(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6690621
(24)【登録日】2020年4月13日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】静圧流体軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 32/06 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
F16C32/06 Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-184601(P2017-184601)
(22)【出願日】2017年9月26日
(65)【公開番号】特開2019-60384(P2019-60384A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2019年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107619
【氏名又は名称】スターライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】絹川 智哉
(72)【発明者】
【氏名】南 徹
【審査官】
中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−175484(JP,A)
【文献】
特開2017−141964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/00− 32/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトとハウジングとの間に配置し、シャフトとの間に軸受隙間を介して対向する軸受面と、該軸受面にそれぞれ開口し前記シャフトの回転軸線周りに複数設けられた給気孔とを備え、該給気孔を通して前記軸受隙間に加圧した流体を導くことにより、前記シャフトを非接触状態で回転支持する静圧流体軸受において、
少なくとも第1部材と第2部材の二部材を嵌め合わせた状態で固定して構成され、各部材にはそれぞれ入れ子状に嵌合して略円筒形を形成する凸部と凹部を円周方向に複数設け、前記第1部材と第2部材の少なくとも一方の凸部の内周面は前記軸受面の一部を構成するとともに、前記第1部材と第2部材の凸部の間に形成される気密嵌合部には前記給気孔の大きさを調整するための円周方向へ相対変位可能な遊び部を設け、前記凸部の遊び部とは反対側とそれに隣接する他の凸部との間に前記給気孔が形成されることを特徴とする静圧流体軸受。
【請求項2】
前記遊び部は、前記第1部材の凸部の内周側に設けた円筒面からなる第1障壁部と、前記第2部材の凸部の外周側に設けた円筒面からなる第2障壁部とが円周方向への変位を許容した状態で気密当接して形成される請求項1記載の静圧流体軸受。
【請求項3】
前記遊び部が、段差形状によって形成される請求項1又は2記載の静圧流体軸受。
【請求項4】
前記給気孔が、軸方向且つ半径方向に延びる溝状スロットである請求項1〜3何れか1項に記載の静圧流体軸受。
【請求項5】
前記溝状スロットの溝幅が5〜40μmである請求項4記載の静圧流体軸受。
【請求項6】
少なくとも前記給気孔部分の構成材料が合成樹脂である請求項1〜5何れか1項に記載の静圧流体軸受。
【請求項7】
前記遊び部は調整部材を挿入可能とする請求項1〜6何れか1項に記載の静圧流体軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静圧流体軸受に係わり、更に詳しくはシャフトを流体静圧によって非接触状態で回転支持する静圧流体軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハウジング(図示せず)とシャフトとの間に配置され、シャフトを流体静圧により非接触状態で回転支持する静圧流体軸受は提供されてきた。例えば、特許文献1には、シャフトと、該シャフトとの間に軸受隙間を介して対向する軸受面を備えた軸受体とを具備し、前記軸受隙間に加圧した気体を、前記軸受面にそれぞれ開口し前記シャフトの回転軸線周りの円周方向に複数設けられ前記円周方向に沿って延在するスロット絞りを通して導くことにより、前記シャフトを回転可能に支持する静圧気体軸受が記載されている。
【0003】
従来のスロット絞り式の静圧流体軸受は、軸受面の中央円周上に数十μmの隙間のスロット絞りを配置する構造である。流体供給用の前記スロット絞りは、円環状である場合と、特許文献1のように等間隔に複数配置する場合もある。前記スロット絞りから供給された流体は、軸受隙間に流入した後、大気に開放される。前記スロット絞りからの供給された流体圧力によって、軸受に剛性を与え、スロット絞りの形状やその配置によって特性が変化する。この絞りから流出する流体の圧力で軸質量や回転中の遠心力等の負荷を支持するのである。この軸受で大負荷を支持する場合には、軸受直径や流体の供給圧力も増加させる必要があった。
【0004】
更に、従来の静圧流体軸受は、スロット絞りが軸受面の軸方向中央に配置されているため、回転中の負荷が軸受の軸方向に対し偏った場合(以下,偏荷重という)、軸受面端部で接触する可能性が高く、損傷する可能性も高かった。更に、従来の流体軸受は、主として金属材料を使用しているので、高速回転時にシャフトと軸受が接触すると、焼き付き等の損傷を引き起こすことが問題であった。これを低減するために、軸受面に損傷低減のためのコーティングを施すことも行われているが、高価であることから軸受の単価が高くなってしまう。
【0005】
尚、特許文献2には、軸方向の離れた2箇所に円周方向に沿って延びたラジアルスロット絞りを設けた静圧流体軸受が開示されているが、複雑な多数の部品を組み合わせて構成しているためコスト高となる。
【0006】
そこで、本願出願人は、特許文献3に記載されるように、組み合わせて円筒形の軸受本体を形成する合成樹脂製の第1部材と第2部材とからなり、該第1部材と第2部材にはそれぞれ軸方向且つ半径方向に延びる流体面を有し、第1部材と第2部材を組み合わせた際に対向する流体面間に、シャフトの軸方向に延びた溝形状のスロット絞りを形成した静圧流体軸受を提案した。それにより、軸受への偏荷重に対して高い剛性を発揮する静圧流体軸受を最小限の二部材で構成でき、しかも二部材を接合するボルトによる締付力の方向にスロット絞りが延びているので、部材の変形がスロット絞りの溝幅に殆ど影響を与えないという副次的効果も備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−092196号公報
【特許文献2】特開2003−074555号公報
【特許文献3】特開2015−175484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載の合成樹脂製の静圧流体軸受は、二部材の接合時の位置決めのためにダボと係合穴を設けているが、ダボと係合穴の作成精度の影響により二部材の組立精度をμm単位にすることが困難であり、つまりμm単位でスロットの溝幅を規定することは困難であった。特に、複数のスロットを有する場合、全ての溝幅を均一にすることは困難であった。但し、従来から、スペーサ等の部材で隙間を確保する手法は用いられていたが、放射状に配置した溝状スロットを均一幅にする方法は存在しなかった。
【0009】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、部品点数が少なく、組立精度が高く、特に流体圧力を生み出す給気孔を正確に規定することが可能な静圧流体軸受を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述の課題解決のために、以下に示す静圧流体軸受を構成する。
【0011】
(1)
シャフトとハウジングとの間に配置し、シャフトとの間に軸受隙間を介して対向する軸受面と、該軸受面にそれぞれ開口し前記シャフトの回転軸線周りに複数設けられた給気孔とを備え、該給気孔を通して前記軸受隙間に加圧した流体を導くことにより、前記シャフトを非接触状態で回転支持する静圧流体軸受において、
少なくとも第1部材と第2部材の二部材を嵌め合わせた状態で固定して構成され、各部材にはそれぞれ入れ子状に嵌合して略円筒形を形成する凸部と凹部を円周方向に複数設け、前記第1部材と第2部材の少なくとも一方の凸部の内周面は前記軸受面の一部を構成するとともに、前記第1部材と第2部材の凸部の間に形成される気密嵌合部には前記給気孔の大きさを調整するための円周方向へ相対変位可能な遊び部を設け、前記凸部の遊び部とは反対側とそれに隣接する他の凸部との間に前記給気孔が形成されることを特徴とする静圧流体軸受。
【0012】
(2)
前記遊び部は、前記第1部材の凸部の内周側に設けた円筒面からなる第1障壁部と、前記第2部材の凸部の外周側に設けた円筒面からなる第2障壁部とが円周方向への変位を許容した状態で気密当接して形成される(1)記載の静圧流体軸受。
【0013】
(3)
前記遊び部が、段差形状によって形成される(1)又は(2)記載の静圧流体軸受。
【0014】
(4)
前記給気孔が、軸方向且つ半径方向に延びる溝状スロットである(1)〜(3)何れか1に記載の静圧流体軸受。
【0015】
(5)
前記溝状スロットの溝幅が5〜40μmである(4)記載の静圧流体軸受。
【0016】
(6)
少なくとも前記給気孔部分の構成材料が合成樹脂である(1)〜(5)何れか1に記載の静圧流体軸受。
【0017】
(7)
前記遊び部は調整部材を挿入可能とする(1)〜(6)何れか1に記載の静圧流体軸受。
【発明の効果】
【0018】
以上にしてなる本発明の静圧流体軸受は、以下に示す効果を奏する。
【0019】
(1)の構成によれば、部品点数が少なく、組立精度が高く、特に遊び部の間隔において、給気孔の大きさを所望の幅に調整可能であり、また入れ子状嵌合部は空気が流通しないので、給気孔から放出される空気圧が均一となる。
【0020】
(2)の構成によれば、第1障壁部と第2障壁部間で空気を流通しないので、給気孔以外から流体が軸受隙間に入るのを防ぎ、また軸受隙間から外部に抜けるのを防ぎ、流体の圧力分布を均一化できる。
【0021】
(3)の構成によれば、遊び部の製造が容易で安価に構成できる。
【0022】
(4)の構成によれば、溝状スロットの溝幅を正確に規定でき、また軸受剛性を高めることができる。
【0023】
(5)の構成によれば、給気孔へ供給する空気などの流体の流量を少なくでき、しかも高い流体圧を発生させることができる。
【0024】
(6)の構成によれば、加工精度の出し難い合成樹脂であっても、給気孔を高精度に形成することができる。
【0025】
(7)の構成によれば、遊び部の幅を正確に規定し、ひいては溝状スロットの溝幅を正確に規定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図6】第1部材と第2部材を嵌合した状態の半径方向の中央断面図である。
【
図7】第1部材と第2部材を嵌合した状態の軸方向の中央断面図である。
【
図8】第1部材と第2部材を嵌合した状態の軸方向の中央で切断した斜視図である。
【
図9】本発明の静圧流体軸受の使用状態を示す断面図である。
【
図10】本発明の静圧流体軸受の組み立て途中の状態を示す斜視図である。
【
図11】遊び部を利用して溝状スロット(給気孔)の溝幅を最大にした状態の部分拡大断面図である。
【
図12】溝状スロット(給気孔)に調整部材を挟んで溝幅を規定した状態の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。
図1は本発明に係る静圧流体軸受の全体斜視図、
図2〜
図8はその詳細を示し、
図9は使用状態を示し、図中符号1は静圧流体軸受、2はシャフト、3はハウジングを示している。
【0028】
本発明に係る静圧流体軸受1は、
図1及び
図9に示すように、シャフト2とハウジング3との間に配置し、シャフト2との間に軸受隙間4を介して対向する軸受面5と、該軸受面5にそれぞれ開口し前記シャフト2の回転軸線周りに複数設けられた給気孔6とを備え、該給気孔6を通して前記軸受隙間4に加圧した流体を導くことにより、前記シャフト2を非接触状態で回転支持するものである。本実施形態では、前記静圧流体軸受1は、全体が円筒形であり、前記給気孔6は、前記シャフト2の軸方向且つ半径方向に延びた溝状スロットで構成している。複数の前記給気孔6の位置は、シャフト2に等方的な静圧が作用するように回転対称な位置、特に円周方向に等間隔であることが好ましい。
【0029】
図1に示すように、前記静圧流体軸受1は、全体が円筒形で、好ましくは軸受長さLと軸受面5の直径Dの比(L/D)が1〜4であり、軸方向に延びた前記給気孔6を円周方向に8本配置した構造(機械式でいうところのニードルベアリングと同様)である。前記給気孔6は、前記軸受面5から円筒部内部まで半径方向に延び、円筒部の外周部に設けた供給路7に連通している。ここで、前記給気孔6は、溝状、円状等が用いられる。軸受への偏負荷に対して高い剛性を発揮するという理由で、溝幅5〜40μmで、より好ましくは20〜30μm、軸方向の溝長さは軸受長さLの1/2以上の溝状が最も良い。
【0030】
そして、前記供給路7を通して給気された流体は、8本の給気孔6を通り軸受面5に流入し、軸受隙間4を通過した後大気開放される仕組みである。ここで、作動流体は、加圧空気、加圧窒素ガス、炭酸ガス等、流体で高い圧力を出せるものであれば、何でも良い。特にコストで優れ、工場付帯設備のコンプレッサーを流用できるという理由で加圧空気が優れる。前記供給路7は、円筒部の外周面に円周方向に形成した環状溝8と該環状溝8に交差し、それぞれの前記給気孔6の外周開口部に連通する縦溝9とで構成することが好ましい。また、
図1及び
図9に示したように、前記供給路7を内側に含むように、静圧流体軸受1の軸方向両端部の外周には、Oリング溝10,11を形成し、該Oリング溝10,11に装着したOリング12を前記ハウジング3の内周面に圧接することにより、前記供給路7が気密状態で形成される。尚、前記供給路7には、前記ハウジング3を貫通した供給孔(図示せず)を通して加圧流体を供給する。
【0031】
前述の構造の静圧流体軸受1を機械加工で作製することは困難であるので、少なくとも二部材を組み合わせて構成する。静圧流体軸受1の構成材料は金属、合成樹脂等何でも良いが、加工精度を出しにくい樹脂製の場合、本件発明の効果がより顕著である。
【0032】
前記静圧流体軸受1を構成する樹脂は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)及びフェノール樹脂、ポリプロプレン、ポリエチレン何でも良いが、切削における加工精度が優れている点でPPSが最も良い。
【0033】
そして、前記静圧流体軸受1を構成する部材は、切削加工、射出成形で成形できるが、加工精度の点で切削加工が最も優れる。ここで、切削加工には、ブロック状の材料から切削する場合と、予め粗い形状に射出成形した中間成形品を切削する場合を含む。
【0034】
本発明に係る前記静圧流体軸受1は、少なくとも2部材を軸方向に嵌合して位置決め後、両部材を固定するが、固定方法はネジ止め、ボルト止め、接着、溶着等何でも良いが、固定後であっても再調整や分解が容易なボルト止めが特に良い。
【0035】
次に、本発明に係る静圧流体軸受1を図面に基づいて具体的に説明する。本実施形態の静圧流体軸受1は、組み合わせて円筒形の軸受本体を形成する第1部材21と第2部材22とから構成されている。前記第1部材21と第2部材22は、軸方向から入れ子状に組み合わせ可能な凹凸形状を有している。
【0036】
先ず、前記第1部材21は、
図2及び
図4に示すように、環状部23の内側面に8つの同形の凸部24を円周方向に等間隔で軸方向へ突設し、隣接する凸部24,24間は同形の凹部25となっている。前記第1部材21の各凸部24の端面は同一平面を構成し、各凸部24には、端面に開口し且つ軸方向に延びた螺孔26をそれぞれ形成している。尚、前記螺孔26は、前記環状部23の外側面まで貫通していない。また、前記環状部23の外周には、前記Oリング溝10を形成している。前記第1部材21の各凸部24の内周面は、円筒面となっており、前記軸受面5の一部を構成している。
【0037】
次に、前記第2部材22は、
図2、
図3及び
図5に示すように、環状部27の内側面に8つの同形の凸部28を円周方向に等間隔で軸方向へ突設し、隣接する凸部28,28間は同形の凹部29となっている。前記第2部材22の各凸部28の端面は同一平面を構成し、各凹部29には、軸方向に延びた通孔30をそれぞれ形成し、前記環状部27の外側面で前記通孔30の周りには座グリ孔31を形成している。また、前記環状部27の外周には、前記Oリング溝11を形成している。前記第2部材22の各凸部28の内周面は、円筒面となっており、前記軸受面5の一部を構成している。尚、前記第1部材21及び前記第2部材22の各凸部28のどちらか一方の内周面のみが、前記軸受面5の一部を構成していても良い。
【0038】
前記第1部材21と第2部材22は、
図1及び
図2に示すように、それぞれ入れ子状に嵌合して略円筒形を形成する。つまり、前記第1部材21の凸部24は第2部材22の凹部29に嵌合し、第2部材22の凸部28は第1部材21の凹部25にそれぞれ入れ子状に嵌合し、相補的な関係を有している。ここで、前記第1部材21の凸部24と凹部25の対、前記第2部材22の凸部28と凹部29の対は、最低3対は必要であるが、本実施形態では8対設けている。
【0039】
更に、
図2、
図3及び
図6に示すように、前記第1部材21の凸部24と第2部材22の凸部28は気密状態で嵌合する構造となっており、この気密嵌合部32には、
図10及び
図12に示すように、前記給気孔6に調整部材33を挿入可能とすべく円周方向へ相対変位可能な遊び部34を設け、前記凸部24の遊び部34とは反対側とそれに隣接する他の凸部28との間に前記給気孔6が形成され、前記凸部28の遊び部34とは反対側とそれに隣接する他の凸部24との間に前記給気孔6が形成される。つまり、前記凸部24の遊び部34とは反対側の側面を軸方向且つ半径方向に延びた流体面35とし、前記凸部28の遊び部34とは反対側の側面を軸方向且つ半径方向に延びた流体面36とし、前記凸部24の流体面35と前記凸部28の流体面36との間に溝状スロットからなる前記給気孔6を形成する。
【0040】
前記遊び部34は、前記第1部材21の凸部24の内周側に設けた円筒面からなる第1障壁部37と、前記第2部材22の凸部28の外周側に設けた円筒面からなる第2障壁部38とが円周方向への変位を許容した状態で気密当接して形成される。この第1障壁部37と第2障壁部38とで気密嵌合部32を構成する。前記第1部材21と第2部材22は、入れ子状に嵌合した状態で、前記遊び部34の存在により、円周方向へ相対変位可能になっており、それにより前記給気孔6の溝幅が調整できる。
【0041】
前記遊び部34及び障壁部37,38は、凹凸構造、段差構造、積層構造等、何でも良いが、製造が容易で安価という理由で本実施形態の段差構造が最も適している。また、前記遊び部34の遊び幅は、溝状スロット(給気孔6)を所望の溝幅に調整できるという理由で、溝状スロットの設計溝幅より長く設計すると良い。
【0042】
前記給気孔6の溝幅を正確に設計値にするには、先ず、
図11に示すように、前記第1部材21と第2部材22を入れ子状に嵌合した状態で、前記遊び部34を利用して相対回転させて前記給気孔6の溝幅を広くした後、該給気孔6に規定の厚さを有する板状若しくはシート状の前記調整部材33を挿入し、次に、
図12に示すように、前記第1部材21と第2部材22を相対回転させて前記給気孔6内で前記調整部材33を挟み込み、その状態で前記第1部材21と第2部材22を、
図1及び
図10に示すように、ボルト40で軸方向に引き付けて固定する。
【0043】
本実施形態では、前記給気孔6は、全て内周側から外周側へ放射状に形成されているので、全ての給気孔6に前記調整部材33を挿入することが可能である。それにより、全ての給気孔6の溝幅を正確に一致させることができる。尚、前記調整部材33は最低1箇所の給気孔6に挿入するだけでもよい。
【0044】
前記ボルト39は、前記第2部材22の通孔30から挿入し、第1部材21の螺孔26に螺合し、該ボルト39の頭部は前記座グリ孔31内に埋没するようにしている。尚、前記調整部材33を給気孔6に挿入する前に、前記ボルト39を緩く螺合してもよく、前記通孔30の直径はボルト39の軸部よりも十分に大きく、前記遊び部34の遊び幅よりも大きいので、前記調整部材33による給気孔6の溝幅の設定には支障がない。すなわち、第1部材21のみに螺孔26を形成し、第2部材に螺孔26を形成していないため、第2部材の通孔の遊び幅が大きい分だけ、調整部材33による給気孔6の溝幅の設定を可能とするのである。さらに、ボルト39の締め付けにより、ボルト39の頭部とボルト39が螺合する螺孔26が軸方向に引き付けられ、第1部材21が挟持される事で、第1部材21と第2部材22が強固に固定されるのである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の係る静圧流体軸受は、グリスレスで用いられるため食品・医薬品向けの製造装置等に用いるのに適する。更に、本発明の係る静圧流体軸受は、空気圧等により軸受内に異物が混入するのを防ぐシール効果も有する。
【符号の説明】
【0046】
1 静圧流体軸受
2 シャフト
3 ハウジング
4 軸受隙間
5 軸受面
6 給気孔
7 供給路
8 環状溝
9 縦溝
10 Oリング溝
11 Oリング溝
12 Oリング
21 第1部材
22 第2部材
23 環状部
24 凸部
25 凹部
26 螺孔
27 環状部
28 凸部
29 凹部
30 通孔
31 座グリ孔
32 気密嵌合部
33 調整部材
34 遊び部
35 流体面
36 流体面
37 第1障壁部
38 第2障壁部
39 ボルト