(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
造形槽に形成された粉末材料よりなる粉末層に、三次元造形物の断面形状についての画像データに基づいて吐出ヘッドからバインダーを吐出することにより前記粉末材料を硬化して三次元造形物を作製する三次元造形装置において、
固定系部材である基台部と、
前記基台部の上面側に形成されたXYZ直交座標系におけるX軸方向に延長する溝部と、
前記溝部内において前記X軸方向に移動自在かつ底面が前記XYZ直交座標系におけるZ軸方向に昇降可能に配置されるとともに上面が開口した造形槽と、
前記溝部内において前記X軸方向前方側において前記造形槽一体的に連接され、前記造形槽とともに前記X軸方向に移動自在に配置された収容槽と、
前記基台部の上方に配置され、前記溝部内に位置する前記造形槽と対向可能かつ開閉自在な開口部を下方に備えるとともに内部に粉末材料を貯留し、前記開口部から前記造形槽へ前記粉末材料を供給する貯留槽と、
前記造形槽上を相対的に前記X軸方向の後方側から前方側へ移動して、前記貯留槽の前記開口部から前記造形槽に供給された前記粉末材料を前記造形槽内に敷き詰めて所定の厚さの粉末層を形成するローラと、
前記基台部の上方に配置され、前記造形槽内に形成された前記粉末層に対して三次元造形物の断面形状についての画像データに基づいてバインダーを吐出する吐出ヘッドと、
前記基台部上における前記溝部の前記造形槽と前記収容槽との可動域の前記X軸方向後方側に、前記溝部の上方位置において前記溝部を覆うように配設されたマイクロ波発振装置と
を有し、
前記マイクロ波発振装置は、マイクロ波発振器と、前記マイクロ波発振器から前記溝部内の前記造形槽に向けて照射されたマイクロ波が前記造形槽の外部へ伝播することを防止する電磁波遮蔽手段としてのカバーとを備え、
前記カバーは、前記造形槽が前記マイクロ波発振装置の下方に移動した際に、前記造形槽の前記上面の前記開口を完全に遮蔽することができるように寸法設定された開口部を備えて形成されており、
前記カバーの前記開口部における前記X軸方向の前方側と後方側との下端部には、前記造形槽が前記マイクロ波発振装置の下方側へ移動する際の障碍とならないように、前記カバーと前記造形槽の前記上面とが摺動自在に当接するように寸法設定された切り欠き部が設けられ、
前記カバーの前記開口部における前記Y軸方向の右方側と左方側との下端部は、前記基台部の前記上面と当接するように固定され
前記マイクロ波発振装置は、三次元造形が完了した後の三次元造形物全体に対してマイクロ波を照射する
ことを特徴とする三次元造形装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、三次元造形物を作製する三次元造形装置として、石膏パウダー(石膏粉末)や樹脂パウダー(樹脂粉末)などの粉体を原料として三次元造形物を作製する粉末固着積層方式(バインダージェッティング方式)の三次元造形装置が知られている。
【0003】
この粉末固着積層方式の三次元造形装置による三次元造形方法とは、吐出ヘッド(インクジェットヘッド)から水を主成分とする液体結合剤であるバインダーを各種の粉末に噴射して当該粉末を一層ずつ固め、当該固めた層たる造形層を積層して三次元造形物を作製するというものである。
【0004】
より詳細には、粉末固着積層方式の三次元造形装置による三次元造形方法では、まず、三次元造形物を造形する造形槽に粉末材料を敷き詰めて所定の厚さの粉末層を形成する。
【0005】
次に、この粉末層に対して、三次元造形物の断面形状の所定の解像度を有する画像データに基づいて、吐出ヘッドから粉末材料を硬化するバインダーを吐出して、粉末層に当該画像データに基づく断面形状の造形層を形成する。
【0006】
その後、断面形状の造形層が形成された粉末層上に所定の厚さの新たな粉末層を形成し、この粉末層に、形成した断面形状の次の断面形状を表す画像データに基づいて、吐出ヘッドからバインダーを吐出し、当該新たな粉末層に当該画像データに基づく断面形状の造形層を形成する。
【0007】
そして、こうした処理を繰り返し行い、全ての断面形状を表す画像データに基づく断面形状の造形層を順次形成することで、三次元造形物を作製することとなる。
【0008】
ここで、従来の三次元造形装置による三次元造形方法においては、上記のようにして三次元造形物を作製した直後に、当該三次元造形装置の内部に配設された加熱装置や当該三次元造形装置の外部に設置された加熱装置を用いて、当該加熱装置により三次元造形物に向けて温風を吹き出し、当該温風により当該三次元造形物を昇温させることによって当該三次元造形物の乾燥や固化を促進させていた。
【0009】
ところで、粉末材料として石膏パウダーと樹脂パウダーとを配合した粉体を用いる場合には、作製された三次元造形物の最終強度には主に樹脂パウダーが寄与するものであるが、初期強度には主に石膏パウダーが寄与している。
【0010】
このため、上記した従来の三次元造形方法に示すように、三次元造形物を作製した直後に当該三次元造形物を昇温させると石膏パウダーが素早く乾燥し、その結果、当該三次元造形物の乾燥や固化が促進されるものであった。
【0011】
従って、三次元造形物の作製後に、時間を空けずに直ぐに当該三次元造形物に付着している粉末材料を除去する作業などの次の工程に速やかに移行することができるため、三次元造形物の作製作業を迅速化することができる。
【0012】
しかしながら、粉末材料として、例えば、酸化アルミニウム(Al
2O
3)などのセラミック材料のパウダー(セラミック粉末)と樹脂パウダー(樹脂粉末)とを配合した粉体を用いる場合には、作製された三次元造形物の最終強度は優れているが、十分な初期強度を得ることが難しかった。
【0013】
即ち、セラミック材料などのようなそれ自身ではバインダーの主成分である水では硬化しない粉体を用いると、上記した従来の三次元造形方法のように三次元造形物を作製した直後に当該三次元造形物を温風により昇温させても、当該三次元造形物の乾燥や固化の促進を十分には図ることができず、作製された三次元造形物の初期強度は低く脆いものであった。
【0014】
このため、三次元造形物の作製後に、時間を空けずに直ぐに当該三次元造形物に付着している粉末材料を除去する作業などの次の工程に速やかに移行することができず、三次元造形物の作製作業が遅延する要因となっていたという問題点があった。
【0015】
なお、本願出願人が特許出願時に知っている先行技術は、上記において説明したようなものであって文献公知発明に係る発明ではないため、記載すべき先行技術情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記したような従来の技術に対する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、それ自身ではバインダーの主成分である水では硬化しない酸化アルミニウムなどのセラミック材料のパウダーと樹脂パウダーとを配合した粉体を粉末材料として用いた場合においても、作製した三次元造形物の初期強度を高めることのできる三次元造形装置および三次元造形方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明による三次元造形装置および三次元造形方法は、それ自身ではバインダーの主成分である水では硬化しない酸化アルミニウムなどのセラミック材料のパウダーと樹脂パウダーとを配合した粉体を粉末材料として用いて形成された三次元造形物を早期に固めるには、当該粉末材料を構成する樹脂パウダーを早期に固める必要があるという、本願発明者の知見に基づいて発明されたものである。
【0018】
即ち、本発明による三次元造形装置および三次元造形方法は、上記本願発明者の知見に基づき、三次元造形物の三次元造形後にマイクロ波を用いたマイクロ波加熱などのような電磁波を用いた電磁波加熱によって、当該三次元造形物全体を温めて樹脂パウダーの硬化を促進することにより、当該三次元造形物の初期強度を高めるようにしたものである。
【0019】
これにより、酸化アルミニウムなどのセラミック材料のパウダーと樹脂パウダーとを配合した粉体を粉末材料を用いた三次元造形物であっても、その作製後に時間を空けずに直ぐに当該三次元造形物に付着している粉末材料を除去する作業などの次の工程に速やかに移行することができ、三次元造形物の作製作業が遅延することはない。
【0020】
こうした本発明による三次元造形装置は、造形槽に形成された粉末材料よりなる粉末層に、三次元造形物の断面形状についての画像データに基づいて吐出ヘッドからバインダーを吐出することにより上記粉末材料を硬化して三次元造形物を作製する三次元造形装置において、三次元造形した三次元造形物に対して電磁波を照射する電磁波照射手段を備え、上記電磁波照射手段は、上記三次元造形物に電磁波を照射する電磁波照射源と、上記三次元造形物を被覆して、上記電磁波照射源から上記三次元造形物へ照射された電磁波の外部への漏洩を遮蔽する遮蔽手段とを有するようにしたものである。
【0021】
また、本発明による三次元造形装置は、上記した本発明による三次元造形装置において、上記電磁波照射源は、複数の周波数帯域の電磁波を個別または同時に照射するようにしたものである。
【0022】
また、本発明による三次元造形装置は、上記した本発明による三次元造形装置において、上記粉末材料は、セラミック粉末と樹脂粉末とを配合した粉体であるようにしたものである。
【0023】
また、本発明による三次元造形方法は、造形槽に形成された粉末材料よりなる粉末層に、三次元造形物の断面形状についての画像データに基づいて吐出ヘッドからバインダーを吐出することにより上記粉末材料を硬化して三次元造形物を作製する三次元造形方法において、三次元造形した三次元造形物に対して電磁波を照射して、電磁波加熱によって上記三次元造形物全体を温めて上記三次元造形物の硬化を促進するようにしたものである。
【0024】
また、本発明による三次元造形方法は、上記した本発明による三次元造形方法において、上記電磁波を照射する際に、複数の周波数帯域の電磁波を個別または同時に照射するようにしたものである。
【0025】
また、本発明による三次元造形方法は、上記した本発明による三次元造形方法において、上記粉末材料は、セラミック粉末と樹脂粉末とを配合した粉体であるようにしたものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、以上説明したように構成されているので、それ自身ではバインダーの主成分である水では硬化しない酸化アルミニウムなどのセラミック材料のパウダーと樹脂パウダーとを配合した粉体を粉末材料として用いた場合においても、作製した三次元造形物の初期強度を高めることができるようになるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による三次元造形装置および三次元造形方法の実施の形態の一例を詳細に説明することとする。
【0029】
図1には本発明の実施の形態の一例による三次元造形装置の概略構成斜視説明図が示されており、
図2には
図1に示す三次元造形装置の断面概略構成斜視説明図が示されている。
【0030】
この
図1ならびに
図2に示す三次元造形装置10は、粉末固着積層方式による造形ステージ前後移動式の三次元造形装置であって、固定系部材である基台部12を備えている。
【0031】
この基台部12内には、XYZ直交座標系におけるX軸方向に延長する溝部14が形成されている。
【0032】
溝部14内には、X軸方向に移動自在かつ底面がZ軸方向に昇降可能に構成された造形槽16と、造形槽16と一体的に連接されて造形槽16とともにX軸方向に移動自在な収容槽18とが配置されている。
【0033】
溝部14のX軸方向に延在する領域が、造形槽16と収容槽18とが溝部14内を移動可能な可動域となる。
【0034】
基台部12上には、溝部14を挟むようにして溝部14のY軸方向における両側の領域からそれぞれ一対の支持部20が立ち上がり形成されており、この一対の支持部20によって、XYZ直交座標系におけるY軸方向に沿って延長して配置された貯留槽支持レール22が支持されている。
【0035】
貯留槽支持レール22上のY軸方向の中央部位には、下方に開閉自在の開口部24aを備えた貯留槽24が配置されている。開口部24aは、溝部14内に位置する造形槽16と対向可能に配置されている。
【0036】
さらに、基台部12上には、溝部14を挟むようにしてZ軸方向の下方側が開口した略コ字形状のローラー支持部26が立ち上がり形成されており、このローラー支持部26によって、造形槽16上を相対的にX軸方向の後方側から前方側へ移動することが可能なローラー28が支持されている。
【0037】
また、ローラー支持部26にはY軸方向に沿ってレール26aが形成されており、造形槽16に対してバインダーを吐出する吐出ヘッド30が、レール26aに対してY軸方向に沿って往復移動可能に支持されている。
【0038】
また、基台部12上における溝部14の造形槽16と収容槽18との可動域のX軸方向後方側、具体的には、ローラー支持部26のX軸方向後方側には、溝部14の上方位置において溝部14を覆うように、電磁波照射手段の一例として電磁波発振装置の一種であるマイクロ波発振装置40が配設されている。このマイクロ波発振装置40については、後に詳述する。
【0039】
ここで、造形槽16と収容槽18との位置関係は、造形槽16に対してX軸方向前方側に収容槽18が配置されている。
【0040】
また、吐出ヘッド30は、X軸方向においてローラー28の後方側に位置するように配置されており、1パスで走査して往路と復路との双方向でバインダーを吐出する。
【0041】
なお、符号100は、三次元造形装置10によって作製される三次元造形物の一例を示している。
【0042】
以上の構成において、この三次元造形装置10においては、内部に粉末材料を貯留した貯留槽24の開口部24aと造形槽16とを対向させた初期状態から、貯留槽24の開口部24aを開いて造形槽16へ粉末材料を供給する。
【0043】
次に、溝部14内において造形槽16および収容槽18をX軸方向の前方側から後方側に移動することにより、ローラー28が造形槽16上を相対的にX軸方向の後方側から前方側へ移動することになり、造形槽16へ供給された粉末材料は造形槽16内に敷き詰められて所定の厚さの粉末層が形成される。
【0044】
なお、この際に、造形槽16の底面は、予め設定された位置まで上昇するように制御される。
【0045】
また、造形槽16内において粉末層の形成に用いられなかった余分な粉末材料は、ローラー28が造形槽16から収容槽18へと相対的にX軸方向の後方側から前方側に移動することにより、溝部14内において造形槽16とともにX軸方向の前方側から後方側に移動する収容槽18に収容される。
【0046】
上記のようにして造形槽16内に粉末層を形成した後に、溝部14内において造形槽16をX軸方向に移動して、
図3に示すように造形槽16を吐出ヘッド30の下方の所定の位置に配置する。
【0047】
それから、造形槽16に形成された粉末層に対して、作製予定の三次元造形物のZ軸方向における断面形状(即ち、XY平面上での形状である。)についての所定の解像度を有する画像データに基づいて、溝部14内において造形槽16をX軸方向の前方側から後方側に移動するとともに吐出ヘッド30をY軸方向に移動しながら、造形槽16に形成された粉末層に対して吐出ヘッド30から粉末材料を硬化するバインダーを吐出して造形層を形成する。
【0048】
粉末層へのバインダーの吐出を完了して造形層を形成すると、再度初期状態へ戻って上記した処理を行い、次の粉末層に対してバインダーの吐出を行って次の造形層を形成する。こうした動作を繰り返し行うことによって、三次元造形物100の三次元造形を行う。
【0049】
なお、本実施の形態において用いるバインダーは、透明のものでも着色されたものでもよい。
【0050】
この三次元造形装置10においては、上記した処理により三次元造形物100の三次元造形を完了すると、
図4および
図5に示すように造形槽16をマイクロ波発振装置40の下方側に移動し、マイクロ波発振装置40により三次元造形した三次元造形物100をマイクロ波加熱する処理を行う。
【0051】
ここで、三次元造形装置10は、三次元造形を完了した三次元造形物100をマイクロ波発振装置40によりマイクロ波加熱する点が従来の技術とは異なり、その他の構成および制御方法については、従来より公知の技術を適用することができる。
【0052】
従って、以下の説明においては、マイクロ波発振装置40により三次元造形を完了した三次元造形物100をマイクロ波加熱する点について詳細に説明するものとして、従来より公知の技術を適用できるその他の構成ならびに制御に関する詳細な説明は省略する。
【0053】
マイクロ波発振装置40は、電磁波放射源であるマグネトロンなどにより構成されるマイクロ波発振器42と、マイクロ波発振器42から溝部14内の造形槽16に向けて照射されたマイクロ波が造形槽16の外部へ伝播することを防止するための金属製などの材料よりなる電磁波遮蔽手段としてのカバー44とを備えている。
【0054】
このマイクロ発振器42は、周波数300MHz〜300GHz帯域のマイクロ波を照射する。
【0055】
また、カバー44はその全体の形状が、下方側が末広がりに開口した矩形形状の開口部44aを備えた漏斗型に形成されている。開口部44aは、造形槽16がマイクロ波発振装置40の下方に移動した際に、造形槽16の上面の開口部16aを完全に遮蔽することができるように寸法設定されている。
【0056】
なお、カバー44の開口部44aにおけるX軸方向の前方側と後方側との下端部には、造形槽16がマイクロ波発振装置40の下方側へ移動する際の障碍とならないように、切り欠き部44cが設けられている。
【0057】
切り欠き部44cの大きさは、造形槽16がマイクロ波発振装置40の下方に移動した際に、切り欠き部44cと造形槽16の上面16bとが摺動自在に当接するように寸法設定されている。
【0058】
また、カバー44の開口部44aにおけるY軸方向の右方側と左方側との下端部44dは、基台部12の上面12aと当接するように固定されている。
【0059】
従って、造形槽16がマイクロ波発振装置40の下方に移動した際には、カバー44により造形槽16が外部とは遮蔽されることになり、マイクロ波発振器42から造形槽16に向けて発振されたマイクロ波が外部へ伝播することが防止される。
【0060】
上記したように三次元造形装置10においては、造形槽16における三次元造形物100の三次元造形を完了すると、造形槽16をマイクロ波発振装置40の下方側に移動して、マイクロ波発振装置40のマイクロ発振器42を駆動する。これにより、造形槽16内の三次元造形物100をマイクロ波加熱する処理を行う。
【0061】
この際に、造形槽16はカバー44により外部とは遮蔽されているため、マイクロ発振器42から照射されたマイクロ波が外部へ漏れることない。
【0062】
なお、マイクロ波発振装置40による三次元造形物100のマイクロ波加熱処理は、三次元造形物100の三次元造形の完了後に自動的に開始されるようにしてもよいし、あるいは、作業者が操作パネル(図示せず。)などを操作することにより任意のタイミングで開始するようにしてもよい。
【0063】
また、マイクロ波発振装置40により発振されるマイクロ波の強度や照射時間は、作業者が操作パネル(図示せず。)などを操作することにより任意の強度や照射時間を設定するうようにしてもよいし、あるいは、作製する三次元造形物の各種データから当該三次元造形物の大きさや使用されるバインダーの量などを算出して、こうした算出結果に基づいて自動的に適切な強度や照射時間を設定するようにしてもよい。
【0064】
マイクロ波発振装置40による三次元造形物100のマイクロ波加熱が終了すると、造形槽16をX軸方向の前方側に移動して、造形層16を
図1に示す位置に配置する。
【0065】
作業者は、造形層16からマイクロ波加熱された三次元造形物100を取り出して、三次元造形物100に付着している粉末材料を除去する作業などの次の工程を行う。
【0066】
即ち、三次元造形物100に対するマイクロ波加熱によって、三次元造形物100全体を温めることができ、樹脂パウダーなどの粉末材料の硬化を促進することが可能となって、三次元造形物100の初期強度を確実に高めることができる。
【0067】
従って、酸化アルミニウムなどのセラミック材料のパウダーと樹脂パウダーとを配合した粉体を粉末材料を用いた三次元造形物100であっても、マイクロ波加熱後は造形層16から取り出して、時間を空けずに直ぐに三次元造形物100に付着している粉末材料を除去する作業などの次の工程に速やかに移行することができるようになる。
【0068】
なお、三次元造形物の造形の途中で温風を吹き出して加温などを行うと、乾燥によって形成された造形層が反り上がって変形するなどして不具合の原因となる。
【0069】
しかしながら、三次元造形の完了後にマイクロ波加熱を行う本発明による三次元造形装置10においては、三次元造形物の造形の途中での変形などによる不具合を生ずる恐れがなく、三次元造形物の外側と内部とを含めた全体をマイクロ波加熱することによって、短時間で強度を高めることができる。
【0070】
例えば、本願発明者による実験結果によれば、セラミック材料のパウダーと樹脂パウダーとを配合した粉体を粉末材料を用いた三次元造形完了直後の三次元造形物に周波数300MHz、出力200Wのマイクロ波を1分間照射した場合には、三次元造形完了直後の三次元造形物を数時間放置した場合以上に強度を高めることができた。
【0071】
以上において説明したように、上記した実施の形態による三次元造形装置および三次元造形方法においては、三次元造形物の造形後にマイクロ波を用いたマイクロ波加熱によって当該三次元造形物全体を温めて当該三次元造形物の硬化を促進することにより、当該三次元造形物の初期強度を高めるようにした。
【0072】
これにより、酸化アルミニウムなどのセラミック材料のパウダーと樹脂パウダーとを配合した粉体を粉末材料を用いた三次元造形物であっても、その作製後に時間を空けずに直ぐに当該三次元造形物に付着している粉末材料を除去する作業などの次の工程に速やかに移行することができ、三次元造形物の作製作業が遅延することはない。
【0073】
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(5)に示すように変形するようにしてもよい。
【0074】
(1)本発明は、上記した実施の形態に示した構成の三次元造形装置や三次元造形方法に限らず、粉末固着積層方式(バインダージェッティング方式)の三次元造形装置や三次元造形方法であるならば、どのような構成の三次元造形装置や三次元造形方法にも適用することができる。
【0075】
(2)上記した実施の形態においては、マイクロ波発振装置40は基台部12の上面12aに固定するものとしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0076】
例えば、マイクロ波発振装置40が昇降機構を備えるようにしてもよい。マイクロ波発振装置40が昇降機構を備えるようにすると、造形層16内の三次元造形物100にマイクロ波を照射した後に、昇降機構によりマイクロ波発振装置40を上昇させることにより、その場で三次元造形物100を造形層16から取り出すことができるようになる。
【0077】
また、カバー44の開口部16aにおけるY軸方向の右方側と左方側とのいずれか一方の下端部44dと基台部12の上面12aとの固定を解除するとともに、他方の下端部44dと基台部12aの上面12aとをヒンジで連結することにより、ヒンジを支点としてカバー44が開閉自在となるようにしてもよい。このようにすると、造形層16内の三次元造形物100にマイクロ波を照射した後に、ヒンジを支点としてカバー44を開くことにより、その場で三次元造形物100を造形層16から取り出すことができるようになる。
【0078】
(3)上記した実施の形態においては、マイクロ波発振装置40により照射するマイクロ波の強度や照射時間などについて、三次元造形する三次元造形物の大きさや使用されるバインダーの量などに基づいて決定してよい旨について説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0079】
マイクロ波発振装置40により照射するマイクロ波の強度や照射時間などは、三次元造形する粉末材料などを考慮して適宜に設定するようにしてもよい。
【0080】
(4)上記した実施の形態においては、電磁波放射源としてマイクロ波発振器42を用い、電磁波として周波数300MHz〜300GHz帯域のマイクロ波を照射する場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0081】
例えば、電磁波照射源としてラジオ波発振器を用い、電磁波として周波数30MHz〜300MHz帯域のラジオ波を照射するようにしてもよい。
【0082】
また、電磁波照射源として赤外線照射器を用い、電磁波として周波数300GHz〜12THz帯域の超遠赤外線や、電磁波として周波数12THz〜75THz帯域の遠赤外線や、電磁波として周波数75THz〜400THz帯域の遠赤外線を照射するようにしてもよい。
【0083】
さらに、電磁波照射源は、発振周波数が固定であって各周波数帯域の電磁波のうちのいずれか一つの周波数帯域の電磁波を照射するものでもよいし、発振周波数が可変であって適宜の周波数帯域の電磁波を照射するものでもよい。
【0084】
また、それぞれ異なる周波数帯域の電磁波を照射する電磁波照射源を複数設けるようにして、これら複数の電磁波照射源のいずれかを駆動して所望の周波数帯域の電磁波を選択的に照射するようにしてもよいし、複数の電磁波照射源を駆動して複数の周波数帯域の電磁波を同時に照射するようにしてもよい。
【0085】
例えば、上記したラジオ波は波長が長いためにエネルギーの集中性は低いが、三次元造形物の深部への加温に適している。
【0086】
一方、マイクロ波は、ラジオ波と比較すると短波長であるため三次元造形物の表面での減衰が大きく、三次元造形物の表面の加温に適している。
【0087】
上記したラジオ波とマイクロ波との作用の差異に応じて、電磁波照射源は、ラジオ波とマイクロ波とのいずれか一方のみを照射するようにしてもよいし、ラジオ波を照射した後にマイクロ波を照射するなどのように、適宜の周波数帯域の電磁波を適宜のタイミングで照射するようにしてよい。
【0088】
(5)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(4)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。