特許第6691083号(P6691083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6691083バスバ及びバスバモジュール並びに電池パック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691083
(24)【登録日】2020年4月13日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】バスバ及びバスバモジュール並びに電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/20 20060101AFI20200421BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   H01M2/20 A
   H01M2/20 Z
   H01M2/10 M
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-165714(P2017-165714)
(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公開番号】特開2019-46575(P2019-46575A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2018年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝則
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−130287(JP,A)
【文献】 特開2017−112066(JP,A)
【文献】 特開2015−095402(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0064544(US,A1)
【文献】 特開2015−138604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/20
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する2つの電池セルのそれぞれに設けられたセル電極間に架設される連結板部と、
前記セル電極に対向する前記連結板部の対向面に突設され、2つの前記セル電極のうち一方の前記セル電極に1つ接触し且つ他方の前記セル電極に2つ接触する合計で3つ突起と、
を備えることを特徴とするバスバ。
【請求項2】
請求項1に記載のバスバであって、
前記対向面からの前記突起の突出高さは、隣接して配置される2つの前記電池セルの寸法公差で生じる変位により傾斜する前記連結板部が前記電池セル及び前記セル電極に接触しない寸法で設定されていることを特徴とするバスバ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバスバであって、
隣接して配置された2つの前記セル電極間に複数の前記連結板部が平行に並んで架設され、前記2つのセル電極間を電気的に並列接続することを特徴とするバスバ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のバスバと、
複数の前記電池セルを並設した組電池に取り付けられ、隣接する前記電池セルの前記セル電極間にそれぞれ架設される複数の前記バスバを収容する複数のバスバ収容室が形成された絶縁樹脂製のケースと、
を備えることを特徴とするバスバモジュール。
【請求項5】
請求項4に記載のバスバモジュールと、
前記組電池と、
を備えることを特徴とする電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバ及びバスバモジュール並びに電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車などの車両に搭載される電池パックでは、多数の電池セルのセル電極同士が隣り合うように重ね合わされて横並びに配置され、電気的に直列または並列につながれることにより組電池が構成されている。この組電池には、バスバモジュールが取り付けられる。バスバモジュールは、絶縁樹脂製のケースに画成される複数のバスバ収容部に各セル電極間を電気的に接続するバスバが収容される。
【0003】
ところで、電池パックにおいて、バスバとセル電極とを溶接接続するとき、バスバとセル電極とは密着(面接触)させてセットしなければならない。一方で、各電池セルのセル電極には高さ公差や平面度のバラつきがある。このため、バスバとセル電極とを密着させるためには、バスバを非常に強い力でセル電極に対して押さえ付けてバスバを変形させることが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−106170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大電流を流すためにバスバの板厚が厚くなると、バスバをセル電極に対して押さえ付けて変形させるために、更に強い力が必要となる。その結果、セル電極に大きな負荷がかかるため、セル電極の強度を向上させる必要が生じ、電池セルの部材コストが増大する。また、強い押込みができる溶接電極を備えた溶接機が必要となるため、これによっても電池パックの製造コストが増大した。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、高さ公差や平面度のバラつきがある電池セルのセル電極間にバスバを溶接接続する際の強い力によるバスバの変形を不要にして、安価に溶接接続できるバスバ及びバスバモジュール並びに電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 隣接する2つの電池セルのそれぞれに設けられたセル電極間に架設される連結板部と、前記セル電極に対向する前記連結板部の対向面に突設され、2つの前記セル電極のうち一方の前記セル電極に1つ接触し且つ他方の前記セル電極に2つ接触する合計で3つ突起と、を備えることを特徴とするバスバ。
【0008】
上記(1)の構成のバスバによれば、隣接する電池セルのセル電極間に架設される連結板部の対向面には、2つのセル電極のそれぞれに少なくとも1つずつ接触する合計で3つ以下の突起が形成される。上記バスバは、セル電極に対向する連結板部の対向面から突出するこれら突起により、セル電極の高さ公差や平面度のバラつきを吸収することが可能となる。そこで、電池セルのセル電極間に溶接接続される上記バスバは、それぞれのセル電極に密着させるために、連結板部が変形するほど高い荷重で押さえ付ける必要がなくなる。
また、上記バスバは、連結板部を変形しやすくするための従来の段曲げ構造等が不要となる。バスバは、連結板部の段曲げ構造等が不要となるので、バスバの低背化と、製造コストの低減が可能となる。
また、上記バスバは、連結板部が変形するほど高い荷重で押さえ付ける必要がないので、連結板部が元形状に戻ろうとする荷重(スプリングバック荷重)が残らない。連結板部にスプリングバックが生じないバスバは、セル電極との接点の耐振動性を向上させることができるとともに、セル電極の強度設計も容易にできる。
また、上記バスバの突起は、合計で3つとすることができる。即ち、セル電極間に架設された連結板部は、何れか一方のセル電極に対しては2つの突起で接触する。連結板部の対向面に突設される突起の数を増やし、セル電極との密着面積を増やすことは、特に高電流を流す場合に有利となる。但し、バスバは、3つの突起がセル電極の被接触面に接触することにより、全ての接点を安定的に接触させることができるものである。連結板部に3つの突起が突設されたバスバは、セル電極上に載せられた時に姿勢が安定するので、溶接接続が容易となる。尚、4つ目の突起を設けた場合には、何れか1つの接点が接触不良になりやすく、接触不良となった突起の接点が発熱する虞が生じる。
バスバは、セル電極に接触する突起の数が、各セル電極に対向する対向面に少なくとも1つずつ接触する合計で3つ以下(即ち、2つまたは3つ)とされることにより、セル電極と密着しながら、接触不良が生じやすくなる突起を除外できる。このように、バスバは、セル電極に接触する突起を2つまたは3つとすることにより、セル電極に溶接する連結板部をセル電極に対して押さえ付けて変形させる必要を無くして、すべての接触部の密着を保証することができる。その結果、溶接のための管理ポイントが限定され、管理が容易になり、バスバの溶接コストを低減できる。
【0009】
(2) 上記(1)に記載のバスバであって、前記対向面からの前記突起の突出高さは、隣接して配置される2つの前記電池セルの寸法公差で生じる変位により傾斜する前記連結板部が他部材に接触しない寸法で設定されていることを特徴とするバスバ。
【0010】
上記(2)の構成のバスバによれば、電池セルの寸法公差で生じるバスバの傾斜によっても、連結板部の対向面が他部材に接触しない突出高さで突起が形成される。他部材とは、バスバ以外の他の部材である。従って、バスバにおける連結板部の対向面は、セル電極にも接触しないように設定される。つまり、バスバの連結板部は、突起のみによりセル電極に接触する。これは、連結板部の対向面が、先にセル電極の電極角部に当たり、突起がセル電極から浮上した状態となることを回避するためである。なお、セル電極が、電池セルの本体表面と略同一平面に配置される場合には、突起の突出高さは、バスバの対向面が本体角部に干渉しない寸法で設定される。このような突出高さで突起が設定されることにより、隣接する電池セルが寸法公差の範囲で変位しても、バスバは、隣接するセル電極に対して少なくとも1つずつ接触する合計で3つ以下の突起を確実に接触させることができるようになる。
【0011】
(3) 上記(1)または(2)に記載のバスバであって、隣接して配置された2つの前記セル電極間に複数の前記連結板部が平行に並んで架設され、前記2つのセル電極間を電気的に並列接続することを特徴とするバスバ。
【0012】
上記(3)の構成のバスバによれば、隣接する2つのセル電極が、平行に並んで架設された複数の連結板部により、電気的に接続される。そこで、本構成のバスバは、点接触の連結板部を複数並列させて通電断面を増大させることができる。また、複数の連結板部により2つのセル電極間を電気的に並列接続する本構成のバスバによれば、電流を分流して発熱を抑えることができる。更に、複数の連結板部により2つのセル電極間を電気的に並列接続する本構成のバスバによれば、表面積を増やして放熱量を上げ、大電流を流すことが可能となる。
また、複数の連結板部により2つのセル電極間を電気的に並列接続する本構成によれば、同一断面積の一枚のバスバと比べて温度上昇が抑えられる。即ち、同一の温度上昇を設計値とした場合、複数の連結板部が平行に並んで架設される本構成によれば、同一断面の一枚の連結板部が架設されるバスバと比べ、金属の使用量を減らすことができ、バスバの材料費を低減することができる。
また、複数の連結板部により2つのセル電極を電気的に並列接続する本構成によれば、2つのセル電極間を流れる電流に応じて連結板部の数量を変更することで、連結板部は様々な電池パックに共通使用でき、バスバの製造コストを低減することができる。
【0013】
(4) 上記(1)〜(3)の何れか1つに記載のバスバと、複数の前記電池セルを並設した組電池に取り付けられ、隣接する前記電池セルの前記セル電極間にそれぞれ架設される複数の前記バスバを収容する複数のバスバ収容室が形成された絶縁樹脂製のケースと、を備えることを特徴とするバスバモジュール。
【0014】
上記(4)の構成のバスバモジュールによれば、セル電極に接触する突起を有するバスバが、それぞれのバスバ収容室に収容されることにより、ケースと組電池との組付け時に、多数のバスバをセル電極に一括して良好に密着させることができる。バスバモジュールは、セル電極に溶接する際にスプリングバックを生じない複数のバスバの連結板部を同時に且つ確実にセル電極に密着できるため、バスバとセル電極の溶接品質を向上させることができるとともに、組電池の製造コストを低減することができる。
【0015】
(5) 上記(4)に記載のバスバモジュールと、前記組電池と、を備えることを特徴とする電池パック。
【0016】
上記(5)の構成の電池パックによれば、バスバモジュールに収容されたバスバの連結板部が、セル電極に溶接するためにそれぞれのセル電極に密着される際、高い荷重で押さえ付ける必要がなくなる。そのため、強い押込みができる溶接電極を備えた溶接機が不要となり、電池パックの製造コストの増大を抑制できる。
また、電池パックは、バスバモジュールに設けられたバスバのセル電極への溶接荷重が減るため、セル電極及びセル電極近傍部の強度を低減でき、大きな溶接荷重に耐える高強度な部材を用いる必要もなくなる。その結果、組電池の部材コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るバスバ及びバスバモジュール並びに電池パックによれば、高さ公差や平面度のバラつきがある電池セルのセル電極間にバスバを溶接接続する際の強い力によるバスバの変形を不要にして、安価に溶接接続できる。
【0018】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るバスバを収容するバスバモジュールを取り付けた電池パックの斜視図である。
図2図1に示した電池パックのA部拡大図である。
図3図2に示したバスバモジュールを下面側より見た斜視図である。
図4図2に示したバスバモジュールを矢視B−Bにより見た断面図である。
図5図4に示したバスバモジュールの断面正面図である。
図6】(a)はバスバにおける突起の突出高さを説明する模式図、(b)は並列接続されたバスバを説明する平面図である。
図7】(a)は3つの突起が形成された変形例に係るバスバの斜視図、(b)は(a)に示したバスバを矢視C−Cにより見た断面図、(c)は(a)に示したバスバの平面図である。
図8】(a),(b)は従来のバスバによりセル電極間が接続された電池セルの斜視図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るバスバ11を収容するバスバモジュール13を取り付けた電池パック15の斜視図である。
本実施形態に係るバスバ11は、図1に示したバスバモジュール13に好適に用いることができる。バスバモジュール13は、複数の電池セル17を並べて設けた(並設した)組電池19に取り付けられる。バスバモジュール13と組電池19とは、電池パック15を構成している。
【0021】
本実施形態において、電池セル17は、板形状に形成され、矩形平面となる上端面の長手方向の両端に、正極のセル電極21と、負極のセル電極23とが設けられている。ここで、以下、単に「セル電極25」とは、正極のセル電極21と負極のセル電極23の総称とする。これらセル電極25は、矩形状のプレート端子の形態で形成されている。隣接する電池セル17は、セル電極25間に架設されたバスバ11が溶接接続されることで、電気的に並列または直列に接続される。図1に示した組電池19は、4つずつの正極のセル電極21と負極のセル電極23とが交互に配列されるように8つの電池セル17を並設してそれぞれの板面を対面させるようにして一体化されて構成されている。
【0022】
図2図1に示した電池パック15のA部拡大図である。
バスバモジュール13は、本体としてのケース27が、絶縁樹脂材により一体成形される。ケース27には、電池セル17の並び方向に、矩形箱状の複数のバスバ収容室29が弾性変形可能な公差吸収部31を介して連結されている。隣接するバスバ収容室29は、隔壁33により仕切られている。各バスバ収容室29には、隣接する電池セル17のセル電極25が配置される。各バスバ収容室29には、これらセル電極25間を電気的に接続するための導電性金属板からなるバスバ11が収容される。
【0023】
ケース27には、バスバ収容室29の連結方向に沿って電線配索部35が一体に成形される。電線配索部35の外側壁には、弾性変形可能な公差吸収部37が形成されている。電線配索部35は、電池セル17の並設方向に延在する電線配索溝39を有する。電線配索部35の電線配索溝39には、電圧検出線41が配索される。電線配索溝39に配索される複数の電圧検出線41は、電線保持片43により電線配索溝39からの飛び出しが規制される。電圧検出線41は、それぞれのバスバ収容室29に対応して複数本が配索される。それぞれの電圧検出線41は、バスバ収容室29に形成される電線接続開口45を通って、バスバ収容室29に収容されたバスバ11に導通接続される。
【0024】
このように、本実施形態に係るバスバモジュール13は、ケース27が、複数の電池セル17を並設した組電池19に取り付けられ、隣接する電池セル17のセル電極25間にそれぞれ架設されてこれらを電気的に接続する複数のバスバ11を備えて構成される。
【0025】
図3図2に示したバスバモジュール13を下面側より見た斜視図である。
バスバ収容室29の底部は、底壁47が形成される。それぞれのバスバ収容室29の底壁47には、隣接する電池セル17の2つのセル電極25をバスバ収容室29へ表出させる電極表出開口49が形成されている。バスバ収容室29に収容されたバスバ11は、この電極表出開口49を通じて隣接する電池セル17の2つのセル電極25に接触が可能となる。
【0026】
図4図2に示したバスバモジュール13を矢視B−Bにより見た断面図である。
それぞれのバスバ収容室29には、電池セル17の並設方向に延在する平行な複数のバスバ仕切壁51が立設される。本実施形態においては、バスバ仕切壁51は、2つが平行に配置されている。これにより、1つのバスバ収容室29には、バスバ仕切壁51により仕切られた3つのバスバ収容スペースが画成されている。つまり、本実施形態において、1つのバスバ収容室29は、3枚のバスバ11を収容可能としている。このように、本実施形態において、バスバ11は、隣接して配置された2つのセル電極25間に複数(3枚)が平行に並んで架設され、2つのセル電極25間を電気的に並列接続している。なお、バスバ仕切壁51及びバスバ11の数は、これに限定されない。
【0027】
バスバ仕切壁51には、上端が基端となり、下端が係止爪53を有した自由端となる複数のバスバ保持片55が形成される。このバスバ保持片55は、バスバ11の装着時には撓んでバスバ11の装着を可能とする。バスバ保持片55は、正規の装着位置にセットされたバスバ11を所定のクリアランスを有して保持している。即ち、バスバ収容室29に保持されるそれぞれのバスバ11は、所定のクリアランスにより移動自在となってバスバ収容スペースに保持されている。それぞれのバスバ11は、この可動保持構造により、セル電極25の公差による変位に対応して移動が可能となっている。
なお、バスバ保持片55は、上記のバスバ仕切壁51の他、バスバ収容室29の収容室側壁57にも設けられている。
【0028】
図5図4に示したバスバモジュール13の断面正面図である。
本実施形態において、電池セル17は、本体ケース59の上面からセル電極25が突出して配置される。組電池19に設置されたバスバモジュール13は、それぞれのバスバ収容室29の電極表出開口49が、組電池19のそれぞれの電池セル17のセル電極25に一致して配置される。即ち、バスバ11は、隣接する電池セル17のそれぞれの本体ケース59の上面に設けられたセル電極25間に連結板部62が架設される。それぞれのバスバ収容室29に収容されたバスバ11は、電池セル17の並設方向における連結板部62の両端部が、隣接する電池セル17のそれぞれのセル電極25に導通接続される。
【0029】
ここで、バスバ11は、隣接する2つの電池セル17の上面にそれぞれに設けられたセル電極25間に架設される矩形平板状の連結板部62と、セル電極25に対向する連結板部62の対向面である下面61に突設され、2つのセル電極25のそれぞれに少なくとも1つずつ接触する合計で3つ以下(本実施形態では、連結板部62の両端部で1つずつ接触させる合計で2つ)の突起63と、を備える。
【0030】
突起63は、インデントとも称す。インデントは、例えば張出し加工(stretch forming)により成形される。張出し加工は、孔を有するダイスにバスバ11を載置し、板押さえでバスバ11の連結板部62をダイスとで挟持する。ダイスと反対側から孔に相当する部分の連結板部62をポンチにより押圧する。張出し加工では、ポンチの頭部に接する連結板部62の部分並びにその近傍を伸ばして、ダイスの孔に倣った形状に成形する。本実施形態のインデントは、突出先端が略半球形状に成形される。なお、インデントの突出形状及び成形方法は、これに限定されない。
【0031】
図6(a)はバスバ11における突起63の突出高さhを説明する模式図、図6(b)は並列接続されたバスバ11を説明する平面である。
図6(a)に示すように、突起63における連結板部62の下面61からの突出高さhは、隣接して配置される2つの電池セル17の寸法公差で生じる変位Gにより傾斜する連結板部62の下面61が他部材に接触しない寸法で設定されている。突起63は、半球状に形成される場合、この突出高さhは、半球体の半径rとすることができる。
【0032】
図7(a)は3つの突起63が連結板部62の下面61に形成された変形例に係るバスバ11Aの斜視図、(b)は(a)に示したバスバ11Aを矢視C−Cにより見た断面図、(c)は(a)に示したバスバ11Aの平面図である。
【0033】
図7(a)〜(c)に示すように、突起63は、2つのセル電極25の何れか一方には2つで接触する合計で3つとなるように連結板部62の下面61に形成することができる。なお、突起63は、合計で3つとした場合、図7(c)に示すバスバ11Aのように、隣接する2つのセル電極25のそれぞれに接触する2つの突起63を通る直線L上には、他の1つの突起63が配置されない構成とすることが好ましい。つまり、3つの突起63を三角形(図7(c)中に想像線で図示)の各頂点に配置する。これは、隣接する2つのセル電極25が同一平面である場合には同一直線上の3つの突起63が全て接触可能となるが、2つのセル電極25が同一平面でない場合には3つの突起63のうち1つは接触しなくなる可能性が高くなるためである。
【0034】
尚、図7(c)に示したバスバ11Aにおける左方の端部に形成された2つの突起63は、連結板部62の幅方向に並んで突設されており、バスバ11Aにおける上方の端部に形成された突起63と等距離に形成されているが、本発明に係る何れか一方のセル電極25に接触する2つの突起は、他方のセル電極25に接触する突起と必ずしも等距離である必要はない。
【0035】
次に、上記した構成の作用を説明する。
図8(a),(b)は従来のバスバ65によりセル電極25間が接続された電池セル17の斜視図及び平面図である。 図8(a),(b)に示すように、組電池19を電気接続するために従来のバスバ65とセル電極25とを溶接接続するとき、バスバ65とセル電極25とは溶接部66で密着(面接触)させてセットしなければならない。ここで、各電池セル17のセル電極25に、位置バラつきが存在していると、バスバ65の連結板部64は溶接部66がセル電極25から浮いてしまう。このような場合、従来のバスバ65では、バスバ65とセル電極25とを溶接接続する際には、バスバ65をセル電極25に対して押し当てるのに非常に強い荷重が必要となる。そのため、従来のバスバ65は、溶接部66の密着面積を確保しにくく、密着保証が困難となる虞があった。また、バスバ65を押し当てて溶接接続した場合、連結板部64にスプリングバック荷重が残る問題があった。スプリングバック荷重が溶接後の内部応力として残留すれば、バスバ65の耐振動性能を低下させることになった。
【0036】
これに対し、本実施形態に係るバスバ11では、隣接する電池セル17のセル電極25間に架設される連結板部62の下面61には、2つのセル電極25のそれぞれに少なくとも1つずつ接触する合計で2つの突起63が形成される。上記バスバ11は、セル電極25に対向する連結板部62の下面61から突出するこれら突起63により、セル電極25の高さ公差や平面度のバラつきを吸収することが可能となる。そこで、電池セル17のセル電極25間に溶接接続されるバスバ11は、それぞれのセル電極25に密着させるために、連結板部62が変形するほど高い荷重で押さえ付ける必要がなくなる。
【0037】
また、本実施形態に係るバスバ11は、連結板部62を変形しやすくするための従来の段曲げ構造等が不要となる。バスバ11は、連結板部62の段曲げ構造等が不要となるので、バスバ11の低背化と、製造コストの低減が可能となる。
【0038】
また、本実施形態に係るバスバ11は、連結板部62が変形するほど高い荷重で押さえ付ける必要がないので、連結板部62が元形状に戻ろうとする荷重(スプリングバック荷重)が残らない。連結板部62にスプリングバックが生じないバスバ11は、セル電極25との接点の耐振動性を向上させることができるとともに、セル電極25の強度設計も容易にできる。
【0039】
また、本実施形態に係るバスバ11では、電池セル17の寸法公差で生じるバスバ11の傾斜によっても、連結板部62の下面61が他部材に接触しない突出高さhで突起63が形成される。他部材とは、バスバ11以外の他の部材である。従って、バスバ11における連結板部62の下面61は、セル電極25にも接触しないように設定される。つまり、バスバ11の連結板部62は、突起63のみによりセル電極25に接触する。これは、図6(a)に示すように、連結板部62の下面61が、先にセル電極25の他部材である電極角部67に当たり、突起63がセル電極25から浮上した状態となることを回避するためである。なお、セル電極25が、電池セル17の本体ケース59の上面(本体表面)と略同一平面に配置される場合(図6(a)に示すH=0の場合)には、突起63の突出高さhは、バスバ11の下面61が本体角部69に干渉しない寸法で設定される。このような突出高さhで突起63が設定されることにより、隣接する電池セル17が寸法公差の範囲で変位しても、バスバ11は、隣接するセル電極25に対して少なくとも1つずつ接触する合計で3つ以下の突起63を確実に接触させることができるようになる。
【0040】
また、本実施形態に係るバスバ11では、図6(b)に示すように、隣接する2つのセル電極25が、平行に並んで架設された複数枚(3枚)の連結板部62により、電気的に接続される。そこで、バスバ11は、点接触の連結板部62を複数枚並列させて通電断面を増大させることができる。また、複数の連結板部62により2つのセル電極25間を電気的に並列接続する本実施形態のバスバ11では、電流を分流して発熱を抑えることができる。更に、複数の連結板部62により2つのセル電極25間を電気的に並列接続する本実施形態のバスバ11では、表面積を増やして放熱量を上げ、大電流を流すことが可能となる。
【0041】
また、図6(b)に示したように、複数の連結板部62を2つのセル電極25間に電気的に並列接続する本実施形態に係るバスバ11の構成では、同一断面積の一枚のバスバ65(図8(b)参照)と比べて温度上昇が抑えられる。温度上昇は、温度上昇=(発熱量−放熱量)/熱容量で表すことができる。即ち、同一の温度上昇を設計値とした場合、複数の連結板部62が平行に並んで架設される本実施形態のバスバ11では、同一断面の一枚の連結板部64が架設されるバスバ65と比べ、金属の使用量を減らすことができ、バスバ11の材料費を低減することができる。
【0042】
また、複数の連結板部62により2つのセル電極25を電気的に並列接続する本実施形態のバスバ11では、2つのセル電極25間を流れる電流に応じて連結板部62の数量を変更することで、連結板部62は様々な電池パック15に共通使用でき、バスバ11の製造コストを低減することができる。
【0043】
そして、本実施形態に係るバスバモジュール13では、セル電極25に接触する突起63を有するバスバ11が、それぞれのバスバ収容室29に収容されることにより、ケース27と組電池19との組付け時に、多数のバスバ11をセル電極25に一括して良好に密着させることができる。バスバモジュール13は、セル電極25に溶接する際にスプリングバックを生じない複数のバスバ11の連結板部62を同時に且つ確実にセル電極25に密着できるため、バスバ11とセル電極25の溶接品質を向上させることができるとともに、組電池19の製造コストを低減することができる。
【0044】
また、図7(a)〜(c)に示したように、バスバ11Aの突起63は、合計で3つとすることができる。即ち、セル電極25間に架設された連結板部62は、何れか一方のセル電極25に対しては2つの突起63で接触する。連結板部62の下面61に突設される突起63の数を増やし、セル電極25との密着面積を増やすことは、特に高電流を流す場合に有利となる。但し、バスバ11Aは、3つの突起63がセル電極25の被接触面に接触することにより、全ての接点を安定的に接触させることができるものであり、4つ目の突起63を設けた場合には、何れか1つの接点が接触不良になりやすく、接触不良となった突起63の接点が発熱する虞が生じる。
そして、連結板部62に3つの突起63が突設されたバスバ11Aは、セル電極25上に載せられた時に姿勢が安定するので、溶接接続が容易となる。
【0045】
本実施形態に係るバスバ11,11Aは、セル電極25に接触する突起63の数が、各セル電極25に対向する下面61に少なくとも1つずつ接触する合計で3つ以下(即ち、2つまたは3つ)とされることにより、セル電極25と密着しながら、接触不良が生じやすくなる突起63を除外できる。このように、バスバ11,11Aは、セル電極25に接触する突起63を2つまたは3つとすることにより、セル電極25に溶接する連結板部62をセル電極25に対して押さえ付けて変形させる必要を無くして、すべての接触部の密着を保証することができる。その結果、溶接のための管理ポイントが限定され、管理が容易になり、バスバ11,11Aの溶接コストを低減できる。
【0046】
そして、本実施形態に係る電池パック15では、バスバモジュール13に収容されたバスバ11(11A)が、セル電極25に溶接するためにそれぞれのセル電極25に密着される際、高い荷重で押さえ付ける必要がなくなる。そのため、強い押込みができる溶接電極を備えた溶接機が不要となり、電池パック15の製造コストの増大を抑制できる。
【0047】
また、電池パック15は、バスバモジュール13に設けられたバスバ11(11A)のセル電極25への溶接荷重が減るため、セル電極25及びセル電極近傍部の強度を低減でき、大きな溶接荷重に耐える高強度な部材を用いる必要もなくなる。その結果、組電池19の部材コストを低減することができる。
【0048】
従って、本実施形態に係るバスバ11,11Aによれば、高さ公差や平面度のバラつきがある電池セル17のセル電極25間にバスバ11,11Aを溶接接続する際の強い力によるバスバ11の変形を不要にして、安価に溶接接続できる。
【0049】
本実施形態に係るバスバモジュール13によれば、バスバ11(11A)とセル電極25の溶接品質を向上させることができるとともに、組電池19の製造コストを低減することができる。
【0050】
本実施形態に係る電池パック15によれば、セル電極25及び本体ケース59のセル電極近傍部の強度を低減でき、大きな溶接荷重に耐える高強度な部材を用いる必要もなくなるので、組電池19の部材コストを低減することができる。
【0051】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0052】
例えば上記の実施形態では、バスバが、セル電極に溶接接続される場合を例に説明したが、本発明に係るバスバは、バスバが加圧構造によりセル電極に導通接続される構成であっても、上記と同様の効果を奏することができる。
また、上記の実施形態では、組電池19が、4つずつの正極のセル電極21と負極のセル電極23とが交互に配列されるように8つの電池セル17を並設してそれぞれの板面を対面させるようにして一体化されて構成されている。本発明に係る組電池はこれに限らず、複数の電池セル17の正極のセル電極21と負極のセル電極23とが交互に隣り合うように並設してそれぞれの板面を対面させるようにして一体化された組電池を構成することもできる。
【0053】
ここで、上述した本発明に係るバスバ及びバスバモジュール並びに電池パックの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 隣接する2つの電池セル(17)のそれぞれに設けられたセル電極(25)間に架設される連結板部(62)と、
前記セル電極(25)に対向する前記連結板部(62)の対向面(下面61)に突設され、2つの前記セル電極(25)のそれぞれに少なくとも1つずつ接触する合計で3つ以下の突起(63)と、
を備えることを特徴とするバスバ(11,11A)。
[2] 上記[1]に記載のバスバであって、
前記対向面(下面61)からの前記突起(63)の突出高さ(h)は、隣接して配置される2つの前記電池セル(17)の寸法公差で生じる変位により傾斜する前記連結板部(62)が他部材(電極角部67、本体角部69)に接触しない寸法で設定されていることを特徴とするバスバ(11,11A)。
[3] 上記[1]または[2]に記載のバスバであって、
隣接して配置された2つの前記セル電極(25)間に複数の前記連結板部(62)が平行に並んで架設され、前記2つのセル電極(25)間を電気的に並列接続することを特徴とするバスバ(11,11A)。
[4] 上記[1]〜[3]の何れか1つに記載のバスバ(11,11A)と、
複数の前記電池セル(17)を並設した組電池(19)に取り付けられ、隣接する前記電池セル(17)の前記セル電極(25)間にそれぞれ架設される複数の前記バスバ(11,11A)を収容する複数のバスバ収容室(29)が形成された絶縁樹脂製のケース(27)と、
を備えることを特徴とするバスバモジュール(13)。
[5] 上記[4]に記載のバスバモジュール(13)と、
前記組電池(19)と、
を備えることを特徴とする電池パック(15)。
【符号の説明】
【0054】
11…バスバ
13…バスバモジュール
15…電池パック
17…電池セル
19…組電池
25…セル電極
27…ケース
29…バスバ収容室
61…下面(対向面)
62…連結板部
63…突起
67…電極角部(他部材)
69…本体角部(他部材)
h…突出高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8