(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る作業機の油圧システム及びこの油圧システムを備えた作業機の好適な実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
まず、作業機の全体の構成から説明する。
本発明に係る作業機1は、
図17及び
図18に示すように、機体フレーム2と、この機体フレーム2に装着した作業装置3と、機体フレーム2を支持する走行装置4とを備えている。尚、
図17及び
図18では、作業機の一例としてトラックローダを示しているが、本発明に係る作業機はトラックローダに限定されず、例えば、トラクタ、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ、バックホー等であってもよい。尚、本発明において、作業機の運転席に着座した運転者の前側(
図17の左側)を前方、運転者の後側(
図1
7の右側)を後方、運転者の左側(
図17の手前側)を左方、運転者の右側(
図17の奥側)を右方として説明する。
【0021】
機体フレーム2の上部であって前部には、キャビン5が搭載されている。キャビン5の後部は、機体フレーム2の支持ブラケット11に支持軸12回りに揺動自在に支持されている。キャビン5の前部は、機体フレーム2の前部に載置可能となっている。
キャビン5内には運転席13が設けられている。運転席13の一側(例えば、左側)には、走行装置4を操作するための走行用操作装置14が配置されている。
【0022】
走行装置4は、クローラ式走行装置により構成されている。走行装置4は、機体フレーム2の左の下方及び機体フレーム2の右の下方に設けられている。走行装置4は、油圧駆動で作動する第1走行部21Lと、第2走行部21Rとを有し、第1走行部21L及び第2走行部21Rによって走行可能である。
作業装置3は、ブーム22Lとブーム22Rからなる一対のブーム22と、該ブーム22の先端に装着したバケット23(作業具)とを備える。ブーム22Lは、機体フレーム2の左に配置されている。ブーム22Rは、機体フレーム2の右に配置されている。ブーム22Lとブーム22Rとは、連結体によって相互に連結されている。ブーム22L及びブーム22Rは、第1リフトリンク24及び第2リフトリンク25に支持されている。ブーム22L及びブーム22Rの基部側と機体フレーム2の後下部との間には、複動式の圧シリンダからなるリフトシリンダ26が設けられている。リフトシリンダ26を同時に伸縮させることによりブーム22L及びブーム22Rが上下に揺動する。ブーム22L及びブーム22Rの先端側には、それぞれ装着ブラケット27が横軸回りに回動自在に枢支され、左及び右に設けられた装着ブラケット27にバケット23の背面側が取り付けられている。
【0023】
また、装着ブラケット27とブーム22L及びブーム22Rの先端側中途部との間には、複動式の油圧シリンダからなるチルトシリンダ28が介装されている。チルトシリンダ28の伸縮によってバケット23が揺動(スクイ・ダンプ動作)する。
バケット23は、装着ブラケット27に対して着脱自在とされている。バケット23を取り外して装着ブラケット27に各種のアタッチメント(後述する油圧アクチュエータを有する油圧駆動式の作業具)を取り付けることで、掘削以外の各種の作業(又は他の掘削作業)を行えるように構成されている。
【0024】
機体フレーム2の底壁6上の後側にはエンジン29が設けられ、機体フレーム2の底壁6上の前側には燃料タンク30と作動油タンク31とが設けられている。
次に、本発明に係る作業機の油圧システムについて説明する。
図1は、走行系の油圧システムの全体図を示している。
図2は、作業系の油圧システムの全体図を示している。
【0025】
まず、走行系の油圧システムについて説明する。
図1及び
図2に示すように、油圧システム(油圧回路)は、第1ポンプP1と、第2ポンプP2とを有している。第1ポンプP1及び第2ポンプP2は、エンジン29の動力によって駆動して作動油を吐出する油圧ポンプであって、例えば、定容量型のギヤポンプによって構成されている。
【0026】
第1ポンプP1(メインポンプ)は、リフトシリンダ26、チルトシリンダ28又はブーム22の先端側に取り付けられるアタッチメントの油圧アクチュエータを駆動するために使用される。第2ポンプP2(パイロットポンプ、チャージポンプ)は、主として制御信号(パイロット圧)の供給用に使用される。以下、説明の便宜上、第2油圧ポンプP2から吐出した作動油や制御信号用の作動油のことをパイロット油、パイロット油の圧力のことをパイロット圧ということがある。
【0027】
図1に示すように、油圧システム(油圧回路)は、第1駆動回路32Aと、第2の駆動回路32Bとを備えている。第1駆動回路32Aは、左に設けられた第1走行部21Lを駆動する回路であって、第2駆動回路32Bは、右に設けられた第2走行部21Rを駆動する回路である。
第1駆動回路32Aは、HSTポンプ(走行用の油圧ポンプ)66を備えている。HS
Tポンプ66は、一対の変速用油路100h,100iによって対応する第1走行部21L,21RのHSTモータ57に接続されている。なお、第2駆動回路32Bは、第1駆動回路32Aと同じ構造であるため説明を省略する。
【0028】
HSTポンプ66は、エンジン29の動力によって駆動される斜板形可変容量アキシャルポンプであると共にパイロット圧で斜板の角度が変更されるパイロット方式の油圧ポンプ(斜板形可変容量油圧ポンプ)である。具体的には、HSTポンプ66は、パイロット圧が作用する前進用受圧部66aと後進用受圧部66bとを備えている。
受圧部66a,66bに作用するパイロット圧によって斜板の角度が変更される。斜版の角度が変更すると、作動油の吐出方向や吐出量が変わり、これによって第1走行部21L,21Rの回転出力を変更する。
【0029】
HSTポンプ66の回転数が増加すると、該HSTポンプ66の吐出量が上がり、走行速度が増加する。HSTポンプ66の回転数、即ち、該HSTポンプ66の吐出量は、エンジン29の出力で変化する。作業機1は、アクセル操作部材(アクセルペダル又はアクセルレバー)53を有している。アクセル操作部材53の操作量が0である場合は、エンジン29の回転数は、アイドリングの回転数(例えば、1150rpm)となる。また、アクセル操作部材53を最大に操作した場合には、エンジン29の回転数は、マックス回転数(例えば、2480rpm)となる。
【0030】
エンジン回転数の制御は、例えば、コモンレール式の電子制御燃料供給装置SUによって行われる。電子制御燃料供給装置SUは、燃料を蓄える筒状の管からなるコモンレールと、燃料タンク30内の燃料を高圧にしてコモンレールに送るサプライポンプと、コモンレールに蓄えた高圧の燃料をエンジン29の気筒に噴射するインジェクタと、このインジェクタの燃料噴射量をコントロールするコントローラECUとを備えている。
【0031】
コントローラECUには、アクセル操作部材53の操作量を検出するアクセルセンサASとエンジン29の実際の回転数(実エンジン回転数)を検出する回転センサRSとが伝送路を介して接続されていて、該コントローラECUにアクセルセンサAS及び回転センサRSの検出信号が入力される。
そして、このアクセルセンサAS及び回転センサRSの検出信号に基づいて、エンジン29がアクセル操作部材53の操作量に応じた(アクセル操作部材53によって決定される)回転数(目標エンジン回転数)となるように、コントローラECUによってインジェクタの燃料噴射量が制御される。
【0032】
さて、
図1に示すように、第2ポンプP2の吐出ポートには、該第2ポンプP2から吐出される吐出油(パイロット油)を流通させる吐出油路100aが接続されている。
吐出油路100aからは、第1供給路100b、第2供給路100cが分岐している。第2供給路100cには、走行操作装置14のポンプポート50が接続され、第2ポンプP2の吐出油であるパイロット油は、第2供給路100cを通って走行操作装置14に供給される。
【0033】
この走行操作装置14は、前進用のリモコン弁36と、後進用のリモコン弁37と、右旋回用のリモコン弁38と、左旋回用のリモコン弁39と、走行レバー40と、第1〜4シャトル弁41,42,43,44とを有する。各リモコン弁36、37、38、39は、共通、即ち、1本の走行レバー40によって操作される。リモコン弁36、37、38、39は、走行レバー40(操作部材)の操作に応じて作動油の圧力を変化させ且つ変化後の作動油を油圧制御部等に供給する。
【0034】
走行レバー40は、中立位置から、前後、前後に直交する幅方向、斜め方向に傾動可能である。走行レバー40を傾動することにより、走行操作装置14の各リモコン弁36、37、38、39が操作される。そうすると、走行レバー40の中立位置からの操作量に比例したパイロット圧がリモコン弁36、37,38,39の二次側ポートから出力される。
【0035】
走行レバー40を前側(
図1では矢示A1方向)に傾動させると、前進用リモコン弁36が操作されて該リモコン弁36からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1シャトル弁41から第1流路46を介して第1駆動回路32Aの前進用受圧部66a
に作用すると共に第2シャトル弁42から第2流路47を介して第2駆動回路32Bの前進用受圧部66aに作用する。これにより、第1走行部21L及び第2走行部21Rの出力軸57aが走行レバー40の傾動量に比例した速度で正転(前進回転)してトラックローダ1が前方に直進する。
【0036】
また、走行レバー40を後側(
図1では矢示A2方向)に傾動させると、後進用リモコン弁37が操作されて該リモコン弁37からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第3シャトル弁43から第3流路48を介して第1駆動回路32Aの後進用受圧部66bに作用すると共に第4シャトル弁44から第4流路49を介して第2駆動回路32Bの後進用受圧部66bに作用する。これにより、第1走行部21L及び第2走行部21Rの出力軸57aが走行レバー40の傾動量に比例した速度で逆転(後進回転)してトラックローダ1が後方に直進する。
【0037】
また、走行レバー40を右側(
図1では矢示A3方向)に傾動させると、右旋回用リモコン弁38が操作されて該リモコン弁38からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は第1シャトル弁41から第1流路46を介して第1駆動回路32Aの前進用受圧部66aに作用すると共に第4シャトル弁44から第4流路49を介して第2駆動回路32Bの後進用受圧部66bに作用する。これにより、第1走行部21Lの出力軸57aが正転し且つ第2走行部21Rの出力軸57aが逆転してトラックローダ1が右側に旋回する。
【0038】
また、走行レバー40を左側(
図1では矢示A4方向)に傾動させると、左旋回用リモコン弁39が操作されて該リモコン弁39からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は第2シャトル弁42から第2流路47を介して第2駆動回路32Bの前進用受圧部66aに作用すると共に第3シャトル弁43から第3流路48を介して第1駆動回路32Aの後進用受圧部66bに作用する。これにより第2走行部21Rの出力軸57aが正転し且つ第1走行部21Lの出力軸57aが逆転してトラックローダ1が左側に旋回する。
【0039】
また、走行レバー40を斜め方向に傾動させると、各第1駆動回路32A,32Bの前進用受圧部66aと後進用受圧部66bとに作用するパイロット圧の差圧によって、第1走行部21L及び第2走行部21Rの出力軸57aの回転方向及び回転速度が決定され、トラックローダ1が前進又は後進しながら右旋回又は左旋回する。
すなわち、走行レバー40を左斜め前側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度でトラックローダ1が前進しながら左旋回し、走行レバー40を右斜め前側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度でトラックローダ1が前進しながら右旋回し、走行レバー40を左斜め後側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度でトラックローダ1が後進しながら左旋回し、走行レバー40を右斜め後側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度でトラックローダ1が後進しながら右旋回する。
【0040】
第1走行部21L及び第2走行部21Rは、走行モータ57(走行用の油圧モータ)と、斜板切換シリンダ58と、ブレーキ機構59と、フラッシング弁60と、フラッシング用リリーフ弁61とを有する。
走行モータ57は、HSTモータであって、パイロット油(作動油)によって作動する油圧機器である。走行モータ57は、例えば、高低2速に変速可能な斜板形可変容量アキシャルモータである。
【0041】
さて、
図1に示す油圧回路には、油圧機器を制御する複数の油圧制御部が設けられている。油圧機器は、作動油によって作動する機器であって、走行系においては、走行モータ57等である。第1実施形態では、走行モータを制御する2つの油圧制御部が設けられ、1つは、第1油圧切換弁63であり、もう一つは、ブレーキ機構59dである。したがって、複数の油圧制御部は、第1油圧切換弁63と、ブレーキ機構59とを含んでいる。
【0042】
第1油圧切換弁63は、パイロット油(作動油)の圧力に応じて作動状態が変化することで走行モータ57の速度を制御する。即ち、第1油圧切換弁63は、走行モータ57の速度切換を行う弁である。
走行モータ57の斜板に連結する斜板切換シリンダ58が設けられ、作動状態が変わる
ことによって、斜板切換シリンダ58を伸縮させて、走行モータ57の斜板の角度を切り換える。これにより、走行モータ57は、1速又は2速に変速する。
【0043】
さらに詳しくは、第1油圧切換弁63は、パイロット油の圧力(パイロット圧)に応じて、第1位置63aと第2位置63bとに移動可能なスプールを有する二位置切換弁である。第1油圧切換弁63のスプールは、パイロット圧が所定の圧力に達すると第2位置63bに移動し、作動状態が変わる。また、第1油圧切換弁63のスプールは、パイロット圧が所定圧未満になるとバネにより第1位置63aに戻され、作動状態が変わる。第1油圧切換弁63のスプールが、第1位置63aに移動した作動状態のときには、斜板切換シリンダ58からパイロット油が抜けて収縮し、走行モータ57が1速状態となる。第1油圧切換弁63のスプールが、第2位置63bに移動した作動状態のときは、斜板切換シリンダ58にパイロット油が供給されて伸長し、走行モータ57が2速状態となる。
【0044】
さて、ブレーキ機構59も、パイロット油(作動油)の圧力に応じて作動状態が変化することで走行モータ57の制動を制御する。即ち、ブレーキ機構59は、走行モータ57の制動制御を行うものである。
このブレーキ機構59は、第2ポンプP2から吐出されたパイロット油(作動油)によって、走行モータ57を制動する作動状態となったり、制動を解除する作動状態に変化する。例えば、ブレーキ機構59は、走行モータ57の出力軸57aに設けられた第1ディスクと、移動可能な第2ディスクと、第2ディスクが第1ディスクに接触する側へ付勢するバネとを備えている。また、ブレーキ機構59は、第1ディスク、第2ディスク及びバネを収容する収容部(収容ケース)59aを備えている。この収容部59aであって、第2ディスクが納められている部分には、第3供給路100dが接続されている。収容部59aの格納部に、パイロット油を供給して格納部内を所定の圧力にすると、第2ディスクが制動とは反対側(バネの付勢方向とは反対側)に移動して、ブレーキ機構59による制動を解除することができる。一方、収容部59aの格納部において、パイロット油の圧力が所定以下になると、第2ディスクが第1ディスクに接触する側へ移動し、走行モータ57の制動をすることができる。第2走行部21Rは、第1走行部21Lと同じ構造であるため、詳しい図示及び説明を省略する。
【0045】
図1に示すように、油圧回路は、比例弁45を備えている。比例弁45は、吐出油路100aに接続されて、第2ポンプP2から吐出されたパイロット油(作動油)が通過可能となっている。また、比例弁45は、第3供給路100dを介して2つの油圧制御部(第1油圧切換弁63及びブレーキ機構59)に接続されている。この比例弁45は、第1油圧切換弁63及びブレーキ機構59に供給するパイロット油(作動油)の圧力を設定可能な弁であって、励磁によって弁の開度が変更可能な電磁比例弁である。
【0046】
比例弁45の開度を変更すると、吐出油路100aから第3供給路100dに流れるパイロット油の流量が変わる。即ち、比例弁45の開度を変更すると、第1油圧切換弁63及びブレーキ機構59に作用するパイロット圧を変更することができる。
図3は、第1油圧切換弁63の作動状態及びブレーキ機構59の作動状態と、パイロット油の圧力との関係を示した図である。
【0047】
例えば、
図3に示すように、比例弁45を閉鎖した状態(全閉した状態)では、第1油圧切換弁63に作用するパイロット圧は略零である。そのため、第1油圧切換弁63は、第1位置63aとなり、走行モータ57は1速である。また、比例弁45を全閉した状態では、ブレーキ機構59の格納部に作用するパイロット圧は略零である。そのため、ブレーキ機構59のバネが第2ディスクを第1ディスクに接触する方向に移動させ、走行モータ57は制動した状態である(制動状態)。ここで、比例弁45の開度を大きくしてブレーキ機構59の格納部に作用するパイロット圧を第1圧力以上(制動解除圧以上)にすると、第2ディスクがブレーキ機構59のバネの付勢力に抗して動き、走行モータ57の制動が解除される。つまり、比例弁45は、第1油圧切換弁63に対しては第1位置63aに保持しつつ、ブレーキ機構59に対しては走行モータ57の制動を解除する圧力に設定する。つまり、油圧回路では、第1油圧切換弁63を第1位置63aに保持した状態で、ブレーキ機構59による走行モータ57の制動を解除する。
【0048】
また、比例弁45の開度をさらに大きくして第1油圧切換弁63に作用するパイロット圧を第2圧力以上(2速切換圧以上)にすると、当該第1油圧切換弁63は、第2位置63bに切り換わり、走行モータ57は2速になる。言い換えれば、第1油圧切換弁63に作用するパイロット圧を切換圧以上にすると、当該第1油圧切換弁63は、第2位置63bに切り換わる。
【0049】
なお、
図1に示すように、比例弁45における開度の制御は、CPU等から構成された制御装置70で行う。制御装置70には、操作部材71が接続されている。操作部材71は、速度の切換の操作、即ち、1速或いは2速を設定するスイッチであって、例えば、揺動自在なシーソ型スイッチ、スライド自在なスライド型スイッチ、或いは、押圧自在なプッシュ型スイッチで構成されている。シーソ型スイッチにあっては、一方側に揺動することにより1速、他方側に揺動することにより2速に設定することができる。スライド型スイッチにあっては、一方側にスライドすることにより1速、他方側にスライドすることにより2速に設定することができる。プッシュ型スイッチにあっては、押圧を行う毎に1速、2速の順に切り換わる。
【0050】
制御装置70は、エンジン29が駆動している状況下で、操作部材71によって1速に設定されている場合、比例弁45のソレノイドに制御信号を出力する。この制御信号によって、比例弁45の開度を調整し、第1油圧切換弁63及びブレーキ機構59に作用するパイロット圧を制動解除圧以上、2速切換圧未満にする。また、制御装置70は、エンジン29が駆動している状況下で、操作部材71によって2速に設定されている場合、比例弁45のソレノイドに制御信号を出力する。この制御信号によって、比例弁45を調整し、第1油圧切換弁63及びブレーキ機構59に作用するパイロット圧を2速切換圧以上にする。
【0051】
以上、第1実施形態では、第1油圧切換弁63及びブレーキ機構59に比例弁45を接続している。そのうえで、パイロット圧に関して、第1油圧切換弁63が第1位置63aから第2位置63bに切り換わる圧力(第2圧力)よりも、ブレーキ機構59が制動状態から制動解除状態に切り換わる圧力(第1圧力)を低く設定しているため、制動を解除した状態で走行モータ57を1速にすることができる。
【0052】
次に、作業系の油圧システムについて説明する。
図2に示すように、第1油圧ポンプP1には、第4供給路100fが設けられている。この第4供給路100fには、複数の制御弁80が接続されている。複数の制御弁80は、ブーム制御弁80A、バケット制御弁80B、予備制御弁80Cであって、油圧制御部と言える。ブーム制御弁80Aは、リフトシリンダ26を制御する弁であって、バケット制御弁80Bは、チルトシリンダ28を制御する弁であって、予備制御弁80Cは、予備アタッチメントの油圧アクチュエータを制御する弁である。なお、作業系の油圧システムでは、リフトシリンダ26、チルトシリンダ28、予備アタッチメントの油圧アクチュエータ等が油圧機器である。
【0053】
ブーム22、バケット23の操作は、運転席13の周囲に設けれた操作部材81によって行うことができる。操作部材81は、中立位置から、前後、前後と直交する幅方向及び斜め方向に傾動可能に支持されている。操作部材81を傾動操作することにより、操作部材81の下部に設けられた各リモコン弁82を操作することができる。
操作部材81を前側に傾動させると、下降用リモコン弁82Aが操作されて当該下降用リモコン弁82Aからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、ブーム制御弁80Aの受圧部に作用し、当該ブーム制御弁80Aに入った作動油をリフトシリンダ26のロッド側に供給することにより、ブーム22は下降する。
【0054】
操作部材81を後側に傾動させると、上昇用リモコン弁82Bが操作されて当該上昇用リモコン弁82Bからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、ブーム制御弁80Aの受圧部に作用し、当該ブーム制御弁80Aに入った作動油をリフトシリンダ26のボトム側に供給することにより、ブーム22は上昇する。
即ち、ブーム制御弁80Aは、操作部材81の操作によって設定された作動油の圧力(下降用リモコン弁82Aによって設定されたパイロット圧、上昇用リモコン弁82Bによ
って設定されたパイロット圧)に応じて、リフトシリンダ26に流れる作動油の流量を制御可能である。
【0055】
操作部材81を右側に傾動させると、バケットダンプ用のリモコン弁82Cが操作され、バケット制御弁80Bの受圧部にパイロット油が作用する。その結果、バケット制御弁80Bは、チルトシリンダ28を伸長させる方向に作動し、操作部材81の傾動量に比例した速度でバケット23がダンプ動作する。
操作部材81を左側に傾動させると、バケットスクイ用のリモコン弁82Dが操作され、バケット制御弁80Bの受圧部にパイロット油が作用する。その結果、バケット制御弁80Bは、チルトシリンダ28を縮小させる方向に作動し、操作部材81の傾動量に比例した速度でバケット23がスクイ動作する。
【0056】
即ち、バケット制御弁80Bは、操作部材81の操作によって設定された作動油の圧力(リモコン弁82Cによって設定されたパイロット圧、リモコン弁82Dによって設定されたパイロット圧)に応じて、チルトシリンダ28に流れる作動油の流量を制御可能である。つまり、リモコン弁82A、82B、82C、82Dは、操作部材81の操作に応じて作動油の圧力を変化させ且つ変化後の作動油を、ブーム制御弁80A、バケット制御弁80B、予備制御弁80Cなどの制御弁に供給する。
【0057】
予備アタッチメントの操作は、運転席13の周囲に設けれたスイッチ83によって行うことができる。スイッチ83は、例えば、揺動自在なシーソ型スイッチ、スライド自在なスライド型スイッチ、或いは、押圧自在なプッシュ型スイッチで構成されている。スイッチの操作は、制御装置70に入力される。電磁弁等から構成された第1電磁弁85A及び第2電磁弁85Bにスイッチ24の操作量に応じた指令を出力する。第1電磁弁85A及び第2電磁弁85Bは、スイッチ83の操作量に応じて開く。その結果、第1電磁弁85A及び第2電磁弁85Bに接続された予備制御弁80Cにパイロット油が供給され、予備アタッチメントの予備アクチュエータは、予備制御弁80Cから供給された作動油にって作動する。
<第2実施形態>
図4及び
図5は、本発明に係る油圧システムの第2実施形態を示している。第2実施形態は、走行モータ及び第1油圧切換弁を変更した変形例である。第2実施形態で示す走行モータ及び第2油圧切換弁は、全ての実施形態に適用可能である。なお、第1実施形態と同様の構成は説明を省略する。
【0058】
図4に示すように、第2実施形態では、走行モータ157として、カムモータ(ラジアルピストンモータ)を採用している。この走行モータ157では、稼動時における容量(モータ容量)の大きさを可変することによって、出力軸の回転やトルクを変更する。詳しくは、走行モータ157は、第1モータ157Aと、第2モータ157Bとを有している。第1モータ157A及び第2モータ157Bの両方に作動油を供給することにより、モータ容量は大きくなり、走行モータ157は1速となる。また、第1モータ157Aと第2モータ157Bとのいずれかに作動油を供給することによって、モータ容量は小さくなり、走行モータ157は2速となる。なお、走行モータ157の出力軸157aにブレーキ機構59が設けられている。このブレーキ機構59の構成は、第1実施形態と同様である。
【0059】
第1油圧切換弁163は、走行モータ157を1速或いは2速に切り換える弁であって、第1位置63aと、第2位置63bと、中立位置63cとに切り換え可能な弁である。詳しくは、第1油圧切換弁163に作用するパイロット油の圧力が、所定値未満である場合、第1油圧切換弁163は、第1位置63aになる。第1油圧切換弁163が第1位置63aである場合、第1モータ157A及び第2モータ157Bの両方に作動油が供給され、走行モータ157は1速となる。第1油圧切換弁163に作用するパイロット油の圧力が、所定値以上(切換圧以上)である場合、第1油圧切換弁163は、中立位置63cを経て第2位置63bになる。第1油圧切換弁163が第2位置63bである場合、第1モータ157Aに作動油が供給され、走行モータ157は2速となる。
【0060】
第1油圧切換弁163及びブレーキ機構59には、比例弁45が接続されている。
図5Aは、第2実施形態における第1油圧切換弁163の作動状態、ブレーキ機構59の作動状態及びパイロット油の圧力の関係を示した図である。
例えば、
図5Aに示すように、比例弁45を閉鎖した状態(全閉した状態)では、第1油圧切換弁163に作用するパイロット圧は略零であって、第1油圧切換弁163は、第1位置63aとなる。また、比例弁45を全閉した状態では、ブレーキ機構59の格納部に作用するパイロット圧は略零であって、走行モータ57は制動された状態である。ここで、比例弁45の開度を大きくし、ブレーキ機構59の格納部に作用するパイロット圧を、制動解除圧以上にすると、走行モータ57の制動を解除することができる。このとき、第1油圧切換弁63は第1位置63aに保持されている。つまり、第2実施形態でも、第1油圧切換弁63を第1位置63aに保持した状態で、ブレーキ機構59による走行モータ57の制動を解除することができる。
【0061】
また、比例弁45の開度をさらに大きくし、第1油圧切換弁63に作用するパイロット圧を中立位置63cから第2位置63bに切り換わる第2圧力以上にすると、当該第1油圧切換弁63を第2位置63bに切り換えて、走行モータ57を2速にすることができる。
なお、
図5Bに示すように、比例弁45において、制動解除圧未満であって且つ、第1油圧切換弁163に作用するパイロット油の圧力が所定値未満である場合、制動且つ1側の状態で、比例弁45から作動油を少しだけ流すことができ、比例弁45の暖機を行うことが可能である。
<第3実施形態>
図6、
図7は、本発明に係る油圧システムの第3実施形態を示している。第3実施形態は、作業系の油圧システム(油圧回路)を変更した変形例である。第3実施形態で示す作業系の油圧システムは、上述した第1実施形態及び第2実施形態の作業系の油圧システムに適用可能である。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成は説明を省略する。
【0062】
図6に示すように、リフトシリンダ26のボトム側とブーム制御弁80Aとを接続する第5供給路100gには、第1開閉弁91が接続されている。この第1開閉弁91は、排出油路(ドレイン)95に接続されている。第1開閉弁91の内部にはピストンが内蔵されている。第1開閉弁91は、ピストンによって隔てられた第1室91aと第2室91bとが連通すると、第5供給路100gの作動油をドレイン95に流す弁である。また、第1開閉弁91は、第1室91aと第2室91bとの連通が遮断されると、第5供給路100gから入った作動油を止める弁である。
【0063】
また、リフトシリンダ26のロッド側とブーム制御弁80Aとを接続する第6供給路100kには、第2開閉弁92が接続されている。この第2開閉弁92は、排出油路(ドレイン)95に接続されている。第2開閉弁92の内部にはピストンが内蔵されている。第2開閉弁92は、ピストンによって隔てられた第1室92aと第2室92bとが連通すると、第6供給路100kの作動油をドレイン95に流す弁である。また、第2開閉弁92は、第1室92aと第2室92bとの連通が遮断されると、第6供給路100kから入った作動油を止める弁である。
【0064】
さて、上述した実施形態では、作動油によって作動する油圧機器であるリフトシリンダ26を1つの油圧制御部であるブーム制御弁80Aで制御していたが、第3実施実施形態では、もう1つの油圧制御部によってリフトシリンダ26を制御している。つまり、第3実施形態では、リフトシリンダ26を制御する2つの油圧制御部が設けられている。油圧制御部の1つは、ブーム制御弁80Aであり、もう一つは、第2油圧切換弁90である。
【0065】
第2油圧切換弁90は、パイロット油(作動油)の圧力に応じて作動状態が変化することでリフトシリンダ26を制御する。即ち、第2油圧切換弁90は、リフトシリンダ26をフロート状態にしたり、フロート状態ではない状態にする弁である。つまり、第2油圧切換弁90は、リフトシリンダ26のフロート制御を行うものである。
詳しくは、第2油圧切換弁90は、パイロット油の圧力(パイロット圧)に応じて、第3位置90aと第4位置90bとに位置変更が可能な二位置切換弁である。第2油圧切換
弁90は、当該第2油圧切換弁90に作用するパイロット圧が所定の圧力に達すると第3位置90aに切り換わり、作動状態が変わる。また、第2油圧切換弁90は、該第2油圧切換弁90に作用するパイロット圧が所定圧未満になると第4位置90bに切り換わり、作動状態が変わる。
【0066】
第2油圧切換弁90は、第1開閉弁91及び第2開閉弁92に接続されている。第1開閉弁91に接続された第2油圧切換弁90が第4位置90bであるときは、第1開閉弁91の第1室91aと第2室91bとを連通させる。また、第2開閉弁92に接続された第2油圧切換弁90が第4位置90bであるときは、第2開閉弁92の第1室92aと第2室92bとを連通させる。したがって、第1開閉弁91及び第2開閉弁92によって、第5供給路100g及び第6供給路100kがドレイン95と繋がる。その結果、リフトシリンダ26のボトム側とロッド側とがドレイン95に繋がることになるため、当該リフトシリンダ26はフロート状態になる。
【0067】
一方、第1開閉弁91に接続された第2油圧切換弁90が第3位置90aであるときは、第1開閉弁91の第1室91aと第2室91bとの連通が遮断される。また、第2開閉弁92に接続された第2油圧切換弁90が第3位置90aであるときは、第2開閉弁92の第1室92aと第2室92bとの連通が遮断される。したがって、第1開閉弁91及び第2開閉弁92によって、第5供給路100g及び第6供給路100kはドレイン95と繋がらない。その結果、ブーム制御弁80Aからの作動油は、リフトシリンダ26のボトム側やロッド側に供給されることになるため、当該リフトシリンダ26はフロート状態ではない状態になり、操作部材81の操作に応じてリフトシリンダ26を動かすことができる。
【0068】
図6に示すように、油圧回路は、比例弁45を備えている。比例弁45は、吐出油路100aに接続されて、第2ポンプP2から吐出されたパイロット油(作動油)が通過可能となっている。また、比例弁45は、第7供給路100Lを介して油圧制御部(第2油圧切換弁90)及び作業系のリモコン弁82(下降用リモコン弁82A、上昇用リモコン弁82B、リモコン弁82C、リモコン弁82D)に接続されている。この比例弁45は、第1油圧切換弁63及び作業系のリモコン弁82に供給するパイロット油(作動油)の圧力を設定可能な弁であって、励磁によって弁の開度が変更可能な電磁比例弁である。
【0069】
比例弁45の開度を変更すると、吐出油路100aから第7供給路100Lに流れるパイロット油の流量が変わる。即ち、比例弁45の開度を変更すると、第2油圧切換弁90及びリモコン弁82に作用するパイロット圧を変更することができる。
図7は、第2油圧切換弁90の作動状態及びリモコン弁82の作動状態と、パイロット油の圧力との関係を示した図である。
【0070】
例えば、
図7に示すように、比例弁45を閉鎖した状態(全閉した状態)では、第2油圧切換弁90及びリモコン弁82に作用するパイロット圧は略零である。この場合は、リモコン弁82には、パイロット油が供給されないため、操作部材81を操作しても制御弁(ブーム制御弁80A、ブーム制御弁80A、予備制御弁80C)が作動しない油圧ロック状態となる。つまり、比例弁45は、第2油圧切換弁90及びリモコン弁82に供給する作動油を停止することによって油圧ロック状態にする。なお、油圧ロック状態では、第2油圧切換弁90は第3位置40aである。
【0071】
ここで、比例弁45の開度を大きくしてリモコン弁82に付与するパイロット圧を第3圧力以上(ロック解除圧以上)にすると、リモコン弁82の作動によって制御弁(ブーム制御弁80A、バケット制御弁80B、予備制御弁80C)を作動させるのに十分なパイロット圧を設定できるようになる。なお、ロック解除圧とは、リモコン弁82を操作によって設定されたパイロット圧が最小であっても、当該操作に基づいて制御弁が十分射開き、油圧アクチュエータが作動する圧力である。言い換えれば、ロック圧とは、リモコン弁82の操作により設定されるパイロット圧が最大であっても、当該操作では制御弁が十分に開かず、油圧アクチュエータが作動しない圧力である。したがって、ロック圧は、0MPaに限定されず、油圧アクチュエータが作動しない圧力であれば、0Mpaよりも大きくてもよい。
【0072】
また、比例弁45の開度をさらに大きくして第2油圧切換弁90に作用するパイロット圧を第4圧力以上(フロート作動圧以上)にすると、当該第2油圧切換弁90は、第4位置90bに切り換わり、リフトシリンダ26をフロート状態にすることができる。
なお、比例弁45における開度の制御は、制御装置70で行う。制御装置70には、操作部材96、97が接続されている。操作部材96、97は、例えば、揺動自在なシーソ型スイッチ、スライド自在なスライド型スイッチ、或いは、押圧自在なプッシュ型スイッチ、或いは、レバーで構成されている。
【0073】
制御装置70は、操作部材96によって油圧ロックを指令する操作がなされている場合、比例弁45のソレノイドに制御信号を出力する。この制御信号によって、比例弁45は閉鎖されて、油圧ロック状態にする。また、制御装置70は、操作部材96によって油圧ロックの解除を指令する操作がなされている場合、比例弁45のソレノイドに制御信号を出力する。この制御信号によって、比例弁45の開度が調整され、リモコン弁82に付与するパイロット圧をロック解除圧以上にする。
【0074】
また、制御装置70は、操作部材97によってフロート作動を指令する操作が流れている場合、比例弁45のソレノイドに制御信号を出力する。この制御信号によって、比例弁45を調整し、第2油圧切換弁90に作用するパイロット圧をフロート作動圧以上にする。
以上、第3実施形態では、第2油圧切換弁90及びパイロット弁82に比例弁45を接続している。そのうえで、パイロット圧に関して、第2油圧切換弁90が第3位置90aから第4位置90bに切り換わる圧力(第4圧力)よりも、油圧ロックの解除状態にするロック解除圧以上を低く設定しているため、油圧ロックを解除した状態でフロートの状態にすることができる。
【0075】
上述した第1実施形態〜第3実施形態では、第1油圧切換弁63による速度切換、ブレーキ機構59による制動制御、第2油圧切換弁90によるフロート制御について説明したが、速度切換、制動制御、フロート制御、油圧ロックの組み合わせは上述した実施形態に限定されない。
また、走行モータ57の速度切換に関して、1速及び2速について説明をしたが、速度切換は上述した実施形態に限定されず、3速以上の多段であってもよい。
図8は、走行モータ57を1速〜3速まで切り換えた場合の比例弁45で制御するパイロット圧を示した図である。なお、
図8では、比例弁45の下流側にリモコン弁82及びブレーキ機構59を設けると共に、第1油圧切換弁63の切換位置を第1位置、第2位置、第3位置に切換可能であることが前提である。
【0076】
図8に示すように、比例弁45を閉鎖した状態では、走行モータ57を制動していると共に、油圧ロック状態である。ここで、比例弁45の開度を徐々に大きくして、リモコン弁82に付与するパイロット圧をロック解除圧以上にすると、油圧ロックを解除することができる。第1油圧切換弁63に作用するパイロット圧を第1位置から第2位置に切り換わる圧力よりも小さくした状態では、走行モータ57が1速になる。ここで、第1油圧切換弁63に作用するパイロット圧を第2位置から第3位置に切り換わる圧力よりも小さくした状態では、走行モータ57を2速にすることができる。また、第1油圧切換弁63に作用するパイロット圧を第3位置に切り換わる圧力よりも大きくした状態では、走行モータ57を3速にすることができる。
【0077】
ブレーキ機構59は、上述した実施形態に限定されず、
図9A及び
図9Bに示す油圧回路に示した機構であってもよい。
図9Aは、走行系の油圧回路の一部を示した図である。
図9Aは、走行系の油圧回路の一部を示した図であって、ブレーキ機構59と、走行用の油圧ポンプ66と、この油圧ポンプ66によって駆動する走行モータ57とを示している。走行用の油圧ポンプ66及び走行モータ57は、上述した実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0078】
ブレーキ機構59は、作動装置59Aと、作動装置59Aを作動させる第3油圧切換弁59Bとを有している。この作動装置59A及び第3油圧切換弁59Bによって油圧制御部が構成されている。作動装置59Aと第3油圧切換弁59Bとは第8供給路100qに
より接続されている。走行モータ57、第3油圧切換弁59B及び油圧ポンプ66は、環状の第9供給路100rにより接続されている。
【0079】
作動装置59Aは、収容部59A−1と、第1ディスク59A−2と、第2ディスク59A−3と、バネ59A−4とを有している。収容部59A−1は、第2ディスク59A−3及びバネ59A−4を収容する。第1ディスクは、走行モータ57の出力軸57aに設けられたディスクである。第2ディスク59A−3は、移動可能なディスクである。バネ59−4は、第2ディスク59A−3が第1ディスク59A−2に接触する側へ付勢する。
【0080】
第3油圧切換弁59Bは、作動装置59Aに接続された弁であって、第1位置59b−1、第2位置59b−2との切換可能である。第3油圧切換弁59Bが第1位置59b−1であるとき、収容部59A−1の作動油が第8供給路100qを通って作動油タンク31に流れることにより、収容部59A−1の作動油が抜け、ブレーキ機構59による制動を行うことができる。第3油圧切換弁59Bが第2位置59b−2では、第8供給路100qと第9供給路100rとが連通して、第9供給路100rを流れる作動油がシャトル弁を通って収容部59A−1に入るため、ブレーキ機構59による制動を解除することができる。
【0081】
さて、
図9Aに示すように、第3油圧切換弁59Bには、比例弁45が接続されている。この比例弁45は、吐出油路100a及び第3供給路100dに接続されている。第3供給路100dには、ブレーキ機構59の第3油圧切換弁59Bが接続される。また、第3供給路100dには、第3油圧切換弁59Bの他に、速度切換、フロート制御及び油圧ロックのいずれかを行う油圧制御部が接続されている。比例弁45は、制動の解除をする場合には、第3油圧切換弁59Bに作用するパイロット圧が第1圧力以上(制動解除圧以上)となる開度まで開き、第3油圧切換弁59Bを第2位置59b−2に切り換える。また、比例弁45は、制動をする場合には、第3油圧切換弁59Bに作用するパイロット圧が制動解除圧未満になるまで閉じ、第3油圧切換弁59Bを第1位置59b−1に切り換える。このように、作動装置59Aと、第3油圧切換弁59Bとを有するブレーキ機構であっても、比例弁45によって制動したり、制動を解除することができる。
【0082】
図9Bは、走行系の油圧回路の一部を示した図であって、ブレーキ機構59と、走行モータ57と、走行モータ57を制御する走行制御弁61とを示している。走行モータ57、ブレーキ機構59は、右及び左に設けられた第1走行部21L及び第2走行部21Rを駆動する装置であって、個別の構成は、上述した実施形態と同様であるため説明を省略する。なお、
図9Bの走行系の油圧回路は、バックホー等の作業機に適用可能である。
【0083】
走行制御弁61は、第1位置61a、第2位置61b、第3位置61cに切換可能である。走行制御弁61には、第1ポンプP1からの作動油が供給される。走行制御弁61が第2位置61bである場合には、走行モータ57が正転する。走行制御弁61が第1位置61aである場合には、走行モータ57が逆転する。なお、走行制御弁61における第1位置61a、第2位置61b、第3位置61cの切換は、図示省略の操作部材やパイロット弁によって行うことができる。
<第4実施形態>
図10Aは、本発明に係る油圧システムの第4実施形態を示している。第4実施形態の油圧システムは、上述した実施形態の油圧システムに、差圧部200を設けたシステムである。第1実施形態〜第3実施形態と同様の構成については省略する。
【0084】
差圧部200は、複数の油圧制御部のうち、任意の油圧制御部(第1油圧制御部という)に作用する作動油の圧力と、任意の油圧制御部とは異なる油圧制御部(第2油圧制御部という)に作用する作動油の圧力とを異ならせる。具体的には、
図10Aに示すように、第1油圧制御部は、ブレーキ機構59である。第2油圧制御部は、走行モータ157を1速或いは2速に切り換える第1油圧切換弁163である。即ち、差圧部200は、比例弁45から出力した作動油に関して、ブレーキ機構59に作用する圧力と、第1油圧切換弁163に作用する圧力とを異ならせる。
【0085】
詳しくは、差圧部200は、比例弁45と第1油圧切換弁(第2油圧制御部)163と
を接続する第3供給路100dに設けられたブリード回路(ブリードオフ回路)201と、絞り部203とを有している。ブリード回路201は、第1油圧切換弁163の受圧部163aと作動油タンク31とを接続する排出油路201aと、排出油路201aに設けられた絞り部201bとを含んでいる。絞り部203は、第3供給路100dであって当該第3供給路100dの分岐部101と排出油路201aとの間に設けられている。なお、絞り部203の代わりに、分岐部101と排出油路201aとの間に圧損が大きな油圧ホース等を採用してもよい。
【0086】
以上によれば、比例弁45とブレーキ機構59とは第3供給路100dによって接続されているが、当該経路には圧力を下げる絞り等が設けられていないため、ブレーキ機構59に作用する作動油の圧力は、比例弁45から出力した作動油の圧力と略同じである。一方、比例弁45と第1油圧切換弁163との間の第3供給路100dには、ブリード回路201及び絞り部203が設けられているため、第1油圧切換弁163に作用する圧力は、ブレーキ機構59に作用する圧力よりも低くなる。
【0087】
したがって、差圧部200によって、第1油圧切換弁163に作用する圧力と、ブレーキ機構59に作用する圧力とに差圧ができる。そのため、ブレーキ機構59の制動解除圧と、第1油圧切換弁163の切換圧(中立位置63cから第2位置63bに切り換わる圧力)との差が小さい場合でも、比例弁45の開度を変更することにより、両者を安定的に切換を行うことができる。
【0088】
なお、
図10Bに示すようにブレーキ機構59側にもブリード回路202を設けてもよい。ブリード回路202は、排出油路202aと、絞り部202bとを含んでいる。排出油路202aの一端は、第3供給路100dの分岐部101からブレーキ機構59に至る区間に接続されている。排出油路202aの他端は、作動油タンク31に接続されている。絞り部202bは、排出油路202aに設けられている。
【0089】
また、第4実施形態では、第1油圧制御部としてブレーキ機構59を例示し、第2油圧制御部として第1油圧切換弁163を例示したが、第1油圧制御部及び第2油圧制御部は、当該実施形態で示したものに限定されない。
<第5実施形態>
図11は、本発明に係る油圧システムの第5実施形態を示している。第5実施形態の油圧システムは、上述した第4実施形態の油圧システムに、測定装置210を設けたシステムである。第5実施形態に示した内容も全ての実施形態に適用可能である。上述した実施形態と同様の構成については省略する。
【0090】
測定装置210は、第1油圧制御部59と第2油圧制御部163のうち、後で作動する第2油圧制御部163の受圧部163aに作用する作動油の圧力を測定する装置である。
測定装置210は、第3供給路100dの分岐部101以降の油路に接続されている。この実施形態では、測定装置210は、第2油圧制御部163の受圧部163aの近傍に接続されている。
【0091】
測定装置210で測定した作動油の圧力は、制御装置70に出力される。制御装置70は、エンジン29が駆動している状況下で、操作部材71によって2速に設定されている場合、比例弁45のソレノイドに制御信号を出力する。具体的には、制御装置70は、測定装置210で測定した作動油の圧力(第2油圧制御部163に作用する圧力)を参照して、第2油圧制御部163に作用する作動油の圧力(パイロット圧)が2速切換圧以上になるように、比例弁45の開度を調整する。このように、第2油圧制御部163に作用する圧力を、測定装置210で測定して制御装置70にフィードバックしているため、安定して第2油圧制御部163を1速から2速に切り換えることができる。
【0092】
なお、第5実施形態(
図11)では、差圧部200を有する油圧システムを例にあげ説明したが、差圧部200を有さない油圧システムでも適用可能である。
<第6実施形態>
図12は、本発明に係る油圧システムの第6実施形態を示している。第6実施形態の油圧システムは、ロードセンシングシステム及び馬力制御システムを有している。第6実施形態に示した内容も全ての実施形態に適用可能である。上述した実施形態と同様の構成に
ついては省略する。
【0093】
図12に示すように、油圧システムは、ロードセンシングシステム及び馬力制御システムが設けられている。また、
図12の油圧システムでは、第1油圧制御部として油圧ロック弁220が採用され、第2油圧制御部として後述する馬力制御システムの差圧作動部261が採用されている。油圧ロック弁220及び差圧作動部261は、第3供給路100dにより比例弁45に接続されている。油圧ロック弁(第1油圧ロック弁)220は、当該第1油圧ロック弁220よりも下流側の吐出油路100aに作動油を流すか流さないかを切り換える電磁弁であって、比例弁45により、第1位置220aと第2位置220bとに切り換え可能な二位置切換弁である。言い換えれば、第1油圧ロック弁220は、操作部材81の揺動に伴って作動するリモコン弁82A、82B、82C、82Dにパイロット油を流すか流さないかを切り換える弁である。
【0094】
比例弁45による第1油圧ロック弁220の切換え操作は、運転席8の周囲に設けられたスイッチ等によって行う。スイッチがオンである場合、制御装置70は、比例弁45のソレノイドを消磁する。その結果、比例弁45が作動して第1油圧ロック弁220が第1位置220aに切り換えられ、第1油圧ロック弁220よりも下流側の吐出油路100aには作動油が流れない。スイッチがオフである場合、制御装置70は、第1油圧ロック弁220が第2位置220bに切り換えられる程度に、比例弁45のソレノイドを励磁する。その結果、第1油圧ロック弁220が第2位置220bに切り換えられ、第1油圧ロック弁220よりも下流側の吐出油路100aには作動油が流れる。
【0095】
ロードセンシングシステムは、作業の負荷に応じて第1油圧ポンプP1の吐出量を制御するシステムである。第1油圧ポンプP1は、斜板形可変容量アキシャルポンプである。ロードセンシングシステムは、第1検出油路250と、第2検出油路251と、流量補償弁252、斜板制御部253とを有している。
第1検出油路250(PLS油路ということがある)は、制御弁80A、80B、80Cに接続されていて、制御弁80A、80B、80Cが作動したときの負荷圧を検出する油路である。また、第1検出油路250は、流量補償弁252にも接続されていて、各制御弁80A、80B、80Cの負荷圧のうち最高の負荷圧である「PLS信号圧」を流量補償弁252に伝達する。第2検出油路251(PPS油路ということがある)は、第1油圧ポンプP1の吐出側と流量補償弁252を接続していて、第1油圧ポンプP1の作動油の吐出圧である「PPS信号圧」を流量補償弁252に伝達する。
【0096】
斜板制御部253は、圧力によって移動するピストンと、ピストンを収容する収容部と、ピストンに連結したロッドとを有する装置である。収容部の一端側は流量補償弁252に接続され、他端側は第1油圧ポンプP1の吐出側に接続されている。斜板制御部253のロッド(移動部)は、第1油圧ポンプP1の斜板に接続され、当該ロッドの伸縮によって斜板の角度が変更可能である。
【0097】
流量補償弁252は、PLS信号圧及びPPS信号圧に基づいて斜板制御部253を制御可能な弁である。流量補償弁252は、PPS信号圧とPLS信号圧との圧力差(第1差圧)が予め定められた圧力となるように、斜板制御部253の一端側に圧力をかける。つまり、流量補償弁252は、PPS信号圧−PLS信号圧との差圧(第1差圧)が一定となるように、斜板制御部253の他端側のロッドを伸縮させる。なお、流量補償弁252における第1差圧は、当該流量補償弁252に設けられたスプリング252aによって設定されている。即ち、流量補償弁252は、スプリング252aで内蔵されたスプールを付勢することによって、第1差圧が一定となるように設定されている。
【0098】
以上のように、ロードセンシングシステムでは、第1差圧が一定となるように斜板の角度を変更するため、負荷圧に応じて第1油圧ポンプP1の吐出量を調整することができる。
馬力制御システムは、第2油圧ポンプP2から吐出した作動油(パイロット油)の圧力である第1圧力(Pi)と、第2油圧ポンプP2から吐出した流量を減少させた後の作動油(パイロット油)の圧力である第2圧力(PA)との差圧(第2差圧:PA−Pi)に基づいて、第1油圧ポンプP1を制御する装置である。
【0099】
馬力制御システムは、差圧作動部261を有している。差圧作動部261は、第1圧力と第2圧力との第2差圧に応じて作動する装置である。差圧作動部261は、第2差圧に基づいて移動するピストン261aと、ピストン261aを収容する収容部261bと、ピストン261aの移動に伴って移動するロッド261cとを有している。
差圧作動部261のボトム側には、第1取出油路255の一端が接続され、差圧作動部261のロッド側には、第2取出油路256の一端が接続されている。第1取出油路255の他端及び第2取出油路256の他端は、第3供給路100dにおいて、比例弁45の下流側に接続されている。なお、第1取出油路255及び第2取出油路256は、第3供給路100dの一部である。
【0100】
第1取出油路255の他端と、第2取出油路256の他端の間には、作動油の流量を絞る絞り部257が設けられている。絞り部257の下流側、即ち、絞り部257と第2取出油路256との間には、ブリード回路が設けられている。
第1圧力(Pi)は、第1取出油路255を流れる作動油の圧力であり、第2圧力(PA)は、第2取出油路256を流れる作動油の圧力である。馬力制御システムでは、第1圧力が第2圧力よりも大きくなると、差圧作動部261のピストン261aがロッド261cを伸長させる方向に移動し、第2圧力が第1圧力よりも大きくなると、ピストン261aがロッド261cを収縮させる方向に移動する。そして、ロッド261cは、流量補償弁252に接続されていて、当該ロッド261cはスプリング252aに抗してスプールを移動させることができる。即ち、ロッド261cによって流量補償弁252の開度が変更可能である。馬力制御システムによれば、第2差圧に応じて、流量補償弁252の開度が変わるため、当該第2差圧に応じて第1油圧ポンプP1の出力を変更することが可能である。
【0101】
図12に示すように、比例弁45と、馬力制御システムを構成する油路(第1取出油路255、第2取出油路256)との間には、ブリード回路201が接続されている。この実施形態のブリード回路201は、第3供給路100dの分岐部101から第1取出油路255に至るまでの区間に設けられた排出油路201aと、排出油路201aに設けられた絞り部201bとを含んでいる。このように、ブリード回路201を設けたため、第2油圧制御部である差圧作動部261に作用する圧力は、第1油圧制御部である第1油圧ロック弁220に作用する圧力よりも低くなる。つまり、比例弁45によって、第1油圧ロック弁220を第1位置220aから第2位置220bに切り換えた後に、馬力制御システムの差圧作動部261に所定以上の圧力を作用させて、馬力制御システムを作動させることができる。
【0102】
なお、第6実施形態でも、第2油圧制御部(差圧作動部261)に作用する測定装置を設けてもよい。
<第7実施形態>
図13は、本発明に係る油圧システムの第7実施形態を示している。上述した実施形態では、比例弁45で2つの油圧制御部を制御していたが、第7実施形態では、比例弁45で3つの油圧制御部を制御している。第7実施形態では、3つの油圧制御部として、ブレーキ機構59、第1油圧切換弁163、シャット弁270を採用している。なお、本発明は、第7実施形態に示した油圧制御部に限定されず、全ての実施形態に示した全ての油圧制御部の組合せが適用可能である。
【0103】
比例弁45とシャット弁270とは第3供給路100dにより接続され、比例弁45とブレーキ機構59とも第3供給路100dに接続され、比例弁45と第1油圧切換弁163とも第3供給路100dにより接続されている。
第3供給路100dにおいて、比例弁45とブレーキ機構59とを接続する区間、比例弁45と第1油圧切換弁163とを接続する区間には、差圧部200が設けられている。
【0104】
シャット弁270は、制御弁80と油圧アクチュエータ(例えば、油圧シリンダ)との間において、作動油を流すか流さないかを切り換える弁である。シャット弁270は、比例弁45により、第1位置270aと第2位置270bとに切り換え可能な二位置切換弁である。シャット弁270は、ブーム制御弁80Aとリフトシリンダ26とを接続する油
路271の中途部と、バケット制御弁80Bとチルトシリンダ28とを接続する油路272の中途部に設けられている。
【0105】
以上、
図13の変形例によれば、シャット弁270が第1位置270aであるときは、当該シャット弁270により油路271、272の中途部が遮断される。即ち、シャット弁270は、第1位置270aであるときは、油圧シリンダ(リフトシリンダ26及びチルトシリンダ28)に作動油を供給しない遮断状態になる。この状態から、比例弁45によって、シャット弁270に作用するパイロット圧を第1位置270aから第2位置270bに切り換わる切換圧力(作動圧)にすると、シャット弁270を開放することができる。そうすると、油路271、272の中途部が連通し、制御弁80(ブーム制御弁80A、バケット制御弁80B)から油圧シリンダ(リフトシリンダ26、チルトシリンダ28)に作動油を流す供給状態(連通状態)になる。
【0106】
そして、比例弁45の開度を変更して、第3油圧切換弁59Bに作用するパイロット圧を、制動解除圧以上にすると、制動を解除することができる。また、比例弁45の開度を変更して、第2油圧制御部163に作用するパイロット圧を、2速切換圧以上にすると、2速に切り換えることができる。
なお、この実施形態では、油圧アクチュエータとして、油圧シリンダを例示したが、油圧アクチュエータであれば何でもよい。
<第8実施形態>
図14A〜
図14Cは、本発明に係る油圧システムの第8実施形態を示している。第8実施形態の油圧システムは、上述した実施形態の油圧システムにおいて、設定圧部を設けたシステムである。上述した実施形態と同様の構成については省略する。
【0107】
圧力設定部は、第1油圧制御部に付与される圧力(作用する圧力)と、第2油圧制御部に付与される圧力(作用する圧力)との差圧を所定の圧力に設定するものである。
図14Aは、設定部300Aを設けた第1例、
図14Bは、設定部300A及び設定部300Bを設けた第2例、
図14Cは、設定部300Cを設けた第3例である。
図14Aに示すように、ブレーキ機構59及び第1油圧切換弁163が比例弁45で制御する油圧制御部として採用されている。設定圧部300Aは、ブレーキ機構59(第1油圧制御部)に付与される圧力と、第1油圧切換弁163(第2圧力制御部)に付与される圧力との差を所定の圧力に設定する。
【0108】
詳しくは、設定圧部300Aは、逆止弁(差圧チェック弁)301aを有している。逆止弁301aは、第3供給路100dの分岐部101と第1油圧切換弁163との区間に設けられている。逆止弁301aは、作動油が第1油圧切換弁163に向けて流れることを許容する。逆止弁301aの設定圧は、第1油圧切換弁163が第1位置63aから第2位置63bに切り換わる切換圧(作動圧)以上に設定してもよいし、作動圧よりも低くてもよい。
【0109】
したがって、ブレーキ機構59を作動させた後、第1油圧切換弁163を逆止弁301aの設定圧に設定された圧力で作動させることができ、安定的に第1油圧切換弁163を作動することができる。例えば、第1油圧切換弁163において、第1位置63aから中立位置63cへ切り換わる切換圧が0.5MPa、中立位置63cから第2位置63bへ切り換わる切換圧が1.0MPaとし、ブレーキ機構59の制動解除圧を0.5MPaとし、逆止弁301aの設定圧を0.3MPaしたとする。この場合は、ブレーキ機構59を作動させるときの比例弁45の圧力を0.5MPa〜0.79MPa、第1油圧切換弁163を中立位置63cから第2位置63bへ切り換えるときの比例弁45の圧力を0.8MPa〜1.29MPa、第1油圧切換弁163を中立位置63cから第2位置63bへ切り切り換えるときの比例弁45の圧力を1.3MPa以上にすることによって、ブレーキ機構59及び第1油圧切換弁163を作動させることができる。なお、上述した切換圧等の圧力は、説明するための値であり、これに限定されない。
【0110】
なお、逆止弁301aの設定圧は1MPa、第1油圧切換弁163の受圧部163a側に設けたブリード回路の絞り部の内径(絞り径)は、φ1.0mmに設定してもよい。逆止弁301aの設定圧及びブリード回路の絞り径は、これに限定されず、第1油圧切換弁
163の受圧特性等(作動圧等)によって設定される。
図14Bに示すように、ブレーキ機構59、第1油圧切換弁163及びシャット弁270が比例弁45で制御する油圧制御部として採用されている。
図14に示す設定圧部300A及び設定圧部300Bのうち、設定圧部300Aは、逆止弁(差圧チェック弁)301aと、バイパス回路302aと、絞り部303aとを有している。逆止弁301aは、第3供給路100dの分岐部101と第1油圧切換弁163との区間に設けられている。バイパス回路302aは、逆止弁301aの上流側及び下流側をバイバスする。絞り部303aは、バイパス油路302aに設けられている。絞り部303aの内径(絞り径)は、逆止弁301aが作動する範囲で設定されている。
【0111】
設定圧部300Bは、ブレーキ機構59に作用する圧力と、第1油圧切換弁163に作用する圧力と、シャット弁270に作用する圧力との差圧を所定の圧力に設定する。設定圧部300Bは、逆止弁(差圧チェック弁)301bと、バイパス回路302bと、絞り部303bとを有している。逆止弁301bは、分岐部101とブレーキ機構59との区間に設けられている。バイパス回路302bは、逆止弁301bの上流側及び下流側をバイバスする。絞り部303bは、バイパス油路302bに設けられている。
【0112】
逆止弁301bは、作動油がブレーキ機構59に向けて流れることを許容する。逆止弁301bの設定圧は、ブレーキ機構59の制動解除圧(作動圧)以上であってもよいが、制動解除圧未満であってもよい。
したがって、シャット弁27を作動させた後、ブレーキ機構59を逆止弁301bで設定された圧力以上で作動させることができる。また、ブレーキ機構59を作動させた後に、第1油圧切換弁163を逆止弁301aの設定圧に設定された圧力以上で作動させることができる。即ち、ブレーキ機構59、第1油圧切換弁163及びシャット弁270を、安定的に作動することができる。
【0113】
なお、
図14Bにおいては、設定圧部300A及び設定圧部300Bに、バイパス回路302a、302b及び絞り部303a、303bを設けているが、
図14Aに示したようにバイパス回路及び絞り部を設けなくてもよい。
図14Cに示すように、第1油圧ロック弁220及び第2油圧ロック弁230が比例弁45で制御する油圧制御部として採用されている。第1油圧ロック弁220及び第2油圧ロック弁230は、第3供給路100dを介して比例弁45が接続されている。
【0114】
第2油圧ロック弁230は、当該第2油圧ロック弁220よりも下流側の第2供給路100cに作動油を流すか流さないかを切り換える電磁弁であって、比例弁45により、第1位置230aと第2位置230bとに切り換え可能な二位置切換弁である。言い換えれば、操作部材40の揺動に伴って作動するリモコン弁36,37,38,39にパイロット油を流すか流さないかを切り換える弁である。
【0115】
設定圧部300Cは、逆止弁(差圧チェック弁)301cと、バイパス回路302cと、絞り部303cとを有している。逆止弁301cは、分岐部101と第2油圧ロック弁230との間に設けられている。バイパス回路302cは、逆止弁301cの上流側及び下流側をバイバスする。絞り部303cは、バイパス油路302cに設けられている。なお、
図14Cにおいては、設定圧部300Cに、バイパス回路302c及び絞り部303cを設けているが、
図14Aに示したようにバイパス回路及び絞り部を設けなくてもよい。
【0116】
逆止弁301cは、作動油が第2油圧ロック弁230に向けて流れることを許容する。逆止弁301cの設定圧は、第2油圧ロック弁230の切換圧(作動圧)以上であってもよいが、作動圧未満であってもよい。したがって、第1油圧ロック弁220を作動させた後、第2油圧ロック弁230を逆止弁301cで設定された圧力で作動させることができる。即ち、第1油圧ロック弁220及び第2油圧ロック弁230を、安定的に作動することができる。なお、比例弁45は、エンジンストールを防止する弁としても作動することが可能である。
<第9実施形態>
図15Aは、本発明に係る油圧システムの第9実施形態を示している。第9実施形態の
油圧システムは、上述した実施形態と同様の構成については省略する。
【0117】
図15Aに示すように、第3供給路100dの分岐部101以降の油路であって、第2油圧制御部163の上流側には、測定装置240が接続されている。測定装置240は、電磁弁の二次側の圧力を測定する装置である。具体的には、測定装置240は、電磁比例弁から構成された比例弁45から出力した作動油の圧力(第3供給路100dを流れる二次側の出力)を測定する。測定装置240で測定した圧力値は、制御装置70に入力される。
【0118】
制御装置70は、状態判断部245を有している。状態判断部245は、制御装置70に設けられた電子・電気回路、プログラム等から構成されている。状態判断部245は、比例弁45が故障か否かを判断する。具体的には、状態判断部245は、制御装置70から比例弁45のソレノイドに出力した制御信号(電流値)と、測定装置240が測定した圧力(測定値)とに基づいて、比例弁45が故障であるか否かを判断する。
図16に示すように、状態判断部245は、電流値と比例弁45から出力する作動油の圧力との関係(圧力-電流特性)を記憶している。状態判断部245は、測定装置240が測定した圧力(測定圧力値という)と、制御装置70から出力した電流値(出力電流値という)とを比較する。
【0119】
状態判断部245は、測定電流値と出力圧力値との関係が、電流圧力特性が得られる電流値と圧力値と略一致している場合、例えば、
図16に示すように、測定電流値と出力圧力値とのプロット点N1が、電流圧力特性を示す特性線L1を含む判定範囲内(L2以上L3以下)にあるときは、比例弁45が故障ではないと判断する。なお、判定範囲は、比例弁45の開度の誤差やヒステリシス特性等から設定する。
【0120】
一方、
図16に示すように、測定電流値と出力圧力値とのプロット点N2が、判定範囲外である場合には、比例弁45が故障であると判断する。即ち、比例弁45が故障している場合は、ソレノイドを励磁しても比例弁45の開度が大きくならず、作動油の圧力が上昇しなかったり、ソレノイドの励磁に伴って比例弁45の開度が変更しないことから、測定電流値、出力圧力値及び電流圧力特性によって、比例弁45が故障であるか否かを判断することができる。
【0121】
図15Bは、第9実施形態の変形例を示している。上述した実施形態では、測定装置240は、複数の油圧制御部を制御する電磁比例弁(比例弁45)の下流側(二次側)の作動油の圧力を測定していたが、測定装置240は、必ずしも複数の油圧制御部を制御する比例弁でなくてもよい。
図15Bに示すように、電磁弁(第1電磁弁85A及び第2電磁弁85B)の下流側に、測定装置240が設けられている。即ち、測定装置240は、第1電磁弁85Aの二次側の圧力を測定する第1測定装置240aと、第2電磁弁85Bの二次側の圧力を測定する第2測定装置240bとを有する。
【0122】
状態判断部245は、第1電磁弁85A及び第2電磁弁85Bが故障か否かを判断する。具体的には、状態判断部245は、制御装置70から第1電磁弁85Aのソレノイドに出力した制御信号(電流値)と、第1測定装置240aが測定した圧力(測定値)とに基づいて、第1電磁弁85Aが故障であるか否かを判断する。また、状態判断部245は、制御装置70から第2電磁弁85Bのソレノイドに出力した制御信号(電流値)と、第2測定装置240bが測定した圧力(測定値)とに基づいて、第2電磁弁85Bが故障であるか否かを判断する。第1電磁弁85A及び第2電磁弁85Bが故障であるか否かの判定方法は、上述した比例弁45の判定方法と同じ(比例弁45に対応する部分を、第1電磁弁85A、又は、第2電磁弁85B)に読み替える。
【0123】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
上述した第1実施形態〜第3実施形態では、第1油圧切換弁63による速度切換、ブレーキ機構59による制動制御、第2油圧切換弁90によるフロート制御について説明したが、速度切換、制動制御、フロート制御、油圧ロックの組み合わせは上述した実施形態に限定されない。