(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3判断ステップにおいてパーティクルが多いと判断した前記第3基板に対応する前記エリアを清掃する搬送ライン清掃ステップをさらに備える請求項3記載のパーティクル診断方法。
前記ビームライン清掃ステップにおいて少なくとも1つの前記エリアを清掃する、又は、前記エリア別搬送ステップにおいて前記ビームライン形成要素を清掃する請求項3乃至5のうち何れか一項に記載のパーティクル診断方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、イオンビーム照射装置におけるパーティクルの発生箇所を診断できるようにして、効率の良い清掃でパーティクルの発生を低減させることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るパーティクル診断方法は、イオンビーム照射装置におけるパーティクルの発生箇所を診断するための方法であって、第1基板を所定の搬送ラインを通してイオンビームの照射位置に搬送し、前記照射位置に搬送された前記第1基板にイオンビームを照射する搬送・照射ステップと、前記搬送・照射ステップにおいてイオンビームが照射された前記第1基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを判断する第1判断ステップと、前記第1判断ステップにおいてパーティクルが多いと判断した場合に、第2基板を前記搬送ラインを通して前記照射位置に搬送する搬送ステップと、前記搬送ステップにおいて前記照射位置に搬送された前記第2基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを判断する第2判断ステップと、を備えることを特徴とする方法である。
【0009】
このようなパーティクル診断方法によれば、まずは第1基板を照射位置に搬送してイオンビームを照射し、その第1基板に付着しているパーティクルが多いと判断した場合には、第2基板を照射位置に搬送して、その第2基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを判断しているので、第2基板に付着しているパーティクルが少なければ、第1基板にはイオンビームの照射に起因したパーティクルが付着していたことが分かる。一方、第2基板の付着量が多ければ、第1基板には少なくとも搬送に起因したパーティクルが付着していたことが分かる。
このように本発明によれば、イオンビームの照射に起因してパーティクルが発生していることや、基板の搬送に起因してパーティクルが発生していることが分かるので、装置全体の中からパーティクルの発生箇所を絞ることができ、効率の良い清掃でパーティクルの発生を低減することが可能となる。
【0010】
前記イオンビーム照射装置が、前記イオンビームが通過するビームラインを形成するビームライン形成要素を具備した構成において、前記第2判断ステップにおいてパーティクルが少ないと判断した場合に、前記ビームライン形成要素を清掃するビームライン清掃ステップをさらに備えることが好ましい。
このようにすれば、イオンビームの照射に起因して発生するパーティクルを低減させることができる。
【0011】
前記搬送ラインが、複数のエリアに亘って形成されている構成において、前記第2判断ステップにおいてパーティクルが多いと判断した場合に、前記搬送・照射ステップにおいて前記第2基板に対して前記各エリアで行われるエリア別作業を、互いに異なる第3基板に対して行うエリア別搬送ステップと、前記エリア別搬送ステップにおいて前記各エリア別作業を行った前記第3基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを判断する第3判断ステップとをさらに備えることが好ましい。
このようにすれば、搬送ラインに起因してパーティクルが発生していることが分かった場合に、搬送ラインを形成するどのエリアでパーティクルが発生しているかを知ることができ、パーティクルの発生箇所をさらに絞ることができる。
【0012】
搬送ラインに起因して発生するパーティクルを低減させるためには、前記第3判断ステップにおいてパーティクルが多いと判断した前記第3基板に対応する前記エリアを清掃する搬送ライン清掃ステップをさらに備えることが好ましい。
【0013】
搬送ラインが、例えば第1エリア、第2エリア、及び第3エリアの3つのエリアから形成されており、第3基板が各エリアをこの順に通って照射位置に搬送される場合を考える。この場合、仮に第1エリアがパーティクルの発生箇所であるとすると、第1エリア、第2エリア、及び第3エリアに搬送される第3基板は、いずれも第1エリアを通過するので、これらの第3基板に付着しているパーティクルの多さには違いが現れにくく、パーティクルの発生箇所を絞り難い。
そこで、前記エリア別搬送ステップにおいて前記各エリア別作業を前記第3基板に対して複数回繰り返すことが好ましい。
このようにすれば、上述した場合であっても、第1エリアのエリア別作業を複数回繰り返し行った第3基板に特にパーティクルが多く付着するので、パーティクルの発生箇所をより確実に絞ることができる。
【0014】
前記ビームライン清掃ステップにおいて少なくとも1つの前記エリアを清掃する、又は、前記エリア別搬送ステップにおいて前記ビームライン形成要素を清掃することが好ましい。
このようにすれば、ビームライン形成要素を清掃している間における搬送ラインの空いている時間や、搬送ラインに第3基板を通している間におけるビームラインの空いている時間に、例えば簡易的な清掃方法によって空いているラインを清掃することができる。この簡易的な清掃によりパーティクルの発生を抑えることができれば、次回のパーティクル診断時において搬送ラインやビームラインがパーティクルの発生箇所とならずに済む可能性を高めることができ、これによりメンテナンスサイクルを延ばすことで、装置の稼働率を向上させることが可能となる。
【0015】
また、本発明に係るパーティクル診断装置は、イオンビーム照射装置におけるパーティクルの発生箇所を診断するための装置であって、基板に付着しているパーティクルの個数又は個数に関連する値を示す個数データを受け付ける個数データ受付部と、前記個数データ受付部により受け付けられた前記個数データに基づいて、前記基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを判断する判断部とを具備し、前記個数データ受付部が、所定の搬送ラインを通してイオンビームの照射位置に搬送されて、当該照射位置でイオンビームが照射された第1基板に付着しているパーティクルの第1個数データ、及び、前記搬送ラインを通して前記照射位置に搬送された第2基板に付着しているパーティクルの第2個数データを受け付け、前記判断部が、前記第1個数データに基づいて前記第1基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを判断するとともに、前記第2個数データに基づいて前記第2基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを判断することを特徴とするものである。
このようなパーティクル診断装置によれば、上述したパーティクル診断方法によるパーティクルの発生箇所の特定を自動で行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、イオンビーム照射装置におけるパーティクルの発生箇所を診断することができ、効率の良い清掃でパーティクルの発生を低減させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るパーティクル診断方法の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態のパーティクル診断方法は、例えばイオン注入装置やイオンドーピング装置等のイオンビーム照射装置100におけるパーティクルの発生の有無や発生箇所を診断するための方法である。
【0020】
まず、イオンビーム照射装置100について説明する。
イオンビーム照射装置100は、
図1に示すように、イオンビームIBの照射位置に基板W(以下、ターゲットWという)を搬送してイオンビームIBを照射するものであり、ターゲットWが搬送される搬送ラインL1と、イオンビームIBが通過するビームラインL2とが形成されている。
【0021】
搬送ラインL1は、複数のエリア(部屋)に亘って形成されており、ここではターゲットWを格納するロードロック室R1と、ロードロック室R1に隣接された搬送室R2と、ロードロック室R1から搬送室R2を介して搬送されたターゲットWにイオンビームIBを照射する処理室R3とから形成されている。
【0022】
ロードロック室R1は、ターゲットWが外部から搬入又は外部へ搬出されるエリアであり、ここでは2つのロードロック室R1(以下、第1ロードロック室R1a、第2ロードロック室R1bともいう)が設けられている。第1ロードロック室R1aと外部とは第1ゲートバルブV1により仕切られており、第2ロードロック室R1bと外部とは第2ゲートバルブV2により仕切られている。
【0023】
搬送室R2は、ロードロック室R1と処理室R3との間でターゲットWを搬送するエリアであり、例えば搬送ロボット等の図示しないターゲット搬送機構が設けられている。搬送室R2と第1ロードロック室R1aとは第3ゲートバルブV3により仕切られており、搬送室R2と第2ロードロック室R1bとは第4ゲートバルブV4により仕切られており、搬送室R2と処理室R3とは第5ゲートバルブV5により仕切られており、各室R1〜R3を真空状態に維持できるようにしてある。
【0024】
処理室R3は、搬送室R2から搬送されたターゲットWを受け取り、受け取ったターゲットWを照射位置に移動させるエリアである。この処理室R3には、上述したターゲット搬送機構からターゲットWを受け取るプラテンPや、プラテンPに載置されたターゲットWを保持又は開放する図示しないクランプ機構や、ターゲットWのチルト角を変更する図示しないチルト角変更機構や、ターゲットWをイオンビームIBと交差する方向に走査させる図示しない走査機構などが設けられている。なお、これらの機構は必ずしも全て設けてある必要はない。
【0025】
次に、ビームラインL2について説明する。
ビームラインL2は、イオン源1からイオンビームIBの照射位置に亘って形成されており、複数のビームライン形成要素から形成されている。ここでのビームライン形成要素は、内部でプラズマが生成されるプラズマ生成容器2、プラズマ生成容器2からイオンビームIBを引き出す引出し電極3、及びイオンビームIBの質量分析により所望のドーパントイオンを選別して導出する質量分離器4などが挙げられる。なお、イオンビーム照射装置100が、イオンビームIBを電界又は磁界によって往復走査する走査器や、この走査器から導出されたイオンビームIBを平行走査するビーム平行化器などを備えていれば、これらもビーム形成要素である。
【0026】
続いて、パーティクル診断方法について
図2〜
図5のフローチャートを参照しながら説明する。
なお、ここでいうパーティクルとは、例えば上述した種々の機構の可動部が擦れることで生じる微粒子や、上述した種々のビームライン形成要素の内壁面などに付着した付着物がスパッタされて生じる微粒子など、例えばイオン注入の不良などの要因となる異物である。
【0027】
まず始めに、例えばターゲットWとして用いられるガラス板を洗浄するなどして、パーティクル診断に用いる診断用基板を1又は複数枚準備する。
本実施形態では、搬送ラインL1が複数通りの経路でターゲットWを照射位置に搬送できるように構成されており、まずはその経路数と同じ枚数(以下、必要枚数という)の診断用基板(以下、第1基板という)を準備する。このように必要枚数の第1基板を準備しておくことで、ターゲットWが照射位置までに通り得る全ての経路、つまり搬送ラインL1の全体に第1基板を通すことができる。なお、本実施形態の必要枚数は12枚であるが、必要枚数は搬送ラインL1の構成によって適宜変更して構わないし、必要枚数以上の第1基板を準備しても良い。
【0028】
パーティクル診断が開始されると、搬送ラインL1を通して第1基板をイオンビームIBの照射位置に搬送し、照射位置に搬送された第1基板にイオンビームIBを照射する(搬送・照射ステップS1)。
ここでは、ターゲットWが照射位置までに通り得る経路それぞれに第1基板を通すように、言い換えれば必要枚数の第1基板それぞれの照射位置に到る経路が、互いに異なる経路となるように設定されており、照射位置に搬送してイオンビームIBを照射する動作を必要枚数の第1基板に対して連続的に行う。
【0029】
次に、S1でイオンビームIBが照射された第1基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを判断する(第1判断ステップS2)。
ここではオペレータが上述した判断をするようにしており、判断基準の少なくとも1つとしてS1でイオンビームIBが照射された第1基板に付着しているパーティクルの個数(以下、照射後個数という)を用いている。具体的な判断方法としては、例えばS1の前であって第1基板の洗浄後に第1基板に付着しているパーティクルの個数(以下、照射前個数という)をカウントしておき、照射前個数から照射後個数への増加分(増加数や増加率)に基づいて判断する方法が挙げられる。その他の方法として、照射後個数と予め定めた閾値とを比較して判断しても良い。
なお、パーティクルの個数のカウントには、例えば所定の大きさ以上のパーティクルの個数を画像処理等を用いてカウントする異物検査装置などを用いることができる。
【0030】
S2において第1基板に付着しているパーティクルが少ないと判断した場合は、パーティクル診断を終了する。
【0031】
一方、S2において第1基板に付着しているパーティクルが多いと判断した場合は、搬送ラインL1を通して第1基板とは別の診断用基板(以下、第2基板という)を照射位置に搬送する(搬送ステップS3)。
第2基板は、第1基板と同様、例えばターゲットWとして用いられるガラス板を洗浄するなどして1又は複数枚準備すれば良く、S1と同様の理由で、すなわちターゲットWが照射位置までに通り得る経路それぞれに第2基板を通すべく、ここでは必要枚数の第2基板を用いている。なお、必要枚数以上の第2基板を用いても良い。
【0032】
次に、S3で照射位置に搬送され且つイオンビームIBが照射されていない第2基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを判断する(第2判断ステップS4)。
ここでは、この判断もオペレータが行っており、具体的な判断方法はS2と同様である。すなわち、判断基準の少なくとも1つとしてS3で照射位置に搬送された第2基板に付着しているパーティクルの個数(以下、搬送後個数という)を用いており、具体的には、例えばS3の前であって第2基板の洗浄後に第2基板に付着しているパーティクルの個数(以下、搬送前個数という)をカウントしておき、搬送前個数から搬送後個数への増加分(増加数や増加率)に基づいて判断しても良いし、搬送後個数と予め定めた閾値とを比較して判断しても良い。
【0033】
S4において第2基板に付着しているパーティクルが少ないと判断した場合、S1で第1基板に付着したパーティクルは、第1基板にイオンビームIBを照射することに起因して発生したものであるといえる。
この場合、本実施形態ではビームライン形成要素を清掃する(ビームライン清掃ステップS5)。上述したようにビームラインL2は、複数のビームライン形成要素から構成されているので、これらのビームライン形成要素を予め決めておいた順番で自動的に清掃するようにしても良いし、オペレータがビームライン形成要素の清掃方法や清掃する順番等を適宜選択したうえで、各ビームライン形成要素をオペレータが手動で清掃するようにしても良い。
【0034】
具体的な清掃方法としては、例えばイオンビームIBを磁界により走査して例えば質量分離器4などの内壁面に当てることで内壁面に付着している付着物を蒸発させたり、プラズマ生成容器2内に水素プラズマを生成することでプラズマ生成容器2の内壁面に付着している付着物を蒸発させたりする方法などが挙げられる。なお、イオンビームIBの走査による質量分離器4などの清掃中にイオン源1が汚れる可能性があるので、イオンビームIBの走査による清掃は、水素プラズマの生成によるプラズマ生成容器2の清掃よりも前に行うことが好ましい。
【0035】
本実施形態では、S5の最中に搬送ラインL1に生じる空いた時間を利用して、後述する搬送ライン清掃ステップS12よりも簡易的に行える清掃方法で搬送ラインL1を清掃するようにしている。
具体的に簡易的に行える清掃方法としては、例えばロードロック室R1の真空引きと大気開放とを繰り返してロードロック室R1に存在しているパーティクルを除去したり、洗浄した基板を複数枚(例えば100〜200枚)連続して照射位置に搬送してそれらの基板に搬送ラインL1に存在しているパーティクルを付着させて取り除く方法などが挙げられる。なお、この簡易的な清掃は必ずしも行う必要はない。
【0036】
S5の清掃後は、S1及びS2同様、搬送ラインL1を通して新たな基板をイオンビームIBの照射位置に搬送して、照射位置に搬送された基板にイオンビームIBを照射し(搬送・照射ステップS6)、イオンビームIBが照射された基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを判断する(判断ステップS7)。ここでの目的は、S5におけるビームライン形成要素の清掃によりパーティクルの発生を低減できたか否かを確認することにあるので、S6及びS7で用いる基板は必要枚数より少なくても構わない。
【0037】
S7において診断用基板に付着しているパーティクルが少ないと判断した場合は、S5におけるビームライン形成要素の清掃によりパーティクルの発生を低減させることができたといえるので、パーティクル診断を終了する。
【0038】
一方、S7において診断用基板に付着しているパーティクルが依然として多いと判断した場合は、イオンビーム照射装置100にメンテナンスが必要な時期であるといえるので(S8)、必要に応じてメンテナンスを実施する(S9)。なお、S9におけるメンテナンス後は、S1に戻っても良い。
【0039】
次に、S4において第2基板に付着しているパーティクルが多いと判断した場合について説明する。
この場合は、第2基板に付着したパーティクルは、S3における第2基板の搬送に起因して発生したものであるといえると同時に、S1で第1基板に付着したパーティクルには、少なくとも第1基板の搬送に起因して発生したものが含まれているといえる。なお、第1基板に付着したパーティクルには、第1基板にイオンビームIBを照射することに起因して発生したものが含まれている可能性もある。
【0040】
この場合、本実施形態では搬送ラインL1を形成するどのエリアでパーティクルが発生しているかを特定すべく、各エリアに第1基板や第2基板とは別の診断用基板(以下、第3基板という)を搬送する(エリア別搬送ステップS10)。
具体的には、各エリアに互いに異なる第3基板を搬送するとともに、S3において第2基板に対して各エリアで行われるエリア別作業を、互いに異なる第3基板に対して行う。
なお、第3基板は、第1基板や第2基板と同様、例えばターゲットWとして用いられるガラス板を洗浄するなどして準備すれば良い。
【0041】
より具体的に説明すると、エリア別作業とは、S3において第2基板をロードロック室R1に搬入し、照射位置に搬送して、ロードロック室R1から回収するまでの間に、第2基板に対して各エリアで行われる作業である。
本実施形態のエリア別作業は、第1ロードロック室R1aにおいて行われる第1エリア別作業、第2ロードロック室R1bにおいて行われる第2エリア別作業、搬送室R2を介して第1ロードロック室R1aと処理室R3との間を往復させる際に行われる第3エリア別作業、搬送室R2を介して第2ロードロック室R1bと処理室R3との間を往復させる際に行われる第4エリア別作業、及び処理室R3において行われる第5エリア別作業であり、S10では各エリア別作業に含まれる工程の少なくとも一部を、互いに異なる第3基板に対して複数回繰り返して行うようにしている。
【0042】
以下、
図3〜
図5のフローチャートを参照しながら、第1〜第5エリア別作業について説明するが、第1エリア別作業と第2エリア別作業とは操作するゲートバルブの違いを除けばその他は同様の作業であり、第3エリア別作業と第4エリア別作業とは操作するゲートバルブの違いを除けばその他は同様の作業であるので、第2エリア別作業及び第4エリア別作業の詳細は省略する。
【0043】
まず、第1エリア別作業について
図3のフローチャートを参照しながら説明する。
第1エリア別作業では、まず第1ゲートバルブV1を開き(Sa1)、第1ロードロック室R1aへ第3基板を搬入し(Sa2)、第1ゲートバルブV1を閉じる(Sa3)。
次に、第1ロードロック室R1aを真空引きし(Sa4)、その後、大気開放して(Sa5)、第1ゲートバルブV1を開く(Sa6)。
続いて、Sa3〜Sa6までの工程が所定回数(例えば10回)繰り返し行われたかを判断し(Sa7)、所定回数繰り返されていない場合は、所定時間(例えば数十秒)待機した後(Sa8)、Sa3に戻る。一方、Sa3〜Sa6までの工程が所定回数繰り返された場合は、第1ロードロック室R1aから第3基板を回収し(Sa9)、第1エリア別作業を終了する。
なお、第2エリア別作業については、第2ゲートバルブV2を第1ゲートバルブV1と同様に操作すれば良い。
【0044】
次に、第3エリア別作業について
図4のフローチャートを参照しながら説明する。
第3エリア別作業の始めは、第1エリア別作業のSa1〜Sa4と同じである(Sb1〜Sb4)。
次いで、第3ゲートバルブV3を開き(Sb5)、第3基板を搬送室R2内の搬送ロボット等のターゲット搬送機構に受け取らせ(Sb6)、第3ゲートバルブV3を閉じる(Sb7)。
続いて、ターゲット搬送機構によって第3基板を第5ゲートバルブV5付近に移動させ(Sb8)、第5ゲートバルブV5を開き(Sb9)、第3基板を処理室R3内に設けられているプラテンPに載置して(Sb10)、第5ゲートバルブV5を閉じる(Sb11)。
その後、第5ゲートバルブV5を再び開き(Sb12)、搬送室R2内のターゲット搬送機構に受け取らせ(Sb13)、第5ゲートバルブV5を閉じる(Sb14)。
続いて、ターゲット搬送機構によって第3基板を第3ゲートバルブV3付近に移動させ(Sb15)、第3ゲートバルブV3を開き(Sb16)、第3基板を第1ロードロック室R1aに搬入し(Sb17)、第3ゲートバルブV3を閉じて(Sb18)、第1ロードロック室R1aを大気開放する(Sb19)。
そして、Sb4〜Sb19までの工程が所定回数(例えば10回)繰り返し行われたかを判断し(Sb20)、所定回数繰り返されていない場合はSb4に戻る。一方、Sb4〜Sb19までの工程が所定回数繰り返された場合は、第1ゲートバルブV1を開き(Sb21)、第1ロードロック室R1aから第3基板を回収し(Sb22)、第3エリア別作業を終了する。
なお、第4エリア別作業では、第2ゲートバルブV2を第1ゲートバルブV1と同様に操作するとともに、第4ゲートバルブV4を第3ゲートバルブV3と同様に操作すれば良い。
【0045】
続いて、第5エリア別作業について
図5のフローチャートを参照しながら説明する。
第5エリア別作業の始めは、第3エリア別作業のSb1〜Sb11と同じである(Sc1〜Sc11)。
次いで、プラテンPに載置された第3基板をクランプ機構によって保持(クランプ)し(Sc12)、チルト角変更機構によってプラテンを立てて第3基板のチルト角を変更し(Sc13)、走査機構によって第3基板をイオンビームIBと交差する方向にイオンビームIBを照射することなく走査する(Sc14)。
そして、チルト角変更機構によってプラテンを寝かして第3基板のチルト角を戻し(Sc15)、クランプ機構によって第3基板を開放(アンクランプ)する(Sc16)。
続いて、Sc12〜Sc16までの工程が所定回数(例えば10回)繰り返し行われたかを判断し(Sc17)、所定回数繰り返されていない場合はSc12に戻る。一方、Sc12〜Sc16までの工程が所定回数繰り返された場合は、第2エリア別作業のSb12〜Sb19と同様の作業を行い(Sc18〜Sc25)、第1ゲートバルブV1を開き(Sc26)、ロードロック室R1から第3基板を回収し(Sc27)、第5エリア別作業を終了する。
なお、第5エリア別作業の始めや終わりは、第4エリア別作業と同じにしても良い。つまり、第5エリア別作業は、第3基板を第2ロードロック室R1bに搬入することから始めて、第2ロードロック室Rb1から回収することで終了しても良い。
【0046】
本実施形態では、S10において、第1エリア別作業、第2エリア別作業、第3エリア別作業、第4エリア別作業、及び第5エリア別作業をこの順に行うようにしているが、各エリア別作業を行う順番は適宜変更して構わない。
【0047】
S10において各エリア別作業を行った後、回収した第3基板のうちどの第3基板にパーティクルが多く付着しているかを確認することで、パーティクルが多く付着している第3基板の搬送されたエリアがパーティクルの発生箇所であると特定する(発生箇所特定ステップS11)。言い換えれば、パーティクルが多く付着している第3基板に対して行われたエリア別作業がパーティクルの発生要因と特定することができる。
【0048】
そして、S11においてパーティクルの発生箇所であると特定したエリアを清掃する(搬送ライン清掃ステップS12)。
【0049】
具体的には、第1エリア別作業を行った第3基板にパーティクルが多く付着している場合は、第1ロードロック室R1aがパーティクルの発生箇所であり、第1ロードロック室R1a内の清掃、第1ロードロック室R1aの真空引き及び大気開放の繰り返し、第1ゲートバルブV1や第3ゲートバルブV3の周辺の確認、第1ロードロック室R1aの上壁に設けられた蓋体の確認などを行う。
【0050】
第2エリア別作業を行った第3基板にパーティクルが多く付着している場合は、第2ロードロック室R1bがパーティクルの発生箇所であり、第2ロードロック室R1b内の清掃、第2ロードロック室R1bの真空引き及び大気開放の繰り返し、第2ゲートバルブV2や第4ゲートバルブV4の周辺確認、第2ロードロック室R1bの上壁に設けられた蓋体の確認などを行う。
【0051】
第3エリア別作業を行った第3基板にパーティクルが多く付着しており、且つ、第4エリア別作業を行った第3基板にはパーティクルが多く付着していない場合は、第3ゲートバルブV3がパーティクルの発生箇所であり、第3ゲートバルブV3の周辺確認などを行う。
【0052】
第4エリア別作業を行った第3基板にパーティクルが多く付着しており、且つ、第3エリア別作業を行った第3基板にはパーティクルが多く付着していない場合は、第4ゲートバルブV4がパーティクルの発生箇所であり、第4ゲートバルブV4の周辺確認などを行う。
【0053】
第3エリア別作業を行った第3基板と第4エリア別作業を行った第3基板の両方にパーティクルが多く付着している場合は、第3ゲートバルブV3及び第4ゲートバルブV4の両方、第5ゲートバルブV5、或いは第3ゲートバルブV3、第4ゲートバルブV4、及び第5ゲートバルブV5の全てがパーティクルの発生箇所として考えられ、第3ゲートバルブV3、第4ゲートバルブV4、及び第5ゲートバルブV5の周辺確認などを行う。
【0054】
第5エリア別作業を行った第3基板にパーティクルが多く付着している場合は、処理室R3がパーティクルの発生箇所であり、処理室R3に設けられているクランプ機構やチルト角変更機構や走査機構などの確認を行う。
【0055】
S12の清掃後は、上述したようにイオンビームIBの照射に起因してパーティクルが発生している可能性があるので、本実施形態ではS1に戻る。
【0056】
このような本実施形態のパーティクル診断方法によれば、まずは第1基板を照射位置に搬送してイオンビームIBを照射し、その第1基板に付着しているパーティクルが多いと判断した場合には、第2基板を照射位置に搬送して、その第2基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを判断しているので、第2基板に付着しているパーティクルが少なければ、第1基板にはイオンビームIBの照射に起因したパーティクルが付着していたことが分かる。一方、第2基板の付着量が多ければ、第1基板には少なくとも搬送に起因したパーティクルが付着していたことが分かる。
このように本実施形態のパーティクル診断方法によれば、イオンビームIBの照射に起因してパーティクルが発生していることや、基板の搬送に起因してパーティクルが発生していることが分かるので、装置全体の中からパーティクルの発生箇所を絞ることができ、効率の良い清掃でパーティクルの発生を低減させることが可能となる。
【0057】
さらに、搬送ラインL1に起因してパーティクルが発生していることが分かった場合に、エリア別搬送ステップ(S10)や発生箇所特定ステップ(S11)において搬送ラインL1を形成するどのエリアでパーティクルが発生しているかを特定しているので、清掃すべき箇所をさらに絞ることができる。
【0058】
そのうえ、各エリア別作業に含まれる工程の少なくとも一部を、互いに異なる第3基板に対して複数回繰り返して行うので、各エリア別作業を行った後の第3基板を確認すれば、どのエリア別作業によりパーティクルが付着しているかをより正確に判断することができる。
【0059】
加えて、ビームライン清掃ステップS5の最中に搬送ラインL1を簡易的に清掃しているので、この簡易的な清掃により基板の搬送に起因するパーティクルの発生を抑えることができれば、次回のパーティクル診断時においても搬送ラインL1がパーティクルの発生箇所とならずに済む可能性を高めることができる。そうすれば、メンテナンスサイクルを延ばすことができ、装置の稼働率を向上させることができる。
【0060】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0061】
例えば、基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを、前記実施形態では異物検査装置などにより計測したパーティクルの個数に基づいて判断していたが、異物検査装置などにより得られるパーティクルのマップ情報に基づいて判断しても良い。
その他、自動光学検査装置(AOI)による検査結果に基づいて、基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを判断しても良い。
【0062】
また、各エリア別作業のうち第3基板に対して繰り返し行っている工程は前記実施形態に限らず、例えば第1エリア別作業において真空引き(Sa4)及び大気開放(Sa5)を繰り返し行うようにしたり、第2エリア別作業において第5ゲートバルブV5への移動(Sb8)から第3ゲートバルブV3への移動(Sb15)までを繰り返し行うようにしたり、第3エリア別作業においてクランプ(Sc12)及びアンクランプ(Sc16)のみ或いは走査(Sc14)のみを繰り返し行うようにしたり、繰り返す工程は適宜変更して構わない。また、繰り返し回数は適宜変更して構わない。
このように繰り返す工程や繰り返し回数を適宜変更することに鑑みれば、イオンビーム照射装置100は、例えばタッチパネルなどの入力手段を介してオペレータが繰り返す工程や繰り返し回数を変更できるように構成されていても良い。
【0063】
さらに、前記実施形態ではビームライン清掃ステップ(S5)の最中に搬送ラインL1を清掃することを説明したが、エリア別搬送ステップ(S10)の最中にビームライン形成要素を清掃しても良い。
具体的には、例えば処理室R3においてイオンビームIBが入射する開口をゲートバルブ等で閉じておき、その状態でエリア別搬送ステップ(S10)の最中に、ビームライン清掃ステップ(S5)と同様、イオンビームIBを磁界により走査したり、プラズマ生成容器2内に水素プラズマを生成することでビームライン形成要素を清掃する方法が挙げられる。
【0064】
加えて、前記実施形態では基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかをオペレータが判断していたが、
図6に示すように、パーティクル診断装置200が自動的に判断するようにしても良い。
具体的にパーティクル診断装置200は、CPU、メモリ、入出力インターフェイス、AD変換器等を備えた汎用乃至専用のコンピュータであり、前記メモリの所定領域に記憶させた所定プログラムにしたがってCPUや周辺機器等を協働させることにより、基板に付着しているパーティクルの個数又は個数に関連する値を示す個数データを受け付ける個数データ受付部21と、個数データ受付部21により受け付けられた個数データに基づいて基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを判断する判断部22としての機能を発揮するものである。なお、「個数に関連する値」とは、上述したパーティクルのマップ情報などである。
【0065】
より具体的に説明すると、個数データ受付部21は、搬送ラインL1を通してイオンビームIBの照射位置に搬送されて、当該照射位置でイオンビームIBが照射された第1基板に付着しているパーティクルの第1個数データと、搬送ラインL1を通して照射位置に搬送された第2基板に付着しているパーティクルの第2個数データとを、例えば異物検査装置などから受け付ける。
そして、判断部22は、第1個数データに基づいて第1基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを判断するとともに、第2個数データに基づいて第2基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを判断し、その判断結果を例えばディスプレイ等に出力する。
【0066】
上述した構成により、判断部22によって、第1基板に付着しているパーティクルが多く、且つ、第2基板に付着しているパーティクルが少ないと判断された場合には、基板にイオンビームIBを照射することに起因してパーティクルが発生していることが分かる。
一方、判断部22によって、第2基板に付着しているパーティクルが多いと判断された場合には、少なくとも基板の搬送に起因してパーティクルが発生していることが分かる。
このように、上述したパーティクル診断装置200によれば、イオンビーム照射装置100におけるパーティクルの発生箇所を自動で診断することができる。
【0067】
なお、個数データ受付部21が前記実施形態におけるエリア別作業を行った第3基板に付着しているパーティクルの個数データを受け付け、その個数データに基づいて判断部22が各第3基板に付着しているパーティクルが多いか少ないかを判断するように構成すれば、搬送ラインL1を形成するどのエリアがパーティクルの発生箇所であるかを自動的に絞ることができる。
【0068】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。