特許第6690950号(P6690950)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6690950-CMOS出力バッファ回路 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6690950
(24)【登録日】2020年4月13日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】CMOS出力バッファ回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/0175 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   H03K19/0175
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-10374(P2016-10374)
(22)【出願日】2016年1月22日
(65)【公開番号】特開2017-130866(P2017-130866A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390009667
【氏名又は名称】セイコーNPC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正敏
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−202677(JP,A)
【文献】 特開2007−214605(JP,A)
【文献】 特開昭60−237724(JP,A)
【文献】 特開平2−233017(JP,A)
【文献】 特開平8−65141(JP,A)
【文献】 特開平2−266714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K17/00−17/70
H03K19/00−19/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号が入力すると前記入力信号を反転させ、かつ位相差を有する二つの出力信号を出力する貫通電流防止回路と、前記貫通電流防止回路の各出力信号が各別に入力する各最終段用のPMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタを備え、前記PMOSトランジスタと前記NMOSトランジスタのドレイン同士を接続するとともに出力端子に接続し、前記PMOSトランジスタのソースを第1電源に接続し、前記NMOSトランジスタのソースを第2電源に接続し、前記貫通電流防止回路の入力端と前記PMOSトランジスタと前記NMOSトランジスタのドレイン同士の接続点とを容量を介して接続し、前記PMOSトランジスタと前記NMOSトランジスタがともにオフの時には、前記入力信号を前記容量を介して出力するよう構成してなることを特徴とするCMOS出力バッファ回路。
【請求項2】
前記貫通電流防止回路は、入力信号がそれぞれ入力する二つのCMOSインバータからなり、これらCMOSインバータは位相差を有する出力信号を出力すべくなすとともに、互いの入力端同士を接続してなり、前記最終段用のPMOSトランジスタは、そのゲートを前記各CMOSインバータの一方の出力端に接続し、前記最終段用のNMOSトランジスタは、そのゲートを前記各CMOSインバートの他方の出力端に接続してなることを特徴とする請求項1記載のCMOS出力バッファ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMOS出力バッファ回路に関し、特に、発生するノイズを減少させたCMOS出力バッファ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種CMOS出力バッファ回路としては、CMOS出力バッファの最終段用PMOSトランジスタと最終段用NMOSトランジスタの各前段に、CMOSインバータをそれぞれ設け、これら各CMOSインバータを構成するPMOSトランジスタの利得定数比とNMOSトランジスタの利得定数比を変えることによって、前記最終段用PMOSトランジスタのゲートと前記最終段用NMOSトランジスタのゲートに入力する電圧の立ち上がりまたは立ち下がりを遅くするよう構成して、CMOS出力バッファ回路の貫通電流を小さくすることにより、消費電流の低減と、ノイズ発生の低減を図ったものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−202677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3は上述の先行技術とほぼ同一の構成を有する従来のCMOSバッファ回路を示すもので、最終段用のPMOSトランジスタ(以下「PMOS」という。)101のソースをVDD電源(3V電源)に接続し、最終段用のNMOSトランジスタ(以下「NMOS」という。)102のソースをVSS電源(接地)に接続する一方、互いのドレインを接続したうえ、出力端子103に接続している。PMOS101のゲートは、第2CMOSインバータ104の出力端に接続する一方、NMOS102のゲートは、第3CMOSインバータ105の出力端に接続し、各CMOSインバータ104,105の入力端は第1CMOSインバータ107の出力端に接続している。第2CMOSインバータ104と第3CMOSインバータ105で貫通電流防止回路106を構成する。なお、図中の108は外部機器等の接続による外部負荷容量、109は最終段用のPMOS101及びNMOS102のゲート・ドレイン間の寄生容量の一種であるオーバーラップ容量である。
【0005】
そして、第2CMOSインバータ104を構成するPMOSとNMOSの各ゲートのチャンネル幅Wとチャンネル長Lの比であるW/Lは、PMOSの方がNMOSよりも大きく設定されている。また、第3CMOSインバータ105を構成するPMOSとNMOSの各ゲートのチャンネル幅Wとチャンネル長Lの比であるW/Lは、NMOSの方がPMOSよりも大きく設定されている。そして、第2CMOSインバータ104と第3CMOSインバータ105の駆動能力は、各トランジスタのW/Lの大小によって、第2CMOSインバータ104の方が大きく設定されている。
【0006】
図4(1)は第1CMOSインバータ107に入力する100MHz、3V振幅の正弦波である入力信号110の波形図であり、同図(2)は出力端子103から出力された出力信号111の波形図である。出力信号111は、駆動能力の異なる各CMOSインバータ104,105とPMOS101及びNMOS102によって入力信号110よりも遅延されたほぼ矩形波となっている。ところが、この矩形波には、図4(2)で理解できるように、その立ち上がり時及び立ち下がり時において、電源電圧(VDD)以上(立ち下がり時)及び電源電圧(VSS)以下(立ち上がり時)の波形歪み(破線で囲んだ部分)が存在する。
【0007】
この波形歪みは、駆動能力の異なるCMOSインバータ104,105からなる貫通電流防止回路の位相差を有する出力信号が、最終段用のPMOS101とNMOS102に入力することに起因して、最終段用のPMOS101及びNMOS102のゲート・ドレイン間のオーバーラップ容量109と外部負荷容量108の充放電によって発生するものである。そして、この最終出力信号に存在する波形歪みは、高調波成分として、スイッチングノイズの増大や、出力波形に生じるリンギング起因の誤作動を生じさせ、外部回路に悪影響を与えるという不都合がある。また、ノイズにともなう高調波成分の増大は、EMI(Electro Magnetic Interference:電磁妨害)対策において、不利な波形を生成する要因ともなる。このように、従来においては、ノイズの低減が不十分であり、これに起因する不都合を解消することはできなかった。
【0008】
本発明は、この不都合を解消して、貫通電流を減少させるとともに、最終出力における波形歪みを抑制して、ノイズを低減した、CMOS出力バッファ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るCMOS出力バッファ回路は、入力信号が入力すると前記入力信号を反転させ、かつ位相差を有する二つの出力信号を出力する貫通電流防止回路と、前記貫通電流防止回路の各出力信号が各別に入力する各最終段用のPMOS及びNMOSを備え、前記PMOSと前記NMOSのドレイン同士を接続するとともに出力端子に接続し、前記PMOSのソースを第1電源に接続し、前記NMOSのソースを第2電源に接続し、前記貫通電流防止回路の入力端と前記PMOSと前記NMOSのドレイン同士の接続点とを容量を介して接続し、前記PMOSと前記NMOSがともにオフの時には、前記入力信号を前記容量を介して出力するよう構成してなるものである。
【0010】
この構成によると、貫通電流防止回路を介してそれぞれPMOS、NMOSのゲートに入力する位相差を有する各信号よりも先に、容量を介して前記PMOS、NMOSのドレインに入力する信号によって、前記PMOS、NMOSの立ち上がり動作、立ち下がり動作がなされる。これにより、前記貫通電流防止回路の位相のずれた出力信号に起因する前記PMOS、NMOSのゲート・ドレイン間のオーバーラップ容量と外部負荷容量の充放電によって発生する波形歪みを抑制した最終出力信号が出力される。
【0011】
前記目的を達成するために本発明の請求項2に係るCMOS出力バッファ回路は、請求項1の構成において、前記貫通電流防止回路は、入力信号がそれぞれ入力する二つのCMOSインバータからなり、これらCMOSインバータは位相差を有する出力信号を出力すべくなすとともに、互いの入力端同士を接続してなり、前記最終段用のPMOSは、そのゲートを前記各CMOSインバータの一方の出力端に接続し、前記最終段用のNMOSは、そのゲートを前記各CMOSインバータの他方の出力端に接続してなるものである。
【0012】
この構成によると、貫通電流防止回路の各CMOSインバータを介してそれぞれPMOS、NMOSのゲートに入力する位相差を有する各信号よりも先に、容量を介して前記PMOS、NMOSのドレインに入力する信号によって、前記PMOS、NMOSの立ち上がり動作、立ち下がり動作がなされる。これにより、前記貫通電流防止回路の位相のずれた出力信号に起因する前記PMOS、NMOSのゲート・ドレイン間のオーバーラップ容量と外部負荷容量の充放電によって発生する波形歪みを抑制した最終出力信号が出力される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の出力バッファ回路によれば、貫通電流を防止できるとともに、最終出力信号における波形歪みを抑制してノイズを減少することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態を示す回路図。
図2】同じく二つのCMOSインバータへの入力信号と各出力信号及び従来技術と比較した出力端子からの出力信号の波形図。
図3】従来技術を示す回路図。
図4】同じく第1CMOSインバータへの入力信号と出力端子からの出力信号の波形図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1に示すように、CMOS出力バッファ回路は、入力信号11が第1CMOSインバータ1を介してそれぞれ入力する入力端同士を接続した二つのCMOSインバータである第2CMOSインバータ2及び第3CMOSインバータ3からなる貫通電流防止回路4と、第2CMOSインバータ2の出力端にゲートが接続された最終段用のPMOS5と、第3CMOSインバータ3の出力端にゲートが接続された最終段用のNMOS6とを備えている。そして、PMOS5とNMOS6のドレイン同士を接続するとともに出力端子7に接続し、PMOS5のソースを3Vの第1電源(VDD)に接続し、NMOS6のソースを0Vの第2電源(VSS)に接続している。出力端子7から出力信号12が出力される。
【0016】
また、PMOS5とNMOS6のドレイン同士の接続点と、第2CMOSインバータ2と第3CMOSインバータ3の入力端同士の接続点とを、容量8を介して接続している。なお、図中、9はPMOS5、NMOS6の各ゲート・ドレイン間のオーバーラップ容量、10は外部負荷容量である。
【0017】
第2CMOSインバータ2を構成する図示していないPMOSとNMOSの各W/Lは、PMOSのほうが大きく設定されている。また、第3CMOSインバータ3を構成する同じく図示していないPMOSとNMOSの各W/LはNMOSのほうが大きく設定されている。そして、第2CMOSインバータ2と第3CMOSインバータ3の駆動能力は、各トランジスタのW/Lの大小によって、第2CMOSインバータ2の方が大きく設定されている。これによって、第2CMOSインバータ2と第3CMOSインバータ3の出力信号には位相差が生じる。このため、PMOS5とNMOS6がともにオンになることが回避できる。
【0018】
また、第2CMOSインバータ2の出力信号が入力するPMOS5では、「L」(オン)から「H」(オフ)への移行動作は速く、「H」(オフ)から「L」(オン)への移行動作は遅くなる。一方、第3CMOSインバータ3の出力信号が入力するNMOS6では、「L」(オフ)から「H」(オン)への移行動作は遅く、「H」(オン)から「L」(オフ)への移行動作は速くなる。
【0019】
続いて、本実施形態の動作を説明する。入力信号11は、100MHz、3V振幅の正弦波(図4(1)参照)であり、この入力信号11は、第1CMOSインバータ1で反転されて、図2(1)に示す電圧波形で貫通電流防止回路4に入力する。そして、第2CMOSインバータ2と第3CMOSインバータ3の各出力は、図2(2)に示すように、各CMOSインバータ2,3の駆動能力の相違によって、立ち上がり時間及び立ち下がり時間が異なった、位相差を有する電圧波形(b),(c)で貫通電流防止回路4から反転出力される。各CMOSインバータ2,3の各出力の立ち上がり時間及び立ち下がり時間の相違により、PMOS5とNMOS6がともにオンになる期間がないため、貫通電流が防止される。
【0020】
図2に示す時間T1では、PMOS5はオン、NMOS6はオフとなる。そして、時間T2では、PMOS5はオフとなり、NMOS6はオフを維持するので、図2(3)に示すように、出力信号12は、第1CMOSインバータの出力電圧が容量8を介して降下することにより、緩やかに電圧が降下する。時間T3では、PMOS5はオフを維持し、NMOS6はオンとなる。そして、時間T4では、PMOS5は依然としてオフを維持し、NMOS6はオフとなる。このため、時間T4では、図2(3)に示すように、出力信号12は、第1CMOSインバータの出力電圧が容量8を介して上昇することにより、緩やかに電圧が上昇する。さらに、時間T5では、時間T1と同様に、PMOS5はオンとなり、NMOS6はオフを維持する。
【0021】
このように、第1CMOSインバータの出力信号は、容量8を介した出力信号の方が、各CMOSインバータ2,3を介した位相差を有する出力信号よりも先に、最終の出力信号12の立ち下がり及び立ち上がりの動作に関与することにより、出力信号12の立ち下がり及び立ち上がりに生じる各CMOSインバータ2,3の出力信号に起因する波形歪みを抑制することができる。
【0022】
図2(3)で理解できるように、破線で示す従来技術の出力信号111は、立ち上がりにおいて、VSS(0V)以下のオーバーシュートに類似した波形歪みが存在し、立ち下がりにおいて、VDD(3V)以上のオーバーシュートに類似した波形歪みが存在するが、実線で示す本実施形態の出力信号12では、各波形歪みが減少し、高調波成分が減少している。
【0023】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、貫通電流防止回路4は、二つのCMOSインバータ2,3を用いたものに限らず、CMOSトランスミッションゲートを用いたものでもよい。また、各CMOSインバータ2,3は、トランジスタサイズ(ゲート面積)の大小によって、互いの駆動能力が異なるよう構成してもよい。さらに、第1CMOSインバータ1は、貫通電流防止回路4の構成によっては設ける必要がない。
【符号の説明】
【0024】
1 第1CMOSインバータ
2 第2CMOSインバータ
3 第3CMOSインバータ
4 貫通電流防止回路
5 最終段用のPMOS
6 最終段用のNMOS
7 出力端子
8 容量
9 オーバーラップ容量
10 外部負荷容量
11 入力信号
12 出力信号
図1
図2
図3
図4