(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1から3のタイヤは、装着穴の内面とスタッドピンの外面とのフィッティングが悪い。詳しくは、モールドピンの頭部は、成型後のタイヤから抜き易い形状(例えば球状)に形成され、スタッドピンの台座は、埋設後に抜け難い円板状に形成されている。そのため、モールドピンの頭部によって形成された装着穴の台座配置部と、スタッドピンの台座との間には、隙間(空間)が形成される。よって、スタッドピンの台座と装着穴の台座配置部とはフィッティングが悪い。
【0006】
本発明は、スタッドピンとトレッド部の装着穴とのフィッティングを向上し、トレッド部からスタッドピンが脱落することを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、空気入りタイヤのトレッド部を成形するトレッド成形型に固定するための固定部と、スタッドピンを埋設するための装着穴を前記トレッド部に形成するための突出部とを備え、前記突出部は、前記固定部から突出されている軸部と、前記軸部の先端に設けられている頭部とを有し、前記頭部は、前記軸部から先端に向けて直径が漸次大きくなっている拡径部を有し、前記拡径部には、前記頭部の径方向の寸法である深さ、前記頭部の軸方向の寸法である幅、及び前記頭部の軸方向の位置のうち少なくともいずれか1つが周方向に変化するように、前記頭部の径方向に窪
む凹部が設けられ
ており、前記凹部は、無端状に連続した環状、或いは複数の凹溝又は複数の小穴からなる全体として断続的な環状に形成されている、モールドピンを提供する
。
【0008】
このモールドピンによれば、頭部の拡径部に凹部が設けられているため、モールドピンによってタイヤのトレッド部に形成される装着穴の台座配置部には、径方向に突出する凸部が形成される。そして、この装着穴にスタッドピンを配置すると、凸部がスタッドピンの台座に圧接するため、台座と台座配置部とのフィッティングを向上できる。よって、装着穴に埋設したスタッドピンがトレッド部から脱落することを確実に防止できる。また、頭部の径方向の寸法である深さ、頭部の軸方向の寸法である幅、及び頭部の軸方向の位置のいずれか1つ周方向に変化するように凹部が形成されているため、頭部を切削する容積を抑制でき、モールドピンの強度低下を防止できる。
【0009】
また、頭部の径方向における凹部の深さを周方向に変化させることで、装着穴の凸部の突出量が装着穴の周方向に変化する。そして、凸部の突出量が大きい部分によって、装着穴とスタッドピンとのフィッティングを確実に向上できる。また、頭部の軸方向における凹部の幅を周方向に変化させることで、凸部とスタッドピンとの接触面積及び接触部分が装着穴の周方向に変化する。そして、接触面積が多い部分によって、装着穴とスタッドピンとのフィッティングを確実に向上できるうえ、摩擦抵抗の増加によりスタッドピンがトレッド部から脱落することを確実に防止できる。また、接触部分の変化により凸部がスタッドピンに接触する範囲が広くなるため、スタッドピンがトレッド部から脱落することを更に確実に防止できる。また、頭部の軸方向における凹部の位置を周方向に変化させることで、凸部とスタッドピンとの接触部分が装着穴の周方向に変化する。そして、接触部分の変化により凸部がスタッドピンに接触する範囲が広くなるため、スタッドピンがトレッド部から脱落することを更に確実に防止できる。
【0010】
前記拡径部は円錐形状である。この態様によれば、形成される装着穴の台座配置部とスタッドピンの台座との間に形成される隙間を小さくすることができる。よって、装着穴とスタッドピンのフィッティングを更に向上できる。
【0011】
前記頭部の軸方向における前記頭部の全長は、前記突出部の全長の30%以上40%以下である。頭部の全長を突出部の全長の30%未満にすると、成形したタイヤからモールドピンを抜く際の抵抗が大きくなる。また、頭部の全長を突出部の全長の40%より大きくすると、装着穴とスタッドピンとの隙間が大きくなる。よって、頭部の全長を前記範囲に設定することで、成形したタイヤからモールドピンを良好に抜くことができるとともに、装着穴とスタッドピンのフィッティングを向上することができる。
【0012】
また、本発明は、ピン本体とこのピン本体より大径の台座とを有するスタッドピンを埋設するための装着穴が形成されているトレッド部を備え、前記装着穴は、前記トレッド部の踏面側に設けられており前記ピン本体を配置するための本体配置部と、前記本体配置部の底側に連続して設けられており前記台座を配置するための台座配置部とを備え、前記台座配置部は、前記本体配置部から底に向けて直径が漸次大きくなっている拡開部を有し、前記拡開部には、前記台座配置部の径方向の寸法である突出量、前記台座配置部の軸方向の寸法である幅、及び前記台座配置部の軸方向の位置のうち少なくともいずれか1つが周方向に変化するように、前記台座配置部の径方向に突出す
る凸部が設けられ
ており、前記凸部は、無端状に連続した環状、或いは複数の凸条又は複数の小突起からなる全体として断続的な環状に形成されている、空気入りタイヤを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、頭部の拡径部に頭部の径方向に窪む凹部を設けることで、トレッド部の装着穴に径方向に突出する凸部を設けているため、装着穴とスタッドピンのフィッティングを向上できる。よって、装着穴に埋設したスタッドピンがトレッド部から脱落することを確実に防止できる。また、凹部は、頭部の径方向の寸法である深さ、頭部の軸方向の寸法である幅、及び頭部の軸方向の位置のいずれか1つ周方向に変化するように形成されているため、頭部を切削する容積を抑制でき、モールドピンの強度低下を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1及び
図2はスタッドピン20を配置した空気入りタイヤ(以下「タイヤ」と略する。)10を示す。
図3から
図4Bは、第1実施形態に係るタイヤ加硫用金型30のモールドピン40を示す。
図5は、モールドピン40によって成形したタイヤ10の装着穴14を示す。
【0017】
(タイヤの構成)
図1及び
図2に示すように、タイヤ10は、設定されたトレッドパターンのトレッド部11と、トレッド部11の両側に連続しているサイドウォール部12,12と、各サイドウォール部12の径方向内側端に成形されているビード部(図示せず)とを備えている。トレッド部11には、タイヤ周方向に延びる複数の主溝11aと、タイヤ幅方向に延びる複数の横溝11bとが形成されている。これらの主溝11aと横溝11bにより、複数のブロック11cが画定されている。所定のブロック11cには、タイヤ10の径方向に窪む装着穴14が形成され、この装着穴14にスタッドピン20が埋設されている。
【0018】
スタッドピン20は、概ね円柱形状のピン本体21と、ピン本体21の端部に連続している第1連続部23と、第1連続部23の端部に連続している第2連続部24と、第2連続部24の端部に連続している台座25とを備えている。ピン本体21には、第1連続部23と逆側の端部に、トレッド部11の踏面(トレッド面)よりタイヤ10の径方向外向きに突出するチップ22が一体に設けられている。第1連続部23は円錐台形状で、ピン本体21の端部から直径が漸次小さくなるように突出している。第2連続部24は、ピン本体21より小径の円柱形状で、第1連続部23の端部から一定の直径で突出している。台座25は、ピン本体21より大径の円錐台形状で、最大外径部分がピン本体21側に位置している。台座25のピン本体21側の端面25aと第2連続部24の外周部との間には、装着穴14からの離脱を防止するために直径差が大きい係止段部が形成されている。
【0019】
(タイヤ加硫用金型の構成)
図3に示すように、タイヤ加硫用金型(以下「金型」と略す。)30は、トレッド部11を成形するためのトレッド成形型31を備えている。このトレッド成形型31のトレッド成形面32側には、モールドピン40を固定するためのピン固定部33が設けられている。このピン固定部33には、金型30の径方向外向きに延びる雌ねじ部34が設けられている。雌ねじ部34のトレッド成形面32側の端部には、雌ねじ部34の径方向外向きに拡開した面取部35が設けられている。
【0020】
(モールドピンの詳細)
モールドピン40は、トレッド成形型31のピン固定部33に固定することで、金型30によって成形するトレッド部11に装着穴14を形成する。このモールドピン40は、トレッド成形型31のピン固定部33に固定するための固定部42と、トレッド部11にスタッドピン20の装着穴14を形成するための突出部48とを備えている。これら固定部42と突出部48とは、金属材料によって一体成形されている。本実施形態では、突出部48の径方向に窪む凹部55を突出部48に設けることで、形成する装着穴14に径方向に突出する凸部19を設け、装着穴14とスタッドピン20とのフィッティングを向上させる。
【0021】
詳しくは、固定部42は、雌ねじ部34に螺合される雄ねじ部43と、面取部35に嵌合される円錐座部44とを備えている。固定部42には、トレッド成形面32より金型30の内部側に突出する概ね板状の操作部45が設けられている。この操作部45は、放射状をなすように周方向に間隔をあけて複数設けられている。固定部42は、操作部45を軸線回りに正転操作することでピン固定部33に固定され、操作部45を逆転操作することでピン固定部33から離脱される。
【0022】
突出部48は、固定部42をトレッド成形型31に固定することで、トレッド成形面32より金型30の内部に向けて径方向に突出している。この突出部48は、固定部42から突出している軸部50と、軸部50の先端に設けられている頭部52とを備えている。軸部50の軸方向と頭部52の軸方向とは同一方向であり、軸部50の径方向と頭部52の径方向は同一方向である。以下の説明では、軸部50及び頭部52の軸方向をX方向といい、軸部50及び頭部52の径方向をY方向という。
【0023】
軸部50は円柱形状で、
図2に示すスタッドピン20のピン本体21及び第2連続部24より小径である。軸部50の固定部42側端部には、固定部42に向けて直径が漸次大きくなっている円錐台形状の台座部50aが設けられている。
【0024】
頭部52は、軸部50より大径かつ台座25より小径の突起である。この頭部52は、軸部50の端部から頭部先端52aに向けて直径が漸次大きくなっている円錐形状の拡径部53を備えている。また、頭部52は、拡径部53の先端側に、拡径部53から頭部先端52aにかけて直径が漸次小さくなっている縮径部54を備えている。これら拡径部53と縮径部54の境界部分は、頭部52の最大外径部52bである。
【0025】
図4A及び
図4Bに示すように、頭部52には、Y方向に窪む凹部55が設けられている。この凹部55は、無端状に連続している環状の窪み(溝)である。凹部55は、切削加工等によって拡径部53の傾斜した外周部を円弧状に切り欠くことで、Y方向の寸法である深さを確保しつつ、頭部52を切削する容積を抑えて形成されている。凹部55は、Y方向の寸法である深さd1,d2が周方向に変化するように設けられている。また、凹部55は、X方向の寸法である幅Wが頭部52の周方向に一定であり、X方向の位置も頭部52の周方向に一定の円環状に形成されている。凹部55には、最深部55aと最浅部55bとが3箇所ずつ、周方向に間隔をあけて形成されている。最深部55aの深さはd1で、最浅部55bの深さはd2であり、これらの範囲内で凹部55の深さは頭部52の周方向に変化している。なお、
図4B中の一点鎖線は、最深部55aと同一の一定深さd1で凹部55を形成した場合を示す仮想線である。
【0026】
(装着穴の詳細)
図5に示すように、モールドピン40をトレッド成形型31に固定してタイヤ10を成形すると、タイヤ10には、突出部48に対応する形状の空間からなる装着穴14が形成される。この装着穴14は、第1連続部23を含むピン本体21を配置するための本体配置部15と、第2連続部24を含む台座25を配置するための台座配置部16とを備えている。なお、本体配置部15及び台座配置部16の軸方向は、軸部50及び頭部52の軸方向と同一方向であり、本体配置部15及び台座配置部16の径方向は、軸部50及び頭部52の径方向と同一方向である。そのため、本体配置部15及び台座配置部16の軸方向もX方向といい、本体配置部15及び台座配置部16の径方向もY方向という。
【0027】
本体配置部15は、軸部50の形状(直径)に対応する円柱形状の空間である。この本体配置部15は、トレッド部11の踏面側が開口するように、トレッド部11を構成するゴムの壁で囲まれている。本体配置部15には、踏面側に台座部50aに対応する円錐台形状の入口部15aが形成されている。入口部15aは、踏面側の直径が最も大きくなっている。
【0028】
台座配置部16は、頭部52の形状に対応する概ね円錐台形状の空間である。この台座配置部16は、本体配置部15より大径であり、本体配置部15の底端に連続している。台座配置部16には、拡径部53に対応して、本体配置部15から底に向けて直径が漸次大きくなっている拡開部17が形成されている。また、台座配置部16には、縮径部54に対応して、拡開部17から底に向けて直径が漸次小さくなっている縮閉部18が形成されている。
【0029】
拡開部17には、Y方向に突出する環状の凸部19が設けられている。この凸部19は、凹部55の形状に対応した断面円弧状であり、Y方向の寸法である突出量が周方向に変化している。また、凸部19は、X方向の寸法である幅が周方向に一定であり、X方向の位置も周方向に一定の円環状に形成されている。
【0030】
図2に示すように、入口部15aから装着穴14内にスタッドピン20を圧入すると、本体配置部15はピン本体21及び第1連続部23によって弾性的に拡径され、ピン本体21及び第1連続部23は本体配置部15の弾性力で保持される。台座配置部16は台座25によって弾性的に拡径され、台座25は台座配置部16の弾性力で保持される。
【0031】
台座配置部16の上側領域には、台座配置部16と台座25との形状の違い及び小径の第2連続部24により、隙間27が形成される。詳しくは、モールドピン40の頭部52には、金型30で成形したタイヤ10からモールドピン40を抜く際の抵抗を考慮して、拡径部53を形成する必要がある。そのため、台座配置部16には、拡径部53の形状に対応する拡開部17が形成される。一方、スタッドピン20の台座25は、拡開部17に対応する傾斜部分を設けると、装着穴14からスタッドピン20が脱落し易くなるため、抵抗を大きくするために平板状に形成する必要がある。よって、台座配置部16と台座25との間に隙間27が形成されることを避けることはできない。
【0032】
これに対して本実施形態では、モールドピン40の拡径部53に凹部55を設けることで、装着穴14の拡開部17に内方へ突出する凸部19が形成されている。そのため、凸部19によって隙間27を小さくすることができるだけでなく、凸部19によって台座25に圧接することができる。詳しくは、凹部55を軸部50と頭部52の境界部分である頭部52の基部52c側に設けることで、拡開部17に形成された凸部19を隙間27内に突出させることができる。よって、形成される隙間27を小さくすることができる。一方、凹部55を最大外径部52b側に設けることで、拡開部17に形成された凸部19を台座25に当接させることができる。よって、凸部19によって台座25を圧接し、装着穴14内にスタッドピン20を確実に保持できる。このように、拡開部17に形成した凸部19により、装着穴14とスタッドピン20とのフィッティングを向上させることができるため、装着穴14からスタッドピン20が脱落することを防止できる。
【0033】
また、Y方向の凹部55の深さd1,d2を周方向に変化させることで、装着穴14の凸部19の突出量を装着穴14の周方向に変化させている。そのため、凸部19の突出量が大きい部分によって、装着穴14とスタッドピン20とのフィッティングを確実に向上できる。また、頭部52の拡径部53を円錐形状としているため、形成した装着穴14の台座配置部16とスタッドピン20の台座25との間の隙間27を小さくすることができる。よって、装着穴14とスタッドピン20のフィッティングを更に向上できる。
【0034】
また、本実施形態のモールドピン40は、Y方向の凹部55の深さd1、X方向の凹部55の幅W、X方向の頭部52の全長L1、及びY方向の頭部52の最大外径部52bの直径D1を以下のように設定することで、装着穴14とスタッドピン20とのフィッティングを更に向上できる。
【0035】
(凹部の深さの設定)
凹部55の最深部55aのY方向の寸法である深さd1は、軸部50の直径D2の10%以上20%以下の範囲に設定しており、本実施形態では概ね15%に設定している。これは、最深部55aの深さd1を10%未満に設定すると、装着穴14に形成される凸部19の突出量が小さくなり、スタッドピン20を弾性力で圧接することによる脱落防止効果が低くなるためである。また、最深部55aの深さd1を20%より大きくすると、スタッドピン20の脱落防止効果は高くなるが、拡径部53を切削する容積が増えるので、モールドピン40自体の強度が低下するためである。なお、モールドピン40の強度が低下すると、金型30を型開きした際にモールドピン40が破断し、破断片が装着穴14内に残るという不都合が生じる。よって、凹部55の最深部55aの深さd1を前述した範囲に設定することで、装着穴14とスタッドピン20とのフィッティングを向上できるとともに、モールドピン40自体の強度を確保することができる。
【0036】
(凹部の幅の設定)
凹部55のX方向の寸法である幅Wは、最深部55aの深さd1の2倍以上4倍以下の範囲に設定し、本実施形態では概ね3倍に設定している。これは、凹部55の幅Wを最深部55aの深さd1の2倍未満に設定すると、装着穴14に形成される凸部19の厚さが薄くなるため、台座25を弾性的に圧接する力が小さくなり、装着穴14からスタッドピン20が脱落することを防止する効果が低くなるためである。また、凹部55の幅Wを最深部55aの深さd1の4倍より大きく設定すると、スタッドピン20の脱落防止効果は高くなるが、拡径部53を切削する容積が増えるので、モールドピン40自体の強度が低下するためである。よって、凹部55の幅Wを前述した範囲に設定することで、装着穴14とスタッドピン20とのフィッティングを向上できるとともに、モールドピン40自体の強度を確保することができる。
【0037】
(頭部の全長の設定)
図3に示すように、X方向の頭部52の全長L1は、軸部50及び頭部52を含む突出部48の全長L2の30%以上40%以下の範囲に設定しており、本実施形態では概ね35%に設定している。これは、頭部52の全長L1を突出部48の全長L2の30%未満(低扁平率)に設定すると、金型30を型開きして成形したタイヤ10からモールドピン40を抜く際の抵抗が大きくなるためである。また、頭部52の全長L1を突出部48の全長の40%より大きく設定(高扁平率)すると、台座配置部16と台座25との間に形成される隙間27が大きくなるためである。よって、頭部52の全長L1を前述した範囲に設定することで、タイヤ10からモールドピン40を良好に抜くことができるとともに、装着穴14とスタッドピン20のフィッティングを向上することができる。
【0038】
(頭部最大外径部の直径の設定)
頭部52の最大外径部52bの直径D1は、軸部50の直径D2の180%以上220%以下の範囲に設定しており、本実施形態では概ね200%に設定している。これは、頭部52の最大外径部52bの直径D1を軸部50の直径D2の180%未満に設定すると、形成した台座配置部16と台座25の直径差が大きくなり過ぎて、スタッドピン20を装着穴14に配置することが困難になるためである。また、頭部52の最大外径部52bの直径D1を軸部50の直径D2の220%より大きく設定すると、形成した台座配置部16と台座25の直径差が小さくなり過ぎて、装着穴14からスタッドピン20が脱落し易くなるためである。よって、頭部52の最大外径部52bの直径D1を前述した範囲に設定することで、装着穴14とスタッドピン20とのフィッティングを向上できるとともに、装着穴14からスタッドピンが脱落することを防止できる。
【0039】
以上のように、本実施形態では、モールドピン40の頭部52に設けた凹部55により、タイヤ10の装着穴14に凸部19を設けているため、装着穴14とスタッドピン20のフィッティングを向上できる。よって、装着穴14に埋設したスタッドピン20がトレッド部11から脱落することを確実に防止できる。また、モールドピン40は、凹部55のY方向の深さ及びX方向の幅を調整することで、強度低下が防止されている。よって、タイヤ10からモールドピン40を抜く際に、モールドピン40が曲がったり、破断したりすることを防止できる。
【0040】
(第2実施形態)
図6Aは第2実施形態のモールドピン40の一部を示し、
図6Bはモールドピン40によって成形した第2実施形態のタイヤ10の装着穴14を示す。
図6Aに示すように、この第2実施形態では、凹部55のX方向の寸法である幅を、W1からW2の間で周方向に変化するように形成した点で、第1実施形態と相違する。
【0041】
詳しくは、凹部55の軸部50側には、波状をなすように周方向に延びている無端状の第1縁部56が設けられている。頭部先端52a側には、第1縁部56に対して反転した波状をなすように、周方向に延びている無端状の第2縁部57が設けられている。軸部50側に突出する第1縁部56の山部56aと、頭部先端52a側に突出する第2縁部57の谷部57bとは、X方向に概ね一致しており、これらの間の幅はW1である。また、頭部先端52a側に突出する第1縁部56の谷部56bと、軸部50側に突出する第2縁部57の山部57aとは、X方向に概ね一致しており、これらの間の幅はW2である。このようにした凹部55の幅は、W1,W2の範囲内で周方向に変化している。また、凹部55の幅W1,W2の変化により、X方向の凹部55の位置(縁部56,57の位置)も、頭部52の周方向に変化している。一方、凹部55のY方向の寸法である深さは、頭部52の周方向に変化することなく、一定の深さで設けられている。但し、凹部55の深さも頭部52の周方向に変化させてもよい。
【0042】
図6Bに示すように、第2実施形態のモールドピン40を用いてタイヤ10を成形すると、タイヤ10の装着穴14には、台座配置部16内に幅が周方向に変化する凸部19が形成される。そして、この凸部19を有する装着穴14にスタッドピン20を埋設することにより、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0043】
また、第2実施形態では、凸部19の幅が周方向に変化しているため、凸部19とスタッドピン20との接触面積及び接触部分が装着穴14の周方向に変化する。よって、接触面積が多い部分によって、装着穴14とスタッドピン20とのフィッティングを確実に向上できるうえ、摩擦抵抗の増加によりスタッドピン20がトレッド部11から脱落することを確実に防止できる。また、接触部分の変化により凸部19がスタッドピン20に接触する範囲が広くなるため、スタッドピン20がトレッド部11から脱落することを更に確実に防止できる。
【0044】
(第3実施形態)
図7Aは第3実施形態のモールドピン40の一部を示し、
図7Bはモールドピン40によって成形した第3実施形態のタイヤ10の装着穴14を示す。
図7Aに示すように、この第3実施形態では、凹部55のX方向の位置(縁部56,57の位置)だけを、頭部52の周方向に変化するように形成した点で、第1実施形態と相違する。
【0045】
詳しくは、凹部55は、第2実施形態と同様に、波状をなすように周方向に延びている無端状の第1縁部56と第2縁部57とを備えている。軸部50側に突出する第1縁部56の山部56aと第2縁部57の山部57aとは、X方向に概ね一致している。また、頭部先端52a側に突出する第1縁部56の谷部56bと第2縁部57の谷部57bとは、X方向に概ね一致している。そのため、X方向の第1縁部56と第2縁部57の間の幅は、頭部52の周方向全域にわたって一定である。また、Y方向の凹部55の深さも、周方向に変化することなく、一定の深さで設けられている。そのため、第3実施形態では、X方向の縁部56,57の位置だけが、頭部52の周方向に変化している。但し、凹部55の深さも頭部52の周方向に変化させてもよい。
【0046】
図7Bに示すように、第3実施形態のモールドピン40を用いてタイヤ10を成形すると、タイヤ10の装着穴14には、台座配置部16内に装着穴14のX方向の位置が周方向に変化する一定幅の凸部19が形成される。そして、この凸部19を有する装着穴14にスタッドピン20を埋設することにより、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。また、凸部19の位置が周方向に変化しているため、凸部19とスタッドピン20との接触部分が装着穴14の周方向に変化する。よって、接触部分の変化により凸部19がスタッドピン20に接触する範囲が広くなるため、スタッドピン20がトレッド部11から脱落することを確実に防止できる。
【0047】
(第4実施形態)
図8Aは第4実施形態のモールドピン40の一部を示し、
図8Bはモールドピン40によって成形した第4実施形態のタイヤ10の装着穴14を示す。
図8Aに示すように、この第4実施形態では、頭部52の周方向の途中に不連続部60を有する断続的な環状の凹部55を形成した点で、第1実施形態と相違する。なお、この例では、4箇所に不連続部60が形成されるように、円弧状をなす4個の凹溝61によって実質的に環状になっている凹部55を形成しているが、凹溝61(不連続部60)の数はこの限りではない。
【0048】
図8Bに示すように、第4実施形態のモールドピン40を用いてタイヤ10を成形すると、タイヤ10の装着穴14には、円弧状に突出する複数の凸条62によって、断続的な環状の凸部19が形成される。そして、この凸部19を有する装着穴14にスタッドピン20を埋設することにより、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0049】
(第5実施形態)
図9Aは第5実施形態のモールドピン40の一部を示し、
図9Bはモールドピン40によって成形した第5実施形態のタイヤ10の装着穴14を示す。
図9Aに示すように、この第5実施形態では、ディンプルのような球面形状をなす複数の小穴63を頭部52の周方向に間隔をあけて形成することで、実質的に環状になっている凹部55を設けた点で、第1実施形態と相違する。
【0050】
図9Bに示すように、第5実施形態のモールドピン40を用いてタイヤ10を成形すると、タイヤ10の装着穴14には、球面状に突出する複数の小突起64によって、見かけ上環状になるように凸部19が形成される。そして、この凸部19を有する装着穴14にスタッドピン20を埋設することにより、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0051】
以上の第4実施形態及び第5実施形態のように、凹部55は、無端状に連続している厳密的な環状に限られず、途中に不連続部60を有する断続的な環状としてもよいし、小穴63を一方向に並べて形成して実質的に環状としてもよい。また、第4実施形態及び第5実施形態の凹部55は、第1実施形態と同様にY方向の深さが周方向に変化するように形成してもよいし、第2実施形態と同様にX方向の幅及び位置が周方向に変化するように形成してもよいし、第3実施形態と同様にX方向の位置が周方向に変化するように形成してもよい。
【0052】
(第6実施形態)
図10Aは第6実施形態のモールドピン40の一部を示し、
図10Bはモールドピン40によって成形した第6実施形態のタイヤ10の装着穴14を示す。
図10Aに示すように、この第6実施形態では、頭部65を概ね球状に形成した点で、各実施形態と相違する。この頭部65は、
図10Aにおいて上側部分が軸部50から直径が漸次大きくなっている拡径部66であり、
図10Aにおいて下側部分が拡径部66から直径が漸次小さくなっている縮径部67である。また、拡径部66には、X方向の位置だけを変化させた第3実施形態と同様の凹部55を形成しているが、第1実施形態と同様の凹部55を設けてもよいし、第2実施形態と同様の凹部55を設けてもよい。
【0053】
図10Bに示すように、第6実施形態のモールドピン40を用いてタイヤ10を成形すると、タイヤ10の装着穴14には、概ね球状の台座配置部16が形成される。そして、この台座配置部16では、頭部52を概ね円錐形状とした第1実施形態から第5実施形態と比較すると、タイヤ10の装着穴14の台座配置部16とスタッドピン20の台座25との間に形成される隙間27が大きくなる。しかし、凹部55によって形成された凸部19によりスタッドピン20の台座25を圧接することで、装着穴14からスタッドピン20が脱落することを大幅に抑制できる。
【0054】
(第7実施形態)
図11Aは第7実施形態のモールドピン40の一部を示し、
図11Bはモールドピン40によって成形した第7実施形態のタイヤ10の装着穴14を示す。
図11Aに示すように、この第7実施形態では、モールドピン40に2種以上の凹部を設けた点で、各実施形態と相違している。詳しくは、この第7実施形態では、3種の凹部55,70,72が形成されている。第1凹部55は頭部52に設けた環状の窪みであり、第2凹部70は頭部52に設けた螺旋状の窪みであり、第3凹部72は軸部50の先端(基部52c)側に設けた複数の線状の窪みである。
【0055】
第1凹部55は、頭部52の拡径部53の最大外径部52b近傍に設けられている。
図11Aでは、第1凹部55を第3実施形態と同様の構成としているが、第1実施形態から第5実施形態のいずれの構成であってもよい。
【0056】
第2凹部70は、頭部52の基部52cを起点70aとし、頭部先端52aに向けて第1凹部55近傍まで螺旋状に延びている。第2凹部70のY方向の寸法である深さは、起点70aから終点70bにかけて一定に形成してもよいし、頭部52の周方向に変化(増減)するように形成してもよい。また、第2凹部70は、起点70aから終点70bまで連続している厳密的な螺旋状としてもよいし、途中に不連続部を有する断続的な螺旋状としてもよいし、小穴63を一方向に並べて形成して実質的に螺旋状としてもよい。また、第2凹部70のY方向の深さとX方向の幅とは、第1凹部55と同様に、前述した設定範囲内で形成されている。
【0057】
第3凹部72は、軸部50の外周部に対してX方向と直交する方向に延びるように設けられている。
図11Aでは、直線状に延びる第3凹部72を周方向に間隔をあけて3箇所に設けているが、その数は希望に応じて変更可能である。但し、隣接する第3凹部72,72の間には、非形成部73を設けることが好ましい。また、各第3凹部72は、互いに平行に位置しないように、軸部50の外周部に設けることが好ましい。また、第3凹部72のY方向の深さとX方向の幅とは、第1凹部55と同様に、前述した設定範囲内で形成されている。
【0058】
図11Bに示すように、第7実施形態のモールドピン40を用いてタイヤ10を成形すると、タイヤ10の装着穴14には、台座配置部16内に第1凹部55に対応する第1凸部19と第2凹部70に対応する第2凸部75が形成され、本体配置部15内に第3凹部72に対応する第3凸部76が形成される。そして、この装着穴14にスタッドピン20を埋設することにより、3種の凸部19,75,76によって、装着穴14とスタッドピン20とのフィッティングを格段に向上できる。
【0059】
詳しくは、第1凹部55に対応する環状の第1凸部19によって台座25を圧接できるため、装着穴14とスタッドピン20とのフィッティングを向上できる。また、第2凹部70に対応する螺旋状の第2凸部75によって、台座配置部16と台座25との間に形成される隙間27を小さくすることができる。そして、第3凹部72に対応する直線状の第3凸部76によって、ピン本体21より小径の第1連続部23又は第2連続部24を圧接できるため、装着穴14とスタッドピン20とのフィッティングを向上できる。
【0060】
なお、本発明のモールドピン及び空気入りタイヤは、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、前記実施形態では、頭部52を円弧状に切り欠いて凹部55を形成し、装着穴14内に断面円弧状の凸部19を突設したが、凹部55(凸部19)の形状は希望に応じて変更が可能である。また、前記実施形態では、拡径部53に1個の環状凹部55を設けたが、X方向に間隔をあけて2以上の環状凹部55を設けてもよい。