(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、
タイヤ最内面に害虫に対する駆除性または忌避性を有する防虫層を備え、
前記防虫層がタイヤ内表面に接着された固形のゴム層または樹脂層、タイヤ内表面に塗布された離型剤、タイヤ最内層を構成するインナーライナー層、少なくとも一部がタイヤ内周面に露出するチェーファーから選ばれるいずれかの要素であり、これら要素を構成するゴム組成物、樹脂、化合物中に害虫に対する駆除性または忌避性を有する薬剤が混合または配合されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、
タイヤ最内面を構成するゴム層または樹脂層に隣接する位置に害虫に対する駆除性または忌避性を有する防虫層を備えたことを特徴とする空気入りタイヤ。
前記防虫層がタイヤ最内層を構成するインナーライナー層とカーカス層との間に積層された接着ゴム層であり、該接着ゴム層を構成するゴム組成物に害虫に対する駆除性または忌避性を有する薬剤が混合または配合されていることを特徴とする請求項7に記載の空気入りタイヤ。
インナーライナー層のタイヤ内面側に保護層を有し、前記タイヤ最内面を構成するゴム層または樹脂層が前記保護層であり、前記防虫層が前記インナーライナー層であり、該インナーライナー層を構成するゴム組成物または樹脂中に害虫に対する駆除性または忌避性を有する薬剤が混合または配合されていることを特徴とする請求項7に記載の空気入りタイヤ。
前記薬剤が、ピレスロイド系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、DEET、イカリジン、アロマオイル、木酢粉末、ジフルベンズロン、ネオニコチノイド、エトフェンプロックス、または銅を含む化合物を主成分とすることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、
タイヤ外表面に害虫または小動物に対する忌避性または駆除性を有する忌避層を備え、
前記忌避層が前記トレッド部を構成するトレッドゴム層、前記サイドウォール部を構成するサイドゴム層、前記ビード部を構成するビードゴム層から選ばれる1つまたは複数のゴム層であり、これらゴム層を構成するゴム組成物中に害虫または小動物に対する忌避性または駆除性を有する薬剤が配合されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
前記薬剤が、ピレスロイド系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、DEET、イカリジン、アロマオイル、木酢粉末、ジフルベンズロン、ネオニコチノイド、エトフェンプロックス、銅を含む化合物、またはサリチル酸メチル、サリチル酸エチル、シンナミックアルデヒド、イソトリデシルアルコール、リモネン、香料、天然ハーブの抽出成分、獣尿を主成分とすることを特徴とする請求項11に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、害虫(蚊類)や小動物(猫等)の接近を抑止することや、タイヤ内に形成された水溜りにおける蚊類の繁殖を抑止することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の第一の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、タイヤ最内面に害虫に対する駆除性または忌避性を有する防虫層を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するための本発明の第二の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、タイヤ最内面を構成するゴム層または樹脂層に隣接する位置に害虫に対する駆除性または忌避性を有する防虫層を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するための本発明の第三の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、タイヤ外表面に害虫または小動物に対する忌避性または駆除性を有する忌避層を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第一の空気入りタイヤでは、タイヤ最内面に防虫層が設けられているので、この防虫層によって害虫を駆除または忌避することができ、タイヤが害虫の発生源となることを防止することができる。特に、害虫が蚊類である場合、タイヤ内に水溜りが形成されても、この水溜りに対して防虫層による害虫への駆除性または忌避性が効力を発揮し、タイヤ内に形成された水溜りにおける蚊類の繁殖を抑止することができる。尚、本発明において、害虫とは、主として、昆虫媒介性の感染症(例えば、ジカウイルス感染症、デング熱、マラリア、ウエストナイル熱、黄熱病等の伝染病)を媒介する昆虫、特に、ヒトスジシマカ、ネッタイシマカ、ハマダラカ等の蚊類を意図する。
【0011】
本発明の第二の空気入りタイヤでは、タイヤ最内面を構成する層に隣接する位置に防虫層が設けられているので、この防虫層の有効成分が最内面を構成する層を通過してタイヤ内面側に析出する。その結果、上述の第一の空気入りタイヤと同様に、害虫を駆除または忌避することができ、タイヤが害虫の発生源となることを防止することができる。また、害虫が蚊類である場合には、タイヤ内に水溜りが形成されても、この水溜りに対して防虫層による害虫への駆除性または忌避性が効力を発揮し、タイヤ内に形成された水溜りにおける蚊類の繁殖を抑止することができる。
【0012】
本発明の第三の空気入りタイヤでは、タイヤ外表面に忌避層が設けられているので、この忌避層によって害虫や小動物を忌避または駆除することができる。特に、このタイヤが車両に装着されている際は、小動物(猫等)が車両の内部(例えばエンジンルーム等)に侵入することを防止することができる。また、車両に乗降する人が害虫(例えば蚊類)に刺されることを防止することができる。更に、このタイヤが車両に装着されない状態(保管時または廃棄後)では、例えば害虫が蚊類である場合に、タイヤ内に水溜りが形成されても、忌避層によって蚊類が水溜りに接近することを防止することができ、この水溜りにおける蚊類の繁殖を抑止し、タイヤが蚊類の発生源になることを防止することができる。
【0013】
本発明の第一の空気入りタイヤでは
、防虫層がタイヤ内表面に
接着された固形のゴム層または樹脂層であ
るしようにすることもできる。或いは、防虫層がタイヤ内表面に塗布された離型剤である仕様にすることもできる。或いは、防虫層がタイヤ最内層を構成するインナーライナー層である仕様にすることもできる。或いは、防虫層が少なくとも一部がタイヤ内周面に露出するチェーファーであるしようにすることもできる。いずれの場合も、この層を構成するゴム組成物または樹脂中に害虫に対する駆除性または忌避性を有する薬剤が混合または配合されてい
る。これら仕様では
、タイヤ内表面に
接着された層
、インナーライナー層
、またはチェーファーに防虫層として害虫に対する駆除性または忌避性が付与されるので、タイヤが害虫の発生源となることを防止することができ、特にタイヤ内に形成された水溜りにおける蚊類の繁殖を抑止することができる。
【0014】
本発明の第一の空気入りタイヤでは、防虫層の少なくとも一部が水溶性保護フィルムで覆われている仕様にすることもできる。この仕様では、タイヤ内が濡れてタイヤ内に水溜りが形成される状況において初めて防虫効果を発揮するようになるので、特に蚊類の発生を防止するにあたって、薬剤の損失を抑えながら効果的に蚊類の繁殖を抑止することができる。また、特に水溶性保護フィルムが防虫層の一部を限定的に覆う場合には、水溶性保護フィルムで覆われた部分と他の部分とで防虫層の効果が発揮される時期をずらすことができ(水溶性保護フィルムで覆われた部分はタイヤ内が雨でぬれたとき以降に効力を発揮する)、防虫効果を長期に亘って発揮するには有利になる。
【0015】
本発明の第一の空気入りタイヤにおいて上記の薬剤を用いる場合、薬剤が水溶性マイクロカプセルに封入されている仕様にすることもできる。この仕様では、タイヤ内が濡れてタイヤ内に水溜りが形成される状況において初めて防虫効果を発揮するようになるので、特に蚊類の発生を防止するにあたって、薬剤の損失を抑えながら効果的に蚊類の繁殖を抑止することができる。
【0016】
本発明の第一の空気入りタイヤにおいて上記の薬剤を用いる場合、薬剤が感圧性マイクロカプセルに封入されている仕様にすることもできる。この仕様では、タイヤ内に空気が充填されたとき以降、即ち、タイヤの使用時から廃棄後かけて防虫効果が発揮されるように設定することが可能になる。
【0017】
本発明の第一の空気入りタイヤにおいて上記の薬剤を用いる場合、薬剤が水溶性を有し、防虫層がタイヤ内表面におけるベルト端部領域に局所的に設けられた仕様にすることもできる。この仕様では、タイヤ内に水溜りが形成された場合に、この水溜りの中に薬剤が溶け出すので、害虫(特に蚊類の幼虫)を駆除するには有利になる。
【0018】
本発明の第一の空気入りタイヤにおいて上記の薬剤を用いる場合、薬剤が揮散性を有し、防虫層がタイヤ内表面におけるビード領域に局所的に設けられた仕様にすることもできる。この仕様では、害虫(特に成虫)を忌避・駆除するには有利になる。即ち、害虫がタイヤに接近したり、タイヤに対して産卵することを抑止することができる。
【0019】
本発明の第二の空気入りタイヤでは、防虫層がタイヤ最内層を構成するインナーライナー層とカーカス層との間に積層された接着ゴム層であり、該接着ゴム層を構成するゴム組成物に害虫に対する駆除性または忌避性を有する薬剤が混合または配合されている仕様にすることもできる。この仕様では、接着ゴム層に防虫層として害虫に対する駆除性または忌避性が付与されるので、タイヤが害虫の発生源となることを防止することができ、特にタイヤ内に形成された水溜りにおける蚊類の繁殖を抑止することができる。
【0020】
本発明の第二の空気入りタイヤでは、インナーライナー層のタイヤ内面側に保護層を有し、タイヤ最内面を構成するゴム層または樹脂層が保護層であり、防虫層がインナーライナー層であり、該インナーライナー層を構成するゴム組成物または樹脂中に害虫に対する駆除性または忌避性を有する薬剤が混合または配合されている仕様にすることもできる。この仕様では、インナーライナー層に防虫層として害虫に対する駆除性または忌避性が付与されるので、タイヤが害虫の発生源となることを防止することができ、特にタイヤ内に形成された水溜りにおける蚊類の繁殖を抑止することができる。
【0021】
本発明の第一または第二の空気入りタイヤにおいて上記の薬剤を用いる場合、薬剤が、ピレスロイド系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、DEET、イカリジン、アロマオイル(シトロネラ、ペパーミント、ゼラニウム、レモンユーカリ等)、木酢粉末、ジフルベンズロン、ネオニコチノイド、エトフェンプロックス、または銅を含む化合物を主成分とする仕様にすることもできる。
【0022】
本発明の第三の空気入りタイヤでは、忌避層がトレッド部を構成するトレッドゴム層であり、トレッドゴム層を構成するゴム組成物中に害虫または小動物に対する忌避性または駆除性を有する薬剤が配合されている仕様にすることもできる。或いは、忌避層がサイドウォール部を構成するサイドゴム層であり、サイドゴム層を構成するゴム組成物中に害虫または小動物に対する忌避性または駆除性を有する薬剤が配合されている仕様にすることもできる。或いは、忌避層がビード部を構成するビードゴム層であり、ビードゴム層を構成するゴム組成物中に害虫または小動物に対する忌避性または駆除性を有する薬剤が配合されている仕様にすることもできる。
【0024】
本発明の第三の空気入りタイヤにおいて上記の薬剤を用いる場合、ピレスロイド系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、DEET、イカリジン、アロマオイル、木酢粉末、ジフルベンズロン、ネオニコチノイド、エトフェンプロックス、銅を含む化合物、またはサリチル酸メチル、サリチル酸エチル、シンナミックアルデヒド、イソトリデシルアルコール、リモネン、香料、天然ハーブの抽出成分、獣尿を主成分とする仕様にすることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、第一の発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図1〜3において、符号CLはタイヤ赤道を表わす。本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とから構成される。尚、本発明におけるタイヤ最内面とは、トレッド部1においてタイヤ径方向最内側であり、サイドウォール部2およびビード部3においてタイヤ幅方向最内側であり、左右のビード部3のビードトウ3A間に位置する面である。また、本発明におけるタイヤ外表面とは、トレッド部1においてタイヤ径方向最外側であり、サイドウォール部2およびビード部3においてタイヤ幅方向最外側であり、左右のビード部3のビードトウ3A間に位置する面である。
【0028】
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りに車両内側から外側に折り返されている。ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。また、各ビード部3にはビードコア5を包み込むようにチェーファー7が配置されている。このチェーファー7は少なくとも一部がタイヤ内面に露出している。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図示の例では2層)のベルト層8が埋設されている。各ベルト層8は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層8において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。更に、ベルト層8の外周側にはベルト補強層9(図示の例ではベルト層8の全幅を覆う2層のベルト補強層9)が設けられている。ベルト補強層9は例えばタイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含む。ベルト補強層9において、有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°〜5°に設定されている。タイヤ内面にはインナーライナー層10が設けられている。このインナーライナー層10は空気透過防止性能を有するブチルゴムを主体とするゴム組成物や、空気透過防止性能を有する樹脂等(熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーが分散した熱可塑性エラストマー組成物)で構成され、タイヤ内に充填された空気がタイヤ外に透過することを防いでいる。
【0029】
トレッド部1におけるカーカス層4の外周側にはトレッドゴム層11が配され、サイドウォール部2におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはサイドゴム層12が配され、ビード部3におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはビードゴム層13(リムクッションゴム層13)が配されている。また、カーカス層4とインナーライナー層10との間には接着ゴム層(不図示)を設けることもできる。尚、トレッドゴム層11は、物性の異なる2種類のゴム層(キャップトレッドゴム層、アンダートレッドゴム層)をタイヤ径方向に積層した構造であってもよい。ビードゴム層13は、上記のようにビード部3を構成するゴム層であるが、少なくともタイヤ外表面に露出する部分を含んでいる。
【0030】
尚、上記のようにインナーライナー層10が空気透過防止性能を有する樹脂等で構成される場合には、
図4に拡大して示すように、ビード部3におけるカーカス層4の外周側を囲むようにビードゴム層(リムクッションゴム層)としての機能も備えたゴムチェーファー7′を設けることもできる。
図4の態様では、
図1〜3で用いられたシート状のチェーファー7は設けられずに、
図1〜3のビードゴム層13(リムクッションゴム層13)と同様の位置にゴムチェーファー7′が設けられている。また、上記のようにインナーライナー層10が空気透過防止性能を有する樹脂等で構成される場合には、インナーライナー層10の更にタイヤ内面側に保護ゴム層10aを設けることもできる。
【0031】
第一の発明は、このような一般的な空気入りタイヤのタイヤ最内面に後述のように害虫に対する駆除性または忌避性を有する防虫層30を設けたものである。
図1の例では、上述の一般的な空気入りタイヤの最内面に防虫層30が新たな層として設けられている。
図2の例では、タイヤ最内層を構成するインナーライナー層10に対して後述の方法で害虫に対する駆除性または忌避性が付与されており、インナーライナー層10が防虫層30を兼ねている。
図3の例では、少なくとも一部がタイヤ内面に露出したチェーファー7に対して後述の方法で害虫に対する駆除性または忌避性が付与されており、チェーファー7が防虫層30を兼ねている。
図4の例では、少なくとも一部がタイヤ内面に露出したゴムチェーファー7′または保護ゴム層10aに対して後述の方法で害虫に対する駆除性又は忌避性を付与して、これら層を防虫層30として用いることができる。第一の発明では、上記のようにタイヤ最内面に防虫層10が設けられていれば、空気入りタイヤの基本的な断面構造は上述の構造に限定されるものではない。
【0032】
第一の発明において、防虫層30に対して害虫に対する駆除性または忌避性を付与するには、例えば、害虫に対する駆除性または忌避性を有する薬剤(以下、単に「薬剤」という)を用いる。具体的には、防虫層30自体を薬剤で構成するか、防虫層30を例えばゴム組成物または樹脂で構成して、このゴム組成物や樹脂中に薬剤を混合または配合するか、防虫層30を繊維で構成して、この繊維に薬剤を含浸させる等の方法を用いることができる。いずれの場合も、防虫層30(薬剤)が固形であれば接着剤等を用いた接着等の方法を採用し、また、防虫層30(薬剤)が液状またはペースト状であれば塗布等の方法を採用して、防虫層30をタイヤ内表面に設けることができる。
【0033】
第一の発明の防虫層30は、製品タイヤ(加硫済タイヤ)に例えば上記の方法で設けるだけでなく、未加硫タイヤの段階でタイヤ内面に設置してもよい。例えば、上記のようにゴム層や樹脂層で防虫層30を構成する場合は、未加硫の防虫層30を未加硫タイヤの最内面に設置した状態で通常の加硫工程を行うことで、加硫接着された防虫層30をタイヤ最内面に設けることができる。或いは、加硫工程では通常タイヤ内面(或いはブラダー表面)に離型剤が塗布されており、この離型剤は加硫後のタイヤに残存する(ブラダー表面に塗布された場合も転写されて残存する)ので、離型剤を構成する化合物中に薬剤を配合することで防虫層30を設けるようにしてもよい。尚、このように防虫層30が加硫工程を経る場合は、加硫時の熱や圧力によって薬剤の効能が損なわれないようにすることが必要である。
【0034】
第一の発明に用いられる薬剤は、害虫に対する駆除性または忌避性を有するものであればよく、例えば、一般的な市販の殺虫剤や、それら殺虫剤で有効成分として用いられる化合物を用いることができる。具体的には、ピレスロイド系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、DEET、イカリジン、アロマオイル(シトロネラ、ペパーミント、ゼラニウム、レモンユーカリ等)、木酢粉末、ジフルベンズロン、ネオニコチノイド、エトフェンプロックス、または銅を含む化合物を用いることができる。薬剤の種類は、駆除または忌避する対象となる害虫の生態に応じて適宜選択するとよく、害虫が水生昆虫であれば水溶性の薬剤を採用し、害虫が陸生昆虫や飛翔性昆虫であれば揮散性の薬剤を採用するとよい。例えば、害虫として後述の蚊類を対象とする場合には、飛翔性の成虫には揮散性の薬剤が有効であり、水生の幼虫(ボウフラ)や水中に産み付けられる卵には水溶性の薬剤が有効である。上記の薬剤の中では、ピレスロイド系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、DEETが揮散性を有し、ジフルベンズロン、木酢粉末、銅を含む化合物が水溶性を有する。尚、銅を含む化合物については、この化合物自体が害虫に対する駆除性または忌避性を有するのではなく、水中に溶解した際に生じる銅イオンが蚊類に対して効力を発揮するものである。
【0035】
上記薬剤は、害虫に対する駆除性又は忌避性を発揮する有効成分であるが、防虫層30の設け方によっては、この有効成分以外の成分を含んでいてもよい。特に、防虫層30が離型剤を兼ねている場合、離型剤としての効果を発揮するための下記成分(溝を溶媒とした粉体からなる無機成分、シリコーン成分、界面活性剤成分等)を含むとよい。
【0036】
無機成分の具体例としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト;ベントナイト;ジ−バーミキュライト、トリ−バーミキュライト等のバーミキュライト;ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト、クリソタイル等のカオリン;タルク、パイロフィライト、マイカ(マスコバイト、セリサイト)、マーガライト、クリントナイト、白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母、フッ素雲母、パラゴライト、フロゴパイト、レピドライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等のフィロ珪酸塩;アンチゴライト等のジャモン石;ドンパサイト、スドウ石、クッカイト、クリノクロア、シャモサイト、クロライト、ナンタイト等の緑泥石等;セピヲライト、パリゴルスカイト等のピオライト−パリゴスカイト;(重質)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物;ベンガラ;珪藻土;珪酸アルミニウム;カーボンブラック;グラファイト等を挙げることができる。これらの成分は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0037】
シリコーン成分の具体例としては、オルガノポリシロキサン類が挙げられ、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルイソプロピルポリシロキサン、メチルドデシルポリシロキサン等のジアルキルポリシロキサン;メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等のアルキルフェニルポリシロキサン;メチル(フェニルエチル)ポリシロキサン、メチル(フェニルプロピル)ポリシロキサン等のアルキルアラルキルポリシロキサン;3,3,3−トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン等を挙げることができる。これらのオルガノポリシロキサン類は、1種または2種以上を併用してもよい。シリコーン成分としては、離型性の点から、分子構造が直鎖状で、重合度が低く常温で流動性を有するシリコーンオイル等が好ましい。
【0038】
界面活性剤成分の具体例としては、非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンが挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、例えばカルボン酸型アニオン系界面活性剤、スルホン酸型アニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0039】
離型剤において溶媒となる水は、タイヤ内面用離型剤に含まれる無機成分を均一に分散させ、タイヤ内面用離型剤をグリーンタイヤ内面に均一に付着させ得る溶媒である。この水は、薬剤の種類によっては、タイヤ内面用離型剤をグリーンタイヤ内面に均一に付着させる溶媒として機能してもよい。水は、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水等のいずれでもよい。その他、本発明のタイヤ内面用離型剤は、従来公知の各種添加剤を配合することもできる。
【0040】
前記無機成分の配合量は、とくに制限されないが、無機成分、シリコーン成分および界面活性剤成分の合計量に対して、例えば15〜90質量%であり、シリコーン成分の配合量は、とくに制限されないが、無機成分、シリコーン成分および界面活性剤成分の合計量に対して、例えば5〜75質量%であり、界面活性剤成分の配合量は、とくに制限されないが、無機成分、シリコーン成分および界面活性剤成分の合計量に対して、例えば1〜10質量%である。
【0041】
ここで、第一の発明について、空気入りタイヤを発生源とし得る害虫として蚊類を例にして、タイヤにおいて害虫が繁殖する流れを説明する。上述のような一般的な構造の空気入りタイヤは、例えば、
図5または
図6に示すような状態で屋外に置かれる。即ち、
図5は、サイドウォール部2が接地するようにタイヤが横置きされた状態を示し、
図6は、トレッド部1が接地するようにタイヤが縦置きされた状態を示す。このような状態では、例えば降雨等を原因としてタイヤ内に雨水等が溜まって水溜りPが形成される。このようにタイヤ内に水溜りPが形成されると、蚊類は水際や水面に卵を産卵する生態を有するため、蚊類はタイヤ内(水溜りP)に産卵する。そして、産み付けられた卵は、水溜りP内で幼虫(ボウフラ)に孵化する。その後、幼虫(ボウフラ)は水溜りP内で蛹に変態し、更に成虫へと羽化する。
【0042】
上述の蚊類の繁殖の流れに対して、第一の発明の薬剤が揮散性を有する場合には、防虫層30の有効成分(薬剤)がタイヤ近傍に揮散するため、蚊類が産卵のために水溜りPに接近することを抑止(忌避)したり、産卵のために水溜りPに接近した蚊類を駆除したり、或いは、羽化直後の蚊類を水溜りPの近傍で駆除することができる。また、第一の発明の薬剤が水溶性を有する場合、防虫層30の有効成分(薬剤)がタイヤ内に形成された水溜りP中に溶解するので、水溜りP内で蚊類を卵または幼虫の段階で駆除することが可能になる。このようにして、第一の発明の防虫層30は害虫(特に蚊類)の繁殖を抑止することができる。
【0043】
上述のようにタイヤ内に水溜りPが形成されることが蚊類の繁殖条件であるので、第一の発明では、水溜りが形成された際、即ち、タイヤ内面が濡れた際に防虫層30(薬剤)が効力を発揮するようにしてもよい。例えば、
図7に示すように、有効成分31(薬剤)を水溶性マイクロカプセル32に封入した仕様にすることもできる。図示の例では、有効成分31(薬剤)が封入された水溶性マイクロカプセル32が接着層33を介してタイヤTの内表面に設けられている。この仕様では、タイヤ内面が濡れて水溶性マイクロカプセルが溶けることで薬剤が露出し、薬剤が揮散または溶解して、蚊類に対して効力を発揮する。尚、
図8に示すように、薬剤が封入された水溶性マイクロカプセルを更にゴム層や樹脂層(防虫層30や、防虫層30を兼ねたインナーライナー層10、チェーファー7、ゴムチェーファー7′、保護ゴム層10a)中に混合または配合してもよいが、この場合は、このゴム層や樹脂層自体も弱い水溶性を有するようにして、タイヤ内面が濡れた際に水溶性マイクロカプセルが徐々に露出するようにするとよい。
【0044】
或いは、
図9に示すように、防虫層30自体を水溶性の保護材で保護した仕様にすることもできる。特に
図9の例では、基材34(薄葉紙)上に載置された有効成分31(薬剤)が接着層33を介してタイヤTの内表面に接着されることで防虫層30が構成されており、この防虫層30の上に、水溶性フィルム35が設けられている。この仕様では、タイヤ内面が濡れて水溶性フィルム35が溶けることで防虫層30(有効成分31)が露出し、有効成分31(薬剤)が揮散または溶解して、蚊類に対して効力を発揮する。尚、
図2のようにインナーライナー層10が防虫層30を兼ねている場合には、インナーライナー層10上に水溶性フィルム35を設けるとよい。同様に、
図3のようにチェーファー7が防虫層30を兼ねている場合や、
図4の態様でゴムチェーファー7′や保護ゴム層が防虫層を兼ねている場合には、防虫層30として機能する層上に水溶性フィルム35を設けるとよい。
【0045】
上記のように第一の発明において水溶性フィルムを用いる場合、防虫層30の一部のみを水溶性フィルムで覆うことで、防虫層30が効力を発揮する期間を延長することができる。即ち、水溶性フィルムの有無によって、防虫層30の効果が発現する時期がずれるため、水溶性フィルムで保護されていない領域に含まれる薬剤がすべて揮散しても、水溶性フィルムで保護された領域に含まれる薬剤は残存しており、水溶性フィルムで保護された領域に含まれる薬剤はタイヤ内面が濡れてから効力を発揮するので、効力を発揮する期間が長くなる。
【0046】
第一の発明の水溶性マイクロカプセルや水溶性フィルムを構成する材料としては、例えば、PVOH類や、水溶性アクリル樹脂(ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸/マレイン酸共重合体塩、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体塩)を用いることができる。水溶性マイクロカプセルや水溶性フィルムを加硫前に設置する場合には、加硫温度(200℃程度)に対して充分な耐熱性を有する例えばアクリル系の樹脂を用いることが好ましい。
【0047】
上記のように水溶性の保護材を用いる場合や、薬剤自体が水溶性を有する場合、好ましくはpHが6以下、より好ましくはpHが5.8〜3.0の水に対する水溶性を付与するとよい。これにより、水道水や工業用水(pHが6〜8程度)では溶解せずに、雨水(酸性雨)等のpHの低い水に対して保護材や薬剤が溶けるようになり、例えばタイヤの生産過程で誤って薬剤が溶けることを防止して、雨水によって水溜りPが形成される際に確実に防虫効果が発揮されるようにすることができる。
【0048】
上述の例では、蚊類の繁殖条件として水溜りPが形成されることに注目したが、蚊類の発生源となるタイヤは、未使用タイヤよりも屋外に放置された使用済みタイヤであることの方が多いので、タイヤが使用されたことを以って防虫層30が効力を発揮するようにしてもよい。例えば、タイヤ内に充填される空気圧程度(大気圧+50〜100kPa程度)で破壊する感圧性マイクロカプセルに薬剤を封入して、タイヤ内に空気が充填されることで感圧性マイクロカプセルが破れて防虫層30が機能する(有効成分(薬剤)が露出する)ようにしてもよい。この場合も、薬剤がマイクロカプセルに封入されるので、基本的には
図7,8と同様の構造を採用することができる。尚、この場合、タイヤの使用時から薬剤が揮散し続ける訳ではなく、タイヤとリムとで形成された狭小空間内で薬剤が飽和してタイヤ使用時は薬剤の揮散は停滞しており、廃棄後、即ちタイヤをホイールから取り外してから揮散が再開することになる。
【0049】
勿論、上記のような条件付けはせずに、製造時から防虫層30が効力を発揮するようにしてもよい。この場合、製造作業者の人体への影響を考慮して、薬剤の種類や量を調整することが好ましい。
【0050】
第一の発明の防虫層30を設ける位置には、防虫層30(薬剤)の性質に応じて好ましい領域が存在する。即ち、防虫層30(薬剤)が水溶性を有する場合、水溜りPが形成された際に、防虫層30が水溜りPに確実に接触することが好ましい。逆に、防虫層30(薬剤)が揮散性を有する場合、防虫層30が水溜りP中に水没してしまうと、有効成分が充分に揮散しなくなる虞がある。このことから、防虫層30(薬剤)が水溶性を有する場合には、少なくともベルト端部位置からタイヤ幅方向に±40mmのベルト端部領域(
図1のAの領域)に防虫層30が設けられるとよい。このベルト端部領域はタイヤの置き方に依らず例えば
図6に示すように水溜りの少なくとも一部と重なる領域であるため、水溜りに対して確実に効力を発揮することが可能になる。尚、立てかけた状態(トレッド部1が接地した状態)で保管されることの多い大型タイヤでは、上記のベルト端部領域ではなく、タイヤ赤道CLと重複する位置に防虫層30を設けても上記のように水溜りに対して確実に効力を発揮することが可能になる。
【0051】
一方、防虫層30(薬剤)が揮散性を有する場合には、少なくともビードトウ位置からタイヤ径方向に50mmのビード領域(
図1のBの領域)に防虫層30が設けられるとよい。このビード領域はタイヤの置き方に依らず例えば
図5に示すように少なくとも一部が水溜りから露出し易い領域であるため、水溜りによって薬剤の揮散が阻害されることがない。また、このビード領域は、水溜りに水没し難いものの、降雨時には雨水に濡れ易いため、上述の水溶性の保護材を用いる場合に、確実に保護材を溶かせると共に、露出した防虫層30の有効成分(薬剤)の揮散性を損なうことなくという利点がある。尚、
図3のようにチェーファー7が防虫層30を兼ねる場合や
図4の態様においてゴムチェーファー7′を防虫層30として用いる場合、チェーファー7やゴムチェーファー7′がタイヤ内面に露出する位置は上述のビード領域(
図1のBの領域)に含まれるので、上述の利点を得ることができる。また、チェーファー7やゴムチェーファー7′が防虫層30を兼ねる場合は、チェーファー7やゴムチェーファー7′の総量に対してタイヤ内面への露出面積が小さいため、薬剤が狭い面積から徐々に放出されることになり、防虫層30による効果の持続時間を長くすることができるという利点もある。
【0052】
勿論、上記のように防虫層30をタイヤ内面の一部に限定的に設けずに、タイヤ最内面の全面を覆うように防虫層30を設けてもよい。特に、
図2のようにインナーライナー層10が防虫層30を兼ねる場合や
図4の態様において保護ゴム層10aを防虫層30として用いる場合は、必然的に防虫層30がタイヤ内面の全面を覆うことになる。このように防虫層30がタイヤ内面の全面を覆っていれば、タイヤの置き方に依らず、防虫層30の少なくとも一部は確実に水没し、他の部分は確実に水溜りから露出するので、防虫層30(薬剤)が揮散性であっても水溶性であっても優れた効力を発揮することができる。
【0053】
上記のような位置に配置された防虫層30は、タイヤ内面の全周に亘って連続的に延在していてもよく、所定の間隔で断続的に延在していてもよい。後者は、防虫層30を複数の要素で構成し、各要素が前述の防虫層30のように薬剤自体であったり薬剤が混合または配合されたゴムまたは樹脂などであるようにし、これら要素がタイヤ周方向に所定の間隔をおいて配置される場合も含む。
【0054】
上記のように防虫層30を特定の位置に配置する場合、防虫層30が配置されるタイヤ内表面を平滑にして、防虫層30の接着性を高めることが好ましい。タイヤ内表面を平滑にするには、例えば加硫ブラダーにおいて当該領域にベントグルーブを設置しなかったり、タイヤ内表面の当該領域にバフ掛けをすることが考えられる。
【0055】
上記のように防虫層30の位置とタイヤの置き方が防虫性能に影響するため、タイヤ側面等にタイヤを置く向きや角度を表示して、使用者に対して適切な置き方でタイヤを載置するように促してもよい。
【0056】
尚、上述の第一の発明の説明では、主に蚊類を駆除・忌避する場合を例としているが、タイヤが発生源となり得る害虫であれば、本発明の防虫層30によって駆除・忌避することができる。他の害虫を対象とする場合は、その害虫の生態に応じて、防虫層30が機能する条件を設定するとよい。
【0057】
次に、第二の発明について説明する。尚、第二の発明は、第一の発明と同じ防虫層30を第一の発明とは異なる位置に配置したものであり、防虫層30の作用の仕方(特に薬剤が放出される経路)は若干異なるが、発明の基本的な構成は共通する。そのため、第二の発明については、防虫層の配置とそれよる作用の違いについて説明し、その他の部分(第一の発明と共通する部分)については詳細な説明を省略する。
【0058】
第二の発明では、防虫層30はタイヤ最内面を構成するゴム層または樹脂層(インナーライナー層10)に隣接する位置に配置される。特に、インナーライナー層10とカーカス層4との間に積層された接着ゴム層(不図示)に対して第一の発明と同様の方法で害虫に対する駆除性または忌避性を付与して、接着ゴム層が防虫層30を兼ねるようにすることができる。このような第二の発明では、防虫層30がタイヤ内面に直接露出していないものの、防虫層30の有効成分(例えば薬剤)がタイヤ最内面を構成する層(インナーライナー層10)を通過してタイヤ内面に析出するので、有効成分(例えば薬剤)を放出することができる。その結果、第一の発明と同様に、タイヤが害虫の発生源となることを防止することができ、特にタイヤ内に形成された水溜りにおける蚊類の繁殖を抑止することができる。また、第一の発明に比べて防虫層30の有効成分(薬剤)が放出され難いことで逆に効果の持続時間を延長することができるという利点がある。
【0059】
尚、樹脂等(熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーが分散した熱可塑性エラストマー組成物)で構成されたインナーライナー層10を使用したタイヤであって、
図4に示すようにインナーライナー層10の更にタイヤ内面側に保護ゴム層10aが設置された場合には、インナーライナー層10がタイヤ最内面を構成する層(保護ゴム層10a)に隣接する位置に配置された層となる。従って、この態様においてインナーライナー層10を防虫層30として用いれば、上述のように、防虫層30(インナーライナー層10)に含まれる有効成分(例えば薬剤)がタイヤ最内面を構成する保護ゴム層10aを通過してタイヤ内面に析出するので、上述の効果を発揮することができる。
【0060】
次に、第三の発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図10〜15は、第三の発明に係る空気入りタイヤを示すものである。
図10〜15において、
図1〜3と同一物には同一符号を付して、その部分の詳細な説明は省略する。
【0061】
第三の発明は、このような一般的な空気入りタイヤの外表面に後述のように害虫または小動物に対する忌避性または駆除性を有する忌避層40を設けたものであるので、空気入りタイヤの基本的な断面構造は上述の構造に限定されるものではない。
【0062】
第三の発明の忌避層40に対して、害虫に対する忌避性または駆除性を付与するには、例えば、害虫に対する忌避性または駆除性を有する薬剤(以下、単に「薬剤」という)を用いる。具体的には、忌避層40自体を薬剤で構成するか、忌避層40を例えばゴム組成物または樹脂で構成して、このゴム組成物や樹脂中に薬剤を混合または配合することができる。前者では、忌避層40(薬剤)が固形であれば接着剤等を用いた接着等の方法を採用し、また、忌避層40(薬剤)が液状またはペースト状であれば塗布等の方法を採用して、忌避層40をタイヤ外表面に設けることができる。後者では、空気入りタイヤの各ゴム層(トレッドゴム層11、サイドゴム層12、ビードゴム層13)を構成するゴム組成物や、タイヤ外表面に樹脂層(例えばコーティング層等)を含む場合にその樹脂層を構成する樹脂の少なくともタイヤ外表面側の部分に薬剤を配合することで、これら各層(トレッドゴム層11、サイドゴム層12、ビードゴム層13、樹脂層)を忌避層40として機能させることができ、これら各層(トレッドゴム層11、サイドゴム層12、ビードゴム層13、樹脂層)を忌避層40として(忌避層40を兼ねた層として)タイヤ外表面に設けることができる。
【0063】
第三の発明の忌避層40を薬剤の塗布によって形成する場合、忌避層40は製品タイヤ(加硫済タイヤ)に塗布してもよいが、未加硫タイヤの段階で塗布してもよい。空気入りタイヤの各部を構成するゴム層が忌避層40を兼ねる場合は、各ゴム層を構成するゴム組成物を生成する段階で薬剤をゴム組成物の成分として配合しておいたり、各ゴム層が未加硫の状態で薬剤を混合することができる。忌避層40が加硫工程を経る場合は、加硫時の熱や圧力によって薬剤の効能が損なわれないようにすることが必要である。
【0064】
第三の発明の薬剤は、害虫や小動物に対する忌避性または駆除性を有するものであればよいが、タイヤ周辺への接近を効果的に抑止するために揮散性を有することが好ましい。揮散性の薬剤を用いた場合、薬剤が揮散して有効成分がタイヤ周辺の外気中に漂っている状態では、害虫や小動物はタイヤ(およびタイヤが装着された車両)に接近することができず、仮に接近したとしても害虫や小動物は駆除される。このような薬剤としては、例えば、一般的な市販の殺虫剤や小動物に対する忌避剤、それら殺虫剤や忌避剤で有効成分として用いられる化合物を用いることができる。具体的には、害虫に対する薬剤としては、ピレスロイド系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、DEET、または銅を含む化合物を用いることができる。尚、銅を含む化合物については、この化合物自体が害虫に対する駆除性または忌避性を有するのではなく、水中に溶解した際に生じる銅イオンが蚊類に対して効力を発揮するものである。また、小動物に対する薬剤としては、例えば、小動物が嫌う臭いを発する化合物を用いることができる。即ち、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、シンナミックアルデヒド、イソトリデシルアルコール、リモネン、香料(シトロネラ、レモン、木酢、ペッパーオイル、ワサビ等)、天然ハーブ(ランタナ、ユーカリ、ゼラニウム、ヘンルーダ、ローズマリー、レモングラス、柑橘類、ペパーミント、タマネギ、ニンニク、チャイブ、マリーゴールド、カニナハイブリッド等)の抽出成分、獣尿(特にオオカミ類)や、これらの組み合わせを配合した薬剤を用いることができる。薬剤の種類は、忌避または駆除する対象となる害虫や小動物の生態や特性に応じて適宜選択するとよい。
【0065】
第三の発明の忌避層40を設ける位置は特に限定されず、例えば
図10〜15に示す位置に適宜設けることができる。
図10の例では、トレッド部1(トレッドゴム層11)を構成するゴム組成物中に薬剤が配合されており、トレッドゴム層11が忌避層40を兼ねている。この場合、走行中にトレッド部1の接地面が徐々に摩耗するので、逐次的にゴム組成物内の薬剤が表面に露出することになり、効果を持続させるには有利になる。このとき、忌避層40による効果を充分に発揮させるために、トレッドゴム層11を構成するゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して薬剤を0.001重量部〜5重量部配合することが好ましい。薬剤以外のゴム組成物についてはトレッドゴム層11として一般的な配合にすることができる。尚、トレッドゴム層11がタイヤ径方向に積層されたキャップトレッドゴム層とアンダートレッドゴム層の2層で構成される場合は、タイヤ外表面側のキャップトレッドゴム層11に薬剤を配合して、キャップトレッドゴム層11が忌避層40を兼ねるようにするとよい。また、トレッドゴム層11全体を薬剤が配合されたゴム組成物で構成する必要は無く、例えば
図11に示すように、トレッドゴム層11(忌避層40)の一部に薬剤を含むゴム部分(図の斜線部分)が存在するようにしてもよい。この場合、薬剤を含む部分が表面に露出していれば新品時から効果を発揮するが、薬剤を含む部分が
図10に示すように埋設されていても、走行時にトレッド部1の表層が摩耗することで、この部分が露出して効果を発揮することになる。尚、トレッドゴム層11全体に薬剤が混合または配合される場合に、薬剤がトレッドゴム層11の全体に均一に分散せずに例えばトレッド部1の表層に薬剤が含まれない部分が存在してもよく、この場合も同様に走行時にトレッド部1の表層が摩耗することで薬剤が含まれる部位が露出して効果を発揮するようになる。
【0066】
図12の例では、サイドウォール部2(サイドゴム層12)を構成するゴム組成物中に薬剤が配合されており、サイドゴム層12が忌避層40を兼ねている。この場合、トレッド部1のような摩耗は発生しないが、ゴム組成物中の成分は順次表面に析出する(所謂ブルームが発生する)ので、このブルームによって薬剤の効果を持続させることができる。このとき、効果的にブルームを生じさせるために、サイドゴム層12を構成するゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して薬剤を0.001重量部〜10重量部配合することが好ましい。薬剤以外のゴム組成物についてはサイドゴム層12として一般的な配合にすることができる。この場合も、サイドゴム層12全体を薬剤が配合されたゴム組成物で構成せずに、サイドウォール部2(サイドゴム層12)の一部に薬剤が配合されたゴム組成物を埋設するようにしてもよい。
【0067】
図13の例では、ビード部3(ビードゴム層13)を構成するゴム組成物中に薬剤が配合されており、ビードゴム層13が忌避層40を兼ねている。この場合、タイヤ使用時にリム組みされた状態ではビード部3はリムフランジと接触しており、忌避層40は露出しないため、有効成分(薬剤)の効果は限定されるが、使用後にホイールから外された後は、ビードゴム層13(忌避層40)が露出して、例えば有効成分(薬剤)が揮散するなどして効果を発揮することになる。従って、この仕様は、廃タイヤ(廃タイヤに形成された水溜り)における害虫の忌避または駆除に好適に採用することができる。このとき、ビードゴム層13を構成するゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して薬剤を0.001重量部〜10重量部配合することが好ましい。薬剤以外のゴム組成物についてはビードゴム層13として一般的な配合にすることができる。この場合も、ビードゴム層13全体を薬剤が配合されたゴム組成物で構成せずに、ビード部3(ビードゴム層13)の一部に薬剤が配合されたゴム組成物を埋設するようにしてもよい。
【0068】
図14の例では、忌避層40がサイドウォール部2の外表面に薬剤を塗布することで構成されている。この場合、薬剤のみを塗布するのではなく、タイヤ外表面に各種目的で塗布されるコーティング剤に薬剤を配合して、薬剤を含んだコーティング剤を塗布するようにしてもよい。即ち、他の目的でタイヤ外表面を覆うコーティング層が忌避層40を兼ねるようにしてもよい。塗布された薬剤(コーティング剤)の剥離を防止するために、サイドゴム層12を構成するゴム組成物として老化防止剤を配合しないか、老化防止剤を2重量部以下配合したゴム組成物を用いるとよい。この場合、忌避層40はサイドウォール部2の外表面の全面に塗布する必要は無く、サイドウォール部2の外表面の一部に塗布されていればよい。また、コーティング層が忌避層40を兼ねる場合、サイドウォール部2の一部には薬剤が配合されたコーティング層(忌避層40を兼ねたコーティング層)を塗布する一方で、他の部分には薬剤を含まない通常のコーティング層を塗布するようにしてもよい。このようにコーティング層が忌避層40を兼ねる場合、コーティング層に光沢を付与すると、特に小動物(猫類)に対する忌避効果を高めることができる。
【0069】
図15の例では、忌避層40がトレッド部1に設けられた溝20の壁面または底面に薬剤を塗布することで構成されている。この場合も、薬剤のみを塗布するのではなく、溝壁や溝底に各種目的で塗布されるコーティング剤に薬剤を配合するようにしてもよい。即ち、他の目的で溝壁や溝底を覆うコーティング層が忌避層40を兼ねるようにしてもよい。このように溝内に忌避層40を設けた場合、溝20内はタイヤ製造時やタイヤ交換作業時等に作業者の手が触れ難い箇所であるので、作業者が忌避層40(薬剤)の影響を受けることを回避するには有利である。この場合、全ての溝内に忌避層40を設ける必要は無く、特定の溝20のみに限定的に忌避層40を設けるようにしてもよい。また、忌避層40が設けられていない溝20内には薬剤を含まない通常のコーティング層を塗布するようにしてもよい。
【0070】
尚、上記のようなコーティング層は、例えば、タイヤ表面への紫外線等の影響を抑えるためや、耐カット性を高めるために設けられ、例えば、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂などを主成分とする樹脂材料から構成することができる。また、目的に応じて、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤などが配合される。コーティング層の厚さは、忌避層40を兼ねる場合であっても、従来と同程度(例えば20μm〜300μm)に設定するとよい。
【0071】
第三の発明における上述の忌避層40の配置は組み合わせて採用してもよい。即ち、トレッドゴム層11、サイドゴム層12、ビードゴム層13のうちの2層以上が忌避層40を兼ねるようにしてもよい。更に、トレッドゴム層11、サイドゴム層12、ビードゴム層13のいずれかが忌避層40を兼ねる場合に、忌避層40を兼ねたコーティング層を併用してもよい。
【0072】
第三の発明では、空気入りタイヤの車両に対する装着方向が指定される場合に、車両装着時に車両に対して内側になる側(車両内側)と車両装着時に車両に対して外側になる側(車両外側)とで、忌避層40の種類を異ならせてもよい。特に、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤのサイドウォール部2に忌避層40を設ける場合、車両外側のサイドウォール部2には害虫(蚊類)を対象とした忌避層40を設けて、車両の周囲から車両および車両に乗降する人に接近する害虫(蚊類)を忌避または駆除する一方で、車両内側のサイドウォール部2には小動物(猫等)を対象とした忌避層40を設けて、小動物(猫等)が車両下に潜り込むことを防ぐようにするとよい。こうすることで両者の効果を効率よく発揮することができる。
【0073】
尚、上述の第三の発明の説明では、主に蚊類や猫等に言及したが、タイヤへの接近が好ましくない他の害虫や小動物についても、第二の発明の忌避層40によって忌避または駆除することができる。他の害虫や小動物を対象とする場合は、その害虫や小動物の生態や習性に応じて、忌避層40を構成する薬剤や、忌避層40の配置や、忌避層40が機能する条件を設定するとよい。
【実施例】
【0074】
第一および第二の発明に関して、タイヤサイズが195/65R15 91Hであり、
図1に示す基本構造を有し、防虫層の有無、防虫層を構成する薬剤の性質、防虫層の配置、保護層の有無を表1,2のように設定した従来例1、実施例1〜19の20種類の空気入りタイヤを作製した
(尚、薬剤を塗布して防虫層を設けた実施例1〜7は参考例である)。また、第三の発明に関して、タイヤサイズが195/65R15 91Hであり、
図10に示す基本構造を有し、忌避層の有無、忌避層の設置方法、忌避層の配置を表3のように設定した従来例2、実施例20〜25の7種類の空気入りタイヤを作製した
(尚、薬剤を塗布して忌避層を設けた実施例23,24は参考例である)。
【0075】
尚、表1,2の「防虫層の有無」の欄について、防虫層を設けない場合を「無」、加硫後の製品タイヤの内面に薬剤を塗布した場合を「塗布層」、薬剤が配合された樹脂層を接着した場合を「樹脂層」、インナーライナー層中に薬剤が配合されている場合を「インナーライナー層」、離型剤中に薬剤が配合されている場合を「離型剤」、チェーファー中に薬剤が配合されている場合を「チェーファー」、接着ゴム層中に薬剤が配合されている場合を「接着ゴム層」、インナーライナー層中に薬剤が配合されているがインナーライナー層の内面側に保護ゴム層が設けられている場合を「インナーライナー層(非最内面)」と示した。また、「防虫層の配置」の欄について、
図1で符号Aで示されたベルト端部領域に局所的に設けられた場合を「領域A」、
図1で符号Bで示されたビード領域に局所的に設けられた場合を「領域B」と表示した。また、保護層の有無の欄について、保護層を設けない場合を「無」と表示し、保護層を設けた場合はその種類(水溶性マイクロカプセル/水溶性フィルム/感圧性マイクロカプセル)を表示した。
【0076】
表3の「忌避層の設置方法」の欄について、タイヤの各部(トレッド部、サイドウォール部、ビード部)を構成するゴム組成物中に薬剤を配合した場合を「配合」、薬剤を含むコーティング剤を塗布した場合を「塗布」と表示した。また、「忌避層の配置」の欄について、薬剤が配合された部位の名称(トレッド、サイド、ビード)または薬剤を含むコーティング剤が塗布された箇所(溝内、サイド)を表示した。また、対応する図面が存在する場合は、その図番を併記した。
【0077】
第一および第二の発明に関する20種類の空気入りタイヤについて、下記の評価方法により、蚊類に対する忌避性、駆除性(成虫に対する駆除性、幼虫に対する駆除性)を評価し、その結果を表1,2に併せて示した。
【0078】
忌避性
広さ33m
2 の試験室の中央に試験タイヤを置き、この試験タイヤを水で濡らしてタイヤ内に水溜りを形成した後、この室内に25匹の蚊(成虫)を放ち、3時間後の蚊の分布を調べた。試験タイヤから半径1m以内の蚊の個体数が0であれば優、1〜5匹であれば良、6〜10匹であれば可、11〜25匹であれば不可として評価した。
【0079】
成虫に対する駆除性
広さ33m
2 の試験室の中央に試験タイヤを置き、この試験タイヤを水で濡らしてタイヤ内に水溜りを形成した後、この室内に25匹の産卵期の蚊を放ち、2日後に生存している蚊の個体数を数えた。0〜5匹であれば優、6〜10匹であれば良、11〜15匹であれば可、16〜25匹であれば不可として評価した。
【0080】
幼虫に対する駆除性
各試験タイヤを水で濡らしてタイヤ内に水溜りを形成した後、この水溜り内に20匹のボウフラを入れて、15日後までに羽化した個体数を調べ、羽化率を求めた。羽化率が低いほど、幼虫に対する駆除性に優れることを意味する。
【0081】
第三の発明に関する7種類の空気入りタイヤについて、下記の評価方法により、蚊類に対する忌避性を評価し、その結果を表3に併せて示した。
【0082】
忌避性
広さ33m
2の試験室の中央に試験タイヤを置き、この室内に25匹の蚊を放ち、3時間後の蚊の分布を調べた。試験タイヤから半径1m以内の蚊の個体数が0であれば優、1〜5匹であれば良、6〜10匹であれば可、11〜25匹であれば不可として評価した。
【0083】
尚、上述の第三の発明に関する忌避性の評価は、試験タイヤの保管時、使用時(新品時)、使用時(摩耗時)、廃棄後を想定した以下の4通りの条件で実施した。即ち、「保管時」を想定した場合、新品の試験タイヤをリム組みせずに上記試験室に載置した。「使用時(新品時)」を想定した場合、「保管時」の評価を行った試験タイヤをリムサイズ15×6Jのホイールに装着した状態で上記試験室に載置した。「使用時(摩耗時)」を想定した場合、「使用時(新品時)」の評価を行った試験タイヤを90日間放置した後、トレッド表面から有効溝深さの50%の位置までトレッド部を摩耗した状態でホイールに装着したまま上記試験室に載置した。「廃棄後」を想定した場合、「使用時(摩耗時)」の評価を行った試験タイヤをホイールから取り外した状態で上記試験室に載置した。表1,2には各条件での評価結果を示した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
表1,2から明らかなように、第一および第二の発明に関して、薬剤が揮散性を有する実施例1,6〜7,9,11,13,15,17,19はいずれも忌避性および成虫に対する駆除性について優れた結果を示した。また、薬剤が水溶性を有する実施例2〜5,8,10,12,14,16,18はいずれも幼虫に対する駆除性について優れた結果を示した。
【0088】
表3から明らかなように、第三の発明に関して、忌避層が設けられた実施例20〜25はいずれも蚊類を効果的に忌避することができた。尚、使用する薬剤の種類を変えて同様の試験を行うことで、害虫(蚊類)に対する駆除性や、小動物(猫等)に対する忌避性についても確認することができた。