(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、低温で硬化するにもかかわらず優れた耐熱性を有し、且つ、容易に一定の厚みに制御することができるエポキシ樹脂接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、硬化剤として、低温硬化型硬化剤と高温硬化型硬化剤とを含むエポキシ樹脂接着剤が、低温で硬化するにもかかわらず優れた耐熱性を有することを見出すとともに、エポキシ樹脂接着剤に熱可塑性プレゲル化剤及びガラスビーズを配合することにより、容易に一定の厚みに制御することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
すなわち、本発明のエポキシ樹脂接着剤は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)熱可塑性プレゲル化剤、及び、(D)ガラスビーズを含む一液型のエポキシ樹脂接着剤であって、
(A)エポキシ樹脂は(a−1)ビスフェノール型エポキシ樹脂を含み、
(B)硬化剤は(b−1)低温硬化型硬化剤と(b−2)高温硬化型硬化剤とを含むことを特徴とする。
【0006】
本発明のエポキシ樹脂接着剤において、(C)熱可塑性プレゲル化剤の含有量は1〜30重量%であることが好ましい。
【0007】
本発明のエポキシ樹脂接着剤において、(A)エポキシ樹脂は(a−2)グリシジルアミン型エポキシ樹脂をさらに含むことが好ましい。
【0008】
本発明のエポキシ樹脂接着剤は、(b−1)低温硬化型硬化剤として、ポリアミン系化合物を0.5〜20重量%含むことが好ましい。
【0009】
本発明のエポキシ樹脂接着剤は、(b−2)高温硬化型硬化剤として、イミダゾール系化合物を0.5〜20重量%含むことが好ましい。
【0010】
本発明のエポキシ樹脂接着剤において、(D)ガラスビーズは粒子径1〜200μmの球状粒子であることが好ましい。
【0011】
本発明の部材は、本発明のエポキシ樹脂接着剤からなる接着層を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエポキシ樹脂接着剤は、(B)硬化剤として、(b−1)低温硬化型硬化剤と(b−2)高温硬化型硬化剤とを含むため、低温で硬化するにもかかわらず優れた耐熱性を有するとともに、(C)熱可塑性プレゲル化剤及び(D)ガラスビーズを含むため、容易に一定の厚みに制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<<エポキシ樹脂接着剤>>
本発明のエポキシ樹脂接着剤は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)熱可塑性プレゲル化剤、及び、(D)ガラスビーズを含む一液型のエポキシ樹脂接着剤であって、
(A)エポキシ樹脂は(a−1)ビスフェノール型エポキシ樹脂を含み、
(B)硬化剤は(b−1)低温硬化型硬化剤と(b−2)高温硬化型硬化剤とを含むことを特徴とする。
【0014】
<(A)エポキシ樹脂>
(A)エポキシ樹脂(以下、(A)成分ともいう)は、(a−1)ビスフェノール型エポキシ樹脂(以下、(a−1)成分ともいう)を含む。(a−1)成分としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂接着剤において、(a−1)成分の含有量は特に限定されないが、5〜70重量%であることが好ましい。(a−1)成分の含有量が5重量%未満であると、接着層の強度が低下することがあり、70重量%を超えると、耐熱性が不十分となることがある。
【0016】
(A)成分は、耐熱性を高め粘度を低下させる観点から、(a−2)グリシジルアミン型エポキシ樹脂(以下、(a−2)成分ともいう)をさらに含むことが好ましい。(a−2)成分としては、特に限定されないが、例えば、N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3−エポキシプロポキシ)アニリン等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0017】
(A)成分が(a−2)成分をさらに含む場合、その含有量は、特に限定されないが、(a−1)成分100重量部に対して5〜80重量部であることが好ましく、10〜50重量部であることがより好ましい。(a−2)成分の含有量が5重量部未満であると、耐熱性が不十分となることがあり、80重量部を超えると、強度が不十分となることがある。
【0018】
(A)成分は、(a−1)成分、(a−2)成分以外の他のエポキシ樹脂を含んでいても良い。他のエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0019】
<(B)硬化剤>
(B)硬化剤(以下、(B)成分ともいう)は、(b−1)低温硬化型硬化剤(以下、(b−1)成分ともいう)と(b−2)高温硬化型硬化剤(以下、(b−2)成分ともいう)とを含む。
【0020】
本発明において、「低温硬化型硬化剤」とは、(a−1)ビスフェノール型エポキシ樹脂に混合した場合の発熱ピークが140℃以下のものをいい、「高温硬化型硬化剤」とは、(a−1)ビスフェノール型エポキシ樹脂に混合した場合の発熱ピークが150℃以上のものをいう。発熱ピークは、ビスフェノールA型液状樹脂と混合し、示差走査熱量計(メトラートレド社製、DSC822)にて10℃/minの昇温速度で発熱ピーク温度を測定することにより確認することができる。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂接着剤においては、(b−2)成分を(b−1)成分と併せて用いることにより、(b−1)成分の反応熱が加わるため、(b−2)成分を単独で用いた場合と比較してより低い温度で(b−2)成分を硬化させることができる。そのため、本発明のエポキシ樹脂接着剤は、低温で硬化するにもかかわらず優れた耐熱性を有する。
【0022】
(b−1)成分としては、特に限定されず、(a−1)ビスフェノール型エポキシ樹脂に混合した場合の発熱ピークが140℃以下の硬化剤を用いることができるが、反応性及び安定性の観点からは、ポリアミン系化合物を用いることが好ましい。ポリアミン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂接着剤において、(b−1)成分の含有量は、特に限定されないが、0.5〜20重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがより好ましい。(b−1)成分の含有量が0.5重量%未満であると、硬化不良を起こすことがあり、20重量%を超えると、粘度が過度に上昇したり安定性が低下することがある。
【0024】
(b−2)成分としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール系化合物、ヒドラジド化合物等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中では、高温での反応性に優れることから、イミダゾール系化合物が好ましい。
【0025】
(b−2)成分の含有量は、特に限定されないが、全固形分中0.5〜20重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがより好ましい。(b−2)成分の含有量が全固形分中0.5重量%未満であると、反応性が不十分となることがあり、全固形分中20重量%を超えると、耐湿性や強度が不十分となることがある。
【0026】
<(C)熱可塑性プレゲル化剤>
(C)熱可塑性プレゲル化剤(以下、(C)成分ともいう)は、エポキシ樹脂接着剤の流動性を低減するために用いられる。(C)成分としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0027】
(C)成分の平均粒径は、特に限定されないが、(A)成分に対する分散性の観点からは、0.2〜50μmであることが好ましく、0.5〜50μmであることがより好ましく、1〜10μmであることがさらに好ましい。
【0028】
(C)成分の数平均分子量は、特に限定されないが、ゲル化効果の観点からは、10000〜10000000が好ましく、100000〜5000000がより好ましい。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂接着剤において、(C)成分の含有量は、特に限定されないが、1〜30重量%であることが好ましく、5〜20重量%であることがより好ましい。(C)成分の含有量が1重量%未満であると、流動性の低減効果が十分に得られないことがあり、30重量%を超えると、粘度が過度に上昇することがある。
【0030】
<(D)ガラスビーズ>
(D)ガラスビーズ(以下、(D)成分ともいう)は、厚みを制御するためのスペーサーとして用いられる。(D)成分としては、特に限定されないが、例えば、ソーダ石灰ガラスビーズ等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0031】
(D)成分の粒子径は、特に限定されないが、1〜200μmであることが好ましく、10〜150μmであることがより好ましい。(D)成分の粒子径が1μm未満であると、接着層の厚みを制御することが困難となることがあり、200μmを超えると、接着層の応力が大きくなりすぎることがある。
【0032】
(D)成分の形状は、特に限定されないが、例えば、球状粒子、ファイバー状粒子等が挙げられる。これらの中では、粒子径制御が容易であることから、球状粒子が好ましい。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂接着剤において、(D)成分の含有量は、特に限定されないが、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがより好ましい。(D)成分の含有量が0.01重量%未満であると、接着層の厚みを制御することができなくなることがあり、10重量%を超えると、粘度が過度に上昇することがある。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂接着剤は、(A)〜(D)成分に加えて、任意に他の成分を含有していても良い。他の成分としては、特に限定されないが、(E)無機充填剤、(F)エラストマー、カップリング剤、消泡剤等が挙げられる。
【0035】
<(E)無機充填剤>
(E)無機充填剤(以下、(E)成分ともいう)としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ウォラストナイト等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中では、充填性の観点から、シリカ、アルミナ、タルク及び炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂接着剤が(E)成分を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、5〜90重量%であることが好ましく、10〜70重量%であることがより好ましい。(E)成分の含有量が5重量%未満であると、十分な(E)成分の効果が得られないことがあり、90重量%を超えると、粘度が過度に上昇することがある。
【0037】
<(F)エラストマー>
(F)エラストマー(以下、(F)成分ともいう)としては、特に限定されないが、例えば、ポリブタジエン等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0038】
(F)エラストマーの形状は、特に限定されないが、例えば、粒子状、コアシェル粒子状等が挙げられる。これらの中では、分散性及び強度に優れることから、コアシェル粒子状であることが好ましい。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂接着剤が(F)成分を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、1〜30重量%であることが好ましく、5〜20重量%であることがより好ましい。(F)成分の含有量が1重量%未満であると、十分な充填効果が得られないことがあり、30重量%を超えると、粘度が過度に上昇することがある。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂接着剤のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、100〜250℃であることが好ましく、150〜220℃であることがより好ましい。Tgが100℃未満であると、十分な耐熱性が得られないことがあり、250℃を超えると、貯蔵安定性が悪化することがある。
【0041】
<<部材>>
本発明の部材は、本発明のエポキシ樹脂接着剤からなる接着層を備えることを特徴とする。
【0042】
本発明の部材において、接着層の厚みは、特に限定されないが、1〜200μmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましい。接着層の厚みが1μm未満であると、接着不良となることがあり、200μmを超えると、接着層の応力が大きくなりすぎることがある。
【0043】
本発明の部材において、本発明のエポキシ樹脂接着剤からなる接着層により接着される被接着体の材質は、特に限定されないが、例えば、ガラス、金属、プラスチック等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0045】
(使用材料)
・(A)エポキシ樹脂
(a−1)ビスフェノール型エポキシ樹脂
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、JER 828)
(a−2)アミン型エポキシ樹脂
グリシジルアミン樹脂(三菱化学株式会社製、JER 630)
・(B)硬化剤
(b−1)低温硬化型硬化剤
変性ポリアミン(味の素ファインテクノ株式会社製、アミキュアPN−23、(a−1)ビスフェノール型エポキシ樹脂に混合した場合の発熱ピーク120℃)
(b−2)高温硬化型硬化剤
イミダゾール誘導体(四国化成工業株式会社製、2MZ−A、(a−1)ビスフェノール型エポキシ樹脂に混合した場合の発熱ピーク155℃)
・(C)熱可塑性プレゲル化剤
メタクリル樹脂(三菱レイヨン株式会社製、JF−003)
・(D)ガラスビーズ
ガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ株式会社製、GB−J、粒子径75〜106μm)
【0046】
(実施例1、比較例1〜5)
各成分を下記表1に示す重量比で混合することにより、エポキシ樹脂接着剤を得た。得られたエポキシ樹脂接着剤について、下記の方法により、ガラス転移温度(Tg)、流動性及び接着層の厚みを評価した。結果を表1に示す。
【0047】
(ガラス転移温度(Tg))
各実施例及び比較例で得られたエポキシ樹脂接着剤を金型に注型し、120℃で1時間硬化させることにより、サイズが10×2×60mmの試験片を作製した。得られた試験片を動的粘弾性測定装置(DMA)(株式会社日立ハイテクサイエンス製、DMA6100)にチャック間距離が20mmとなるようにセットし、昇温速度2℃/min、周波数1Hzの条件下、tanδのピークを測定し、ガラス転移温度とした。
【0048】
(流動性)
各実施例及び比較例で得られたエポキシ樹脂接着剤30mgをスライドガラス上に乗せ、120℃のオーブン中に角度が45°となるよう設置した。エポキシ樹脂接着剤が硬化した後、硬化物の全長を測定した。
【0049】
(接着層の厚み)
PETフィルム上に、各実施例及び比較例で得られたエポキシ樹脂接着剤を手塗りで塗布し、さらにその上にPETフィルムを積層することにより積層体を得た。得られた積層体をさらにスライドガラス2枚の間に挟み、両端をクリップで固定した後、140℃で30分間加熱することによりエポキシ樹脂接着剤を硬化させた。その後、スライドガラス及びPETフィルムを取り外し、硬化物の厚みをマイクロメーター(株式会社ミツトヨ製、MDC−MX)を用いて測定した。
【0050】
【表1】