(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6690783
(24)【登録日】2020年4月13日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】球体移動装置及びそのジェスチャー認識方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20200421BHJP
G06F 3/0346 20130101ALI20200421BHJP
B62D 57/02 20060101ALI20200421BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
G06F3/01 570
G06F3/0346 425
B62D57/02 Z
B25J5/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-525721(P2019-525721)
(86)(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公表番号】特表2019-528545(P2019-528545A)
(43)【公表日】2019年10月10日
(86)【国際出願番号】KR2016008392
(87)【国際公開番号】WO2018021601
(87)【国際公開日】20180201
【審査請求日】2019年1月21日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0097103
(32)【優先日】2016年7月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519022735
【氏名又は名称】フェアアップ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FAIRAPP INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】イン スー キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒー マン パーク
(72)【発明者】
【氏名】サン キョン ノ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン ジュ キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ ヨン リー
(72)【発明者】
【氏名】デ ゴン リー
(72)【発明者】
【氏名】キョン ファ キム
【審査官】
星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−112168(JP,A)
【文献】
特開平9−254838(JP,A)
【文献】
特開2010−76707(JP,A)
【文献】
特開2004−306921(JP,A)
【文献】
特表2016−525973(JP,A)
【文献】
特表2008−522880(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0021107(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
B25J 5/00
B62D 57/02
G06F 3/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する球体と、
前記内部空間に配置され、前記球体を回転運動させる駆動力を提供する駆動体と
を含み、
前記駆動体は、前記球体の内周面と接触している接触領域と、前記内周面とあらかじめ設定された範囲内の離間距離を隔てて接触していない非接触領域とを含み、前記非接触領域は、前記回転運動によって前記内周面と接触可能であり、
前記駆動体の加速度値を測定するセンサー部と、前記離間距離による成分が含まれた前記加速度値に基づいて前記球体の動きに対応するジェスチャーを認識する制御部とを含む、球体移動装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記センサー部によって測定される前記加速度値とあらかじめ記憶された複数のジェスチャー別の基準値との比較結果を基に複数のジェスチャーの中でいずれか一つのジェスチャーを認識し、前記基準値には前記球体の動きによる前記離間距離の変化に伴う前記加速度値の変化成分が含まれる、請求項1に記載の球体移動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記センサー部によって測定された前記加速度値の変化量から前記駆動力による前記加速度値の変化に伴う第1の変化成分を除去して、前記球体に加えられる外力による前記加速度値の変化に伴う第2の変化成分を抽出し、抽出された前記第2の変化成分とあらかじめ記憶された複数のジェスチャー別の基準値との比較結果を基に複数のジェスチャーの中でいずれか一つのジェスチャーと認識する、請求項1に記載の球体移動装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記駆動体に対する移動制御中には、前記球体の動きを前記駆動力が関与する前記球体の移動中のジェスチャーと判別し、前記駆動体に対する停止制御中には、前記球体の動きを前記駆動力が関与しない前記球体の停止中のジェスチャーと判別する、請求項3に記載の球体移動装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2の変化成分と前記複数のジェスチャー別の基準値との比較結果によって、バンプ(bump)とキック(kick)のどちらか一つのジェスチャーと認識された場合、前記停止制御中にはキックであると判別する、請求項4に記載の球体移動装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2の変化成分と前記複数のジェスチャー別の基準値との比較結果によって、バンプとキックのどちらか一つのジェスチャーと認識された場合、前記移動制御中には、前記第2の変化成分に特定パターンが含まれていると、キックであると判別し、前記特定パターンが含まれていなければバンプであると判別する、請求項4に記載の球体移動装置。
【請求項7】
内部空間を有する球体と、前記内部空間に配置され、前記球体を回転運動させる駆動力を提供する駆動体とを含む球体移動装置のジェスチャー認識方法であって、
前記駆動体は、前記球体の内周面と接触している接触領域と、前記内周面とあらかじめ設定された範囲内の離間距離を隔てて接触していない非接触領域とを含み、前記非接触領域は、前記回転運動によって前記内周面と接触可能であり、
前記ジェスチャー認識方法は、前記駆動体の加速度値を測定するステップと、前記離間距離による成分が含まれた前記加速度値に基づいて前記球体の動きに対応するジェスチャーを認識するステップと、を含む、球体移動装置のジェスチャー認識方法。
【請求項8】
前記ジェスチャーを認識するステップは、測定される前記加速度値とあらかじめ記憶された複数のジェスチャー別の基準値との比較結果を基に、複数のジェスチャーのいずれか一つのジェスチャーを認識し、前記基準値には前記球体の動きによる前記離間距離の変化に伴う前記加速度値の変化成分が含まれる、請求項7に記載の球体移動装置のジェスチャー認識方法。
【請求項9】
前記ジェスチャーを認識するステップは、測定される前記加速度値の変化量から前記駆動力による前記加速度値の変化に伴う第1の変化成分を除去して前記球体に加えられる外力による前記加速度値の変化に伴う第2の変化成分を抽出し、抽出された前記第2の変化成分とあらかじめ記憶された複数のジェスチャー別の基準値との比較結果を基に、複数のジェスチャーのいずれか一つのジェスチャーと認識する、請求項7に記載の球体移動装置のジェスチャー認識方法。
【請求項10】
前記ジェスチャーを認識するステップは、前記駆動体に対する移動制御中には、前記球体の動きを前記駆動力が関与する前記球体の移動中のジェスチャーと判別し、前記駆動体に対する停止制御中には、前記球体の動きを前記駆動力が関与しない前記球体の停止中のジェスチャーと判別する、請求項9に記載の球体移動装置のジェスチャー認識方法。
【請求項11】
前記ジェスチャーを認識するステップは、前記第2の変化成分と前記複数のジェスチャー別の基準値との比較結果によって、バンプとキックのどちらか一つのジェスチャーであると認識された場合、前記停止制御中にはキックであると判別する、請求項10に記載の球体移動装置のジェスチャー認識方法。
【請求項12】
前記ジェスチャーを認識するステップは、前記第2の変化成分と前記複数のジェスチャー別の基準値との比較結果によって、バンプとキックのどちらか一つのジェスチャーであると認識された場合、前記移動制御中には前記第2の変化成分に特定パターンが含まれているとキックであると判別し、前記特定パターンが含まれていなければバンプであると判別する、請求項10に記載の球体移動装置のジェスチャー認識方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は球体移動装置及びそのジェスチャー認識方法に関する。より詳しくは、停止または移動中に外力によって加えられるジェスチャー(gesture)を認識する球体移動装置及びそのジェスチャーを認識する方法に関する。
【0002】
本出願に係わる国家研究開発事業情報は次の通りである。
課題固有番号:
S0702−18−1014、部処名:科学技術情報通信部、研究管理専門機関:情報通信産業振興院、研究事業名:地域SW産業振興支援、研究課題名:伴侶動物ヘルスケアサービスのためのIoTプラットホーム、寄与率:1/1、主管機関:株式会社バルンアップ(FairApp Inc.)、研究期間:2018.01.01.〜2018.12.31.
【背景技術】
【0003】
球体ロボットとも呼ばれる球体移動装置は、荒い外部環境から密封保護可能に設計することもでき、障害物にぶつかっても飛び出すことができ、ホロノミック(holonomic)な作動ができる等の興味深く、かつ独特の特徴を持っている。ロボット工学におけるホロノミックシステムとは、ロボットが動こうとする方向が、現在ロボットが向かっている方向に影響を受けないロボット、すなわち、どの方向へも直ちに動きうるロボットをいう。
【0004】
このような球体ロボットの駆動体は、球体の内部空間に配置されており、球体を回転させるために駆動体は駆動力を伝達しなければならない。球体ロボットの内部の駆動体は、三次元的に球体と独立して可動することができるとともに、球体は内部の駆動体と如何なる方式でも連結されていなければならない。
【0005】
球体ロボットの駆動原理は、重心移動(BCO;Barycenter Offset)、外殻変形(ST;Shell Transformation)、角運動量保存(COAM;Conservation of Angular Momentum)則の三種の類型に大きく分けられる。
【0006】
この中で球体ロボットに最も多く採用されている重心移動とは、球体ロボットにおいて必要な運動を生産するためにロボットの重心を移動する動作をいう。球体がバランスの取れた状態に置かれていることを想定すると、球体の内部の駆動体が動きをすれば球体の質量分布が変わり、球体は新たに平衡位置を探してころがって行くようになる。この時、適切な制御方法を用いてロボットを移動させることができるようになる。
【0007】
従来の技術による球体移動装置として、球体の内部空間に遠隔操縦自動車を駆動体として配置した例がある。これは遠隔操縦自動車のホイールを除くと、球体と別途連結されないため、デカップリング(decoupling)型と指称することができる。駆動体が動くときに球体が前方に向かって進み、球体の動き方向を変えようとすれば、内部の駆動体が方向を変えなければならない。ところが、移動時に振動や衝突によって駆動体が空中に浮かんでいる時には駆動体と球体とが非接触状態に置かれるので、駆動体の輪と球体との間の静止摩擦力が消滅してしまい、球体移動装置が運動量を失ってしまうという短所があった。
【0008】
このような非接触による短所を克服するために、球体と駆動体との間の結合力を向上させた球体移動装置が提案された。これはバネ負荷式を適用して駆動体のボールベアリング及び輪が球体と絶えず接触するように圧縮するためカップリング(coupling)型と指称することができる。しかし、高速では方向の制御が難しく、傾斜路を移動しにくいという短所があった。
【0009】
さらに、従来の技術による球体移動装置は、停止または移動中に外力によって加えられるジェスチャーを認識するに際して問題点があった。ジェスチャーを認識するためには駆動体の運動状態を示す加速度などの運動状態情報を測定した後、これらに基づいて各種ジェスチャーを認識しなければならない。
【0010】
ところが、デカップリング型の球体移動装置は、移動時に外部環境などによって駆動体と球体とが非接触状態に置かれる場合が頻繁にあるから、測定された運動状態情報を信頼しにくく、各種ジェスチャーに対応するように群集化ができなかった。
【0011】
なお、カップリング型の球体移動装置は、移動時に球体と駆動体との結合状態を保持し続けられるので、測定された運動状態情報を信頼することはできる。しかし、各種ジェスチャーの中で一部のジェスチャーは運動特性が類似し、測定される運動状態情報も類似しているため、このような運動状態情報を多様なジェスチャーに対応するように群集化するには限界があるという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は前述のような従来の技術の問題点を解決するために案出されたものであって、駆動体と球体とが接触していた接触領域が、運動によって接触しないようになるか、または駆動体と球体とが接触していない非接触領域が、運動によって接触できるように、駆動体と球体とが互いに疎結合(loose coupling)されて、信頼性のある運動状態情報を豊かに測定できるようにすることで、停止または移動中に外力によって加えられるジェスチャーを正確に認識することができる球体移動装置及びそのジェスチャー認識方法を提供する。
【0013】
本発明の解決しようとする課題は、以上で言及したものに制限されなく、言及されていない別の解決しようとする課題は、下記の記載から本発明の属する通常の知識を有する者にとって明確に理解されることができるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様による球体移動装置は、内部空間を有する球体と、前記内部空間に配置され、前記球体を回転運動させる駆動力を提供する駆動体とを含み、前記駆動体は、前記球体の内周面と接触している接触領域と、前記内周面とあらかじめ設定された範囲内の離間距離を隔てて接触していない非接触領域とを含み、前記非接触領域は、前記回転運動によって前記内周面と接触可能であり、前記駆動体の加速度値を測定するセンサー部と、前記離間距離による成分が含まれた前記加速度値に基づいて前記球体の動きに対応するジェスチャーを認識する制御部とを含むことができる。
【0015】
ここで、前記制御部は、前記センサー部によって測定される前記加速度値とあらかじめ記憶された複数のジェスチャー別の基準値との比較結果を基に複数のジェスチャーの中でいずれか一つのジェスチャーを認識し、前記基準値には前記球体の動きによる前記離間距離の変化に伴う前記加速度値の変化成分が含まれることができる。
【0016】
前記制御部は、前記センサー部によって測定された前記加速度値の変化量から前記駆動力による前記加速度値の変化に伴う第1の変化成分を除去して、前記球体に加えられる外力による前記加速度値の変化に伴う第2の変化成分を抽出し、抽出された前記第2の変化成分とあらかじめ記憶された複数のジェスチャー別の基準値との比較結果を基に複数のジェスチャーの中でいずれか一つのジェスチャーと認識することができる。
【0017】
前記制御部は、前記駆動体に対する移動制御中には、前記駆動力が関与する前記球体の移動中のジェスチャーと判別し、前記駆動体に対する停止制御中には、前記駆動力が関与しない前記球体の停止中のジェスチャーと判別することができる。
【0018】
前記制御部は、前記第2の変化成分と前記複数のジェスチャー別の基準値との比較結果によって、バンプ(bump)とキック(kick)のどちらか一つのジェスチャーと認識された場合、前記停止制御中にはキックであると判別することができる。
【0019】
前記制御部は、前記第2の変化成分と前記複数のジェスチャー別の基準値との比較結果によって、バンプとキックのどちらか一つのジェスチャーと認識された場合、前記移動制御中には、前記第2の変化成分に特定パターンが含まれていると、キックであると判別し、前記特定パターンが含まれていなければバンプであると判別することができる。
【0020】
本発明の他の態様による球体移動装置のジェスチャー認識方法は、内部空間を有する球体と、前記内部空間に配置され、前記球体を回転運動させる駆動力を提供する駆動体とを含む球体移動装置のジェスチャー認識方法であって、前記駆動体は、前記球体の内周面と接触している接触領域と、前記内周面とあらかじめ設定された範囲内の離間距離を隔てて接触していない非接触領域とを含み、前記非接触領域は、前記回転運動によって前記内周面と接触可能であり、前記ジェスチャー認識方法は、前記駆動体の加速度値を測定するステップと、前記離間距離による成分が含まれた前記加速度値に基づいて前記球体の動きに対応するジェスチャーを認識するステップと、を含むことができる。
【0021】
ここで、前記ジェスチャーを認識するステップは、測定される前記加速度値とあらかじめ記憶された複数のジェスチャー別の基準値との比較結果を基に、複数のジェスチャーのいずれか一つのジェスチャーを認識し、前記基準値には前記球体の動きによる前記離間距離の変化に伴う前記加速度値の変化成分が含まれることができる。
【0022】
前記ジェスチャーを認識するステップは、測定される前記加速度値の変化量から前記駆動力による前記加速度値の変化に伴う第1の変化成分を除去して前記球体に加えられる外力による前記加速度値の変化に伴う第2の変化成分を抽出し、抽出された前記第2の変化成分とあらかじめ記憶された複数のジェスチャー別の基準値との比較結果を基に、複数のジェスチャーのいずれか一つのジェスチャーと認識することができる。
【0023】
前記ジェスチャーを認識するステップは、前記駆動体に対する移動制御中には、前記駆動力が関与する前記球体の移動中のジェスチャーと判別し、前記駆動体に対する停止制御中には、前記駆動力が関与しない前記球体の停止中のジェスチャーと判別することができる。
【0024】
前記ジェスチャーを認識するステップは、前記第2の変化成分と前記複数のジェスチャー別の基準値との比較結果によって、バンプとキックのどちらか一つのジェスチャーであると認識された場合、前記停止制御中にはキックであると判別することができる。
【0025】
前記ジェスチャーを認識するステップは、前記第2の変化成分と前記複数のジェスチャー別の基準値との比較結果によって、バンプとキックのどちらか一つのジェスチャーであると認識された場合、前記移動制御中には前記第2の変化成分に特定パターンが含まれているとキックであると判別し、前記特定パターンが含まれていなければバンプであると判別することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、駆動体と球体とが接触していた接触領域が、運動によって接触しないようになるか、または駆動体と球体とが接触していない非接触領域が、運動によって接触できるように、駆動体と球体とが互いに疎結合(loose coupling)されている。このため、運動の際に球体と駆動体とが絶えず接触するように圧縮するカップリング(coupling)型の球体移動装置と比較するとき、運動特性の様々な変化が発生し、これによって、加速度値及びその変化成分を含む運動状態情報が相対的にもっと豊かに測定される。また、運動中に球体と駆動体とは疎結合状態を保持するので、この時測定された加速度値及びその変化成分を含む運動状態情報は信頼性を有する情報と言える。
【0027】
したがって、信頼性のある豊かな運動状態情報を基盤として球体移動装置のジェスチャーを認識することができるため、様々なジェスチャーを高精度に認識することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態による球体移動装置の構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態による球体移動装置に含まれる制御モジュールのブロック構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態による球体移動装置のジェスチャー認識方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の利点及び特徴、並びにそれらを達成する方法は、添付される図面と一緒に詳しく後述されている実施形態を参照すると、明らかになるはずである。しかし、本発明は以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現でき、ただ本実施形態は、本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0030】
本発明の実施形態を説明するにおいて、公知の機能又は構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を無駄に濁し得ると判断される場合には、その詳細な説明を略する。また、後述する用語は本発明の実施形態での機能を考慮して定義された用語であって、これはユーザ、オペレータの意図または慣例などによって変わることができる。それゆえ、本明細書の全般に亘っての内容に基づいて定義されなければならない。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態による球体移動装置10の構成図であり、
図2は、本発明の一実施形態による球体移動装置10に含まれる制御モジュールのブロック構成図である。
【0032】
図1及び
図2を参照すると、球体移動装置10は、球体100と駆動体200とを含む。
球体100は、内部空間が空いており、その内部空間に駆動体200が位置付けられる。球体100は、駆動体200の駆動力が伝達されて回転運動をする。ここで、球体100は完璧な球体であることができる。しかし、それに限定されず楕円形や卵型であってもよく、もしくは球体100の表面に溝を設けるか、球体100の一部が切断された形態を用いて不規則な回転運動をさせることができる。このような多様な形態の具現例を、本発明では球形及び球体100であると定義する。
【0033】
駆動体200は、球体100が回転運動するための駆動力を、静止摩擦力によって提供する。このために駆動体200は、第1の輪210、第2の輪220、第1の動力供給部230、及び第2の動力供給部240を含む。
【0034】
尚、駆動体200は駆動体200の枠を形成する枠部250をさらに含む。枠部250は、プラスチックや金属製であることができ、それに限定されない。
【0035】
また、駆動体200は枠部250から延びて形成され、球体100の回転運動時に球体100と接触するか、あらかじめ設定された範囲内の離間距離rを隔てて非接触する複数のアーム部260をさらに含む。例えば、アーム部260と球体100の内側面との間の所定の離間距離rは、0.5mm〜2mmであることができる。これは、駆動体200が球体100の内周面と接触する接触領域と、球体100の内周面とあらかじめ設定された範囲内の離間距離rを隔てて接触していない非接触領域とを含み、非接触領域は、球体100の回転運動によって、球体100の内周面と接触可能であり、接触領域は、球体100の回転運動によって球体100の内部面と非接触可能な疎結合(loose coupling)状態であると言える。
【0036】
この場合に、駆動体200が球体100内部で離間間隙によって地面となす角度が変わりつつ球体100の多様な動きが可能にすることができる。
【0037】
アーム部260は、球体100側に向けて延びて形成された面に圧縮可能な材質の緩衝部265をさらに備えることができる。アーム部260が球体100の内側面に対向する面に圧縮可能な材質の緩衝部265を備えると、緩衝部265と球体100の内側面とが接触する場合、摩擦が減って球体100の回転運動を滑らかにすることができる。この際、緩衝部265は不織布からなることができ、それに限定されないで駆動体200の重量だけで圧縮可能な多様な材質を用いることができる。
【0038】
また、駆動体200は第1の動力供給部230及び第2の動力供給部240を制御するための制御モジュール270をさらに含み、制御モジュール270はセンサー部271 及び制御部272を含む。
【0039】
センサー部271は、駆動体200の加速度値を測定する。このようなセンサー部271は、駆動体200の3軸に対する加速度値を測定することができる3軸加速度センサーを含むことができる。
このため、センサー部271は 駆動体200に裝着されることができる。
【0040】
制御部272は、センサー部271によって測定された加速度値に基づいて球体100の動きにあたるジェスチャーを認識する。また、認識されたジェスチャーによってあらかじめマッピングされた所定のアクションを球体100が行うように、第1の動力供給部230及び第2の動力供給部240を制御することができる。例えば、制御部272は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで具現することができる。
【0041】
このような制御部272は、センサー部271によって測定される加速度値と、あらかじめ記憶された複数のジェスチャー別の基準値との比較結果を基に、複数のジェスチャーのいずれか一つのジェスチャーを認識する。ここで、センサー部271によって測定される加速度値には、アーム部260と球体100との間の離間距離rによる成分が含まれる。そして、複数のジェスチャー別の基準値にも球体100の動きによるアーム部260と球体100との間の離間距離rの変化に伴う加速度値の変化成分が含まれる。
【0042】
制御部272は、駆動体200の駆動力によって球体100で発生した加速度値の変化に伴う第1の変化成分を把握した結果を踏まえて、球体100のジェスチャーを認識する。このために、センサー部271によって測定された加速度値の変化量から第1の変化成分を除去し、球体100に加えられる外力による加速度値の変化に伴う第2の変化成分を抽出し、抽出された第2の変化成分と、あらかじめ記憶された複数のジェスチャー別の基準値との比較結果を基に、複数のジェスチャーのいずれか一つのジェスチャーと認識することができる。ここで、制御部272は、第1の動力供給部230及び/または第2の動力供給部240によって、駆動体200が移動するように制御しているうちには駆動力が関与する球体100の移動中のジェスチャーと判別し、駆動体200が停止するように制御しているうちには駆動力が関与しない球体100の停止中のジェスチャーと判別することができる。
【0043】
このような制御部272は、ジェスチャー判別結果に基づいて第1の動力供給部230及び第2の動力供給部240の回転速度及び回転方向を制御することができる。
【0044】
第1の動力供給部230及び第2の動力供給部240は、それぞれ、第1の輪210及び第2の輪220と連結されて第1の輪210及び第2の輪220に駆動力を提供する。例えば、第1の動力供給部230及び第2の動力供給部240は、モーターであることができる。ここで、第1の動力供給部230及び第2の動力供給部240は、それぞれ順方向または逆方向に回転することができ、回転速度がそれぞれ異なるように制御されることができる。
【0045】
駆動体200の第1の輪210及び第2の輪220は、球体100の内側面に接触した場合、球体100を回転させる駆動力を球体100へ伝達する。
【0046】
駆動体200が停止状態にある場合には重力によって第1の輪210及び第2の輪220とも球体100の内側面に接触する。また駆動体200が回転運動中には第1の輪210または第2の輪220の一部が球体100の内側面と離隔されることができる。すなわち、回転運動時に球体100と駆動体200との間には、互いに接触する領域と、あらかじめ設定された範囲内でお互いが離隔される領域とが共存する。
【0047】
これによって、第1の輪210及び第2の輪220の球体100の内側面に接触するかどうかと、第1の輪210及び第2の輪220が地面となす角度に応じて、球体移動装置10は多様な回転運動ができる。例えば、駆動体200内の輪が同一の速度で同一の方向に回転するようになる場合、球体100が転がり運動によって前進するが、駆動体200は球体100に完全に密着した構造ではないので、球体100の内部で揺動することになり、これによって球体100がよろよろと前進する動きを示すことがあり得る。
【0048】
アーム部260は、駆動体200の重心を取る役割を果たすが、アーム部260と球体100の内側面との間の所定の間隔に起因して、球体100の回転運動時に複数のアーム部260、第1の輪210、及び第2の輪220の一部は、球体100の内側面と離間することができる。
【0049】
これによって、駆動体200は、停止状態で球体100の内部で地面と垂直に位置することができるが、球体100の回転運動によって球体100の内部において、駆動体200は地面となす角度が停止状態の場合と異なるように動くことができる。
【0050】
この場合、アーム部260と球体100の内側面との間の所定の間隔が0.5mm以上2mm以下の場合、駆動体200が球体100の内部で地面となす角度が変わって球体100の多様な動きが可能になる。
【0051】
該間隔が0.5mmより小さい場合には、アーム部260と球体100の内側面との間の間隔が狭く、このため駆動体200が球体100の内側面と密着して球体100の回転運動は直進または後進運動のみが可能になる。
【0052】
また該間隔が2mmより大きい場合には、駆動体200のアーム部260と球体100内側面との間の間隔が広く、このため駆動体200が球体100の内部で動く範囲が不規則であるから球体100の回転運動を一定に制御することができなくなる。
【0053】
図3は、本発明の一実施形態による球体移動装置10のジェスチャー認識方法を説明するためのフローチャートである。
【0054】
図1〜
図3を参照すれば、駆動体200のセンサー部271は、駆動体200の加速度値を測定して、測定された加速度値を制御部272に提供する(S310)。例えば、3軸加速度センサーを用いて駆動体200のX軸、Y軸、及びZ軸の加速度値を測定することができる。
【0055】
ここで、球体100と駆動体200との間に接触領域と非接触領域とが共存し、かつ接触領域と非接触領域とが切り換えられることができるように、球体100と駆動体200とが疎結合された状態であるので、運動時に球体100と駆動体200とが絶えず接触するように圧縮するカップリング(coupling)型と比較するとき、運動特性の多様な変化が発生し、これによって加速度値及びその変化成分を含む運動状態情報が相対的により豊かに測定される。これはアーム部260と球体100との間の離間距離rに起因する成分が運動状態情報に含まれるからである。
【0056】
また、運動中に球体100と駆動体200とは疎結合された状態を保持するため、この時に測定された加速度値及びその変化成分を含む運動状態情報は信頼性のある情報であると言える。
【0057】
制御部272は、センサー部271から提供された加速度値を加工して各種変化量を把握する(S320)。例えば、区間別の最小・最大値、区間別の平均値、区間別力のベクトル値、区間別の(平均)分散・分布、全体最小・最大値、全体平均値、全体力のベクトル値、全体(平均)分散・分布、変化量発生時間周期、水平及び垂直方向に沿う変化量、自由落下状況での変化量などを把握することができる。
【0058】
そして、制御部272は駆動体200の駆動力による加速度値の変化に伴う第1の変化成分を把握する(S330)。これは球体100に加えられた外力による運動成分ではなく駆動体200から提供される駆動力による運動成分にあたる加速度値及びその変化成分を把握することである。
【0059】
制御部272は、第1の動力供給部230および第2の動力供給部240の回転速度及び回転方向を制御して駆動体200の運動を制御するため、駆動体200による球体100の運動特性、すなわち、如何なる動きをしているかどうかを類推・認知することができる。また、外力が球体100に加えられない環境の下で球体100の運動種類別に駆動体200によって測定される加速度値及びその変化成分は、あらかじめ収集されて登録及び記憶される。それでは、制御部272はあらかじめ記憶された複数の運動種類の中で現在球体100によって行われる運動種類にあたる加速度値及びその変化成分を読み取ることによって、駆動体200から提供される駆動力による運動成分にあたる球体100の加速度値及びその変化成分を把握することができる。ここで、あらかじめ登録及び記憶された加速度値及びその変化成分には、球体100の動きによるアーム部260と球体100との間の離間距離rに起因する成分が含まれている。
【0060】
次に、制御部272は、センサー部271によって測定される加速度値の全ての変化量からステップS330で把握された第1の変化成分を除去して、球体100に加えられる外力による加速度値の変化に伴う第2の変化成分を抽出する。すなわち、球体100に外力を加えることができるオブジェクトが特定のジェスチャーを遂行する時に当該ジェスチャーによって球体100に加えられる外力による加速度値の変化成分のみを抽出することである(S340)。
【0061】
そして、ステップS340で抽出された第2の変化成分、すなわち球体100に加えられる外力による加速度値の変化量と、あらかじめ記憶された複数のジェスチャー別の基準値との比較結果を基に、複数のジェスチャーのいずれか一つのジェスチャーで認識することができる。ここで、複数のジェスチャー別の基準値とは、外力が球体100に加えられる環境の下で外力によるジェスチャー別に駆動体200の加速度値及びその変化成分をあらかじめ収集して登録及び記憶したものをいう。ところが、球体100の移動中のジェスチャーと停止中のジェスチャーの運動成分が類似したパターンを有する場合には、ジェスチャー別の基準値との比較だけでは移動中のジェスチャーなのか、それとも停止中のジェスチャーなのかが分別しにくいことがある。
【0062】
球体100に加えられる外力によるジェスチャーは、タッチ(touch)、ジャブ(jab)、パンチ(punch)、キック(kick)、ドロップ(drop)、リフト(lift)、ジャグリング(juggle)、シェイク(shake)、キャッチ(catch)、バンプ(bump)、バンプリーン(bump−lean)などが挙げられる。バンプは、球体100が障害物にぶつかる運動特性であると定義することができ、バンプリーンは、球体100が障害物にぶつかった後に飛び出されることなく障害物を押し出して前進し続けようとする運動特性であると定義することができる。バンプ及びバンプリーンは壁などのような常に固定された障害物によって発生することもできるが、自ら動くオブジェクトが特定の位置に移動して障害物の役目をすることができるから、外力によるジェスチャーとみなすことができる。このようなジェスチャーの中でジャブ、パンチ、キック、バンプなどは、運動成分が類似のパターンを有するため登録及び記憶済みのジェスチャー別の基準値との比較だけでは移動中であるかそれとも停止中であるかを分別しにくい。
【0063】
したがって、制御部272は第1の動力供給部230及び/または第2の動力供給部240によって駆動体200が移動するように制御するうちには駆動力が関与する球体100の移動中のジェスチャーと判別し、駆動体200が停止するように制御するうちには駆動力が関与しない球体100の停止中のジェスチャーと判別する(S350)。
【0064】
次いで、制御部272は、ステップS340で抽出された第2の変化成分、すなわち球体100に加えられる外力による加速度値の変化量と、あらかじめ記憶された複数のジェスチャー別の基準値との比較結果を基に、複数のジェスチャーのいずれか一つのジェスチャーと認識する。ここで、あらかじめ記憶された複数のジェスチャー別の基準値には球体100の動きによるアーム部260と球体100との間の離間距離rの変化に起因する成分が含まれている。そして、ステップS350で移動中であると判別された場合には複数の移動中のジェスチャーのいずれか一つのジェスチャーであると認識し、ステップS350で停止中であると判別された場合には、複数の停止中のジェスチャーのいずれか一つのジェスチャーであると認識する。
【0065】
例えば、バンプ(bump)とキック(kick)の場合には、ステップS340で抽出された第2の変化成分と複数のジェスチャー別の基準値との比較結果のみに基づいてはジェスチャーを正確に判別しにくい。ここで、第2の変化成分と複数のジェスチャー別の基準値との比較結果によって制御部272がバンプ(bump)とキック(kick)のどちらか一つのジェスチャーと認識した場合を想定する。もし、第1の動力供給部230及び/または第2の動力供給部240に対する停止制御中であれば、制御部272はこの時のジェスチャーをキックであると判別する。しかし、第1の動力供給部230及び/または第2の動力供給部240に対する移動制御中であれば制御部272はステップS340で抽出された第2の変化成分にジャンプ(jump)パターン、空中浮揚パターンなどのような特定パターンが含まれていればキックであると判別し、第2の変化成分に特定パターンが含まれていなければバンプであると判別する(S360)。
【0066】
これまで説明したように、本発明の実施形態による球体移動装置10は、駆動体200が球体100と接触していた接触領域が、運動によって接触しないようになるか、または駆動体200と球体100とが接触していない非接触領域が、運動によって接触できるように、駆動体200と球体100とが互いに疎結合されている。したがって、運動時に球体100と駆動体200とが絶えず接触するように圧縮するカップリング型の球体移動装置と比べるとき、運動特性の多様な変化が発生し、これによって加速度値及びその変化成分を含む運動状態情報が相対的により豊かに測定される。また、運動中に球体100と駆動体200とは疎結合された状態を保持するため、このときに測定された加速度値及びその変化成分を含む運動状態情報は信頼性のある情報と言える。
【0067】
したがって、信頼性を有する豊かな運動状態情報を基盤として球体移動装置のジェスチャーを認識することができるので、多様なジェスチャーを高精度に認識することができる。
【0068】
本発明に添付された各フローチャートの各ステップの組み合わせは、コンピューター・プログラム命令(computer program instruction)によって遂行されることもできる。これらのコンピューター・プログラム命令は汎用コンピューター、特殊用コンピューターまたはその他プログラム可能なデータプロセッシング装備のプロセッサに搭載されることができるので、コンピューターまたはその他プログラム可能なデータプロセッシング装備のプロセッサによって行われるその命令がフローチャートの各ステップで説明された機能を遂行する手段を生成するようになる。これらコンピューター・プログラム命令は、特定の方式で機能を具現するために、コンピューターまたはその他プログラム可能なデータプロセッシング装備向けのコンピューター利用可能またはコンピューター読み取り可能なメモリーに保存されることもできるので、そのコンピューター利用可能またはコンピューター読み取り可能なメモリーに保存された命令は、フローチャートの各ステップで説明された機能を遂行する命令手段を内包する製造品目を生産することも可能である。コンピューター・プログラム命令はコンピューターまたはその他プログラム可能なデータプロセッシング装備上に搭載されることも可能なので、コンピューターまたはその他プログラム可能なデータプロセッシング装備上で一連の動作ステップが行われてコンピューターで実行されるプロセスを生成してコンピューターまたはその他プログラム可能なデータプロセッシング装備を遂行する命令はフローチャートの各ステップで説明された機能を行うためのステップを提供することも可能である。
【0069】
また、各ステップは特定の論理的機能を行うための一つ以上の実行可能な命令を含むモジュール、セグメントまたはコードの一部を示すことができる。また、幾つかの種類の代替実施形態では、各ステップで言及された機能が、その順番がずれて実行されてしまう恐れがあることに留意しなければならない。例えば、相次いで図示されている二つのステップは、実質的に同時に行われることもでき、若しくは偶にはそのステップが当該機能に応じて逆順に行われることもありうる。
【0070】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者なら本発明の本質的な特性から離脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能である。故に、本発明に開示された実施形態は本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、このような実施形態によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、下記特許請求の範囲によって解釈されなければならなく、それと同等な範囲内にあるすべての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されなければならない。