特許第6690825号(P6690825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6690825
(24)【登録日】2020年4月13日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】LED光源装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20200421BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20200421BHJP
   H01L 33/54 20100101ALI20200421BHJP
【FI】
   H01L33/50
   H01L33/62
   H01L33/54
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-94430(P2016-94430)
(22)【出願日】2016年5月10日
(65)【公開番号】特開2017-204522(P2017-204522A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2019年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153236
【氏名又は名称】株式会社光波
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】新井 祐輔
【審査官】 村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/056316(WO,A1)
【文献】 特開2015−185685(JP,A)
【文献】 特開2002−171000(JP,A)
【文献】 特開2016−072379(JP,A)
【文献】 特開2016−069576(JP,A)
【文献】 特開2012−054164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に実装された複数のLED素子と、
前記複数のLED素子を封止する表面が平坦な共通の封止部材であって、透光性を有する樹脂、及び前記樹脂に対する質量のが1.4以上2.0以下となるように含有された蛍光体を含む封止部材と、を備え
前記封止部材は、前記樹脂に対し分散材が混合されたLED光源装置。
【請求項2】
前記LED素子の実装密度は、実装面積に対する発光面積の合計が50%以上である、
請求項1に記載のLED光源装置。
【請求項3】
前記基板は、絶縁性を有する基材の第1の主面に配線パターンが形成され、前記第1の主面と反対側の第2の主面に金属層が形成された絶縁基板であり
前記複数のLED素子は、前記絶縁基板の前記第1の主面に前記配線パターンに接続されてフリップチップ実装された、
請求項1又は2に記載のLED光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED)素子を高密度実装した高輝度高出力のLED光源装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
このLED光源装置は、放熱機能を有する金属板と、金属板上に配置され、金属板を露出させる開口を有し、上面に配線パターンが形成された絶縁基板と、絶縁基板上に配線パターンに接続されて2層に実装され、層ごとに蛍光体含有樹脂で覆われた複数のLED素子と、複数のLED素子を囲むように絶縁基板上に設けられた円形の封止枠と、封止枠の内側に充填された蛍光体入りの透明樹脂からなる封止材とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−70242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の特許文献1に記載されたLED光源装置は、蛍光体含有樹脂を構成する樹脂は断熱材の機能を有することから、封止樹脂中に分散されている蛍光体で発生する熱は放熱されにくく、封止樹脂や蛍光体の温度上昇を招き、LED素子そのものからの発熱と複合されることで、光源の効率の低下や寿命が短くなるなどの悪影響を与える。特にLEDを多数実装した場合には発熱の影響がより顕著となり、LED素子を実装する数が制限されるおそれがある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、放熱性に優れ、LED素子の高密度実装が可能なLED光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、基板と、前記基板に実装された複数のLED素子と、前記複数のLED素子を封止する表面が平坦な共通の封止部材であって、透光性を有する樹脂、及び前記樹脂に対する質量のが1.4以上2.0以下となるように含有された蛍光体を含む封止部材と、を備え、前記封止部材は、前記樹脂に対し分散材が混合されたLED光源装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、放熱性に優れ、LED素子の高密度実装が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るLED光源装置の概略の構成を模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示すLED光源装置の平面図である。
図3図3は、図2に示す枠部材の変形例を示すLED光源装置の平面図である。
図4図4は、本発明の実施例に係る蛍光体含有樹脂層の表面温度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態及び実施例について図面を参照して説明する。なお、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係るLED光源装置の概略の構成を模式的に示す断面図である。図2は、図1に示すLED光源装置の平面図である。
【0012】
このLED光源装置1は、図1に示すように、金属ブロック2と、金属ブロック2の上面2aにはんだ層3を介して設けられた絶縁基板4と、絶縁基板4に高密度実装された複数のLED素子5と、複数のLED素子5全体を囲むように絶縁基板4上に形成された枠部材6と、枠部材6の内側に複数のLED素子5を覆うように形成された蛍光体含有樹脂層7と、蛍光体含有樹脂層7の表面を封止する封止樹脂8とを備える。ここで、金属ブロック2は、放熱部材の一例である。はんだ層3は、金属接合層の一例である。蛍光体含有樹脂層7及び封止樹脂8は、封止材の一例である。
【0013】
また、LED光源装置1は、金属ブロック2の上面2aにスペーサ9を介して設けられた給電基板10と、給電基板10に接続された一対の給電用ハーネス11A、11Bとを備える。
【0014】
金属ブロック2は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属から形成されている。金属ブロック2は、絶縁基板4の表面積及び体積と同等かそれよりも大きい表面積及び体積を有する。金属ブロック2は、金属ブロック2を固定するための貫通孔又はネジ穴が形成されているのが好ましい。また、金属ブロック2は、腐食防止のため、表面処理されているのが好ましい。
【0015】
なお、放熱効果を高めるため、金属ブロック2の下面2bに、多数のフィンを有する放熱器を取り付けてもよい。放熱器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等の金属から形成されている。また、放熱器は、ヒートパイプを備えたものでもよい。また、放熱器は、ファンや水冷等の強制冷却機構を備えたものでもよい。
【0016】
絶縁基板4は、絶縁性を有する基材40と、基材40の上面の第1の主面40aに形成された配線パターン41と、基材40の下面の第2の主面40bに形成された金属層42とを備える。配線パターン41は、例えば銅箔をエッチングして形成される。金属層42は、例えば銅箔を用いることができる。配線パターン41は、一端がLED素子5の電極に接続され、他端が給電基板10を介して給電用ハーネス11A、11Bのコネクタに接続される。基材40は、放熱性及び耐熱性の観点より、例えば、熱伝導率が大きい窒化アルミニウム等のセラミック基板を用いるのが好ましい。
【0017】
LED素子5は、一対の電極を下面に有するフリップチップタイプのものを用いることができる。LED素子5は、例えば、青色光を出射する青色LED素子を用いることができる。LED素子5は、所定の実装密度で絶縁基板4上に実装されている。LED素子5の実装密度は、実装面積に対する発光面積の合計の比率で定義される。実装密度は、50%以上が好ましい。実装面積は、枠部材6の内側の面積をいう。発光面積は、LED素子5の平面視の面積である。
【0018】
枠部材6は、例えば正方形を有し、例えばシリコーン樹脂から形成される。なお、枠部材6は、正方形に限られず、長方形でも円形等の他の形状でもよい。枠部材6は、正方形や長方形の方がLED素子5の実装密度を高める上で好ましい。
【0019】
蛍光体含有樹脂層7は、樹脂70と粒状の蛍光体71とを所定の比率で混合して形成されたものである。樹脂70は、LED素子5の発光波長に対して透過性を有し、かつ、蛍光体71を保持できる材料から形成される。このような樹脂材料として、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の透明樹脂を用いることができる。樹脂70に対し蛍光体71の他にシリカ等からなる分散材を混合して用いてもよい。蛍光体含有樹脂層7の厚みは、例えば、30〜150μmである。樹脂70に対する蛍光体71の質量の割合が増えると、熱が樹脂70を介して伝わることで生じている熱抵抗を低減できるため好ましい。一方、樹脂70に対する蛍光体71の質量の割合が大きくなり過ぎると、LED素子5上の蛍光体含有樹脂層7が薄くなり製造の際、塗布が困難になる。したがって、樹脂70に対する蛍光体71の質量の割合は、0.8以上2.0以下が好ましく、1.1以上1.4以下がより好ましい。
【0020】
LED素子5の出射光の色を青色とし、蛍光体として青色の光を黄色の光に変換するものを用いた場合、LED素子5から出射された青色光の一部は蛍光体によって黄色光に変換され、LED素子5から出射され、蛍光体によって黄色光に変換されなかった青色光と黄色光とが合成されてLED光源装置1から白色光が出射される。
【0021】
封止材8は、LED素子5の発光波長に対して透過性を有する材料から形成される。このような樹脂材料として、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の透明樹脂を用いることができる。なお、封止材8は、LED素子5から出射された光を拡散する拡散材を含有してもよい。
【0022】
給電基板10は、図2に示すように、8角形を有するが、この形状に限定されない。給電基板10は、枠部材6が内側に入るように、枠部材6の外形よりもやや大きい開口10aを有する。給電基板10の下面に配線パターン(図示せず)が形成されている。給電基板4の配線パターンの一端は、絶縁基板4の配線パターン41に電気的に接続され、他端は、給電用ハーネス11A、11Bのコネクタ111の端子ピンが接続されるピン孔10bに電気的に接続される。
【0023】
給電用ハーネス11A、11Bは、電線110と、コネクタ111とを備える。コネクタ111は、複数の図示しない端子ピンが下方向に露出している。コネクタ111は、端子ピンを給電基板10に形成された複数のピン孔10bに挿入することにより給電基板10に形成された配線パターン、及び絶縁基板4の配線パターン41を介してLED素子5に電気的に接続される。
【0024】
(実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、以下の作用、効果を奏する。
(a)蛍光体含有樹脂層7に含有される蛍光体71の含有量を所定の値以上とすることにより蛍光体含有樹脂層7の熱抵抗が低減されることで放熱性能が高くなり、放熱され易くなるため、放熱性に優れたLED光源装置1を提供することができる。
【0025】
(枠部材の変形例)
図3は、図2に示す枠部材6の変形例を示すLED光源装置の平面図である。図3に示すように、枠部材16は円形でもよい。
【実施例1】
【0026】
(蛍光体含有樹脂層の表面温度)
図2に示す構成において、樹脂70に対する蛍光体71の割合を変え、異なる質量比(配合比)毎に蛍光体含有樹脂層7の表面温度を赤外線サーモグラフィにて測定した結果を表1及び図4に示す。表1では、樹脂71の質量を100としたときの蛍光体71の質量を示している。LED素子5の数を121個、全LED素子5への投入電力を190Wとした。
【0027】
【表1】
表1及び図4から樹脂70に対する蛍光体71の質量の割合(配合比)を大きくすることにより蛍光体含有樹脂層7の表面温度が小さくなることが分かる。配合比が0.7から1.4まで蛍光体含有樹脂層7の表面温度が急激に低下していることから、配合比は0.8以上2.0以下が好ましく、1.1以上1.4以下がより好ましい。
【0028】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の要旨を変更しない範囲内で種々に変形可能である。上記実施の形態では、複数のLED素子5を共通の蛍光体含有樹脂層7で封止したが、LED素子5ごとに個別に蛍光体含有樹脂層で封止してもよい。
【0029】
また、本発明の要旨を変更しない範囲内で、上記実施の形態の構成要素の一部を省くことが可能である。例えば、封止材8を省いてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…LED光源装置、2…金属ブロック、2a…上面、2b…下面、
3…はんだ層、3a〜3c…ボイド、4…絶縁基板、5…LED素子、
6…枠部材、7…蛍光体含有樹脂層、8…封止樹脂、
9…スペーサ、10…給電基板、10a…開口、10b…ピン孔、
11A、11B…給電用ハーネス、16…枠部材、40…基材、40a…第1の主面、
40b…第2の主面、41…配線パターン、42…金属層、
70…樹脂、71…蛍光体、110…電線、111…コネクタ
図1
図2
図3
図4