(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る消火栓装置は、トンネル内の車道の路肩に構築された監視員通路に設けられた設置用空間内に設置されるものである。
まず、消火栓装置が設置される監視員通路の設置用空間について
図34に基づいて説明する。
図34は、トンネルの路肩の監視員通路の一部を示したものであり、図中、81はトンネル壁面81、83は監視員通路83、85は車道85である。
監視員通路83の路面は、車道幅方向(奥行き方向)に車道85側が低くなるような傾斜面となっている。この傾斜面の勾配は、排水勾配と呼ばれ、傾斜角度は2.0%程度である。なお、2.0%の傾斜とは、100cmで2.0cmの高低差が生ずるような傾斜をいう。
【0017】
設置用空間87は、
図34に示すように、監視員通路83の前壁89から監視員通路83の車道幅方向に切り欠くように設けられ、車道幅方向断面では設置用空間87を形成する壁がL字形状になっている。このような設置用空間87が設けられることで監視員通路83の路面には開口部が形成される。そして、該開口部の開口縁部91は、後述する消火栓装置1の天板部9の張出し部13が載置される3辺の部分が一段低くなった段部になっている。
【0018】
上記のような設置用空間87に設置される本実施の形態の消火栓装置1を
図1〜
図4に基づいて説明する。消火栓装置1は、ホース3を収納するホース収納部5を内蔵する箱形の筐体7を備え、筐体7は、天板部9と天板部9の下方の本体部11とを有し、天板部9は本体部11の外周部よりも外方に張出す張出し部13を有している。
そして、本体部11を設置用空間87内に収容すると共に、監視員通路83の路面の開口縁部91に形成された段部に張出し部13を載置して本体部11を吊下げ支持して設置できるようにしたものである。
以下、消火栓装置1を構成する各部について詳細に説明する。
なお、以下の説明で、前面側とは、設置用空間87に消火栓装置1を設置したときに車道に面する側のことであり、上面側とは、設置用空間87に消火栓装置1を設置したときに監視員通路83の路面に接続される面側のことである。
【0019】
<筐体>
本例における筐体7は、上述のように本体部11と天板部9を有し、全体形状は、
図1、
図2に示すように、略直方体形状をしている。
【0020】
《本体部》
本体部11の内部には、
図3、
図4に示すように、内巻きに巻き回されたホース3を収納するホース収納部5および消火器15を立てた状態で収納する消火器収納部17が設けられている。なお、本実施の形態の消火器収納部17は、2本の消火器15を奥行き方向に並べて収納できるものである。
また、ホース収納部5の前面側の近傍で、かつ高さ方向で中程よりも上方側には、消火栓弁を操作するための操作レバー19が設けられている(
図3参照)。
さらに、ホース収納部5の前面側の近傍で、かつ上部側には、ホース3の先端に設けられた消火ノズル21を所定の位置に保持するためのノズルホルダ23が設けられている(
図3参照)。
消火ノズル21は、ホース3の先端部に設けられ、消火水(泡水溶液も含む)を放射するものである。なお、
図3では、消火ノズル21とホース3との接続部分は省略してある。
【0021】
操作レバー19及びノズルホルダ23を設ける位置は、後述する筐体7の前面扉27及び上面扉37の両方から操作者が操作等できる位置に設けるのが望ましい。
また、ノズルホルダ23による消火ノズル21の保持方法についても、筐体7の前面側及び上面側のいずれからでも容易に取り外し可能な保持方法にするのが望ましい。
【0022】
本体部11におけるホース収納部5の前面には前面開口部25が設けられ、前面開口部25には下降式の前面扉27が設けられている。
また、本体部11における消火器収納部17の前面には消火器箱前面開口部29が設けられ、消火器箱前面開口部29には横開き式の消火器箱前面扉31が設けられている。
【0023】
前面扉27を開扉することで、操作レバー19の操作が可能で、かつノズルホルダ23に保持されている消火ノズル21を取り外してホース3を引き出すことが可能になっている。
また、消火器箱前面扉31を開扉することで、内部に載置されている消火器15を取り出すことが可能になっている。
【0024】
前面扉27、消火器箱前面扉31については、その開放方式は特に限定されるものではなく、前面扉27を引戸式や回動式、あるいは消火器箱前面扉31を下降式や回動式にしてもよい。
【0025】
《天板部》
天板部9は、本体部11と一体的に連結されており、本体部11の側面外周部から外方に張出す張出し部13を有している。張出し部13は、両側辺と後辺(背面側の辺)の3辺、即ち、前面側の辺以外に設けられている。なお、張出し部13は3辺でなくても良く、少なくとも両側辺の2辺にあれば良い。
張出し部13は、監視員通路83の開口縁部91に載置されて本体部11を吊下げ支持するものであるため、本体部11を吊下げ支持することができ、かつ、天板部9上に人が乗っても耐えられる強度を有している。
このため、本実施の形態では、
図2、
図3に示すような、L形のアングル材33が補強部材として張出し部13を下方から支持する構造になっている。
なお、張出し部13は天板部9の他の部位と一体でも別体でもよい。
【0026】
前述したように監視員通路83に排水勾配が設けられている場合には、これに合わせて天板部9を本体部11に対して傾斜させて設置するようにするのが好ましい。
例えば、
図2の二点鎖線で示すように、前面側から背面側に向かって登り傾斜となるような角度を設けるようにする。
【0027】
天板部9におけるホース収納部5の上方に相当する部位には、上面開口部35が形成され、上面開口部35には開閉可能な上面扉37が設けられている。より詳細には、上面開口部35は、収納されているホース3より前面側であり、消火ノズル21の上方に位置している。
天板部9に上面開口部35及び上面扉37を設けたのは、消火栓装置1の天板部9側から、ホース3の引き出しや、操作レバー19の操作を可能にするためである。つまり、消火活動は、監視員通路83の路上からでも、車道からでも行うことができる。
【0028】
上面扉37は、前側に設けられた図示しない回動軸を中心として、前面側に向けて回動して、上面開口部35を開口するようになっている。
上面扉37は、開放状態でロックして自然には閉止しないようにするのが好ましい。
なお、上面扉37の開閉方式についても、上記の回動形に限定されず、例えばスライド方式や、あるいは実施の形態2で示すような単に置くだけの載置式のものであってもよい。
【0029】
天板部9における消火器収納部17の上方に相当する部位には、消火器箱上面開口部39が形成され、消火器箱上面開口部39には開閉可能な消火器箱上面扉41が設けられている。消火器箱上面開口部39は消火器15の上方に位置し、消火器1本分又は複数本分が通過可能な大きさを有している。消火器箱上面開口部39は、上面開口部35と比較して、奥行き(車道幅方向)は長く、車道走行方向の幅は短い矩形状となっている。
なお、上記の消火器収納部17は、2本の消火器15を立てた状態で奥行き方向に並べて収納するものであるが、消火器15を幅方向(車道走行方向)に2本並べて収納できるものであってもよい。この場合、これに合わせて消火器箱上面開口部39の位置及び大きさを設定すればよい。
消火器箱上面扉41も上面扉37と同様の構成となっている。
なお、上面扉37と消火器箱上面扉41の開放方法は上述のように同じ開放方法を採用しても良いし、異なる採用方法としてもよい。例えば、上面扉37は上述のように回動方式であり、消火器箱上面扉41はスライド方式、載置型であってもよい。
【0030】
次に、上記のように構成された本実施の形態の消火栓装置1の設置方法及び設置状態について
図5、
図6に基づいて説明する。
上述したように、消火栓装置1は、監視員通路83の開口縁部91に天板部9の張出し部13を載置して、本体部11を吊下げ支持するように設置される。
このため、設置箇所において車道85の車道走行方向で傾斜があり、その傾斜角度が違う場合であっても、同一形状の消火栓装置1を監視員通路83の路面の傾斜に合わせて面一で設置し、天板部9を監視員通路83として供用することができる。
【0031】
また、監視員通路83に排水勾配が設けられている場合には、排水勾配に合わせて天板部9を本体部11に対して奥行き方向で傾斜させておけば、この場合でも監視員通路83に対して面一の状態で設置することができる。なお、排水勾配は車道85の車道走行方向の傾斜と違って設置箇所によって傾斜勾配が変わらないので、消火栓装置1としては設置予定の監視員通路83の傾斜勾配に合わせて天板部9を傾斜させておけばよい。
【0032】
上記のように設置された消火栓装置1においては、天板部9が監視員通路83の路面の一部となり通行することができ、かつホース3の引き出し、操作レバー19の操作、及び消火器15の取り出しを前面側及び上面側から行うことができる。
【0033】
なお、本実施の形態の消火栓装置1は、天板部9の張出し部13で本体部11を吊下げ支持するものであるが、このような構造の場合、張出し部13の荷重負担が大きくなる。
そこで、本体部11の下面に実施の形態3で説明するような高さ調整可能な伸縮脚部69を設け、本体部11を張出し部13で吊下げ支持した後で、伸縮脚部69の高さを調整して、伸縮脚部69でも荷重の一部を負担できるようにしてもよい。このようにすることで、張出し部13の荷重負担を軽減でき、これによって張出し部13の構造を簡易なものにすることができる。
【0034】
[実施の形態2]
本実施の形態に係る消火栓装置43について、
図7〜
図16に基づいて説明する。なお、
図7〜
図16において実施の形態1の
図1〜
図6に示した部位と同一又は対応する部位には同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
本実施の形態に係る消火栓装置43は、実施の形態1と同様にトンネル内の車道85の路肩に構築された監視員通路83に設けられた設置用空間87内に設置される消火栓装置43であって、ホース3を収納する本体部45と、本体部45の上面を覆う天板部47とを有する筐体49を備えている。
そして、天板部47は、本体部45とは分離された別体からなることを特徴とするものである。
以下、実施の形態1と異なる部分を中心として各部を詳細に説明する。
【0036】
<筐体>
本実施の形態における筐体49は、実施の形態1と同様に、本体部45と天板部47を有し、全体形状は、
図7、
図8に示すように、直方体形状をしている。
【0037】
《本体部》
本体部45は、上面が開放された箱形状をしている点が実施の形態と異なるが、本体部45の前面部やその内部構造は、
図7〜
図11に示す通りで、実施の形態1と同様である。
【0038】
《天板部》
天板部47は、本体部45と別体で、本体部45を上面から覆うものであり、
図8に示すように、矩形状をしている。そして、天板部47の両側辺と後辺の3辺には、
図12、
図13に示すように、監視員通路83の開口縁部91に載置される開口縁載置部51を有している。なお、開口縁載置部51は3辺ではなく、少なくとも両側辺の2辺にあれば良い。
また、天板部47の下面には、開口縁載置部51の内周を囲むように、下方に凸条に垂下する垂下部53が設けられている。
さらに、天板部47の前辺の両端部には、下方に垂下する前垂下片55が設けられている。この前垂下片55は、監視員通路83の前壁89に係止して、天板部47の位置決めをする機能を有している。
【0039】
また、天板部47には、実施の形態1と同様に、天板部47におけるホース収納部5の上方に相当する部位には上面開口部35が形成され、消火器収納部17の上方に相当する部位には、消火器箱上面開口部39が形成されている。
さらに、
図13に示すように、上面開口部35及び消火器箱上面開口部39の内側の縁部には、蓋部材を載置するための蓋載置部57が設けられている。
上面開口部35の内側に設けられた蓋載置部57には、上面開口部35を塞ぐように上面蓋部材59が載置され、消火器箱上面開口部39の内側に設けられた蓋載置部57には、消火器箱上面開口部39を塞ぐように消火器箱上面蓋部材61が載置される。これら、上面蓋部材59及び消火器箱上面蓋部材61は載置されているだけなので、簡単に取り外しが可能である。
【0040】
なお、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、上面開口部35及び消火器箱上面開口部39に回動式の扉等を設けるようにしてもよい。
【0041】
次に、上記のように構成された本実施の形態の消火栓装置43の設置方法及び設置状態について
図14〜
図16に基づいて説明する。
設置用空間87の床面に
図14に示すような、枠材からなる架台63を所定の位置に設置して、架台63に本体部45を載置する。これによって、本体部45を所定の位置に設置することができる。
【0042】
次に、開口縁部91に天板部47を載置する。このとき、天板部47の前垂下片55を監視員通路83の前壁89に当接させることで位置決めをすることができる。天板部47を開口縁部91に載置すると、
図9、
図12に示すように、天板部47の下面側に設けられた垂下部53の内側に本体部45の上端縁が配置されるようにする。これによって、本体部45の上端縁(周壁上端部に相当)と垂下部53とが重畳し、天板部47が本体部45の開放された上面を被覆して、天板部47と本体部45との間の隙間が塞がれる。このため、監視員通路83の路面を流れる雨水等の水滴が本体内に浸入するのを防止できる。また、トンネル内の埃等が本体部45内に浸入するのを防止できる。
【0043】
以上のように、本実施の形態の消火栓装置43によれば、天板部47が開口縁部91に載置されるので、実施の形態1と同様に、設置箇所において車道85の車道走行方向で傾斜があり、その傾斜角度が違う場合であっても、同一形状の消火栓装置43を監視員通路83の路面の傾斜に合わせて面一で設置することができる。
また、監視員通路83に排水勾配が設けられている場合であっても、天板部47は本体部45と別体であるため、天板部47を載置するだけで、排水勾配に対しても天板部47を面一にすることができる。
【0044】
また、本実施の形態の天板部47は実施の形態1のように本体部11を吊下げ支持するものではないので、本体部45を支持するような強度が要求されず、より簡易な構造にすることができる。
【0045】
また、本実施の形態のものにおいても、実施の形態1と同様に、天板部47が監視員通路83の路面の一部となり通行することができ、かつホース3の引き出し、操作レバー19の操作、及び消火器15の取り出しを前面側及び上面側から行うことができることは言うまでもない。
【0046】
[実施の形態3]
本実施の形態に係る消火栓装置64について、
図17〜
図22に基づいて説明する。なお、
図17〜
図22において実施の形態1、2の
図1〜
図16に示した部位と同一又は対応する部位には同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
本実施の形態の消火栓装置64は、実施の形態2の消火栓装置43の本体部45の下面に、架台63に代えて、本体部45を、床面上を水平方向に移動可能にすると共に設置姿勢を調整できる移動・姿勢調整部材65を設けたものである。移動・姿勢調整部材65は、本体部45の下面の角部の4箇所に設けられている。
移動・姿勢調整部材65は、
図20に示すように、旋回可能な走行用のキャスタ67と伸縮脚部69から構成されている。伸縮脚部69は、軸部71に設置台73が上下移動可能に取り付けられており、設置台73を回転させることで設置台73が軸部71に対して軸方向に移動し、伸縮脚部69全体の長さを伸縮できる機構になっている。
【0048】
移動・姿勢調整部材65を本体部45の下面に設けることで、以下のような効果を奏することができる。
本体部45の搬入に関し、通常、消火栓装置64の搬入据付は小型のクレーンによって吊り上げた状態で所定位置に吊り降ろして設置される。
しかし、移動・姿勢調整部材65を設けることで、床面と本体部45の底面との間に空間が形成されるので、フォークリフトによる搬入・据付が可能になる。例えば、本体部45をフォークリフトのフォークに載置して設置用空間87の近傍まで移動し、据付場所の床面上に載置する。そして、床面上を横移動させて所定の位置に移動し、伸縮脚部69を伸ばすことで、本体部45の姿勢を調整する。
また、車道85に消火栓装置64を運べば、消火栓装置64を押すだけで設置用空間87に配置することも出来る。
【0049】
姿勢調整に関し、車道85の車道走行方向の傾斜に合うようにするには、左右の伸縮脚部69の長さの調整によって行えばよい。また、奥行き方向(車道幅方向)の傾斜に対しては、前後の伸縮脚部69の長さを調整すればよい。
このように、本体部45の下面に移動・姿勢調整部材65を設けることで、本体部45の搬入及び姿勢調整を容易にすることができる。この場合、実施の形態2で説明した架台63は不要となる。
【0050】
なお、上記の実施の形態3の説明では、天板部47と本体部45とが別体となった本体部45に移動・姿勢調整部材65を設けるものであったが、天板部47と本体部45とが一体となった載置型のものにおいても、移動・姿勢調整部材65を設けることで、天板部47と監視員通路83の路面とを面一にすることができる。
【0051】
つまり、この場合には、車道85の車道走行方向に沿った傾斜に合わせることが主たる目的となり、伸縮脚部69によって消火栓装置の本体部の幅方向の高さを調整して前記本体部を幅方向で所望の傾斜角度に傾斜させて設置すればよい。この場合には、伸縮脚部69は車道走行方向(消火栓装置64の幅方向)の傾斜角度調整脚部として機能する。
なお、載置型の消火栓装置で車道幅方向の高さを調整すると、前記消火栓装置の前面が垂直面にならないが、前記消火栓装置の天板部と監視員通路83を面一にするために、車道幅方向の傾斜(排水勾配)に対して高さ調整をしても良い。この場合には、伸縮脚部69は車道幅方向(消火栓装置64の奥行き方向)の傾斜角度調整脚部として機能する。
また、監視員通路83に設けられる排水勾配に対する対応としては、実施の形態1で述べたのと同様に、前記天板部を前記本体部に対して排水勾配と同じ傾斜角度になるように傾斜させればよい。
また、実施の形態1のように、吊り下げ型の消火栓装置の場合であっても、伸縮自在のキャスタを設けることで、移動及び姿勢調整を行うことができる。
【0052】
[実施の形態4]
上述したように監視員通路83には排水勾配が設けられており、実施の形態1で述べたような吊下げ型のように消火栓装置1の筐体7における天板部9と本体部11が一体のものでは、天板部9を本体部11に対して監視員通路83の排水勾配と同じ傾斜角度に設定して設けることが望ましい。
そして、通常、この排水勾配は2%と定められているため、天板部9を本体部11に対して2%の傾斜角度で設置することで、天板部9を監視員通路83の路面と面一にし、かつ本体部の前面部すなわち前面パネルを監視員通路83の前壁89と平行あるいは面一にすることができる。
【0053】
しかしながら、施工上の公差を考えた場合、監視員通路83の排水勾配が正確に2%になっているとはかぎらず、天板部9を本体部11に対して2%の傾斜角度で取り付けていた場合において、仮に、排水勾配が1%になっていると、天板部9を監視員通路83と面一に設置すると、本体部11の前面パネルが監視員通路83の前壁89(垂直壁)と平行にならずその一部が突出して、建築限界に侵入することが懸念される。
他方、排水勾配が3%になっていると、本体部の前面パネルが監視員通路83の前壁89(垂直壁)と平行にならず、突出はしないものの意匠性を損なうという懸念がある。
【0054】
そこで、本実施の形態においては、天板部9を監視員通路83の路面として供用できると共に、排水勾配が一定でない場合であっても、消火栓装置の本体部の前面パネルを監視員通路83の前壁89に対して平行に設置することができる消火栓装置を提供するものである。
【0055】
本実施の形態に係る消火栓装置75について、
図23〜
図32に基づいて説明する。
なお、本実施の形態の消火栓装置75は、実施の形態1で示した吊下げ式の筐体7を有するものであり、
図23〜
図32において実施の形態1の
図1〜
図6に示した部位と同一又は対応する部位には同一の符号を付して説明を省略する。また、内部構造についても実施の形態1のものと同様であるので、図示及び説明を省略して、本実施の形態の特徴部分である前面パネル77を中心に説明する。
【0056】
本実施の形態に係る消火栓装置75の本体部11は、上端部を回動可能に支持された前面パネル77と、前面パネル77を天板部9に対して所定の角度で保持する角度調整機構78とを有している。以下、前面パネル77と角度調整機構78について詳細に説明する。
【0057】
<前面パネル>
前面パネル77は、本体部11の正面を構成するものであり、実施の形態1に示したものと同様に、前面開口部25、前面扉27、消火器箱前面開口部29、消火器箱前面扉31を有している。
なお、上記の実施の形態1〜3では説明していないが、前面パネル77には赤色表示灯79が設けられており、
図24に示すように、赤色表示灯79が前面パネル77から最も突出している。したがって、消火栓装置75を設置した場合において、赤色表示灯79が建築限界に侵入しないように設計されることになる。
【0058】
また、前面パネル77は、上述したように、上端部を本体部11に図示しない支持機構によって回動可能に支持されており、回動軸80を中心にして回動することで、天板部9に対する角度θ(
図24参照)を調整できるようになっている。
なお、前面パネル77の上端部の支持機構の例としては、ヒンジによって前面パネル77内壁上方と本体部11の天板部9とを固定する構成や、前面パネル77内壁上方と本体部77の側面部内壁とを固定する構成とすることができる。
【0059】
また、前面パネル77は、両側辺部及び下辺部に後方側に延出する枠部77aを有しており、本体部11の側面パネル93及び底面パネル95の前端縁は枠部77a内に収容されている。枠部77aを設けることで、前面パネル77の角度θを変化させたときに、前面パネル77と側面パネル93及び底面パネル95との間に外部から見える隙間が形成できるのを防止して意匠性を高めている。また、枠部77aで隙間を覆うことで、埃等の堆積を防ぐこともできる。
【0060】
<角度調整機構>
角度調整機構78は、前面パネル77を天板部9に対して所定の角度に保持するためのものである。角度調整機構78について、
図25〜
図27に基づいて説明する。
角度調整機構78は、
図27に示すように、側面パネル93の内面側に固定される第1基部97と、第1基部97に第1回動軸99を介して回動可能に取り付けられた第1回動片部101と、第1回動片部101の後述する立片部101bに挿通された調整ネジ棒103と、調整ネジ棒103の立片部101bに対する相対位置を固定するナット105と、調整ネジ棒103の先端に固定されたコ字状の第2回動片部107と、前面パネル77の背面側に固定された第2基部109と、第2基部109に設けられて第2回動片部107を回動可能に支持する第2回動軸111とを備えてなるものである。
【0061】
第1回動片部101は、コ字状、すなわち矩形片の両短辺に矩形片が設けられた形状の支持片部101aと、支持片部101aの開口を下に向けた状態で支持片部101aから上方に立ち上がる立片部101bを有し、立片部101bに調整ネジ棒103が挿通される挿通孔(一対のナット105に挟まれて見えない)が設けられている。そして、立片部101bの挿通孔に調整ネジ棒103が挿通され、立片部101bを両側から挟むようにして2個のナット105が設けられ、ナット105を回して調整ネジ棒103に対するナット105の軸方向の位置を調整することで、調整ネジ棒103の立片部101bに対する相対位置を決めることができる。
【0062】
上記のように構成された角度調整機構78においては、側面パネル93に固定された第1基部97に第1回動片部101が回動可能に取り付けられ、他方、前面パネル77に固定された第2基部109に第2回動片部107が回動可能にとりつけられている。そして、第1回動片部101と第2回動片部107の相対位置が調整ネジ棒103とナット105によって規定されることで、前面パネル77の天板部9に対する角度θが規定される。
【0063】
例えば、
図25に示す状態から、ナット105を調整ネジ棒103の後端側に移動すれば、
図28に示すように、前面パネル77が前方に押し出され、
図29に示すように、前面パネル77の天板部9に対する角度θが変化する(大きくなる)。
逆に、
図28に示す状態から、ナット105を調整ネジ棒103の前端側、つまり
図25に示すように、第2回動片部107側に移動すると前面パネル77が後方に引き戻されて、
図24に示すように、前面パネル77の天板部9に対する角度θが変化する(小さくなる)。
【0064】
なお、前面パネル77が前方に押し出されたり、後方に引き戻されたりすることで、調整ネジ棒103の角度が
図25の状態から
図28の状態との間で変化するが、このような変化が可能なのは、調整ネジ棒103の後端側には第1回動片部101が取り付けられ、先端側には第2回動片部107が取り付けられることで、調整ネジ棒103の両端の回動を可能にしているからである。
【0065】
このように、ナット105の調整ネジ棒103に対する軸方向の位置を調整することで、前面パネル77の天板部9に対する角度θを調整して、前面パネル77の傾斜角度を所定の角度に調整することができる。
【0066】
なお、前面パネル77には枠部77aが設けられて、この枠部77aが側面パネル93及び底面パネル95の前縁部を覆っているので、前面パネル77の傾斜角度が変化しても、前面パネル77と側面パネル93及び底面パネル95のとの間に外から見えるような隙間が生ずることがない。
【0067】
図30、
図31は排水勾配が規定通りの2%の場合において、消火栓装置75を設置した状態を示している。
図30、
図31に示すように、この状態では、天板部9が監視員通路83の路面と面一になっていると共に、前面パネル77は監視員通路83の前壁89と平行になっている。そして、前面パネル77の赤色表示灯79の前面と前壁89とが前後方向で同じ位置となっている。
【0068】
図32、
図33は排水勾配が3%の場合において、消火栓装置75を設置した状態を示している。この状態でも、角度調整機構78によって前面パネル77の傾斜角度を調整することで、排水勾配が規定通りの場合と同様に、天板部9が監視員通路83の路面と面一になっていると共に、前面パネル77を監視員通路83の前壁89と平行にして、前面パネル77の赤色表示灯79の前面と前壁89とを前後方向で同じ位置にすることができる。
【0069】
以上のように、本実施の形態によれば、監視員通路83の排水勾配が消火栓装置75を設置する場所ごとに異なっていたとしても、天板部9に対する前面パネル77の角度θを調整して前面パネル77の傾斜角度を調整することで、天板部9を監視員通路83の路面と面一にすると共に、監視員通路83の前壁89と前面パネル77とを平行に設置することができる。
【0070】
なお、上記の実施の形態4では排水勾配が規定より大きい場合について説明したが、排水勾配が規定より小さい場合(例えば、1%)であっても、以下のような構成にすることで、排水勾配が規定通りの場合と同様に、前面パネル77を監視員通路83の前壁89と平行にして、前面パネル77の赤色表示灯79の前面と前壁89とを前後方向で同じ位置にすることができる。
例えば、消火栓装置の底面板を車道幅方向に短くし、前記底面板の前面部が上記実施の形態4より奥側に位置するようにする。こうすることで、前面パネル77の角度θを鋭角にでき、即ち前面パネル77の上端側よりも下端側が奥側になるように傾斜させることができ、排水勾配が規定より小さい場合にも対応できる消火栓装置となる。
また、実施の形態4のように天板部9を本体部11に対して2%の傾斜角度で設けず、垂直(傾斜角度0%)になるように設けてもよい。この場合には、消火栓装置を設置する際に、排水勾配に合わせて前面パネル77の角度θを調整するようにすればよい。これによって、排水勾配の公差にも対応できる。
【0071】
なお、上記の実施の形態4においては、実施の形態1で示したのと同様の筐体7が吊下げ支持できるものを例に挙げて説明したが、本実施の形態の消火栓装置75は、吊下げ支持できるものに限られず、載置型であっても筐体7の天板部9と本体部11が一体になっているものに適用できる。
【0072】
また、本発明に係る角度調整機構78は、上端部を回動可能に支持された前面パネル77を天板部9に対して所定の角度で保持できるものであれば
図27に示したものに限られず、種々の形態をとり得る。
【0073】
また、上記の実施の形態1〜4では、ホース3を収納するホース収納部5を有する消火栓装置1、43、64、75について説明したが、監視員通路83には、消火器のみを収容する消火器箱を設置することも考えられ、このような場合には、消火器箱にも上述した消火栓装置1、43、64、75の特徴を適用することができる。
【0074】
例えば、実施の形態1の特徴を有する消火器箱は、監視員通路の路面に供用される天板部と、該天板部の下方に設けられて消火器を収納する消火器収納部とを有する筐体を備え、前記天板部は前記本体部の外周部よりも外方に張出す張出し部を有し、前記本体部を消火器箱用の設置用空間内に収容すると共に、監視員通路の路面における前記設置用空間の開口縁部に形成された段部に張出し部を載置して本体部を吊下げ支持して設置できるものである。
このような消火器箱は、実施の形態1で説明した消火栓装置1が備える他の種々の構成を備えることもできる。
【0075】
また、実施の形態2の特徴を有する消火器箱は、消火器を収容する本体部と、該本体部の上面を覆う天板部とを有する筐体を備え、該天板部は、前記本体部とは分離された別体からなるものである。
このような消火器箱は、実施の形態2で説明した消火栓装置43が備える他の種々の構成を備えることもできる。
【0076】
また、実施の形態3の特徴を有する消火器箱は、消火器を収容する本体部と、該本体部の上面を覆う天板部とを有する筐体を備え、前記本体部を、床面上を水平方向に移動可能にすると共に設置姿勢を調整できる移動・姿勢調整部材を設けたものである。
このような消火器箱は、実施の形態3で説明した消火栓装置64が備える他の種々の構成を備えることもできる。
【0077】
また、実施の形態4の特徴を有する消火器箱は、天板部と、該天板部の下方に設けられて消火器を収納する消火器収納部を有する本体部とを備えた筐体を備え、前記本体部は、上端部を回動可能に支持された前面パネルと、該前面パネルを前記天板部に対して所定の角度で保持する角度調整機構とを有し、前記本体部を消火器用の設置用空間内に設置した状態で、前記天板部は監視員通路の路面として供用できると共に前記前面パネルの前記天板部に対する角度調整可能にしたものである。
【0078】
また、このような消火器箱においても、前記前面パネルは、両側辺部及び下辺部に後方側に延出する枠部を有するようにしてもよい。
さらに、前記天板部は前記本体部の外周部よりも外方に張出す張出し部を有し、該張出し部によって前記本体部を吊下げた状態で設置できるようにしてもよい。