(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、タッチパネルを備えたロボット操作装置もでてきており、タッチパネルをなぞる(以下、タッチ操作と称する)ことで二次元方向への操作入力が可能であることから、専用の操作キーを設ける必要が無い等、ロボット操作装置の小型化や表示部の画面サイズの拡大、あるいは低価格化などを実現できるといった効果が期待されている。その一方で、タッチパネルを用いる場合には、物理的なスイッチとは異なり、手探りで位置を把握するのが困難であることも事実である。
【0005】
しかしながら、ロボットを教示する教示作業(ティーチング作業)では、例えば0.1mm等の微小な距離でロボットを動作(以下、インチング動作と称する)させることから、タッチパネルを操作するためにロボットから目を離すと、インチング動作前の位置と動作後の位置とをその都度把握する必要があり、作業性が悪化するおそれがある。そのため、インチング動作時には、常にロボットを視認しながら作業できることが望まれている。換言すると、タッチパネルを見ずにインチング動作をさせることができれば、操作性の向上やティーチング時間の短縮化を図ることができると考えられる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タッチパネルを備える構成において、操作性の向上やティーチング時間の短縮化を図ることができ、作業効率を向上させることができるロボット操作装置、ロボット操作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のロボット操作装置は、ユーザによるタッチ操作が入力されるタッチパネルと、タッチパネルに入力されるタッチ操作時の操作態様を検出する操作態様検出部と、操作態様に所定の余裕度を持たせて対応付けられている動作態様に基づいて、ロボットをインチング動作させる際の動作方向および動作回数を設定する動作設定部と、動作設定部で設定された動作方向および動作回数でインチング動作を行うように、ロボットを動作させるための動作指令を生成する動作指令生成部と、を備える。
【0008】
これにより、タッチ操作時の操作態様によってインチング動作時の動作態様を設定できるとともに、1回のタッチ操作で動作方向および動作回数を設定できることから、操作性が向上してティーチング時間の短縮化を図ることができ、もって、作業効率を向上させることができる。
【0009】
ところで、ロボットをインチング動作させる場合には、上記したようになるべくロボットから視線を外さずに作業できることが望ましいものの、タッチパネルを用いる場合には、手探りで位置を把握できないこと、また、指がぶれたりすることがあることから、画面を見ずに指の移動方向や移動距離(指でなぞる距離)などの物理量を正確に入力することが難しい。
【0010】
このため、入力された物理量に対して一義的にインチング動作時の動作方向や動作回数を対応付けてしまうと、意図しない動作方向や動作回数でロボットが動作してしまうおそれがあり、その結果、ティーチング作業時にインチング動作させる際の作業時間が増加を招くおそれがある。
【0011】
そこで、タッチ操作時の操作態様に所定の余裕度を持たせてロボットをインチング動作させる際の動作態様に対応付けることによって、より平易に言えば、移動方向や移動距離にある程度の範囲を設けてロボットの動作態様に対応付けることにより、指のぶれや、移動方向や移動距離のずれを吸収した状態でロボットをインチング動作させることができる。これにより、意図しない方向への移動が抑制され、方向を訂正する等の余分な時間が掛かってティーチング作業の作業時間が不必要に増加してしまうことを防止できる。
したがって、タッチパネルを備える構成において、操作性の向上やティーチング時間の短縮化を図ることができ、作業効率を向上させることができる。
【0012】
また、請求項13に記載のロボット操作方法によっても、タッチパネルに対するタッチ操作時の操作態様を、所定の余裕度を持たせてロボットをインチング動作させる際の動作態様に対応付け、タッチパネルに入力されるタッチ操作時の操作態様を検出し、操作態様に対応付けられている動作態様に基づいてロボットをインチング動作させる際の動作方向および動作回数を設定し、設定された動作方向および動作回数でインチング動作を行うように、ロボットを動作させるための動作指令を生成するので、タッチパネルを備える構成において、操作性の向上やティーチング時間の短縮化を図ることができ、作業効率を向上させることができる等、請求項1に記載のロボット操作装置と同様の効果を得ることができる。
【0013】
請求項2に記載のロボット操作装置は、タッチパネルのパネル平面内には一次元方向の動作方向が対応付けられており、操作態様として、操作位置が変化した向きを示す操作方向と操作位置が変化した量を示す操作量とを検出し、操作方向に応じてインチング動作時の一次元方向の動作方向を設定するとともに、操作量に応じてインチング動作の動作回数を段階的に設定する。
インチング動作は精密な位置決め時に行われることが多く、その場合には、動作する軸が固定されているほうが良い場合がある。その一方で、目標位置を行きすぎてしまうことも考えられるため、動作方向を容易に変更できることが望ましい。
【0014】
そこで、ロボット操作装置は、タッチ操作時の操作方向をインチング動作時の一次元方向の動作方向に対応付ける。これにより、指がぶれたり、真っ直ぐに入力したつもりが多少斜めに入力されたりした場合であっても、対象となる軸以外は動作しないため、意図しない軸が動作してしまうことを防止できる。
また、タッチ操作時に操作方向を逆に入力することで動作方向を変更することができるため、目標位置を行きすぎてしまった場合等でも容易に元に戻すことができる等、操作性を向上させることができる。
【0015】
また、タッチパネルを用いる場合には、上記したように正確な移動距離で入力することが難しいものの、操作回数を段階的に設定することにより、つまり、指の移動距離を所定の範囲に区分けした状態で動作回数に対応付けることにより、意図した回数を設定できなかったり意図した回数よりも多く動作したりするおそれを低減することができる。つまり、動作回数を設定する際の操作性を向上させることができる。
【0016】
請求項3に記載のロボット操作装置は、タッチパネルのパネル平面内にはそれぞれ異なる動作方向が対応付けられており、操作態様として、操作位置が変化した向きを示す操作方向と操作位置が変化した量を示す操作量とを検出し、操作方向に基づいてインチング動作時の動作方向を一次元方向または二次元方向のいずれかに設定するとともに、操作量を動作方向ごとの成分に分解し、当該動作方向ごとの成分に応じて、インチング動作の動作回数を設定する。
【0017】
タッチパネルは、二次元方向への操作を入力可能であることから、タッチ操作時の操作方向をインチング動作の動作方向に対応付けることにより、1回のタッチ操作で、異なる動作方向のいずれか、あるいは、2つの動作方向を同時に設定することができる。これにより、1回の操作で2つの動作方向にインチング動作をさせることができ、例えば大まかに位置決めするときなどにおいてロボットを移動させる際の自由度が向上し、操作性が向上する。より単純に言えば、1回のタッチ操作で2つの動作方向を設定できるため、作業効率を大幅に改善することができる。
【0018】
また、2つの動作方向に移動させた場合、操作量の絶対値(指が移動した距離)をそのまま動作回数に対応付けてしまうと、たとえ段階的に対応付けるとしても、一次元方向で操作した場合と二次元方向で操作した場合とで同じ操作量であっても動作回数が異なってしまい、操作しづらくなることが考えられる。
そこで、操作量を動作方向ごとの成分に分解し、当該動作方向ごとの成分に応じて、インチング動作の動作回数を設定することにより、動作方向に対しては、同じ操作量でおなじ動作回数の変化となるようにしている。これにより、一次元方向への動作と二次元方向への動作とでユーザの操作感覚を一致させることができ、体感的な操作性を向上させることができる。
【0019】
請求項4に記載のロボット操作装置は、予め設定された大きさの判定領域を設定する判定領域設定部を備え、タッチ操作の開始時には、最初にタッチ操作が入力された操作位置である開始位置を中心として判定領域を設定するとともに、操作位置が判定領域に到達するごとに、到達した位置である到達位置を中心として新たな判定領域を設定する。このとき、判定領域の中心から到達位置への向きを操作方向として検出し、到達位置まで到達した回数を操作量として検出するとともに、操作位置が判定領域に到達すると、その到達位置を起点とする新たな判定領域を設定する。そして、操作方向に基づいてインチング動作時の動作方向を一次元方向または二次元方向のいずれかに設定するとともに、操作量に応じてインチング動作の動作回数を段階的に設定する。
【0020】
これにより、1回のタッチ操作で同時に二次元方向への設定が可能となり、作業効率を改善することができる等、請求項3に記載のロボット操作装置と同様の効果を得ることができる。
また、判定領域に到達するごとに新たな判定領域が設定されるので、動作方向をその都度再設定することができ、ロボットが目標位置を通り過ぎてしまった場合であっても、直ぐに逆方向にインチング動作を行わせることができる。このように動作方向が異なるインチング動作をさせる際にも連続的な操作で入力できるので、つまり、動作方向を変える際に指を離さなくても継続して作業を行うことができ、使い勝手をさらに向上させることができるとともに、ロボットを連続的に動作させることが容易にできるため、さらにロボットから目を離さずに作業することが可能となり、作業効率を改善することができる。
【0021】
請求項5に記載のロボット操作装置は、操作態様として、タッチ操作が入力された操作位置(入力位置)の数を検出し、インチング動作の動作回数を、入力位置の数に比例した回数に設定する。
インチング動作は、微小な距離を移動させる動作であるため、大まかに位置決めした後に、複数回繰り替えることがある。その場合、1回のタッチ操作で1回のインチング動作を行わせると、微調整には適しているものの、比較的長い距離を移動させる場合には何度もインチング動作を行わせる必要がある。
そこで、入力位置の数に比例するように動作回数を設定することにより、1回のタッチ操作に対する動作回数を増加させることができる。換言すると、同一距離をインチング動作させる際に必要なタッチ操作の回数を、1/(入力位置の数)に削減することができる。これにより、ティーチング作業に要する時間を、大幅に短縮することができる。
【0022】
請求項6に記載のロボット操作装置は、タッチ操作時の操作態様と動作態様との対応関係を切り替える切替部を備えている。ティーチング作業時には、1軸だけを動作させたい場合も勿論存在するが、2軸を同時に動作させることが必要になる場合もあり、その際、対象となる軸を素早く切り替えることができれば、ティーチング作業の作業効率を改善できると考えられる。例えばロボットのフランジの位置を二次元方向に動作させて位置決めしつつ、高さ方向を一次元方向に動作させるような場合が想定される。
【0023】
そこで、タッチ操作時の操作態様に対応付けられている動作態様を切り替えることにより、具体的には、同じ操作態様に対して、例えば請求項2記載のロボット操作装置による一次元方向の動作態様と請求項3、4等に記載のロボット操作装置による二次元方向の動作態様とを切り替えることにより、ティーチング作業の作業効率を改善することができる。
【0024】
請求項7に記載のロボット操作装置は、動作回数を変更する境界となる境界位置(後述する境界線や判定領域)を、ユーザに視認可能に提示する。
ロボット操作装置の操作に不慣れなユーザは、操作量をどの程度にすれば(つまり、指をどの程度動かせば)動作回数が増加するのかを感覚的に把握できていないと考えられる。そのため、境界線や判定領域といった境界位置を視認可能に表示することにより、不慣れなユーザであってもインチング動作時の動作方向、動作回数を容易に設定することができる。
【0025】
請求項8に記載のロボット操作装置は、動作回数を変更する境界となる境界位置を、最初にタッチ操作が入力された操作位置である開始位置を起点として、等間隔に設定する。
境界位置を等間隔に設定した場合、同じ操作量であればインチング動作の動作回数も同じとなる。このため、タッチ操作に慣れたユーザであれば、動作回数を感覚的に設定でき、ティーチング作業の作業効率を改善することができる。このとき、等間隔に設定したことによって、隣り合う境界位置の間に隙間つまりは動作回数が変化しない領域が形成されることから、厳密に同じ操作量でなくても、換言すると、概ね同じ操作量であれば、同じ動作回数とすることができる。このため、タッチ操作に慣れたユーザだけでなく、タッチ操作に不慣れなユーザに対しても、使い勝手を向上させることができる。
【0026】
請求項9に記載のロボット操作装置は、動作回数を変更する境界となる境界位置を、最初にタッチ操作が入力された操作位置である開始位置を起点として、当該開始位置から離間するほど互いの境界位置の間隔が狭くなるように設定する。
インチング動作は、ロボット2の手先位置を例えば0.1mm単位等で微調整するための動作である。このインチング動作は、一般的にはロボットの手先位置をある程度大きく動かす連続動作によって手先位置を大まかに位置決めした後に行われるため、最初にインチング動作を行う場合には、目標とする位置から若干ずれている可能性がある。このとき、1回のインチング動作で移動する距離はごく微小であるため、また、タッチパネルの大きさには限りがあるため、ずれが例えば1〜2cm程度であったとしても、インチング動作を複数回行う必要がある状況が想定される。
【0027】
そこで、開始位置から離間するほど互いの境界位置の間隔が狭くなるように設定する。つまり、タッチ操作時の同じ操作量に対するインチング動作の回数を、開始位置からの距離に応じて変更する。これにより、限られたタッチパネル内でより多くのインチング動作を行わせることができ、連続動作に切り替えたりしなくても手先位置を比較的大きく移動させることができる。また、開始位置の近傍では境界位置の間隔が相対的に広くなっていることから、1〜2回のインチング動作を行わせたい場合に誤って複数回の動作が行われてしまうことを防止できる。つまり、比較的大きな距離の移動と、微小な距離の移動とを両立することができる。
【0028】
請求項10に記載のロボット操作装置は、動作回数を変更する境界となる境界位置を、最初にタッチ操作が入力された操作位置である開始位置を起点として設定するとともに、当該開始位置から離間するほど1つの境界位置に対する動作回数、あるいは、1回のインチング動作における動作量が多くなるように設定する。
上記したように、連続動作後のずれが例えば1〜2cm程度であったとしても、インチング動作を複数回行う必要がある状況が想定される。そこで、開始位置から離間するほど1つの境界位置に対する動作回数が多くなるように設定することにより、タッチ操作時の操作量に対するインチング動作の動作回数あるは動作量を、開始位置から離間するほど大きくする。これにより、限られたタッチパネル内でより多くのインチング動作を行わせることができる。
この場合、1つの境界位置に対する動作量が多くなるようにしてもよい。つまり、動作回数は1回であっても、その1回の動作で移動する距離を多くしてもよい。この場合も、これにより、限られたタッチパネル内でより多くのインチング動作を行わせることができる。
【0029】
請求項11に記載のロボット操作装置は、インチング動作を繰り返し行うことを指示するための連続動作領域を設定し、当該連続動作領域にタッチ操作が入力されている間は、予め定められている動作間隔ごとに、または、当該連続動作領域内において操作位置が変化するごとに、インチング動作を繰り返し行う。
上記したように、連続動作後のずれが例えば1〜2cm程度であったとしても、インチング動作を複数回行う必要がある状況が想定される。そこで、連続動作領域を設定し、その連続動作領域内にタッチ操作が入力されている間はインチング動作を繰り返し行うことで、タッチ操作つまりは指を離す動作を繰り返し入力しなくても、任意の回数のインチング動作を行わせることができる。換言すると、指を離して移動させた後に再度タッチ操作を入力しなくても、ロボットの手先位置を任意の距離で移動させることができる。
【0030】
請求項12に記載のロボット操作装置は、動作設定部は、最初にタッチ操作が入力された操作位置である開始位置を起点として操作位置が変化した方向に連続動作領域を設定する。
上記したように、タッチパネルの大きさには限りがあるため、予め連続動作領域を設定すると、境界位置を設定可能な範囲が狭くなる。そのため、タッチ操作により指示できる動作回数が少なくなり、操作性の低下を招くおそれがある。この場合、タッチ操作の入力を阻害しない位置に連続動作領域を予め設定することが考えられるが、一般的に、インチング動作はユーザによる手動操作時に行われる。そのため、どの方向にインチング動作を行うのか、また、インチング動作を何回行うのかは、実際にタッチ操作が入力されるまで分からない。このため、どこに連続動作領域を設定すればタッチ操作の入力を阻害しないのかを予め想定することは難しい。
【0031】
そこで、開始位置を起点として操作位置が変化した方向に連続動作領域を設定する。これにより、タッチ操作の入力時には連続動作領域が存在しないため、境界位置を設定可能な範囲を狭くすることがない。
一方、操作位置が変化した方向が特定された後、例えば操作位置が変化した方向におけるタッチパネルの端部に連続動作領域を設定すれば、開始位置から連続動作領域までタッチ操作が入力されたことから、ユーザは、インチング動作をさらに行いたいと考えていると推測できる。したがって、ユーザの意思を汲み取ることができ、使い勝手を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態について
図1から
図8を参照しながら説明する。
図1に示すように、ロボットシステム1は、垂直多関節型のロボット2、ロボット2を制御するコントローラ3、コントローラ3に接続されたペンダント4を備えている。このロボットシステム1は、一般的な産業用に用いられている。
【0034】
ロボット2は、いわゆる6軸の垂直多関節型ロボットとして周知の構成を備えており、ベース5上に、Z方向の軸心を持つ第1軸(J1)を介してショルダ6が水平方向に回転可能に連結されている。ショルダ6には、Y方向の軸心を持つ第2軸(J2)を介して上方に延びる下アーム7の下端部が垂直方向に回転可能に連結されている。下アーム7の先端部には、Y方向の軸心を持つ第3軸(J3)を介して第一上アーム8が垂直方向に回転可能に連結されている。第一上アーム8の先端部には、X方向の軸心を持つ第4軸(J4)を介して第二上アーム9が捻り回転可能に連結されている。第二上アーム9の先端部には、Y方向の軸心を持つ第5軸(J5)を介して手首10が垂直方向に回転可能に連結されている。手首10には、X方向の軸心を持つ第6軸(J6)を介してフランジ11が捻り回転可能に連結されている。以下、第6軸を、便宜的に手先軸とも称する。
【0035】
ベース5、ショルダ6、下アーム7、第一上アーム8、第二上アーム9、手首10およびフランジ11は、ロボット2のアームとして機能し、アームの先端となるフランジ11には、図示は省略するが、ハンド(エンドエフェクタとも呼ばれる)が取り付けられる。ハンドは、例えば図示しないワークを保持して移送したり、ワークを加工する工具等が取り付けられたりする。ロボット2に設けられている各軸(J1〜J6)には、それぞれに対応して駆動源となるモータ(図示省略)が設けられている。
【0036】
このような構成のロボット2は、ロボット2を制御する際の基準となる座標系が設定されている。本実施形態の場合、ベース5に対応する座標系として基準座標系(Σ
B)、手先軸(J6)に対応するフランジ座標系(Σ
F)とが設定されている。基準座標系(Σ
B)は、ロボット2がどのような姿勢を取ったとしても変化することがない座標系であり、互いに直交するX
B軸、Y
B軸およびZ
B軸が設定されている。なお、Z
B軸は設置面に垂直な軸となっている。また、フランジ座標系(Σ
F)は、フランジ11の向きを手先軸の原点を基準として示す座標系であり、互いに直交するX
F軸、Y
F軸およびZ
F軸が設定されている。このうち、Z
F軸は、手先軸と同軸に設定されており、Z
F軸の向きがフランジ11の向き、つまり、手先の向きを示している。
【0037】
コントローラ3は、ロボット2の制御装置であり、図示しないCPU、ROMおよびRAM等で構成されたコンピュータからなる制御手段においてコンピュータプログラムを実行することで、ロボット2を制御している。具体的には、コントローラ3は、インバータ回路等から構成された駆動部を備えており、各モータに対応して設けられているエンコーダで検知したモータの回転位置に基づいて例えばフィードバック制御によりそれぞれのモータを駆動する。
【0038】
ペンダント4は、接続ケーブルを介してコントローラ3に接続されている。ペンダント4は、コントローラ3との間で通信インターフェイス(
図2参照。通信I/F24)を経由して有線式あるいは無線式でデータ通信を行う。このため、ユーザがペンダント4に対して入力した各種の操作は、操作情報としてコントローラ3に送信される。
ペンダント4は、ユーザが携帯あるいは手に所持して操作可能な程度の大きさの筐体に形成されている。このペンダント4は、
図2に示すように、制御部20、表示部21、タッチパネル22、スイッチ23、通信I/F24、報知部25等を備えている。制御部20は、図示しないCPU、ROMおよびRAM等を有するマイクロコンピュータで構成されており、ペンダント4の全体を制御する。例えば、制御部20は、記憶部(図示省略)に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、ロボット2の起動や姿勢制御、各種のパラメータの設定等を実行する。
【0039】
表示部21は、例えば液晶ディスプレイ等で構成されており、その表示面に対応して、タッチパネル22が設けられている。スイッチ23は、例えば電源スイッチ等、ペンダント4の操作に使われる機械的な操作スイッチである。なお、表示部21にボタン等を表示させてスイッチ23を代用する構成としてもよい。ユーザ(操作者)は、タッチパネル22やスイッチ23に対して種々の操作を入力することにより、ロボット2を手動操作することができる。
【0040】
例えば、ユーザは、ペンダント4を用いて、ロボット2の姿勢制御等を行うことができる。また、ユーザは、ロボット2をマニュアル操作すなわち手動操作で動作させることにより、目標位置の設定、移動軌跡の設定、手先の向きの設定等、各種の教示作業も行うことができる。このとき、表示部21には、例えばメニュー画面、設定入力画面、状況表示画面などが必要に応じて表示される。以下、ユーザがタッチパネル22に対して入力する操作を、タッチ操作と称する。
報知部25は、例えばスピーカやバイブレータ等で構成されており、ユーザが行った操作に対する応答等を、音声や振動等によりユーザに報知する。
【0041】
また、ペンダント4は、操作態様検出部26、対応付け部27、動作設定部28、切替部29、動作指令生成部30、判定領域設定部31を備えている。つまり、本実施形態では、ペンダント4は、単体でロボット操作装置を構成している。なお、動作指令生成部30をコントローラ3側に設ける構成としてもよい。
操作態様検出部26は、ユーザがタッチ操作を入力した際の操作態様を検出する。より具体的には、操作態様検出部26は、操作態様として、タッチ操作が入力された際の操作位置(タッチパネル22のパネル平面における座標)、操作量(パネル平面上をなぞった距離)、操作方向(パネル平面上をなぞった方向)、タッチパネル22に触れた指の本数等を検出する。操作態様検出部26は、これらの操作態様をリアルタイムに検出する。
【0042】
なお、タッチパネル22を操作するのは、指に限らず、例えばタッチペン等であってもよいが、説明の簡略化のため、以下では、タッチペン等の治具を使用する場合も含めて、指を移動させるという表現を用いている。
対応付け部27は、タッチパネル22に対するタッチ操作時の操作態様に所定の余裕度を持たせてロボット2をインチング動作させる際の動作態様に対応付ける。具体的には、対応付け部27は、後述するように、タッチ操作時の操作方向を、ある程度の範囲(余裕度)を設けてインチング動作時の動作方向に対応付け、操作量にある程度の範囲(余裕度)を設けてインチング動作の動作回数に対応付ける。
【0043】
動作設定部28は、詳細は後述するが、実際に入力された操作態様と、その操作態様に対応付けられているロボット2の動作態様とに基づいて、ロボット2にインチング動作をさせる際の動作方向および動作回数を設定する。
切替部29は、詳細は後述するが、対応付け部27で対応付けられている操作態様と動作態様との対応関係を切り替える。より平易に言えば、切替部29は、タッチ操作が行われたときにどのようにロボット2が動作するのかを切り替える。
【0044】
動作指令生成部30は、ロボット2が動作するための各種の動作指令を生成する。また、本実施形態では、動作指令生成部30は、動作設定部28で設定された動作方向と動作回数でインチング動作するように、ロボット2を動作させるための動作指令を生成する。
判定領域設定部31は、詳細は後述するが、動作回数の判定基準となる判定領域(
図5参照)を設定する。
次に、上記した構成の作用について説明する。
【0045】
まず、インチング動作の詳細について説明する。ティーチング作業時に微調整を行う場合、ユーザは、所定の2軸方向(例えば、フランジ座標のX
F軸とY
F軸など)へ動作させることができる平面(以下、便宜的に動作平面と称する)内でロボット2の位置を調整しつつ、ロボット2の位置をより確認しやすい場所へと移動することがある。例えば、ロボット2のエンドエフェクタでワークを掴む作業に対するティーチングを行う際、ユーザは、例えばフランジ11のX
F軸とY
F軸とを含むXY平面を動作平面とし、そのXY平面内で位置決めを行った後、ロボット2をZ
F軸方向へ動作させて、その高さを決めるような手順でティーチング作業を行っている。
【0046】
このとき、ユーザは、XY平面で動作させる際には、エンドエフェクタやワークよりも目線が高い位置から、エンドエフェクタがワーク上方に位置していることを確認する。また、Z軸を動作させるときには、エンドエフェクタやワークとほぼ同じ高さの目線で、エンドエフェクタがワークを掴める高さに位置することを確認する。
このため、微調整においては、XY平面におけるX方向やY方向あるいはZ方向への一次元動作や、XY平面における例えばXY方向への二次元動作をさせることができればよいと考えられる。そこで、ペンダント4は、以下のように、一次元動作や二次元動作を可能としている。以下、一次元動作と二次元動作の具体例について、個別に説明する。
【0047】
<<一次元動作の例その1>>
本例では、
図3に示すように、ペンダント4には、タッチパネル22のパネル平面において画面の左右方向(図示左右方向)がX軸に対応し、画面の上下方向(図示上下方向)がY軸に対応する座標系が設定されている。本例においては、X軸は、フランジ座標系(Σ
F)のX
F軸に対応付けられており、正側(図示右方側。以下、X+側とも称する)がX
F軸の正の動作方向、負側(図示左方側。以下、X−側とも称する)がX
F軸の負の動作方向に対応している。
【0048】
そして、ペンダント4は、タッチ操作時の操作方向を、X
F軸の動作方向に一次元で対応付けている。具体的には、タッチ操作を開始した開始位置(P0)からX+側の位置(P1)までユーザが指を移動させた場合、タッチ操作時の操作方向は、X+側となる。なお、開始位置(P0)は、ユーザが指でパネル平面に触れてからその指を離すまでの1回のタッチ操作において最初に触れた位置を示している。この場合、ペンダント4は、X
F軸を正の動作方向にインチング動作させるための操作がユーザによって入力されたと判定し、動作方向をX+側に設定する。
【0049】
このように、ペンダント4は、タッチ操作時の操作態様(ここでは、操作方向)に基づいて、ロボット2をインチング動作させる際の動作態様(ここでは動作方向)を設定している。
ところで、インチング動作は、ロボット2を目標位置まで大まかに移動させた後に行われるものであり、且つ、上記したようにロボット2が微小な距離だけ移動する動作である。このため、通常、ユーザは、大まかに移動させた位置からインチング動作を繰り返し行うことで、最終的な位置決めを行っている。つまり、ティーチング時には、インチング動作がある程度繰り返し実行されることになる。
【0050】
この場合、従来のような機械的スイッチでインチング動作をさせる構成の場合には、機械的スイッチの押下を繰り返すことになる。この場合、繰り返し回数を少なくできれば、ティーチング時間の短縮を図ることができると考えられる。
そこで、ペンダント4は、上記したようにXY平面での二次元操作が入力可能であるというタッチパネル22の特性を活かして、動作方向だけで無く、インチング動作の動作回数をもタッチ操作時の操作態様に対応付けている。
【0051】
具体的には、ペンダント4は、開始位置(P0)を起点として、動作方向に対応付けられているX軸方向に、互いに離間して複数設けられ、インチング動作の動作回数を変更する境界となる境界位置を示す境界線(Lx)を設定する。この境界線(Lx)は、動作方向が対応付けられている向き(
図3の場合、左右方向)に直角に、画面の上下方向に沿って設定されている。また、ペンダント4は、この境界線(Lx)を表示部21に表示することで、ユーザに視認可能に提示している。なお、境界線(Lx)の間隔は、ユーザの指が同時に2本の境界線(Lx)に触れないようにすれば、任意に設定することができる。
【0052】
そして、ペンダント4は、タッチ操作時の操作量に応じて、より具体的には、開始位置から到達した境界線(Lx)の数に応じて、インチング動作の動作回数を設定する。例えば、
図3の場合、操作位置(p1)は、開始位置から3本の境界線を越えたところに位置しているため、この場合、ペンダント4は、インチング動作の動作回数を3回に設定する。これにより、1回のタッチ操作で複数回のインチング動作を実行させることができ、作業効率を改善することができる。
【0053】
なお、操作位置の検出はリアルタイムで行われているため、実際のロボット2の動作としては、最初の境界線(Lx)を越えたタイミングで1回目のインチング動作が実行され、2本目の境界線(Lx)を越えたタイミングで2回目のインチング動作が実行され、3本目の境界線(Lx)を越えたタイミングで3回目のインチング動作が実行されることになる。
このとき、ペンダント4は、境界線(Lx)を互いに離間して設定するとともに、開始位置(P0)には境界線(Lx)を設定しない。タッチパネル22をタッチ操作する場合のデメリットとして、指がぶれる可能性があることから特定の長さを正確に入力するのが難しいことが挙げられる。
【0054】
そのため、ペンダント4は、境界線(Lx)を互いに離間して設定することにより、換言すると、動作回数が段階的に変更されるようにすることで、指のぶれ等を吸収できるようにしている。また、ペンダント4は、開始位置(P0)には境界線(Lx)を設定しないことで、タッチ操作をしたときに指がぶれ、意図しない方向に動作してしまうことを防止している。
このように、ペンダント4は、タッチ操作時の操作態様(ここでは、操作量)に応じて、ロボット2をインチング動作させる際の動作態様(ここでは動作回数)を段階的に設定している。
【0055】
<<二次元動作の例その1>>
本例では、
図4に示すように、ペンダント4には、タッチパネル22のパネル平面において画面の左右方向(図示左右方向)がX軸に対応し、画面の上下方向(図示上下方向)がY軸に対応する座標系が設定されている。本例においては、X軸は、フランジ座標系(Σ
F)のX
F軸に対応付けられており、正側(図示右方側。以下、X+側とも称する)がX
F軸の正の動作方向、負側(図示左方側。以下、X−側とも称する)がX
F軸の負の動作方向に対応している。また、Y軸は、フランジ座標系(Σ
F)のY
F軸に対応付けられており、正側(図示上方側。以下、Y+側とも称する)がY
F軸の正の動作方向、負側(図示下方側。以下、Y−側とも称する)がY
F軸の負の動作方向に対応している。
【0056】
そして、ペンダント4は、タッチ操作時の操作方向を、X
F軸の動作方向およびY
F軸の動作方向に二次元で対応付けている。具体的には、
図4に示すように、タッチ操作を開始した開始位置(P0)からX+側且つY+側の位置(P1)までユーザが指を移動させた場合、タッチ操作時の操作方向は、X+側且つY+側となる。つまり、
図4のように操作位置が変化した場合、X
F軸を正の動作方向にインチング動作させるとともに、Y
F軸を正の動作方向にインチング動作させるための操作がユーザによって入力されたと判定し、動作方向をX+側及びY+側の二次元方向に設定する。
【0057】
このとき、ペンダント4は、開始位置(P0)を起点として、動作方向に対応付けられているX軸方向およびY軸方向の双方に、互いに離間して複数設けられ、インチング動作の動作回数を変更する境界となる境界位置を示す境界線(Lx、Ly)を設定する。この境界線(Lx、Ly)は、動作方向が対応付けられている向き(
図4の場合、左右方向および上下方向)に直角に、画面の上下方向および左右方向に沿って設定されている。つまり、境界線(Lx)はX軸に垂直に、境界線(Ly)はY軸に推力に設定されている。また、ペンダント4は、この境界線(Lx、Ly)を表示部21に表示することで、ユーザに視認可能に提示している。なお、境界線(Lx、Ly)の間隔は、ユーザの指が同時に2本の境界線(LxあるいはLy)に触れないようにすれば、任意に設定することができる。
【0058】
そして、ペンダント4は、インチング動作の回数を、操作量を動作方向ごとの成分に分解し、当該動作方向ごとの成分に応じて段階的に設定する。具体的には、
図4の場合、操作位置(P1)は、開始位置(P0)からX軸方向に3本の境界線(Lx)を越えた位置であって、Y軸方向に2本の境界線(Ly)を越えた位置になっている。この場合、X軸方向の成分としては境界線(Lx)の3本分つまり動作回数で3回に相当し、Y軸方向の成分としては境界線(Ly)の2本分つまり動作回数で2回に相当する。この場合、ペンダント4は、ロボット2を、X+方向に3回、Y+方向に2回のインチング動作を行うように動作回数を設定する。
【0059】
なお、操作位置の検出はリアルタイムで行われているため、
図4の例では、実際のロボット2の動作としては、X+方向の最初の境界線(Lx)を越えたタイミングでX+方向への1回目のインチング動作が実行され、Y+方向の最初の境界線(Ly)を越えたタイミングでY+方向への1回目のインチング動作が実行され、X+方向の2本目の境界線(Lx)を越えたタイミングでX+方向への2回目のインチング動作が実行され、Y+方向の2本目の境界線(Lx)を越えたタイミングでY+方向への2回目のインチング動作が実行され、X+方向の3本目の境界線(Lx)を越えたタイミングでX+方向への3回のインチング動作が実行されることになる。
このように、ペンダント4は、タッチ操作時の操作態様(操作方向、操作量)に基づいて、ロボット2をインチング動作させる際の動作態様(二次元の動作方向、動作回数)を設定している。
【0060】
なお、本例のように二次元方向の動作を入力可能な場合であっても、例えばY方向の境界線(Ly)を越えなければY軸方向へは動作しないので、一次元方向だけに動作させたい場合であっても本例の構成を採用することができる。また、境界線(Lx、Ly)は互いに離間して設定されているため、一次元方向だけに動作させたい場合に指が多少斜めにずれて移動したとしても、そのずれを吸収することができる。また、それぞれの境界線(Lx、Ly)を互いに離間して設定することにより、指のぶれ等が吸収される。また、開始位置(P0)には境界線(Lx、Ly)を設定しないので、タッチ操作をしたときに指がぶれて意図しない方向に動作してしまうことが防止される。
【0061】
<<二次元動作の例その2>>
本例では、
図5(A)に示すように、ペンダント4には、タッチパネル22のパネル平面において画面の左右方向(図示左右方向)がX軸に対応し、画面の上下方向(図示上下方向)がY軸に対応する座標系が設定されている。本例においては、X軸は、フランジ座標系(Σ
F)のX
F軸に対応付けられており、正側(図示右方側。以下、X+側とも称する)がX
F軸の正の動作方向、負側(図示左方側。以下、X−側とも称する)がX
F軸の負の動作方向に対応している。また、Y軸は、フランジ座標系(Σ
F)のY
F軸に対応付けられており、正側(図示上方側。以下、Y+側とも称する)がY
F軸の正の動作方向、負側(図示下方側。以下、Y−側とも称する)がY
F軸の負の動作方向に対応している。
【0062】
また、ペンダント4は、タッチパネル22のパネル平面に、予め設定された大きさの判定領域(R)を設定する。この、判定領域(R)は、円環状に設定されており、タッチ操作の開始時には開始位置(P0)を中心として設定され、また、後述するようにユーザが指を動かしたことにより操作位置が判定領域(R)に到達した場合には、到達位置(
図5ではP1〜P6)を中心として新たに設定される。
【0063】
この判定領域(R)は、
図5(B)に示すように、周方向に8つの範囲に分割されており、各範囲には、X+方向、X−方向、Y+方向、Y−方向、X+Y+方向、X+Y−方向、X−Y+方向、X−Y−方向が対応付けられている。
そして、ペンダント4は、判定領域(R)の中心(
図5の場合、P0〜P5のいずれか)から当該判定領域(R)に到達した位置である到達位置(
図5の場合、P1〜P6のいずれか)への向きを操作方向として検出し、検出した操作方向を、インチング動作時の動作方向として設定する。
【0064】
より具体的には、ペンダント4は、タッチ操作が開始されると、まず、開始位置(P0)から最初の到達位置(P1)への向きを操作方向として検出し、その操作方向をインチング動作時の動作方向に設定するとともに、最初の到達位置(P1)を中心として新たな判定領域(R)を設定する。そして、ペンダント4は、ユーザが指を動かして次の到達位置(P2)に到達すると、判定領域(R)の中心(この場合、到達位置(P1))から到達位置(P2)への向きを操作方向として検出し、その操作方向をインチング動作時の動作方向に設定するとともに、到達位置(P2)を中心として新たに判定領域(R)を設定する。
【0065】
このように、ペンダント4は、タッチ操作の開始時には、開始位置を中心として判定領域を設定し、操作位置が判定領域に到達するごとにその到達位置を中心として新たな判定領域を設定するとともに、それぞれの判定領域における操作方向を、インチング動作時の動作方向に設定する。なお、判定領域(R)の大きさは、任意に設定することができる。
これにより、操作方向によりインチング動作時の動作方向を設定することができるとともに、判定領域(R)に到達した回数でインチング動作の動作回数を設定することができる。
【0066】
なお、本例のように二次元方向の動作を入力可能な場合であっても、例えばY+に対応している範囲を越えなければX軸方向へは動作しないので、一次元方向だけに動作させたい場合であっても本例の構成を採用することができる。また、各動作方向は、ある程度の範囲をもって設定されているため、一次元方向だけに動作させたい場合に指が多少斜めにずれて移動したとしても、そのずれを吸収することができる。
【0067】
<<一次元動作の例その2>>
本例では、ペンダント4には、予めインチング動作時に動作させる軸が予め設定されている。また、タッチパネル22のパネル平面には、
図6に示すように、インチング動作の動作方向を選択するための選択ボタンVが、把持している手(
図6では左手)の例えば親指をずらせば届く位置に設定されている。
【0068】
この場合、ペンダント4は、操作態様として、タッチ操作の回数、タッチ操作時の入力位置の数(タッチパネル22に触れた指の数)、および選択ボタンVに触れたか否かを検出する。そして、ペンダント4は、「タッチ操作の回数」×「入力位置の数」を、インチング動作の動作回数として設定する。具体的には、
図6のように入力位置(P10、P11)が2であるとき、1回のタッチ操作が入力されると、ペンダント4は、インチング動作の動作回数を、1×2=2回に設定する。また、ペンダント4は、タッチ操作がN回繰り返されると、インチング動作の動作回数をN×2=2N回に設定する。
【0069】
これにより、1回のタッチ操作で複数回のインチング動作を実行させることが可能となり、上記したようにインチング動作が繰り返えされるティーチング作業の作業時間を短縮することができる。
また、選択ボタンVに触れることで動作方向を選択することができる。
図6の場合、選択ボタンVに触れていなければ正方向に動作し、選択ボタンVに触れていれば、負方向に動作することになる。この場合、選択ボタンVをペンダント4を把持している手の指だけを動かせば届く位置に設定しているため、ユーザは、容易に動作方向を選択することができる。
【0070】
このように、ペンダント4は、タッチ操作の操作態様(タッチ操作が入力された操作位置の数、入力された回数、選択ボタンVに触れたか否か)を検出し、インチング動作の動作回数を操作位置の数に比例した回数に設定するとともに、選択ボタンVに触れたか否かによってインチング動作の動作方向を設定する。これにより、インチング動作の動作回数を容易に設定することができるとともに、その動作方向も容易に設定することができる。
【0071】
この場合、判定領域(R)は、操作位置が判定領域(R)到達するごとに、その到達位置を中心として新たに設定されるため、ロボット2が目標位置を通り過ぎてしまった場合であっても、直ぐに逆方向にインチング動作を行わせることができる。
【0072】
<<操作態様と動作態様との対応関係の切り替え>>
次に、タッチ操作時の操作態様とロボット2の動作態様との対応関係を切り替える手法について、
図7から
図9を参照しながら説明する。なお、以下で説明する切り替え対象となる対応関係は一例であり、これらに限定されるものでは無い。
【0073】
例えば
図7の例では、ペンダント4は、タッチパネル22に対して、タッチ操作時の操作態様とロボット2の動作態様との対応関係を切り替えるための切替ボタンSを設定する。この切替ボタンSは、ペンダント4を把持している手(
図7では左手)の例えば親指をずらせば届く位置に設定されている。この
図7の場合、切替ボタンSに触れるか触れないかによって、上記した二次元動作の例その1の対応関係と、一次元動作の例その1の対応関係とが切り替えられる。
【0074】
上記した二次元動作の例その1の場合、二次元方向へインチング動作させることが可能であることから、ある程度大きな(動作回数が多い)インチング動作をさせるのに適している。一方、一次元動作の例その1の場合、動作方向が一次元であることから、タッチ操作時の指のぶれ等をそれほど意識しなくても、所定の動作方向にインチング動作をさせることができるため、細かな調整に適している。
このため、二次元動作の例その1の対応関係と、一次元動作の例その1の対応関係とを切り替えることができれば、つまり、タッチ操作時の操作態様に対応付けられているインチング作業の動作態様を切り替えることができれば、作業効率を改善することができると考えられる。
【0075】
そこで、ペンダント4は、ユーザが切替ボタンSに触れたか否かに基づいて、
図7(A)に示す二次元動作の例その1に相当する対応関係と、
図7(B)に示す一次元動作の例その1に相当する対応関係とを切り替える。これにより、大きくインチング動作をさせたい場合と細かく調整したい場合とで、容易に動作態様を切り替えることができ、作業効率が改善する。
【0076】
また、
図8の例では、ペンダント4は、切替ボタンSにより、インチング動作時の動作態様として、動作対象となる軸を切り替えている。上記したように、ティーチング作業では、動作平面内で位置決めし、高さ方向を別途調整することがある。このため、動作平面に対するインチング動作と、高さ方向に対するインチング動作とをスムーズに切り替えることができれば、作業効率が改善されると考えられる。
【0077】
そこで、ペンダント4は、ユーザが切替ボタンSに触れたか否かに基づいて、
図8(A)に示すような動作平面内で二次元方向にインチング動作をする動作態様と、
図8(B)に示すような高さ方向(例えばZ
F軸方向)にインチング動作する動作態様とを切り替える。なお、
図8(B)では、Z
F軸方向へのインチング動作の動作回数を設定するための境界線(Lz)が設定されている。
【0078】
これにより、切替ボタンSに触れるだけで動作対象となる軸を切り替えることができるとともに、さらに、ティーチング作業に適した動作平面と高さ方向とのインチング動作を切り替えることができ、作業効率を改善することができる。
また、
図9の場合、ペンダント4は、切替ボタンSにより、1つの操作態様に対するインチング動作時の動作態様を切り替えている。具体的には、タッチ操作時に横方向に操作した場合におけるインチング動作の動作方向を切り替えている。
【0079】
タッチパネル22を操作する場合、その表面が平らであるため、手探りで位置を把握することは困難である。しかし、ユーザは、操作に慣れてくれば、感覚的にどの程度指を動かせばインチング動作の回数が増加するか(例えば、
図9(A)であれば境界線(Lx)を越えるのか)を習熟することができると考えられる。この場合、画面の縦横それぞれを感覚的に習熟することも勿論考えられるが、指を移動させる方向自体は変わらない構成であれば、習熟度つまりはタッチ操作の正確さが増すとも考えられる。
【0080】
そこで、ペンダント4は、ユーザが切替ボタンSに触れたか否かに基づいて、
図9(A)に示すように画面横方向への操作態様に対して例えばX
F軸をインチング動作させる動作態様と、
図9(B)に示すように画面横方向への操作態様に対して例えばY
F軸をインチング動作させる動作態様とを切り替える。
これにより、ユーザは、タッチ操作を入力する際に常に同じ方向(例えば、
図9の場合であれば画面の横方向)へ指を移動させることで、インチング動作させる軸を切り替えることができ、その操作に習熟すれば、ペンダント4を見なくても、所望のインチング動作をさせることができる。
【0081】
この場合、反応性を重視するのであれば、指がタッチパネル22に触れた瞬間に、触れている指の数(入力位置の数)分のインチング動作を行い、既に複数の指が触れている状態でも新たな指が触れた際には、その数に応じて動作回数を設定することで、ユーザが意図した通りの回数でインチング動作を素早く実行させることができる。
【0082】
一方、安全性を重視する場合には、所望の動作回数に対応する指でタッチパネル22に触れ、所定の待機時間が経過した後に、インチング動作を実行させてもよい。待機時間を設定することで、ユーザがインチング動作をキャンセルすることができる余裕を持たせることができる。この場合、待機時間中に触れている指の本数(入力位置の数)が増加した場合には、最後に指が触れた時点から再度待機時間を設定することが望ましい。これにより、誤って画面に触れてしまった場合に意図しないインチング動作が実行されるような誤操作を防止することができる。なお、待機時間中に指が移動した場合や指の本数が減少した場合にはインチング動作をキャンセルしてもよい。
【0083】
<<動作対象の設定>>
次に、インチング動作時に対象とする軸を設定する際の手法について説明する。なお、以下で説明する手法は例示であり、これに限定されるものでは無い。
ユーザは、例えば、
図10(A)に示すように、タッチパネル22に対して、対象となる軸(
図10(A)の場合、J6軸(フランジ軸))を示す数字や記号を入力することで、インチング動作させる際の軸を設定することができる。また、ユーザは、
図10(B)に示すように、選択領域Tを操作することによって、あるいは、図示は省略するが対象とする軸を直接的に指定するボタン等を操作することによっても、インチング動作時に対象とする軸を設定することができる。
【0084】
以上説明したロボット操作装置としてのペンダント4によれば、次のような効果を得ることができる。
ロボット操作装置としてのペンダント4は、タッチパネル22に入力されるタッチ操作時の操作態様を検出する操作態様検出部26と、操作態様に所定の余裕度を持って対応付けられている動作態様に基づいて、ロボット2をインチング動作させる際の動作方向および動作回数を設定する動作設定部28と、設定された動作方向および動作回数でインチング動作を行うようにロボット2を動作させるための動作指令を生成する動作指令生成部30と、を備える。
【0085】
これにより、タッチ操作時の操作態様によってインチング動作時の動作態様を設定できるとともに、1回のタッチ操作で動作方向および動作回数を設定できることから、操作性が向上してティーチング時間の短縮化を図ることができ、もって、作業効率を向上させることができる。
また、タッチパネル22を指でなぞる場合には正確な長さを入力することが難しいと考えられるが、操作回数を段階的に設定することにより、つまり、指の移動距離を所定の範囲に区分けした状態で動作回数に対応付けることにより、意図した回数を設定できなかったり意図した回数よりも多く動作したりするおそれを低減することができる。
【0086】
ペンダント4は、操作態様として、操作位置が変化した向きを示す操作方向と、操作位置が変化した量を示す操作量とを検出する。そして、操作方向に応じてインチング動作時の動作方向を設定するとともに、操作量に応じてインチング動作の動作回数を段階的に設定する。
タッチパネル22は、二次元方向への操作を入力可能であることから、タッチ操作時の操作方向をインチング動作の動作方向に対応付け、操作量(指の移動距離)を動作回数に対応付けることにより、1回のタッチ操作で動作方向と動作回数とを設定でき、操作性を向上させることができる。また、動作対象となる軸が固定されているため、タッチ操作時に必ずしも真っ直ぐな軌跡を描けなくとも、意図しない方向にインチング動作が行われることがない。
【0087】
ペンダント4は、操作態様として、操作位置が変化した向きを示す操作方向と、操作位置が変化した量を示す操作量とを検出し、タッチパネル22のパネル平面内にそれぞれ異なる動作方向を対応付ける。そして、操作方向に基づいてインチング動作時の動作方向を一次元方向または二次元方向のいずれかに設定するとともに、操作量を動作方向ごとの成分に分解し、当該動作方向ごとの成分に応じて、インチング動作の動作回数を設定する。
これにより、1回のタッチ操作で同時に二次元方向(2つの方向)への設定が可能となり、操作性がさらに向上する。また、二次元方向への動作ができればティーチング作業を効率よく行うことができるため、作業効率を大幅に改善することができる。
【0088】
ペンダント4は、タッチパネル22のパネル平面に予め設定された大きさの判定領域(R)を設定する判定領域設定部31を備え、タッチ操作の開始時には、開始位置を中心として判定領域を設定するとともに、操作位置が判定領域に到達するごとに、到達した位置である到達位置を中心として新たな判定領域を設定する。このとき、ペンダント4は、判定領域の中心から到達位置への向きを操作方向として検出し、到達位置まで到達した回数を操作量として検出するとともに、操作位置が判定領域に到達すると、その到達位置を起点とする新たな判定領域を設定する。そして、操作方向に基づいてインチング動作時の動作方向を一次元方向または二次元方向のいずれかに設定するとともに、操作量に応じてインチング動作の動作回数を段階的に設定する。
【0089】
これにより、1回のタッチ操作で同時に二次元方向(2つの方向)への設定が可能となり、操作性がさらに向上する。また、二次元方向への動作ができればティーチング作業を効率よく行うことができるため、作業効率を大幅に改善することができる。さらに、判定領域に到達するごとに新たな判定領域が設定されるので、動作方向をその都度再設定することができ、ロボット2が目標位置を通り過ぎてしまった場合であっても、直ぐに逆方向にインチング動作を行わせることができ、使い勝手がさらに向上する。
【0090】
ペンダント4は、操作態様として、タッチ操作が入力された操作位置の数(ユーザが触れた入力位置の数)を検出し、インチング動作の動作回数を、入力位置の数に比例した回数に設定する。
インチング動作は、微小な距離を移動させる動作であるため、大まかに位置決めした後に、複数回繰り替えることがある。その場合、1回のタッチ操作で1回のインチング動作を行わせると、微調整には適しているものの、比較的長い距離を移動させる場合には何度もインチング動作を行わせる必要がある。
【0091】
そこで、入力位置の数に比例するように動作回数を設定することにより、1回のタッチ操作に対する動作回数を増加させることができる。換言すると、比較的長い距離をより少ないタッチ操作の回数で移動させることができる。したがって、ティーチング作業に要する時間の短縮化を図ることができる。
【0092】
ペンダント4は、対応付け部27で対応付ける操作態様と動作態様との対応関係を切り替える切替部29を備えている。ティーチング作業時には、1軸だけを動作させたい場合も勿論存在するが、2軸を同時に動作させることが必要になる場合もあり、その際、対象となる軸を素早く切り替えることができれば、ティーチング作業の作業効率を改善できると考えられる。
そこで、上記した
図7から
図9等のようにタッチ操作時の操作態様に対応付けられている動作態様を切り替えることにより、また、切り替える動作態様をティーチング作業に適したものとすることにより、ティーチング作業の作業効率を改善することができる。
【0093】
ペンダント4は、動作回数を変更する境界となる境界位置(境界線、判定領域)を、ユーザに視認可能に提示する。ペンダント4の操作に不慣れなユーザは、指をどの程度動かせば動作回数が増加するのかを感覚的に把握できないと考えられる。そのため、境界線や判定領域を視認可能に表示することにより、不慣れなユーザであってもインチング動作時の動作方向、動作回数を容易に設定することができる。
【0094】
ペンダント4は、動作回数を変更する境界となる境界位置(境界線)を、最初にタッチ操作が入力された操作位置である開始位置(P0)を起点として、等間隔に設定する。これにより、同じ操作量であればインチング動作の動作回数も同じとなるため、タッチ操作に慣れたユーザであれば、動作回数を感覚的に設定でき、ティーチング作業の作業効率を改善することができる。
【0095】
また、境界位置を等間隔に設定したことによって、隣り合う境界位置の間に隙間つまりは動作回数が変化しない領域が形成されることから、厳密に同じ操作量でなくても、換言すると、概ね同じ操作量であれば、同じ動作回数とすることができる。このため、タッチ操作に慣れたユーザだけでなく、タッチ操作に不慣れなユーザに対しても、使い勝手を向上させることができる。
【0096】
ペンダント4において、タッチパネル22に対するタッチ操作時の操作態様とロボット2をインチング動作させる際の動作態様とを対応付け、タッチパネル22に入力されるタッチ操作時の操作態様を検出し、操作態様に対応付けられている動作態様に基づいて、ロボット2をインチング動作させる際の動作方向および動作回数を設定し、設定された動作方向および動作回数でインチング動作を行うように、ロボット2を動作させるための動作指令を生成するロボット操作方法を採用することにより、タッチパネル22を備える構成において、操作性の向上やティーチング時間の短縮化を図ることができ、作業効率を向上させることができる等、上記したロボット操作装置と同様の効果を得ることができる。
【0097】
(その他の実施形態)
本発明は、上記し且つ図面に記載した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用することができる。本発明は、例えば次のように変形あるいは拡張することができる。
実施形態で示した境界線(Lx、Ly、Lx)や判定領域(R)は、表示部21に表示することで視認可能にユーザに提示してもよい。また、境界線を越えたときや判定領域に到達したときに、その旨を報知部25から音声等によりユーザに報知してもよい。
【0098】
実施形態では、境界位置を示す境界線(Lx、Ly、Lx)を等間隔に設定したが、異なる間隔に設定してもよい。例えば、タッチ操作時の操作量が大きい場合には、ユーザは、ロボット2を大きく動かしたいと考えていると推測できる。そのため、開始位置の近傍では微調整を可能とするために境界線の間隔を相対的に広く設定し、開始位置から離間するほど境界線の間隔を相対的に狭くすることで、指を大きく移動させた際の動作回数を変更するようにしてもよい。
【0099】
具体的には、
図11に示すように、開始位置(P0)を起点として、開始位置(P0)の近傍に設定される境界線(Lx)よりも、開始位置(P0)から図示右方側に離間して設定されている境界線(Lx)のほうが、隣り合う境界線の間隔をせまくするとよい。これにより、限られたタッチパネル22のパネル平面内でより多くのインチング動作を行わせることができるようになる。そして、連続動作に切り替えたりしなくても、手先位置を比較的大きく移動させることができる。
また、開始位置(P0)の近傍では境界線の間隔が相対的に広くなっていることから、1〜2回のインチング動作を行わせたい場合に誤って複数回の動作が行われてしまうことを防止できる。つまり、比較的大きな手先位置の移動と、微小な距離での手先位置の移動とを両立することができる。
【0100】
この場合、
図12に示すように、開始位置(P0)に対して正方向および負方向の双方において境界線の間隔を非等間隔に設定してもよい。すなわち、境界線を、開始位置(P0)を中心として対象になるように設定してもよい。また、
図13に示すように、タッチパネル22のパネル平面にロボット2の二次元方向の動作を対応付けている場合において、図示縦方向および横方向のそれぞれの境界線の間隔を非等間隔に設定してもよい。勿論、縦方向および横方向のいずれか一方の境界線の間隔だけを非等間隔に設定してもよい。
【0101】
また、
図14に示すように、タッチパネル22のパネル平面にロボット2の二次元方向の動作を対応付けた場合において、開始位置(P0)を中心とする同心円状の境界線(Lc)を設定し、その間隔を開始位置(P0)からの距離に応じて非等間隔に設定してもよい。
図14の場合、開始位置(P0)から離間するほど、境界線(Lc)の間隔が狭くなるように設定している。なお、境界線(Lc)は、等間隔に設定してもよい。
【0102】
また、
図15に示すように、開始位置(P0)を起点として動作回数を変更する境界となる境界線を設定するとともに、当該開始位置(P0)から離間するほど、1つの境界線に対する動作回数、あるいは、1回のインチング動作における動作量が多くなるように設定してもよい。
図15の場合、動作量の例を示している。すなわち、開始位置(P0)に隣り合う太線で示す境界線は、0.1mm単位でインチング動作を行うことを示している。他の太線で示す境界線は、それぞれ0.2mm単位のインチング動作、0.4mm単位のインチング動作、1.0mm単位のインチング動作を行うことを示している。
【0103】
なお、
図15に示す数値や増加量は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、0.01mm単位等、他の数値でもよい。また、動作量ではなく、動作回数が多くなるようにしてもよい。
このように、タッチ操作時の操作量に対するインチング動作の動作回数あるは動作量を、開始位置から離間するほど大きくすることにより、限られたタッチパネル22内でより多くのインチング動作を行わせることができる。
【0104】
また、
図16に示すように、インチング動作を繰り返し行うことを指示するための連続動作領域(CR)を設定し、当該連続動作領域にタッチ操作が入力されている間は、予め定められている動作間隔ごとに、または、当該連続動作領域内において操作位置が変化するごとに、インチング動作を繰り返し行うようにしてもよい。この場合、動作間隔は、例えば所定数の制御周期、あるいは0.1秒等の所定の期間として設定することができる。また、操作位置の変化は指が移動したことをもって検出することができるものの、指が接触している際の重心位置が変化したことをもって操作位置が変化したと判定するようにしてもよい。つまり、ある位置で指をグリグリ動かすような場合にも、インチング動作を繰り返し行うようにしてもよい。
これにより、タッチ操作を繰り返し入力しなくても、任意の回数のインチング動作を行わせることができる。換言すると、指を離し、新たな開始位置まで移動させ、再度タッチ操作を入力するという手間を掛けなくても、ロボット2の手先位置を任意の距離で移動させることができる。
【0105】
この場合、開始位置(P0)を起点として、操作位置が変化した方向に連続動作領域(CR)を設定するとよい。タッチパネル22の大きさには限りがあるため、予め連続動作領域(CR)を設定してしまうと、境界線を設定可能な範囲が狭くなる。そのため、タッチ操作により指示できる動作回数が少なくなり、操作性の低下を招くおそれがある。この場合、インチング動作はユーザによる手動操作時に行われるため、どの方向にインチング動作を行うのか、また、インチング動作を何回行うのかは、実際にタッチ操作が入力されるまで分からない。つまり、どこに連続動作領域(CR)を設定すればタッチ操作の入力を阻害しないのかを予め想定することは難しい。
【0106】
そこで、開始位置(P0)を起点として操作位置が変化した方向、
図16であれば図示右方向に連続動作領域(CR)を設定することで、タッチ操作の入力時には連続動作領域(CR)が設定されていないため、境界線を設定可能な範囲を狭くすることがない。そして、操作位置が変化した方向が特定された後に、
図16であればタッチパネル22の図示右方向の端部に連続動作領域(CR)を設定すれば、開始位置(P0)から連続動作領域(CR)までタッチ操作が入力されたのであれば、ユーザは、インチング動作をさらに行いたいと考えていると推測できる。
【0107】
したがって、操作位置が変化した方向におけるタッチパネル22の端部側に連続動作領域(CR)を設定することで、ユーザの意思を汲み取ることができ、使い勝手を向上させることができると考えられる。なお、連続領域(RC)は、一実施形態や
図12から
図15等で示した態様の境界線に適用してもよい。例えば
図12の態様であれば、タッチパネル22の図示左右の2方向の両端にそれぞれ連続指示領域(RC)を設けてもよい。あるいは、
図13の態様であれば、タッチパネル22の図示上下左右の4方向の端部に連続指示領域(RC)を設けてもよい。また、
図14の態様であれば、最外縁の境界線(Lc)の外側に、円形の連続指示領域(RC)を設けてもよい。また、各境界線は、ユーザに視認可能に表示してもよいし、表示しなくてもよい。
【0108】
各実施形態では、開始位置(P0)から境界線等の境界位置を超えるようなタッチ操作が入力された際にインチング動作をさせる例を示した。ただし、ユーザがタッチ操作を入力した際、開始位置(P0)に最も近い境界位置を超えないような入力であっても、1回のインチング動作を行うようにしてもよい。これは、手先位置の最終的な微調整の段階において1回だけインチング動作を行わせたいような場合には、ユーザは、タッチ操作をいわゆるフリック動作で入力することが想定されるためである。
これにより、開始位置(P0)に最も近い境界位置を超えるまで指を移動させなくてもよいため、より短時間でインチング動作を行うことができ、使い勝手が向上すると考えられる。この場合、ロボット2の動作方向は、フリック動作の方向により特定すればよい。
【0109】
実施形態の一次元動作の例その1、二次元動作の例その1、二次元動作の例その2では1本の指で操作する例を示したが、一次元動作の例その2のように複数の指で操作し、その指の数に応じて動作回数を設定してもよい。この場合、複数の指で操作する場合には、最初に触れた指を検出し、その指が触れている間は複数ほんの指で操作しているとし、最初に触れた指が離れたら、それ以上インチング動作を行わないようにしてもよい。また、インチング動作を開始した後で指の本数が変化した場合には、変化した指の数に応じて動作回数を設定してもよい。
【0110】
このとき、複数の指を全く同じように移動させるのは難しいと考えられるため、最初に触れた指の操作方向と操作量とを基本として、その操作量(つまり、インチング動作の動作回数)を触れた指の数に比例して増加させるようにするとよい。
ロボット操作装置の操作対象としては、実施形態で例示した6軸垂直多関節型のロボット2に限らず、4軸の水平多関節型ロボットでもよい。
【0111】
各実施形態で例示した座標系と軸との対応付けや、ペンダント4に入力する操作とそれに対応する処理や動作等との対応付けは一例であり、これに限定されるものではない。
実施形態ではロボット操作装置をロボット専用のペンダント4で構成したが、これに限らず、汎用のタブレット型端末(いわゆるタブレットPC)やスマートフォン(多機能携帯電話)等にロボット制御用のアプリケーションを導入してロボット操作装置としてもよい。このような構成であっても、上記したペンダント4と同等の機能を実現することができ、同様の効果を得ることができる。
【0112】
実施形態では、ロボット操作装置をペンダント4単体で構成した例を示したが、動作指令生成部30をコントローラ3側に設け、ペンダント4は操作端末として用い、タッチ操作が入力された際の操作態様をコントローラ3に送信し、コントローラ3で動作指令を生成してもよい。すなわち、コントローラ3とペンダント4とによりロボット操作装置を構成してもよい。
各図で示したペンダント4と人の手との対比は一例であり、ペンダント4の大きさや形状を限定するものではない。また、ペンダント4の上下左右は、画面の縦横の向きとは関係なく、任意に定義することができる。