(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸気通路におけるコンプレッサよりも下流側部分には、通常、スロットルバルブが配設されている。このスロットルバルブが開いた状態で、コンプレッサにより過給された吸入空気が、エンジンの吸気ポート(延いては、気筒)に供給されているときに、スロットルバルブが急激に全閉状態又はそれに近い状態になった際、吸気通路におけるコンプレッサとスロットルバルブとの間の部分の圧力が高くなり過ぎてコンプレッサの破損を招く可能性がある。
【0005】
そこで、上記特許文献1と同様に、コンプレッサによる過給後の吸入空気の一部を該吸気通路におけるコンプレッサよりも上流側部分に還流させるエアリリーフ通路を設け、このエアリリーフ通路にリリーフ弁を設けておく。そして、吸気通路におけるコンプレッサとスロットルバルブとの間の部分の圧力が高くなったときに、上記リリーフ弁を開くことによって、エアリリーフ通路を介して、コンプレッサによる過給後の吸入空気の一部を該吸気通路におけるコンプレッサよりも上流側部分に還流させるようにする。これにより、吸気通路におけるコンプレッサとスロットルバルブとの間の部分の圧力が高くなり過ぎるのを防止することができる。
【0006】
しかし、エアリリーフ通路がスペース等の関係で曲がっている場合、エアリリーフ通路を通って吸気通路におけるコンプレッサよりも上流側部分に流出した吸入空気が、該上流側部分の内壁面に沿って旋回しながら、該上流側部分を吸気通路の空気取入口側に向かって逆流する。この上流側部分(上流側吸気通路)は、通常、管で構成されており、その旋回する旋回流によってその管が振動して、管の表面から放射音が発せられる。
【0007】
このような放射音を防止するために、上記管の表面に遮音材又は制振材を貼り付けることが考えられる。しかしながら、このような方法では、コストアップを招くとともに、十分な放射音抑制効果が得られ難く、改良の余地がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上流側吸気通路を構成する管の表面から放射音が発せられるのを抑制可能な、ターボ過給機付エンジンの吸気通路構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明では、ターボ過給機付エンジンの吸気通路構造として、コンプレッサケース内に収容された、ターボ過給機のコンプレッサと、上記コンプレッサケース内に吸入空気を供給する上流側吸気通路と、上記コンプレッサケース内に供給されかつ上記コンプレッサにより過給された吸入空気を、上記エンジンの吸気ポートに供給する下流側吸気通路と、上記下流側吸気通路に配設されたスロットルバルブと、を備え、上記コンプレッサケース内には、上記上流側吸気通路と上記下流側吸気通路とを接続しかつ上記コンプレッサが配設された過給通路と、該過給通路における上記コンプレッサよりも上流側部分と該コンプレッサよりも下流側部分とを該コンプレッサを迂回して接続し、上記コンプレッサにより過給された吸入空気の一部を該過給通路における上記コンプレッサよりも上流側部分に還流させるエアリリーフ通路とが設けられており、上記エアリリーフ通路は、非直線形状の第1通路及び第2通路を有し、上記第1通路及び上記第2通路は、上記過給通路における上記コンプレッサよりも上流側部分の内壁面にそれぞれ開口する空気流出口を有し、上記第1通路及び上記第2通路の空気流出口は、
上記上流側部分の中心軸方向に垂直な第1平面上に位置するように、上記内壁面の周方向の互いに異なる部分に開口している、という構成とした。
【0010】
上記の構成により、第1通路の空気流出口から過給通路におけるコンプレッサよりも上流側部分に流出する吸入空気と、第2通路の空気流出口から上記上流側部分に流出する吸入空気とが上記上流側部分で衝突することになり、この結果、上記上流側部分の内壁面及び上流側吸気通路の内壁面に沿って旋回しようとする旋回流の流速を低下させることができるか、又は、そのような旋回流の発生を抑制することができる。また、第1通路及び第2通路のトータル断面積を、エアリリーフ通路が1つの通路で構成されている場合の該1つの通路の断面積よりも増大させ易くなるので、第1通路及び第2通路の空気流出口からの吸入空気の流速を低下させることができ、この点からも、上記旋回流の流速低下又は旋回流発生の抑制が可能になる。したがって、上流側吸気通路を構成する管の表面に遮音材又は制振材を貼り付けなくても、その管の表面から放射音が発せられるのを抑制することができる。
【0011】
上記ターボ過給機付エンジンの吸気通路構造において、上記第1通路及び上記第2通路の中心軸線は共に、
上記第1平面上に位置しており、上記第1平面上において、上記第1通路の中心軸線の空気流出口側の端に接するように該第1通路の中心軸線を延長した延長線と、上記第2通路の中心軸線の空気流出口側の端に接するように該第2通路の中心軸線を延長した延長線とが、上記上流側部分の通路内で交差する、ことが好ましい。
【0012】
このことにより、第1通路の空気流出口から上記上流側部分に流出する吸入空気と、第2通路の空気流出口から上記上流側部分に流出する吸入空気とが、上記上流側部分で衝突し易くなる。また、第1通路及び第2通路の空気流出口からの吸入空気は、上記上流側部分及び上流側吸気通路において互いに反対の向きに旋回しようとし、これら吸入空気の衝突により、上記旋回流の流速低下又は旋回流発生の抑制効果をより一層高めることができる。
【0013】
上記のように両延長線が交差する場合、上記第1通路及び上記第2通路は、上記第1平面に垂直でかつ上記上流側部分の中心軸を含むように予め設定された第2平面に対して略対称に設けられている、ことが好ましい。
【0014】
このことで、第1通路及び第2通路の空気流出口からの吸入空気の流速が同じになるので、これら吸入空気の衝突により、上記旋回流の流速低下又は旋回流発生の抑制効果を更に高めることができる。
【0015】
上記ターボ過給機付エンジンの吸気通路構造の一実施形態では、上記過給通路と上記エアリリーフ通路との接続部分には、該エアリリーフ通路を開閉可能にするリリーフ弁が設けられ、上記コンプレッサケースの表面に、上記リリーフ弁を駆動する駆動ユニットが、複数の締結部材を介して取り付けられる駆動ユニット取付部が設けられ、上記複数の締結部材のうちの1つが、上記駆動ユニット取付部における上記第1通路と上記第2通路との間の部分に位置している。
【0016】
このことにより、コンプレッサケースにおける第1通路と第2通路との間の部分を、駆動ユニットをコンプレッサケースの駆動ユニット取付部に取り付けるための締結部材のスペースとして有効に利用することができ、この結果、締結部材の数を減らすことなく、駆動ユニットを駆動ユニット取付部に確実に取り付けることができる。
【0017】
上記ターボ過給機付エンジンの吸気通路構造の別の実施形態では、上記第1通路及び上記第2通路は、互いに離れる側に凸となるように湾曲している。
【0018】
こうすることで、第1通路及び第2通路の空気流出口からの吸入空気は、上記上流側部分及び上流側吸気通路において互いに反対の向きに旋回しようとするので、これら吸入空気の衝突により、上記旋回流の流速低下又は旋回流発生の抑制効果をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明のターボ過給機付エンジンの吸気通路構造によると、上流側吸気通路を構成する管の表面に遮音材又は制振材を貼り付けなくても、その管の表面から放射音が発せられるのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、例示的な実施形態に係る吸気通路構造を有するターボ過給機付エンジン1(以下、単にエンジン1という)の概略構成を示す。このエンジン1は、車両の前側部分に位置するエンジンルーム内に搭載されたガソリンエンジンであって、複数(本実施形態では、4つ)の気筒2(
図1では、1つのみ示す)が列状に設けられたシリンダブロック3と、このシリンダブロック3上に配設されたシリンダヘッド4とを有している。このエンジン1の各気筒2内には、シリンダヘッド4との間に燃焼室6を区画するピストン5が往復動可能にそれぞれ嵌挿されている。このピストン5は、コネクティングロッド7を介して不図示のクランク軸と連結されている。このクランク軸は、気筒2の列方向(
図1の紙面に垂直な方向)に延びている。
【0023】
シリンダヘッド4には、各気筒2毎に吸気ポート12及び排気ポート13が形成されているとともに、これら吸気ポート12及び排気ポート13の燃焼室6側の開口を開閉する吸気弁14及び排気弁15がそれぞれ配設されている。吸気弁14は不図示の吸気弁駆動機構により、排気弁15は不図示の排気弁駆動機構により、それぞれ駆動される。吸気弁14及び排気弁15は、それぞれ吸気弁駆動機構及び排気弁駆動機構により所定のタイミングで往復動して、それぞれ吸気ポート12及び排気ポート13を開閉し、気筒2内のガス交換を行う。吸気弁駆動機構及び排気弁駆動機構は、それぞれ、上記クランク軸に駆動連結された吸気カムシャフト及び排気カムシャフトを有し、これらのカムシャフトは上記クランク軸の回転と同期して回転する。また、少なくとも吸気弁駆動機構は、吸気カムシャフトの位相を所定の角度範囲内で連続的に変更可能な、液圧式又は機械式の位相可変機構を含んで構成されている。
【0024】
また、シリンダヘッド4における各気筒2の燃焼室6の上側には、燃料を噴射するインジェクタ(図示を省略する)が設けられている。このインジェクタは、その燃料噴射口が燃焼室6の天井面から該燃焼室6に臨むように配設されていて、圧縮行程上死点付近で燃焼室6に燃料を直接噴射供給するようになっている。
【0025】
さらに、シリンダヘッド4における各気筒2の燃焼室6の上側には、点火プラグ17が配設されている。この点火プラグ17の先端部(電極)は、燃焼室6の天井部における上記インジェクタの燃料噴射口の側方近傍に臨んでいる。そして、点火プラグ17は、所望の点火タイミングで火花を発生するようになされている。
【0026】
シリンダヘッド4の幅方向(気筒2の列方向に垂直な方向)の一側の面(
図1の左側の面)には、各気筒2の吸気ポート12に連通するように吸気通路30が接続されている。シリンダヘッド4の幅方向の他側の面(
図1の右側の面)には、各気筒2の燃焼室6からの排気ガスを排出する排気通路50が接続されている。吸気通路30には、ターボ過給機20のコンプレッサ21が配設されている。このコンプレッサ21は、コンプレッサケース21a(具体的な形状は、
図2、
図3、
図5及び
図6参照)内に収容されている。また、排気通路50には、ターボ過給機20のタービン22が配設されている。このタービン22は、タービンケース22a(
図2参照)内に収容されている。タービン22が排気ガス流により回転し、該タービン22の回転により、該タービン22と連結された上記コンプレッサ21が作動する。このコンプレッサ21の作動により、吸気通路30の上流端に位置する空気取入口31より吸気通路30に吸入された吸入空気の過給を行う。
【0027】
吸気通路30は、空気取入口31より吸気通路30に吸入された吸入空気を、コンプレッサケース21a内に供給する上流側吸気通路32と、コンプレッサケース21a内に供給されかつコンプレッサ21により過給された吸入空気を、エンジン1の吸気ポート12に供給する下流側吸気通路33と、で構成されている。
【0028】
上流側吸気通路32の上流端は、
図2に示すように、空気取入口31が形成された取入口形成部材35に接続され、上流側吸気通路32の下流端は、コンプレッサケース21aの入口21b(
図3参照)に接続されている。上流側吸気通路32は、上流側吸気管36で構成されている。上流側吸気通路32(上流側吸気管36)の上流端近傍には、吸入空気を濾過するエアクリーナ37が配設されている。このエアクリーナ37は、クリーナボックス38に収容されている。上流側吸気通路32におけるクリーナボックス38とコンプレッサケース21aとの間の部分には、上流側吸気通路32内の圧力を検出する第1圧力センサ40が配設されている。
【0029】
下流側吸気通路33の上流端は、コンプレッサケース21aの出口21c(
図3参照)に接続され、下流側吸気通路33の下流端は、吸気ポート12に接続されている。下流側吸気通路33は、下流側吸気管43と、吸気マニホールド44とで構成されている(
図2参照)。吸気マニホールド44には、各気筒2に対応して独立の通路が形成され、各独立の通路の下流端が各気筒2の吸気ポート12にそれぞれ接続されている。下流側吸気管43の上流端は、コンプレッサケース21aの出口21cと接続され、下流側吸気管43の下流端は、サージタンク45を介して吸気マニホールド44と接続されている。このサージタンク45は、吸気マニホールド44に一体的に設けられている。
【0030】
下流側吸気通路33(下流側吸気管43)には、スロットルバルブ47が配設されている。このスロットルバルブ47は、ステッピングモータ等のスロットルアクチュエータ47aにより駆動されて、該スロットルバルブ47の配設部分における下流側吸気通路33の断面積を変更することによって、各気筒2の燃焼室6への吸入空気量を調節する。
【0031】
下流側吸気通路33におけるスロットルバルブ47とコンプレッサケース21aとの間の部分には、コンプレッサ21により過給(圧縮)された空気を冷却するインタークーラ48が配設されている。また、下流側吸気通路33におけるスロットルバルブ47とインタークーラ48との間の部分には、コンプレッサ21による吸入空気の過給圧を検出する第2圧力センサ41が配設されている。この第2圧力センサ41は、下流側吸気通路33におけるコンプレッサケース21aとスロットルバルブ47との間の部分の圧力を検出する役割も有している。この役割を果たす観点からは、第2圧力センサ41は、下流側吸気通路33におけるコンプレッサケース21aとインタークーラ48との間の部分に配設されていてもよい。
【0032】
排気通路50は、排気マニホールド51と、排気管52とにより構成されている。排気マニホールド51は、排気通路50の上流端近傍部分を構成していて、各気筒2毎に分岐して排気ポート13に接続された独立の通路と該各独立の通路が集合する集合部とを有している。排気管52は、この集合部の下流端に接続されている。
【0033】
排気通路50(排気管52で構成された部分)には、エンジン1の排気ガスを、タービン22をバイパスして流すための排気バイパス通路53が設けられている。すなわち、排気バイパス通路53の上流端は、排気通路50におけるタービン22よりも上流側部分に接続され、排気バイパス通路53の下流端は、排気通路50におけるタービン22よりも下流側部分に接続されている。
【0034】
排気バイパス通路53の上流端には、駆動モータ54aにより駆動されるウエストゲート弁54が設けられている。このウエストゲート弁54の開度は0%(全閉)から100%まで連続的に変化可能である。ウエストゲート弁54の開度が0%であるときには、排気ガスの全量がタービン22へと流れ、それ以外の開度であるときには、その開度に応じて、排気バイパス通路53に流れる流量(つまりタービン22へ流れる流量)が変化する。すなわち、ウエストゲート弁54の開度が大きいほど、排気バイパス通路53に流れる流量が多くなり、タービン22へ流れる流量が少なくなる。
【0035】
排気通路50におけるタービン22よりも下流側(排気バイパス通路53の下流端が接続される部分よりも下流側)の部分には、排気ガス中の有害成分を浄化する排気浄化装置57が配設されている。この排気浄化装置57は、白金又は白金にパラジウムを加えたもの等を担持して排気ガス中のCO及びHCを酸化する酸化触媒58と、排気ガス中のNOxを処理(トラップ)して、NOxが大気に排出されるのを抑制するリーンNOx触媒59とを有している。リーンNOx触媒59は、酸化触媒52に対して下流側に離れて配設されている。
【0036】
エンジン1は、その排気ガスの一部が排気通路50から吸気通路30に還流されるように、EGR通路60を備えている。このEGR通路60は、排気通路50における排気マニホールド51とタービン22との間の部分と、吸気マニホールド44の上記独立の通路とを接続する。EGR通路60には、内部を通過する排気ガスを冷却するためのEGRクーラ61と、EGR通路60の断面積を変更するEGR弁62とが配設されている。このEGR弁62により、EGR通路60による排気ガスの還流量が調節される。
【0037】
コンプレッサケース21a内には、上流側吸気通路32と下流側吸気通路33とを接続しかつコンプレッサ21が配設された過給通路71と、該過給通路71におけるコンプレッサ21よりも上流側部分71aとコンプレッサ21よりも下流側部分71bとをコンプレッサ21を迂回して接続し、コンプレッサ21により過給された吸入空気の一部を該上流側部分71aに還流させるエアリリーフ通路72とが設けられている。このエアリリーフ通路72は、スロットルバルブ47が開いた状態から急激に全閉状態か又はそれに近い状態になった際に、過給通路71におけるコンプレッサ21よりも下流側部分71b、及び、下流側吸気通路33におけるコンプレッサケース21aとスロットルバルブ47との間の部分の圧力が高くなり過ぎるのを防止するために設けられた通路である。
【0038】
エアリリーフ通路72の上流端は、コンプレッサケース21a内に設けられた接続通路77を介して、過給通路71におけるコンプレッサ21よりも下流側部分71bに接続されている。エアリリーフ通路72の下流端は、過給通路71におけるコンプレッサ21よりも上流側部分71aに直に接続されている。
【0039】
接続通路71には、全開状態か又は全閉状態とされるリリーフ弁78が設けられている。このリリーフ弁78は、ソレノイド、モータ等の駆動源79aを含む駆動ユニット79の該駆動源79aにより駆動されて、全開状態又は全閉状態とされる。駆動ユニット79は、コンプレッサケース21aの表面に設けられた駆動ユニット取付部21d(
図1、
図3、
図4及び
図6参照)に取り付けられている。リリーフ弁78が全開状態とされたときには、接続通路77(つまり、エアリリーフ通路72)が下流側部分71bと連通することになり、コンプレッサ21により過給された吸入空気の一部が上流側部分71aに還流される。一方、リリーフ弁78が全閉状態とされたときには、接続通路77(つまり、エアリリーフ通路72)が下流側部分71bとは非連通となり、コンプレッサ21により過給された吸入空気が上流側部分71aに還流されなくなる。尚、
図3では、リリーフ弁78の記載を省略しており、
図4に、リリーフ弁78の構成を概略的に記載している。リリーフ弁78の構成は、後に説明する。
【0040】
スロットルバルブ47(詳細には、スロットルアクチュエータ47a)、リリーフ弁(詳細には、駆動ユニット79の駆動源79a)、ウエストゲート弁54(詳細には、駆動モータ54a)、EGR弁62、上記インジェクタ、点火プラグ17、及び、上記位相可変機構は、コントロールユニット100により制御される。コントロールユニット100は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力(I/O)バスと、を備えている。
【0041】
コントロールユニット100には、第1圧力センサ40及び第2センサ41を含む、エンジン1の制御に必要な各種のセンサからの信号を入力する。エンジン1の制御に必要な各種のセンサとしては、第1圧力センサ40及び第2センサ41の他に、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ、吸気通路30に吸入された吸入空気の流量を検出するエアフローセンサ等といった周知のセンサであり、ここでは、図示を省略する。そして、コントロールユニット100は、これら入力信号に基づいて、スロットルバルブ47、リリーフ弁78、ウエストゲート弁54、EGR弁62、上記インジェクタ、点火プラグ17、及び、上記位相可変機構を制御する(つまり、エンジン1を制御する)。
【0042】
コントロールユニット100は、第2圧力センサ41により検出された圧力から、第1圧力センサ40により検出された圧力(大気圧と略同じ値)を引いた値である差圧が、所定圧力以下であるときには、リリーフ弁78を全閉状態にする。上記所定圧力は、コンプレッサ21による過給圧の最大値よりも僅かに大きい値である。
【0043】
一方、コントロールユニット100は、上記差圧が上記所定圧力よりも大きいときには、リリーフ弁78を全開状態にする。すなわち、スロットルバルブ47が開いた状態から急激に全閉状態か又はそれに近い状態になった際に、下流側部分71b、及び、下流側吸気通路33におけるコンプレッサケース21aとスロットルバルブ47との間の部分の圧力が高くなることで、上記差圧が上記所定圧力よりも大きくなる。下流側部分71b、及び、下流側吸気通路33におけるコンプレッサケース21aとスロットルバルブ47との間の部分の圧力が高くなり過ぎると、コンプレッサ21の破損を招く可能性があるので、上記差圧が上記所定圧力よりも大きいときには、リリーフ弁78を全開状態にする。
【0044】
上記のようにリリーフ弁78が全開状態になると、コンプレッサ21により過給された吸入空気の一部が、エアリリーフ通路72を通って上流側部分71aに還流され、その後、その還流された吸入空気が、上流側吸気通路32を空気取入口31側(上流側)に向かって逆流する。
【0045】
図2及び
図3に示すように、過給通路71におけるコンプレッサ21よりも上流側部分71a、及び、上流側吸気通路32の下流側部分は、車幅方向に一直線状に延びている。上流側吸気通路32の下流側部分は、上流側吸気通路32の上流側に向かって車両前側に向かうように湾曲する湾曲部分を介して、上流側吸気通路32の上流側部分と接続されている。この上流側部分は、その湾曲部分から車両前側に延びている。
【0046】
過給通路71におけるコンプレッサ21よりも下流側部分71bは、コンプレッサ21が配設された部分から下側に延びた後、下側に向かって車両左側(
図2及び
図3の右側)に向かうように湾曲して、コンプレッサケース21aの出口21cで下流側吸気通路33に接続する。下流側吸気通路33は、コンプレッサケース21aの出口21cから、上流側吸気通路32の下流側部分の下側位置を通って車両左側に延びた後、下流側吸気通路33の下流側に向かって車両前側に向かうように湾曲している。また、下流側吸気通路33は、この湾曲部分から、上流側吸気通路32の上流側部分の下側位置を通って車両前側に延びた後、車両前側かつ下側かつ車両左側に延びて、車両の前端近傍に配設されたインタークーラ48に繋がる。
【0047】
下流側吸気通路33(下流側吸気管43)におけるインタークーラ48よりも下流側部分は、車両後側かつ上側かつ車両左側に延びた後、鉛直方向の上側に延びている。この上側に延びる部分に、スロットルバルブ47が配設されている。
【0048】
図3に示すように、接続通路77は、下流側部分71bの上部に接続されている。この接続通路77の中心軸X2は、上流側部分71aの中心軸X1と平行であって、車幅方向に延びている。
【0049】
図4に概略的に示すように、接続通路77を構成する壁部77aには、リリーフ弁78の弁体78aが着座する弁座81が設けられている。弁体78aには、接続通路77の中心軸X2上において車幅方向に延びる弁駆動軸78bが連結されている。この弁駆動軸78bは、コンプレッサケース21aの壁部(駆動ユニット取付部21dが設けられた壁部)に設けられた開口21eを通って、駆動ユニット取付部21dに取り付けられた駆動ユニット79の駆動源79aと連結される。この駆動源79aにより弁駆動軸78bが該弁駆動軸78bの軸方向(車幅方向)に移動することで、リリーフ弁78が全開状態又は全閉状態になる。すなわち、弁駆動軸78bが車両左側(
図4の右側)に移動したとき、リリーフ弁78が全開状態になり、弁駆動軸78bが車両右側(
図4の左側)に移動したとき、リリーフ弁78が全閉状態になる。上記開口21eは、後述のユニットケース79bにより塞がれる。
【0050】
図3及び
図5に示すように、エアリリーフ通路72は、非直線形状に形成された第1通路73及び第2通路74を有している。これら第1通路73及び第2通路74は、特に上流側部分71aの中心軸方向(車幅方向であり、コンプレッサ21の回転軸方向でもある)から見て、非直線形状に形成されている。本実施形態では、第1通路73及び第2通路74は、上下に並んでいて、上流側部分71aの中心軸方向(車幅方向)から見て、互いに離れる側に凸となるように湾曲している。すなわち、上流側部分71aの中心軸方向から見て、上側に位置する第1通路73は、上側に凸となるように湾曲し、下側に位置する第2通路74は、下側に凸となるように湾曲している。
【0051】
また、第1通路73及び第2通路74は、上流側部分71aの内壁面にそれぞれ開口する空気流出口73a,74aを有しているとともに、接続通路77の内壁面にそれぞれ開口する空気流入口73b,74bを有している。
【0052】
第1通路73及び第2通路74の空気流出口73a,74aは、上流側部分71aの中心軸方向において互いにオーバーラップするように、上流側部分71aの内壁面の周方向の互いに異なる部分に開口している。本実施形態では、空気流出口73a,74aは、上流側部分71aの中心軸方向において同じ位置に開口している。
【0053】
尚、
図1にも、第1通路73及び第2通路74を記載しているが、
図1では、分かり易くするために、第1通路73及び第2通路74の形状並びに上流側部分71aの内壁面における空気流出口73a,74aの位置は正確ではない。
【0054】
第1通路73及び第2通路74の中心軸線C1,C2は共に、上流側部分71aの中心軸方向に垂直な第1平面(
図5の断面)上に位置している。このことで、空気流出口73a,74aは、上流側部分71aの中心軸方向において同じ位置に開口することになる。そして、第1通路73及び第2通路74は、上記第1平面に垂直でかつ上流側部分71aの中心軸X1を含むように予め設定された第2平面に対して略対称である。本実施形態では、上記第2平面は、上記第1平面に垂直でかつ上流側部分71aの中心軸X1と接続通路77の中心軸X2とを含む平面(
図5では、上流側部分71aの中心軸X1と接続通路77の中心軸X2とを通る一点鎖線の直線Lで表される)である。
【0055】
本実施形態では、上記第1平面(
図5の断面)上において、第1通路73の中心軸線C1の空気流出口73a側の端に接するように該中心軸線C1を延長した延長線T1と、第2通路74の中心軸線C2の空気流出口74a側の端に接するように該中心軸線C2を延長した延長線T2とが、上流側部分71aの通路内で交差するように、第1通路73及び第2通路74が湾曲している。
【0056】
図6に示すように、駆動ユニット79は、駆動源79aを収容するユニットケース79b(
図1には簡略化して記載)を有している。このユニットケース79bが、締結部材としての3つのボルト85(
図6では、2つのボルト85しか見えていない)を介して駆動ユニット取付部21dに取付固定されることで、駆動ユニット79が駆動ユニット取付部21dに取り付けられることになる。駆動ユニット取付部21dは、コンプレッサケース21aの表面における接続通路77に対して車両左側の部分に設けられている。
【0057】
図3及び
図5に示すように、駆動ユニット取付部21dには、3つのボルト85がそれぞれ螺号する3つのネジ穴21fが形成されている(
図3では、2つのネジ穴21fしか見えていない)。これら3つのネジ穴21fは、駆動ユニット取付部21dにおいて、接続通路77の中心軸X2を中心とする円上又は該円の近傍でかつ該円の周方向に略3等分した位置に設けられている。これら3つのネジ穴21fのうちの1つのネジ穴21f、及び、該ネジ穴21fに螺号するボルト85は、駆動ユニット取付部21dにおける第1通路73と第2通路74との間の部分に位置している。
【0058】
ユニットケース79bの上面には、駆動源79aに電流を供給するための配線の先端に設けられたコネクタ(図示せず)が差し込まれるコネクタ受け部79cが設けられている。このコネクタ受け部79cの上側が開放されており、コネクタ受け部79cに対して上側から上記コネクタを差し込むように構成されている。これにより、上記コネクタを、上記エンジンルームの上側からコネクタ受け部79cに容易に差し込むことができる。
【0059】
ここで、仮にエアリリーフ通路72が1つの通路(ここでは、第1通路73のみとする)で構成されていたとする。リリーフ弁78が全開状態になったとき、コンプレッサ21により過給された吸入空気の一部が、第1通路73のみを通って上流側部分71aに還流されることになる。このとき、
図7に実線の矢印で示すように、第1通路73を通る吸入空気は、第1通路73の湾曲した形状に沿わずに、略真っ直ぐに流れようとする。このため、その吸入空気が空気流出口73aから上流側部分71aに流出する際、該上流側部分71aの内壁面に沿うような流れとなり、これにより、上流側部分71aに流出した吸入空気は、そのまま上流側部分71aの内壁面に沿って旋回する(
図7で時計回りに旋回する)ことになる。この結果、その上流側部分71aに流出した吸入空気は、上流側部分71aの内壁面及び上流側吸気通路32の内壁面に沿って旋回しながら空気取入口31側に向かって逆流することになる。このとき、その旋回する旋回流によって上流側吸気管36が振動して、上流側吸気管36(特に上流側吸気通路36の下流側部分及び上記湾曲部分)の表面から放射音が発せられる。
【0060】
このような放射音の発生を抑制するために、第1通路73に加えて、第2通路74が設けられている。すなわち、第1通路73の空気流出口73aから上流側部分71aに流出する吸入空気(
図7の実線の矢印参照)と、第2通路74の空気流出口74aから上流側部分71aに流出する吸入空気(
図7の破線の矢印参照)とを上流側部分71aで衝突させて、上流側部分71aの内壁面及び上流側吸気通路32の内壁面に沿って旋回しようとする旋回流の流速を低下させるか、又は、そのような旋回流の発生を抑制する。
【0061】
特に本実施形態では、上記第1平面上において、第1通路73の中心軸線C1の空気流出口73a側の端に接するように中心軸線C1を延長した延長線T1と、第2通路74の中心軸線C2の空気流出口74a側の端に接するように中心軸線C2を延長した延長線T2とが、上流側部分71aの通路内で交差するとともに、第1通路73及び第2通路74が、上記第2平面に対して略対称に設けられているので、第1通路73及び第2通路74の空気流出口73a,74aからの吸入空気の流速が同じになるとともに、これら吸入空気が互いに反対の向きに旋回しようとする(
図7の実線及び破線の矢印参照)ので、これら吸入空気同士を衝突させることにより、上記旋回流の流速低下又は旋回流発生の抑制効果をより一層高めることができる。
【0062】
また、第1通路73及び第2通路74のトータル断面積を、エアリリーフ通路72が1つの通路で構成されている場合の該1つの通路の断面積よりも増大させ易くなるので、第1通路73及び第2通路74の空気流出口73a,74aからの吸入空気の流速を低下させることができ、この点からも、上記旋回流の流速低下又は旋回流発生の抑制が可能になる。
【0063】
したがって、上流側吸気管36の表面に遮音材又は制振材を貼り付けなくても、その上流側吸気管36の表面から放射音が発せられるのを抑制することができる。
【0064】
図8は、エアリリーフ通路72が1つの通路(第1通路73と略同じ形状の通路)で構成されている場合と、上記のように2つの通路(第1通路73及び第2通路74)で構成されている場合とにおいて、空気流出口からの通路長さ方向の距離と上記旋回流の最大流速との関係を調べた結果を示す。いずれの場合も、過給通路71におけるコンプレッサ21よりも下流側部分71bの圧力を、192kPaとしている。
【0065】
エアリリーフ通路72が2つの通路で構成されている場合の該2つの通路の空気流出口(第1通路73及び第2通路74の空気流出口73a,74a)は、過給通路71におけるコンプレッサ21よりも上流側部分71aの中心軸方向において同じ位置にあって、コンプレッサケース21aの入口21bから通路長さ方向で約30mmの位置にある。エアリリーフ通路72が1つの通路で構成されている場合の該1つの通路の空気流出口も、コンプレッサケース21aの入口21bから通路長さ方向で約30mmの位置にある。すなわち、いずれの場合も、コンプレッサケース21aの入口21bの位置は、上記距離が約30mmとなる位置である。コンプレッサケース21aの入口21bの位置よりも上記距離が小さい位置は、過給通路71におけるコンプレッサ21よりも上流側部分71aの位置であり、入口21bの位置よりも上記距離が大きい位置は、上流側吸気通路32の位置である。
【0066】
ここでは、エアリリーフ通路72が1つの通路で構成されている場合の該通路の断面積は、エアリリーフ通路72が2つの通路で構成されている場合の各通路の断面積よりも大きいが、該2つの通路のトータルの断面積よりも小さい。
【0067】
図8より、エアリリーフ通路72が2つの通路で構成されている場合、1つの通路で構成されている場合に比べて、いずれの位置においても上記旋回流の最大速度が低減していることが分かる。特に上流側吸気通路32において空気流出口から50mm乃至100mmの位置で、旋回流の最大速度が約80m/s以下という条件が満たされれば、上流側吸気管36の表面に遮音材又は制振材を貼り付けなくても、放射音が問題になることはない。エアリリーフ通路72が1つの通路で構成されている場合には、そのような条件は満たされず、放射音が問題になる。これに対し、エアリリーフ通路72が2つの通路で構成されている場合、そのような条件を十分に満たすことが分かる。
【0068】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0069】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。