【実施例】
【0053】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下で「部」とは、「質量部」を意味する。
【0054】
(実施例1)
<コーティング液の調製>
プラスチック製ビンに、下記成分(1)〜(5)を下記分量で入れ、攪拌してコーティング液を調製した。
【0055】
(1)鎖状ATO粒子:0.42部
(2)アルコキシシラン(無機系バインダ:信越化学工業社製“X40−2308”):0.10部
(3)ジメチルスルホキシド(高沸点溶剤):5.00部
(4)エチルアルコール(低沸点溶剤):94.38部
(5)ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン15.0部とジプロピレングリコールモノメチルエーテル85.0部との混合液(レベリング剤:ビックケミージャパン社製“BYK−337”):0.10部
【0056】
上記コーティング液の不揮発固形成分(鎖状ATO粒子及びアルコキシシラン)の含有量は0.52質量%であり、鎖状ATO粒子及びアルコキシシランの合計量に対する鎖状ATO粒子の含有量は80質量%であった。
【0057】
<透明導電性基板の作製>
上記コーティング液を、縦10cm、横10cm、厚さ0.7mmのガラス基板上にスプレーコートにより塗布した。スプレーガンはノードソン社製パルススプレイを用い、ニードル開度を0.15mmとして、吐出液量10.0g/分になるように液の押し出し圧力を調製した。ガンと基板の距離を100mm、塗布速度を毎秒600mm、重ねピッチ15.0mm、アトマイズエアー及びスワールエアーの圧力は0.05MPaとした。また、塗布面積は20cm四方とし、塗布面積の中心に基板をおいて塗布を行った。得られた塗膜を120℃の乾燥機で1時間乾燥させて、ガラス基板の上に透明導電性膜を設けた実施例1の透明導電性基板を作製した。
【0058】
(実施例2)
<コーティング液の調製>
プラスチック製ビンに、下記成分(1)〜(5)を下記分量で入れ、攪拌してコーティング液を調製した。
【0059】
(1)鎖状ATO粒子:0.42部
(2)アルコキシシラン(無機系バインダ:信越化学工業社製“X40−2308”):0.10部
(3)ジメチルスルホキシド(高沸点溶剤):7.50部
(4)エチルアルコール(低沸点溶剤):91.88部
(5)ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン15.0部とジプロピレングリコールモノメチルエーテル85.0部との混合液(レベリング剤:ビックケミージャパン社製“BYK−337”):0.10部
【0060】
上記コーティング液の不揮発固形成分(鎖状ATO粒子及びアルコキシシラン)の含有量は0.52質量%であり、鎖状ATO粒子及びアルコキシシランの合計量に対する鎖状ATO粒子の含有量は80質量%であった。
【0061】
次に、上記コーティング液を用い、重ねピッチを17.5mmに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の透明導電性基板を作製した。
【0062】
(実施例3)
<コーティング液の調製>
プラスチック製ビンに、下記成分(1)〜(5)を下記分量で入れ、攪拌してコーティング液を調製した。
【0063】
(1)鎖状ATO粒子:0.42部
(2)アルコキシシラン(無機系バインダ:信越化学工業社製“X40−2308”):0.10部
(3)ジメチルスルホキシド(高沸点溶剤):15.00部
(4)エチルアルコール(低沸点溶剤):84.38部
(5)ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン15.0部とジプロピレングリコールモノメチルエーテル85.0部との混合液(レベリング剤:ビックケミージャパン社製“BYK−337”):0.10部
【0064】
上記コーティング液の不揮発固形成分(鎖状ATO粒子及びアルコキシシラン)の含有量は0.52質量%であり、鎖状ATO粒子及びアルコキシシランの合計量に対する鎖状ATO粒子の含有量は80質量%であった。
【0065】
次に、上記コーティング液を用い、重ねピッチを20.0mmに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3の透明導電性基板を作製した。
【0066】
(実施例4)
<コーティング液の調製>
プラスチック製ビンに、下記成分(1)〜(5)を下記分量で入れ、攪拌してコーティング液を調製した。
【0067】
(1)鎖状ATO粒子:0.39部
(2)アルコキシシラン(無機系バインダ:信越化学工業社製“X40−2308”):0.13部
(3)ジメチルスルホキシド(高沸点溶剤):7.50部
(4)エチルアルコール(低沸点溶剤):91.88部
(5)ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン15.0部とジプロピレングリコールモノメチルエーテル85.0部との混合液(レベリング剤:ビックケミージャパン社製“BYK−337”):0.10部
【0068】
上記コーティング液の不揮発固形成分(鎖状ATO粒子及びアルコキシシラン)の含有量は0.52質量%であり、鎖状ATO粒子及びアルコキシシランの合計量に対する鎖状ATO粒子の含有量は75質量%であった。
【0069】
次に、上記コーティング液を用い、重ねピッチを17.5mmに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例4の透明導電性基板を作製した。
【0070】
(実施例5)
<コーティング液の調製>
プラスチック製ビンに、下記成分(1)〜(5)を下記分量で入れ、攪拌してコーティング液を調製した。
【0071】
(1)鎖状ATO粒子:0.43部
(2)アルコキシシラン(無機系バインダ:信越化学工業社製“X40−2308”):0.09部
(3)ジメチルスルホキシド(高沸点溶剤):7.50部
(4)エチルアルコール(低沸点溶剤):91.88部
(5)ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン15.0部とジプロピレングリコールモノメチルエーテル85.0部との混合液(レベリング剤:ビックケミージャパン社製“BYK−337”):0.10部
【0072】
上記コーティング液の不揮発固形成分(鎖状ATO粒子及びアルコキシシラン)の含有量は0.52質量%であり、鎖状ATO粒子及びアルコキシシランの合計量に対する鎖状ATO粒子の含有量は83質量%であった。
【0073】
次に、上記コーティング液を用い、重ねピッチを17.5mmに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例5の透明導電性基板を作製した。
【0074】
(実施例6)
<コーティング液の調製>
プラスチック製ビンに、下記成分(1)〜(5)を下記分量で入れ、攪拌してコーティング液を調製した。
【0075】
(1)鎖状ATO粒子:0.42部
(2)アルコキシシラン(無機系バインダ:信越化学工業社製“X40−2308”):0.07部
(3)ジメチルスルホキシド(高沸点溶剤):7.50部
(4)エチルアルコール(低沸点溶剤):91.91部
(5)ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン15.0部とジプロピレングリコールモノメチルエーテル85.0部との混合液(レベリング剤:ビックケミージャパン社製“BYK−337”):0.10部
【0076】
上記コーティング液の不揮発固形成分(鎖状ATO粒子及びアルコキシシラン)の含有量は0.49質量%であり、鎖状ATO粒子及びアルコキシシランの合計量に対する鎖状ATO粒子の含有量は85質量%であった。
【0077】
次に、上記コーティング液を用い、重ねピッチを17.5mmに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例6の透明導電性基板を作製した。
【0078】
(比較例1)
<コーティング液の調製>
プラスチック製ビンに、下記成分(1)〜(5)を下記分量で入れ、攪拌してコーティング液を調製した。
【0079】
(1)鎖状ATO粒子:1.40部
(2)アルコキシシラン(無機系バインダ:信越化学工業社製“X40−2308”):1.71部
(3)ジメチルスルホキシド(高沸点溶剤):7.50部
(4)エチルアルコール(低沸点溶剤):89.29部
(5)ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン15.0部とジプロピレングリコールモノメチルエーテル85.0部との混合液(レベリング剤:ビックケミージャパン社製“BYK−337”):0.10部
【0080】
上記コーティング液の不揮発固形成分(鎖状ATO粒子及びアルコキシシラン)の含有量は3.11質量%であり、鎖状ATO粒子及びアルコキシシランの合計量に対する鎖状ATO粒子の含有量は45質量%であった。
【0081】
次に、上記コーティング液を用い、重ねピッチを5.0mmに変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1の透明導電性基板を作製した。
【0082】
(比較例2)
<コーティング液の調製>
プラスチック製ビンに、下記成分(1)〜(5)を下記分量で入れ、攪拌してコーティング液を調製した。
【0083】
(1)鎖状ATO粒子:1.40部
(2)アルコキシシラン(無機系バインダ:信越化学工業社製“X40−2308”):1.71部
(3)ジメチルスルホキシド(高沸点溶剤):3.00部
(4)エチルアルコール(低沸点溶剤):93.79部
(5)ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン15.0部とジプロピレングリコールモノメチルエーテル85.0部との混合液(レベリング剤:ビックケミージャパン社製“BYK−337”):0.10部
【0084】
上記コーティング液の不揮発固形成分(鎖状ATO粒子及びアルコキシシラン)の含有量は3.11質量%であり、鎖状ATO粒子及びアルコキシシランの合計量に対する鎖状ATO粒子の含有量は45質量%であった。
【0085】
次に、上記コーティング液を用い、重ねピッチを10.0mmに変更した以外は、実施例1と同様にして比較例2の透明導電性基板を作製した。
【0086】
(比較例3)
<コーティング液の調製>
プラスチック製ビンに、下記成分(1)〜(5)を下記分量で入れ、攪拌してコーティング液を調製した。
【0087】
(1)鎖状ATO粒子:0.70部
(2)アルコキシシラン(無機系バインダ:信越化学工業社製“X40−2308”):0.38部
(3)ジメチルスルホキシド(高沸点溶剤):7.50部
(4)エチルアルコール(低沸点溶剤):91.32部
(5)ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン15.0部とジプロピレングリコールモノメチルエーテル85.0部との混合液(レベリング剤:ビックケミージャパン社製“BYK−337”):0.10部
【0088】
上記コーティング液の不揮発固形成分(鎖状ATO粒子及びアルコキシシラン)の含有量は1.08質量%であり、鎖状ATO粒子及びアルコキシシランの合計量に対する鎖状ATO粒子の含有量は65質量%であった。
【0089】
次に、上記コーティング液を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例3の透明導電性基板を作製した。
【0090】
(比較例4)
<コーティング液の調製>
プラスチック製ビンに、下記成分(1)〜(5)を下記分量で入れ、攪拌してコーティング液を調製した。
【0091】
(1)鎖状ATO粒子:0.70部
(2)アルコキシシラン(無機系バインダ:信越化学工業社製“X40−2308”):0.30部
(3)ジメチルスルホキシド(高沸点溶剤):25.00部
(4)エチルアルコール(低沸点溶剤):73.90部
(5)ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン15.0部とジプロピレングリコールモノメチルエーテル85.0部との混合液(レベリング剤:ビックケミージャパン社製“BYK−337”):0.10部
【0092】
上記コーティング液の不揮発固形成分(鎖状ATO粒子及びアルコキシシラン)の含有量は1.00質量%であり、鎖状ATO粒子及びアルコキシシランの合計量に対する鎖状ATO粒子の含有量は70質量%であった。
【0093】
次に、上記コーティング液を用い、吐出液量を5.0g/分、重ねピッチを10.0mmに変更した以外は、実施例1と同様にして比較例4の透明導電性基板を作製した。
【0094】
(比較例5)
<コーティング液の調製>
プラスチック製ビンに、下記成分(1)〜(5)を下記分量で入れ、攪拌してコーティング液を調製した。
【0095】
(1)鎖状ATO粒子:0.70部
(2)アルコキシシラン(無機系バインダ:信越化学工業社製“X40−2308”):0.30部
(3)ジメチルスルホキシド(高沸点溶剤):7.50部
(4)エチルアルコール(低沸点溶剤):91.40部
(5)ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン15.0部とジプロピレングリコールモノメチルエーテル85.0部との混合液(レベリング剤:ビックケミージャパン社製“BYK−337”):0.10部
【0096】
上記コーティング液の不揮発固形成分(鎖状ATO粒子及びアルコキシシラン)の含有量は1.00質量%であり、鎖状ATO粒子及びアルコキシシランの合計量に対する鎖状ATO粒子の含有量は70質量%であった。
【0097】
次に、上記コーティング液を用い、重ねピッチを10.0mmに変更した以外は、実施例1と同様にして比較例5の透明導電性基板を作製した。
【0098】
(比較例6)
<コーティング液の調製>
プラスチック製ビンに、下記成分(1)〜(5)を下記分量で入れ、攪拌してコーティング液を調製した。
【0099】
(1)鎖状ATO粒子:0.42部
(2)アルコキシシラン(無機系バインダ:信越化学工業社製“X40−2308”):0.05部
(3)ジメチルスルホキシド(高沸点溶剤):7.50部
(4)エチルアルコール(低沸点溶剤):91.93部
(5)ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン15.0部とジプロピレングリコールモノメチルエーテル85.0部との混合液(レベリング剤:ビックケミージャパン社製“BYK−337”):0.10部
【0100】
上記コーティング液の不揮発固形成分(鎖状ATO粒子及びアルコキシシラン)の含有量は0.46質量%であり、鎖状ATO粒子及びアルコキシシランの合計量に対する鎖状ATO粒子の含有量は90質量%であった。
【0101】
次に、上記コーティング液を用い、吐出液量を5.0g/分、重ねピッチを23.0mmに変更した以外は、実施例1と同様にして比較例6の透明導電性基板を作製した。
【0102】
次に、上記各透明導電性基板の塗布性状、膜厚、表面抵抗率、ヘイズ値、全光線透過率、鉛筆硬度及び信頼性を下記のとおり測定又は評価した。
【0103】
<塗布性状>
透明導電性膜の塗布ムラの有無を観察し、塗布ムラがない場合を塗布性状が良好と判断し、塗布ムラがある場合を塗布性状が不良と判断した。
【0104】
<膜厚>
透明導電性基板を切断し、走査型電子顕微鏡(SEM、日立製作所社製“S−4500”)にて断面観察して、透明導電性膜の膜厚を測定した。
【0105】
<表面抵抗率>
表面抵抗計(三菱化学社製“ハイレスタMCP−HT450”、印加電圧:10V)を用いて、透明導電性膜の初期の表面抵抗率を測定した。
【0106】
<ヘイズ値及び全光線透過率>
日本電色工業社製の光度計“ヘイズメーターNDH2000”を用い、透明導電性膜のみのヘイズ値及び全光線透過率を測定した。
【0107】
<鉛筆硬度>
透明導電性膜の鉛筆硬度を新東科学社製の表面性試験機“HEIDON−14DR”を用いて測定した。
【0108】
<信頼性>
透明導電性基板を温度60℃、相対湿度90%の環境下で1000時間保持した後の透明導電性膜の表面抵抗率を上記と同様にして測定して、高温高湿試験後の表面抵抗率とした。次に、下記式から表面抵抗率の変化率を求め、変化率が100%未満の場合を信頼性が良好と判断し、変化率が100%以上の場合を信頼性が不良と判断した。
変化率(%)=(|初期の表面抵抗率−高温高湿試験後の表面抵抗率|/初期の表面抵抗率)×100
【0109】
以上の測定の結果をコーティング液の固形分濃度及び透明導電性膜中のATO粒子の含有量と共に表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
表1から、本発明の実施例1〜6の透明導電性基板は、塗布性状、表面抵抗率、ヘイズ値、全光線透過率、鉛筆硬度及び信頼性の全てで優れた結果を得たことが分かる。
【0112】
一方、固形分濃度が1質量%を超え、ATO含有量が75質量%を下回った比較例1及び3では、鉛筆硬度及び信頼性が劣り、固形分濃度が1質量%を超え、ATO含有量が75質量%を下回った比較例2では、塗布性状、全光線透過率、鉛筆硬度及び信頼性が劣り、ATO含有量が75質量%を下回った比較例4では、塗布性状、鉛筆硬度及び信頼性が劣り、ATO含有量が75質量%を下回った比較例5では、鉛筆硬度及び信頼性が劣り、ATO含有量が85質量%を超えた比較例6では、塗布性状、鉛筆硬度及び信頼性が劣った。