(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記羽根板の前記突出部は、前記第1シュラウド側に位置する前記基端部の一端から前記第2シュラウド側に位置する前記基端部の他端までの前記基端部全体を含む、請求項1に記載の流体機械。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る流体機械であるターボ型の片吸込遠心渦巻ポンプ10を示す。この渦巻ポンプ10は、ボリュート通路16が形成されたケーシング11を備える。ケーシング11内には、回転軸25が回転可能に配置されるとともに、回転軸25に連結した羽根車30が配置されている。本実施形態では概ねクローズ型の羽根車30を用い、このクローズ型羽根車30によるキャビテーションの発生を抑制し、必要NPSHを改善する。
【0019】
(片吸込遠心渦巻ポンプの詳細)
渦巻ポンプ10のケーシング11は、ケーシング本体12と、このケーシング本体12に固定されたケーシングカバー13とを備える。ケーシング本体12には、
図1において左側に吸込口14が設けられている。吸込口14は断面円形状の空間であり、回転軸25が延びる方向Yに沿って軸線が延びている。この吸込口14の端部には、羽根車30を配置する配置空間部15が設けられている。そして、この配置空間部15の外周部には、ケーシング11内に吸い込んだ液体を下流側に吐出する液体流路であるボリュート通路16が設けられている。ボリュート通路16は、回転軸25の軸線に対して直交(径)方向Xに延びる平面に沿って渦巻き状に延びている。また、ボリュート通路16は、配置空間部15を介して吸込口14と連通している。ケーシング本体12には、
図1において上側に位置するように、ボリュート通路16の出口である吐出口17が設けられている。なお、吸込口14及び吐出口17にはそれぞれ図示しない管路が接続されている。
【0020】
ケーシング11には、水平方向に延びるように回転軸25が回転自在に配置されている。回転軸25は、一端がケーシングカバー13のシャフト穴18から配置空間部15内に突出している。シャフト穴18の周囲には、液密性を保持するためのシール19が取り付けられている。ケーシングカバー13の外側にはベアリングケース20が固定されている。回転軸25は、ベアリングケース20に固定されたベアリング21により回転自在に軸支されている。ベアリングケース20から突出した回転軸25の外端には、図示しない駆動手段であるモータが連結されている。
【0021】
図1及び
図2に示すように、ケーシング11には、回転軸25が延びる方向Yから見て円形状の羽根車30が、配置空間部15内に位置するように配置されている。羽根車30は回転軸25に対して相対的に回転しないように固定され、回転軸25の回転により正回転することで、液体を吸込口14から吸い込んで吐出口17から吐出する。
【0022】
(羽根車の詳細)
羽根車30は、複数の羽根板31と、羽根板31の前側に配置された前シュラウド(第1シュラウド)37と、羽根板31の後側に配置された後シュラウド(第2シュラウド)40とを備える。
【0023】
羽根板31は、回転軸25側の基端部32と、基端部32と反対側の先端部33とを備える。この羽根板31は、基端部32から径方向X外側へ放射状に延び、周方向に湾曲している。この羽根板31の形状、姿勢、寸法、個数、及び配置等は、気泡を吸い込んだ場合に、それに起因するエアロックが発生しないように設定されている。
【0024】
前シュラウド37は、回転軸25が延びる方向Yにおける羽根板31の前端(一端側)31aに配置されている。この前シュラウド37には、回転軸25と同心円形状をなすように開口部38が設けられている。この開口部38を含む前シュラウド37の中央は、吸込口14に向けて円錐筒状に隆起している。また、前シュラウド37の外周部は、回転軸25が延びる方向Yに対して直交方向に延びる平板状である。
【0025】
後シュラウド40は概ね円板状であり、回転軸25が延びる方向Yにおける羽根板31の後端(他端側)31bに配置されている。この後シュラウド40は、前シュラウド37に対して所定の間隔をあけて位置している。
図1に示すように、後シュラウド40の中心には、回転軸25を連結するための連結部41が設けられている。また、後シュラウド40には、連結部41と同心円筒状をなすように、ケーシングカバー13に向けて突出する円筒部42が設けられている。
【0026】
羽根車30には、隣接する羽根板31,31と、前シュラウド37と、後シュラウド40とで画定された筒状の液体流路44が複数形成される。羽根車30は、羽根板31の基端部32側である開口部38が流入口であり、この開口部38から液体が吸い込まれる。また、開口部38と連通した液体流路44の羽根板31の先端部33部分が流出口であり、回転軸25の回転による遠心力によって液体が各液体流路44を通して径方向外側へ吐出される。
【0027】
図2及び
図3に示すように、羽根車30の羽根板31は、前シュラウド37側から見ると、前シュラウド37の開口部38側の端部38aから内向きに突出した突出部34を備える。この突出部34は、例えば既存の前シュラウド37の開口部38を切り欠いて拡開することで、開口部38から露出されている。このように突出部34は、表面の前シュラウド37の開口部38を加工することで、容易に設けることができる。また、突出部34は開口部38から露出しているため、清掃性が良好である。
【0028】
羽根板31の基端部32は、前シュラウド37側に位置する第1端(一端)32aから後シュラウド40側に位置する第2端(他端)32bに向けて、羽根車30の径方向X内向きに傾斜している。開口部38の端部38aは、回転軸25が延びる方向の前側に位置する羽根板31の基端部32の第1端32aより、羽根板31の先端部33側(径方向X外側かつ軸方向Y後側)に位置するように設定される。好ましくは、開口部38の内縁は、羽根板31の基端部32の第1端32aと第2端32bとの間の中間位置より、羽根板31の先端部33側に位置するように設定される。更に好ましくは、開口部38の内縁は、吸込口14から離れて位置する羽根板31の基端部32の第2端32bより、羽根板31の先端部33側に位置するように設定される。そして、本実施形態の開口部38の直径は、基端部32の第1端32aから第2端32bまでである基端部32全体を含むように設定されている。即ち、突出部34は、基端部32全体を含む。
【0029】
このようにした羽根車30は、羽根板31の両端に前後のシュラウド37,40を配置したクローズド型である。そのため、配置空間部15の壁15aと羽根板31との隙間の設定が容易(不要)であるうえ、ケーシング11に組み付けた後の調整が不要であるため、組立性及び保守性を向上できる。しかも、摩耗による効率の低下も少ないため、性能を維持できる。また、前シュラウド37及び後シュラウド40により、回転軸25が延びる方向Yに沿った羽根車30の前後の圧力が平衡するため、オープン型羽根車のように大きな軸スラストが作用することを防止できる。
【0030】
図1及び
図3に示すように、後シュラウド40とケーシングカバー13との間には、ケーシングカバー13と吐出口17側を仕切るウェアリング46が配置されている。ウェアリング46は、例えばステンレス、鋳鉄、青銅等の摺動性が良好な材料からなる。また、ケーシング本体12と前シュラウド37との間には、配置空間部15の吸込口14側と羽根車30とを仕切るプロテクタ47が配置されている。このプロテクタ47は、ウェアリング46と同様に摺動性が良好な材料からなる。
【0031】
プロテクタ47は、配置空間部15の入口部48に設けた切欠部49に配置されている。配置空間部15に羽根車30を配置することで、配置空間部15の壁15aと前シュラウド37との間には、設定した間隔の空隙部が形成される。プロテクタ47は、羽根車30の開口部38の端部38aとの間に設定した間隔をあけて位置する端面部50を備える。この開口部38の端部38aと端面部50との間には、配置空間部15内の液体を羽根板31の突出部34側へ注水可能な第1通水部54が形成される。また、プロテクタ47は、羽根板31の突出部34の縁(前端31a)に沿って、設定した間隔をあけて位置する対向面部51を備える。この突出部34の縁と対向面部51との間には、配置空間部15の液体を第1通水部54を介して開口部38側へ注水可能な第2通水部55が形成される。第1通水部54の断面積及び第2通水部55の断面積は、配置空間部15の壁15aと前シュラウド37との間の空隙部の断面積より小さい。これにより、配置空間部15の液体は、所定の圧力で突出部34及び開口部38へ注水される。
【0032】
次に、羽根車30によって液体を排水する際の入口(開口部38)から出口までの圧力分布について説明する。
【0033】
図3に示すように、羽根車30内では、液体が開口部38から羽根板31の基端部32に至るまでの間に圧力が次第に低下する。
図3に破線で示すように、開口部38から羽根板31が露出していない比較例(従来例)のクローズド型羽根車では、液体が基端部32の第1端32aに至ると、圧力の下降勾配が急になる。この急勾配の圧力低下は、基端部32の第2端32bに至ると止まり、この第2端32bで最低圧力になる。液体が基端部32の第2端32bを越えて液体流路44内に至ると、圧力は次第に高くなる。そして、羽根車30の出口部分で最大圧力になる。この最低圧力と最大圧力の差が大きくなることで、負圧側である羽根板31の基端部32側でキャビテーションが発生する。
【0034】
本実施形態の羽根車30は、羽根板31の基端部32側に前シュラウド37の開口部38から内方へ突出する突出部34を備えている。また、配置空間部15の入口部48には、突出部34に対向するプロテクタ47が配置されている。そのため、羽根車30と配置空間部15の壁15aとの間にある液体は、
図3に矢印で示すように、通水部54,55を通って負圧側である羽根板31の基端部32へ注水される。この注水により、
図3に実線で示すように、羽根板31の入口(基端部32)側の圧力が高くなる。よって、羽根板31の基端部32の第1端32aから第2端32bの間で生じる圧力下降を大幅に抑制することができる。
【0035】
このように、本実施形態の羽根車30は、開口部38から羽根板31の基端部32側を突出させた部分的オープン型としているため、羽根板31の基端部32側が負圧になると、配置空間部15の液体が突出部34へ注水される。しかも、突出部34は、羽根板31の第1端32aから第2端32bまでの基端部32全体を含む。よって、羽根板31の基端部32側と先端部33側の圧力差を大幅に低減できるため、クローズド型の羽根車30の性能を大きく変えることなく、キャビテーションの発生を抑制し、吸込性能(必要NPSH)を改善できる。
【0036】
また、ケーシング11に配置したプロテクタ47により、配置空間部15の液体を確実に突出部34へ注水できる。また、プロテクタ47と羽根車30との間に形成される通水部54,55の断面積を調整することで、配置空間部15から突出部34へ流れる液体流量を容易に調整できる。しかも、この液量調整は、羽根車30の突出部分を加工すれば良いため、作業性を向上できる。
【0037】
(第2実施形態)
図4は第2実施形態の渦巻ポンプ10を示す。この第2実施形態では、プロテクタ47と前シュラウド37の開口部38の端部38aとの間に形成される第1通水部54を段付き構造とすることで、配置空間部15から羽根車30内へ液体を注水する方向を調整するようにした点で、第1実施形態と相違する。詳しくは、第1通水部54は、配置空間部15に連通する第1部分54aと、第1部分54aの端部に連続する第2部分54bと、第2部分54bの端部に連続する第3部分54cとを備える。
【0038】
第1部分54aは、羽根車30の径方向に沿って延びるように設けられている。この第1部分54aの端部は、前シュラウド37の前面側から肉厚の1/2の部分に位置する。第2部分54bは、前シュラウド37の開口部38の端部38aに段部を設けるとともに、プロテクタ47に段部を設けることで、羽根車30の軸方向に延びるように設けられている。この第2部分54bの端部は、羽根板31の基端部32の第2端32bより軸方向Yの後側に位置する。第3部分54cは、羽根車30の径方向Xに沿って延びるように設けられている。この第3部分54cの端部は、羽根車30の液体流路44の入口に位置する。第3部分54cより軸方向Yの前側に位置する羽根板31の部分が、第1実施形態と同様の突出部34である。
【0039】
第1通水部54は、第1部分54aから第3部分54cのうち、少なくとも第1部分54aと第3部分54cの隙間断面積A1,A3が異なるように設定されている。なお、隙間断面積とは、液体の通水方向に対して直交する方向の断面積である。詳しくは、第1部分54aの隙間断面積A1は、配置空間部15の隙間断面積A0より小さく設定されている。第2部分54bの隙間断面積A2は、第1部分54aの隙間断面積A1と概ね同一又は小さく設定されている。第3部分54cの隙間断面積A3は、配置空間部15の隙間断面積A0より小さく、第1部分54aの隙間断面積A1より大きく設定されている。
【0040】
このように隙間断面積A1〜A3を設定した第1通水部54では、出口である第3部分54cの流体速度V3は、以下の式(1)で算出できる。
【数1】
【0041】
また、羽根車30でキャビテーションが発生する部分は、
図4において楕円で記載した領域Pcである。そして、第1通水部54の第3部分54cから流出する液体によってキャビテーション領域に加えられる圧力P3は、以下の式(2)で算出できる。
【数2】
【0042】
そして、配置空間部圧力P0、第1部分圧力P1、第3部分圧力P3、回転軸周囲圧力P4、キャビテーション領域圧力Pcの関係は、以下の式(3)のようになる。なお、羽根車30の出口であるボリュート通路16内の吐出し圧力Pは、配置空間部圧力P0より更に高い。
【数3】
【0043】
よって、この第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができるうえ、段付き構造とした第1通水部54により、キャビテーションの発生を大幅に抑制できる。即ち、第1通水部54から流出する液体の流動方向を、羽根板31の負圧面であるキャビテーション領域に流れるように調整できる。これにより、キャビテーション領域の圧力Pcは、第3部分54cから注入される液体の圧力P3により増圧されるため、基端部32側と先端部33側の圧力差を低減できる。よって、羽根板31の基端部32側でのキャビテーションの発生を大幅に抑制できるため、キャビテーションによるエロージョンを低減できる。
【0044】
(第3実施形態)
図5は第3実施形態の渦巻ポンプ10を示す。この第3実施形態では、プロテクタ47と前シュラウド37との間の第1通水部54を画定する壁にラビリンス57を設けた点で、第2実施形態と相違する。詳しくは、第3実施形態の第1通水部54は、第2実施形態と同様に第1部分54aから第3部分54cを備える段付き構造である。そのうち、第3部分54cを構成するプロテクタ47の端面部50にラビリンス57が設けられている。このラビリンス57は、液体の通水方向を軸線とし、交差する方向に周方向に延びる複数の切欠溝を設けることで形成されている。
【0045】
このようにした第3実施形態では、第2実施形態と同様の作用及び効果を得ることができるうえ、ラビリンス57によりキャビテーションを効果的に消滅させることができる。即ち、ラビリンス57の切欠溝により、第1通水部54の第3部分54cには隙間断面積が広い部分と狭い部分が形成されている。そして、この第3部分54cを通過する液体は、隙間断面積が広いラビリンス57の切欠溝の部分によって突出部34への流れが減速される。これにより、キャビテーション領域の圧力を高め、キャビテーションを効果的に消滅させることができる。また、突出部34への流れを減速させることで漏れ損失を低減できる。
【0046】
(第4実施形態)
図6は第4実施形態の渦巻ポンプ10を示す。この第4実施形態では、第1通水部54の第2部分54bを構成するプロテクタ47の壁にラビリンス57を設けた点で、第3実施形態と相違する。このようにした第4実施形態では、第3実施形態と概ね同様の作用及び効果を得ることができる。
【0047】
(第5実施形態)
図7は第5実施形態の渦巻ポンプ10を示す。この第5実施形態では、第1通水部54全体をラビリンス構造とした点で、各実施形態と相違する。詳しくは、第1通水部54は、第1部分54aから第5部分54eを備える段付き構造とされている。そのうち、羽根車30の軸方向Yの前側へ延びる第2部分54bは、第3部分54cを越えて延びる切欠溝58aによって構成されている。同様に、第4部分54dは、第5部分54eを越えて羽根車30の軸方向Yの前側へ延びる切欠溝58bによって構成されている。第1の切欠溝58aは、第3部分54cにおいて通水方向に対して交差する方向に延び、第2の切欠溝58bは、第5部分54eにおいて通水方向に対して交差する方向に延びる。
【0048】
このようにした第5実施形態では、段付き構造の第1通水部54によって液体が流動する方向を調整できる。また、切欠溝58a,58bによって突出部34への流れが減速されることで、キャビテーション領域の圧力を高め、キャビテーションを効果的に消滅させることができる。よって、第3実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0049】
(第6実施形態)
図8は第6実施形態の流体機械である両吸込遠心渦巻ポンプ60を示す。この渦巻ポンプ60には、ケーシング61の内部に吸込室70が形成され、この吸込室70の幅方向中央に吐出室71が形成されている。また、ケーシング61には、回転軸72が幅方向に貫通され、この回転軸72に羽根車80が連結されている。羽根車80は、回転軸72が延びる方向の両端から液体を吸込可能であり、各実施形態と同様に、羽根板85の基端部86A,86B側が左右のシュラウド90,93の開口部91,94から突出している。
【0050】
(両吸込遠心渦巻ポンプの詳細)
渦巻ポンプ60のケーシング61は、ケーシング本体62とケーシングカバー66とを備えている。ケーシング本体62は、前後の一端側から突出する吸込管と、前後の他端側から突出する吐出管とを備える。吸込管の先端には吸込口63が形成され、吐出管の先端には吐出口64が形成されている。
【0051】
ケーシング本体62の幅方向中央には、所定間隔をあけて左右一対の下側仕切壁65,65が設けられている。同様に、ケーシングカバー66の幅方向中央には、下側仕切壁65,65の上方に位置するように左右一対の上側仕切壁67,67が設けられている。ケーシング本体62にケーシングカバー66を組み付けることで、下側仕切壁65,65と上側仕切壁67,67とは、中央に円形状の取付孔68が形成された環状になる。仕切壁65,67の左右両外側の領域は、吸込口63と連通した渦巻形状の吸込室70である。仕切壁65,67の内側の領域は、取付孔68を介して吸込室70と連通するとともに吐出口64に連通した渦巻形状の吐出室71である。
【0052】
ケーシング61には、吐出室71内に位置するように、取付孔68に羽根車80が配置され、この羽根車80を貫通するように回転軸72が配置されている。ケーシング61の左右両端には、回転軸72を回転可能に軸支するメカニカルシール73が配置されている。回転軸72が回転することで羽根車80が正回転し、吸込口63から液体を吸い込んで、吸込室70に流入させる。また、羽根車80は、吸込室70の液体を両側から吸い込み、液体流路である吐出室71に液体を送出し、吐出口64から吐出する。
【0053】
(羽根車の詳細)
第6実施形態の羽根車80は、回転軸72に連結するための連結部82と、連結部82から放射状に突出する複数の羽根板85と、羽根板85の一端側に配置された左側シュラウド(第1シュラウド)90と、羽根板85の他端側に配置された右側シュラウド(第2シュラウド)93とを備える。
【0054】
連結部82は、両側から吸い込んだ液体を出口に導くために、概ね二等辺三角形状に突出する隆起部83を備える。羽根板85は、連結部82に一体形成されており、隆起部83の外周部から突出している。羽根板85は、中央の隆起部83により、左右に一対の基端部86A,86Bを備える。羽根板85の先端部87は、これら基端部86A,86Bから径方向外側に突出している。
【0055】
左側シュラウド90は、回転軸72が延びる方向における羽根板85の左端に配置されている。この左側シュラウド90には、回転軸72に対して同心円形状をなすように第1開口部91が設けられている。右側シュラウド93は、回転軸72が延びる方向における羽根板85の右端に配置されている。この右側シュラウド93には、回転軸72に対して同心円形状をなすように第2開口部94が設けられている。
【0056】
この両吸込型の羽根車80には、隣接する羽根板85,85と、左側シュラウド90と、右側シュラウド93とで画定された筒状の液体流路96が複数形成される。羽根車80は、羽根板85の基端部86A,86B側である開口部91,94が流入口であり、これら開口部91,94から液体が吸い込まれる。また、液体流路96の羽根板85の先端部87側が流出口であり、回転軸72の回転による遠心力によって液体が各液体流路96を通して径方向外側へ吐出される。
【0057】
羽根車80の羽根板85は、左側シュラウド90側から見ると、左側シュラウド90の第1開口部91側の端部から内向きに突出した突出部88を備える。この突出部88は、右側シュラウド93側から見ても、右側シュラウド93の第2開口部94側の端部から内向きに突出している。突出部88は、例えば既存のシュラウド90,93の開口部91,94を切り欠いて拡開することで、各開口部91,94の端部から露出されている。
【0058】
第1開口部91は、左側シュラウド90側に位置する基端部86Aの一端から連結部82(右側シュラウド93側)に位置する基端部86Aの第2端までの基端部86A全体を含む直径である。同様に、第2開口部94は、右側シュラウド93側に位置する基端部86Bの一端から連結部82(左側シュラウド90側)に位置する基端部86Bの第2端までの基端部86B全体を含む直径である。即ち、突出部88は、第1の基端部86A全体及び第2の基端部86B全体を含む。
【0059】
下側仕切壁65及び上側仕切壁67によって形成された取付孔68には、吸込室70と吸込室70を仕切るプロテクタ98A,98Bが配置されている。プロテクタ98A,98Bは第1実施形態と同様の材料からなる。プロテクタ98A,98Bと左右のシュラウド90,93との間には、第1通水部101が形成されている。図示の第1通水部101は、第2実施形態と同様に第1部分から第3部分を備える。また、プロテクタ98A,98Bと突出部88の縁との間には、第2通水部102が形成されている。第2通水部102は、吐出室71の中心側である配置空間部100の壁とシュラウド90,93との間の液体を第1通水部101を介して開口部91,94側へ注水可能である。
【0060】
このようにした第6実施形態の羽根車80及び渦巻ポンプ60は、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。即ち、羽根車80は、一対のシュラウド90,93に設けた開口部91,94から羽根板85の基端部86A,86Bを露出させた部分的オープン型としているため、基端部86A,86B側が負圧になると、配置空間部100内の液体が突出部88へ注水される。よって、羽根板85の基端部86A,86B側と先端部87側の圧力差を大幅に低減できるため、クローズド型の羽根車80の性能を大きく変えることなく、キャビテーションの発生を抑制し、吸込性能(必要NPSH)を改善できる。
【0061】
(第7実施形態)
図9は第7実施形態の渦巻ポンプ60を示す。この第7実施形態では、羽根車80の幅方向の中央に液体流路96を左右に仕切る仕切板部104を設けた点で、第6実施形態と相違する。詳しくは、仕切板部104は、連結部82の隆起部83の頂部から羽根板85の先端部87にかけて突出するように設けられている。このようにした第7実施形態では、第6実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0062】
なお、本発明の流体機械は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0063】
例えば、各実施形態では、開口部38,91,94から基端部32,86A,86Bの全体が露出するように、羽根板31,85の突出部34,88を形成したが、基端部32,86A,86Bの少なくとも一端が露出すればよく、好ましくは基端部32,86A,86Bの半分以上が露出すればよい。また、各実施形態では、ケーシング11,61に別体のプロテクタ47,98A,98Bを配置したが、このプロテクタ47,98A,98Bはケーシング11,61に一体成形してもよい。また、配置空間部15,100の液体を突出部34,88へ注水する第1通水部54,101及び第2通水部55,102の構成も、希望に応じて変更が可能である。
【0064】
そして、前記各実施形態では、排水に用いられる渦巻ポンプ10,60を例に挙げて本発明の流体機械を説明したが、この流体機械は、発電に用いられる発電機、及び排水と発電の両方に用いられるポンプ水車であってもよい。なお、各実施形態のいずれかの羽根車30,80を水車のランナとして用いる場合、羽根車30,80の先端部33,37側が流入口になり、羽根車30,80の基端部32,86A,86B側が流出口になる。即ち、ポンプと水車とでは、液体の出入口が逆になる。
【0065】
また、第1実施形態から第5実施形態の羽根車30を水車に用いた場合、
図10に破線で示すように、羽根板31の突出部34である基端部32の直径及び傾斜角度を調整することにより、落差、流量及び出力を調整することができる。この羽根板31を調整する加工は、基端部32が開口部38から露出しているため、容易に行うことができる。また、羽根板31の加工には限界があるため、
図10に一点鎖線で示す加工ライン105までプロテクタ47を切削することで内径を調整する。これにより、プロテクタ47と突出部34の縁との間隔(第2通水部55の隙間断面積)を調整することで、羽根板31の加工と同様の作用及び効果を得ることができる。そして、このプロテクタ47の加工は、羽根車30の組み付けていない状態で容易に行うことができる。勿論、第6実施形態及び第7実施形態の羽根車80でも同様に、水車に用いることで、同様の作用及び効果を得ることができる。