTi、Zr又はHfのいずれかの遷移金属を示す。Aはシクロペンタジエニル環(共役五員環)構造を有する配位子を、Aはインデニル環構造を有する配位子を、QはAとAを任意の位置で架橋する結合性基を示す。X及びYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。]
【0058】
【化2】
【0059】
[但し、式[2]中、MはTi、Zr又はHfのいずれかの遷移金属を示す。Qはシクロペンタジエニル環とインデニル環を架橋する結合性基を示す。X及びYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。10個のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。]
【0060】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造するのに特に好ましい触媒成分(X)は、特開2013−227271号公報に記載された一般式(1c)で表されるメタロセン化合物である。
【0061】
【化3】
【0062】
[但し、式(1c)中、略号の説明は全て特開2013−227271号公報の記載に従う。すなわち、M1cは、Ti、Zr又はHfのいずれかの遷移金属を示す。X1c及びX2cは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。Q1cとQ2cは、各々独立して、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子を示す。R1cは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を示し、4つのR1cのうち少なくとも2つが結合してQ1c及びQ2cと一緒に環を形成していてもよい。mは、0又は1であり、mが0の場合、Q1cは、R2cを含む共役5員環と直接結合している。R2c及びR4cは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。R3cは、下記一般式(1−ac)で示される置換アリール基を示す。]
【0063】
【化4】
[但し、式(1−ac)中、Y1cは、周期表14族、15族又は16族の原子を示す。R5c、R6c、R7c、R8c及びR9cは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素若しくは窒素を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、又は炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示し、R5c、R6c、R7c、R8c及びR9cは隣接する基同士で結合して、それらに結合している原子と一緒に環を形成していてもよい。nは、0又は1であり、nが0の場合、Y1cに置換基R5cが存在しない。pは、0又は1であり、pが0の場合、R7cが結合する炭素原子とR9cが結合する炭素原子は直接結合している。Y1cが炭素原子の場合、R5c、R6c、R7c、R8c、R9cのうち少なくとも1つは水素原子ではない。]
【0064】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造するのに最も好ましい触媒成分(X)は、特開2013−227271号公報に記載された一般式(2c)で表されるメタロセン化合物である。
【0065】
【化5】
【0066】
上記の一般式(2c)で示されるメタロセン化合物において、M1c、X1c、X2c、Q1c、R1c、R2c及びR4cは、前述の一般式(1c)で示されるメタロセン化合物の説明で示した原子及び基と同様な構造を選択することができる。また、R10cは前述の一般式(1c)で示されるメタロセン化合物の説明で示したR5c、R6c、R7c、R8c、R9cの原子及び基と同様な構造を選択することができる。
【0067】
上記メタロセン化合物の具体例として、特開2013−227271号公報の表1c中に記載された化合物を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
上記具体例の化合物はジルコニウム化合物又はハフニウム化合物であることが好ましく、ジルコニウム化合物であることが更に好ましい。
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造するのに好ましい触媒成分(X)として、上述の架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物を2種以上用いることもできる。
【0068】
2−2.触媒成分(Y)
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造するのに好ましい触媒成分(Y)は、成分(X)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物であり、より好ましくは特開2013−227271号公報[0064]〜[0083]に記載された成分(Y)であり、更に好ましくは同[0065]〜[0069]に記載された有機アルミニウムオキシ化合物である。
【0069】
2−3.触媒成分(Z)
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造するのに好ましい触媒成分(Z)は、無機化合物担体であり、より好ましくは特開2013−227271号公報[0084]〜[0088]に記載された無機化合物である。この時、無機化合物として好ましいのは該公報[0085]に記載された金属酸化物である。
【0070】
2−4.オレフィン重合用触媒の製法
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、上記触媒成分(X)〜(Z)を含むオレフィン重合用触媒を用いてエチレンと上述のα−オレフィンとを共重合する方法によって好適に製造される。本発明の上記触媒成分(X)〜(Z)からオレフィン重合用触媒を得る際の各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下に示す(I)〜(III)の方法が任意に採用可能である。
【0071】
(I)上記遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物である触媒成分(X)と、上記触媒成分(X)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物である触媒成分(Y)とを接触させた後、無機化合物担体である触媒成分(Z)を接触させる。
(II)触媒成分(X)と触媒成分(Z)とを接触させた後、触媒成分(Y)を接触させる。
(III)触媒成分(Y)と触媒成分(Z)とを接触させた後、触媒成分(X)を接触させる。
【0072】
これらの接触方法の中で(I)と(III)が好ましく、さらに(I)が最も好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数は6〜12)、ペンタン、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5〜12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下又は非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。この接触は、通常−100℃〜200℃、好ましくは−50℃〜100℃、さらに好ましくは0℃〜50℃の温度にて、5分〜50時間、好ましくは30分〜24時間、さらに好ましくは30分〜12時間で行うことが望ましい。
【0073】
また、触媒成分(X)、触媒成分(Y)及び触媒成分(Z)の接触に際しては、上記した通り、ある種の成分が可溶ないしは難溶な芳香族炭化水素溶媒と、ある種の成分が不溶ないしは難溶な脂肪族又は脂環族炭化水素溶媒とがいずれも使用可能である。
【0074】
各成分同士の接触反応を段階的に行う場合にあっては、前段で用いた溶媒などを除去することなく、これをそのまま後段の接触反応の溶媒に用いてもよい。また、可溶性溶媒を使用した前段の接触反応後、ある種の成分が不溶もしくは難溶な液状不活性炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素あるいは芳香族炭化水素)を添加して、所望生成物を固形物として回収した後に、あるいは一旦可溶性溶媒の一部又は全部を、乾燥等の手段により除去して所望生成物を固形物として取り出した後に、この所望生成物の後段の接触反応を、上記した不活性炭化水素溶媒のいずれかを使用して実施することもできる。本発明では、各成分の接触反応を複数回行うことを妨げない。
【0075】
本発明において、触媒成分(X)、触媒成分(Y)及び触媒成分(Z)の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
【0076】
触媒成分(Y)として、有機アルミニウムオキシ化合物を用いる場合、触媒成分(X)中の遷移金属(M)に対する有機アルミニウムオキシ化合物のアルミニウムの原子比(Al/M)は、通常、1〜100,000、好ましくは100〜1000、さらに好ましくは210〜800、特に好ましくは250〜500の範囲が望ましく、また、ボラン化合物やボレート化合物を用いる場合、触媒成分(X)中の遷移金属(M)に対する、ホウ素の原子比(B/M)は、通常、0.01〜100、好ましくは0.1〜50、さらに好ましくは0.2〜10の範囲で選択することが望ましい。さらに、触媒成分(Y)として、有機アルミニウムオキシ化合物と、ボラン化合物、ボレート化合物との混合物を用いる場合にあっては、混合物における各化合物について、遷移金属(M)に対して上記と同様な使用割合で選択することが望ましい。
【0077】
触媒成分(Z)の使用量は、触媒成分(X)中の遷移金属0.0001〜5ミリモル当たり、好ましくは0.001〜0.2ミリモル当たり、さらに好ましくは0.005〜0.1ミリモル当たり、特に好ましくは0.01〜0.04ミリモル当たり1gである。
【0078】
また、本発明において、触媒成分(Z)1gに対する触媒成分(Y)の金属のモル数の割合は、好ましくは、0.005を超え0.020(モル/g)以下、より好ましくは、0.006を超え〜0.015(モル/g)以下、更に好ましくは、0.006を超え0.012(モル/g)以下、特に好ましくは、0.007〜0.010(モル/g)である。
【0079】
触媒成分(X)、触媒成分(Y)及び触媒成分(Z)を、前記した接触方法(I)〜(III)を適宜選択して相互に接触させ、しかる後、溶媒を除去することで、オレフィン重合用触媒を固体触媒として得ることができる。溶媒の除去は、常圧下又は減圧下、0〜200℃、好ましくは20〜150℃、更に好ましくは20〜100℃で1分〜100時間、好ましくは10分〜50時間、更に好ましくは30分〜20時間で行うことが望ましい。
【0080】
なお、オレフィン重合用触媒は、以下に示す(IV)、(V)の方法によっても得ることができる。
(IV)触媒成分(X)と触媒成分(Z)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物又はこれらの混合物と接触させる。
(V)触媒成分(Y)である有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物又はこれらの混合物と触媒成分(Z)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で触媒成分(X)と接触させる。
上記(IV)、(V)の接触方法の場合も、成分比、接触条件及び溶媒除去条件は、前記と同様の条件が使用できる。
【0081】
また、本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)を得るのに好適なオレフィン重合用触媒として、触媒成分(X)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる触媒成分(Y)と触媒成分(Z)とを兼ねる成分として、特開平05−301917号公報、同08−127613号公報等に記載されてよく知られている層状珪酸塩を用いることもできる。層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物である。大部分の層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、層状珪酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
【0082】
これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
【0083】
触媒成分(X)と層状珪酸塩担体の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。触媒成分(X)の担持量は、層状珪酸塩担体1gあたり、0.0001〜5ミリモル、好ましくは0.001〜0.5ミリモル、さらに好ましくは0.01〜0.1ミリモルである。
【0084】
こうして得られるオレフィン重合用触媒は、必要に応じてモノマーの予備重合を行った後に使用しても差し支えない。
【0085】
2−5.エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の重合方法
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、好適には上記2−4に記載された製法により準備されたオレフィン重合用触媒を用いて、エチレンと上述のα−オレフィンとを共重合して製造される。
【0086】
コモノマーであるα−オレフィンとしては、上述したように、炭素数3〜10のα−オレフィンが使用可能であり、2種類以上のα−オレフィンをエチレンと共重合させることも可能であり、該α−オレフィン以外のコモノマーを少量使用することも可能である。
【0087】
本発明において、上記共重合反応は、好ましくは気相法又はスラリー法にて、行うことができる。気相重合の場合、実質的に酸素、水等を断った状態で、エチレンやコモノマーのガス流を導入、流通、又は循環した反応器内においてエチレン等を重合させる。また、スラリー重合の場合、イソブタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で、エチレン等を重合させる。また、液状エチレンや液状プロピレン等の液体モノマーも溶媒として使用できることは言うまでもない。本発明において、更に好ましい重合は、気相重合である。重合条件は、温度が0〜250℃、好ましくは20〜110℃、更に好ましくは60〜100℃であり、圧力が常圧〜10MPa、好ましくは常圧〜4MPa、更に好ましくは0.5〜2MPaの範囲にあり、重合時間としては5分〜20時間、好ましくは30分〜10時間が採用されるのが普通である。
【0088】
本願発明の特徴の一つである、適切な範囲の長鎖分岐及び適切な比率で低密度高分子量成分を有する比較的狭い逆コモノマー組成分布の共重合体を得るためには、用いる触媒成分(X)と触媒成分(Y)の種類の選定のほか、更に触媒(X)と(Y)のモル比や、(X)と(Z)のモル比、(Y)と(Z)のモル比、重合温度、エチレン分圧、H2/C2比、コモノマー/エチレン比等の重合条件を変えることによって、適宜調節することができる。
具体的には、例えば、本願実施例1記載の錯体を用いた場合、触媒の調整方法としては、錯体/シリカ=10〜40μmol/g、有機アルミニウムオキシ化合物/シリカ=7〜10mmol/g、調整剤の使用は任意であり、重合条件60〜90℃、エチレン分圧0.3〜2.0MPa、H2/C2%=0.2〜2.0%、C6/C2=0.1〜0.8%の範囲で適宜設定する。
また、重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えても何ら支障なく実施することができる。
なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、前記有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。
【0089】
生成共重合体の長鎖分岐構造(すなわちg)やコモノマー共重合組成分布(すなわちW〜W等)は、触媒成分(X)や触媒成分(Y)の種類、触媒のモル比、重合温度や圧力、時間等の重合条件や重合プロセスを変えることによって調節可能である。長鎖分岐構造を形成しやすい触媒成分種を選択しても、例えば重合温度を下げたりエチレン圧力を上げたりして長鎖分岐構造の少ない共重合体を製造することも可能である。また、分子量分布や共重合組成分布の広い触媒成分種を選択しても、例えば触媒成分モル比、重合条件や重合プロセスを変えることによって分子量分布や共重合組成分布の狭い共重合体を製造することも可能である。
【0090】
水素濃度、モノマー量、重合圧力、重合温度等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合方式においても、重合条件を適切に設定するならば、本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)を製造することが可能であり得るだろうが、本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、一段階重合反応により製造される場合、複雑な重合運転条件を設定することなく、より経済的に製造できるので好ましい。
【0091】
3.他の樹脂
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)(以下、「エチレン・α−オレフィン共重合体(A)」と称する)は、その顕著な改質効果に着目して、(A)以外の他のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)と共に含有して、ポリエチレン系樹脂組成物に用いることができる。
樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の含有量は、樹脂組成物100重量%中1〜59重量%、更に好ましくは1〜49重量%、更に好ましくは3〜39重量%が、改質目的では好ましい。
【0092】
3−1.他のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)
他のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)としては、長鎖分岐構造を実質的には有さず、分子構造が線状であり、たとえばチーグラー系触媒により得られる、分子構造が線状であり分子量分布が比較的広い、いわゆる線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはメタロセン系触媒により得られる、分子構造が線状であり分子量分布が更に狭いメタロセン系ポリエチレンが挙げられる。このように、長鎖分岐構造を実質的には有さず、が分子構造が線状である、線状低密度ポリエチレンは、本願発明で定義するgcの値が0.85を超えた値を示すので、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)とは異なる。
特に好ましくは、下記物性(B−1)および(B−2)を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体を用いると、共重合体(A)による改質効果が発揮され、好ましい。
(B−1)MFR=0.01〜20g/10分
(B−2)密度=0.880〜0.970g/cm
更に、他のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)として下記物性(B−3)を満たすメタロセン系ポリエチレンを用いると、共重合体(A)による改質効果がより効果的であるため、好ましい。
(B−3)Mw/Mn=2.0〜5.0
なお、MFR、密度、Mw/Mnの定義は上述の共重合体(A)の定義と同様である。
【0093】
3−2−1.条件(B−1)MFR
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のメルトフローレイト(MFR)は0.01〜20.0g/10分であり、0.1〜5.0g/10分が好ましい。さらに(B)として、チーグラー系触媒で得られる比較的分子量分布の広い(後述するQ値でいうと3.0超〜の値を示すことが多い)チーグラー系線状低密度ポリエチレン共重合体を用いる場合には、0.3〜3.0g/10分の範囲が、より好ましく、一方(B)として、メタロセン系触媒で得られる比較的分子量分布の狭い(後述するQ値でいうと2.0以上〜3.0以下の値を示すことが多い)共重合体を用いる場合には、0.3〜4.0g/10分の範囲が、より好ましい。MFRが低過ぎると、成形加工性が劣り、一方、MFRが高過ぎると、耐衝撃性、機械的強度等が低下する恐れがある。
【0094】
3−2−2.条件(B−2)密度
また、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の密度は、0.880〜0.970g/cmであり、0.880〜0.950g/cmが好ましく、0.890〜0.940g/cmがより好ましい。密度がこの範囲内にあると、耐衝撃性と剛性のバランスが優れる。また、密度が低過ぎると、剛性が低下し、自動製袋適性を損なう恐れがある。一方、密度が高過ぎると、耐衝撃性を損なう恐れがある。
【0095】
3−2−3.条件(B−3)分子量分布
さらに、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比[Mw/Mn](以下、Q値ともいう。)は2.0〜10.0である。Q値が2.0未満の場合、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)と他の重合体成分が混ざり難い可能性がある。Q値が10.0を超えると、耐衝撃性の改良効果が充分でなく、耐衝撃性と剛性のバランスが損なわれる。耐衝撃性と剛性のバランス上、Q値の上限は、好ましくは7.5以下、より好ましくは5.0以下である。Q値の下限は、好ましくは2.3以上、より好ましくは2.5以上である。
なお、(B)として、チーグラー系触媒で得られる共重合体を用いる場合には、Q値が3.0超〜5.0g/10分、メタロセン系触媒で得られる共重合体を用いる場合には、2.0〜4.0g/10分のQ値を有することが好ましい。なお、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比[Mw/Mn]は、以下の条件(以下、「分子量分布の測定方法」と言うこともある)で測定した時の値をいう。Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で定義されるものである。
【0096】
3−2−4.エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の組成
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)成分は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体である。ここで用いられる共重合成分であるα−オレフィンとしては、前述のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)で用いたものと同様である。
【0097】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)におけるエチレンとα−オレフィンの割合は、エチレン約80〜100重量%、α−オレフィン約0〜20重量%であり、好ましくはエチレン約85〜99.9重量%、α−オレフィン約0.1〜15重量%であり、より好ましくはエチレン約90〜99.5重量%、α−オレフィン約0.5〜10重量%であり、更に好ましくはエチレン約90〜99重量%、α−オレフィン約1〜10重量%である。エチレン含量がこの範囲内であれば、ポリエチレン系樹脂組成物や該成形体の剛性と衝撃強度のバランスがよい。
【0098】
3−2−5.エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の製法
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、オレフィン重合用触媒を用いてエチレンを単独重合または上述のα−オレフィンと共重合する方法によって実施される。
オレフィン重合用触媒としては、今日様々な種類のものが知られており、該触媒成分の構成および重合条件や後処理条件の工夫の範囲内において上記エチレン・α−オレフィン共重合体(B)が準備可能であれば何ら制限されるものではないが、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の製造に好適な、工業レベルにおける経済性を満足する技術例として、以下の(i)〜(ii)で説明する遷移金属を含む具体的なオレフィン重合用触媒の例を挙げることができる。
(i)チーグラー触媒
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の製造に好適なオレフィン重合用触媒の例として、遷移金属化合物と典型金属のアルキル化合物等の組み合わせからなるオレフィン配位重合触媒としてのチーグラー・ナッタ触媒が挙げられる。とりわけマグネシウム化合物にチタニウム化合物を担持させた固体触媒成分と有機アルミニウム化合物を組み合わせたいわゆるMg−Ti系チーグラー触媒(例えば、「触媒活用大辞典;2004年工業調査会発行」、「出願系統図―オレフィン重合触媒の変遷―;1995年発明協会発行」等を参照)は安価で高活性かつ重合プロセス適性に優れることから好適である。
【0099】
(ii)メタロセン触媒
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の製造に好適な重合触媒の例として、メタロセン系遷移金属化合物と助触媒成分からなるオレフィン重合触媒であるメタロセン触媒(例えば、「メタロセン触媒による次世代ポリマー工業化技術(上・下巻);1994年インターリサーチ(株)発行」等を参照)は、比較的安価で高活性かつ重合プロセス適性に優れ、更には分子量分布および共重合組成分布が狭いエチレン系重合体が得られることから使用される。
(iii)特定のメタロセン系ポリエチレン
特に本願発明においては、本願発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)と組み合わせる他のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)として、例えば特許第3561562号に記載の下記特有の特徴を有する、特定のメタロセン系ポリエチレンを用いると、樹脂組成物の透明性が格段と向上するため好ましい。
下記物性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体
(a)密度0.86〜0.945g/cm未満
(b)メルトフローレート(MFR)0.01〜50g/10分、
(c)分子量分布(Mw/Mn)1.5〜4.5、
(d)組成分布パラメーターCbl.08〜2.00、
(e)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分の量W(wt%)と密度dおよびMFRが下記(イ)または(ロ)の関係を満足すること
(イ)密度dおよびMFRの値がd−0.008×logMFR≧0.93の場合
W < 2.0
(ロ)密度dおよびMFRの値がd−0.008×logMFR<0.93の場合
W <9.8×103×(0.9300−d+0.008×10gMFR)2+2.0
(f)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数であること
【0100】
4.ポリエチレン系樹脂組成物
以下に、主に本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)を1〜59重量%と、A以外の他のオレフィン系樹脂(エチレン・α−オレフィン共重合体(B)等)を99〜41重量%含有する樹脂組成物であって、主にフィルム用途に適したオレフィン系樹脂組成物について、詳述する。
具体的に好ましくは、フィルム用、シート用のオレフィン系樹脂組成物としては、本発明の特定のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)を1〜49重量%、他のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)を99〜51重量%、好ましくは(A)を3〜35重量%、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)を75重量%〜97重量%、場合により更に好ましくは他のオレフィン系樹脂(C)を1〜30重量%添加してなる組成物が挙げられる。
【0101】
4−1.MFR
上記成分(A)及び(B)からなる、フィルム用のオレフィン系樹脂組成物のMFRは、0.01〜20g/10分の範囲であることが必要であり、好ましくは0.05〜10g/10分であり、より好ましくは0.10〜5g/10分である。
MFRが0.01g/10分より低いと、流動性が悪く、押出機のモーター負荷が高くなりすぎ、一方、MFRが20g/10分より大きくなると、バブルが安定せず、成形し難くなると共に、フィルムの強度が低くなる。
なお、オレフィン系樹脂組成物のMFRは、JIS K 7210に準拠し、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定される値であるが、おおよそのMFRは成分(A)、(B)のそれぞれのMFRと割合から、加成則に従って算出することが出来る。
【0102】
4−2.密度
上記成分(A)及び(B)からなる、本発明のオレフィン系樹脂組成物の密度は、0.880〜0.970g/cmの範囲であることが必要であり、好ましくは0.910〜0.950g/cmであり、より好ましくは0.915〜0.940g/cmである。
オレフィン系樹脂組成物の密度が0.880g/cmより低いと、フィルムの剛性が低くなり、自動製袋機適性が悪化する。また、オレフィン系樹脂組成物の密度が0.970g/cmより高いと、フィルムの強度が低下する。
なお、オレフィン系樹脂組成物の密度は、成分(A)、(B)のそれぞれの密度と割合から、加成則に従って算出することが出来る。
【0103】
4−3.条件(AB−1)成分(A)、(B)のMFRの関係
上記成分(A)と(B)からなる、本発明のオレフィン系樹脂組成物を作成するにあたっては、上記成分(A)と(B)のMFRの関係として、MFR>MFR、または20>MFR/MFR>1.0であることが好ましく、より好ましくは15.0>MFR/MFR>1.0であり、より好ましくは10.0>MFR/MFR>1.0である。
上記成分(A)と(B)のMFRの関係がMFR>MFRであると、上記成分(A)の添加によりバブルがより安定する。また、20>MFR/MFR>1.0であることにより、上記成分(B)の添加によるインフレーション成形時にバブルが安定し、加工特性が向上する。
【0104】
4−4.条件(AB−2)成分(A)、(B)の分子量分布の関係
上記成分(A)と(B)からなる、本発明のオレフィン系樹脂組成物を作成するにあたっては、上記成分(A)と(B)の[Mw/Mn]の関係として、[Mw/Mn]<[Mw/Mn]であることが好ましい。
上記成分(A)、(B)の[Mw/Mn]の関係が[Mw/Mn]<[Mw/Mn]であると、上記成分(B)の添加によるインフレーション成形時のバブルが安定し、加工特性が向上する。
【0105】
5.その他配合物等
本発明においては、本発明の特徴を損なわない範囲において、必要に応じ、帯電防止剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、核剤、滑剤、防曇剤、有機あるいは無機顔料、紫外線防止剤、耐候剤、分散剤などの公知の添加剤を添加することができる。
【0106】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、上記のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)、他のポリオレフィン系樹脂、必要に応じて、添加又は配合される各種の添加剤及び共重合体成分を、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等を用いて混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー等で加熱混練し、ペレット化してもよい。
【0107】
6.成形方法
本発明のポリエチレン系樹脂組成物を用いた成形体の成形方法については、本発明のポリエチレン系樹脂組成物の優れた加工特性や機械的諸特性を有効に活用できる方法であれば特に制限されるものではないが、本発明のポリエチレン系樹脂組成物の主に意図したる用途の一例であるフィルム、袋、シートの場合、その好ましい成形方法としては各種のインフレーション成形法、Tダイフィルム成形法、カレンダー成形法、多層共押出成形機やラミネート処理による多層フィルム成形法等が挙げられる。
【0108】
このようにして得られるフィルム(又はシート)の厚みは特に制限されず、成形方法・条件により好適な厚みは異なる。たとえば、インフレーション成形の場合、5〜300μm程度であり、Tダイ成形の場合、5μm〜5mm程度のフィルム(又はシート)とすることができる。
【0109】
7.用途
本発明のフィルム用エチレン系樹脂組成物を用いたフィルム(又はシート)の用途としては、具体的に例を記すと、紙袋の内袋やゴミ袋など寸法規格の定まった規格袋、重袋、ラップフィルム、砂糖袋、米袋、油物包装袋、漬物などの水物包装袋における食品包装用フィルム、自動充填性が求められる包材、輸液バッグ、農業用フィルム等、ナイロン、ポリエステル、金属箔、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物などの各種基材との積層体、スタンディングパウチ、発泡体やその成形体としての使用、バッグインボックス、洗剤用容器、食用油容器、レトルト容器、医療容器、薬品用容器、溶剤用容器、農薬用容器、輸液バッグ、クリーンフィルム等が挙げられる。クリーンフィルムの具体的な用途例を示すと、サプリメントなどの食品・飲料、注射器や輸液バックなどの医療品・医薬品、または液晶部材、電子・電気部品、精密部品の包装袋等が挙げられる。
【0110】
また、本発明の樹脂組成物を用いたフィルムは、近年、容器の大容量化に伴い、シーラントフィルム自身に衝撃強度改良が求められてきた詰替え用パウチに用いられるスタンディングパウチ用シーラントフィルムとして用いると好ましい。スタンディングパウチ用シーラントフィルムは、通常、ポリエチレン系樹脂組成物からなるフィルム単体で、または、ナイロン、ポリエステルフィルム等をウレタン系等の接着剤を用いて貼り合わせて使用される。従来、エチレンと1−ブテンの共重合体に高圧法低密度ポリエチレンをブレンドしたような樹脂が用いられてきたが、厚みを増すと、衝撃強度が改良するものの、容器の減容化の要求には応えることができなかった。これに対し、本発明の樹脂組成物を用いると、容器の減容化、すなわちフィルムを薄肉化しても衝撃強度を従来程度以上保持することが可能となる。また、スタンディングパウチ用シーラントフィルムに求められる、フィルムインパクト(突き刺しに対する耐強度)も十分に満たしている。
【実施例】
【0111】
以下においては、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明し、本発明の卓越性と本発明の構成における優位性を実証するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において使用した測定方法は、以下の通りである。また、以下の触媒合成工程および重合工程は、すべて精製窒素雰囲気下で行い、かつ、使用した溶媒は、モレキュラーシーブ4Aで脱水精製したものを用いた。
【0112】
[物性の測定方法]
(1)MFR
JIS K7210の「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定した。
(2)密度
JIS K7112(1999年版):A法(水中置換法)により測定した。
(3)GPCにより測定される分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図1に例示されるように行った。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行った。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いた。その際使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いた。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
【0113】
(4)示差屈折計、粘度検出器及び光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)
示差屈折計(RI)及び粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いた。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いた。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続した。移動相溶媒は、1,2,4−trichlorobenzene(酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。流量は1mL/分である。カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いた。カラム、試料注入部及び各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとした。注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。MALLSから得られる絶対分子量(M)、慣性二乗半径(Rg)及びViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、上述した文献を参考にして計算を行った。
[分岐指数(gC)等の算出]
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度(ηbranch)と、別途、線形ポリマーを測定して得られる極限粘度(ηlin)との比(ηbranch/ηlin)として算出した。
MALLSから得られる絶対分子量として、分子量10万から100万における上記g’の最低値を、gCとして算出した。ここで、線形ポリマーとしては、直鎖ポリエチレンStandard Reference Material 1475a(National Institute of Standards & Technology)を用いた。
【0114】
(5)昇温溶出分別(TREF)により85℃以上で溶出する成分の割合(X)
試料を140℃でオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)に溶解し、溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却し、更に続いて1℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、20分間保持する。その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。この時、85℃から140℃までの間に溶出する成分量をX(単位wt%)とする。
使用装置は、下記のとおりである。
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000
(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ、4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル、光路長1.5mm、窓形状2φ×4mm長丸、合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
測定条件
溶媒:オルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
【0115】
(6)W2+W3,W2+W4,W2‐W4,
結晶性分別を行う昇温溶出分別(TREF)部と分子量分別を行うゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)部とから成る、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により行った。
即ち、ポリマーサンプルを0.5mg/mLのBHTを含むオルトジクロロベンゼン(ODCB)に140℃で完全に溶解した後、この溶液を装置のサンプルループを経て140℃に保持されたTREFカラム(不活性ガラスビーズ担体が充填されたカラム)に注入し、所定の第1溶出温度まで徐々に冷却しポリマーサンプルを結晶化させた。
所定の温度で30分保持した後、ODCBをTREFカラムに通液することにより、溶出成分がGPC部に注入されて分子量分別が行われ、赤外検出器(FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器、測定波長3.42μm)によりクロマトグラムが得た。その間、TREF部では次の溶出温度に昇温され、第1溶出温度のクロマトグラムが得られた後、第2溶出温度での溶出成分がGPC部に注入された。以下、同様の操作を繰り返すことにより、各溶出温度での溶出成分のクロマトグラムが得られた。
なお、CFCの測定条件は、以下の通りである。
装置:ダイヤインスツルメンツ社製CFC−T102L
GPCカラム:昭和電工社製AD−806MS(3本を直列に接続)
溶媒:ODCB
サンプル濃度:3mg/mL
注入量:0.4mL
結晶化速度:1℃/分
溶媒流速:1mL/分
GPC測定時間:34分
GPC測定後安定時間:5分
溶出温度:0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140
データ解析
測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムから、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)を求めた。
また、各クロマトグラムから、上述のGPCと同じ手順により分子量分布を求めた。
各溶出温度における分子量分布及び溶出量から、文献(S.Nakano,Y.Goto,”Development of automatic Cross Fractionation:Combination of Crystallizability Fractionation and Molecular Weight Fractionation”,J.Appl.Polym.Sci.,vol.26,pp.4217−4231(1981))の方法に従って、溶出温度と分子量に関する溶出量を等高線として示すグラフ(等高線図)を得た。
上記の等高線図を用いて、以下の成分量を求めた。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合。
なお、W+W+W+W=100である。
【0116】
[インフレーションフィルムの成形条件]
以下の50mmφ押出機を有するインフレーションフィルム製膜機(成形装置)を用いて、下記の成形条件で、インフレーションフィルムを成形し、評価した。
装置:インフレーション成形装置
押出機スクリュー径:50mmφ
ダイ径:75mmφ
押出量:15kg/hr
ダイリップギャップ:1.0mmあるいは3.0mm(実施例に記載)
引取速度:20.0m/分
ブローアップ比:2.0
成形樹脂温度:170−190℃(実施例に記載)
フィルム厚み:30μm
【0117】
[フィルムの評価方法]
(1)引張弾性率:
JIS K7127−1999に準拠して、フィルムの加工方向(MD)とフィルムの幅方向(TD)の1%変形したときの引張弾性率を測定した。
(2)ダート落下衝撃強度(DDI)
JIS K 7124 1 A法に準拠して測定した。
【0118】
<実験例イ>
〔重合体(A)の製造例1〕
(1)架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物の合成;
ジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを、特開2013−227271号公報[0140]〜[0143]記載の方法に従い合成した。
【0119】
(2)オレフィン重合用触媒の合成;
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに400℃で5時間焼成したシリカ30グラムを入れ、150℃のオイルバスで加熱しながら真空ポンプで1時間減圧乾燥した。別途用意した200ml二口フラスコに窒素雰囲気下で、上記(1)で合成したジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド410ミリグラムを入れ、脱水トルエン80.4mlで溶解した後、更に室温でアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液82.8mlを加え30分間撹拌した。真空乾燥済みシリカの入った500ml三口フラスコを40℃のオイルバスで加熱および撹拌しながら、上記ジルコノセン錯体とメチルアルミノキサンの反応物のトルエン溶液を全量加えた。40℃で1時間撹拌した後、40℃に加熱したままトルエン溶媒を減圧留去することで粉状触媒を得た。
(3)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造;
上記(2)で得た粉状触媒を使用してエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。すなわち、温度75℃、ヘキセン/エチレンモル比0.27%、水素/エチレンモル比0.53%、窒素濃度を26mol%、全圧を0.8MPaに準備された気相連続重合装置(内容積100L、流動床直径10cm、流動床種ポリマ−(分散剤)1.8kg)に該粉状触媒を0.21g/時間の速さで間欠的に供給しながらガス組成と温度を一定にして重合を行った。また、系内の清浄性を保つためトリエチルアルミニウム(TEA)のヘキサン稀釈溶液0.03mol/Lを15.7ml/hrでガス循環ラインに供給した。その結果、生成ポリエチレンの平均生成速度は330g/時間となった。累積5kg以上のポリエチレンを生成した後に得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体のMFRと密度は各々0.23g/10分、0.921g/cmであった。結果を表3、表4に示した。
【0120】
〔製造例2〕
(1)オレフィン重合用触媒の合成;
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに400℃で5時間焼成したシリカ30グラムを入れ、次いで脱水トルエン195mlを追加してスラリーとした。別途用意した200ml二口フラスコに窒素雰囲気下で、製造例1(1)で合成したジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド410ミリグラムを入れ、脱水トルエン80.4mlで溶解した後、更に室温でアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液82.8mlを加え30分間撹拌した。シリカのトルエンスラリー液の入った500ml三口フラスコを4
0℃のオイルバスで加熱および撹拌しながら、上記ジルコノセン錯体とメチルアルミノキサンの反応物のトルエン溶液を全量加えた。40℃で1時間撹拌した後、40℃に加熱したまま15分静沈して上澄み224mlを除去し、次いでトルエン溶媒を減圧留去して粉状触媒を得た。
(2)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造;
製造例1(2)の粉状触媒の代わりに、上記(1)で得た粉状触媒を使用して、表2に記載の条件以外は、製造例1(3)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。結果を表3、表4に示した。
【0121】
〔製造例3〕
(1)オレフィン重合用触媒の合成;
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに400℃で5時間焼成したシリカ20グラムを入れ、150℃のオイルバスで加熱しながら真空ポンプで1時間減圧乾燥した。別途用意した200ml二口フラスコに窒素雰囲気下で、上記(1)で合成したジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド273ミリグラムを入れ、脱水トルエン53.6mlで溶解した後、更に室温でアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液55.2mlを加え30分間撹拌した。真空乾燥済みシリカの入った500ml三口フラスコを40℃のオイルバスで加熱および撹拌しながら、上記ジルコノセン錯体とメチルアルミノキサンの反応物のトルエン溶液を全量加えた。40℃で1時間撹拌した後、40℃に加熱したままトルエン溶媒を減圧留去することで粉状触媒を得た。
(2)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造;
製造例1(2)の粉状触媒の代わりに、上記(1)で得た粉状触媒を使用して、表2に記載の条件以外は、製造例1(3)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。結果を表3、表4に示した。
【0122】
〔製造例4〕
エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造;
製造例2(2)で得た粉状触媒を使用して、表2に記載の条件以外は、製造例1(3)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。結果を表3、表4に示した。
【0123】
〔製造例5〕
エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造;
製造例2(2)で得た粉状触媒を使用して、表2に記載の条件以外は、製造例1(3)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。結果を表3、表4に示した。
【0124】
〔製造例6〕
(1)オレフィン重合用触媒の合成;
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに400℃で5時間焼成したシリカ30グラムを入れ、次いで脱水トルエン195mlを追加してスラリーとした。別途用意した200ml二口フラスコに窒素雰囲気下で、製造例1(1)で合成したジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド412ミリグラムを入れ、脱水トルエン80.7mlで溶解した後、更に室温でアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液78.9mlを加え30分間撹拌した。シリカのトルエンスラリー液の入った500ml三口フラスコを40℃のオイルバスで加熱および撹拌しながら、上記ジルコノセン錯体とメチルアルミノキサンの反応物のトルエン溶液を全量加えた。40℃で1時間撹拌した後、40℃に加熱したまま15分静沈して上澄み221mlを除去し、次いでトルエン溶媒を減圧留去して粉状触媒を得た。
(2)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造;
製造例1(2)の粉状触媒の代わりに、上記(1)で得た粉状触媒を使用して、表2に記載の条件以外は、製造例1(3)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。結果を表3、表4に示した。
【0125】
〔製造例7〕
(1)オレフィン重合用触媒の処理
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに、製造例6(1)で得た粉状触媒のうち32gを入れ、脱水ヘキサン195mlと脱水流動パラフィン(MORESCO社製;商品名モレスコホワイトP−120)13.5gの混合液を室温で加えて10分撹拌した後、40℃で溶媒を減圧留去して再び粉状触媒を得た。
(2)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造;
製造例1(2)の粉状触媒の代わりに、上記(1)で得た粉状触媒を使用して、表2に記載の条件以外は、製造例1(3)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。結果を表3、表4に示した。
【0126】
〔製造例8〕
(1)オレフィン重合用触媒の処理
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに、製造例6(1)で得た粉状触媒のうち31gを入れ、脱水ヘキサン195mlと脱水液状ポリブテン(JX日鉱日石エネルギー社製;商品名日石ポリブテンLV−7)12.7gの混合液を室温で加えて10分撹拌した後、40℃で溶媒を減圧留去して再び粉状触媒を得た。
(2)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造;
製造例1(2)の粉状触媒の代わりに、上記(1)で得た粉状触媒を使用して、表2に記載の条件以外は、製造例1(3)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。結果を表3、表4に示した。
【0127】
〔製造例9〕
(1)オレフィン重合用触媒の合成;
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに600℃で5時間焼成したシリカ30グラムを入れ、150℃のオイルバスで加熱しながら真空ポンプで1時間減圧乾燥した。別途用意した200ml二口フラスコに窒素雰囲気下で、上記(1)で合成したジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド412ミリグラムを入れ、脱水トルエン80.7mlで溶解した後、更に室温でアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液83.1mlを加え30分間撹拌した。真空乾燥済みシリカの入った500ml三口フラスコを40℃のオイルバスで加熱および撹拌しながら、上記ジルコノセン錯体とメチルアルミノキサンの反応物のトルエン溶液を全量加えた。40℃で1時間撹拌した後、40℃に加熱したままトルエン溶媒を減圧留去することで粉状触媒を得た。
(2)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造;
製造例1(2)の粉状触媒の代わりに、上記(1)で得た粉状触媒を使用して、表2に記載の条件以外は、製造例1(3)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。結果を表3、表4に示した。
【0128】
〔製造例10〕
(1)オレフィン重合用触媒の合成;
ジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの代わりに、ジメチルシリレン(3−メチル−4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−3−メチル−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド421ミリグラムを使用した以外は、製造例1(2)と同様にして粉状のオレフィン重合用触媒を得た。
(2)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造;
製造例1(2)の粉状触媒の代わりに、上記(1)で得た粉状触媒を使用して、表2に記載の条件以外は、製造例1(3)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。結果を表3、表4に示した。
【0129】
〔製造例11〕エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造;
製造例7(1)で脱水流動パラフィンを180gとして得られたスラリー触媒を製造例7(2)の粉状触媒の代わりに使用して、表2に記載の条件以外は、製造例1(3)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。結果を表3、表4に示した。
【0130】
〔製造例12〕エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造;
製造例11で、表2に記載の条件以外は、製造例11と同様にしてエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。結果を表3、表4に示した。
【0131】
〔比較重合体1〕
エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造;
特開2012−214781号公報の実施例8a(1)に記載のエチレン系重合体(B−8)の製造方法と同様にしてエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。結果を表3、表4に示した。
【0132】
〔比較重合体2〕
(1)オレフィン重合用触媒の合成;
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに400℃で5時間焼成したシリカ30グラムを入れ、次いで脱水トルエン195mlを追加してスラリーとした。別途用意した200ml二口フラスコに窒素雰囲気下で、製造例1(1)で合成したジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド820ミリグラムを入れ、脱水トルエン161mlで溶解した後、更に室温でアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液49.7mlを加え30分間撹拌した。シリカのトルエンスラリー液の入った500ml三口フラスコを40℃のオイルバスで加熱および撹拌しながら、上記ジルコノセン錯体とメチルアルミノキサンの反応物のトルエン溶液を全量加えた。40℃で1時間撹拌した後、40℃に加熱したまま15分静沈して上澄み224mlを除去し、次いでトルエン溶媒を減圧留去して粉状触媒を得た。
(2)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造;
製造例1(2)の粉状触媒の代わりに、上記(1)で得た粉状触媒を使用して、表2に記載の条件以外は、製造例1(3)と同様にしてエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。結果を表3、表4に示した。
【0133】
〔比較重合体3〕
エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造;
特開2012−214781号公報の実施例5a(1)に記載のエチレン系重合体(B−5)の製造方法と同様にしてエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。結果を表2、表3に示した。
【0134】
〔比較重合体4〕
長鎖分岐を有する市販のエチレン系重合体(住友化学社製CU5001;MFR=0.3g/10分、密度0.922g/cm)の分析結果を表3、表4に示した。
【0135】
〔参考重合体1〕
市販の高圧ラジカル法低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製LF240;MFR=0.7g/10分、密度0.924g/cm)の分析結果を表3、表4に示した。
【0136】
〔比較重合体5〕
長鎖分岐を有しない線状低密度ポリエチレン(エチレン・1−ヘキセン共重合体)の製造;
通常の、長鎖分岐を有しない線状低密度ポリエチレンの例として、メタロセン化合物として表2記載のメタロセン3を用いて、表1に記載の条件以外は、特開2012−214781号公報の実施例1a(1)に記載のエチレン系重合体(A−1)の製造方法と同様にしてエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。結果を表3、表4に示した。
【0137】
〔フィルム成形実験〕
(実施例1〜13、比較例1〜11)
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)による他のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)の改質効果を確認するために以下のフィルム成形実験を行った。
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)がポリオレフィン系樹脂改質材として優れた性能を有することは、本発明の該共重合体および本発明でない該共重合体を所定量、市販のエチレン系重合体にブレンドして得られるポリエチレン系樹脂組成物をインフレーションフィルム成形し、そのようにして得られるフィルムの物性を測定することによって示すことができる。
すなわち、上記製造例1〜12、比較重合体1〜5および参考重合体1を、マグネシウム・チタニウム複合型チーグラー触媒で製造された市販のエチレン系重合体(日本ポリエチレン社製UF230;MFR=1.1g/10分、密度0.921g/cm。エチレン・1−ブテン共重合体)に表4に示す条件でブレンドし、上述の条件にてインフレーションフィルム成形を実施した。市販のエチレン系重合体にブレンドする本発明の共重合体および本発明でない共重合体のブレンド比率、得られたフィルムの引張弾性率(単位MPa)、ダートドロップインパクト強度(DDI;単位g)は、表4に示す通りであった。
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
【表4】
【0141】
(表2〜表4の結果による考察)
表2の触媒と重合条件により製造された表3のエチレン・α−オレフィン共重合体のうち、本願発明の特定物性を有するエチレン・α−共重合体に属する製造例1〜製造例9の共重合体をエチレン系重合体PE−3にブレンドしたフィルム(実施例1〜11)の物性と、触媒成分(A)(B)(C)は同じであるが使用比率が異なる触媒を使用したためにW+Wが条件(5)を満足しない比較重合体1、比較重合体2の共重合体を使用したフィルム(比較例1〜3)の物性、他の触媒成分(X)を使用して製造された本発明ではない共重合体である比較重合体3(比較例4)、長鎖分岐を含有するが本発明の重合体(A)ではない市販のエチレン・α−オレフィン共重合体である比較重合体4を使用したフィルム(比較例5〜7)、市販の高圧法低密度ポリエチレンである参考重合体1を使用した使用したフィルム(比較例8〜10)との比較を行った。共重合体のブレンド比率が5、10、20%、30%について、各実施例、比較例において得られた弾性率及び衝撃強度をプロットしたものを図7に示す。
実施例のフィルムの引張弾性率と衝撃強度とのバランスは、比較例に比較して極めてよく、本発明の樹脂組成物としての優位性が理解されるであろう。同様に、本発明に属する上記製造例の共重合体をより少量の10%ブレンドした際のフィルムの引張弾性率と衝撃強度とのバランスは、比較重合体1の共重合体を同量使用した比較例2を上回り、更には、10%という少量のブレンド量にもかかわらず比較重合体1や比較重合体2の共重合体をより多い20%使用した比較例1や比較例3とほぼ同等の性能を発現することによっても、本発明の共重合体の優位性が明らかである。
【0142】
更に、比較重合体4の共重合体は、比較例1の共重合体と同程度以下の改質効果しか示しておらず、改質前のエチレン系重合体PE−3の引張弾性率と衝撃強度のバランスを多少向上させてはいるが、ブレンド量を増加させても実施例の時のような衝撃強度の向上は殆ど観られなかった。このことから、いずれの他の共重合体も本発明の共重合体に及ばないことが理解されるであろう。
【0143】
次に、エチレン系重合体PE−3のインフレーションフィルム成形加工特性を向上するための実用的な手法としてよく知られている高圧ラジカル法ポリエチレンを改質材としてブレンドする方法により得られたフィルムと、本発明による共重合体をブレンドしたフィルムの物性を比較することにより、本発明の共重合体が改質材としての有用性をもつことを示す。
すなわち、比較例8〜比較例10にエチレン系重合体PE−3に市販の高圧法ポリエチレンを0%、10%、15%とブレンドしてフィルムを成形した。高圧法ポリエチレンを15%ブレンドしたラン10のフィルム成形性は、本発明の共重合体を20〜30%ブレンドした実施例1,4、6〜8とほぼ同等であった(溶融張力がほぼ同程度の値であった)が、フィルムの引張弾性率と衝撃強度は、エチレン系重合体PE−3単独フィルムである比較例8から引張弾性率の増加は観られるものの衝撃強度は反対に低下し、本発明の共重合体を使用した場合に得られる衝撃強度の大幅な向上は得られない。したがって、本発明の樹脂組成物は、従来の改質手法では得られなかったエチレン系フィルムを得るのに優れた手法を提供することを可能とした。
【0144】
以上から、本発明における構成の要件の合理性と有意性、及び本発明の従来技術に対する優越性が明らかである。
【0145】
<実験例ロ>
〔実施例ロ−1〕
(1)架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物の合成
上記実験例イと同じジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを用いた。
(2)オレフィン重合用触媒の合成
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに400℃で5時間焼成したシリカ30グラムを入れ、次いで脱水トルエン195mlを追加してスラリーとした。別途用意した200ml二口フラスコに窒素雰囲気下で、上記(1)で合成したジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド412ミリグラムを入れ、脱水トルエン80.7mlで溶解した後、更に室温でアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液78.9mlを加え30分間撹拌した。シリカのトルエンスラリー液の入った500ml三口フラスコを40℃のオイルバスで加熱及び撹拌しながら、上記ジルコノセン錯体とメチルアルミノキサンの反応物のトルエン溶液を全量加えた。40℃で1時間撹拌した後、40℃に加熱したまま15分静沈して上澄み221mlを除去し、脱水ヘキサンを加えて撹拌、静沈、上澄み除去を行うことにより溶媒中のトルエン含有量が3%以下になるまで置換した後、減圧留去して粉状触媒を得た。
(3)オレフィン重合用触媒の処理
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに、上記(2)で得た粉状触媒のうち32gを入れ、脱水ヘキサン195mlと脱水流動パラフィン(MORESCO社製;商品名モレスコホワイトP−120)180gの混合液を室温で加えて10分撹拌した後、室温で溶媒中のヘキサン含有量が5%以下になるまで減圧留去してスラリー触媒を得た。
(4)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造
上記(3)で得たスラリー触媒を使用してエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。すなわち、温度85℃、ヘキセン/エチレンモル比0.43%、水素/エチレンモル比0.52%、エチレン圧を1.5MPaに準備された気相連続重合装置に該粉状触媒を0.027g/時間の速さで間欠的に供給しながらガス組成と温度を一定にして重合を行った。また、系内の清浄性を保つためトリエチルアルミニウム(TEA)を0.04mmol/hrでガス循環ラインに供給した。その結果、生成ポリエチレンの平均生成速度は180g/時間(平均滞留時間10時間)となった。累積5kg以上のポリエチレンを生成した後に得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体のMFRと密度は各々0.36g/10分、0.921g/cmであった。物性を表2、結果を表3に示した。
重合体に酸化防止剤(住友化学社製スミライザーGP)を1000ppm添加し、単軸押出機(ユニオン・プラスチックス社製USV型30φ押出機)を用いて押出温度180℃で押し出すことで評価用にペレタイズした。(以下、この製造例で得られた重合体を、「mLCB」と表記する)
【0146】
〔比較例ロー1〕
高圧法で製造された低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製LF240;密度が0.924g/cm、MFRが0.7g/10分、以下「LDPE」とも表記する)を用い、実施例1と同様にして材料物性及び成形性を評価した。物性を表5、結果を表6に示した。
〔比較例ロー2〕
市販の長鎖分岐を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(住友化学社製CU5001;密度が0.922g/cm、MFRが0.3g/10分、以下「他のLCB」とも表記する)を用い、実施例1と同様に材料物性及び成形性を評価した。物性を表5、結果を表6に示した。
【0147】
〔フィルム成形実験〕
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)による他のエチレン・α−オレフィン共重合体(B)の改質効果を確認するために以下のフィルム成形実験を行った。
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体がポリエチレン系樹脂改質材として優れた性能を有することは、本発明の該共重合体および本発明でない該共重合体を所定量、市販のエチレン系重合体にブレンドして得られるポリエチレン系樹脂組成物をインフレーションフィルム成形し、そのようにして得られるフィルムの物性を測定することによって示すことができる。
【0148】
すなわち、上記実施例ロ−1、比較例ロ−1、2を、マグネシウム・チタニウム複合型チーグラー触媒で製造された市販のエチレン系重合体(日本ポリエチレン社製UF230;MFR=1.1g/10分、密度0.921g/cm。エチレン・1−ブテン共重合体)にブレンドし、上述の条件にてインフレーションフィルム成形を実施した。市販のエチレン系重合体にブレンドする本発明の共重合体および本発明でない共重合体のブレンド比率、得られたフィルムの引張弾性率(単位MPa)、ダートドロップインパクト強度(DDI;単位g)は、表6に示す通りであった。また、表6に示した引張弾性率とダートドロップインパクト強度の関係を図8にてグラフで示した。
【0149】
【表5】
【0150】
【表6】
【0151】
上記表5及び表6、及び図8に示すとおり、本願発明の特徴である、特定の物性(1)〜(5)を満たす本願発明の実施例ロ−1のエチレン・α−オレフィン共重合体(mLCB)をブレンドしたポリエチレン系樹脂組成物からなるフィルムは、引張弾性率と衝撃強度のいずれにおいても向上するのに対し、従来の高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)をブレンドした比較例ロ−1では、添加量の増加によって衝撃強度の低下が著しく、一方、従来公知の長鎖分岐を導入したエチレン・α−オレフィン共重合体(他のLCB)を用いた比較例ロ−2でも、やはり、添加量の増加によって衝撃強度の低下をもたらし、得られるフィルムの弾性率と衝撃強度のバランスが好ましくなかった。
【0152】
<実験例ハ>
以下に、スタンディングパウチ用シーラントフィルムに適した仕様でフィルムを成形し、必要な物性を確認した実施例を示す。
[インフレーションフィルムの成形条件]
以下の50mmφ押出機を有するインフレーションフィルム製膜機(成形装置)を用いて、下記の成形条件で、インフレーションフィルムを成形し、評価した。
装置:インフレーション成形装置
押出機スクリュー径:50mmφ
ダイ径:75mmφ
押出量:
150μm厚のとき 32kg/hr
130μm厚のとき 27kg/hr
100μm厚のとき 22kg/hr
ダイリップギャップ:3.0mm
引取速度:8.0m/分
ブローアップ比:2.0
成形樹脂温度:190℃
フィルム厚み:150μm、130μm、100μm
[フィルムの評価方法]
(1)引張弾性率:
JIS K7127−1999に準拠して、フィルムの加工方向(MD)とフィルムの幅方向(TD)の1%変形したときの引張弾性率を測定した。
(2)ダート落下衝撃強度(DDI)
JIS K 7124 1 A法に準拠して測定した。
(3)フィルムインパクト
東洋精機製作所製フィルムインパクトテスター(FILM・IMPACT・TESTER:以下、単に「試験機」という)を用い、単位フィルム厚み当たりの貫通破壊に要した仕事量を測定した。
具体的には、試験フィルムを23℃−50%の雰囲気に保存し、状態調節を行った後、試験機に試験フィルムを直径500mmのホルダーにて固定し、1/2インチ(約13.0mm)の半球型金属を試験フィルムの内層面から貫通部で打撃させ、貫通破壊に要した仕事量を測定した。その時、荷重は除去し、最大目盛り(仕事量)が30kg・cmとなるようにした。そして、仕事量をフィルム厚みで除した値を、フィルムインパクト値とした。
〔実施例ハ−1〜ハ−6〕フィルム成形実験
上記実施例ロ−1で準備したエチレン・α−オレフィン共重合体(A)(mLCB)をマグネシウム・チタニウム複合型チーグラー触媒で製造された市販のエチレン系重合体(日本ポリエチレン社製UF230;MFR=1.1g/10分、密度0.921g/cm、エチレン・1−ブテン共重合体)にブレンドし、上述の条件にてインフレーションフィルム成形を実施した。実施例ハ−1〜ハ−3は、同ブレンド比においてフィルム厚み150μm、130μm、100μmと変えた例を示し、実施例ハ−4〜ハ−6は、ハ−1とは異なるブレンド比において同様にフィルム厚みを変えた例である。
市販のエチレン系重合体にブレンドする本発明の共重合体のブレンド比率、得られたフィルムの厚み、引張弾性率(単位MPa)、ダートドロップインパクト強度(DDI;単位g)、フィルムインパクトは、表8に示す通りであった。
また、当該フィルムを成形する際、以下の各マスターバッチを用いた。
日本ポリエチレン社製KMB05S: スリップ剤5wt%のマスターバッチ
日本ポリエチレン社製MBN560B: アンチブロッキング剤20wt%のマスターバッチ
〔比較例ハ−1〜ハ−3〕
上記エチレン・α−共重合体(A)の代わりに、高圧法で製造された低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製LF240;密度が0.924g/cm、MFRが0.7g/10分)を用いた場合について、実施例ハ−1と同様にして材料物性及び成形性を評価した。材料物性を表7、結果を表8に示す。
【0153】
【表7】
【0154】
【表8】
[結果の考察]
上記実施例ハ−1〜3、実施例ハ−4〜6、比較例ハ−1〜ハ−3の結果で得られた、引張弾性率とフィルムインパクトの関係を示したグラフを図9として示す。
いずれもフィルム厚みが小さくなると引張弾性率とフィルムインパクト値が下がるが、実施例の樹脂組成物の方が、比較例の樹脂組成物に比べていずれも良好な引張弾性率とダート落下衝撃強度を有していることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9