(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記係止部材は、前記吸水シートを係止する爪部材を複数備えており、複数の前記爪部材は、前記プラテンローラの延在方向に離間して配置されている請求項5に記載のサーマルプリンタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に開示された印刷装置では、筐体内への液体を排出したとしても、なお筐体内、例えばプラテンホルダに液体が残留してしまうことがある。液体がプラテンホルダに残留している場合、プラテン表面に付着した水を一時的にふき取ったとしても、さらに液体がプラテンに付着してしまう。プラテンに液体が付着していると、搬送中の印刷用紙を濡らしてしまい、正常な印字の妨げとなることがある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、筐体内の液体が印刷用紙を濡らす事態を抑制することができるサーマルプリンタ及びサーマルプリンタに用いられる印字ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るサーマルプリンタは、プラテンローラを備えるプラテンユニット及びヘッドユニットを有する印字ユニットが筐体に収容されたサーマルプリンタであって、前記プラテンローラを支持するプラテン支持体を備え、前記プラテン支持体における前記プラテンローラの重力方向下方位置には、前記プラテンローラに対向する対向面部が形成されており、前記プラテン支持体における前記対向面部に吸水シートが配設されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るサーマルプリンタは、プラテンローラを支持するプラテン支持体におけるプラテンローラの重力方向下方位置に形成されたプラテン支持体における対向面部に吸水シートが配設されている。プラテン支持体における対向面部に滞留する液体を吸水シートが吸収することにより、対向面部において液体による水滴の発生を防ぐことができる。したがって、対向面部における水滴が少なくなるので、筐体内の液体が印刷用紙を濡らす事態を抑制することができる。
【0010】
上記のサーマルプリンタにおいて、前記吸水シートは多孔質材料で形成されているものであってもよい。
【0011】
吸水シートが多孔質材料で形成されていることにより、液体の吸水性を高めることができる。その結果、筐体内の液体をさらに好適に吸収することができるので、筐体内の液体が印刷用紙を濡らすという事態をより好適に抑制することができる。
【0012】
上記のサーマルプリンタにおいて、前記プラテン支持体における前記対向面部に溝部が形成されていてもよい。
【0013】
プラテン支持体における対向面部に溝部が形成されていることにより、吸水シートが吸水した液体を外部に排出する経路を形成することができる。このため、筐体内の液体を少なくできるので、筐体内の液体が印刷用紙を濡らす事態をさらに好適に抑制することができる。
【0014】
上記のサーマルプリンタにおいて、前記プラテン支持体の側方に、前記筐体に浸入した液体を滞留させる滞留部が形成されており、前記溝部が前記滞留部に連通するものでもよい。
【0015】
プラテン支持体の側方に滞留部が形成され、前記溝部が滞留部に連通することにより、筐体内におけるプラテン支持体に滞留する液体を少なくすることができる。したがって、筐体内の液体が印刷用紙を濡らす事態をさらに好適に抑制することができる。
【0016】
上記のサーマルプリンタにおいて、前記吸水シートを係止する係止部材が設けられていてもよい。
【0017】
吸水シートを係止する係止部材が設けられていることにより、吸水シートをプラテン支持体に確実に配設することができる。
【0018】
上記のサーマルプリンタにおいて、前記係止部材は、前記吸水シートを係止する爪部材を複数備えており、複数の前記爪部材は、前記プラテンローラの延在方向に離間して配置されているものであってもよい。
【0019】
吸水シートを係止する爪部材がプラテンローラの延在方向に離間して複数設けられていることにより、爪部材と吸水シートとが接触した状態で吸水シートが配設されている。このため、筐体内における液体を吸水シートに誘導することができるので、吸水シートにおける液体の収集性能を高めることができる。
【0020】
上記のサーマルプリンタにおいて、前記爪部材の天部と、前記吸水シートの上面との重力方向高さが共通とされていてもよい。
【0021】
爪部材の天部と、吸水シートの上面との重力方向高さが共通とされていることにより、爪部材または吸水シートとプラテンローラまでの距離が一定とされる。このため、プラテンローラから見て、爪部材は吸水シートよりも遠くに配置されるので、爪部材に滞留する液体がプラテンローラに触れにくくなるようにできる。したがって、プラテンローラを濡れにくくできるので、筐体内の液体が印刷用を濡らす事態をさらに好適に抑制することができる。
【0022】
なお、爪部材の天部とは、爪部材の最も高い位置が面状であるときには、その面の部分をいい、線状あるいは点状であるときには、その線あるいは点の部分を言う。
【0023】
前記爪部材は、重力方向上方から重力方向下方に向かう傾斜部を備えていてもよい。
【0024】
爪部材が重力方向上方から重力方向下方に向かう傾斜部を備えていることにより、爪部材に滞留する液体を吸水シートに誘導することができる。したがって、爪部材に液体を滞留しにくくすることができる。
【0025】
上記のサーマルプリンタにおいて、前記プラテン支持体には、前記プラテンローラの背面側に配置された背面部が形成され、前記背面部には、複数の補強リブが設けられており、複数の前記補強リブは、複数の前記爪部材における隣り合う爪部材の間に配置され、前記吸水シートの上面を抑えるものであってもよい。
【0026】
補強リブによって吸水シートが抑えられていることにより、部品点数の増大を招くことなく、吸水シートの離脱を抑制することができる。
【0027】
本発明に係る印字ユニットは、上記のサーマルプリンタに用いられる印字ユニットであってもよい。
【0028】
この構成によれば、筐体内の液体が印刷用紙を濡らす事態を抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るサーマルプリンタ及びサーマルプリンタに用いられる印字ユニットによれば、筐体内の液体が印刷用紙を濡らす事態を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態について説明する。
図1は、サーマルプリンタ1におけるペーパーカバー3が閉位置の状態を示す斜視図である。
図2は、ペーパーカバーが開位置の状態を示す斜視図である。なお、以下の説明では、発明を理解し易くするために、適宜構成部品の一部を省略したり、形状を単純化したり、縮尺を変更したりする等、図示を簡略化している。また、図中において、FRは前方を、LHは左方を、UPは上方をそれぞれ示す。また、サーマルプリンタ1は、使用者に携行されて使用されることがあり、その上下方向が定まらないことがあるが、本実施形態では、サーマルプリンタ1が
図1に示す前後上下左右方向を向いた状態を携行時の姿勢として想定された想定携行姿勢とし、この想定携行姿勢にあるサーマルプリンタ1について説明する。
【0033】
図1、
図2に示すように、サーマルプリンタ1は、筐体であるケーシング2を備えている。ケーシング2は、開口部2aを有している。また、サーマルプリンタ1は、開口部2aを開閉する開閉カバーであるペーパーカバー3を備えている。ペーパーカバー3は、ケーシング2に回動可能に支持されている。さらに、サーマルプリンタ1は、ケーシング2に収容された印字ユニット4を備えている。
【0034】
ケーシング2は、ポリカーボネート等の樹脂材料や金属材料からなり、その上部は前壁10を有する直方体状に形成される一方、下部は前方に向けて開口する開口部2aを有する箱型形状に形成されている。ケーシング2の前壁10における上部には、サーマルプリンタ1の各種操作を行う操作部11が配設されている。操作部11としては、電源スイッチやFEEDスイッチ等の各種機能スイッチ12が配設されるとともに、機能スイッチ12に隣接して電源スイッチのON/OFFの情報を知らせるPOWERランプや、サーマルプリンタ1のエラー等を知らせるERRORランプ等の各種ランプ13が配設されている。また、ケーシング2の前壁10と側壁15との間には、ペーパーカバー3のオープンボタン18が設けられている。
【0035】
ケーシング2の下部には、開口部2aを通してロール紙Rが収容されるロール紙収容部21が画成されている。ロール紙収容部21は、ロール紙Rを保持するガイドプレート22を備え、このガイドプレート22とペーパーカバー3の内面との間でロール紙Rを覆うように保持している。ガイドプレート22は、左右方向から見た断面視で弧状とされ、その内周面にロール紙Rの外周面が接触した状態でロール紙Rを保持するとともに、ロール紙Rから引き出された記録紙Pを印字ユニット4まで案内する。なお、本実施形態で用いられる記録紙Pは、感熱紙であって、各種ラベルや、レシート、チケットの印刷等に好適に使用される。この記録紙Pは、ロール状に巻回されることで、中空孔を有するロール紙Rを構成している。そして、印字ユニット4は、記録紙Pのうち、ロール紙Rから引き出された部分に対して印刷を行う。
【0036】
ペーパーカバー3は、ポリカーボネート等の樹脂材料からなり、ペーパーカバー3の下方には、ペーパーカバー3を枢支する図示しないヒンジ構造が形成されている。ペーパーカバー3は、ヒンジ構造によりケーシング2に対して回動可能とされている。ヒンジ構造は、ケーシング2に設けられたヒンジシャフトと、ペーパーカバー3に設けられたヒンジ板が回動可能に支持されて形成されている。また、ペーパーカバー3は、その上端が後述するプラテンユニット32を介してケーシング2に係止可能に構成されている。そして、オープンボタン18を押下することにより、ケーシング2とペーパーカバー3との係止が解除され、ペーパーカバー3が
図1に示す閉位置から
図2に示す開位置へ回動する。また、ペーパーカバー3の閉位置において、ペーパーカバー3の上端縁とケーシング2の前壁10における下端縁との間に形成された隙間は、印字ユニット4によって印字される記録紙Pが排出される排出口24を構成している。
【0037】
排出口24の開口縁には、排出口24から排出される記録紙Pを切断する切断刃25が配設されている。切断刃25は、ケーシング2の前壁10における下端縁(開口縁のうち、上側に位置する部分)、及びペーパーカバー3の上端縁にそれぞれ一体で形成され、記録紙Pを切断刃25に向けて引き倒すことにより、記録紙Pが切断される。
【0038】
また、ケーシング2における裏側上部には、ストラップやフックが取り付け可能とされている。使用者等がサーマルプリンタ1を携行する場合などには、ストラップを首や肩に掛けたり、フックを腰ベルトに取り付けたりなどしてサーマルプリンタ1を携行することが多くなると想定される。このため、
図1に示す前後上下左右方向を向いた状態が、サーマルプリンタの想定携行状態となる。
【0039】
印字ユニット4は、ヘッドユニット31と、プラテンユニット32とを備えている。ヘッドユニット31は、ケーシング2の前壁10における下端部に設けられている。プラテンユニット32は、ペーパーカバー3の上端部に設けられており、ペーパーカバー3の開閉操作に伴いヘッドユニット31に対して着脱可能に組み合わされている。
図2に示すように、プラテンユニット32は、ペーパーカバー3に取り付けられるプラテン支持体であるプラテンフレーム35と、プラテンフレーム35に回転可能に支持されたプラテンローラ36と、を備えている。
【0040】
図3は、印字ユニット4のプラテンユニット32を上方から見た斜視図、
図4は、プラテンユニット32を前方から見た正面図、
図5は、プラテンユニット32を後方から見た背面図である。また、
図6は、プラテンユニット32の要部拡大斜視図、
図7(A)は、プラテンユニットの側断面図、
図7(B)は、プラテンユニットの側部拡大正面図、なお、
図7(B)では、ケーシング2の開口部2aをペーパーカバー3で閉じた状態を示している。なお、
図3及び
図4において、プラテンローラ36を仮想線で示している。
【0041】
図3〜
図5に示すように、プラテンローラ36は、左右方向に沿って延びるプラテン軸41と、プラテン軸41に外装されたゴム等からなるローラ本体42と、を備えている。プラテン軸41の両端部には、プラテン軸41を回転可能に支持する軸受43がそれぞれ外装されている。各軸受43は、プラテンフレーム35(
図2参照)に保持され、これら軸受43を介してプラテンローラ36がプラテンフレーム35に回転可能に支持されている。
【0042】
プラテン軸41の右側端部には、プラテン用ギヤ45が装着されている。また、ヘッドユニット31には、このプラテン用ギヤ45に組み合わされる図示しない輪列機構及び輪列機構に接続されたモータが設けられている。プラテン用ギヤ45は、プラテンユニット32とヘッドユニット31とが組み合わされたとき、ヘッドユニット31側に設けられた輪列機構に噛合して、モータの回転駆動力をプラテンローラ36に伝達する。また、プラテンユニット32とヘッドユニット31とが組み合わされたとき、プラテンローラ36の外周面にヘッドユニット31におけるサーマルヘッドが圧接される。
【0043】
プラテンフレーム35は、
図6及び
図7(A)にも示すように、プラテンローラ36の重力方向下方に配置され、プラテンローラ36に対向する対向面部となる下面部51と、プラテンローラ36の背面側に配置される背面部52とを備えている。下面部51における手前位置には、プラテンローラ36の軸方向に相当する左右方向に沿った溝部53が形成されている。溝部53は、プラテンフレーム35の左右方向端部にまで延在して形成されている。また、プラテンフレーム35における下面部51には、吸水シート60が配設されている。このため、吸水シート60の上方にプラテンローラ36が配設され、吸水シート60とプラテンローラ36との離間距離はあまり長くない距離とされている。
【0044】
背面部52の手前位置には、複数の上爪部材54と下爪部材55が配置されている。これらの複数の上爪部材54と下爪部材55とは、それぞれが一対となって重力方向の上下に離間して配置されている。上爪部材54は、下面部51よりも高い位置に配置されており、下爪部材55は、下面部51よりも低い位置に配置されているが、下爪部材55の上面は下面部51の表面よりもわずかに高い位置に配置されている。
【0045】
上爪部材54と下爪部材55との間には、吸水シート60が配設されている。吸水シート60は、上爪部材54及び下爪部材55の間に嵌め込まれ、上爪部材54及び下爪部材55に係止されている。吸水シート60の幅は、プラテンフレーム35における下面部51や背面部52の左右方向の幅と略同じ幅を有している。
【0046】
上爪部材54は、プラテンユニット32を正面視した方向の形状が略六角形の柱状体をなす上爪本体56を備えている。上爪本体56は、
図6に示すように、上面部56Aと下面部56Bとを備えている。上面部56Aにおける左右方向の幅は、下面部56Bにおける左右方向の幅よりも広くされている。
【0047】
また、上面部56Aの左側辺と下面部56Bの左側辺の間には、左傾斜面部56C及び左側面部56Dが形成されている。左傾斜面部56Cの上辺が上面部56Aの左側面と共通しており、左側面部56Dの下辺と下面部56Bの左側辺が共通している。また、左傾斜面部56Cの下辺と左側面部56Dの上辺とが共通している。
【0048】
同様に、上面部56Aの右側辺と下面部56Bの右側辺の間には、右傾斜面部56E及び右側面部56Fが形成されている。右傾斜面部56Eの上辺が上面部56Aの右側面と共通しており、右側面部56Fの下辺と下面部56Bの右側辺が共通している。また、右傾斜面部56Eの下辺と右側面部56Fの上辺とが共通している。
【0049】
上爪部材54における上爪本体56の下面部56Bには、上爪突出部56Hが設けられている。上爪突出部56Hは、上爪本体56の下面部56Bから下方に向けて突出している。上爪突出部56Hは、直方体状をなしており、平面した際の長方形の大きさは、上爪本体56の下面部の大きさよりも小さくされている。また、上爪突出部56Hの左右方向の幅は、上爪本体56における下面部56Bの左右方向の幅よりも狭く、上面部56Aの左右方向の幅よりも広くされている。また、上爪突出部56Hは、前後方向の位置が上爪本体56の位置よりも後方の位置とされている。
【0050】
下爪部材55は、直方体状をなしており、下爪部材55における左右方向の幅は、上爪部材54における下面部56Bにおける左右方向の幅と略同じとされている。また、平面視した際に、上爪部材54における下面部56Bと下爪部材55とは、幅方向端部の位置が一致するように配置されている。
【0051】
背面部52には、複数の補強リブ58が設けられている。補強リブ58は、背面部52の表面に沿って形成されており、プラテンフレーム35を補強している。また、複数の補強リブ58は、プラテンユニット32を正面視した際に、隣接する上爪部材54同士の間にそれぞれ配置されている。補強リブ58は、その先端部が背面部52よりも前方に向けて突出しており、その高さが上爪部材54の下面部56Bの高さと略同一となるように形成され、先端部が吸水シート60と当接している。
【0052】
プラテンフレーム35の下面部51に配設された吸水シート60は、多孔質材料(ポーラス材料)、例えば不織布などで構成されている。多孔質材を用いることにより、高い吸水性を発揮する。吸水シート60としては、不織布のほか、ポリウレタンなどの発泡材料を用いてもよい。また、多孔質材料以外の材料を用いてもよい。
【0053】
吸水シート60は高い吸水性を備えており、ケーシング2内に浸入した水などの液体を吸収する。また、吸収した液体を毛管現象によって吸着保持する。吸水シート60における液体の許容保持量を超えた場合、吸水シート60から液体が漏れ出してくる。吸水シート60から漏れ出した液体は、主に溝部53の方向に落下する。このため、吸水シート60の表面からの液体の漏出量は、ほとんどないか極めて少ないものとなる。
【0054】
吸水シート60は、
図3に示すように、長尺状の本体部61を備えている。吸水シート60は、本体部61の長手方向が左右方向に沿うようにして配置されている。本体部61における後方には、長手方向に離間して配置された複数の嵌合凹部62が形成されており、吸水シート60は、全体的に櫛歯状とされている。
【0055】
吸水シート60における本体部61の厚さは、上爪部材54における下面部56Bと下爪部材55における上面との間の距離と略同一とされている。また、吸水シート60における嵌合凹部62の幅は、上爪部材54における上爪突出部56Hの幅と略同一とされている。吸水シート60は、プラテンユニット32における上爪部材54と下爪部材55とに挟み込まれて係止される。また、吸水シート60における嵌合凹部62の間に上爪部材54の上爪突出部56Hが挟み込まれて、吸水シート60が位置決めされている。
【0056】
溝部53の左右側方における溝部53よりも重力方向下方には、それぞれ滞留槽70がプラテンフレーム35と一体的に設けられている。溝部53は、その左右に配置された滞留槽70に連通している。また、溝部53の左右端には、外側に行くにしたがって下降する傾斜が付されている。このため、溝部53に滞留する液体は、左右両側の滞留槽70にそれぞれ誘導される。滞留槽70に誘導された液体は、ロール紙収容部21の外側に沿って落下し、ケーシング2とペーパーカバー3の間の隙間などから外部に排出される。
【0057】
また、ペーパーカバー3の内側面には、
図7(B)に示すように、ケーシング2の開口部2aをペーパーカバー3で閉じた際に下爪部材55と溝部53との間に配置される凸条部3Aが設けられている。凸条部3Aは、左右方向に沿って設けられており、その厚さは略均一とされている。凸条部3Aにおける左右方向端部には、切欠き部3Bが形成されている。また、凸条部3Aにおける左右方向中央部にも、図示しない切欠き部が形成されている。
【0058】
次に、本実施形態に係るサーマルプリンタ1のケーシング2内に浸入した液体の排出工程及びサーマルプリンタ1の作用効果について説明する。本実施形態に係るサーマルプリンタ1では、ケーシング2の内部に液体が浸入し、例えばロール紙Rを濡らすと、記録紙Pに対する悪影響などが出る。このような事態を避けるためには、ケーシング2の内部に浸入した液体をロール紙Rに近づけないことが好適である。
【0059】
図1に示す排出口24から浸入した液体の多くは、プラテンローラ36の重力方向下方に位置するプラテンフレーム35の下面部51に滞留する。下面部51に滞留する液体が水滴などとなった場合に、その水滴の上部がプラテンローラ36の下側に接触してしまい、プラテンローラ36を濡らしてしまう懸念がある。
【0060】
この点、プラテンフレーム35の下面部51には、吸水シート60が配設されている。このため、プラテンフレーム35の下面部51に滞留する液体は吸水シート60に吸収されるので、プラテンフレーム35の下面部51において、水滴となることが抑制される。したがって、下面部51における水滴が少なくなるので、ケーシング2内の液体が印刷用紙を濡らす事態をさらに好適に抑制することができる。
【0061】
例えば、
図8(A)に示すように、プラテンローラ36とプラテンフレーム35の下面部51との離間距離を、液体が水滴となったと想定されるときの水滴の高さよりも高くすることにより、下面部51に水滴が溜まったとしても、プラテンローラ36に対する液体の付着を抑制することができる。
【0062】
しかし、この場合には、プラテンローラ36とプラテンフレーム35の下面部51との離間距離を大きくしなければならないので、プラテンユニット32が大型化してしまう懸念がある。また、水滴が溜まっているときにサーマルプリンタ1と持ち運び等すると、水滴がプラテンローラ36に飛び散り、プラテンローラ36を濡らす恐れがある。
【0063】
この点、
図8(B)に示すように、プラテンフレーム35の下面部51に吸水シート60を配設することにより、吸水シート60とプラテンローラ36との離間距離を液体が水滴となったと想定される高さよりも低くしても、プラテンローラ36に対する液体の付着を少なくすることができる。また、吸水シート60によって液体が保持されるので、サーマルプリンタ1を持ち運ぶなどした場合でも、液体の飛び散りを防ぐことができる。したがって、プラテンユニット32の小型化を図りながら、ケーシング2内の液体が印刷用紙を濡らす事態をさらに好適に抑制することができる。
【0064】
また、吸水シート60は、多孔質材料である不織布で形成されている。吸水シート60が多孔質材料で形成されていることにより、吸水シート60が高い吸水性能を発揮することができる。したがって、ケーシング2内の液体をさらに好適に吸収することができるので、ケーシング2内の液体が印刷用紙を濡らすという事態をより好適に抑制することができる。
【0065】
また、吸水シート60の吸水量には上限があるので、吸水シート60に吸水された液体は徐々に吸水シート60から漏れ出して排出される。ここで、プラテンフレーム35における下面部51には、プラテンローラ36の軸方向に相当する左右方向に沿った溝部53が形成されている。溝部53が形成されていることにより、吸水シート60が漏れ出した液体を外部に排出する経路を形成することができる。また、吸水シート60では、液体が漏れ出すことにより、改めて吸水容量が確保されるので、新たにケーシング2内に浸入した液体を吸水することができる。よって、ケーシング2内の液体が印刷用紙を濡らすという事態をより好適に抑制することができる。
【0066】
また、プラテンフレーム35の側方には、ケーシング2内に浸入した液体を滞留させる滞留槽70が形成されている。滞留槽70が形成されていることにより、ケーシング2内に大量の液体が浸入してしまい、例えばそのケーシング2からの排出に時間がかかったとしても、液体の排出が行われている間に滞留槽70に液体を滞留させておくことができるので、プラテンフレーム35の下面部51に液体が多量の残ってしまうことを抑制することができる。
【0067】
また、プラテンフレーム35における溝部53は、滞留槽70に連通している。このため、吸水シート60から漏れ出して溝部53に排出された液体は、側方の滞留槽70に案内される。このため、下面部51に滞留する液体を少なくすることができる。したがって、ケーシング2内の液体が印刷用紙を濡らす事態をさらに好適に抑制することができる。
【0068】
また、
図9に示すように、プラテンフレーム35における下面部51と溝部53との間には、ペーパーカバー3の凸条部3Aが挟み込まれるが、凸条部3Aの左右両端及び中央部には、切欠き部が形成されている。このため、吸水シート60から漏れ出す液体は、凸条部3Aを回避して溝部53に移動することができる。
【0069】
また、プラテンフレーム35の下面部51には、上爪部材54及び下爪部材55が設けられており、吸水シート60は、上爪部材54及び下爪部材55によって係止されている。このため、吸水シート60をプラテンフレーム35の下面部51に確実に配設することができる。また、吸水シート60の厚さは、上爪部材54の下面部56Bと下爪部材55の上面部との間の距離と略同一とされている。このため、上爪部材54と下爪部材55によって、吸水シート60を確実に係止することができる。なお、吸水シート60の厚さは、それ以外の厚さでもよく、例えば、上爪部材54の下面部56Bと下爪部材55の上面部との間の距離よりもわずかに長い厚さとしてもよい。
【0070】
また、上爪部材54は、プラテンローラ36の延在方向に離間して複数配設されている。これらの上爪部材54のそれぞれに対になって複数の下爪部材55が配設されている。こられの複数の上爪部材54及び下爪部材55によって吸水シート60が係止されているので、吸水シート60をプラテンフレーム35の下面部51により確実に配設することができる。
【0071】
また、隣接する上爪部材54同士、及び下爪部材55同士の間には、隙間が形成されており、この隙間部分に吸水シート60が配置されている。また、上爪部材54及び下爪部材55は、いずれも吸水シート60に接触している。このため、上爪部材54及び下爪部材55に付着しようとする液体を吸水シート60に対して移動させやすくすることができる。
【0072】
また、上爪部材54には、傾斜面部56C,56Eが形成されている。傾斜面部56C,56Eが形成されていることにより、上爪部材54に滞留しようとする液体を下方に誘導することができる。また、傾斜面部56C,56Eの下端部には、吸水シート60が位置している。このため、下方に誘導された液体を吸水シート60によって確実に吸水することができる。したがって、爪部材に液体を滞留しにくくすることができる。
【0073】
また、上爪部材54における下面部51には、下方に突出する上爪突出部56Hが形成されており、吸水シート60には、上爪突出部56Hと略同じ幅の嵌合凹部62が形成されている。このため、プラテンユニット32の下面部51に対して吸水シート60を確実に位置決めすることができる。
【0074】
また、プラテンフレーム35における背面部52には、補強リブ58が設けられており、これらの補強リブ58は、その先端部が背面部52よりも前方に向けて突出しており、その高さが上爪部材54の下面部56Bの高さと略同一となるように形成され、先端部が吸水シート60と当接している。このため、補強リブ58は、吸水シート60の上方へのふくらみなどを前方に向けて突出した先端部によって抑えている。したがって、部品点数の増大を招くことなく、吸水シートの離脱を抑制することができる。さらには、吸水シート60の上方への移動を抑制することができ、吸水シート60とプラテンローラ36との離間距離が短くなることを防ぐことができるので、ケーシング2内の液体が印刷用を濡らす事態をさらに好適に抑制することができる。
【0075】
なお、上記実施形態では、上爪部材54の上爪本体56は、断面が略六角形状の柱状体を成しているが、その他の形状でもよい。例えば、側面が形成されていない断面が略台形状の柱状体でもよいし、側面及び上面が形成されていない断面が略三角形状の柱状体でもよい。これらの場合でも、傾斜面部が形成されているのが好適である。
【0076】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態に係るサーマルプリンタは、上記実施形態に係るサーマルプリンタ1と比較して、吸水シートの係止を係止する構造が主に異なっている。以下、上記のサーマルプリンタ1との相違点を中心として、本実施形態に係るサーマルプリンタについて説明する。
【0077】
図10は、第2実施形態に係るプラテンユニットを上方から見た斜視図である。
図10に示すように、本実施形態に係るプラテンユニット80は、上記第1実施形態に係るプラテンユニット32と同様に、上爪部材81及び下爪部材82を備えている。上爪部材81は、上記の上爪部材54と同様の上面部81A、下面部81B、傾斜面部81C,81E、側面部81D,81Fを備えている。また、上記の上爪部材54における上爪突出部56Hのような突出部は設けられていない。さらに、下爪部材82は、上記の下爪部材55と同じ形状とされている。
【0078】
また、上爪部材81と下爪部材82との離間距離は、上記第1実施形態よりも短くされている。上爪部材81と下爪部材82との間には、吸水シート83が配設され、吸水シート83は、上爪部材81及び下爪部材82によって係止されている。吸水シート83は、本体部83Aを備えており、本体部83Aの上面における上爪部材81に相当する位置に嵌合凹部83Bが形成されている。このため、上爪部材81と下爪部材82によって嵌合凹部83Bが挟み込まれて、吸水シート83が上爪部材81及び下爪部材82に係止される。嵌合凹部83Bの幅は、上爪部材81の幅と略同一とされている。
【0079】
また、吸水シート83における本体部83Aの厚みは、上爪部材81の上面部と下爪部材82の上面部との間の距離とほぼ同一とされている。このため、吸水シート83が上爪部材81及び下爪部材82に係止された状態では、吸水シート83と上爪部材81の上面とはほぼ面一となるようにされている。また、上爪部材81における、傾斜面部81C,81Eの上方には、断面略三角形状の空間が形成される。その他の点は、主に、上記第1実施形態と共通である。
【0080】
以上の構成を有する本実施形態に係るプラテンユニット80を備えるサーマルプリンタは、上記の第1実施形態と同様の作用効果を奏する。また、上爪部材81と吸水シート83との上面と略面一であるので、上爪部材81及び吸水シート83とプラテンローラ36までの距離が一定とされる。このため、プラテンローラ36から見て、上爪部材81は吸水シート83と同じかあるいは遠くに配置されるので、上爪部材81に滞留する液体がプラテンローラ36に触れにくくなるようにできる。したがって、プラテンローラ36を濡れにくくできるので、筐体内の液体が印刷用を濡らす事態をさらに好適に抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態に係るサーマルプリンタでは、上爪部材81と吸水シート83との上面と略面一とすることができる。このため、吸水シート83の上方に上爪部材81を形成するスペースが必要なくなる。したがって、プラテンユニット80の小型化を図ることができる。
【0082】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態に係るサーマルプリンタは、上記実施形態に係るサーマルプリンタ1と比較して、プラテンユニットの下面部に対する吸水シートの配設構造が主に異なっている。以下、上記のサーマルプリンタ1との相違点を中心として、本実施形態に係るサーマルプリンタについて説明する。
【0083】
図11は、第3実施形態に係るプラテンユニットを前方から見た正面図である。
図11に示すように、本実施形態に係るプラテンユニット90は、上記第1実施形態に係るプラテンユニットのような上爪部材及び下爪部材が設けられておらず、平面上の上段部91及び上段部91から1段下がった溝部92が形成されている。これらの上段部91及び溝部92は、いずれもプラテンローラ36の延在方向に沿って形成されている。
【0084】
また、溝部92は、上記第1実施形態と同様に、側方に設けられた滞留槽70に連通している。さらに、上段部91には、吸水シート93が貼り付けられている。吸水シート93は、例えば接着剤を介して上段部91に貼り付けられている。その他の点は、主に、上記第1実施形態と共通である。
【0085】
以上の構成を有する本実施形態に係るプラテンユニット90を備えるサーマルプリンタは、上記の第1実施形態と同様の作用効果を奏する。また、本実施形態に係るサーマルプリンタでは、吸水シート93がプラテンユニット90の上段部91に接着剤によって貼り付けられてプラテンユニット90に配設されている。このため、プラテンユニット90に対して吸水シート93を容易に配設することができる。