特許第6690692号(P6690692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6690692
(24)【登録日】2020年4月13日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】粗化硬化体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/18 20060101AFI20200421BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   H05K3/18 K
   H05K3/38 A
【請求項の数】16
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2018-218290(P2018-218290)
(22)【出願日】2018年11月21日
(62)【分割の表示】特願2014-162511(P2014-162511)の分割
【原出願日】2014年8月8日
(65)【公開番号】特開2019-41123(P2019-41123A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2018年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 嘉生
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】川合 賢司
【審査官】 ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−127644(JP,A)
【文献】 特開2004−047703(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/061688(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/03
H05K 3/18
H05K 3/38
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
程(1)支持体と接合している樹脂組成物層を、温度Tにて熱硬化させる第1の熱硬化処理に付し、第1の熱硬化処理後の樹脂組成物層を温度Tよりも高い温度Tにて熱硬化させる第2の熱硬化処理に付して硬化体を得る工程、
工程(2)第2の熱硬化処理により得られた硬化体を温度Tから10℃/分以下の降温速度にて室温に戻す工程、
工程(3)室温に戻した後、硬化体に接合している支持体を硬化体から剥離する工程、及び
工程(4)支持体を剥離した後、硬化体を粗化処理して粗化硬化体を形成する工程、
を含む、粗化硬化体の製造方法であって、
第1の熱硬化処理後の樹脂組成物層の最低溶融粘度Vが11000ポイズ〜300000ポイズの範囲となるよう第1の熱硬化処理を実施する粗化硬化体の製造方法。
【請求項2】
工程(4)で得られた粗化硬化体の表面に無電解めっきしてめっき付き粗化硬化体を形成したとき、該めっき付き粗化硬化体表面に垂直な方向における該めっき付き粗化硬化体の断面において、めっきと粗化硬化体の界面を最小二乗法により直線化して得られた直線L1上にあるめっき領域の長さXと、直線L1と平行であり且つ直線L1から粗化硬化体の深さ方向に0.2μm離れている直線L2上にあるめっき領域の長さYとが、Y/X≦1の条件を満たす、請求項1に記載の粗化硬化体の製造方法。
【請求項3】
第1の熱硬化処理を行う時間が5分間〜180分間であり、且つ第2の熱硬化処理を行う時間が5分間〜120分間である、請求項1又は2に記載の粗化硬化体の製造方法。
【請求項4】
が、[支持体の軟化点−50](℃)以上[支持体の軟化点+30](℃)以下である、請求項1〜3の何れか1項に記載の粗化硬化体の製造方法。
【請求項5】
が、(T+10)℃以上である、請求項〜4の何れか1項に記載の粗化硬化体の製造方法。
【請求項6】
が、150℃以上である、請求項〜5の何れか1項に記載の粗化硬化体の製造方法。
【請求項7】
さらに、工程(0)溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、当該樹脂ワニスを支持体上に塗布し、乾燥させて、支持体と接合している樹脂組成物層を得る工程を含む、請求項1〜6の何れか1項に記載の粗化硬化体の製造方法。
【請求項8】
支持体が、プラスチック材料からなるフィルムである、請求項1〜7の何れか1項に記載の粗化硬化体の製造方法。
【請求項9】
支持体が、樹脂組成物層と接合する側の表面に離型層を有する、請求項1〜8の何れか1項に記載の粗化硬化体の製造方法。
【請求項10】
樹脂組成物層が、エポキシ樹脂及び硬化剤を含む、請求項1〜9の何れか1項に記載の粗化硬化体の製造方法。
【請求項11】
樹脂組成物層が、ナフトール系硬化剤及び活性エステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1〜10の何れか1項に記載の粗化硬化体の製造方法。
【請求項12】
樹脂組成物層が、無機充填材を含む、請求項1〜11の何れか1項に記載の粗化硬化体の製造方法。
【請求項13】
無機充填材の平均粒径が、0.01μm〜0.3μmである、請求項12に記載の粗化硬化体の製造方法。
【請求項14】
工程(2)における降温速度が、3℃/分以下である、請求項1〜13の何れか1項に記載の粗化硬化体の製造方法。
【請求項15】
第1の熱硬化処理前の樹脂組成物層の最低溶融粘度Vが500ポイズ〜10000ポイズである、請求項1〜14の何れか1項に記載の粗化硬化体の製造方法。
【請求項16】
粗化硬化体の厚さが100μm以下である、請求項1〜15の何れか1項に記載の粗化硬化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗化硬化体に関する。さらには、該粗化硬化体を用いた積層体、プリント配線板、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造技術として、絶縁層と導体層(回路)を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。ビルドアップ方式による製造方法においては、一般に、絶縁層は樹脂組成物を硬化させて形成される。その後、樹脂組成物の硬化体を粗化処理して粗化硬化体を形成し、該粗化硬化体の表面に導体層を形成することができる。
【0003】
近年の軽薄短小の傾向から、プリント配線板においては回路の微細化が進められている。特許文献1には、回路の微細化に寄与すべく、特殊な支持体を用いて粗化硬化体の表面粗度を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−36051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粗化硬化体の表面粗度を表す指標として、表面凹凸の高さに関するパラメータである算術平均粗さ(Ra)が良く知られている。回路の微細化を進めるに際しては、粗化硬化体の表面粗度を低下させることが必要であるとされ、粗化硬化体表面のRaを低下させる種々の取り組みがなされてきている。
【0006】
本発明者らは、回路の微細化について検討を進める過程において、粗化硬化体の表面粗度が或る程度低い場合には、Raの値と微細回路形成能とは必ずしも相関しないことを見出した。すなわち、粗化硬化体表面のRaを低下させることによって回路のさらなる微細化を図ることは困難であることを見出した。
【0007】
本発明は、回路のさらなる微細化を可能とする粗化硬化体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題につき鋭意検討した結果、粗化硬化体表面の凹凸の形状や間隔が微細回路形成能と相関することを見出した。斯かる知見に基づき、本発明者らは、特定の凹凸形状あるいは特定の凹凸間隔を粗化硬化体表面に導入することにより回路のさらなる微細化を実現し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] 樹脂組成物の硬化体を粗化処理して得られる粗化硬化体であって、
該粗化硬化体の表面の算術平均粗さ(Ra)が500nm以下であり、
該粗化硬化体の表面に無電解めっきしてめっき付き粗化硬化体を形成したとき、該めっき付き粗化硬化体表面に垂直な方向における該めっき付き粗化硬化体の断面において、めっきと粗化硬化体の界面を最小二乗法により直線化して得られた直線L1上にあるめっき領域の長さXと、直線L1と平行であり且つ直線L1から粗化硬化体の深さ方向に0.2μm離れている直線L2上にあるめっき領域の長さYとが、Y/X≦1の条件を満たす、粗化硬化体。
[2] 直線L1と平行であり且つ直線L1から粗化硬化体の深さ方向にZ(μm)離れている直線L3上にあるめっき領域の長さをY’とするとき、Y’/X≦0.05を満たすZの最小値が3以下である、[1]に記載の粗化硬化体。
[3] 樹脂組成物の硬化体を粗化処理して得られる粗化硬化体であって、
該粗化硬化体表面の凹凸の平均間隔(Sm)が2000nm以下である、粗化硬化体。
[4] 粗化硬化体の表面の算術平均粗さ(Ra)が200nm以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の粗化硬化体。
[5] 樹脂組成物の硬化体が、
樹脂組成物を温度Tにて熱硬化させる第1の熱硬化処理と、
第1の熱硬化処理後の樹脂組成物を温度Tよりも高い温度Tにて熱硬化させる第2の熱硬化処理と
を含む熱硬化処理により得られる、[1]〜[4]のいずれかに記載の粗化硬化体。
[6] 第1の熱硬化処理後の樹脂組成物の最低溶融粘度が11000ポイズ〜300000ポイズである、[5]に記載の粗化硬化体。
[7] 樹脂組成物が平均粒径0.01μm〜0.3μmの無機充填材を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の粗化硬化体。
[8] 樹脂組成物がナフトール系硬化剤及び活性エステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の粗化硬化体。
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載の粗化硬化体と、該粗化硬化体の表面に形成された導体層とを含む積層体。
[10] 導体層が、配線ピッチ16μm以下の回路を含む、[9]に記載の積層体。
[11] [1]〜[8]のいずれかに記載の粗化硬化体により形成された絶縁層を含むプリント配線板。
[12] [11]に記載のプリント配線板を含む半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回路のさらなる微細化を可能とする粗化硬化体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、内部最大径よりも開口径が小さい凹部を表面に有する粗化硬化体に無電解めっきして形成されためっき付き粗化硬化体の概略断面図である。
図2図2は、内部最大径よりも開口径が大きい凹部を表面に有する粗化硬化体に無電解めっきして形成されためっき付き粗化硬化体の概略断面図である。
図3図3は、直線L2上のめっき領域の長さを測定する方法を表す概略断面図(1)である。
図4図4は、直線L2上のめっき領域の長さを測定する方法を表す概略断面図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0013】
[粗化硬化体]
本発明の粗化硬化体は、開口径が内部最大径と同じかそれよりも大きい微細な凹部を表面に有することを特徴とする。ここで、内部最大径とは、凹部の内部における最大径をいう。
【0014】
本発明者らは、回路の微細化について検討を進める過程において、粗化硬化体の表面粗度が或る程度低い場合(例えば、Raが500nm以下)には、Raの値と微細回路形成能とは必ずしも相関しないことを見出した。粗化硬化体表面の凹凸形状について検討したところ、粗化硬化体の表面粗度が或る程度低い場合には、内部最大径よりも開口径が小さい凹部が表面に形成される傾向にあることを見出した。このように内部が膨らんだ壷状の凹部を有する粗化硬化体においては、回路形成時に導体層の不要部(非回路形成部)をエッチングして除去する際に、凹部内の導体が除去され難く、凹部内の導体を十分に除去し得る条件でエッチングした場合、配線パターンの溶解が顕著化し、回路の微細化の妨げとなっていることが推察される。
【0015】
これに対し、本発明の粗化硬化体は、或る程度低い表面粗度(例えば、Raが500nm以下)を有すると共に、開口径が内部最大径と同じかそれよりも大きい凹部を表面に有する。これによって、回路形成時に導体層の不要部を容易に除去することができ、回路のさらなる微細化を達成することができる。
【0016】
本発明において、粗化硬化体の表面の凹凸形状(詳細には、凹部の形状)は、該粗化硬化体の表面に無電解めっきしてめっき付き粗化硬化体を形成した場合の、めっきと粗化硬化体の界面近傍のめっき領域の分布を指標として表すことができる。
【0017】
詳細には、該めっき付き粗化硬化体表面に垂直な方向における該めっき付き粗化硬化体の断面において、めっきと粗化硬化体の界面を最小二乗法により直線化して得られた直線L1上にあるめっき領域の長さXと、直線L1と平行であり且つ直線L1から粗化硬化体の深さ方向に0.2μm離れている直線L2上にあるめっき領域の長さYとの比(Y/X)を求め、得られた比Y/Xの値を指標として用いることができる。
【0018】
図1には、内部最大径よりも開口径が小さい凹部を表面に有する粗化硬化体に無電解めっきして形成されためっき付き粗化硬化体の概略断面図を示す。図1に記載されるめっき付き粗化硬化体は、内部最大径よりも開口径が小さい凹部を表面に有する粗化硬化体1と、該粗化硬化体の表面に無電解めっきして形成されためっき20とを含む。めっきと粗化硬化体の界面を最小二乗法により直線化して得られた直線L1上にあるめっき領域の長さXは、例えば、粗化硬化体表面に3つの凹部が形成された図1記載のめっき付き粗化硬化体においては、3つの凹部に由来するめっき領域の長さx1、x2及びx3を足し合わせることにより得ることができる。実際には多数の凹部が粗化硬化体表面に形成されており、長さXは、これらの凹部に由来するめっき領域の長さを足し合わせることによって得られる。直線L2上にあるめっき領域の長さYに関しても同様である。図1に記載されるめっき付き粗化硬化体においては、全ての凹部が内部最大径よりも小さい開口径を有しており、直線L1上にあるめっき領域の長さx1、x2及びx3は、それぞれ直線L2上にあるめっき領域の長さy1、y2及びy3よりも短い。このような態様に限らず、上記手順で得られた長さXと長さYとの比(Y/X)が1を超える場合にあっては、たとえ内部最大径と同じかそれよりも大きい開口径を有する凹部が一部に形成されているとしても、やはり微細回路形成能の点で不適である。比Y/Xが1を超える場合にあっては、内部最大径よりも小さい開口径を有する凹部が少なくとも一部には形成されており、局所的な微細回路形成能の不良に帰着するためである。
【0019】
図2には、内部最大径よりも開口径が大きい凹部を表面に有する粗化硬化体に無電解めっきして形成されためっき付き粗化硬化体の概略断面図を示す。図2に記載されるめっき付き粗化硬化体は、内部最大径よりも開口径が大きい凹部を表面に有する粗化硬化体10と、該粗化硬化体の表面に無電解めっきして形成されためっき20とを含む。直線L1上にあるめっき領域の長さX、直線L2上にあるめっき領域の長さYを求める手順は上記と同様である。図2に記載されるめっき付き粗化硬化体においては、全ての凹部が内部最大径よりも大きい開口径を有しており、直線L1上にあるめっき領域の長さx1、x2及びx3は、それぞれ直線L2上にあるめっき領域の長さy1、y2及びy3よりも長い。優れた微細回路形成能を実現するに際しては、斯かる態様が理想的であるが、本発明者らは、比Y/Xが1以下である場合には、良好な微細回路形成能が得られることを確認している。
【0020】
したがって一実施形態において、本発明は、樹脂組成物の硬化体を粗化処理して得られる粗化硬化体であって、該粗化硬化体の表面の算術平均粗さ(Ra)が500nm以下であり、該粗化硬化体の表面に無電解めっきしてめっき付き粗化硬化体を形成したとき、該めっき付き粗化硬化体表面に垂直な方向における該めっき付き粗化硬化体の断面において、めっきと粗化硬化体の界面を最小二乗法により直線化して得られた直線L1上にあるめっき領域の長さXと、直線L1と平行であり且つ直線L1から粗化硬化体の深さ方向に0.2μm離れている直線L2上にあるめっき領域の長さYとが、Y/X≦1の条件を満たす、粗化硬化体に関する。
【0021】
回路のさらなる微細化を達成する観点から、比Y/Xは、1以下であり、好ましくは0.98以下、より好ましくは0.96以下、さらに好ましくは0.94以下、さらにより好ましくは0.92以下、特に好ましくは0.9以下、0.88以下、0.86以下、0.84以下、0.82以下、0.8以下、0.78以下、0.76以下、又は0.74以下である。比Y/Xの下限は特に限定されず、低いことが好ましいが、通常、0.2以上、0.3以上などとし得る。
【0022】
めっき付き粗化硬化体の断面は、FIB−SEM複合装置を使用して好適に観察することができる。FIB−SEM複合装置としては、例えば、SIIナノテクノロジー(株)製「SMI3050SE」が挙げられる。FIB(集束イオンビーム)によりめっき付き粗化硬化体の表面に垂直な方向における該めっき付き粗化硬化体の断面を削りだした後、該断面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、めっきと粗化硬化体の界面近傍の断面SEM画像を取得することができる。SEMによる観察幅、観察倍率は、粗化硬化体表面の凹凸形状を適切に把握し得る限り特に限定されず、使用する装置の仕様に応じて決定してよい。
【0023】
めっきと粗化硬化体の界面を最小二乗法により直線化して直線L1を得るに際しては、取得した断面SEM画像において、粗化硬化体の凸部を基準として、めっきと粗化硬化体の界面を最小二乗法により直線化すればよい。これにより、凹部の開口面に近似直線L1を設けることができる。以下、断面SEM画像におけるめっき側を上側、粗化硬化体側を下側として、比Y/Xの算出方法を説明する。
【0024】
取得した断面SEM画像を所定の幅の区間に等分し、各区間について最も上側に存在する粗化硬化体の位置を基準点として採用する。例えば、観察幅W(μm)の断面SEM画像は、所定の幅W/n(μm)の区間にn等分することができ、n個の基準点を得ることができる。W及びnは、後述する<粗化硬化体表面の凹凸形状の評価>に記載のとおり、設定してよい。詳細は後述するが、粗化硬化体は、無機充填材及び樹脂成分を含む樹脂組成物の硬化体を粗化処理して得られる。したがって、「最も上側に存在する粗化硬化体の位置」とは、樹脂成分が最も上側に存在する場合は該樹脂成分の位置をいい、無機充填材が最も上側に存在する場合は該無機充填材の位置をいう。得られたn個の基準点を座標変換し、最小二乗法によりそれらn個の基準点に基づく近似直線、すなわち、直線L1を求める。
【0025】
直線L2は、直線L1の0.2μm下側に直線L1と平行な直線を引くことにより得ることができる。
【0026】
めっき領域の長さX及びYを得る手順は先述のとおりである。十分な数の断面SEM画像を取得することにより、粗化硬化体表面の凹凸形状について全体的な特性を得ることができる。複数の断面SEM画像を取得した場合、直線L1上にあるめっき領域の長さを全ての断面SEM画像について合計して、長さXを得ることができる。長さY及び後述するY’についても同様である。
【0027】
なお、本発明においては、直線L1上に無機充填材が存在する場合、該無機充填材領域は長さXの算出にあたって以下のとおり扱う。該無機充填材の少なくとも一部が樹脂成分と接している場合、該無機充填材領域は粗化硬化体領域として扱う。他方、該無機充填材が樹脂成分と接しておらず、無電解めっきで覆われている場合、該無機充填材領域はめっき領域として扱う。直線L2上に無機充填材が存在する場合も同様に扱う。例えば、図3に概略断面図を示すめっき付き粗化硬化体においては、直線L2上に、一部が樹脂成分11と接している無機充填材12が存在する。この場合、該無機充填材領域は粗化硬化体領域として扱い、該無機充填材領域の長さはめっき領域の長さyには含まれない。他方、図4に概略断面図を示すめっき付き粗化硬化体においては、直線L2上に、樹脂成分11と接しておらず、無電解めっきで覆われている無機充填材12が存在する。この場合、該無機充填材領域はめっき領域として扱い、該無機充填材領域の長さはめっき領域の長さyに含まれる。無機充填材が無電解めっきで覆われている場合には、回路の形成時に不要な導体層を除去する際に、無電解めっきと共に除去される可能性が高いためである。
【0028】
回路のさらなる微細化を達成する観点から、粗化硬化体表面に形成される凹部の深さは所定値以下であることが好ましい。一実施形態において、直線L1と平行であり且つ直線L1から粗化硬化体の深さ方向にZ(μm)離れている直線L3上にあるめっき領域の長さをY’とするとき、Y’/X≦0.05を満たすZの最小値は、3以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましく、2.6以下であることがさらに好ましく、2.4以下であることがさらにより好ましく、2.2以下、2以下、1.8以下、1.6以下、1.4以下、1.2以下、又は1以下であることが特に好ましい。該Zの最小値の下限は、特に限定されないが、通常、0.2超、0.3以上、0.4以上、0.6以上などとし得る。
【0029】
回路のさらなる微細化を達成する観点から、直線L1と平行であり且つ直線L1から粗化硬化体の深さ方向にZ(μm)離れている直線L3上にあるめっき領域の長さをY’とするとき、Y’が0となるZの最小値は、3以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましく、2.6以下であることがさらに好ましく、2.4以下であることがさらにより好ましく、2.2以下、2以下、1.8以下、1.6以下、1.4以下、1.2以下、又は1以下であることが特に好ましい。該Zの最小値の下限は、特に限定されないが、通常、0.2超、0.3以上、0.4以上、0.6以上などとし得る。
【0030】
比Y/Xが1以下である限りにおいて、粗化硬化体表面の算術平均粗さ(Ra)は、回路のさらなる微細化の観点からより低いことが好ましい。粗化硬化体表面のRaは、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下、さらにより好ましくは250nm以下、特に好ましくは240nm以下、220nm以下、200nm以下、180nm以下、160nm以下、又は150nm以下である。Raの下限は、特に限定されないが、通常、10nm以上、20nm以上、30nm以上などとし得る。粗化硬化体表面の算術平均粗さ(Ra)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。非接触型表面粗さ計としては、例えば、ビーコインスツルメンツ社製の「WYKO NT3300」が挙げられる。
【0031】
本発明者らはまた、粗化硬化体の表面の凹凸形状(詳細には、凹部の形状)が、粗化硬化体表面の凹凸の平均間隔(Sm)と良好に相関することを見出した。詳細には、図1に示すような内部最大径よりも開口径が小さい凹部を表面に有する粗化硬化体に関しては、Smの値が大きく、図2に示すような内部最大径よりも開口径が大きい凹部を表面に有する粗化硬化体に関しては、Smの値が小さいことを見出した。そして上記の比Y/Xが1以下である粗化硬化体に関しては、Smの値が2000nm以下となる傾向にあることを本発明者らは確認している。
【0032】
したがって一実施形態において、本発明は、樹脂組成物の硬化体を粗化処理して得られる粗化硬化体であって、該粗化硬化体表面の凹凸の平均間隔(Sm)が2000nm以下である、粗化硬化体に関する。
【0033】
回路のさらなる微細化を達成する観点から、粗化硬化体表面の凹凸の平均間隔(Sm)は、2000nm以下であり、好ましくは1950nm以下、より好ましくは1900nm以下、さらに好ましくは1850nm以下、さらにより好ましくは1800nm以下、特に好ましくは1750nm以下、又は1700nm以下である。該Smの下限は、特に限定されないが、通常、500nm以上、700nm以上などとし得る。粗化硬化体表面の凹凸の平均間隔(Sm)は、Raと同様に、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。なお、表面の凹凸の平均間隔(Sm)とは、表面の凹凸プロフィールのプロフィールピーク間の平均間隔をいう。プロフィールピークとは、凹凸プロフィールの平均ラインを上向きに横切った点と下向きに横切った点の間にある最も高いピークを意味する。Smは、ISO 4287、JIS B 0601で定められている標準パラメータである。
【0034】
斯かる実施形態においても、粗化硬化体表面の算術平均粗さ(Ra)の好適な範囲は先述のとおりである。
【0035】
本発明の粗化硬化体の厚さは、良好な絶縁性を得る観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、15μm以上、又は20μm以上である。また本発明の粗化硬化体の厚さは、プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下、70μm以下、又は60μm以下である。
【0036】
本発明の粗化硬化体は、二層以上からなる複層構造であってもよい。複層構造の粗化硬化体の場合、全体の厚さが上記範囲にあることが好ましい。
【0037】
以下、本発明の粗化硬化体を形成するために使用する樹脂組成物について説明する。
【0038】
<樹脂組成物>
本発明の粗化硬化体を形成するために使用する樹脂組成物は、その硬化体が十分な硬度と絶縁性を有すると共に、該硬化体を粗化処理して得られる粗化硬化体が上記所望の凹凸形状及び凹凸間隔を満たす限り特に限定されない。例えば、樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂及び硬化剤を含む樹脂組成物が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、プリント配線板の絶縁層を形成する際に使用される従来公知の熱硬化性樹脂を用いることができ、中でもエポキシ樹脂が好ましい。したがって一実施形態において、樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び硬化剤を含む。樹脂組成物は、必要に応じて、さらに、無機充填材、熱可塑性樹脂、硬化促進剤、難燃剤及び有機充填材等の添加剤を含んでいてもよい。なお、本発明において、「樹脂成分」とは、樹脂組成物を構成する成分のうち、無機充填材以外の成分をいう。
【0039】
−エポキシ樹脂−
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%としたとき、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。中でも、樹脂組成物は、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(「固体状エポキシ樹脂」ともいう。)を単独で、又は、固体状エポキシ樹脂と、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)とを組み合わせて含むことが好ましい。固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系固体状エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族系液状エポキシ樹脂がより好ましい。本発明において、芳香族系のエポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環を有するエポキシ樹脂を意味する。
【0041】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032」、「HP4032H」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、ナガセケムテックス(株)製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、(株)ダイセル製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及びビスフェノールAF型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N−690」、「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP7200」、「HP7200H」、「HP7200HH」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA7311」、「EXA7311−G3」、「EXA7311−G4」、「EXA7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル(株)製の「PG−100」、「CG−500」、三菱化学(株)製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0043】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1〜1:8の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)後述する接着フィルムの形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)接着フィルムの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、iii)十分な破断強度を有する硬化体を得ることができるなどの効果が得られる。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.3〜1:7の範囲がより好ましく、1:0.6〜1:6の範囲がさらに好ましく、1:0.8〜1:5の範囲が特に好ましい。
【0044】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50〜5000、より好ましくは50〜3000、さらに好ましくは80〜2000、さらにより好ましくは110〜1000である。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0045】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0046】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、3質量%〜40質量%が好ましく、5質量%〜35質量%がより好ましく、10質量%〜30質量%がさらに好ましい。
【0047】
なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0048】
−硬化剤−
硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されず、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤が挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着強度(ピール強度)の観点から、含窒素フェノール系硬化剤又は含窒素ナフトール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤又はトリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。耐熱性、耐水性、及び導体層との密着強度を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤及びトリアジン骨格含有ナフトールノボラック系硬化剤が好ましい。フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成(株)製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、日本化薬(株)製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学(株)製の「SN−170」、「SN−180」、「SN−190」、「SN−475」、「SN−485」、「SN−495」、「SN−375」、「SN−395」、DIC(株)製の「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−3018」、「LA−1356」、「TD2090」等が挙げられる。
【0050】
耐熱性に優れる粗化硬化体を得る観点から、活性エステル系硬化剤も好ましい。活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0051】
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンタレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0052】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416−70BK」(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
【0053】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子(株)製の「HFB2006M」、四国化成工業(株)製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
【0054】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート))、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン(株)製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0055】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル(株)製の「V−03」、「V−07」等が挙げられる。
【0056】
これらの中でも、ナフトール系硬化剤及び活性エステル系硬化剤は、粗化処理に対し高い耐性を示す硬化体をもたらし、表面粗度の低い粗化硬化体をもたらす。他方において、ナフトール系硬化剤及び活性エステル系硬化剤は、内部最大径よりも開口径が小さい凹部を表面に有する粗化硬化体、すなわち、上記の比Y/Xが1を超える粗化硬化体に帰着し易いことを本発明者らは見出している。ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤の使用量を低く抑えることによって、比Y/Xの値を幾分低下させることは可能であるが、これらの使用量のみをパラメータとして比Y/Xを調整することには限度があり、Raの上昇も懸念される。詳細は後述するが、本発明においては、樹脂組成物の硬化条件等を併せて操作して硬化体の相分離サイズや架橋度粗密サイズ等を調整することにより、比Y/Xの値を所望の範囲に調整し得るに至ったものである。ナフトール系硬化剤及び活性エステル系硬化剤は、表面粗度の低い粗化硬化体をもたらす等、本来的に優れた硬化特性を示すものである。よって、本発明の効果をより享受し得る一実施形態において、樹脂組成物は、ナフトール系硬化剤及び活性エステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上を含む。
【0057】
硬化剤中のナフトール系硬化剤及び活性エステル系硬化剤の合計含有量は、硬化剤中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。該合計含有量の上限は、好ましくは80質量%未満、より好ましくは75質量%以下、又は70質量%以下である。
【0058】
エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.2〜1:2の範囲が好ましく、1:0.3〜1:1.5がより好ましく、1:0.4〜1:1.2がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。
【0059】
−無機充填材−
樹脂組成物は、無機充填材を含んでもよい。無機充填材を含むことにより、得られる粗化硬化体の熱膨張率を低く抑えることができる。
【0060】
無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられ、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。またシリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。市販されている球状溶融シリカとして、(株)アドマテックス製「SO−C2」、「SO−C1」が挙げられる。
【0061】
無機充填材の平均粒径は、上記所望の凹凸形状及び凹凸間隔を有する粗化硬化体を得る観点から、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下、さらにより好ましくは0.7μm以下、特に好ましくは0.5μm以下、0.4μm以下、又は0.3μm以下である。一方、樹脂ワニスを形成する際に適度な粘度を有し取り扱い性の良好な樹脂ワニスを得る観点から、無機充填材の平均粒径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上、0.07μm以上、又は0.1μm以上である。平均粒径の小さい無機充填材を使用する場合、得られる硬化体の相分離サイズを小さく抑えることができ、上記所望の凹凸形状及び凹凸間隔を有する粗化硬化体を達成するにあたって有利であることを本発明者らは確認している。特に好適な実施形態において、樹脂組成物は、平均粒径0.01μm〜0.3μmの無機充填材を含む。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製「LA−500」、「LA−750」、「LA−950」等を使用することができる。
【0062】
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0063】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性を向上させる観点、ひいては得られる硬化体の相分離サイズを小さく抑えて上記所望の凹凸形状及び凹凸間隔を有する粗化硬化体を得る観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度やフィルム形態での溶融粘度の過度の上昇を防止する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下がさらに好ましい。
【0064】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、(株)堀場製作所製「EMIA−320V」等を使用することができる。
【0065】
熱膨張率の低い粗化硬化体を得る観点から、樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、又は70質量%以上である。樹脂組成物中の無機充填材の含有量の上限は、得られる粗化硬化体の機械強度の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0066】
−熱可塑性樹脂−
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8,000〜70,000の範囲が好ましく、10,000〜60,000の範囲がより好ましく、20,000〜60,000の範囲がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0068】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、新日鉄住金化学(株)製の「FX280」及び「FX293」、三菱化学(株)製の「YX7553」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0069】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業(株)製の「電化ブチラール4000−2」、「電化ブチラール5000−A」、「電化ブチラール6000−C」、「電化ブチラール6000−EP」、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0070】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報及び特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0071】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0072】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0073】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0074】
樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは0.1質量%〜20質量%、より好ましくは0.5質量%〜10質量%、さらに好ましくは1質量%〜5質量%である。
【0075】
−硬化促進剤−
樹脂組成物層は、硬化促進剤を含んでもよい。
【0076】
硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.005質量%〜1質量%、より好ましくは0.01質量%〜0.5質量%である。
【0077】
−難燃剤−
難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂組成物中の難燃剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.5質量%〜10質量%、より好ましくは1質量%〜9質量%である。
【0078】
−有機充填材−
有機充填材としては、プリント配線板の製造に際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子などが挙げられ、ゴム粒子が好ましい。
【0079】
ゴム粒子としては、ゴム弾性を示す樹脂に化学的架橋処理を施し、有機溶剤に不溶かつ不融とした樹脂の微粒子体である限り特に限定されず、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。ゴム粒子としては、具体的には、XER−91(日本合成ゴム(株)製)、スタフィロイドAC3355、AC3816、AC3816N、AC3832、AC4030、AC3364、IM101(以上、アイカ工業(株)製)、パラロイドEXL2655、EXL2602(以上、呉羽化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0080】
有機充填材の平均粒子径は、好ましくは0.005μm〜1μmの範囲であり、より好ましくは0.2μm〜0.6μmの範囲である。有機充填材の平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、適当な有機溶剤に有機充填材を超音波などにより均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製「FPAR−1000」)を用いて、有機充填材の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。樹脂組成物中の有機充填材の含有量は、好ましくは1質量%〜10質量%、より好ましくは2質量%〜5質量%である。
【0081】
樹脂組成物は、必要に応じて、さらに他の成分を含んでいてもよい。斯かる他の成分としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0082】
本発明の粗化硬化体は、プリント配線板の絶縁層を形成するための粗化硬化体(プリント配線板の絶縁層用粗化硬化体)として使用することができる。中でも、ビルドアップ方式によるプリント配線板の製造において、絶縁層を形成するための粗化硬化体(プリント配線板のビルドアップ絶縁層用粗化硬化体)として好適に使用することができ、めっきにより導体層を形成するための粗化硬化体(めっきにより導体層を形成するプリント配線板のビルドアップ絶縁層用粗化硬化体)としてさらに好適に使用することができる。
【0083】
プリント配線板に本発明の粗化硬化体を使用する場合、本発明の粗化硬化体を形成するために使用する樹脂組成物は、内層基板への積層を簡便かつ効率よく実施できる観点から、該樹脂組成物からなる層を含む接着フィルムの形態で用いることが好適である。
【0084】
一実施形態において、接着フィルムは、支持体と、該支持体と接合している樹脂組成物からなる層(以下、単に「樹脂組成物層」ともいう。)とを含む。
【0085】
なお、複層構造の粗化硬化体を形成するために、複層構造の樹脂組成物層を使用してよい。
【0086】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルムが好適に用いられる。プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。好適な一実施形態において、支持体は、ポリエチレンテレフタレートフィルムである。
【0087】
支持体の市販品としては、例えば、東レ(株)製の「ルミラーT6AM」、「ルミラーR56」、「ルミラーR80」(PETフィルム)、帝人デュポンフィルム(株)製の「G2LA」(PETフィルム)、「テオネックス Q83」(PENフィルム)等が挙げられる。
【0088】
支持体は、樹脂組成物層と接合する側の表面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する側の表面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック(株)製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」などが挙げられる。
【0089】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm〜75μmの範囲が好ましく、10μm〜60μmの範囲がより好ましい。なお、支持体が離型層付き支持体である場合、離型層付き支持体全体の厚みが上記範囲であることが好ましい。
【0090】
接着フィルムは、例えば、溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0091】
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0092】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃〜150℃で3分間〜10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0093】
樹脂組成物層の最低溶融粘度Vは、プリント配線板の製造に際して樹脂の染みだしを抑制すると共に良好な積層性(回路埋め込み性)を達成する観点から、好ましくは300ポイズ〜12000ポイズ、より好ましくは500ポイズ〜10000ポイズ、又は700ポイズ〜8000ポイズである。したがって一実施形態において、本発明の粗化硬化体は、最低溶融粘度が300ポイズ〜12000ポイズの樹脂組成物を使用して、該樹脂組成物の硬化体を粗化処理して得られる。なお、樹脂組成物層の「最低溶融粘度」とは、樹脂組成物層の樹脂が溶融した際に樹脂組成物層が呈する最低の粘度をいう。詳細には、一定の昇温速度で樹脂組成物層を加熱して樹脂を溶融させると、初期の段階は溶融粘度が温度上昇とともに低下し、その後、ある温度を超えると温度上昇とともに溶融粘度が上昇する。「最低溶融粘度」とは、斯かる極小点の溶融粘度をいう。樹脂組成物層の最低溶融粘度は、動的粘弾性法により測定することができ、例えば、後述する<最低溶融粘度の測定>に記載の方法に従って測定することができる。
【0094】
接着フィルムにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。接着フィルムは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。接着フィルムが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0095】
本発明の粗化硬化体は、上記樹脂組成物の硬化体を粗化処理して得られる。例えば、本発明の粗化硬化体は、下記工程(A)及び(B)を含む方法により製造される。
(A)樹脂組成物を熱硬化させて硬化体を形成する工程
(B)硬化体を粗化処理して粗化硬化体を形成する工程
【0096】
先述のとおり、樹脂組成物は、該樹脂組成物からなる層を含む接着フィルムの形態で用いることが好適である。したがって好適な一実施形態において、工程(A)は、
(A1)支持体と、該支持体と接合している樹脂組成物からなる層とを含む接着フィルムを用いて、樹脂組成物層を設けること、及び
(A2)樹脂組成物層を熱硬化させて硬化体を得ること
を含む。なお、(A1)において樹脂組成物層を設ける対象(すなわち、内層基板)に関しては後述する。
【0097】
工程(A)において使用する樹脂組成物の構成は上述のとおりである。上記所望の凹凸形状及び凹凸間隔を有する粗化硬化体を有利に実現し得る観点から、エポキシ樹脂、硬化剤、及び無機充填材(好ましくはシリカ)を含む樹脂組成物を用いることが好ましく、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材(好ましくはシリカ)、及び熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を用いることがより好ましく、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材(好ましくはシリカ)、熱可塑性樹脂、及び硬化促進剤を含む樹脂組成物を用いることがさらに好ましい。低い表面粗度を有すると共に、上記所望の凹凸形状及び凹凸間隔を有する粗化硬化体を有利に実現し得る観点から、硬化剤としてはナフトール系硬化剤及び活性エステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上を、熱可塑性樹脂としてはフェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される1種以上を、硬化促進剤としてはアミン系硬化促進剤及びイミダゾール系硬化促進剤からなる群から選択される1種以上を、それぞれ用いることが好ましい。
【0098】
工程(A)における樹脂組成物の熱硬化は、上記所望の凹凸形状及び凹凸間隔を有する粗化硬化体をより容易に実現し得る観点から、樹脂組成物を温度Tにて熱硬化させる第1の熱硬化処理と、第1の熱硬化処理後の樹脂組成物を温度Tよりも高い温度Tにて熱硬化させる第2の熱硬化処理とを含む熱硬化処理(以下、「ステップ熱硬化処理」ともいう。)により実施することが好ましい。したがって一実施形態において、樹脂組成物の硬化体は、樹脂組成物を温度Tにて熱硬化させる第1の熱硬化処理と、第1の熱硬化処理後の樹脂組成物を温度Tよりも高い温度Tにて熱硬化させる第2の熱硬化処理とを含む熱硬化処理により得られる。なお、接着フィルムを用いる実施形態においては、上記「樹脂組成物」を「樹脂組成物層」と読み替えて適用すればよい。以下の説明においても同様である。
【0099】
ステップ熱硬化処理にて樹脂組成物を熱硬化させる場合、2段階の加熱(T→T)に限られず、3段階(T→T→T)あるいはより多段階の加熱としてもよい。
【0100】
上記所望の凹凸形状及び凹凸間隔を有する粗化硬化体を有利に実現し得る観点から、第1の熱硬化処理は、第1の熱硬化処理後の樹脂組成物の最低溶融粘度Vが好ましくは11000ポイズ〜300000ポイズの範囲となるように実施することが好ましい。最低溶融粘度Vの下限は、より好ましくは12000ポイズ以上、13000ポイズ以上、又は14000ポイズ以上である。最低溶融粘度Vの上限は、より好ましくは290000ポイズ以下、280000ポイズ以下、270000ポイズ以下、又は260000ポイズ以下である。最低溶融粘度Vが斯かる範囲となるように第1の熱硬化処理を実施する場合、樹脂組成物を構成する各成分の相溶性が高い状態で熱硬化を進行させることが可能であると共に、第2の熱硬化処理をはじめとする、より高温での熱硬化処理時に樹脂組成物を構成する各成分の過度の移動を抑制することができる。これにより、相分離サイズや架橋度粗密サイズが比較的小さい状態で熱硬化を進行させることができ、上記所望の凹凸形状及び凹凸間隔を有する粗化硬化体を達成するにあたって有利であることを本発明者らは確認している。
【0101】
接着フィルムを用いる好適な実施形態において、支持体は、(A1)と(A2)の間に剥離してもよく、(A2)の後に剥離してもよい。上記所望の凹凸形状及び凹凸間隔を有する粗化硬化体を有利に実現し得る観点から、支持体は(A2)の後に剥離することが好ましい。すなわち、支持体の付いた状態で樹脂組成物層を熱硬化させることが好ましい。斯かる場合、第1の熱硬化処理の温度Tは、好ましくは[支持体の軟化点−50](℃)以上、より好ましくは[支持体の軟化点−30](℃)以上、さらに好ましくは[支持体の軟化点−10](℃)以上、又は[支持体の軟化点](℃)以上である。温度Tの上限は、好ましくは[支持体の軟化点+30](℃)以下、より好ましくは[支持体の軟化点+25](℃)以下、又は[支持体の軟化点+20](℃)以下である。これらの条件を満たす場合、表面が平滑で相分離サイズが適度な範囲にある硬化体を得ることができ、粗化処理後に上記所望の凹凸形状及び凹凸間隔を達成するにあたって有利であることを本発明者らは確認している。
【0102】
第1の熱硬化処理を行う時間は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されず、樹脂組成物の組成等に応じて決定してよい。第1の熱硬化処理を行う時間は、例えば、5分間〜180分間、10分間〜150分間、又は15分間〜120分間としてよい。
【0103】
第2の熱硬化処理の温度Tは、温度Tよりも高い。温度Tは、十分な硬度を有する硬化体が得られる限り特に限定されず、樹脂組成物の組成等に応じて決定してよい。温度Tは、好ましくは(T+10)℃以上、より好ましくは(T+20)℃以上、(T+30)℃以上、(T+40)℃以上、又は(T+50)℃以上である。温度Tの上限は、好ましくは(T+150)℃以下、より好ましくは(T+140)℃以下、(T+130)℃以下、(T+120)℃以下、(T+110)℃以下、又は(T+100)℃以下である。温度Tの下限は、通常、150℃以上、160℃以上などであり、温度Tの上限は、通常、240℃以下、230℃以下、220℃以下などである。
【0104】
第2の熱硬化処理を行う時間は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されず、樹脂組成物の組成等に応じて決定してよい。第2の熱硬化処理を行う時間は、例えば、5分間〜120分間、10分間〜90分間、又は15分間〜60分間としてよい。
【0105】
上記所望の凹凸形状及び凹凸間隔を有する粗化硬化体を有利に実現し得る観点から、第2の熱硬化処理の後、硬化体を温度Tから所定の降温プロファイルにて室温にまで戻すことが好ましい。好ましくは10℃/分以下、より好ましくは8℃/分以下、さらに好ましくは6℃/分以下、5℃/分以下、4℃/分以下、又は3℃/分以下の降温速度にて硬化体を温度Tから室温にまで戻すことが好ましい。降温速度の下限は、特に限定されないが、通常、0.5℃/分以上、1℃/分以上などとし得る。斯かる条件を満たす場合、表面が平滑で相分離サイズが適度な範囲にある硬化体を得ることができ、粗化処理後に上記所望の凹凸形状及び凹凸間隔を達成するにあたって有利であることを本発明者らは確認している。
【0106】
熱硬化時の雰囲気の圧力は、特に限定されず、常圧下、減圧下、加圧下のいずれで実施してもよい。
【0107】
工程(B)における粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。
【0108】
例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して硬化体を粗化処理することができる。膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液が好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、例えば、30〜90℃の膨潤液に硬化体を1分間〜20分間浸漬することにより行うことができる。硬化体の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40〜80℃の膨潤液に硬化体を5分間〜15分間浸漬させることが好ましい。酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に硬化体を10分間〜30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%〜10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃〜80℃の中和液に5分間〜30分間浸漬させることにより行うことができる。
【0109】
こうして得られた本発明の粗化硬化体は、低い表面粗度を有すると共に、開口径が内部最大径と同じかそれよりも大きい凹部を表面に有する。これによって、回路形成時に導体層の不要部を容易に除去することができ、プリント配線板の製造に際して回路のさらなる微細化を達成することができる。
【0110】
[積層体]
本発明の積層体は、本発明の粗化硬化体と、該粗化硬化体の表面に形成された導体層とを含む。
【0111】
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0112】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、粗化硬化体と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0113】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、通常、3μm〜35μm、好ましくは5μm〜30μmである。
【0114】
導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法等の従来公知の技術により粗化硬化体の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層(回路)を形成することができる。以下、回路をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0115】
まず、粗化硬化体の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより導体層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチングなどにより除去して、所望の配線パターンを有する回路を形成することができる。
【0116】
先述のとおり、本発明の粗化硬化体は、低い表面粗度を有すると共に、開口径が内部最大径と同じかそれよりも大きい凹部を表面に有する。これによって、回路形成時に導体層の不要部を容易に除去することができ、回路のさらなる微細化を達成することができる。例えば、回路幅(ライン;L)と回路間の幅(スペース;S)の比(L/S)が10μm/10μm以下(すなわち、配線ピッチ20μm以下)、L/S=9μm/9μm以下(配線ピッチ18μm以下)の回路を歩留まりよく形成することができる。さらには、L/S=8μm/8μm以下(配線ピッチ16μm以下)、L/S=7μm/7μm以下(配線ピッチ14μm以下)、L/S=6μm/6μm以下(配線ピッチ12μm以下)、L/S=5μm/5μm以下(配線ピッチ10μm以下)、L/S=4μm/4μm以下(配線ピッチ8μm以下)の微細な回路を歩留まりよく形成することができる。したがって好適な一実施形態において、導体層は、配線ピッチ16μm以下の回路を含む。
【0117】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の粗化硬化体により形成された絶縁層を含むことを特徴とする。
【0118】
一実施形態において、本発明のプリント配線板は、上記の接着フィルムを用いて製造することができる。斯かる実施形態においては、接着フィルムを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように、内層基板に積層した後、上述の「工程(A)」及び「工程(B)」を実施して本発明の粗化硬化体を内層基板上に形成することができる。
【0119】
「内層基板」とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板、又は該基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された回路基板をいう。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「内層基板」に含まれる。
【0120】
内層基板と接着フィルムの積層は、例えば、支持体側から接着フィルムを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。接着フィルムを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を接着フィルムに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に接着フィルムが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0121】
内層基板と接着フィルムの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは80℃〜140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa〜1.77MPa、より好ましくは0.29MPa〜1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間〜400秒間、より好ましくは30秒間〜300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0122】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターは、先述のとおりである。
【0123】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された接着フィルムの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0124】
次いで、内層基板上に形成された粗化硬化体(絶縁層)の表面に導体層を形成する。導体層の形成方法は、先述のとおりである。なお、プリント配線板を製造するに際しては、絶縁層に穴あけする工程等をさらに実施してもよい。これらの工程は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
【0125】
[半導体装置]
本発明のプリント配線板を用いて、半導体装置を製造することができる。半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0126】
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0127】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、などが挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例】
【0128】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、別途明示のない限り、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0129】
<測定・評価方法>
まず、本明細書での物性評価における測定・評価方法について説明する。
【0130】
〔測定・評価用基板の調製〕
(1)回路基板の下地処理
回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック(株)製「R1515A」)の両面をマイクロエッチング剤(メック(株)製「CZ8100」)にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。
【0131】
(2)接着フィルムの積層
実施例及び比較例で作製した接着フィルムから保護フィルムを剥離した。樹脂組成物層の露出した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニチゴー・モートン(株)製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が回路基板と接合するように、回路基板の両面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、積層された接着フィルムを、大気圧下、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスして平滑化した。
【0132】
(3)樹脂組成物層の硬化
接着フィルムの積層後、樹脂組成物層を熱硬化させて、回路基板の両面に硬化体を形成した。その際、実施例1、2、4及び比較例1に関しては、支持体であるPETフィルムが付いた状態で樹脂組成物層を熱硬化させた。実施例3及び比較例2に関しては、支持体であるPETフィルムを剥離した後に樹脂組成物層を熱硬化させた。
【0133】
樹脂組成物層の熱硬化は、温度Tにて熱硬化する第1の熱硬化処理と、温度Tよりも高い温度Tにて熱硬化する第2の熱硬化処理とを含む熱硬化処理により実施した。詳細には、下記条件1(実施例1)、条件2(実施例2)、条件3(実施例3及び比較例2)、条件4(実施例4)、又は条件5(比較例1)にて実施した。
条件1:150℃で(150℃のオーブンに投入後)30分間、次いで170℃で(170℃のオーブンに移し替えた後)30分間、熱硬化させた。その後、基板を室温雰囲気下に取り出した。
条件2:80℃で(80℃のオーブンに投入後)30分間、次いで175℃で(175℃のオーブンに移し替えた後)30分間、熱硬化させた。その後、基板を室温雰囲気下に取り出した。
条件3:100℃で(100℃のオーブンに投入後)30分間、次いで175℃で(175℃のオーブンに移し替えた後)30分間、熱硬化させた。その後、基板を室温雰囲気下に取り出した。
条件4:150℃で(150℃のオーブンに投入後)30分間、次いで170℃で(170℃のオーブンに移し替えた後)30分間、熱硬化させた。その後、2.5℃/分の降温プロファイルにて基板を室温(25℃)にまで戻した。
条件5:100℃で(100℃のオーブンに投入後)30分間、次いで175℃で(175℃のオーブンに移し替えた後)30分間、熱硬化させた。その後、基板を室温雰囲気下に取り出した。
【0134】
(4)粗化処理
支持体が付いた状態で熱硬化させた場合は、支持体を剥離した。硬化体の露出した基板を、膨潤液(アトテックジャパン(株)製「スエリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムを含有する水溶液)に60℃で5分間(実施例3及び比較例2)又は10分間(実施例1、2、4及び比較例1)、酸化剤(アトテックジャパン(株)製「コンセントレート・コンパクトCP」、KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間、最後に中和液(アトテックジャパン(株)製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間浸漬した後、80℃で30分間乾燥させて、回路基板の両面に粗化硬化体を形成した。得られた基板を「評価基板A」と称する。
【0135】
(5)回路の形成
セミアディティブ法に従って、粗化硬化体の表面に回路を形成した。
【0136】
(5−1)無電解めっき
粗化硬化体の表面に無電解めっきした。無電解めっきは、アトテックジャパン(株)製薬液を使用して、以下の手順で実施した。厚さ1μmのめっきを形成した。得られた基板を「評価基板B」と称する。なお、評価基板Bは、回路基板の両面にめっき付き粗化硬化体が形成された基板である。
【0137】
1.アルカリクリーニング(粗化硬化体表面の洗浄と電荷調整)
粗化硬化体表面を、「Cleaning Cleaner Securiganth 902」を用いて60℃で5分間洗浄した。
2.ソフトエッチング(洗浄)
アルカリクリーニング後の基板を、硫酸酸性ペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液を用いて、30℃で1分間処理した。
3.プレディップ(Pd付与のための粗化硬化体表面の電荷の調整)
次いで、基板を、「Pre. Dip Neoganth B」を用いて室温で1分間処理した。
4.アクティヴェーター(粗化硬化体表面へのPdの付与)
プレディップの後、基板を、「Activator Neoganth 834」を用いて35℃で5分間処理した。
5.還元(粗化硬化体に付与されたPdの還元)
次いで、基板を、「Reducer Neoganth WA」及び「Reducer Acceralator 810 mod.」の混合液を用いて30℃で5分間処理した。
6.無電解銅めっき(粗化硬化体表面(Pd表面)へのCu析出)
還元後、基板を、「Basic Solution Printganth MSK−DK」、「Copper solution Printganth MSK」、「Stabilizer Printganth MSK−DK」及び「Reducer Cu」の混合液を用いて35℃で20分間処理した。得られた基板を、150℃で30分間、加熱処理した。
【0138】
(5−2)配線パターンの形成
無電解めっきの後、基板表面を5%硫酸水溶液で30秒間処理した。次いで、パターン形成用ドライフィルム(日立化成(株)製「フォテックRY−3600」、厚さ19μm)を、バッチ式真空加圧ラミネーター((株)名機製作所製「MVLP−500」)を用いて、基板の両面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、70℃、圧力0.1MPaで20秒間加圧して行った。
【0139】
その後、配線パターン(詳細は以下に示す。)を形成したガラスマスク(フォトマスク)を、ドライフィルム上に配置して、投影露光機(ウシオ電機(株)製「UX−2240」)により光照射した。次いで、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液を噴射圧0.15MPaにて30秒間スプレー処理した。その後、水洗して、ドライフィルムの現像(パターン形成)を行った。
【0140】
ガラスマスクの配線パターン:
下記i)乃至vii)の櫛歯パターンを各10個有するガラスマスクを使用した。
i)L/S=4μm/4μm、すなわち配線ピッチ8μmの櫛歯パターン(配線長15mm、16ライン)
ii)L/S=5μm/5μm、すなわち配線ピッチ10μmの櫛歯パターン(配線長15mm、16ライン)
iii)L/S=6μm/6μm、すなわち配線ピッチ12μmの櫛歯パターン(配線長15mm、16ライン)
iv)L/S=7μm/7μm、すなわち配線ピッチ14μmの櫛歯パターン(配線長15mm、16ライン)
v)L/S=8μm/8μm、すなわち配線ピッチ16μmの櫛歯パターン(配線長15mm、16ライン)
vi)L/S=9μm/9μm、すなわち配線ピッチ18μmの櫛歯パターン(配線長15mm、16ライン)
vii)L/S=10μm/10μm、すなわち配線ピッチ20μmの櫛歯パターン(配線長15mm、16ライン)
【0141】
ドライフィルムの現像後、電解銅めっきを行い、厚さ10μmの電解銅めっき層(導体層)を形成した(無電解銅めっき層との合計厚さは約11μm)。
【0142】
次いで、50℃の3%水酸化ナトリウム溶液を噴射圧0.2MPaにてスプレー処理し、基板両面からドライフィルムを剥離した。190℃にて60分間加熱してアニール処理を行った後、フラッシュエッチング用エッチャント((株)荏原電産製のSACプロセス用エッチャント)を使用して、不要な導体層(銅層)を除去することにより回路を形成した。得られた基板を「評価基板C」と称する。
【0143】
<最低溶融粘度の測定>
作製例で作製した接着フィルムの樹脂組成物層について、動的粘弾性測定装置((株)ユー・ビー・エム製「Rheosol−G3000」)を使用して溶融粘度を測定した。試料樹脂組成物1gについて、直径18mmのパラレルプレートを使用して、開始温度60℃から200℃まで昇温速度5℃/分にて昇温し、測定温度間隔2.5℃、振動数1Hz、ひずみ1degの測定条件にて動的粘弾性率を測定し、最低溶融粘度(ポイズ)を測定した。作製直後(初期)の樹脂組成物層に関する最低溶融粘度Vと、上記〔測定・評価用基板の調製〕の(3)における第1の熱硬化処理後の樹脂組成物層に関する最低溶融粘度Vとを求めた。
【0144】
<算術平均粗さ(Ra)、凹凸の平均間隔(Sm)の測定>
評価基板Aについて、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製「WYKO NT3300」)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値によりRa及びSm値を求めた。それぞれ無作為に選んだ10点の平均値を求めることにより測定値とした。なお、Sm値は、Sm(x)とSm(y)の平均値とした。
【0145】
<粗化硬化体表面の凹凸形状の評価>
評価基板Bについて、FIB−SEM複合装置(SIIナノテクノロジー(株)製「SMI3050SE」)を用いて、断面観察を行った。詳細には、評価基板Bの表面に垂直な方向における断面をFIB(集束イオンビーム)により削り出し、めっきと粗化硬化体の界面近傍の断面SEM画像(観察幅7.5μm、観察倍率x36000)を取得した。各サンプルにつき、無作為に選んだ10箇所の断面SEM画像を取得した。以下、断面SEM画像におけるめっき側を上側、粗化硬化体側を下側として評価手順を説明する。
【0146】
−直線L1及びL2−
直線L1は、粗化硬化体の凸部を基準として、めっきと粗化硬化体の界面を最小二乗法により直線化して求めた。詳細には、取得した断面SEM画像を幅1.5μmの区間に5等分し、各区間について最も上側に存在する粗化硬化体の位置を基準点として採用した。なお、「最も上側に存在する粗化硬化体の位置」とは、樹脂成分が最も上側に存在する場合は該樹脂成分の位置をいい、無機充填材が最も上側に存在する場合は該無機充填材の位置をいう。得られた5つの基準点を座標変換し、最小二乗法によりそれら5つの基準点に基づく近似直線、すなわち、直線L1を求めた。そして直線L1の0.2μm下側に直線L1と平行な直線を引き、直線L2を得た。取得した10箇所の断面SEM画像について、直線L1及びL2を得た。
【0147】
−長さX及びY−
取得した10箇所の断面SEM画像について、直線L1上にあるめっき領域の長さを合計して、長さXを得た。同様に、取得した10箇所の断面SEM画像について、直線L2上にあるめっき領域の長さを合計して、長さYを得た。なお、直線L1上に無機充填材が存在する場合、該無機充填材領域は長さXの算出にあたって以下のとおり扱った。該無機充填材の少なくとも一部が樹脂成分と接している場合、該無機充填材領域は粗化硬化体領域として扱った。他方、該無機充填材が樹脂成分と接しておらず、無電解めっきで覆われている場合、該無機充填材領域はめっき領域として扱った。直線L2上に無機充填材が存在する場合も同様に扱った。得られたX及びYを用いてY/X比を求めた。得られたY/X比は粗化硬化体表面の凹凸形状の指標であり、Y/X比が1以下であるとき、開口径が内部最大径と同じかそれよりも大きい凹部が表面に形成されていることを表し、Y/X比が1より大きいとき、開口径が内部最大径よりも小さい凹部が表面に形成されていることを表す。
【0148】
−深さZ−
取得した10箇所の断面SEM画像について、直線L1と平行であり且つ直線L1から粗化硬化体の深さ方向(下方向)にZ(μm)離れている直線L3上にあるめっき領域の長さの合計をY’とするとき、Y’が0となるZの最小値を求めた。
【0149】
<微細回路形成能の評価>
評価基板Cの上記i)乃至vii)の櫛歯パターンについて、回路の剥離の有無を光学顕微鏡にて確認すると共に、不要な無電解銅めっき層の残渣の有無を櫛歯パターンの絶縁抵抗を測定することで確認した。そして、櫛歯パターン10個のうち、9個以上について問題のなかった場合に合格と判定した。微細回路形成能は、合格と判定された最小のL/S比及び配線ピッチにより評価した。当該評価においては、合格と判定された最小のL/S比及び配線ピッチが小さいほど、微細回路形成能に優れることとなる。
【0150】
<調製例1>(樹脂ワニス1の調製)
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)製「ZX1059」、エポキシ当量約169、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品)6部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量269)5部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−7200HH」、エポキシ当量280)5部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)12部を、ソルベントナフサ30部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(水酸基当量151、DIC(株)製「LA−3018−50P」、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)10部、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)10部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)1.6部、イミダゾール系硬化促進剤(1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(1B2PZ)、固形分5質量%のMEK溶液)1部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド、平均粒径2μm)2部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ((株)アドマテックス製「SO−C2」、平均粒径0.5μm、単位表面積当たりのカーボン量0.38mg/m)130部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECNO製「SHP050」)で濾過して、樹脂ワニス1を調製した。
【0151】
<調製例2>(樹脂ワニス2の調製)
ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7760」、エポキシ当量約238)10部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量269)10部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)10部を、ソルベントナフサ25部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(水酸基当量125、DIC(株)製「LA−7054」、固形分60%のMEK溶液)5部、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)15部、アミン系硬化促進剤(DMAP、固形分5質量%のMEK溶液)2部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ((株)アドマテックス製「SO−C1」、平均粒径0.25μm、単位表面積当たりのカーボン量0.36mg/m)100部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECNO製「SHP030」)で濾過して、樹脂ワニス2を調製した。
【0152】
<調製例3>(樹脂ワニス3の調製)
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量169)4部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」、エポキシ当量約144)5部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量269)10部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)10部を、ソルベントナフサ15部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(水酸基当量125、DIC(株)製「LA−7054」、固形分60%のMEK溶液)10部、ナフトール系硬化剤(新日鉄住金化学(株)製「SN−485」、水酸基当量215、固形分60%のMEK溶液)10部、ポリビニルブチラール樹脂(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS-1」)の固形分15%のエタノールとトルエンの1:1の混合溶液10部、アミン系硬化促進剤(DMAP、固形分5質量%のMEK溶液)1部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド、平均粒径2μm)2部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ((株)アドマテックス製「SO−C2」、平均粒径0.5μm、単位表面積当たりのカーボン量0.38mg/m)90部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECNO製「SHP050」)で濾過して、樹脂ワニス3を調製した。
【0153】
<調製例4>(樹脂ワニス4の調製)
トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(水酸基当量125、DIC(株)製「LA−7054」、固形分60%のMEK溶液)の配合量を5部に変更した点、ナフトール系硬化剤(新日鉄住金化学(株)製「SN−485」、水酸基当量215の固形分60%のMEK溶液)の配合量を20部に変更した点、イミダゾール系硬化促進剤(1B2PZ、固形分5質量%のMEK溶液)1部を添加した点以外は、調製例3と同様にして、樹脂ワニス4を調製した。
【0154】
【表1】
【0155】
<作製例1>接着フィルム1の作製
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック(株)製「AL−5」)で離型処理したPETフィルム(東レ(株)製「ルミラーT6AM」、厚さ38μm、軟化点130℃)を用意した。該支持体の離型面に、ダイコーターにて樹脂ワニス1を塗布し、80℃〜110℃(平均100℃)にて3分間乾燥させ、樹脂組成物層を形成した。樹脂組成物層の厚さは20μmであった。次いで、樹脂組成物層の支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子特殊紙(株)製「アルファンMA−411」、厚さ15μm)を、該保護フィルムの粗面が樹脂組成物層と接合するように積層し、接着フィルム1を得た。
【0156】
<作製例2>接着フィルム2の作製
樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス2を使用した以外は、作製例1と同様にして、接着フィルム2を作製した。
【0157】
<作製例3>接着フィルム3の作製
樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス3を使用した以外は、作製例1と同様にして、接着フィルム3を作製した。
【0158】
<作製例4>接着フィルム4の作製
樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス4を使用した以外は、作製例1と同様にして、接着フィルム4を作製した。
【0159】
<実施例1>
接着フィルム1を使用して、上記〔測定・評価用基板の調製〕に従って評価基板を調製し、各評価を行った。
【0160】
<実施例2>
接着フィルム2を使用して、上記〔測定・評価用基板の調製〕に従って評価基板を調製し、各評価を行った。
【0161】
<実施例3>
接着フィルム3を使用して、上記〔測定・評価用基板の調製〕に従って評価基板を調製し、各評価を行った。
【0162】
<実施例4>
接着フィルム1を使用して、上記〔測定・評価用基板の調製〕に従って評価基板を調製し、各評価を行った。
【0163】
<比較例1>
接着フィルム1を使用して、上記〔測定・評価用基板の調製〕に従って評価基板を調製し、各評価を行った。
【0164】
<比較例2>
接着フィルム4を使用して、上記〔測定・評価用基板の調製〕に従って評価基板を調製し、各評価を行った。
【0165】
評価結果を表2に示す。
【表2】
【符号の説明】
【0166】
1 内部最大径よりも開口径が小さい凹部を表面に有する粗化硬化体
10 内部最大径よりも開口径が大きい凹部を表面に有する粗化硬化体
11 樹脂成分
12 無機充填材
20 めっき
L1 めっきと粗化硬化体の界面を最小二乗法により直線化して得られた直線
L2 直線L1と平行であり且つ直線L1から粗化硬化体の深さ方向に0.2μm離れた直線
図1
図2
図3
図4