特許第6691078号(P6691078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691078
(24)【登録日】2020年4月13日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】車高制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/015 20060101AFI20200421BHJP
   B60G 17/056 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   B60G17/015 C
   B60G17/056
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-161384(P2017-161384)
(22)【出願日】2017年8月24日
(65)【公開番号】特開2019-38359(P2019-38359A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2018年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】特許業務法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 渉悟
(72)【発明者】
【氏名】大橋 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】徳満 淳
(72)【発明者】
【氏名】神田 亮
(72)【発明者】
【氏名】小久江 健
(72)【発明者】
【氏名】汐▲崎▼ 裕和
(72)【発明者】
【氏名】中村 友之
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−105008(JP,A)
【文献】 特開平10−157432(JP,A)
【文献】 特開2016−185795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の複数の車輪の各々に対応して設けられた複数の車高制御アクチュエータと、
それら複数の車高制御アクチュエータが、それぞれ、車高制御弁を介して接続された共通通路と、
(a)高圧源と、(b)その高圧源と前記共通通路とを並列に接続する第1通路および第2通路を含む複数の通路と、(c)前記第1通路と前記第2通路とにそれぞれ設けられた1つ以上ずつの電磁弁を含む電磁弁装置とを備え、前記共通通路に流体を供給可能な流体供給装置と、
前記高圧源と前記共通通路とが前記第1通路と前記第2通路とを介して連通させられる第1連通状態と、前記第1通路が遮断されて前記高圧源と前記共通通路とが前記第2通路を介して連通させられる第2連通状態とを含む複数の連通状態のうちの1つに基づいて、前記電磁弁装置を制御することにより、前記高圧源と前記共通通路とを連通させる連通制御部を備え、前記車高制御弁を制御することにより、前記複数の車輪のうちの1つ以上の制御対象輪に設けられた前記1つ以上の車高制御アクチュエータを前記共通通路に連通させて、前記1つ以上の制御対象輪の車高制御アクチュエータに前記高圧源から流体を供給させることにより、前記1つ以上の制御対象輪についての車高を高くするアップ制御を行う車高制御部と
を含む車高制御システムであって、
前記連通制御部が、前記アップ制御についての開始条件が成立した場合に、その開始条件の内容と、前記アップ制御についての目標車高と、前記アップ制御における前記制御対象輪の数とのうちの1つ以上に基づいて前記複数の連通状態のうちの1つを選択する開始時連通状態選択部を含み、
前記開始時連通状態選択部が、前記開始条件の内容に基づいて前記複数の連通状態から1つを選択するものであり、
前記車両の停止状態において人が乗車すると推定されたことである開始条件が成立した場合に、前記第1連通状態を選択し、前記車両の停止状態において人が降車すると推定されたことである開始条件が成立した場合に、前記複数の連通状態から前記第1連通状態を除いた1つ以上の連通状態のうちの1つを選択するものであり、
前記車両の停止状態において人が乗車すると推定されたことである開始条件が成立した場合の目標車高が、前記車両の停止状態において人が降車すると推定されたことである開始条件が成立した場合の目標車高より高い車高制御システム。
【請求項2】
前記開始時連通状態選択部が、(a)前記車両の走行状態において走行速度が第1設定速度以上の状態から前記第1設定速度より小さい第2設定速度以下になったことである開始条件が成立した場合、または、(b)前記車両の走行状態において複数の車輪のうちの少なくとも1輪の車高が設定値以上低くなったことである開始条件が成立した場合に、前記複数の連通状態から前記第1連通状態を除いた1つ以上の連通状態のうちの1つを選択するものである請求項1に記載の車高制御システム。
【請求項3】
前記開始時連通状態選択部が、前記目標車高に基づいて前記複数の連通状態から1つを選択するものであり、
前記目標車高が標準車高より設定値高い値以上である場合に前記第1連通状態を選択し、前記目標車高が前記標準車高より設定値高い値より低い場合に前記複数の連通状態から前記第1連通状態を除いた1つ以上の連通状態のうちの1つを選択するものである請求項1または2に記載の車高制御システム。
【請求項4】
前記開始時連通状態選択部が、前記制御対象輪の数に基づいて前記複数の連通状態から1つを選択するものであり、
前記制御対象輪の数が4輪である場合に前記第1連通状態を選択し、前記制御対象輪の数が3輪以下である場合に、前記複数の連通状態から前記第1連通状態を除いた1つ以上の連通状態のうちの1つを選択するものである請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車高制御システム。
【請求項5】
車両の複数の車輪の各々に対応して設けられた複数の車高制御アクチュエータと、
それら複数の車高制御アクチュエータが、それぞれ、車高制御弁を介して接続された共通通路と、
(a)高圧源と、(b)その高圧源と前記共通通路とを並列に接続する第1通路および第2通路を含む複数の通路と、(c)前記第1通路と前記第2通路とにそれぞれ設けられた1つ以上ずつの電磁弁を含む電磁弁装置とを備え、前記共通通路に流体を供給可能な流体供給装置と、
前記高圧源と前記共通通路とが前記第1通路と前記第2通路とを介して連通させられる第1連通状態と、前記第1通路が遮断されて前記高圧源と前記共通通路とが前記第2通路を介して連通させられる第2連通状態とを含む複数の連通状態のうちの1つに基づいて、前記電磁弁装置を制御することにより、前記高圧源と前記共通通路とを連通させる連通制御部を備え、前記車高制御弁を制御することにより、前記複数の車輪のうちの1つ以上の制御対象輪に設けられた前記1つ以上の車高制御アクチュエータを前記共通通路に連通させて、前記1つ以上の制御対象輪の車高制御アクチュエータに前記高圧源から流体を供給させることにより、前記1つ以上の制御対象輪についての車高を高くするアップ制御を行う車高制御部とを含み、
前記連通制御部が、前記アップ制御についての開始条件が成立した場合に、その開始条件の内容と、前記アップ制御についての目標車高と、前記アップ制御における前記制御対象輪の数とのうちの1つ以上に基づいて前記複数の連通状態のうちの1つを選択する開始時連通状態選択部を含む車高制御システムであって、
前記高圧源がタンクを含み、
前記流体供給装置が、前記タンクに蓄えられた流体の圧力であるタンク圧を検出するタンク圧センサを含み、
前記連通制御部が、前記タンク圧センサにより検出された前記タンク圧に基づいて前記複数の連通状態のうちの1つを選択するタンク圧依拠選択部を含み、
前記タンク圧依拠選択部が、前記タンク圧が設定タンク圧より低い場合に前記第1連通状態を選択し、前記タンク圧が前記設定タンク圧以上である場合に前記複数の連通状態から前記第1連通状態を除いた1つ以上の連通状態のうちの1つを選択するものである車高制御システム。
【請求項6】
車両の複数の車輪の各々に対応して設けられた複数の車高制御アクチュエータと、
それら複数の車高制御アクチュエータが、それぞれ、車高制御弁を介して接続された共通通路と、
(a)高圧源と、(b)その高圧源と前記共通通路とを並列に接続する第1通路および第2通路を含む複数の通路と、(c)前記第1通路と前記第2通路とにそれぞれ設けられた1つ以上ずつの電磁弁を含む電磁弁装置とを備え、前記共通通路に流体を供給可能な流体供給装置と、
前記高圧源と前記共通通路とが前記第1通路と前記第2通路とを介して連通させられる第1連通状態と、前記第1通路が遮断されて前記高圧源と前記共通通路とが前記第2通路を介して連通させられる第2連通状態とを含む複数の連通状態のうちの1つに基づいて、前記電磁弁装置を制御することにより、前記高圧源と前記共通通路とを連通させる連通制御部を備え、前記車高制御弁を制御することにより、前記複数の車輪のうちの1つ以上の制御対象輪に設けられた前記1つ以上の車高制御アクチュエータを前記共通通路に連通させて、前記1つ以上の制御対象輪の車高制御アクチュエータに前記高圧源から流体を供給させることにより、前記1つ以上の制御対象輪についての車高を高くするアップ制御を行う車高制御部とを含み、
前記連通制御部が、前記アップ制御についての開始条件が成立した場合に、その開始条件の内容と、前記アップ制御についての目標車高と、前記アップ制御における前記制御対象輪の数とのうちの1つ以上に基づいて前記複数の連通状態のうちの1つを選択する開始時連通状態選択部を含む車高制御システムであって、
前記連通制御部が、前記アップ制御中に、前記複数の連通状態から1つを選択する制御中連通状態選択部を含み、
前記制御中連通状態選択部が、前記アップ制御中の実際の前記車高である実車高の変化量が、前記アップ制御についての目標車高変化量に基づいて決まる設定目標変化量より少ない場合に前記第1連通状態を選択し、前記実車高の変化量が前記設定目標変化量以上である場合に前記複数の連通状態から前記第1連通状態を除いた1つ以上の連通状態のうちの1つを選択するものである車高制御システム。
【請求項7】
前記流体供給装置が、前記高圧源と前記共通通路との間に、前記第1通路および前記第2通路に並列であって、前記第1通路および前記第2通路より流路抵抗が大きい第3通路を含み、
前記複数の連通状態が、前記第1連通状態および前記第2連通状態に加えて、前記第1通路と前記第2通路とを遮断して、前記高圧源と前記共通通路とを前記第3通路を介して連通させる第3連通状態を含む請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車高制御システム。
【請求項8】
前記電磁弁が常閉弁であり、
前記連通制御部が、前記第1連通状態において、前記第1通路に設けられた前記1つ以上の電磁弁を閉から開に切り換えることにより、前記第1通路を連通させて、前記高圧源と前記共通通路とを連通させるものである請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車高制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪についての車高を制御する車高制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車高制御システムにおいては、車高が目標車高に対して低い場合に、エアシリンダにエアが供給されることにより車高が高くされ、車高が目標車高に対して高い場合に、エアシリンダからエアが排出させられることにより車高が低くされる。
特許文献2に記載の車高制御システムにおいては、エアシリンダとタンクとが、車高制御初期において、第1流路系または第2流路系を介して連通させられ、車高制御中期において、第1流路系および第2流路系を介して連通させられ、車高制御終期において第1流路系または第2流路系を介して連通させられる。それにより、車高変化開始時と終了時とのショックを軽減しつつ、車高が目標車高に達するまでに要する時間を短くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−70615号公報
【特許文献2】特開2016−175573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、車高を高くするアップ制御が行われる場合に、複数の車高制御アクチュエータが接続された共通通路と高圧源とを、アップ制御に適した連通状態で連通可能とすることである。
【課題を解決するための手段および効果】
【0005】
本発明に係る車高制御システムにおいては、車高制御の開始条件が成立した場合に、複数の車高制御アクチュエータが接続された共通通路と高圧源とが、開始条件の内容と、アップ制御についての目標車高と、アップ制御における制御対象輪の数とのうちの1つ以上に基づいて選択された状態で連通させられる。
開始条件は、アップ制御の要求がある場合に成立する。目標車高は、アップ制御の要求に基づいて決まる。そのため、共通通路と高圧源との連通状態を、開始条件の内容、目標車高に基づいて決まる状態とすれば、共通通路と高圧源とを、アップ制御に適した、換言すれば、アップ制御の要求に合った連通状態で連通させることができる。
また、制御対象輪の数が多い場合は少ない場合より、共通通路に連通させられる車高制御アクチュエータの数が多くなり、共通通路に供給される流体の流量が同じである場合に、車高制御アクチュエータの各々に供給される流体の流量は少なくなる。そのため、例えば、制御対象輪の数が多い場合と少ない場合とで、アップ制御において要求される車高変化速度が同じである場合には、制御対象輪の数が多い場合は少ない場合より、共通通路に供給される流体の流量を大きくする必要がある。このように、制御対象輪の数に基づけば、アップ制御に適した、換言すれば、アップ制御の要求に合った連通状態で、共通通路と高圧源とを連通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施例1に係る車高制御システムを表す回路図である。
図2】上記車高制御システムの車高制御ECUの周辺を表す概念図である。
図3】上記車高制御システムにおいてアップ制御(パターンA)が行われる状態を表す図である。
図4】上記アップ制御とは別のアップ制御(パターンB)が行われる状態を表す図である。
図5】上記アップ制御とはさらに別のアップ制御(パターンC)が行われる状態を表す図である。
図6】上記パターンA〜Cが設定された場合において、アップ制御が行われた場合の時間と車高の変化との関係を示す図である。
図7】上記車高制御ECUの記憶部に記憶された車高制御プログラムを表すフローチャートである。
図8】上記車高制御プログラムの一部を表すフローチャートである。
図9】上記車高制御プログラムの別の一部を表すフローチャートである。
図10】上記アップ制御が行われた場合の時間と車高の変化との関係を示す図である。
図11】上記車高制御プログラムの一部を表す別のフローチャートである。
図12】上記車高制御プログラムの一部を表すさらに別のフローチャートである。
図13】本発明の実施例2に係る車高制御システムの車高制御ECUの記憶部に記憶された車高制御プログラムを表すフローチャートである。
図14】上記車高制御プログラムの一部を表すフローチャートである。
【発明の実施の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態である車高制御システムについて図面に基づいて詳細に説明する。本車高制御システムにおいては、流体としてのエアが利用される。
【実施例1】
【0008】
本実施例に係る車高制御システムにおいては、図1に示すように、車両に設けられた前後左右の車輪の各々に対応して、車輪側部材(例えば、車輪を支持するサスペンションアーム等が該当する)と車体側部材との間に、図示しないサスペンションスプリングと、車高制御アクチュエータとしてのエアシリンダ2FL,FR,RL,RRと、ショックアブソーバ4FL,FR,RL,RRとが、互いに並列に設けられる。ショックアブソーバ4FL,FR,RL,RRは、それぞれ、車輪側部材に設けられたアブソーバ本体と、車体側部材に設けられたアブソーバピストンとを含む。
以下、本明細書において、エアシリンダ2、ショックアブソーバ4等について、車輪の位置で区別する必要がある場合には、車輪の位置を表す符号FL,FR,RL,RRを付して区別するが、車輪の位置で区別する必要がない場合、総称を表す場合等には車輪の位置を表す符号FL,FR,RL,RR等を省略して記載する。
【0009】
エアシリンダ2は、それぞれ、車体側部材に設けられたシリンダ本体10と、シリンダ本体10に固定されたダイヤフラム12と、ダイヤフラム12およびショックアブソーバ2のアブソーバ本体に上下方向に相対移動不能に設けられたエアピストン14とを含み、これらの内部が流体室としてのエア室19とされる。エア室19におけるエアの給排によりエアピストン14がシリンダ本体10に対して上下方向に相対移動させられ、それにより、ショックアブソーバ4においてアブソーバ本体とアブソーバピストンとが上下方向に相対移動させられるのであり、車輪側部材と車体側部材との間の距離である車高が変化させられる。
【0010】
エアシリンダ2のエア室19には、それぞれ、個別通路20および共通通路22を介して流体供給装置としてのエア給排装置24が接続される。個別通路20には、それぞれ、車高制御弁26が設けられる。車高制御弁26は常閉の電磁弁であり、ソレノイドのON・OFFにより開閉させられるものである。車高制御弁26は、開状態において、双方向のエアの流れを許容し、閉状態において、エア室19から共通通路22へのエアの流れを阻止するが、共通通路22の圧力がエア室19の圧力より設定圧以上高くなると共通通路22からエア室19へのエアの流れを許容するものである。
【0011】
エア給排装置24は、コンプレッサ装置30、常閉の電磁弁である排気弁32、タンク34、切換え装置36、吸気弁44、リリーフ弁46等を含む。
コンプレッサ装置30は、コンプレッサ40と、コンプレッサ40を駆動する電動モータ42とを含み、コンプレッサ40が電動モータ42の駆動により作動させられる。コンプレッサ40の吐出圧が高くなると、リリーフ弁46を経てエアが大気へ放出される。
タンク34は、エアを加圧した状態で収容するものであり、収容されるエアの量が多くなると、その収容されたエアの圧力であるタンク圧が高くなる。
【0012】
切換え装置36は、共通通路22、タンク34、コンプレッサ装置30の間に設けられ、これらの間のエアの流れる方向等を切り換えるものである。図1に示すように、タンク34が接続されたタンク通路48が、接続部48sにおいて、互いに並列に設けられた第1通路50と第2通路52とに接続され、第1通路50と第2通路52とに、接続部22sにおいて共通通路22が接続される。第1通路50には、直列に2つの回路弁61,62が設けられ、第2通路52には、直列に2つの回路弁63,64が設けられる。また、吸引側通路65によって、第1通路50の2つの回路弁61,62の間の部分50sと、コンプレッサ40の吸気側部40aとが接続され、吐出側通路66によって、コンプレッサ40の吐出側部40bと、第2通路52の2つの回路弁63,64の間の部分52sとが接続される。
【0013】
回路弁61〜64は常閉の電磁弁であり、ソレノイドのON・OFFにより開状態と閉状態とに切り換えられるものである。ソレノイドに電流が供給されて、ONとされることにより開状態とされる。開状態において双方向のエアの流れを許容する。ソレノイドに電流が供給されず、OFFとされることにより閉状態とされる。閉状態(ソレノイドOFFの状態)において、一方の側から他方の側へのエアの流れを阻止するが、他方の側の圧力が一方の側の圧力より設定圧以上高くなると、他方の側から一方の側へのエアの流れを許容する。
回路弁61,63は、閉状態においてタンク34からのエアの流出を阻止するものであり、回路弁62は、閉状態において、共通通路22からのエアの流出を阻止するものであり、回路弁64は、閉状態において共通通路22へのエアの供給を阻止するものである。
【0014】
吸引側通路65の接続部65sと大気との間には吸気弁44が設けられる。吸気弁44は、接続部65sのエアの圧力が大気圧以上の場合に閉、大気圧より低い場合に開とされる逆止弁である。コンプレッサ40の作動により接続部65sのエアの圧力が大気圧より低くなると、フィルタ43、吸気弁44を経て大気からエアが吸い込まれる。
吐出側通路66の接続部66sには排気弁32が接続される。排気弁32は常閉の電磁弁であり、開状態において、吐出側通路66から大気へのエアの排出が許容され、閉状態において、吐出側通路66から大気へのエアの排出が阻止されるが、吐出側通路66のエアの圧力が大気圧より設定圧以上低くなると大気から吐出側通路66へのエアの供給が許容される。
また、吐出側通路66の接続部66sより第2通路側の部分には、ドライヤ70と流れ抑制機構72とが直列に設けられる。流れ抑制機構72は、互いに並列に設けられた、差圧弁72vと絞り72sとを含む。差圧弁72vは、第2通路側からコンプレッサ側へのエアの流れを阻止し、コンプレッサ側の圧力が第2通路側の圧力より設定圧以上高くなると、コンプレッサ40から第2通路52へのエアの流れを許容する。
【0015】
本実施例において、車高制御システムは、コンピュータを主体とする車高制御ECU80によって制御される。車高制御ECU80はCAN(Controller Area Network)82を介して他のECU等との間で通信可能とされている。車高制御ECU80は、図2に示すように、実行部80c、記憶部80m、入出力部80i、タイマ80t等を含み、入出力部80iには、車高切換えスイッチ88、タンク圧センサ90、シリンダ圧センサ91、車高センサ93、乗降関連動作検出装置95等が接続されるとともに、通信装置96、イグニッションスイッチ98、車速センサ99等がCAN82を介して接続される。また、電動モータ42が駆動回路100を介して接続されるとともに、排気弁32、車高制御弁26、回路弁61〜64が接続される。
【0016】
車高切換えスイッチ88は、運転者によって操作されるものであり、車高をL(Low),N(Normal),H(High)のうちのいずれかへの変更を指示する場合に操作される。タンク圧センサ90は、タンク圧を検出するものであり、シリンダ圧センサ91は、共通通路22に設けられ、車高制御弁26の開において、その開にある車高制御弁26に対応する(車輪に対応する)シリンダ2のエア室19の圧力であるシリンダ圧を検出する。また、すべての車高制御弁26の閉状態において共通通路22のエアの圧力である通路圧を検出する。車高センサ93は、前後左右の各車輪に対応してそれぞれ設けられ、車体側部材の車輪側部材からの距離である車高を検出する。乗降関連動作検出装置95は、乗降に関連する動作の有無を検出するものであり、車両に設けられた複数のドアの各々に対応して設けられ、そのドアノブに人がタッチしたか否かを検出するタッチセンサ101、ドアの開閉を検出するドア開閉センサ(カーテシランプセンサ)102、複数のドアの各々のロック、アンロックを検出するドアロックセンサ103等を含むものとすることができる。ドアの開閉、ドアロック、アンロックの動作の有無等に基づいて乗車、降車の意図等が推定される。通信装置96は、予め定められた通信可能領域内において、運転者等が所持する携帯機104との間で通信を行うものである。イグニッションスイッチ98は車両のメインスイッチである。車速センサ99は、車両の走行速度を検出するものである。
また、本実施例における車高制御システム等は、バッテリ110の電力により作動可能なものである。バッテリ110の電圧は電圧モニタ112によって検出されるが、電圧モニタ112は車高制御ECU80に接続される。
【0017】
以上のように構成された車高制御システムにおいて、予め定められた開始条件が成立した場合に、その開始条件の内容等に基づいてパターンが選択され、選択されたパターンで共通通路22とタンク34とが連通させられる。また、制御対象輪の車高制御弁26が開とされ、制御対象輪のエアシリンダ2にタンク34からエアが供給されるのであり、制御対象輪についての車高が高くされる。
【0018】
1)人が乗車すると推定された場合に開始条件が成立し、車高を乗車に適した高さまで高くするアップ制御が行われる。
例えば、イグニッションスイッチ98がOFFであり、車両が停止状態にある場合において、(i)通信装置96において携帯機104からのアンロック指示が受信されたことにより、ドアのアンロックが行われ、その後、乗降関連動作検出装置95によってドアが閉から開に切り換えられたことが検出された場合、または、(ii)通信装置96において携帯機104からのアンロック指示が受信されることなく、乗降関連動作検出装置95によってドアノブがタッチされたことが検出された場合(ドアノブのタッチが検出された場合には、ドアが、ロック状態からアンロック状態に切り換えられる)には、人が乗車すると推定される。
【0019】
目標車高である乗車に適した高さHt1は、人間工学上、設定車高Hs(標準車高より設定値高い値)より高い(Ht1>Hs)ことが知られている。シートの高さが着座し易いと感じる場合に乗車し易いと感じられ易いことから、乗車し易い車高は、設定車高Hsより高い高さとされるのである。
また、制御対象輪は、前後左右の4輪とされることが多い
なお、人が乗車して、イグニッションスイッチ98がOFFからONとされ、車両が発進した後に、車高が低くされ、走行に適した高さ(後述するように、走行速度が第1設定速度より遅い場合に走行に適した高さであり、ほぼ標準車高とされる)に制御されるようにされている。
【0020】
2)人が降車すると推定された場合に開始条件が成立し、車高を降車に適した高さまで高くするアップ制御が行われる。
例えば、車両が停止し、乗降関連動作検出装置95によってドアがロック状態からアンロック状態に切り換えられ、その後、ドアが閉から開に切り換えられたことが検出された場合には、人が降車すると推定される。
目標車高である降車に適した高さHt2は、人間工学上、乗車に適した高さHt1より低い(設定車高Hsより低く、標準車高H0より高い)ことが知られている(H0<Ht2<Hs<Ht1)。降車する場合には、足を地面につけることから、設定車高Hsより低い車高が降車し易い車高とされる。
また、制御対象輪は、前後左右の4輪とされることが多い。
【0021】
3)車両の走行状態において、車両の走行速度が第1設定速度以上の状態から、第1設定速度より小さい値である第2設定速度以下になった場合に開始条件が成立し、車高をほぼ標準車高(走行速度が第1設定速度より遅い場合に、走行に適した車高)まで高くするアップ制御が行われる。
車両の走行速度が第1設定速度以上になった場合には、走行安定性を向上させるために車高が低くされる(標準車高より低い高さとされる)が、その後、走行速度が第2設定速度以下になった場合には、元の高さ、換言すれば、ほぼ標準車高に戻される(目標車高が、ほぼ標準車高とされる)。この場合の制御対象輪は前後左右の4輪である。
【0022】
4)車両の走行状態において、荷重の変化等に起因して、車高が設定値以上低下した場合に開始条件が成立し、低下前の高さ、すなわち、ほぼ標準車高まで高くする(目標車高がほぼ標準車高とされる)アップ制御が行われる。この車高制御を、オートレベリングと称するが、この場合の開始条件は、オートレベリングの作動条件でもある。
なお、この場合の、制御対象輪は、車高が設定値以上低下した車輪であり、1輪または2輪の場合がある。
【0023】
5)車高切換えスイッチ88が操作された場合には開始条件が成立し、車高切換えスイッチ88の操作により指示された高さまで車高を高くするアップ制御が行われる場合がある。本実施例において、車高切換えスイッチ88の操作によって車高を、「ロー」、「ノーマル」、「ハイ」のいずれかに切り換えるよう指示することができるが、「ハイ」車高は、設定車高Hsより低い値に設定されている。また、この場合の制御対象輪は、前後左右の4輪である。
【0024】
本実施例においては、上述の開始条件が成立した場合に、その開始条件に基づいてパターンA〜Cのうちの1つが選択され、その選択されたパターンに従って、回路弁61〜64が制御される。
【0025】
パターンAにおいては、図3に示すように、回路弁61〜64が開とされ、タンク34と共通通路22とが第1通路50,第2通路52を介して連通させられる。パターンBにおいては、図4に示すように、回路弁61,62が閉、回路弁63,64が開とされ、タンク34と共通通路22とが第2通路52を介して連通させられる。パターンCにおいては、コンプレッサ40の停止状態において、図5に示すように、回路弁62,63が閉、回路弁61,64が開とされる。タンク34と共通通路22とが、第1通路50の一部,吸引側通路65,コンプレッサ40,吐出側通路66,第2通路52の一部を介して連通させられる。パターンCにおいて、タンク34のエアは、コンプレッサ40の吸入弁、吐出弁を開いて、共通通路22に供給されるのである。
【0026】
タンク34と共通通路22との間の圧力差が同じであり、制御対象輪が同じである場合に、パターンA,B,Cの各々における車高変化速度を図6に示す。図6の実線が示すように、パターンAが設定された場合には車高変化速度が最も早く、共通通路22に供給されるエアの流量は最も大きい。破線が示すように、パターンCが設定された場合には車高変化速度が最も遅く、共通通路22への供給流量は最も小さい。また、一点鎖線が示すように、パターンBが設定された場合には、車高変化速度、共通通路22に供給されるエアの流量はパターンA,Cの中間となる。
【0027】
本実施例においては、人の乗車が推定されたことである開始条件が成立した場合にはパターンAが選択される。人の乗車が推定された時から人が乗車するまでの間に、目標車高Ht1まで速やかに車高を高くする必要がある。例えば、開始条件が成立した場合における実際の車高である実車高は、降車に適した車高Ht2とほぼ同じ高さにある場合が多いが、実車高と目標車高との差(Ht1−Ht2)は、降車が推定された場合の実車高(後述するようにほぼ標準車高にある場合が多い)と、目標車高Ht2との差(Ht2−H0)より大きい。
(Ht1−Ht2)>(Ht2−H0)
このように、人の乗車が推定された場合には、人が乗車するまでの間に、車高を(Ht1−Ht2)高くする必要があるのであり、速やかに車高を高くする必要がある。そのため、パターンAが選択されるのである。
【0028】
人の降車が推定されたことである開始条件が成立した場合にはパターンBが選択される。また、上述のように、開始条件が成立した場合の実車高はほぼ標準車高である場合が多いが、実車高(標準車高H0)と目標車高Ht2との差(Ht2−H0)は、乗車が推定された場合の差(Ht1−Ht2)より小さい。そのため、パターンBが選択された場合であっても、人の降車が推定された時から人が降車するまでの間に、実車高を降車に適した車高である目標車高まで高くすることができる。換言すれば、降車が推定された場合にパターンAが選択されるようにすることも可能であるが、急速に車高を高くする必要性が低いためにパターンBが選択されるのである。
【0029】
車両の走行速度が第1設定速度以上の状態から第2設定速度以下の状態になったことである開始条件が成立した場合、オートレベリングが作動させられる場合にも、パターンBが選択される。車両の走行状態において、車高を急激に高くすることは、走行安定性の観点から望ましくない。また、乗員が違和感を感じることがある。また、目標車高は設定車高Hsより低い。以上のことから、車両の走行状態において、アップ制御が行われる場合には、パターンBが選択されることが望ましい。
なお、オートレベリングが作動させられる場合には、パターンCが選択されるようにすることもできる。
【0030】
5)車高切換えスイッチ88が操作された場合にもパターンBが選択される。この場合には、急速に車高を高くする必要性が低いからである。
【0031】
また、本実施例においては、車高制御の開始時にパターンAが選択された場合には、車高制御中においてもパターンが変更される。本実施例においては、アップ制御中に実車高が高くなり、目標車高に近づくにつれて、タンク34と共通通路22との連通状態がパターンA,B,Cの順に変更される。
【0032】
図7のフローチャートで表される車高制御プログラムは、予め定められた設定時間毎に実行される。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、車高センサ93によって4輪の各々についての車高が検出され、S2において、乗降関連動作検出装置95等の検出結果が読み込まれる。そして、S3おいて、車高制御中であるか否かが判定され、判定がNOである場合には、S4において、開始条件が成立したか否かが判定される。開始条件が成立しない場合には、S1〜4が繰り返し実行されるが、そのうちに、開始条件が成立した場合には、S4の判定がYESとなり、S5において、開始時パターン選択が実行され、パターンA〜Cのうちのいずれかが選択される。そして、S6において、開始処理が行われる。選択されたパターンに応じて回路弁61〜64が制御され、制御対象輪に応じて車高制御弁26が制御される。
【0033】
S5の開始時パターン選択は、図8のフローチャートで表される開始時パターン選択ルーチンに従って行われる。
S21において、開始条件が人の乗車が推定されたことにより成立したか否かが判定される。判定がYESである場合には、S22において、パターンAが選択され、S23において、開始時にパターンAが選択されたことを表すフラグであるAフラグがONにされる。それに対して、S21の判定がNOである場合には、S24において、パターンBが選択され、S25において、AフラグがOFFにされる。
【0034】
上述のように、本実施例において、パターンAが選択されるのは、人の乗車が推定された場合のみであり、目標車高が設定車高Hsより高い値とされるのは、人の乗車が推定された場合のみである。そのため、目標車高が設定車高Hsより高い場合には、人の乗車が推定されたことである開始条件が成立したことがわかる。そのため、パターンAは、開始条件の内容に基づいて選択されたと考えたり、目標車高に基づいて選択されたと考えたりすることができる。
また、パターンAは、開始条件の内容と目標車高との両方に基づいて選択されたと考えることもできる。「人の乗車が推定された時点から人が乗車するまでの間に、実車高を設定車高Hsより高い目標車高まで高くする必要があること」に基づいてパターンAが選択されたと考えることができるからである。
【0035】
車高制御が開始された後には、S3の判定がYESとなり、S7において、終了条件が成立したか否かが判定される。終了条件は、制御対象輪すべてについての実車高が目標車高に近づいた場合(例えば、実車高が目標車高と不感帯幅とで決まる範囲内に達した場合)に、成立したと判定される。S7の判定がNOである場合には、S8において、AフラグがONであるか否かが判定され、判定がNOである場合には、S9〜11が実行されることはない。S8の判定がYESである場合には、S9において、制御中パターン選択が実行され、S10において、選択されたパターンと現在のパターンとが同じであるか否か、すなわち、パターンを変更するか否かが判定される。判定がNOである場合には、S11が実行されず、判定がYESである場合には、S11において、選択されたパターンに応じて回路弁61〜64が制御される。
【0036】
S9の制御中パターン選択は、図9のフローチャートで表される制御中パターン選択ルーチンに従って行われる。
S31において、本ルーチンが最初に実行されたか否かが判定される。最初に実行された場合には、S32において、目標車高と実車高との差である目標変化量ΔHrefが求められる。そして、S33において、実車高Hの変化量である実変化量ΔHが第1設定変化量(目標変化量ΔHrefに比率γ1を掛けた値)より小さいか否か(ΔH<ΔHref*γ1)が判定される。判定がYESである場合には、S34においてパターンAが選択される。S33の判定がNOである場合には、S35において、実変化量ΔHが第1設定変化量以上、第2設定変化量(目標変化量ΔHrefに比率γ2を掛けた値)以下であるか否か(ΔHref*γ2≧ΔH≧ΔHref*γ1)が判定される。判定がYESである場合には、S36においてパターンBが選択される。S33の判定がNOである場合、すなわち、実変化量Hが第2設定変化量より大きい場合(ΔH>ΔHref*γ2)には、S37においてパターンCが選択される。
なお、比率γ1は、例えば、70%〜90%ぐらいの値とすることができる。また、比率γ2は比率γ1より大きい値である。
【0037】
アップ制御において、終了条件が成立するまでの間、S1〜3,7,8または7〜10(11)が繰り返し実行されるのであるが、終了条件が成立した場合には、S12において、終了処理が行われる。車高制御弁26、回路弁61〜64への供給電流がすべてOFFとされ、閉とされる。また、S13において、AフラグがOFFとされる。
【0038】
以上のように、本実施例においては、パターンが開始条件の内容等に基づいて決定されるため、そのアップ制御に適した、換言すれば、アップ制御の要求に合った状態で、タンク34と共通通路22とを連通させることができる。
それにより、そのアップ制御に適した、換言すれば、アップ制御の要求に合った流量でエアシリンダ2にエアを供給することができるのであり、要求に合った車高変化速度でアップ制御が行われるようにすることができる。また、アップ制御が行われる場合に、常に、決まったパターンが選択される場合に比較して、回路弁61〜64の各々の作動頻度を低くすることができ、その分、寿命を短くすることができる。
また、アップ制御中においては、図10に示すように、実車高Hが目標車高に近づいた場合(実変化量が目標変化量に近づいた場合)に、車高変化速度が小さくされる。そのため、オーバーシュートを抑制しつつアップ制御に要する時間を短くすることができる。また、アップ制御が終了した場合の乗員の違和感を軽減することができる。
【0039】
本実施例においては、タンク通路48、第1通路50等により「第1通路」が構成され、タンク通路48、第2通路52等により「第2通路」が構成される。タンク通路48は、第1通路と第2通路とに共通とされる。また、タンク通路48、第1通路50のタンク通路48との接続部48sと吸引側通路65との接続部65sとの間の部分、吸引側通路65、コンプレッサ40、吐出側通路66、第2通路52の吐出側通路66との接続部66sと共通通路22との接続部22sとの間の部分等により「第3通路」が構成される。
【0040】
また、回路弁61,62が第1通路に設けられた電磁弁であり、回路弁63,64が第2通路に設けられた電磁弁であり、回路弁61,64が第3通路に設けられた電磁弁であり、これら回路弁61〜64等により電磁弁装置が構成される。さらに、本実施例においては、タンク34が高圧源とされる。
【0041】
また、ECU80の車高制御プログラムを記憶する部分、実行する部分、車高センサ93等により車高制御部が構成され、そのうちの、S5を記憶する部分、実行する部分等により開始時連通状態選択部が構成され、S9を記憶する部分、実行する部分等により制御中連通状態選択部が構成される。さらに、S5,6を記憶する部分、実行する部分、S9〜11を記憶する部分、実行する部分等により連通制御部が構成される。
さらに、本車高制御システムにおいて、パターンAが設定された状態が第1連通状態に対応し、パターンBが設定された状態が第2連通状態に対応し、パターンCが設定された状態が第3状態に対応する。
また、第1設定変化量が設定目標変化量に対応する。
【0042】
なお、S5の開始時パターン選択は、図11のフローチャートで表される開始時パターン選択ルーチンに従って行われるようにすることができる。
S41において、開始条件が、人の乗車が推定されたことにより成立したか否かが判定され、S42において、開始条件が、オートレベリングの作動条件が成立したことにより成立したか否かが判定される。S41の判定がYESである場合には、S43においてパターンAが選択され、S44においてAフラグがONとされる。それに対して、S41の判定がNO、S42の判定がYESである場合には、S45においてパターンCが選択され、S46においてAフラグがOFFとされる。S42の判定もNOである場合、すなわち、人の乗車の推定、オートレベリングの作動以外の開始条件が成立した場合には、S47においてパターンBが設定され、S46においてAフラグがOFFとされる。
このように、本実施例においては、オートレベリングが行われる場合には、パターンCが設定される点が上記実施例における場合と異なる。
【0043】
また、S5の開始時パターン選択は、図12のフローチャートで表される開始時パターン選択ルーチンに従って行われるようにすることができる。
本実施例においては、S51において、制御対象輪が4輪であるか否かが判定される。前後左右の4輪についてアップ制御が行われる場合には、S52において、パターンAが設定され、S53において、AフラグがNOとされる。S51の判定がNOである場合、すなわち、制御対象輪が3輪以下である場合には、S54において、パターンBが選択され、S55において、AフラグがOFFとされる。このように、制御対象輪が多い場合は少ない場合より、換言すれば、タンク34に連通させられるエアシリンダ2の数が多い場合は少ない場合より、共通通路22に供給されるエアの流量が大きくされる。その結果、制御対象輪が多い場合における車高変化速度の低下を良好に抑制することができる。
【0044】
なお、開始時パターン選択は、図8のフローチャートで表される開始時パターン選択ルーチン、図11のフローチャートで表される開始時パターン選択ルーチン、図12のフローチャートで表される開始時パターン選択ルーチンのいずれかが選択的に実行されるようにすることができる。また、制御対象輪の数と開始条件の内容との両方を組み合わせて、パターンが選択されるようにすることもできる。
【0045】
さらに、上記実施例においては、開始時パターン選択と制御中パターン選択との両方が実行される場合について説明したが、制御中パターン選択の実行は不可欠ではない。その場合には、S8〜11,13のステップが不要となり、Aフラグが不要となる。
また、上記実施例においては、パターンA,B、Cのうちの1つが選択されるようにされていたが、パターンCを設けることは不可欠ではなく、パターンA,Bのいずれかが選択されるようにすることもできる。その場合には、第2設定値が目標依拠設定車高に対応すると考えることもできる。
さらに、クローズド型の回路について説明したが、オープン型の回路においても実施することができる。例えば、図1の回路において、タンク34の代わりに、コンプレッサを高圧源として利用することができる。
【実施例2】
【0046】
本実施例においては、開始時も、制御中も、タンク圧に基づいてパターンが選択される。アップ制御は図13のフローチャートで表される車高制御プログラムに従って行われ、開始時パターン選択、制御中パターン選択は、図14のフローチャートで表されるパターン選択ルーチンに従って行われる。
本実施例においては、Aフラグは不要となるため、図13のフローチャートにおいては、図7のフローチャートにおけるS8,13が設けられていない。また、タンク圧検出ステップS2bがS2の前に設けられる。その他のステップについては同様であるため説明を省略する。
【0047】
S5における開始時パターン選択、S9における制御中パターン選択は、図14のフローチャートで表されるパターン選択ルーチンに従って行われる。
S61において、S2bにおいてタンク圧センサ90によって検出されたタンク圧PTが第1設定タンク圧PTAより低い(PT<PTA)か否かが判定される。第1設定タンク圧より低い場合には、S62においてパターンAが選択される。S61の判定がNOである場合には、S63において、タンク圧が第1設定タンク圧以上、第1設定タンク圧PTAより高い第2設定タンク圧PTB以下である(PTB≧PT≧PTA)か否かが判定される。判定がYESである場合には、S64においてパターンBが選択される。S63の判定がNO、すなわち、タンク圧が第2設定タンク圧PTBより高い場合(PT>PTB)には、パターンCが選択される。
【0048】
このように、本実施例においては、タンク圧が低い場合は、タンク圧が高い場合より、流路面積が大きくされる。その結果、タンク圧が低い場合に、車高変化速度の低下を良好に抑制することができ、タンク圧が高い場合と低い場合とにおける車高変化速度の差を小さくすることができる。
本実施例においては、S5,9(図14のフローチャートで表されるパターン選択ルーチン)を記憶する部分、実行する部分等によりタンク圧依拠選択部が構成される。また、第1設定タンク圧が設定タンク圧に対応する。

【0049】
その他、本発明は、上述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる
【符号の説明】
【0050】
2:エアシリンダ 19:チャンバ 24:エア給排装置 26:車高制御弁 34:タンク 40:コンプレッサ 61〜64:回路弁 80:車高制御ECU 90:タンク圧センサ 93:車高センサ 95:乗降関連動作検出装置 99:車速センサ 101:タッチセンサ 102:ドア開閉センサ 104:ドアロックセンサ
【特許請求可能な発明】
【0051】
以下の各項に、特許請求可能な発明について説明する。
(1)車両の複数の車輪の各々に対応して設けられた複数の車高制御アクチュエータと、
それら複数の車高制御アクチュエータが、それぞれ、車高制御弁を介して接続された共通通路と、
(a)高圧源と、(b)その高圧源と前記共通通路とを並列に接続する第1通路および第2通路を含む複数の通路と、(c)前記第1通路と前記第2通路とにそれぞれ設けられた1つ以上ずつの電磁弁を含む電磁弁装置とを備え、前記共通通路に流体を供給可能な流体供給装置と、
前記高圧源と前記共通通路とが前記第1通路と前記第2通路とを介して連通させられる第1連通状態と、前記第1通路が遮断されて前記高圧源と前記共通通路とが前記第2通路を介して連通させられる第2連通状態とを含む複数の連通状態のうちの1つに基づいて、前記電磁弁装置を制御することにより、前記高圧源と前記共通通路とを連通させる連通制御部を備え、前記車高制御弁を制御することにより、前記複数の車輪のうちの1つ以上の制御対象輪に設けられた前記1つ以上の車高制御アクチュエータを前記共通通路に連通させて、前記1つ以上の制御対象輪の車高制御アクチュエータに前記高圧源から流体を供給させることにより、前記1つ以上の制御対象輪についての車高を高くする制御であるアップ制御を行う車高制御部と
を含む車高制御システムであって、
前記連通制御部が、前記アップ制御についての開始条件が成立した場合に、その開始条件の内容と、前記アップ制御についての目標車高と、前記アップ制御における前記制御対象輪の個数とのうちの1つ以上に基づいて前記複数の連通状態から1つを選択する開始時連通状態選択部を含むことを特徴とする車高制御システム。
高圧源と共通通路とは、開始条件が成立した場合に、開始時連通状態選択部によって選択された1つの連通状態で、連通させられる。
高圧源は、タンクとコンプレッサとの少なくとも一方を含むものとすることができる。
第1通路と第2通路とは、高圧源と共通通路とを並列に接続するが、第1通路と第2通路とで、一部を共通とすることができる。
【0052】
(2)前記開始時連通状態選択部が、前記開始条件の内容に基づいて前記複数の連通状態から1つを選択するものであり、
前記車両の停止状態において人が乗車すると推定されたことである開始条件が成立した場合に前記第1連通状態を選択し、それ以外の開始条件が成立した場合に前記複数の連通状態から前記第1連通状態を除いた1つ以上の連通状態のうちの1つを選択するものである(1)項に記載の車高制御システム。
【0053】
(3)前記開始時連通状態選択部が、(a)前記車両の停止状態において人が降車すると推定されたことである開始条件が成立した場合、または、(b)前記車両の走行状態において走行速度が第1設定速度以上の状態から前記第1設定速度より小さい第2設定速度以下になったことである開始条件が成立した場合、または、(c)前記車両の走行状態において複数の車輪のうちの少なくとも1輪の車高が設定値以上低くなったことである開始条件が成立した場合に前記複数の連通状態から前記第1連通状態を除いた1つ以上の連通状態のうちの1つを選択するものである (2)項に記載の車高制御システム。
【0054】
(4)前記開始時連通状態選択部が、前記目標車高に基づいて前記複数の連通状態から1つを選択するものであり、
前記目標車高が設定車高以上の場合に前記第1連通状態を選択し、前記目標車高が前記設定車高より低い場合に前記複数の連通状態から前記第1連通状態を除いた1つ以上の連通状態のうちの1つを選択するものである(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車高制御システム。
設定車高は、標準車高より設定値以上高い車高であり、設定車高まで車高を高くする場合に、第1連通状態を選択することが望ましいと考えられる車高をいう。目標車高が高い場合は低い場合より、目標車高変化量が大きくなることが多い。そのため、目標車高が設定車高以上である場合に第1連通状態が選択されるようにすれば、速やかに実車高を目標車高に近づけることができる。また、目標車高が開始条件の内容に基づいて予め決まっている場合には、目標車高に基づけば、開始条件の内容が分かる場合がある。
なお、目標車高の代わりに目標車高変化量を用いることもできる。
【0055】
(5)前記開始時連通状態選択部が、前記制御対象輪の数に基づいて前記複数の連通状態から1つを選択するものであり、
前記制御対象輪の数が4輪である場合に前記第1連通状態を選択し、前記制御対象輪の数が3輪以下である場合には前記複数の連通状態から前記第1連通状態を除いた1つ以上の連通状態のうちの1つを選択するものである(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の車高制御システム。
前後左右の4輪が制御対象輪である場合には、4つの車高制御弁が開とされ、共通通路に4つの車高制御アクチュエータが連通させられる。前後左右の4輪のうちの3輪以下が制御対象輪である場合には、共通通路に3つ以下の車高制御アクチュエータが連通させられる。
なお、3輪以上が制御対象輪である場合に第1連通状態が選択され、2輪以下が制御対象輪である場合に前記複数の連通状態から前記第1連通状態を除いた1つ以上の連通状態のうちの1つが選択されるようにすることもできる。
【0056】
(6)前記高圧源がタンクを含み、
前記流体供給装置が、前記タンクに蓄えられた流体の圧力であるタンク圧を検出するタンク圧センサを含み、
前記連通制御部が、前記タンク圧センサにより検出された前記タンク圧に基づいて前記複数の連通状態のうちの1つを選択するタンク圧依拠選択部を含む(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の車高制御システム。
タンク圧依拠選択部は、開始時連通状態選択部として適用しても、制御中連通状態選択部として適用してもよい。
【0057】
(7)前記タンク圧依拠選択部が、前記タンク圧が設定タンク圧より低い場合に前記第1連通状態を選択し、前記タンク圧が前記設定タンク圧以上である場合に前記複数の連通状態から前記第1連通状態を除いた1つ以上の連通状態のうちの1つを選択するものである(6)項に記載の車高制御システム。
【0058】
(8)前記連通制御部が、前記アップ制御中に、前記複数の連通状態から1つを選択する制御中連通状態選択部を含む(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車高制御システム。
【0059】
(9)前記制御中連通状態選択部が、前記アップ制御中の実際の前記車高である実車高の変化量が、前記アップ制御についての目標車高変化量に基づいて決まる設定目標変化量より少ない場合に前記第1連通状態を選択し、前記実車高の変化量が前記設定目標変化量以上である場合に前記複数の連通状態から前記第1連通状態を除いた1つ以上の連通状態のうちの1つを選択するものである(8)項に記載の車高制御システム。
設定目標変化量は、目標車高変化量に設定比率γ(0<γ<1)を掛けた値とすることができる。また、設定目標変化量は、上記実施例1において、第1設定変化量または第2設定変化量としたり、第1設定変化量と第2設定変化量との中間の値としたりすること等ができる。
【0060】
(10)前記流体供給装置が、前記高圧源と前記共通通路との間に、前記第1通路および前記第2通路に並列であって、前記第1通路および前記第2通路より流路抵抗が大きい第3通路を含み、
前記複数の連通状態が、前記第1連通状態および前記第2連通状態に加えて、前記第1通路と前記第2通路とを遮断して、前記高圧源と前記共通通路とを前記第3通路を介して連通させる第3状態を含み、
前記開始時連通状態選択部が、前記開始条件が成立した場合に、前記開始条件の内容と、前記目標車高と、前記制御対象輪の数とのうちの1つ以上に基づいて前記複数の連通状態から1つを選択するものである(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の車高制御システム。
第3通路は、例えば、第1通路、第2通路より流路面積が小さいものとしたり、流路が長いものとしたり、途中に絞り機能を有する要素が設けられたものとしたりすること等ができる。
【0061】
(11)前記開始時連通状態選択部が、前記車両の走行状態において、複数の車輪のうちの少なくとも1輪についての車高が設定値以上低くなったことである開始条件が成立した場合に前記第3状態を選択するものである(10)項に記載の車高制御システム。
【0062】
(12)前記流体供給装置が、前記高圧源と前記共通通路との間に、前記第1通路および前記第2通路に並列であって、前記第1通路および前記第2通路より流路抵抗が大きい第3通路を含み、
前記複数の連通状態が、前記第1連通状態および前記第2連通状態に加えて、前記第1通路と前記第2通路とを遮断して、前記高圧源と前記共通通路とを前記第3通路を介して連通させる第3連通状態を含み、
前記制御中連通状態選択部が、前記アップ制御中の実際の前記車高である実車高の変化量が、前記目標車高変化量で決まる第1設定変化量より少ない場合に前記第1連通状態を選択し、前記第1設定変化量以上、前記第1設定変化量より大きい第2設定変化量以下である場合に前記第2連通状態を選択し、前記第2設定変化量より多い場合に前記第3連通状態を選択するものである(8)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の車高制御システム。
【0063】
(13)車両の複数の車輪の各々に対応して設けられた複数の車高制御アクチュエータと、
それら複数の車高制御アクチュエータが、それぞれ、車高制御弁を介して接続された共通通路と、
(a)タンクと、(b)そのタンクと前記共通通路とを並列に接続する第1通路および第2通路を含む複数の通路と、(c)前記第1通路と前記第2通路とにそれぞれ設けられた1つ以上ずつの電磁弁を含む電磁弁装置とを備え、前記共通通路に流体を供給可能な流体供給装置と、
前記タンクと前記共通通路とが、前記第1通路と前記第2通路とを介して連通させられる第1連通状態と、前記第1通路が遮断されて、前記タンクと前記共通通路とが前記第2通路を介して連通させられる第2連通状態とのいずれか一方に基づいて、前記電磁弁装置を制御することにより、前記タンクと前記共通通路とを連通させる連通制御部を備え、前記車高制御弁を制御することにより、前記複数の車輪のうちの1つ以上の制御対象輪に設けられた前記1つ以上の車高制御アクチュエータを前記共通通路に連通させて、前記制御対象輪の車高制御アクチュエータに前記タンクから流体を供給させることにより、前記1つ以上の制御対象輪についての車高を高くする制御であるアップ制御を行う車高制御部と
を含む車高制御システムであって、
前記連通制御部が、前記タンクに蓄えられた流体の圧力であるタンク圧に基づいて、前記第1状態と前記第2状態とのいずれか一方を選択するタンク圧依拠選択部を含むことを特徴とする車高制御システム。
本項に記載の車高制御システムには、(1)項ないし(12)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
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