特許第6691056号(P6691056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691056
(24)【登録日】2020年4月13日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】発泡フォームを担体として含む化粧品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20200421BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20200421BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20200421BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20200421BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/02
   A61Q1/00
   A61Q5/00
   A61Q19/00
【請求項の数】7
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-561816(P2016-561816)
(86)(22)【出願日】2015年4月10日
(65)【公表番号】特表2017-510616(P2017-510616A)
(43)【公表日】2017年4月13日
(86)【国際出願番号】KR2015003646
(87)【国際公開番号】WO2015156650
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2018年3月7日
【審判番号】不服2019-3732(P2019-3732/J1)
【審判請求日】2019年3月19日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0043005
(32)【優先日】2014年4月10日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ジョン ソン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, キョン ホ
【合議体】
【審判長】 佐々木 芳枝
【審判官】 堀川 一郎
【審判官】 窪田 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/154391(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/81
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡フォーム担体;および
前記発泡フォーム担体に担持された化粧料組成物を含み、
前記発泡フォーム担体は、
NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)を発泡フォームの質量全体に対して80質量%以上含み、
平均200〜900μmサイズのポアを含み、
1〜50mmの厚みを有し、
化粧料組成物担持前の硬度が10〜95アスカーFであり、
下記特性
i)前記発泡フォーム担体に手作業で化粧料組成物15gが充填される時間である充填能が、3〜10秒であり;
ii)前記発泡フォーム担体に化粧料組成物が充填された後に保有している化粧料組成物の量である担持能が、前記発泡フォーム担体に充填された化粧料組成物の総質量に対して85〜99%であり;および
iii)前記発泡フォーム担体から化粧料組成物が取られる測定値である排出能が、0.2〜0.7gである;
のすべて含み、
前記化粧料組成物は、2,000〜60,000cpsの粘度を有し、
前記発泡フォーム担体は、ポア骨格(stem)に突起を有するポアを含み、
前記突起は、前記発泡フォーム担体と同じ材質から構成されており、
前記突起を有するポアは、前記発泡フォーム担体に含まれるポア数全体の20〜80%であり、
前記突起の大きさは、平均ポアサイズの2.5〜25%であり、
前記発泡フォーム担体は、これに担持された化粧料組成物を別の塗布具に排出する、
化粧品。
【請求項2】
前記発泡フォーム担体は、下記特性のうち一つ以上を含み、
i)化粧料組成物担持後の高さ膨張率が2%〜25%;および
ii)化粧料組成物担持後の径膨張率が2%〜25%
前記高さ膨張率および径膨張率は、下記式[数1]および[数2]によって計算されるものである、請求項1に記載の化粧品。
【数1】
【数2】
【請求項3】
前記発泡フォーム担体に担持された化粧料組成物は、溶液、エマルジョン、ゲル、クリーム、および懸濁液からなる群より選択されるものである、請求項1に記載の化粧品。
【請求項4】
前記発泡フォーム担体に担持された化粧料組成物は、スキンケア化粧料、ピグメントを含有するメイクアップ化粧料、ヘアケア化粧料、および紫外線遮断剤からなる群より選択されるものである、請求項1に記載の化粧品。
【請求項5】
前記発泡フォーム担体は、手または塗布手段が接触する面以外の面のうち一つ以上が被膜タイプである、請求項1に記載の化粧品。
【請求項6】
前記一つ以上の面は、側面あるいは底面である、請求項に記載の化粧品。
【請求項7】
前記化粧品は、化粧料組成物が担持された担体から化粧料組成物を取る塗布具をさらに含む、請求項1に記載の化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリロニトリルブタジエンゴム(acrylonitrile‐butadiene rubber:以下、「NBR」という)を化粧料組成物の担体として含む化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液状の化粧料組成物は、主に真空容器、ポンプ容器またはガラス容器等に充填されて流通および保管されてきたが、このような容器は、携帯が不便であるという短所がある。最近、外出時にも簡便に化粧をしたり、化粧直ししたりする必要性が増加するにつれて、携帯に便利な液状化粧料組成物担体への要求が増加している。
【0003】
液状化粧料組成物を簡便に携帯することができる容器としては、ファクトタイプの容器が考えられる。ファクトタイプの容器に液状化粧料組成物を入れるためには、その容器に使用可能な化粧料組成物担体であるかどうか、その担体に化粧料組成物が十分に充填できるかどうか、担体が化粧料組成物を長期間均質に担持できるかどうか、および、担体から塗布具に化粧料組成物を取ろうとする際に適量が排出されるかどうか、などを考慮しなければならない。また、使用中には継続的に外部に露出され、塗布具によって接触するため、菌による汚染に強い材質が好ましい。
【0004】
既存のNBRは、ポアサイズの小ささにより組成物を担持できる空き空間が少なく、その内部に化粧料組成物が十分に充填されず、充填させたとしても、膨張率が高いためスポンジの変形が起こって排出が円滑でないという問題があった。また、外部の菌に対する抗菌力が維持されないという問題があった。そのため、前記NBRは、パフのような塗布手段としては使用されてきたが、担体として使用されなかった。ポリウレタンは、化粧料組成物が微細に排出されるので、薄く均一に化粧をすることができる一方、皮膚に対するカバーが軽く行われる方であることから、消費者の立場からは好みが分かれ得る。
【0005】
一方、発泡フォームであるNBRの場合、従来、ポンプ容器や、ガラス容器、真空容器などの塗布具として使用し得るという文献はあるが、従来の塗布具として使用されるNBR発泡フォームは、ファクト形態に、担体として適した担持能と排出能を持たせることができていなかった(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3187673号公報
【特許文献2】特開2000‐79016号公報
【特許文献3】大韓民国公開特許公報第2013‐0116043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記のような問題点を解決し、多様な粘度を有する化粧料組成物に対する充填能、担持能および排出能に優れた担体を含むことにより、携帯が簡便でありながらもカバー力が高い液状化粧料組成物を含むことができる担体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のような目的を解決するために、本発明による具現例は、
発泡フォーム担体;および、前記発泡フォーム担体に担持された化粧料組成物を含み、
前記発泡フォーム担体は、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)を含み、平均200〜900μmサイズのポアを含み、1〜50mmの厚みを有し、
前記化粧料組成物は、2,000〜60,000cpsの粘度を有する化粧品を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による化粧品が含む発泡フォーム担体は、液状化粧料組成物の担体として要求される特性である充填能、担持能および排出能がいずれも優れる。具体的に、本発明は、前記担体を構成するNBR発泡フォームの最適化されたポアサイズと厚み、そして、発泡フォームに形成された突起構造とセル・イン・セル(cell‐in‐cell)構造により、多様な範囲の粘度を有する液状化粧料組成物を安定的に充填し、担持することができ、使用時には、前記発泡フォームを軽くタッチするだけで、多様な粘度範囲を有する液状化粧料組成物までをも適量排出することができる。したがって、本発明の化粧品は、液状化粧料組成物を簡便かつ容易に携帯することができ、これにより、優れた色発現、カバー力、保湿力、塗布感、弾力感などを皮膚に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態によるNBR発泡フォームの光学顕微鏡写真である。
図2】本発明の一実施形態によるNBR発泡フォームの光学顕微鏡写真である。
図3】本発明の一実施形態によるNBR発泡フォームの側面を被膜タイプに加工したものである。
図4】平均150μmポアサイズのNBR発泡フォームと平均600μmポアサイズのNBR発泡フォームに対して排出能実験をした結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「担体」は、組成物を例として挙げることのできる任意の物質または成分を担持することができるものを意味し、「担持体」、「含浸材」または「媒介体」とも表現され得る。また、「担体」は、これに担持された物質を、別の塗布具に排出するように使用されるものであってよい。前記担体に担持されている組成物は、たとえば、手や、パフ、チップ、ブラシなどの塗布手段(塗布具またはアプリケーター(applicator)ともいう)を介して皮膚に伝達されてよい。
【0012】
本明細書において、「担持能」は、任意の物質または成分を入れ込めて保持することのできる能力を意味する。担体に要求される「担持能」は、組成物を長期間均質に担持することという点において、塗布具などに一時的に物質が取られることと区別される。
【0013】
本明細書において、「充填能」または「充填力」は、発泡フォームが化粧料組成物を充填することのできる能力を意味するものであって、発泡フォームに一定の量の化粧料組成物が充填されるのに必要とされる時間で表してよい。本発明における「充填能」または「充填力」の測定は、円径44mm×高さ9.0mmの大きさのNBR発泡フォームに、2,000〜60,000cpsの化粧料組成物が、手作業で充填されるのに所要される時間を意味する。
【0014】
本明細書において、「排出能」または「排出力」は、化粧料組成物を担持した発泡フォームから塗布具によって化粧料組成物を取るときに排出される化粧料組成物の量を意味し、多くも少なくもない適切な量の化粧料組成物が排出されることが好ましい。本発明における「排出能」または「排出力」の測定は、2,000〜60,000cpsの化粧料組成物が充填された円径44mm×高さ9.0mmの大きさのNBR発泡フォームの表面を、2kgの重さ(力)で押したときに取られる測定値である。
【0015】
本明細書において、「耐久性」とは、発泡フォームに化粧料組成物を担持させ、一定温度下で一定時間放置したときに、発泡フォームが溶けたり、破れたり膨張することなく、その状態を維持することができる程度、および/または使用時、塗布具によって発泡フォームから化粧料組成物を取る際に、発泡フォームが塗布具による反復的な圧力に耐える程度を意味する。
【0016】
なお、本明細書の発泡フォームは、化粧料組成物を充填する充填能に優れて、化粧料組成物を長期間均質に保持する担持能に優れ、化粧料組成物を取る際に適量の化粧料組成物を排出する排出能が高く、かつ化粧料組成物を担持した後にも、優れた耐久性を維持することができる。
【0017】
本明細書において、「アスカーF硬度」は、アスカー(ASKER、製造元)デュロメ‐タ硬度(DUROMETER HARDNESS)計(F型(Type F))で測定したときの硬度であって、組成物が発泡フォームに担持される前の硬度を意味する。
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明の実施例は、発泡フォーム担体;および、前記発泡フォーム担体に担持された化粧料組成物を含み、前記発泡フォーム担体は、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)を含み、平均200〜900μmサイズのポアを含み、1〜50mmの厚みを有し、前記化粧料組成物は、2,000〜60,000cpsの粘度を有する化粧品を提供する。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記発泡フォーム担体は、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)を発泡フォームの質量全体に対して80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、93質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、または100質量%含んでよいが、これらに限定されない。以下においては、前記NBRを含む発泡フォーム担体を、「NBR発泡フォーム」または「NBR発泡フォーム担体」という。
【0021】
本発明において、前記NBR発泡フォーム担体に含まれるポアは、200〜900μmの平均サイズを有するものであってよい。具体的に、前記平均ポアサイズは、900μm以下、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下、または200μm以下であってよく、200μm以上、300μm以上、400μm以上、500μm以上、600μm以上、700μm以上、800μm以上、または900μm以上であってよい。
【0022】
本発明における前記NBR発泡フォーム担体の平均ポアサイズの測定は、図1に示したように、光学顕微鏡(Nikon ECLIPSE LV100POL)を使用して、5x/0.15倍率に拡大して測定してよい。
【0023】
前記本発明のNBR発泡フォームのポアサイズが平均200μm未満であると、化粧料組成物を担持するポア空間が小さいため担持能が低下し、平均900μmを超過する場合、ポア空間が大き過ぎるため組成物の排出調節能力が低下し得る。したがって、本発明のNBR発泡フォームは、平均ポアサイズを前記のように大きく調節することにより、空気透過性が高く、ふんわりさ、柔らかさ、柔軟性、および弾力性に優れる。
【0024】
本発明の一具現例として、前記平均200〜900μmのポアサイズを有するNBR発泡フォームは、具体的に、化粧料組成物の担持前に、10〜95のアスカーF硬度を有してよい。発泡フォームの硬度が10未満であると、柔らかすぎて中身を均一な分布で担持することができないだけでなく化粧料組成物が過度に排出され、95を超過すると、硬すぎて化粧料組成物の充填が難しく、排出が困難になる。前記のような観点から、本発明のNBR発泡フォームは、具体的に、95以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、30以下、20以下、または10のアスカーF硬度を有してよく、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、または95のアスカーF硬度を有してよい。前記200〜900μmの平均ポアサイズを有するNBR発泡フォームは、化粧料組成物の充填能と排出能に優れ、担持能に非常に優れる。より好ましくは、前記NBR発泡フォームが10〜95のアスカーF硬度を有する場合、2,000cps〜60,000cps(centipoise)粘度の化粧料組成物の担持能、充填能、および排出能がさらに優れるようになる。本発明において使用されるNBR発泡フォームは、平均ポアサイズが200〜900μmと大きいが、本発明のNBR発泡フォームは、図2に示されたように、ポア骨格(stem)に突起を含んでいるため、低粘度の組成物を担持しても、組成物の沈積が起こらない。
【0025】
一具現例として、前記突起を有するポアは、前記発泡フォーム担体に含まれるポア数全体の20〜80%であってよい。具体的に、前記突起を有するポア数の割合は、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、または80%であってよく、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、または20%であってよい。突起が発泡フォーム担体に含まれるポア数全体の20%以下であると、内容物の沈積があり、発泡フォームの耐久性が低下することがあり、80%以上である場合、ポア形成が低くなり、過度に多くの量が排出され得る。また、前記突起の大きさは、平均ポアサイズの2.5〜25%であってよい。前記突起の大きさは、光学顕微鏡(Nikon ECLIPSE LV100POL)を使用して、5x/0.15の倍率で突起の長い部分の長さを測定して評価してよい。
【0026】
さらに、本発明の前記NBR発泡フォームは、セル・イン・セル(cell‐in‐cell)構造を有してよいが、本発明のセル・イン・セル(cell‐in‐cell)構造とは、大きなサイズのセルの中に小さなサイズのセルを含むことを意味する。これは、発泡過程中に形成される巨大ポア以外に、セルの骨格あるいは骨組み(もしくは幹)に形成された、小さなサイズのセルである。本発明は、担体の発泡フォームを前記セル・イン・セル(cell‐in‐cell)構造で形成することにより、化粧料組成物が取られる際に、塗布具(たとえば、パフ)にまとまって取られずに広く取られ、皮膚に塊が付かずに均一に伝達される効果を持たせることができる。また、セル・イン・セル(cell‐in‐cell)発泡構造は、低粘度の化粧料組成物を担持しても組成物の沈積が起こらず、色発現、カバー力、保湿力、塗布感、弾力感などに優れた高濃度の化粧効果を示し得る。
【0027】
本明細書において、粘度は、粘度測定機器で測定してよく、たとえば、Brookfield DV‐III ULTRAで、液状の化粧料組成物の場合、スピンドル(spindle)NO.63、スピンドル速度5rpmで測定してよい。
【0028】
本発明の一具現例として、前記NBR発泡フォーム担体は、1mm〜50mmの厚みを有してよい。発泡フォームの厚みが1mm未満であると、化粧料組成物の担持量が少なく、50mmを超過すると、使用時、化粧料組成物の排出において、その内容物の残量なしに排出することが難しい。本発明の一具現例に適用されるNBR発泡フォームを利用した担体は、たとえば3mm〜45mmの厚みを有してよく、たとえば5mm〜40mmの厚みを有してよく、たとえば8mm〜35mmの厚みを有してよく、たとえば10mm〜30mmの厚みを有してよい。具体的に、前記厚みは、50mm以下、40mm以下、30mm以下、20mm以下、10mm以下、または5mm以下であってよく、1mm以上、10mm以上、20mm以上、30mm以上、40mm以上、または50mm以上であってよい。
【0029】
また、一具現例によれば、前記本発明によるNBR発泡フォームは、密度を調節することにより、NBR発泡フォーム内部に化粧料組成物を担持することのできる空間を有するようにしてよい。NBR発泡フォームの密度が0.05〜1.25g/cmであるとき、発泡フォーム内部に化粧料組成物を担持することのできる空間が十分に確保されるだけでなく、耐久性に優れる。NBR発泡フォームの密度が0.05g/cm未満であると、固形分の質量が低く、引張強度、弾性度、硬度が低いため耐久性が弱く、破れが生じ得るため、ポアのサイズを前記200〜900μmのような大きなサイズで形成させることができない。また、支持体の役割をする骨格が弱く、化粧料組成物をポア内部に保持しておくことができないので、担持力が低下して沈積が起こり得る。1.25g/cmを超過すると、固形分質量が高く、体積全体において固形分が占める範囲が高いため、空気が占有する空間、すなわち、気孔率が低い。したがって、内容物を担持することのできる体積が低下する。
【0030】
本発明の具現例に使用される前記NBRは、抗菌性を有してよい。
【0031】
また、前記NBRは、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル単量体と、ブタジエンまたはイソプレンなどの共役ジエン単量体とを主成分とする物質であり、必要に応じて、これらと共重合可能な不飽和単量体を一定量配合し、陰イオン系界面活性剤などの乳化剤や、重合開始剤、分子量調整剤などの各種添加剤を少量添加してなる単量体組成物を、乳化重合法などの重合方法により共重合させて得られた物質である。
【0032】
一具現例として、前記NBRの不飽和ニトリル単量体と共役ジエン単量体との配合割合は、不飽和ニトリル単量体の含有量が15〜50質量%程度の範囲内であってよく、用途および含浸される化粧料組成物に応じて、組成比を調節して含んでよい。他の一具現例として、前記NBRは、第3成分として、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸単量体を共重合させ、分子中にカルボキシル基を導入したカルボキシル化NBRであってよい。
【0033】
本発明の一具現例による前記NBR発泡フォーム担体は、化粧料組成物を担持することにより、担体内部の空き空間に化粧料組成物が占め、担体が膨張(スウェリング;swelling)する。膨張は、材質、硬度、添加剤に応じて、その程度が異なってよく、下記数式[数1]および[数2]で膨張率を求めてよい。
【0034】
【数1】
【0035】
【数2】
【0036】
本発明の一具現例として、本発明による前記NBR発泡フォーム担体の膨張率は、化粧料組成物担持後の高さ膨張率が2%以上25%以下および化粧料組成物担持後の径膨張率が2%以上25%以下のうち一つ以上の膨張率条件を満足してよい。高さ膨張率が25%を超過するか、径膨張率が25%を超過すると、担体が膨張して容器上部のカバーに内容物が汚染されたり、容器に発泡フォームが合わなくなり得る。高さ膨張率2%未満においては、発泡フォームの柔軟性が低下して、充填力が低下し得る。すなわち、2〜25%の膨張率においては、内容物に対して膨張し、かつ内容物を十分に吸湿することができる。
【0037】
また、本発明の一具現例として、前記NBR発泡フォーム担体は、発泡フォーム担体に手作業で化粧料組成物15gが充填される時間である充填能が、3〜10秒であってよい。前記発泡フォーム担体に化粧料組成物が充填された後に保有している化粧料組成物の量である担持能が、前記発泡フォーム担体に充填された化粧料組成物の総質量に対して85〜99%であってよい。または、前記発泡フォーム担体から化粧料組成物を塗布手段に付けた(ペイオフした)際にペイオフされる量である排出能が、0.2〜0.7gであってよい。前記排出能は、2,000〜60,000cpsの化粧料組成物が充填された円径44mm×高さ9.0mmのサイズのNBR発泡フォームの表面を2kgの重さ(力)で押されたときに取られる測定値である。前記排出能が0.2g未満であると、取られる量が少ないため、使用が不便であり、0.7gを超過すると、使用に過剰な量であって、均一な化粧膜を形成するのに適さない。
【0038】
本発明の一具現例として、前記化粧料組成物は、多様な範囲の粘度を有する液状であってよく、溶液、エマルジョン、ゲル、クリームまたは懸濁液を含んでよい。化粧料組成物が液状である場合、固状である場合よりも携帯や保管が困難な傾向が高いが、本発明による化粧料組成物担体を利用する場合、液状およびクリーム状の化粧料組成物も安定かつ安全に保管および携帯することができる。
【0039】
本発明の一具現例による化粧料組成物は、液状またはクリーム状などの化粧料組成物を担体に担持することにより、熱衝撃または物理的衝撃による瞬間的な物性変化を減らすことができ、化粧料使用時、担体が内容物を捕捉する(trap)役割をするため、適正量の内容物だけをペイオフすることができるという長所がある。
【0040】
前記化粧料組成物は、溶液、エマルジョンまたは懸濁液を含むが、これらに制限されるものではない。また、本発明の一観点であるNBR発泡フォームに担持される化粧料組成物は、スキンケア化粧料、ピグメントを含有するメイクアップ化粧料、ヘアケア化粧料、紫外線遮断剤を含有してよく、これらに制限されるものではない。
【0041】
本発明の前記化粧料組成物担体に適用され得る化粧料組成物は、乳化型、具体的には油中水(W/O)型または水中油(O/W)型、分散型、具体的には油分散または水分散型であってよい。
【0042】
また、本発明の前記化粧料組成物担体は、担体の底面(手または塗布手段と接触する面とは反対側の面)と側面のうち少なくとも一面が、図3に示したように被膜(セルが閉鎖された状態)となっているものであってよく、前記被膜により、担体に化粧料組成物が担持された状態で、底または側面側に化粧料組成物が漏れ出ることを防止してよい。前記のように担体の側面あるいは底面を被膜タイプにすると、使用中、化粧料組成物が側面や底面に移動して担体の外部に流出することを減らすことができ、結局のところ、化粧料組成物の損失を減少させることができ、これにより使用期間が増え、便宜性が改善される効果がある。
【0043】
本発明の一具現例として、前記化粧料組成物は、たとえば、ツインケーキ、メイクアッププライマー、メイクアップベース、液状または高粘度ファンデーション、コンシーラー、リップスティック、リップグロス、パウダー、リップライナー、アイブロウ、アイライナー、アイシャドウ、ブラッシャー(blusher)、紫外線遮断剤、ローション、クリーム、またはエッセンスなどに剤形化されてよいが、これらに限定されるものではない。
【0044】
また、本発明の実施例による化粧品は、一具現例として、化粧料組成物が担持された発泡フォーム担体から化粧料組成物を取る塗布具をさらに含んでよい。また、前記化粧品は、前記化粧料組成物担体を収納できる下部および鏡などをさらに含んでよく、蓋の上部を含む容器、一般的に、ファクトと呼ばれる化粧品用容器をさらに含んで提供してよいが、これらに限定されるものではない。
【0045】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例は、専ら本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものと解釈されてないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明である。
【0046】
[実施例]
NBRを主原料とし、顔料、加硫剤、そして、選択的に、発泡剤、その他添加剤を、水と所定の割合で配合し、混合攪拌して発泡させ、これをモールドに注入して凝固させた後、加熱炉で加熱して加硫反応とともに成形させ、これを切断、乾燥、表面加工して、NBR発泡フォームを作製した。
このように製造されたNBR発泡フォームは、アスカーF硬度が48、平均ポアサイズが680μmであった。
【0047】
[実験例1]
1‐1:NBR発泡フォームの密度による担持力、排出力、充填力の結果
本実験例においては、NBR発泡フォームの密度による担持力、充填力および排出力を測定した。
【0048】
15,000cpsの粘度(Brookfield DV‐III ULTRA、スピンドル(spindle)No.63、スピンドル速度5rpmで測定)を有する下記表1の化粧料組成物を、化粧料組成物の担持前硬度5〜95のアスカーF硬度を有するNBR発泡フォームに担持させ、担持力、排出力、充填力を測定した。
【0049】
充填能は、化粧料15gを手作業でNBR発泡フォームに充填(容器に担体を入れ、スパチュラを利用して充填)される時間で測定した。担持能は、化粧料組成物15gをNBR発泡フォームに充填して55℃で4週間放置した後、容器内の担体が保有している化粧料の量を測定した。排出力は、各発泡フォームからパフおよび手で内容物を取り、その取られる量で測定した。その結果を、下記表2に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
1‐2:NBR発泡フォームの硬度による担持力、充填力および排出力の分析
本実施例においては、NBR発泡フォームの硬度による担持力、充填力および排出力を測定した。
【0053】
【表3】
【0054】
その結果、表3に示されたように、担持前硬度20〜80のアスカーF硬度を有するNBR発泡フォームが、5または100のアスカーF硬度を有する発泡フォームに比べて、充填力が非常に優れることを確認することができ、排出力の場合も、適切な排出力を示すことを確認することができた。排出力は、少なすぎでも、多すぎでもない量が排出されることが好ましいので、1回のペイオフ時に約0.3〜0.5g排出される程度を適正量と判断した。排出力が0.3g未満であると、塗布量が少なくて化粧効果が低下し、0.5gを超過すると塊で排出されて均一塗布の効果が低下する。担持力においては大きな差を見せなかったが、20〜95のアスカーF硬度を有するNBR発泡フォームにおいて、担持力がより優れるものと示された。
【0055】
1‐3:NBR発泡フォームのポアサイズによる担持力、排出力と充填力の分析
前記表1による化粧料組成物および200〜900μmの平均ポアサイズを有するNBR発泡フォームを利用して、各平均ポアサイズ別の担持力、排出力および充填力を前記1‐1と同様の方法で測定した。その結果を下記表4に示した。
【0056】
【表4】
【0057】
その結果、表4に示されたように、平均200〜900μmのポアサイズを有するNBR発泡フォームを担体として使用した場合において、適切な排出力と優れた充填力を示すことを確認することができ、担持力の場合は、平均200〜600μmのポアサイズを有するNBR発泡フォームにおいて最も優れるものと示された。
【0058】
1‐4:化粧料組成物の粘度による担持性および排出力の分析
平均680μmのポアサイズと、担持前硬度50のアスカーF硬度を有するNBR発泡フォームを準備し、これを使用して下記表5のような1500〜51,000cpsの粘度を有する化粧料組成物をそれぞれ準備して担持させ、1‐1と同様の方法で、担持力と排出力を確認した。その結果、表6に示されたように、2,000〜60,000cpsの粘度を有する化粧料を使用した場合に優れた担持力を示し、排出力もまた、前記範囲において適切な排出力を有することを確認した。
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
1‐5:NBR発泡フォームの抗菌力
抗菌力は、ブドウ状球菌と肺炎菌を接種した後、減少率を測定した。抗菌力試験法は、KSK0693試験法を使用し、使用菌株は、staphylococcus aureus ATCC 6538,klebsiella pneumonia ATCC 4352であった。その結果を下記表8に示した。
【0062】
【表7】
【0063】
1‐6:NBR発泡フォームとポリウレタンの担持力、発色力、保湿感、カバー力の比較
600μmの平均ポアサイズと50アスカーF硬度を有する円径44mm×高さ9.0mmの大きさのNBR発泡フォームを使用した。対照群としては、円径44mm×高さ9.0mmの大きさのポリウレタン(95ppi)を担体として使用して化粧料を担持させた組成物を使用した。
【0064】
その結果、表8に示されたように、低粘度(2000cps)の化粧料を担持させた場合、ポリウレタン担体よりもNBR発泡フォーム担体の方が高い担持力を示した。また、発色力においても、NBR発泡フォームを使用した場合に高かった。
【0065】
高粘度の化粧料を担持させた場合、表9に示されたように、NBR発泡フォームを担体(5秒)として使用したときの充填力が、ポリウレタン担体(20秒)よりもはるかに高く、保湿感とカバー力においても、NBR発泡フォーム担体がより優れるものと示された。
【0066】
【表8】
【0067】
【表9】
【0068】
[実験例2]ポアサイズによるNBR発泡フォームの比較
2‐1:化粧料組成物の充填能測定
平均150μmポアサイズ、化粧料組成物担持前硬度50アスカーF、円径44mm×高さ9.0mmの大きさのNBR発泡フォームと、平均600μmのポアサイズを有し、担持前硬度50アスカーF、円径44mm×高さ9.0mmの大きさのNBR発泡フォームとを使用して、次の表10および表11の化粧料組成物を充填した。
【0069】
【表10】
【0070】
【表11】
【0071】
前記表10および表11の試料の粘度は、下記表12に示すとおりである。
【0072】
【表12】
【0073】
前記試料1〜5の化粧料組成物を、前述したような平均150μmポアサイズのNBR発泡フォームと平均600μmポアサイズのNBR発泡フォームにそれぞれ担持させた後、定められた時間内に適正量の内容物を充填する能力を測定した。その結果を表13に示した。
【0074】
【表13】
【0075】
2‐2:化粧料組成物の長期担持能測定
試料1〜5の化粧料組成物15gを、前述したような平均150μmポアサイズのNBR発泡フォームと平均600μmポアサイズのNBR発泡フォームのそれぞれに充填して、55℃で4週放置した後、容器内の担体が保有している化粧料の量を測定した。その結果、表14に示されたように、比較例と実施例のNBR発泡フォームが高い担持能を有することを確認した。
【0076】
【表14】
【0077】
2‐3:化粧料組成物の排出能測定
前記平均150μmポアサイズのNBR発泡フォームと平均600μmポアサイズのNBR発泡フォームについて、排出能実験を行った。担体に担持された化粧料を、パフを利用して1回塗布した際に取られる化粧料の量を測定した。その結果、図4に示されたように、平均600μmポアサイズのNBR発泡フォームの排出能が優れるものと示された。
【0078】
2‐4:化粧料組成物の発色力とカバー力の測定
前記の平均150μmポアサイズのNBR発泡フォームと平均600μmポアサイズのNBR発泡フォームに、同一のファンデーション(試料2)とアイライナー(試料5)を担持させた後、色表現を比較した。
【0079】
平均150μmポアサイズのNBR発泡フォームの場合、ファンデーションは薄くぼやけて表現されるのに対し、平均600μmポアサイズのNBR発泡フォームの場合、色発現、カバー力、保湿力、塗布感、弾力感などが優れて表現された。
アイライナーの場合も、平均150μmポアサイズのNBR発泡フォームの場合、薄くぼやけて表現されるのに対し、平均600μmポアサイズのNBR発泡フォームを使用した場合、濃く鮮明に表現された(表15)。
【0080】
【表15】
【0081】
[実験例3]NBR発泡フォームの性能評価
NBRを主原料とし、顔料、加硫剤、そして、選択的に、発泡剤、その他添加剤を、水と所定の割合で配合し、混合攪拌して発泡させ、これをモールドに注入して凝固させた後、加熱炉で加熱して加硫反応とともに成形させ、これを切断、乾燥、表面加工して、NBR発泡フォームを作製した。
【0082】
前記製造されたNBR発泡フォームは、アスカーF硬度が47、平均ポアサイズが680μmであった。
【0083】
次に、前記NBR発泡フォームの担持力、充填力および排出力を測定した。
【0084】
12,800cpsの粘度を有する化粧料組成物を、前記表1と同一の組成で製造し、これを前記NBR発泡フォームに担持させた。その結果、NBR発泡フォームの直径が12.90%膨張し、高さが13.20%膨張した。
【0085】
充填能は、化粧料組成物15gが充填される時間を測定した。NBRの特性上、初期には充填が完璧でないが、充填すると自ら膨張し、吸湿されるため、容器に化粧料組成物を担持体とともに入れた後、溢れない状態で充填されるものとした。
【0086】
担持能は、化粧料組成物15gを充填して、55℃で4週放置した後、容器内の担体が保有している化粧料の量を測定した。
【0087】
排出能は、各発泡フォームからパフおよび手で内容物を取り、パフに内容物が取られる量を測定した。その結果を下記表16に示した。
【0088】
【表16】
【0089】
[製造例1]アイライナー
アイライナーの粘度区間は、スピンドル#63、スピンドル速度5rpmの測定条件で、2,000〜30,000cpsである。
【0090】
【表17】
【0091】
[製造例2]リップメイク
リップメイクの粘度区間は、スピンドル#63、スピンドル速度5rpmの測定条件で、5,000〜60,000cpsである。
【0092】
【表18】
【0093】
[製造例3]スキンケア
スキンケア組成物の粘度区間は、スピンドル#63、スピンドル速度5rpmの測定条件で、3,000〜50,000cpsである。
【0094】
【表19】
【0095】
以上、本発明内容の特定の部分について詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は単に好ましい実施形態に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されるものでないことは明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付された請求項とそれらの等価物によって定義される。
図1
図2
図3
図4