(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電磁波シールド部材のJIS K5600に基づくプレッシャークッカー試験後のテープ密着試験において、前記電子部品上の前記電磁波シールド部材が23/25以上のクロスカット残存率を示す請求項1又は2に記載の電子部品搭載基板。
前記バインダー樹脂は、熱硬化性樹脂と、前記熱硬化性樹脂の反応性官能基と架橋可能な官能基を有している硬化性化合物と、を含有するバインダー樹脂前駆体を熱圧着して得られることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子部品搭載基板。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。また、本明細書で特定する数値「A〜B」は、数値Aと数値Aより大きい値および数値Bと数値Bより小さい値を満たす範囲をいう。また、本明細書におけるシートとは、JISにおいて定義されるシートのみならず、フィルムも含むものとする。説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0011】
[第1実施形態]
<電子部品搭載基板>
図1に第1実施形態に係る電子部品搭載基板の一例を示す模式的斜視図を、
図2に
図1のII−II切断部断面図を示す。電子部品搭載基板51は、基板20、電子部品30および電磁波シールド部材1等を有する。
【0012】
基板20は、電子部品30を搭載可能であり、且つ後述する熱圧着工程に耐え得る基板であればよく、任意に選択できる。例えば銅箔等からなる導電パターンが表面又は内部に形成されたワークボード、実装モジュール基板、プリント配線板またはビルドアップ法等により形成されたビルドアップ基板が挙げられる。また、フィルムやシート状のフレキシブル基板を用いてもよい。前記導電パターンは、例えば、電子部品30と電気的に接続するための電極・配線パターン(不図示)、電磁波シールド部材1と電気的に接続するためのグランドパターン22である。基板20内部には電極・配線パターン、ビア(不図示)等を任意に設けることができる。基板20はリジッド基板のみならず、フレキシブル基板であってもよい。
【0013】
電子部品30は、
図1の例においては基板20上に5×4個アレイ状に配置されている。そして、基板20および電子部品30の露出面を被覆するように電磁波シールド部材1が設けられている。即ち、電磁波シールド部材1は、電子部品30により形成される凹凸に追従するように被覆されている。電磁波シールド部材1により、電子部品30および/または基板20に内蔵された信号配線等から発生する不要輻射を遮蔽し、また、外部からの磁場や電波による誤動作を防止できる。
【0014】
電子部品30の個数、配置、形状および種類は任意である。アレイ状に電子部品30を配置する態様に代えて、電子部品30を任意の位置に配置してもよい。電子部品搭載基板51を単位モジュールに個片化する場合、
図2に示すように、基板上面から基板の厚み方向に単位モジュールを区画するようにハーフダイシング溝25を設けてもよい。なお、第1実施形態に係る電子部品搭載基板は、単位モジュールに個片化する前の基板、および単位モジュールに個片化した後の基板の両方を含む。即ち、
図1、
図2のような複数の単位モジュール(電子部品30)が搭載された電子部品搭載基板51の他、
図3のような単位モジュールに個片化した後の電子部品搭載基板52も含む。無論、個片化工程を経ずに、基板20上に1つの電子部品30を搭載し、電磁波シールド部材で被覆した電子部品搭載基板も含まれる。即ち、第1実施形態に係る電子部品搭載基板は、基板上に少なくとも1つの電子部品が搭載されており、電子部品の搭載により形成された段差部の少なくとも一部に電磁波シールド部材が被覆された構造を包括する。
【0015】
電子部品30は、半導体集積回路等の電子素子が絶縁体により一体的に被覆された部品全般を含む。例えば、集積回路(不図示)が形成された半導体チップ31(
図3参照)が封止材(モールド樹脂32)によりモールド成型されている態様がある。基板20と半導体チップ31は、これらの当接領域を介して、又はボンディングワイヤ33、はんだボール(不図示)等を介して基板20に形成された配線又は電極21と電気的に接続される。電子部品は、半導体チップの他、インダクタ、サーミスタ、キャパシタおよび抵抗等が例示できる。
【0016】
第1実施形態に係る電子部品30および基板20は、公知の態様に対して広く適用できる。
図3の例においては、半導体チップ31は、インナービア23を介して基板20の裏面にはんだボール24が接続されている。また、基板20内には、電磁波シールド部材1と電気的に接続するためのグランドパターン22が形成されている。また、後述する第4実施形態のように、個片化後の電子部品搭載基板もしくは個片化しない電子部品搭載基板に、複数の電子部品30が搭載されていてもよい(
図14(c)参照)。また、電子部品30内には、単数又は複数の電子素子等を搭載できる。
【0017】
<電磁波シールド部材>
電磁波シールド部材1は、基板20上に搭載された電子部品30の天面に電磁波シールド用積層体を載置して熱圧着により電子部品30および基板20を被覆することにより得られる。電磁波シールド部材1は、電子部品30上面から基板20に亘って被覆され、電子部品30の搭載によって形成された段差部の側面および基板20の少なくとも一部を被覆する。電子部品30が搭載された面全体を被覆していることは必須ではない。電磁波シールド部材1は、シールド効果を充分に発揮させるために、基板20の側面または上面に露出するグランドパターン22または/および電子部品30の接続用配線等のグランドパターン(不図示)に接続する構成が好ましい。
【0018】
電磁波シールド部材1は、電磁波シールド用積層体を用いて形成することができる。
図4に、電磁波シールド用積層体の模式的断面図を示す。第1実施形態に係る電磁波シールド用積層体4は、電磁波シールド用部材2と離形性クッション部材3からなる。この電磁波シールド用部材2は、第1実施形態においては導電性接着剤層6の単層からなる。導電性接着剤層6は熱圧着により電子部品30および基板20に接合されて電磁波シールド層5が形成される。第1実施形態においては、この電磁波シールド層5が電磁波シールド部材1として機能する。
【0019】
電磁波シールド用部材2は、後述する第2実施形態のように2層以上の導電性接着剤層の積層体から形成したり、第3実施形態のように導電性接着剤層とハードコート層の積層体から形成したり、第4実施形態のように絶縁性接着剤層と導電性接着剤層の積層体から形成したりする等、他の層の積層体から形成してもよい。電磁波シールド用部材2を熱圧着して得られる電磁波シールド部材1は、第2実施形態では2層以上の電磁波シールド層の積層体から構成され、第3実施形態では電磁波シールド層とハードコート層の積層体から構成され、第4実施形態では絶縁被覆層と電磁波シールド層の積層体から構成されている。このように電磁波シールド部材は、電磁波シールド層と他の層との積層体から構成してもよい。
【0020】
電磁波シールド層5には、バインダー樹脂と導電性フィラーが含まれる。電磁波シールド層5中の導電性フィラーは連続的に接触されており導電性を示す。電磁波シールド性を高める観点から電磁波シールド層5のシート抵抗値は1Ω/□以下が好ましい。
【0021】
電磁波シールド部材1は、その押込み弾性率を1〜10GPaとする。押し込み弾性率をこの範囲にすることにより、電磁波シールド部材1の応力に対する局所的な微小変形を抑制することが可能となり、その結果として電磁波シールド部材1のバリ発生による損傷を効果的に抑制できる。更に、PCT耐性に優れるので、リフロー工程後の密着性低下を効果的に抑制できる。このため、品質の高い電子部品搭載基板を提供できる。
【0022】
電磁波シールド部材1の押込み弾性率を1GPa以上とすることにより、切断工程におけるダイシングブレード等の切削工具から受ける応力に対して電磁波シールド部材1の変形を抑制し、製造工程により生じる電磁波シールド部材1のバリ(
図23の(i)参照)を効果的に抑制できる。なお、本明細書でいうバリとは、電磁波シールド部材1の切断面を基点とした電磁波シールド部材の捲れをいう。
【0023】
電磁波シールド部材1の押込み弾性率は、熱圧着前の後述する電磁波シールド用積層体4中の電磁波シールド用部材2の組成物により調整することができる。より具体的には電磁波シールド部材1を形成するための、熱圧着前の電磁波シールド用部材2の組成物中のバインダー樹脂前駆体の種類、各成分の配合量等によって調整できる。具体的には、押込み弾性率は、フィラーの含有量が多くなる程大きくなる傾向がある。また、バインダー樹脂前駆体として用いる樹脂の官能基数や硬化性化合物の含有量を増やすことによっても押込み弾性率が大きくなる傾向にある。また、バインダー樹脂の硬さが高いほど押込み弾性率が大きくなる傾向にある。従って、バインダー樹脂を形成するためのバインダー樹脂前駆体の種類、或いはバインダー樹脂の架橋密度を適切にすることが好適である。架橋密度は、樹脂および硬化性化合物の種類や官能基数によって容易に調整できる。
【0024】
なお、押込み弾性率は外部応力による材料の変形に対する性質を表しているヤング率と考えることもできる。本明細書の「押込み弾性率」は、後述する実施例で記載した測定方法および測定条件によって得られる値をいう。
【0025】
電磁波シールド部材1の押込み弾性率のより好ましい範囲は1.5GPa越え、8GPa以下であり、更に好ましい範囲は2GPa以上、7.4GPa以下である。
【0026】
電磁波シールド部材1の膜厚は、用途により適宜選定できる。薄型化が求められている用途には、電子部品の上面を被覆する電磁波シールド部材1の厚みT1及びT2は、例えば10〜200μm程度にすることができる。
【0027】
電子部品30上に製品情報が刻印されることがある。その場合、電子部品30に刻印した後に電磁波シールド部材1を形成する方法、電子部品30に電磁波シールド部材1を形成した後に電磁波シールド部材に刻印する方法がある。いずれの場合にも、高いシールド性を保ちながらその刻印の良好な視認性が求められる。両特性を満足させる観点から、電磁波シールド部材の膜厚T1は10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。後者の刻印方法、即ち、電磁波シールド部材上に刻印する場合、電磁波シールド部材の膜厚の上限はない。一方、前者の刻印方法、即ち、電子部品に直接刻印する場合、刻印の視認性を保つために電磁波シールド部材の膜厚T1の上限は50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。
【0028】
電磁波シールド部材1の表層の水接触角は70〜110°とすることが好ましい。この範囲とすることにより、製造工程時の電磁波シールド層の損傷をより効果的に抑制することができる。また、電子部品30のハーフダイシング溝25に形成された溝状の凹部に充填された離形性クッション部材を電磁波シールド部材1から剥がす際にバリの発生を抑制できる。電磁波シールド部材の水接触角のより好ましい範囲は75〜105°であり、更に好ましい範囲は80〜100°である。電磁波シールド部材の水接触角は、電磁波シールド部材を形成する組成物において表面調整剤の添加量によりその数値を調整することができる。電磁波シールド部材1における表面調整剤の添加量が増えるにつれて水接触角の値が大きくなる傾向にある。
【0029】
プレッシャークッカー(以下、PCTともいう)試験耐性をより優れたものとするためには、電磁波シールド部材1のマルテンス硬さを50N/mm
2以上の範囲とすることが好ましい。電磁波シールド部材1の押込み弾性率を1〜10GPaの範囲とし、更にマルテンス硬さ50N/mm
2以上を組み合わせることにより、プレッシャークッカー試験後の密着性がより優れたものとなる。その結果、リフロー後においても密着性に優れた電磁波シールド部材1を提供できる。マルテンス硬さは60N/mm
2以上がより好ましく、70N/mm
2以上が更に好ましい。
【0030】
マルテンス硬さは、導電性フィラーおよびバインダー成分の硬さにより調整できる。バインダー成分の硬さは、主として熱硬化性樹脂と硬化性化合物の硬化物の硬さによる。具体的には、鱗片状粒子の添加によりマルテンス硬さが大きくなる傾向にあり、球状、デンドライト状粒子の添加によりマルテンス硬さが低くなる傾向にある。また、導電性フィラー量が多くなるとマルテンス硬さは大きくなる傾向にある。また、硬化後の樹脂の硬さが高いほど、マルテンス硬さも硬くなる。
【0031】
製造方法については後述するが、電子部品30を搭載した基板20に電磁波シールド用積層体4を熱圧着後、電磁波シールド部材1から離形性クッション部材を剥離する際の離形性を高める観点からは、電磁波シールド部材1の表層のJISB0601;2001に準拠して測定したクルトシスを8以下とすることが好ましい。8以下にすることにより、電磁波シールド部材1の表面形状の尖り度が適切なものとなり、離形性クッション部材3と電磁波シールド部材1との剥離が容易となると考えられる。その結果、電子部品同士の間隙のハーフダイシング溝25に離形性クッション部材3が千切れて残渣として残存する現象を効果的に抑制できる。なお、本明細書で千切れとは、離形性クッション部材を剥離する際に千切れて、電子部品の間隙である溝に残存してしまった離形性クッション部材をいう。
【0032】
また、耐擦傷性を高める観点からは、電磁波シールド部材1のクルトシスを1以上にすることが好ましい。1以上にすることにより、スチールウール耐性を向上させることができる。電磁波シールド部材のクルトシスのより好ましい範囲は1.5〜6.5であり、更に好ましい範囲は2〜4である。
【0033】
電磁波シールド部材1は、その表層のJISB0601;2001に準拠して測定したクルトシスが1〜8の範囲であることが好ましい。ここで、クルトシスは、数式(1)で表される表面凹凸の粗さ曲線を示す指標であり、高さ分布の平坦度、尖り度を表す。
【数1】
ここで、Lは基準長さである。また、Rqは二乗平均平方根高さであり、一つの軸(x軸)に沿った表面の高さ変化をZ(x)として以下の数式(2)で表される。
【数2】
【0034】
クルトシスは、二乗平均平方根高さRqの四乗によって無次元化した基準長さにおいて、Z(x)の四乗平均を示す。クルトシスが3のときは、凸部(または凹部)の尖りの分布が正規分布に近いことを示す。クルトシスが3より大きくなるにつれて、基準高さRqに対して急峻な尖った凸部(または凹部)の数が増加し、クルトシスが3よりも小さくなるにつれて、急峻な尖った凸部(または凹部)の数が少なくなることを表す。
【0035】
製造方法については後述するが、電子部品30を搭載した基板に電磁波シールド用積層体4を熱圧着後、電磁波シールド部材1から離形性クッション部材3を剥離する際に、ハーフダイシング溝25の離形性クッション部材3はほぼ垂直に摺りながら引き剥がされることになる。投錨効果によって離形性クッション部材3は破断しやすいため、これを抑制する技術が求められている。本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、電磁波シールド部材1の接触界面の形状コントロールが重要であり、この形状として上記のクルトシスの範囲が好適であることを見出した。
【0036】
電磁波シールド部材1の表面の二乗平均平方根高さは0.4〜1.6μmの範囲とすることが好ましく、0.5〜1.5μmとすることがより好ましく、0.7〜1.2μmとすることが更に好ましい。本明細書において、クルトシスと二乗平均平方根高さは、後述する実施例に記載の方法により求めた値をいう。
【0037】
電磁波シールド部材1の表面のクルトシスは、電磁波シールド用積層体4中の電磁波シールド用部材2の製造工程により調整することができる。また、電磁波シールド部材1を形成するための、熱圧着前の電磁波シールド用部材2の組成物中の各成分の種類やその配合量によって調整できる。詳細は後述する。なお、本発明者らが検討を重ねたところ、電磁波シールド層として機能し得る量の導電性フィラーを配合することにより、リフロー処理前後においてクルトシスの値は実質的に変動しないか、変動してもその変化量は小さいことを確認した。
【0038】
<電子部品搭載基板の製造方法>
以下、第1実施形態の電子部品搭載基板の製造方法の一例について
図5〜
図8を用いて説明する。但し、本発明の電子部品搭載基板の製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではない。
【0039】
第1実施形態に係る電子部品搭載基板の製造方法は、[a]基板20に電子部品30を搭載する工程と、[b]電子部品30が搭載された基板20上に電磁波シールド用積層体4を載置する工程と、[c]電子部品30の搭載により形成された段差部の側面および基板20の露出面の少なくとも一部に追従するように熱圧着によって電磁波シールド部材1を接合する工程と、[d]離形性クッション部材3を剥離する工程と、[e]電子部品搭載基板51を個片化する工程を備える。以下、各工程について説明する。
【0040】
[a]基板に電子部品を搭載する工程:
まず、基板20に電子部品30を搭載する。例えば、基板20上に半導体チップ(不図示)を搭載し、半導体チップが形成されている基板20上を封止樹脂によりモールド成形し、電子部品30間の上方から基板20内部まで到達するように、モールド樹脂および基板20をダイシング等によりハーフカットする。予めハーフカットされた基板20上に電子部品30をアレイ状に配置する方法でもよい。これらの工程を経て、例えば、
図5に示すような電子部品30が搭載された基板20が得られる。なお、電子部品30とは、
図5の例においては半導体チップをモールド成形した一体物をいい、絶縁体により保護された電子素子全般をいう。ハーフカットは、基板20内部まで到達させる態様の他、基板20の表面までカットする態様がある。また、基板20全体をこの段階でカットしてもよい。この場合には、粘着テープ付き基体上に基板20を載置して位置ずれが生じないようにしておくことが好ましい。モールド成形する場合の封止樹脂の材料は特に限定されないが、熱硬化性樹脂が通常用いられる。封止樹脂の形成方法は特に限定されず、印刷、ラミネート、トランスファー成形、コンプレッション、注型等が挙げられる。モールド成形は任意であり、電子部品30の搭載方法も任意に変更できる。
【0041】
[b]基板上に電磁波シールド用積層体を載置する工程:
次いで、電子部品30が搭載された基板20を熱圧着により溶融させて被覆させる、電磁波シールド用積層体4を用意する(
図4参照)。電磁波シールド用積層体4の導電性接着剤層6が電子部品30側になるように電子部品30の天面上に電磁波シールド用積層体4を載置する。このとき、電磁波シールド用積層体4を電子部品30の一部または全面に仮貼付してもよい。仮貼付とは、電子部品30の少なくとも一部の上面と接触するように仮接合するものであり、導電性接着剤層6がBステージで被着体に固定されている状態をいう。剥離力としては、90°ピール試験で、カプトン200に対する剥離力が1〜5N/cm程度が好ましい。仮貼りする手法として、電子部品30を搭載した基板20上に電磁波シールド用積層体4を載せ、アイロン等の熱源で軽く全面または端部を熱圧着して仮貼りする方法が例示できる。製造設備あるいは基板20のサイズ等に応じて、基板20の領域毎に複数の電磁波シールド用積層体4を用いてもよい。また、電子部品30毎に電磁波シールド用積層体4を用いてもよい。製造工程の簡略化の観点からは、基板20上に搭載された複数の電子部品30全体に1枚の電磁波シールド用積層体4を用いることが好ましい。
【0042】
[c]電磁波シールド部材を形成する工程:
続いて、電子部品30が搭載された基板20上に電磁波シールド用積層体4を一対のプレス基板40間に挟持し、熱圧着する(
図6参照)。電磁波シールド用積層体4は、導電性接着剤層6および離形性クッション部材3が熱により溶融され、押圧によって製造基板に設けられたハーフカット溝に沿うように延伸され、電子部品30および基板20に追従して被覆される。導電性接着剤層6が電子部品30や基板20と接合されると共に熱圧着により電磁波シールド層5として機能する。第1実施形態においては、電磁波シールド部材1は電磁波シールド層5の単層からなるので、導電性接着剤層6を熱圧着したものが電磁波シールド部材1たる電磁波シールド層5となる。熱圧着後に、熱硬化を促すこと等を目的として別途加熱処理を行うこともできる。
【0043】
電磁波シールド用積層体4を加熱プレスする際に、この電磁波シールド用積層体4とプレス基板40との間に、必要に応じて、熱軟化性部材やクッション紙等を用いてもよい。
【0044】
熱圧着工程の温度および圧力は、電子部品30の耐熱性、耐久性、製造設備あるいはニーズに応じて、導電性接着剤層6の被覆性が確保できる範囲においてそれぞれ独立に任意に設定できる。圧力範囲としては限定されないが、0.1〜5.0MPa程度が好ましく、0.5〜2.0MPaの範囲がより好ましい。プレス基板40をリリースすることにより
図7に示すような製造基板が得られる。このようにして、電磁波シールド部材1により電子部品の天面および側面と基板の露出面とが被覆される。
【0045】
熱圧着工程の加熱温度は100℃以上であることが好ましく、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。また、上限値としては、電子部品30の耐熱性に依存するが、220℃であることが好ましく、200℃であることがより好ましく、180℃であることがさらに好ましい。
【0046】
熱圧着時間は電子部品30の耐熱性、電磁波シールド部材1に用いるバインダー樹脂、および生産工程等に応じて設定できる。バインダー樹脂前駆体として熱硬化性樹脂を用いる場合には、1分〜2時間程度の範囲が好適である。なお、熱圧着時間は1分〜1時間程度がより好ましい。この熱圧着により熱硬化性樹脂は、硬化する。但し、熱硬化性樹脂は、流動が可能であれば熱圧着前に部分的に硬化あるいは実質的に硬化が完了していてもよい。
【0047】
導電性接着剤層6の厚みは、電子部品30の天面および側面および基板20の露出面に被覆して、電磁波シールド層5を形成することが可能な厚みとする。用いるバインダー樹脂前駆体の流動性や、電子部品30間の距離およびサイズにより変動し得るが、通常、10〜200μm程度が好ましく、15〜100μm程度がより好ましく、20〜70μm程度がさらに好ましい。これにより、封止樹脂への被覆性を良好にしつつ、電磁波シールド性を効果的に発揮することができる。
【0048】
離形性クッション部材3は、軟化して導電性接着剤層6の被覆を促し、電子部品30の天面および側面並びに基板20の露出面を被覆する機能を有すると共に、剥離工程において離形性に優れる材料を用いることができる。離形性クッション部材3の上層に、必要に応じて、クッション材として機能する熱軟化性部材を用いてもよい。電磁波シールド部材1の被覆により、第1実施形態の例においては、基板20内に形成されたグランドパターン22と電磁波シールド部材1とが電気的に接続される(
図7参照)。
【0049】
導電性接着剤層6は、バインダー樹脂前駆体と導電性フィラーを含有する。バインダー樹脂前駆体としては、熱可塑性樹脂、自己架橋性樹脂、複数種の反応性樹脂および硬化性樹脂と架橋剤の混合物を例示できる。これらは組み合わせて用いてもよい。バインダー樹脂前駆体として専ら熱可塑性樹脂を用いる場合には、架橋構造を有していないという意味において、バインダー樹脂前駆体とバインダー樹脂が実質的に同じといえる。PCT後のテープ密着性を高める観点からは、電磁波シールド層5を構成するバインダー樹脂は3次元架橋構造が構築されていることが好ましい。
【0050】
[d]離形性クッション部材を剥離する工程:
電磁波シールド部材1の上層に被覆されている離形性クッション部材3を剥離する。これにより、電子部品30を被覆する電磁波シールド部材1を有する電子部品搭載基板51を得る(
図1、
図2参照)。例えば、離形性クッション部材3の剥離は端部から人力で剥がしてもよく、離形性クッション部材3の外面を吸引して電磁波シールド部材1から引き剥がしてもよい。自動化による歩留まり向上の観点から吸引による剥離が好ましい。
【0051】
[e]個片化する工程:
ダイシングブレード等の切削工具を用いて、電子部品搭載基板51の個品の製品エリアに対応する位置でX方向、Y方向にダイシングする(
図2参照)。これらの工程を経て、電子部品30が電磁波シールド部材1で被覆され、且つ基板20に形成されたグランドパターン22と電磁波シールド部材1が電気的に接続された、個片化された電子部品搭載基板51が得られる。ダイシングの方法は、個片化できればよく特に限定されない。ダイシングは基板20側若しくは電磁波シールド用積層体4側から行われる。ダイシングの際、摩擦熱を冷却し、且つダイシングによって発生するダイシング屑を洗い流すために高圧水洗することがあるが、本実施形態に係る電子部品搭載基板51においては、押込み弾性率を1〜10GPaにすることにより高圧水洗の衝撃による電磁波シールド部材1の剥離を著しく改善することができる。
【0052】
<電磁波シールド用積層体>
第1実施形態の電磁波シールド用積層体4は、
図4において説明したように、電磁波シールド用部材2と離形性クッション部材3の2層からなる。第1実施形態においては、電磁波シールド用部材2は単層の導電性接着剤層6からなる。導電性接着剤層6は熱圧着工程を経て電子部品30や基板20と接合され、電磁波シールド層5として機能する。
【0053】
(導電性接着剤層)
導電性接着剤層6は、バインダー樹脂前駆体と導電性フィラーとを含有する樹脂組成物から形成された層である。バインダー樹脂前駆体は、少なくとも熱軟化性樹脂を含む。熱軟化性樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および活性光線硬化性樹脂が例示できる。熱硬化性樹脂および活性光線硬化性樹脂は、通常、反応性官能基を有する。熱硬化性樹脂を用いる場合は、硬化性化合物や熱硬化助剤を併用できる。また、活性光線硬化性樹脂を用いる場合は光重合開始剤、増感剤等を併用できる。製造工程の簡便性からは、熱圧着時に硬化する熱硬化タイプが好ましい。
また、自己架橋性樹脂や互いに架橋する複数の樹脂を用いてもよい。また、これらの樹脂に加えて熱可塑性樹脂を混合させてもよい。樹脂および硬化性化合物等の配合成分は、それぞれ独立に単独または複数の併用とすることができる。
なお、導電性接着剤層6の段階で架橋が一部形成されてBステージ(半硬化した状態)となっていてもよい。例えば、熱硬化性樹脂と硬化性化合物の一部が反応して半硬化した状態が含まれていてもよい。
【0054】
熱軟化性樹脂の好適な例は、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレンエラストマー樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネートイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ系樹脂、エポキシエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリエステルアミド樹脂およびポリエーテルエステル樹脂が挙げられる。リフロー時における過酷な条件で使用する場合の熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、エポキシエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンウレア系樹脂、およびポリアミドのうちの少なくとも1つを含んでいることが好ましい。
【0055】
これらの中でも、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレンエラストマー樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂が好ましい。また、樹脂中に一般式(1)で表されるポリカーボネート骨格を有する樹脂が好ましい。
−R-O-CO-O− ・・・一般式(1)
式中、Rは2価の有機基である。
ポリカーボネート骨格を有する樹脂を用いることにより、製造工程により生じる電磁波シールド層のバリを効果的に抑制することができる。熱軟化性樹脂は、1種単独または任意の比率で2種以上を混合して用いることができる。
【0056】
ポリカーボネート骨格を有する樹脂としては、ポリカーボネート樹脂の他、ポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリイミド樹脂が例示できる。例えば、ポリカーボネートイミド樹脂によれば、ポリイミド骨格を有することにより、耐熱性、絶縁性および耐薬品性を高めることができる。一方、ポリカーボネート骨格を有することにより、柔軟性、密着性を効果的に高めることができる 。
【0057】
ポリカーボネートウレタン樹脂としては、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,9−ノナンジオール、又は2−メチル−1,8−オクタンジオール等のジオール1種又は2種以上とをベースにしたポリカーボネートポリオールをポリオール成分として用いることができる。
【0058】
上記熱軟化性樹脂は、熱硬化性樹脂として、加熱による架橋反応に利用できる官能基を複数有していてもよい。官能基は、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリン基、オキサジン基、アジリジン基、チオール基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シラノール基等が挙げられる。
【0059】
硬化性化合物は、熱硬化性樹脂の反応性官能基と架橋可能な官能基を有している。架橋することで密着性をより強固にし、耐水性も向上させることができる。硬化性化合物は、エポキシ化合物、酸無水物基含有化合物、イソシアネート化合物、ポリカルボジイミド化合物、アジリジン化合物、ジシアンジアミド化合物、芳香族ジアミン化合物等のアミン化合物、フェノールノボラック樹脂等のフェノール化合物、有機金属化合物等が好ましい。硬化性化合物は、樹脂であってもよい。この場合、熱硬化性樹脂と硬化性化合物の区別は、含有量の多い方を熱硬化性樹脂とし、含有量の少ない方を硬化性化合物として区別する。
【0060】
上記エポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物の性状としては、液状および固形状を問わない。エポキシ化合物としては、例えば、グリジシルエーテル型エポキシ化合物、グリジシルアミン型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、環状脂肪族(脂環型)エポキシ化合物等が好ましい。
【0061】
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、α−ナフトールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等が挙げられる。
【0062】
グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0063】
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート等が挙げられる。
【0064】
環状脂肪族(脂環型)エポキシ化合物としては、例えば、エポキシシクロヘキシルメチル−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。また、液状のエポキシ化合物を好適に用いることができる。
【0065】
イミダゾール化合物は、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられ、更にはイミダゾール化合物とエポキシ樹脂を反応させて溶剤に不溶化したタイプ、またはイミダゾール化合物をマイクロカプセルに封入したタイプ等の保存安定性を改良した潜在性硬化促進剤が挙げられるが、これらの中でも、導電性接着剤層の熱溶融後に硬化を開始させる観点から潜在性硬化促進剤が好ましい。
【0066】
硬化性化合物の構造、分子量は用途に応じて適宜設計できる。押込み弾性率を1〜10GPaの範囲に調整して、バリを効果的に抑制する観点からは、分子量の異なる2種類以上の硬化性化合物を用いることが好ましい。第一硬化性化合物と第二硬化性化合物を用いることにより、電磁波シールド層の引張破断歪を高める効果もある。
【0067】
硬化性化合物は、熱硬化性樹脂100質量部に対して1〜70質量部含むことが好ましく、3〜65質量部がより好ましく、3〜60質量部が更に好ましい。第一硬化性化合物と第二硬化性化合物を併用する場合には、第一硬化性化合物を熱硬化性樹脂100質量部に対して5〜50質量部含むことが好ましく、10〜40質量部含むことがより好ましく、20〜30質量部含むことが更に好ましい。一方、第二硬化性化合物を熱硬化性樹脂100質量部に対して0〜40質量部含むことが好ましく、5〜30質量部含むことがより好ましく、10〜20質量部含むことが更に好ましい。
【0068】
熱可塑性樹脂の好適な例は、ポリエステル、アクリル系樹脂、ポリエーテル、ウレタン系樹脂、スチレンエラストマー、ポリカーボネート、ブタジエンゴム、ポリアミド、エステルアミド系樹脂、ポリイソプレン、およびセルロースが例示できる。粘着付与樹脂としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂環式系石油樹脂、および芳香族系石油樹脂等が例示できる。また、導電性ポリマーを用いることができる。導電性ポリマーとしては、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンが例示できる。熱可塑性樹脂の好適な例は、ポリエステル、アクリル系樹脂、ポリエーテル、ウレタン系樹脂、スチレンエラストマー、ポリカーボネート、ブタジエンゴム、ポリアミド、エステルアミド系樹脂、ポリイソプレン、およびセルロースが例示できる。
【0069】
導電性フィラーは、金属フィラー、導電性セラミックス粒子およびそれらの混合物が例示できる。金属フィラーは、金、銀、銅、ニッケル等の金属粉、ハンダ等の合金粉、銀コート銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、金コートニッケル粉のコアシェル型粒子が例示できる。優れた導電特性を得る観点から、銀を含有する導電性フィラーが好ましい。コストの観点からは、銅粉を銀で被覆した銀コート銅粉が特に好ましい。
【0070】
銀コート銅における銀の含有量は、銀および銅の合計100質量%中、3〜20質量%が好ましく、より好ましくは8〜17質量%であり、更に好ましくは10〜15質量%である。コアシェル型粒子の場合、コア部に対するコート層の被覆率は、平均で60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。コア部は非金属でもよいが、導電性の観点からは導電性物質が好ましく、金属粒子がより好ましい。
【0071】
導電性フィラーとして、電磁波吸収フィラーを用いてもよい。例えば、鉄、Fe−Ni合金、Fe−Co合金、Fe−Cr合金、Fe−Si合金、Fe−Al合金、Fe−Cr−Si合金、Fe−Cr−Al合金、Fe−Si−Al合金等の鉄合金、Mg−Znフェライト、Mn−Znフェライト、Mn−Mgフェライト、Cu−Znフェライト、Mg−Mn−Srフェライト、Ni−Znフェライト等のフェライト系物質並びに、カーボンフィラーなどが挙げられる。カーボンフィラーは、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノナノチューブからなる粒子、グラフェン粒子、グラファイト粒子およびカーボンナノウォールが例示できる。
【0072】
導電性接着剤層に用いる導電性フィラーの形状は、鱗片状粒子、デンドライト(樹枝)状粒子、針状粒子、プレート状粒子、ブドウ状粒子、繊維状粒子、球状粒子が例示できる。クルトシスの数値を調整する観点からは、針状粒子または/およびデンドライト状粒子の導電性フィラーを含有させることが好ましい。ここで、針状とは長径が短径の3倍以上のものをいい、いわゆる針形状の他、紡錘形状、円柱形状等も含む。また、デンドライト状とは、電子顕微鏡(500〜20、000倍)で観察した際に、棒状の主軸から複数の分岐枝が2次元的または3次元的に延在した形状をいう。デンドライト状には、前記分岐枝が折れ曲がったり、分岐枝から更に分岐枝が延在していてもよい。
【0073】
また、導電性フィラーとして鱗片状粒子を含有させることで、被覆性に優れた電磁波シールド部材を提供することができる。ここで鱗片状とは、薄片状、板状も含む。導電性フィラーは粒子全体として鱗片状であればよく、楕円状、円状または微粒子の周囲に切れ込み等が存在してもよい。鱗片状粒子はマルテンス硬さが大きくなる傾向にあり、球状、樹枝状粒子はマルテンス硬さが低くなる傾向にある。また、導電性フィラー量が多くなるとマルテンス硬さは大きくなる傾向にある。また、硬化後の樹脂の硬さが高いほど、マルテンス硬さも硬くなる。
【0074】
導電性フィラーは、単独または混合して用いられる。例えば、鱗片状粒子と球状粒子の組み合わせ、鱗片状粒子とデンドライト状粒子の組み合わせ、鱗片状粒子と針状粒子の組み合わせ、鱗片状粒子、デンドライト状粒子および針状粒子の組み合わせが例示できる。これらに更にナノサイズの球状粒子を併用してもよい。
【0075】
また、デンドライト状粒子または/および針状粒子を併用することによって、導電性フィラー同士の接触点を多くし、シールド特性を向上させることができる。また、デンドライト状粒子または/および針状粒子の併用によって、バインダー成分との接触面積を増加させることができるので高品質の電磁波シールド部材を提供できる。
【0076】
導電性フィラーの含有量は、熱軟化性樹脂組成物層の固形分(100質量%)中、40〜85質量%であることが好ましく、50〜80質量%がより好ましい。
【0077】
導電性接着剤層中の導電性フィラー100質量%に対して、針状粒子または/およびデンドライト状粒子は50質量%以下含有させることが好ましい。より好ましくは0.5〜40質量%、更に好ましくは1〜35質量%、特に好ましくは1〜30質量%である。50質量%以下含有させることで、耐擦傷性のより優れた電磁波シールド部材を提供することができる。
【0078】
鱗片状粒子の平均粒子径D50は、2〜100μmが好ましい。鱗片状粒子に、ナノサイズの導電性フィラーを混合してもよい。
【0079】
針状粒子の平均粒子径D50は2〜100μmが好ましく、2〜80μmがより好ましい。更に好ましくは3〜50μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。デンドライト状粒子の平均粒子径D50の好ましい範囲も同様に、2〜100μmが好ましく、2〜80μmがより好ましい。更に好ましくは3〜50μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。鱗片状粒子の平均粒子径D50は2〜100μmが好ましく、2〜80μmがより好ましい。更に好ましくは3〜50μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。
【0080】
デンドライト状粒子の平均粒子径D50は2〜100μmが好ましく、2〜80μmがより好ましい。更に好ましくは3〜50μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。鱗片状粒子とデンドライト状粒子を併用することにより、表面光沢度を最適化し、電磁波シールド層に文字を直接印刷した場合に、印字視認性を高めることができる。
【0081】
平均粒子径D50は、レーザー回折・散乱法により測定できる。具体的には、例えば、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS 13320(ベックマン・コールター社製)を使用し、トルネードドライパウダーサンプルモジュールにて、各導電性微粒子を測定して得た数値であり、粒子の積算値が50%である粒度の直径の平均粒径である。なお、屈折率の設定は1.6として測定する。電磁波シールド部材1中の各粒子の平均粒子径D50は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて100個の粒径を測定し、度数分布を求めることができる。針状粒子およびデンドライト状粒子の場合、粒径は各粒子の最長の長さを用いる。
【0082】
導電性接着剤層を構成する組成物には、さらに着色剤、難燃剤、無機添加剤、滑剤、ブロッキング防止剤等を含んでいてもよい。
着色剤としては、例えば、有機顔料、カーボンブラック、群青、弁柄、亜鉛華、酸化チタン、黒鉛等が挙げられる。この中でも黒色系の着色剤を含むことでシールド層の印字視認性が向上する。
難燃剤としては、例えば、ハロゲン含有難燃剤、りん含有難燃剤、窒素含有難燃剤、無機難燃剤等が挙げられる。
無機添加剤としては、例えば、ガラス繊維、シリカ、タルク、セラミック等が挙げられる。
滑剤としては、例えば、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂、パラフィン、高級脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪族アルコール、金属石鹸、変性シリコーン等が挙げられる。
ブロッキング防止剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、ポリメチルシルセスキオサン、ケイ酸アルミニウム塩等が挙げられる。
【0083】
導電性接着剤層は、熱圧着により導電性フィラーが連続的に接触して導電性を有する層であればよく、熱圧着前の段階で必ずしも導電性を有していなくてもよい。導電性接着剤層は、上述した導電性フィラーと、バインダー樹脂前駆体を含有する組成物を混合攪拌し、離形性基材上に塗工後乾燥することで形成することができる。また離形性クッション部材3に直接塗工し乾燥する方法でも形成することができる。
【0084】
導電性接着剤層の塗液を塗工後、乾燥して離形性基材上に導電性接着剤層を形成する。乾燥工程は、加熱(例えば、80〜120℃)を行うことが好ましい。電磁波シールド部材のクルトシスを調整する観点からは、塗液を塗工後、加熱乾燥前に25℃(室温)・常圧で乾燥を1〜10分行うことが好ましい。より好ましい加熱乾燥前の25℃(室温)での乾燥時間は2〜6分である。加熱乾燥前に室温で乾燥するプロセスを設けることにより、クルトシスの値を調整することができる。
【0085】
塗液の粘度と加熱乾燥前の25℃での乾燥時間が電磁波シールド部材1のクルトシスに与える影響について、
図9の模式図を用いて説明する。同図に示すように、離形性基材15上に導電性接着剤層6を形成するために塗液を塗布する。溶剤が含まれている乾燥途上の導電性接着剤層6Pが得られる。
【0086】
加熱途上の導電性接着剤層6Pに対し、25℃での乾燥時間を長く設定することにより、
図9に示すように、溶剤の蒸発速度が遅い状態を意図的に長くし、それによってバインダー樹脂前駆体10の下方への沈み込みを促すことができる。一方、25℃での乾燥時間を短く設定することにより、
図9に示すようにバインダー樹脂前駆体10の下方への沈み込みを抑え、その段階で加熱乾燥することによって導電性フィラー11が立ち上がり易くなる。また、溶剤の蒸発に伴う発泡が生じやすくなり、表面が荒れる傾向となる。
【0087】
前記塗液の固形分は、電磁波シールド部材1のクルトシスの値を1〜8とするために20〜50%とすることが好ましい。また、電磁波シールド部材のクルトシスを調整するために、前記塗液のB型粘度計で測定した塗液粘度を200〜5000mPa・sの範囲とすることが好ましい。更に、電磁波シールド部材のクルトシスを調整するために、前記塗液のチキソトロピーインデックスを1.2〜2.0とすることが好ましい。なお、
図9および後述する
図10の導電性フィラー11は鱗片状粒子であり、図は主面に対する平面視ではなく、厚み方向の切断部断面図を示している。
【0088】
クルトシスの値は、導電性接着剤層を形成するための塗液の粘度によっても変わる。塗液の粘度が高い方が導電性フィラーの流動性が抑えられる傾向にある。このため、粘度が高い場合、導電性フィラー11は配向せずランダムとなる傾向がある。一方、粘度が低い場合、鱗片状粒子は基板面に対して、主面が凡そ対向するように配向する傾向がある。また、25℃での乾燥時間を短くして加熱乾燥を行うと、粘度が高いと発泡による表面荒れが大きくなる傾向にあり、粘度が低いと導電性フィラーが縦方向に移動しやすい傾向となる。
このように、塗液の粘度および25℃での乾燥時間を調整することにより、クルトシスを調整することができる。
【0089】
また、電磁波シールド部材1のクルトシスは、デンドライト状粒子および/または針状粒子の粒子径によっても調整することができる。デンドライト状粒子または/および針状粒子の粒子径が電磁波シールド部材1のクルトシスに与える影響について、
図10の模式的説明図を用いて説明する。
図9と同様に、離形性基材15上に導電性接着剤層6を形成するために塗液を塗布することにより、乾燥途上の導電性接着剤層6Pが得られる。
図10において、
図9と共通する成分や部材は同一の符号を付す。
図10に示すように、導電性フィラーの一種であるデンドライト状粒子12の平均粒子径D50が小さいとクルトシスの値が低下する傾向にあり、逆に、デンドライト状粒子12の平均粒子径D50が大きいとクルトシスの値が大きくなる傾向にある。導電性接着剤層6の厚みによるが、クルトシスの値を小さくしたい場合には、例えば平均粒子径D50を2〜5μm、クルトシスの値を大きくしたい場合には、例えば、平均粒子径D50を20〜50μm、これらの中間値に設定したい場合には、平均粒子径D50を5μm越え、20μm未満に設定することができる。
【0090】
また、電磁波シールド部材1のクルトシスを調整するために、電磁波シールド用部材2の最表層である導電性接着剤層6を形成するための導電性接着剤組成物を塗工・乾燥した後に、コロナ処理やプラズマ処理を行うことが好ましい。コロナ処理は、コロナ放電電子の照射量が1〜1,000W/m
2/minであることが好ましく、10〜100W/m
2/minとすることがより好ましい。
【0091】
電磁波シールド部材1のクルトシスは、熱圧着前の電磁波シールド用部材2を形成する組成物において針状またはデンドライト状の導電性フィラーの添加量を多くすることによりその数値を調整することができる。また、電磁波シールド部材1のクルトシスは、導電性フィラーの平均粒子径D50およびD90によっても調整することができる。
【0092】
離形性基材は、片面あるいは両面が離形性のある基材であり、150℃における引張破断歪が50%未満のシートである。離形性基材は例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリブテン、軟質ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル等のプラスチックシート等、グラシン紙、上質紙、クラフト紙、コート紙等の紙類、各種の不織布、合成紙、金属箔や、これらを組み合わせた複合フィルムなどが挙げられる。
【0093】
(離形性クッション部材)
離形性クッション部材3は、導電性接着剤層6の電子部品30への追従性を促すクッション材として機能し、且つ離形性があるシートである。つまり、熱圧着工程後に電磁波シールド部材1から剥離可能な層である。また、150℃における引張破断歪が50%以上で、熱圧着時に溶融する層であることが好ましい。
【0094】
なお、離形性基材および離形性クッション部材の引張破断歪は以下の方法によって求めた値である。離形性基材および離形性クッション部材を幅200mm×長さ600mmの大きさに切断し測定試料とした。測定試料について小型卓上試験機EZ−TEST(島津製作所社製)を用いて、温度25℃、相対湿度50%の条件下で引っ張り試験(試験速度50mm/min)を実施した。得られたS−S曲線(Stress−Strain曲線)から引張破断歪(%)を算出した。
【0095】
離形性クッション部材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート、環状オレフィンポリマー、シリコーンが好ましい。この中でも埋め込み性と剥離性を両立する観点から、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート、シリコーンがさらに好ましい。離形性クッション部材は、単層で用いても複層で用いてもよい。複層とする場合、同一または異なる種類のシートを積層できる。
【0096】
離形性クッション部材3と導電性接着剤層6の積層方法は特に限定されないが、これらのシートをラミネートする方法が挙げられる。離形性クッション部材3は最終的には剥離するので、離形性の優れた材料が好ましい。離形性クッション部材の厚みは、例えば50μm〜3mm程度であり、100μm〜1mm程度がより好ましい。
【0097】
[第2実施形態]
次に、第1実施形態とは異なる電子部品搭載基板の例について説明する。第2実施形態に係る電子部品搭載基板は、電磁波シールド部材が2層の電磁波シールド層からなっている点において、単層の電磁波シールド層からなる電磁波シールド部材を用いた第1実施形態と相違するが、その他の基本的な構成および製造方法は同様である。なお、第1実施形態と重複する記載は適宜省略する。
【0098】
第2実施形態の電磁波シールド部材は、
図11に示すように、第1導電性接着剤層6a1および第2導電性接着剤層6a2の2層からなる導電性接着剤層6aである電磁波シールド用部材2aと、離形性クッション部材3aからなる電磁波シールド用積層体4aを用いて形成される。この電磁波シールド用積層体4aを熱圧着することにより、電子部品30が搭載された基板20上に第1電磁波シールド層と第2電磁波シールド層からなる電磁波シールド部材が被覆される。この2層の電磁波シールド層の積層体である電磁波シールド部材において、表層側から測定したときの押込み弾性率を1〜10GPaとする。2層の電磁波シールド層により構成することで、電磁波シールド部材の設計自由度を高めることができる。例えば、電磁波反射層と電磁波吸収層の積層体とする態様が例示できる。電磁波シールド層を3層以上積層してもよい。
【0099】
第2実施形態に係る電子部品搭載基板によれば、2層の電磁波シールド層からなる電磁波シールド部材を用いることにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、電磁波シールド層を2層積層したことにより各層の設計自由度を高められるので、ニーズに応じた電磁波シールド部材を提供しやすいというメリットがある。
【0100】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る電子部品搭載基板は、電磁波シールド部材が電磁波シールド層とハードコート層の積層体からなる点において、単層の電磁波シールド層からなる電磁波シールド部材を用いた第1実施形態と相違するが、その他の基本的な構成および製造方法は同様である。
【0101】
第3実施形態に係る電磁波シールド部材は、
図12に示すように、1層の導電性接着剤層6bと絶縁性樹脂層7bの積層体である電磁波シールド用部材2bおよび離形性クッション部材3bからなる電磁波シールド用積層体4bを用いて形成される。この電磁波シールド用積層体4bを熱圧着することにより、電子部品が搭載された基板上に、導電性接着剤層6bから形成された電磁波シールド層と絶縁性樹脂層7bから形成されたハードコート層とからなる電磁波シールド部材が得られる。第3実施形態に係る電磁波シールド部材は、ハードコート層側から測定したときの押込み弾性率を1〜10GPaとする。
【0102】
絶縁性樹脂層7bはバインダー樹脂前駆体と無機フィラーを含有する樹脂組成物から形成された層である。バインダー樹脂前駆体は、少なくとも熱軟化性樹脂を含む。バインダー樹脂前駆体の例示および好適例は、第1実施形態で述べた電磁波シールド用部材の導電性接着剤層と同じである。導電性接着剤層と絶縁性樹脂層のバインダー樹脂前駆体は同一であっても異なっていてもよい。
【0103】
無機フィラーは、第1実施形態の導電性接着剤層と異なり導電性を有していないが、好ましい無機フィラーの特性、例えば形状・配合量・D50・D90等は導電性フィラーで挙げた例と同じである。無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、タルク、カオリナイト、マイカ、塩基炭酸マグネシウム、セリサイト、モンモロリナイト、カオリナイト、ベントナイト等の無機化合物が挙げられる。
【0104】
絶縁性樹脂層に用いるバインダー樹脂前駆体の好ましい配合成分および配合量の好適な例は第1実施形態の導電性接着剤層と同じである。また、絶縁性樹脂層に用いる無機フィラーの好ましい形状、好ましい平均粒子径D50等は、第1実施形態の導電性フィラーと同じである。
【0105】
熱軟化性樹脂組成物、および熱軟化性樹脂組成物層は、必要に応じて着色剤、シランカップリング剤、イオン捕集剤、酸化防止剤、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、レベリング調整剤、難燃剤等を含むことができる。
【0106】
第3実施形態に係る電子部品搭載基板によれば、ハードコート層を有する電磁波シールド部材を用いることにより、第1実施形態で述べた効果に加え、電磁波シールド層をハードコート層で被覆することにより、より優れた耐久性を有する電磁波シールド部材を提供できる。
【0107】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る電子部品搭載基板は、電磁波シールド部材が電磁波シールド層と絶縁被覆層の積層体からなる点において、単層の電磁波シールド層からなる電磁波シールド部材を用いた第1実施形態と相違するが、その他の基本的な構成および製造方法は第1実施形態と同様である。
【0108】
第4実施形態に係る電磁波シールド部材は、
図13に示すように、絶縁性接着剤層8cと導電性接着剤層6cの積層体である電磁波シールド用部材2cおよび離形性クッション部材3cからなる電磁波シールド用積層体4cを用いて形成される。
【0109】
第4実施形態においては、個片化工程を行わない若しくは個片化済みの、複数の電子部品(例えば半導体パッケージ)が形成された基板上に、電磁波シールド部材を被覆する例について説明する。
図14(a)に示すように、基板20との接続端子として機能するはんだボール24を有する電子部品30が搭載された基板20の上方に、電磁波シールド用積層体4cを配置し、離形性クッション部材3c側から電子部品30が搭載された基板20に熱圧着を行う(
図14(b))。その後、離形性クッション部材3cを剥離することにより、
図14(c)の電磁波シールド部材1cが積層された電子部品搭載基板53が得られる。第4実施形態に係る電磁波シールド部材1cは、電磁波シールド層5c側から測定したときの押込み弾性率を1〜10GPaとする。
【0110】
得られた電子部品搭載基板53は、電磁波シールド層5cの上面からGNDを取ることが可能である。この方法に代えて、基板20上にグランドパターンを設け、このグランドパターンと電磁波シールド層5cを導通させるために、グランドパターン上に、絶縁被覆層9cを突き破り、電磁波シールド層5cと導通する導電性のコネクタ部を設けてもよい。
【0111】
第4実施形態では、個片化工程が不要の電子部品搭載基板の製造方法の一例について説明したが、マザー基板上に、
図14(c)の製品単位のユニットをアレイ状に形成し、電磁波シールド用積層体4cを載置して熱圧着して電磁波シールド層を形成し、その後、個片化工程を行うことにより、
図14(c)に示す電子部品搭載基板を得ることもできる。
【0112】
絶縁性接着剤層8cは、バインダー樹脂前駆体を含有する樹脂組成物から形成された層である。バインダー樹脂前駆体は、少なくとも熱軟化性樹脂を含む。バインダー樹脂前駆体の例示および好適例は、第1実施形態で述べた導電性接着剤層のバインダー樹脂前駆体が挙げられる。絶縁性接着剤層8cと導電性接着剤層6cのバインダー樹脂前駆体は同一であっても異なっていてもよい。
【0113】
熱軟化性樹脂組成物および熱軟化性樹脂組成物層は、必要に応じて着色剤、シランカップリング剤、イオン捕集剤、酸化防止剤、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、レベリング調整剤、難燃剤、無機フィラー等を含むことができる。
【0114】
第4実施形態に係る電子部品搭載基板によれば、絶縁被覆層9cを有する電磁波シールド部材1cを用いることにより、第1実施形態で述べた効果に加え、グランドパターン以外の回路または電極パターン等の導体部と電磁波シールド部材との短絡を防ぎ、電子部品と電磁波シールド層の接合信頼性を高めることができる。また、電子部品の絶縁信頼性を高めることができる。従って、優れた耐久性を有する電磁波シールド部材を提供できる。その結果、優れた電磁波シールド性を有する電子部品搭載基板を提供できる。また、基板全体に一括でシールド層を形成できるので、製造工程が簡便であり、シールド缶等に比べて顕著に厚みを縮小できるというメリットがある。
【0115】
なお、第4実施形態において、絶縁被覆層9cは主として電子部品と電磁波シールド部材との接合を強化するために用いる例を挙げたが、絶縁被覆層9cを封止材に適用することもできる。絶縁被覆層9cを封止材に適用する場合、半導体チップ等の封止工程と電磁波シールド部材の被覆を同一工程で行うことができるというメリットがある。即ち、第4実施形態に係る電磁波シールド部材は、絶縁体におり一体的に被覆されていない電子部品に対して適用し、絶縁性接着剤層から封止材(モールド樹脂)に対応する絶縁被覆層を得ることもできる。この場合、電子部品の側面に電磁波シールド部材を被覆するために、電子部品に対応する凹部がアレイ状に形成されたプレス板(電子部品の間隙に電磁波シールド部材を埋め込む凸部が形成されたプレス板)を用いてもよい。
【0116】
[第5実施形態]
第5実施形態に係る電子部品搭載基板は、電磁波シールド層とグランドパターンが直接接触して導通しており、電磁波シールド用積層体の内部層に位置する導電性接着剤層が、当該積層体の段階で露出している領域を有する電磁波シールド用積層体を用いる。この露出領域は、基板等に形成されたグランドパターン等の導電パターンと電磁波シールド層が接触して導通するために設けられている。第5実施形態は、これらの点において第4実施形態と相違するが、その他の基本的な構成および製造方法は同様である。
【0117】
第5実施形態に係る電磁波シールド用積層体は、積層構成は第4実施形態と同様であるが、
図15(a)に示すように、基板20上に形成されたグランドパターン22を被覆する領域に対応する位置の電磁波シールド用積層体4dにおいて導電性接着剤層6dが露出している。具体的には、絶縁性接着剤層8d側からの上面視において、導電性接着剤層6dの露出領域が設けられている。
図15(a)の電磁波シールド用積層体4dの例では、絶縁性接着剤層8dのサイズを電磁波シールド用積層体4dのサイズよりも一回り小さくし、電磁波シールド用積層体4dの額縁領域において導電性接着剤層6dが露出するようにする。係る構成により、
図15(b)、
図15(c)に示すように、熱圧着によりグランドパターン22と電磁波シールド層5dとが接触して導通した電子部品搭載基板54が得られる。電磁波シールド用積層体4dにおける導電性接着剤層6dの露出部の位置は、
図15(a)の例に限定されず、露出部を開口パターンとして形成してもよい。
【0118】
<変形例>
次に、本実施形態に係る電子部品搭載基板等の変形例について説明する。但し、本発明は、上記実施形態および変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に属し得る。また、各実施形態および変形例は、互いに好適に組み合わせられる。
【0119】
第4、5実施形態においては、絶縁性接着剤層、導電性接着剤層および離形性クッション部材の積層体からなる電磁波シールド用積層体を用いた例を説明したが、以下のように製造することも可能である。即ち、
図16(a)に示すように、複数の電子部品30が搭載された基板20上に、まず、
図16(b)に示すように、絶縁被覆層9eを形成する。この絶縁被覆層9eは、絶縁性接着剤層を含むシートを熱プレスすることにより得られる。その後、導電性接着剤層6eおよび離形性クッション部材3eの積層体からなる電磁波シールド用積層体4eを用いることにより電磁波シールド層5eを形成する(
図16(c)、(d))。これらの工程を経て、電磁波シールド部材が形成された電子部品搭載基板55が得られる。なお、絶縁被覆層9eは、シートを熱プレスする方法に代えて、溶液樹脂を塗布する方法および溶液樹脂をスプレーする方法を例示できる。
【0120】
上記実施形態においては、部品の一例として電子部品を例として説明したが、電磁波から遮蔽したい部品全般に対して本発明を適用できる。また、部品の形状は矩形状に限定されず、角部がR形状である部品、部品の上面と側面の成す角度が鋭角の部品、鈍角の部品も含む。また、上面に凹凸形状がある部品、電子部品の外面が球状等の曲面になっている場合も含む。また、上記実施形態においては、基板20にハーフダイシング溝25(
図2参照)が形成されていたが、ハーフダイシング溝25は必須ではなくフラットな基板に電磁波シールド部材を載置して被覆させてもよい。加えて、本発明の電子部品搭載基板には、例えば基板20をオールダイシングして個片化した電子部品が搭載された部品搭載基板が別の保持基材等に載置されている場合も含む。
【0121】
また、電磁波シールド用積層体は上記実施形態の積層形態に限定されない。例えば、離形性クッション部材上に、支持基板が積層されていてもよい。支持基板を積層することにより、熱圧着時の装置の汚れを簡易に防止することができる。また、支持基板により、電磁波シールド用積層体の貼付工程が容易になるというメリットがある。また、電子部品は基板の片面のみならず両面に搭載し、各電子部品に電磁波シールド部材を形成することもできる。
【0122】
本実施形態に係る電子部品搭載基板によれば、凹凸構造に対する被覆性に優れることから、パーソナルコンピュータ、モバイル機器或いはデジタルカメラ等の各種電子機器に好適に適用できる。
【0123】
≪実施例≫
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例中の「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」をそれぞれ表すものとする。また、本発明に記載の値は、以下の方法により求めた。
なお、請求項1に係る発明と整合させるために、後述する実施例1,2,6をそれぞれ参考例1,2、6と読み替えるものとする。
【0124】
(試験基板の作製)
ガラスエポキシからなる基板上に、モールド封止された電子部品(1cm×1cm)を5×5個アレイ状に搭載した基板を用意した。基板の厚みは0.3mmであり、モールド封止厚、即ち基板上面からモールド封止材の頂面までの高さ(部品高さ)Hは0.7mmである。その後、部品同士の間隙である溝に添ってハーフダイシングを行い、試験基板を得た(
図17参照)。ハーフカット溝深さは0.8mm(基板20のカット溝深さは0.1mm)、ハーフカット溝幅は200μmとした。
【0125】
以下、実施例で使用した材料を示す。
・バインダー樹脂前駆体
樹脂1:ウレタン樹脂、
樹脂2:ポリカーボネート樹脂、
樹脂3:スチレンエラストマー樹脂、
樹脂4:フェノキシ樹脂、
硬化性化合物1:デコナールEX830
硬化性化合物2:jERYX8000、
硬化性化合物3:jER157S70、
・硬化促進剤:PZ−33
・導電性フィラー
導電性フィラー1:フレーク状Ag(平均粒子径D50:11μm)
導電性フィラー2:針状銀コート銅(平均粒子径D50:7.5μm)
・添加剤
添加剤1:BYK322、
添加剤2:BYK337
【0126】
[実施例1]
(導電性接着剤層の樹脂組成物の調製)
表1に示すように、バインダー樹脂前駆体として樹脂1(ウレタン樹脂)を70部(固形分)と、樹脂2(ポリカーボネート樹脂)を30部(固形分)と、硬化性化合物1(エポキシ樹脂)を30部と、硬化性化合物2(エポキシ樹脂)を15部と、導電性フィラー1(フレーク状Ag)を280部と、導電性フィラー2(針状AgコートCu)を50部と、硬化促進剤を1部と、添加剤1を0.4部とを容器に仕込み、不揮発分濃度が35質量%になるようトルエン:イソプロピルアルコール(質量比2:1)の混合溶剤を加えディスパーで10分攪拌することで導電性接着剤層を形成するための樹脂組成物を得た。
【0127】
(電磁波シールド用積層体の作製)
この樹脂組成物を乾燥厚みが50μmになるようにドクターブレードを使用して離形性基材に塗工した。そして、25℃で12分間常温乾燥した後、100℃で2分間乾燥することで電磁波シールド用部材(導電性接着剤層)を得た。その後、離形性クッション部材CR1020、軟質樹脂層の両面をポリメチルペンテンで挟み込んだ層構成(厚み150μm)、三井化学東セロ社製)を用意し、電磁波シールド用部材とラミネートすることにより離形性基材上に実施例1に係る電磁波シールド用積層体を得た。
【0128】
(電子部品搭載基板の試験片の作製)
次に、この離形性基材上の電磁波シールド用積層体を10×10cmにカットし、離形性基材を剥離した後、前記試験基板(
図17参照)に対して、電磁波シールド用積層体の導電性接着剤層面側が接するように載置し仮貼付した。そして、この電磁波シールド用積層体の上方から基板面に対し2MPa、180℃の条件で2時間熱圧着した。熱圧着後、離形性クッション部材を剥離することで、電磁波シールド部材が被覆された実施例1に係る電子部品搭載基板(試験片)を得た。
【0129】
[実施例2〜19、比較例1,2]
表1,表2の記載の組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、各実施例および比較例の導電性接着剤層の樹脂組成物、電磁波シールド用積層体および電子部品搭載基板の試験片を得た。
【0130】
<押込み弾性率>
実施例1〜19、比較例1,2の電磁波シールド用積層体を用意し、厚み300μmのFR4基板に載置し、離形性クッション部材側から面方向に2MPaの条件で180℃2時間の加熱を行った。その後、離形性クッション部材を剥離して電磁波シールド部材を形成したFR4基板の試験片を得た。そして、離形性クッション部材が積層されていた側から以下の方法により押込み弾性率を測定した。
即ち、フィッシャースコープH100C(フィッシャー・インストルメンツ社製)型硬度計を使用し、ビッカース圧子(100φの先端が球形のダイアモンド圧子)を用い、25℃の恒温室にて試験力0.3N、試験力の保持時間20秒、試験力の付加所要時間5秒で行った。電磁波シールド部材の同一膜面をランダムに5箇所繰り返し測定して得た値を平均して押込み弾性率を求めた。
【0131】
なお、電磁波シールド部材の押込み弾性率の測定において、電子部品搭載基板上に実際に被覆されている電磁波シールド部材を測定することもできる。この場合には、電子部品基板上に被覆された電磁波シールド部材に直接ビッカース圧子を接触させ測定する。後述するクルトシスおよび水接触角においても、同様の要領で電子部品搭載基板上に実際に被覆されている電磁波シールド部材の測定を行うことができる。
【0132】
<クルトシス>
各実施例および比較例の電磁波シールド用積層体を用意し、厚み300μmのFR4基板に載置し、離形性クッション部材側から面方向に8MPaの条件で170℃5分加熱圧着を行った。その後離形性クッション部材を剥がし180℃2時間の加熱を行った。その後、離形性クッション部材を剥離して電磁波シールド部材を形成したFR4基板の試験片を得た。この試験片において、離形性クッション部材を剥離した電磁波シールド部材の表面に金属スパッタ処理を施した。金属スパッタ処理条件は、日本電子株式会社製スパッタ装置「Smart Coater」を使用し、ターゲットとして金を用い、ターゲットとサンプル表面との離間距離を2cmとし、0.5分間スパッタした。得られた試料の金属スパッタ処理面に対し、JIS B 0601:2001に準拠し、レーザー顕微鏡((株)キーエンス社製(VK−X100))を用いてクルトシスを求めた。測定条件は、形状測定モードで測定倍率を1000倍とし表面形状を取得した。得られた表面形状画像を解析アプリケーションの表面粗さ測定にて、全領域を選択しλs輪郭曲線フィルタを2.5μm、λc輪郭曲線フィルタを0.8mmとし、クルトシスを測定した。上記測定を異なる5箇所で行い測定値の平均値をクルトシスの値とした。
なお、電磁波シールド部材のクルトシスの測定において、電子部品搭載基板上に実際に被覆されている電磁波シールド部材を測定する場合には、電子部品基板上に被覆された電磁波シールド部材を直接測定すればよい。
【0133】
<水接触角>
押込み弾性率の測定試料と同様にして作製したFR4基板の試験片に対し、電磁波シールド層の表面に対して、協和界面科学(株)製「自動接触角計DM‐501/解析ソフトウェアFAMAS」を用いて電磁波シールド部材の水接触角を測定した。測定は液適法により行った。
【0134】
<マルテンス硬さの測定>
各実施例および比較例の電子部品搭載基板の試験片を用意し、ISO14577−1に準拠して、フィッシャースコープH100C(フィッシャー・インストルメンツ社製)型硬度計にてマルテンス硬さを測定した。測定は、電子部品30上の上面に対して、ビッカース圧子(100φの先端が球形のダイアモンド圧子)を用い、25℃の恒温室にて試験力0.3N、試験力の保持時間20秒、試験力の付加所要時間5秒の条件で行った。同一硬化膜面をランダムに10箇所繰り返し測定して得た値の平均値をマルテンス硬さとした。なお、試験力は電磁波シールド層の厚みに応じて調整する。具体的には最大押し込み深さが電磁波シールド部材の厚みの10分の1程度になるように試験力を調整した。
【0135】
<塗液の粘度およびチキソトロピーインデックス>
得られた導電性樹脂組成物を25℃のウォーターバスに30分静置した後に「B型粘度計」(東機産業株式会社製)にて、回転数6rpmの粘度(v1)および回転数60rpmの粘度(v2)を測定した。(v1)を(v2)で除した値をチキソトロピーインデックスとした。
【0136】
<フルダイシング時のバリ>
上記試験基板(5×5個アレイ状に電子部品が搭載された基板)に、各実施例および比較例の電磁波シールド用積層体を8MPa、170℃の条件で5分間熱圧着し、離形性クッション部材を手で剥離した。その後、180℃2時間キュアすることにより電磁波シールド部材を被覆した試験サンプルを得た。得られた試験サンプルに対し、個片化工程(フルダイシング)を行ったときのバリの発生状況を、レーザー顕微鏡を用いて以下の基準で評価した。
+++:バリが確認されない。
++:バリの発生が個片化した電子部品25個中2個未満。
+:バリの発生が個片化した電子部品25個中2個以上、5個未満。
NG:バリの発生が個片化した電子部品25個中5個以上。
【0137】
<テープ密着性>
厚み300μmのFR4基板に、5×5cmにカットした各実施例および比較例の電磁波シールド用積層体をそれぞれ載置し、170℃で8MPaの条件で5分熱プレスを行い、180℃で2時間キュアすることで試験基板を得た。次いで、離形性クッション部材を剥離した。その後、得られた試験基板を130℃、湿度85%、0.23MPaのプレッシャークッカー試験を実施した。試験時間は96時間とし、粘着テープは、幅18mmのニチバン製粘着テープを用いた。そして、JISK5600に準じてクロスカットガイドを使用し、間隔が1mmの碁盤目を電磁波シールド部材に25個作製した。その後、電磁波シールド部材の碁盤目部に粘着テープを圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がしてテープ密着試験を行った。電磁波シールド部材の碁盤目の状態(クロスカット残存率)を下記の基準で判断した。
+++:25/25の残存率を示す。
++:24/25の残存率を示す。
+:23/25の残存率を示す。
NG:23/25の残存率未満である。
【0138】
<熱圧着後の離形性クッション部材のハーフダイシング溝の剥離性評価>
上記試験基板(ハーフダイシング溝深さ800μm、溝幅200μm)に対して、各実施例および比較例の電磁波シールド用積層体それぞれを8MPa、170℃の条件で5分間熱圧着し、離形性クッション部材を手で剥離した。そして、電子部品同士の間隙の溝に千切れて残った離形性クッション部材の個数を目視で確認した。評価基準は以下の通りとした。
+++:残渣が認められない。
++:残渣が1個以上、3個未満。
+:残渣が3個以上、5個未満。
NG:残渣が5個以上、或いは溝全体に残渣が残った状態。
【0139】
<スチールウール耐性>
厚さ125μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製「カプトン500H」)に、5×15cmにカットした各実施例および比較例の電磁波シールド用積層体をそれぞれ載置し、180℃で2MPaの条件で10分熱プレスを行った後、180℃で2時間キュアすることで試験基板を得た。その後、離形性クッション部材を剥離した。次いで、電磁波シールド部材に対して学振式磨耗試験機(テスター産業社製)にセットして荷重200gf、ストローク120mm、往復速度30回/minの条件で、電磁波シールド部材が摩耗してポリイミドフィルムが露出するまでの学振回数を求めた。評価基準は以下の通りである。
+++:20,000回以上。
++:10,000回以上、20,000回未満。
+:5,000回以上、10,000回未満(実用レベル)。
NG:5,000回未満。
【0140】
表1,表2に、実施例1〜19および比較例1,2の上記評価結果を示す。
【0143】
表1、表2の例に示すように、押込み弾性率が1未満の比較例1の電磁波シールド部材を用いた電子部品搭載基板は、フルダイシング時のバリが合格レベルに達しなかった。これに対し、本発明の電子部品搭載基板の電磁波シールド性部材はいずれも合格レベルに達しており、バリの発生を抑制できることが確認できた。また、押込み弾性率が10を超える比較例2の電磁波シールド部材を用いた電子部品搭載基板は、PCT試験後のテープ密着性が合格レベルに達しなかった。これに対し、本発明の電子部品搭載基板の電磁波シールド性部材はいずれもPCT試験後のテープ密着性が合格レベルであり、PCT耐性に優れていることを確認した。
【0144】
図18に、実施例3の個片化後の電子部品搭載基板の側面を顕微鏡で観察した画像を示す。同図に示すように、バリは認められなかった。一方、
図19に、比較例1の個片化後の電子部品搭載基板の側面を顕微鏡で観察した画像を示す。同図に示すように、バリの発生が認められた。
【0145】
[付記]
本明細書は、上記実施形態から把握される以下に示す技術思想の発明も開示する。
(付記1)
バインダー樹脂前駆体と導電性フィラーを含む導電性接着剤層を有する電磁波シールド用部材と、
前記電磁波シールド用部材上に積層された離形性クッション部材とを有し、
前記離形性クッション部材側から面方向に2MPaの条件で180℃2時間の加熱を行った後に前記離形性クッション部材を剥離して電磁波シールド部材を得た場合に、前記離形性クッション部材が積層されていた側から測定したときの当該電磁波シールド部材の押込み弾性率が1〜10GPaの範囲となる、電磁波シールド用積層体。
(付記2)
前記離形性クッション部材側から面方向に2MPaの条件で180℃2時間の加熱を行った後、前記離形性クッション部材を剥離して前記電磁波シールド部材を得た場合に、前記離形性クッション部材が積層されていた側の表層の水接触角が70〜100°となる付記1に記載の電磁波シールド用積層体。
(付記3)
前記離形性クッション部材側から面方向に2MPaの条件で180℃2時間の加熱を行った後に前記離形性クッション部材を剥離して前記電磁波シールド部材を得た場合に、前記離形性クッション部材が積層されていた側からJISB0601;2001に準拠して測定したときのクルトシスが1〜8となる付記1又は付記2に記載の電磁波シールド用積層体。
【解決手段】電子部品搭載基板51は、基板20と、基板20の少なくとも一方の面に搭載された電子部品30と、電子部品30上面から基板20に亘って被覆され、電子部品30の搭載によって形成された段差部の側面および基板20の少なくとも一部を被覆する電磁波シールド部材1と、を備える。電磁波シールド部材1は、バインダー樹脂と導電性フィラーを含む電磁波シールド層5を有し、且つ、押込み弾性率を1〜10GPaとする。