(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出回路が、前記複数の共振感知回路のうち少なくとも一部の複数の特性を測定して、各第2の導電性構造に対応する位置に基づいてマッピングされた測定された前記複数の特性に対応する値の多次元アレイを生成するように構成されていて、前記検出回路が、前記多次元アレイに部分的に基づいて前記オブジェクトの存在を検出するように構成されている、請求項1に記載の装置。
前記検出回路が、前記値の多次元アレイ内のパターンを決定するように構成されていて、前記パターンが、車両パッド、車体の底面構造、温度変動、水、雪、氷、葉、経年変化、及び、これらの組み合わせのうち少なくとも一つについての一つ以上の残留効果を示す、請求項3に記載の装置。
前記検出回路が、前記値の多次元アレイから識別されたパターンと比較した際の測定された前記複数の特性のうち一つ以上についての差に基づいて前記オブジェクトの存在を検出するように構成されている、請求項3に記載の装置。
前記オブジェクトを検出するための判定しきい値であって、測定された前記複数の特性のうち一つ以上の変化に対応する判定しきい値が、前記値の多次元アレイから識別されたパターンに基づいて決定又は調整される、請求項3に記載の装置。
前記判定しきい値が、時系列で取得された値のアレイから識別されたパターンの突然又は急激な変化及び局所的な変化を生じさせるオブジェクトを検出するために検出感度を上げるように調整される、請求項7に記載の装置。
時系列で取得されたパターンから識別されたパターンの局所的な変化が、前記複数の共振感知回路のうち大部分について測定された特性と比較した際の前記複数の共振感知回路のうち一部分について測定された特性の変化に対応している、請求項8に記載の装置。
前記値の多次元アレイ内で識別されたパターンが、時系列で取得された値のアレイに対応する複数の時系列パターンのうちの一つであり、前記検出回路が、前記複数の時系列パターンに少なくとも部分的に基づいて前記オブジェクトの存在を検出するように構成されている、請求項3に記載の装置。
前記検出回路が、少なくとも一つのパターンを他の一つ以上の時系列パターンと比較した際の変化に基づいて前記オブジェクトを検出するように構成されている、請求項12に記載の装置。
前記検出回路が、第1の値のアレイから識別された第1のパターンと、前記オブジェクトが存在しない所定の条件において測定された第2の値のアレイから識別された第2の参照パターンとの間の比較に少なくとも部分的に基づいて、前記オブジェクトの存在を決定するように構成されている、請求項3に記載の装置。
前記検出回路が、前記第1のパターンに補正関数を適用して、歪み効果を補償することによって、前記第1の値のアレイから識別された第1のパターンを変更するように構成されている、請求項16に記載の装置。
前記検出回路が、変更された前記第1のパターンと前記第2の参照パターンとの間の差の平均2乗を最小にするように前記補正関数を最適化する、請求項17に記載の装置。
前記検出回路が、前記第1のパターンに最適化された前記補正関数を適用することによって、前記第1のパターンを変更して、変更された前記第1のパターンから前記第2の参照パターンを差し引いた結果としての差分パターンに基づいて、前記オブジェクトの存在を検出する、請求項18に記載の装置。
前記検出回路が、前記複数の共振感知回路のうち少なくとも一部についての複数の特性を測定するように構成されていて、前記検出回路が、前記複数の特性に基づいて前記オブジェクトの存在を検出するための判定しきい値を決定又は調整するように構成されている、請求項1に記載の装置。
前記検出回路が、前記複数の共振感知回路のうち少なくとも一部についての複数の特性を測定するように構成されていて、前記検出回路が、隣接ループにおいて検出された同時変化に少なくとも部分的に基づいて前記オブジェクトの存在を検出するように構成されている、請求項1に記載の装置。
前記特性が、インピーダンス、共振周波数、Q係数、減衰係数、インダクタンス、抵抗、電圧、相互インダクタンス、位相、周波数応答、及び、時間領域応答のうち少なくとも一つを示す少なくとも一つの値を備える、請求項1に記載の装置。
前記検出回路が、正弦波形、掃引周波数波形、インパルス、及び、擬似ランダム雑音のうち一つである感知電流信号を生成するように構成されている、請求項1に記載の装置。
前記特性が、前記検出回路によって検出された感知信号から導出され、前記検出回路が、狭帯域低中間周波数に至るように前記感知信号を混ぜるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面に示された様々な特徴は、縮尺どおりに描かれていない場合がある。したがって、明確にするために、様々な特徴の寸法は任意に拡大または縮小されている場合がある。加えて、図面のいくつかは、所与のシステム、方法、またはデバイスの構成要素のすべてを描写していない場合がある。最後に、本明細書および図の全体を通して、同様の特徴を示すために同様の参照番号が使用される場合がある。
【0018】
添付の図面に関連させて以下に記載される詳細な説明は、本発明の例示的な実施形態の説明を目的としたものであり、本発明を実践できる唯一の実施形態を表すことを意図したものではない。本明細書全体にわたって使用される「例示的な」という用語は、「例、実例、または図例として役立つ」ことを意味しており、他の例示的な実施形態よりも好ましい、または有利であると必ずしも解釈すべきではない。詳細な説明は、例示的な実施形態の完全な理解をもたらす目的で、具体的な詳細を含んでいる。場合によっては、いくつかのデバイスがブロック図の形式で示されている。
【0019】
電力をワイヤレスに伝達することは、物理的な電気導体を使用することなく、電場、磁場、電磁場などに関連する任意の形態のエネルギーを送信機から受信機に伝達する(たとえば、電力は、自由空間を通して伝達され得る)ことを指し得る。電力伝達を実現するために、ワイヤレス場(たとえば、磁場)内に出力された電力は、「受信コイル」によって受信、捕捉、または結合され得る。
【0020】
本明細書において、リモートシステムについて説明するために電気車両が使用され、その一例は、運動能力の一部として、充電可能なエネルギー蓄積デバイス(たとえば、1つまたは複数の再充電可能な電気化学セルまたは他のタイプのバッテリー)から導出された電力を含む車両である。非限定的な例として、いくつかの電気車両は、電気モータ以外に、直接運動のための、または車両のバッテリーを充電するための従来型内燃機関を含むハイブリッド電気車両であり得る。他の電気車両は、電力からすべての運動能力を引き出し得る。電気車両は、自動車に限定されず、オートバイ、カート、スクーターなどを含み得る。限定ではなく例として、リモートシステムは本明細書において、電気車両(EV)の形態で説明される。さらに、充電可能なエネルギー蓄積デバイスを使用して少なくとも部分的に電力供給され得る他のリモートシステム(たとえば、パーソナルコンピューティングデバイスなどの電子デバイス)も企図される。
【0021】
図1は、例示的な実施形態による、電気車両112を充電するための例示的なワイヤレス電力伝達システム100の図である。ワイヤレス電力伝達システム100は、電気車両112が基地ワイヤレス充電システム102aの近くに駐車している間に、電気車両112の充電を可能にする。駐車エリアにおいて2台の電気自動車を対応する基地ワイヤレス充電システム102aおよび102bの上に駐車させるためのスペースが示されている。いくつかの実施形態では、ローカル分配センター130を電力バックボーン132に接続することができ、ローカル分配センター130は、交流(AC)または直流(DC)供給を、電力リンク110を介して、基地ワイヤレス充電システム102aに提供するように構成され得る。基地ワイヤレス充電システム102aはまた、電力をワイヤレスに伝達または受信するための基地システム誘導コイル104aを含む。電気車両112は、バッテリーユニット118と、電気車両誘導コイル116と、電気車両ワイヤレス充電システム114とを含むことができる。電気車両誘導コイル116は、たとえば、基地システム誘導コイル104aによって生成された電磁場の領域を介して、基地システム誘導コイル104aと対話することができる。
【0022】
いくつかの例示的な実施形態では、基地システム誘導コイル104aによって生成されたエネルギー場に電気車両誘導コイル116が位置するとき、電気車両誘導コイル116は電力を受信することができる。エネルギー場は、基地システム誘導コイル104aによって出力されたエネルギーが電気車両誘導コイル116によって捕捉され得る領域に対応する。たとえば、基地システム誘導コイル104aによって出力されたエネルギーは、電気車両112を充電するか、または電気車両112に電力供給するのに十分なレベルにあり得る。場合によっては、エネルギー場は、基地システム誘導コイル104aの「近距離場」に対応し得る。近距離場は、基地システム誘導コイル104aから電力を放射しない、基地システム誘導コイル104a内の電流および電荷からもたらされる、強い反応場が存在する領域に対応することができる。場合によっては、近距離場は、以下でさらに説明するように、基地システム誘導コイル104aの波長の約1/2πの範囲内にある領域(反対に電気車両誘導コイル116の場合も同様)に対応することができる。
【0023】
ローカル分配130は、通信バックホール134を介して外部ソース(たとえば、電力網)と、および通信リンク108を介して基地ワイヤレス充電システム102aと通信するように構成され得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、単純に運転手が電気車両112を基地システム誘導コイル104aに対して正しく位置付けることによって、電気車両誘導コイル116は、基地システム誘導コイル104aと位置合わせすることができ、したがって、近距離場領域内に配置することができる。他の実施形態では、ワイヤレス電力伝達のために電気車両112が適切に配置されたときを判断するために、運転手には、視覚的フィードバック、聴覚的フィードバック、またはそれらの組合せを与えることができる。また他の実施形態では、電気車両112は、オートパイロットシステムによって位置付けることができ、オートパイロットシステムは、位置合わせ誤差が許容値に達するまで、電気車両112を(たとえば、ジグザグ運動で)前後に移動させることができる。これは、電気車両112が、車両を調整するためのサーボハンドル、超音波センサ、およびインテリジェンスを備える場合、運転手が介入することなく、または運転手が最低限の介入しか行わずに、電気車両112によって自動的、および自律的に実行することができる。さらに他の実施形態では、電気車両誘導コイル116、基地システム誘導コイル104a、またはそれらの組合せは、誘導コイル116および104aを互いに対して変位および移動させて、それらをより正確に方向合わせし、それらの間により効率的な結合を生じさせるための機能を有することができる。
【0025】
基地ワイヤレス充電システム102aは、様々な場所に位置し得る。非限定的な例として、いくつかの適切な場所は、電気車両112の所有者の自宅の駐車エリア、従来のガソリンスタンドに倣った電気車両ワイヤレス充電用に確保された駐車エリア、およびショッピングセンターおよび職場など、他の場所の駐車場を含む。
【0026】
ワイヤレスに電気車両を充電することで、数々の利点が提供される。たとえば、充電は、自動的に、実質的に運転手の介入および操作なしに実行することができ、それによって、ユーザの利便性を向上させる。露出した電気接点、および機械的摩耗をなくすこともでき、それによって、ワイヤレス電力伝達システム100の信頼性を高める。ケーブルおよびコネクタを用いる操作を不必要にすることができ、戸外の環境において湿気および水分にさらされることがある、ケーブル、プラグ、またはソケットをなくすことができ、それによって、安全性を向上させる。見えるまたは接近できるソケット、ケーブル、およびプラグをなくすこともでき、それによって、電力充電デバイスへの潜在的な破壊行為を減らす。さらに、電力網を安定させるために、電気車両112を分散貯蔵デバイスとして使用することができるので、ビークルツーグリッド(V2G:Vehicle−to−Grid)動作のための車両の利用可能性を高めるために、ドッキングツーグリッド(docking−to−grid)ソリューションが使用されることがある。
【0027】
図1に関して説明するワイヤレス電力伝達システム100は、美的でおよび無害の利点も提供し得る。たとえば、自動車および/または歩行者の妨害となることがある、充電カラムおよびケーブルをなくすことができる。
【0028】
ビークルツーグリッド機能のさらなる説明として、ワイヤレス電力送信および受信機能は、基地ワイヤレス充電システム102aが電力を電気車両112に伝達し、たとえばエネルギー不足のときに電気車両112が電力を基地ワイヤレス充電システム102aに伝達するように、相互的になるように構成され得る。この機能は、過剰な需要または再生可能エネルギー生産(たとえば、風または太陽)の不足によって引き起こされたエネルギー不足のときに電気車両が分配システム全体に電力を寄与できるようにすることによって電力分配網を安定させるのに役立ち得る。
【0029】
図2は、
図1のワイヤレス電力伝達システム100の例示的なコア構成要素の概略図である。
図2に示すように、ワイヤレス電力伝達システム200は、インダクタンスL
1を有する基地システム誘導コイル204を含む基地システム送信回路206を含むことができる。ワイヤレス電力伝達システム200は、インダクタンスL
2を有する電気車両誘導コイル216を含む電気車両受信回路222をさらに含む。本明細書で説明する実施形態は、一次構造(送信機)と二次構造(受信機)の両方が共通の共振周波数に合わせられている場合に、磁気または電磁気近距離場を介して一次構造から二次構造にエネルギーを効率的に結合することが可能な共振構造を形成する容量装荷ワイヤループ(すなわち、多巻きコイル)を使用することができる。コイルは、電気車両誘導コイル216および基地システム誘導コイル204に使用され得る。エネルギーを結合するために共振構造を使用することは、「磁気結合共振」、「電磁結合共振」、および/または「共振誘導」と呼ばれ得る。ワイヤレス電力伝達システム200の動作は、基地ワイヤレス電力充電システム202から電気車両112への電力伝達に基づいて説明されることになるが、これに限定されない。たとえば、上記で説明したように、電気車両112は、基地ワイヤレス充電システム102aに電力を伝達し得る。
【0030】
図2を参照すると、電源208(たとえば、ACまたはDC)は、電気車両112にエネルギーを伝達するために電力P
SDCを基地ワイヤレス電力充電システム202に供給する。基地ワイヤレス電力充電システム202は、基地充電システム電力変換器236を含む。基地充電システム電力変換器236は、標準的なメインAC電力から適切な電圧レベルのDC電力に電力を変換するように構成されたAC/DC変換器、およびDC電力をワイヤレス高電力伝達に適した動作周波数の電力に変換するように構成されたDC/低周波数(LF)変換器などの回路を含み得る。基地充電システム電力変換器236は、所望の周波数で電磁場を放出するために、基地システム誘導コイル204と直列のキャパシタC
1を含む基地システム送信回路206に電力P
1を供給する。キャパシタC
1は、並列または直列のいずれかで基地システム誘導コイル204に結合されてよく、または並列トポロジーまたは直列トポロジーの任意の組合せでいくつかの反応性要素から形成されてよい。所望の周波数で共振する基地システム誘導コイル204との共振回路を形成するように、キャパシタC
1が提供され得る。基地システム誘導コイル204は電力P
1を受信し、電気車両112の充電または電気車両112への電力供給に十分なレベルの電力をワイヤレスに送信する。たとえば、基地システム誘導コイル204によってワイヤレスに提供される電力レベルは、およそ数キロワット(kW)(たとえば、1kWから110kWまでの間、またはこれよりも高いkWまたは低いkW)であり得る。
【0031】
基地システム誘導コイル204を含む基地システム送信回路206および電気車両誘導コイル216を含む電気車両受信回路222は、実質的に同じ周波数に合わせられてよく、基地システム誘導コイル204および電気車両誘導コイル216のうちの1つによって送出された電磁場の近距離場内に位置付けられ得る。この場合、キャパシタC
2および電気車両誘導コイル216を含む電気車両受信回路222に電力が伝達され得るように、基地システム誘導コイル204および電気車両誘導コイル216は、互いに結合され得る。キャパシタC
2は、所望の周波数で共振する電気車両誘導コイル216との共振回路を形成するように提供され得る。キャパシタC
2は、並列または直列のいずれかで電気車両誘導コイル204に結合されてよく、または並列トポロジーまたは直列トポロジーの任意の組合せでいくつかの反応性要素から形成されてよい。要素k(d)は、コイル分離で生じる相互結合係数を表す。等価抵抗R
eq,1およびR
eq,
2は、誘導コイル204および216ならびに逆リアクタンスキャパシタC
1およびC
2に固有であり得る損失を表す。電気車両誘導コイル216およびキャパシタC
2を含む電気車両受信回路222は、電力P
2を受信し、電気車両充電システム214の電気車両電力変換器238に電力P
2を提供する。
【0032】
電気車両電力変換器238は、とりわけ、電気車両バッテリーユニット218の電圧レベルに整合する電圧レベルのDC電力に戻す形で動作周波数の電力を変換するように構成されたLF/DC変換器を含み得る。電気車両電力変換器238は、電気車両バッテリーユニット218を充電するために、変換された電力P
LDCを提供することができる。電源208、基地充電システム電力変換器236、および基地システム誘導コイル204は、静止し、上述した様々な場所に位置してよい。バッテリーユニット218、電気車両電力変換器238、および電気車両誘導コイル216は、電気車両112の一部またはバッテリーパック(図示せず)の一部である電気車両充電システム214中に含まれ得る。電気車両充電システム214はまた、電力網に電力を戻すために、電気車両誘導コイル216を通して基地ワイヤレス電力充電システム202にワイヤレスに電力を提供するように構成され得る。電気車両誘導コイル216および基地システム誘導コイル204の各々は、動作モードに基づいて送信誘導コイルまたは受信誘導コイルとしての働きをすることができる。
【0033】
図示されていないが、ワイヤレス電力伝達システム200は、電気車両バッテリーユニット218または電源208をワイヤレス電力伝達システム200から安全に切断する負荷切断ユニット(LDU)を含み得る。たとえば、緊急事態またはシステム障害の場合、LDUは、ワイヤレス電力伝達システム200から負荷を切断するようにトリガされ得る。LDUは、バッテリーへの充電を管理するためのバッテリー管理システムに加えて提供されてよく、またはバッテリー管理システムの一部であってもよい。
【0034】
さらに、電気車両充電システム214は、電気車両誘導コイル216を電気車両電力変換器238との間で選択的に接続および切断するための切替回路(図示せず)を含むことができる。電気車両誘導コイル216を切断することで、充電を中止することができ、(送信機としての働きをする)基地ワイヤレス充電システム102aによって「見られる」ように「負荷」を調整することもでき、これを利用して、(受信機としての働きをする)電気車両充電システム114を基地ワイヤレス充電システム102aから「隠す」ことができる。送信機が負荷感知回路を含む場合、負荷変動が検出され得る。したがって、基地ワイヤレス充電システム202などの送信機は、電気車両充電システム114などの受信機が基地システム誘導コイル204の近距離場に存在するときを判断するための機構を有し得る。
【0035】
上記で説明したように、動作中、車両またはバッテリーへのエネルギー伝達を仮定すると、基地システム誘導コイル204がエネルギー伝達を提供するための場を生成するように、電源208から入力電力が提供される。電気車両誘導コイル216は放射場に結合し、電気車両112による貯蔵または消費のために出力電力を生成する。上記のように、いくつかの実施形態では、電気車両誘導コイル116の共振周波数および基地システム誘導コイル204の共振周波数が非常に近くなるか、または実質的に同じになるように相互共振関係に従って、基地システム誘導コイル204および電気車両誘導コイル116は構成される。電気車両誘導コイル216が基地システム誘導コイル204の近距離場に位置するとき、基地ワイヤレス電力充電システム202と電気車両充電システム214との間の送電損失は最小である。
【0036】
上述のように、効率的なエネルギー伝達は、電磁波内のエネルギーの大部分を遠距離場に伝播するのではなく、送信誘導コイルの近距離場内のエネルギーの大部分を受信誘導コイルに結合することによって生じる。この近距離場にあるとき、送信誘導コイルと受信誘導コイルとの間に結合モードが確立され得る。この近距離場結合が発生し得る誘導コイルの周りのエリアを、本明細書では近距離場結合モード領域と呼ぶ。
【0037】
図示されていないが、基地充電システム電力変換器236および電気車両電力変換器238はいずれも、発振器、電力増幅器などのドライバ回路、フィルタ、およびワイヤレス電力誘導コイルと効率的に結合するための整合回路を含み得る。発振器は、調整信号に応答して調整され得る所望の周波数を生成するように構成され得る。発振器信号は、電力増幅器によって、制御信号に応答する増幅量で増幅され得る。フィルタおよび整合回路は、高調波または他の不要な周波数をフィルタ除去し、電力変換モジュールのインピーダンスをワイヤレス電力誘導コイルに整合させるために含まれ得る。電力変換器236および238はまた、バッテリーを充電するために適切な電力出力を生成するための整流器および切替回路を含み得る。
【0038】
開示する実施形態を通じて説明する電気車両誘導コイル216および基地システム誘導コイル204は、「ループ」アンテナ、より具体的には、多巻きループアンテナと呼ばれるか、またはそのようなものとして構成され得る。誘導コイル204および216はまた、本明細書において「磁気」アンテナと呼ばれるか、またはそのようなものとして構成され得る。「コイル」という用語は、別の「コイル」に結合するためのエネルギーをワイヤレスに出力または受信することができる構成要素を指すことが意図される。コイルは、電力をワイヤレスに出力または受信するように構成されるタイプの「アンテナ」と呼ぶこともできる。本明細書で使用する場合、コイル204および216は、電力をワイヤレスに出力、ワイヤレスに受信、および/またはワイヤレスに中継するように構成されるタイプの「電力伝達構成要素」の例である。ループ(たとえば、多巻きループ)アンテナは、空芯、またはフェライトコアなどの物理的コアを含むように構成され得る。空芯ループアンテナにより、コアエリア内に他の構成要素を配置することが可能になり得る。強磁性材料またはフェリ磁性材料を含む物理的コアアンテナにより、より強い電磁場の生成および結合の改善が可能になり得る。
【0039】
上述のように、送信機と受信機との間のエネルギーの効率的な伝達は、送信機と受信機との間に整合した共振またはほぼ整合した共振が生じている間に行われる。しかしながら、送信機と受信機との間の共振が整合しないときでも、効率性を下げてエネルギーを伝達することができる。エネルギーの伝達は、送信誘導コイルからのエネルギーを自由空間に伝播するのではなく、送信誘導コイルの近距離場からのエネルギーを、この近距離場が確立された領域内(たとえば、共振周波数の所定の周波数範囲内または近距離場領域の所定の距離内)に存在する受信誘導コイルに結合することによって生じる。
【0040】
共振周波数は、上述した誘導コイル(たとえば、基地システム誘導コイル204)を含む送信回路のインダクタンスおよびキャパシタンスに基づき得る。
図2に示すように、インダクタンスは概して、誘導コイルのインダクタンスであってよく、一方でキャパシタンスは、所望の共振周波数で共振構造を形成するために誘導コイルに追加され得る。非限定的な例として、
図2に示すように、キャパシタが、電磁場を生成する共振回路(たとえば、基地システム送信回路206)を形成するために誘導コイルと直列に追加され得る。したがって、より大きい直径の誘導コイルでは、共振を誘起するために必要なキャパシタンスの値は、コイルの直径またはインダクタンスが増加するにつれて減少してよい。インダクタンスはまた、誘導コイルの巻数に左右され得る。さらに、誘導コイルの直径が増加するにつれて、近距離場の効率的なエネルギー伝達面積が増加してよい。他の共振回路も考えられる。別の非限定的な例として、誘導コイルの2つの端子間に並列にキャパシタを配置してよい(たとえば、並列共振回路)。さらに、誘導コイルは、誘導コイルの共振を改善するための高品質(Q)係数を有するように設計され得る。たとえば、Q係数は300以上であり得る。
【0041】
上述のように、いくつかの実施形態によれば、互いの近距離場にある2つの誘導コイルの間の電力結合が開示されている。上述のように、近距離場は、電磁場が存在する誘導コイルの周りの領域に対応し得るが、誘導コイルから伝播または放射することはない場合がある。近距離場結合モード領域は、通常は波長のごく一部の中にある、誘導コイルの物理容積に近い容積に対応し得る。いくつかの実施形態によれば、1回巻きまたは多巻きループアンテナなどの電磁誘導コイルは、送信と受信の両方に使用され、その理由は、実際の実施形態における磁気近距離場振幅は、電気タイプアンテナ(たとえば、小さいダイポール)の電気近距離場と比較して、磁気タイプコイルの場合に高い傾向があることにある。これにより、ペア間の潜在的により高い結合が可能になる。さらに、「電気」アンテナ(たとえば、ダイポールおよびモノポール)または磁気アンテナと電気アンテナとの組合せが使用され得る。
【0042】
図3は、
図1のワイヤレス電力伝達システム300の例示的なコア構成要素および補助構成要素を示す別の機能ブロック図である。ワイヤレス電力伝達システム300は、通信リンク376、案内リンク366、および基地システム誘導コイル304および電気車両誘導コイル316のための位置合わせシステム352、354を示している。
図2に関して上述したように、電気車両112へのエネルギーフローを仮定すると、
図3では、基地充電システム電力インターフェース354は、ACまたはDC電源126などの電源からの電力を充電システム電力変換器336に提供するように構成され得る。基地充電システム電力変換器336は、基地充電システム電力インターフェース354からACまたはDC電力を受信して、基地システム誘導コイル304をその共振周波数においてまたはその共振周波数近くで励磁することができる。電気車両誘導コイル316は、近距離場結合モード領域にあるとき、近距離場結合モード領域からエネルギーを受信して、共振周波数においてまたは共振周波数近くで発振することができる。電気車両電力変換器338は、電気車両誘導コイル316からの発振信号を、電気車両電力インターフェースを介してバッテリーに充電するのに適した電力信号に変換する。
【0043】
基地ワイヤレス充電システム302は基地充電システムコントローラ342を含み、電気車両充電システム314は電気車両コントローラ344を含む。基地充電システムコントローラ342は、たとえば、コンピュータ、および電力分配センター、またはスマート電力網などの他のシステム(図示せず)への基地充電システム通信インターフェース162を含むことができる。電気車両コントローラ344は、たとえば、車両搭載コンピュータ、他のバッテリー充電コントローラ、車両内の他の電子システム、およびリモート電子システムなどの他のシステム(図示せず)への電気車両通信インターフェースを含み得る。
【0044】
基地充電システムコントローラ342および電気車両コントローラ344は、別個の通信チャネルを有する特定のアプリケーションのためのサブシステムまたはモジュールを含み得る。これらの通信チャネルは、別個の物理チャネルまたは別個の論理チャネルであり得る。非限定的な例として、基地充電位置合わせシステム352は、自律的に、またはオペレータの支援により、基地システム誘導コイル304と電気車両誘導コイル316とをよりしっかりと位置合わせするためのフィードバック機構を提供する通信リンク356を介して、電気車両位置合わせシステム354と通信することができる。同様に、基地充電案内システム362は基地システム誘導コイル304と電気車両誘導コイル316とを位置合わせする際にオペレータを案内するためのフィードバック機構を提供する案内リンクを介して、電気車両案内システム364と通信することができる。さらに、基地ワイヤレス電力充電システム302と電気車両充電システム314との間で他の情報を通信するための基地充電通信システム372および電気車両通信システム374によってサポートされる別個の汎用通信リンク(たとえば、チャネル)があり得る。この情報は、基地ワイヤレス電力充電システム302と電気車両充電システム314の両方の電気車両特性、バッテリー特性、充電ステータス、および電力容量に関する情報、ならびに電気車両112に関する保守および診断データを含み得る。これらの通信チャネルは、たとえば、ブルートゥース(登録商標)、zigbee(登録商標)、セルラーなどの別個の物理通信チャネルであり得る。
【0045】
電気車両コントローラ344は、電気車両主バッテリーの充電および放電を管理するバッテリー管理システム(BMS)(図示せず)、マイクロ波または超音波レーダー原理に基づく駐車支援システム、半自動式駐車動作を実行するように構成されたブレーキシステム、および駐車の正確性を高め、ひいては基地ワイヤレス充電システム102aおよび電気車両充電システム114のうちのいずれかにおける機械的水平誘導コイルの位置合わせの必要性を低減し得る、概ね自動化された駐車「park by wire」を支援するように構成されたハンドルサーボシステム(steering wheel servo system)も含むことができる。さらに、電気車両コントローラ344は、電気車両112の電子機器と通信するように構成され得る。たとえば、電気車両コントローラ344は、視覚的出力デバイス(たとえば、ダッシュボードディスプレイ)、音響/オーディオ出力デバイス(たとえば、ブザー、スピーカー)、機械的入力デバイス(たとえば、キーボード、タッチスクリーン、ポインティングデバイス、たとえば、ジョイスティック、トラックボールなど)、およびオーディオ入力デバイス(たとえば、電子音声認識によるマイクロフォン)と通信するように構成され得る。
【0046】
さらに、ワイヤレス電力伝達システム300は、検出およびセンサシステムを含み得る。たとえば、ワイヤレス電力伝達システム300は、運転手または車両を充電場所に適切に案内するためのシステムとともに使用するセンサ、必要な分離/結合により誘導コイルを相互に位置合わせするためのセンサ、結合を達成するために特定の高さおよび/または位置に電気車両誘導コイル316が移動するのを妨げ得るオブジェクトを検出するためのセンサ、およびシステムの信頼できる無害および安全な動作を実行するためのシステムとともに使用する安全センサを含み得る。たとえば、安全センサは、安全区域を越えてワイヤレス電力誘導コイル104a、116に近づいてくる動物または子供の存在の検出、加熱され得る(誘導加熱)基地システム誘導コイル304に近い金属オブジェクトの検出、基地システム誘導コイル304上の白熱オブジェクトなどの危険な事象の検出、および基地ワイヤレス電力充電システム302および電気車両充電システム314の構成要素の温度監視のためのセンサを含み得る。
【0047】
ワイヤレス電力伝達システム300はまた、有線接続を介したプラグイン充電をサポートすることができる。電気車両112との間で電力を伝達する前に、有線充電ポートが、2つの異なる充電器の出力を一体化し得る。切替回路は、ワイヤレス充電と有線充電ポートを介した充電の両方をサポートするために必要な機能を提供し得る。
【0048】
基地ワイヤレス充電システム302と電気車両充電システム314との間で通信するために、ワイヤレス電力伝達システム300は、帯域内シグナリングとRFデータモデム(たとえば、許可されていない帯域での無線によるイーサネット(登録商標))の両方を使用することができる。帯域外通信は、車両の使用者/所有者への付加価値サービスの提供に十分な帯域幅を提供し得る。ワイヤレス電力キャリアの低深度振幅または位相変調は、干渉を最小限に抑えた帯域内シグナリングシステムとしての働きをし得る。
【0049】
さらに、特定の通信アンテナを使用せずにワイヤレス電力リンクを介して実行される通信もあり得る。たとえば、ワイヤレス電力誘導コイル304および316はまた、ワイヤレス通信送信機としての働きをするように構成され得る。したがって、基地ワイヤレス電力充電システム302のいくつかの実施形態は、ワイヤレス電力経路におけるキーイングタイププロトコルを可能にするためのコントローラ(図示せず)を含むことができる。所定のプロトコルによる所定の間隔での送信電力レベルのキーイング(振幅シフトキーイング)によって、受信機は、送信機からのシリアル通信を検出することができる。基地充電システム電力変換器336は、基地システム誘導コイル304によって生成された近距離場の近傍における作動中の電子車両受信機の有無を検出するための負荷感知回路(図示せず)を含むことができる。例として、負荷感知回路は、基地システム誘導コイル104aによって生成された近距離場の近傍における作動中の受信機の有無によって影響を及ぼされる電力増幅器に流れる電流を監視する。電力増幅器上の負荷に対する変化の検出は、エネルギーを伝送するために発振器を有効にすべきかどうか、作動中の受信機と通信すべきかどうか、またはそれらの組合せを決定する際に使用するために基地充電システムコントローラ342によって監視され得る。
【0050】
ワイヤレス高電力伝達を可能にするために、いくつかの実施形態は、10〜60kHzの範囲内の周波数で電力を伝達するように構成され得る。この低周波数結合は、固体デバイスを使用して達成され得る高効率な電力変換を可能にし得る。加えて、無線システムによる共存問題が他の帯域と比べて少なくなり得る。
【0051】
説明したワイヤレス電力伝達システム100は、再充電可能または交換可能なバッテリーを含む様々な電気車両112で使用され得る。
図4は、例示的な実施形態による、電気車両412に配置された交換可能非接触バッテリーを示す機能ブロック図である。本実施形態では、ワイヤレス電力インターフェース(たとえば、充電器/バッテリーコードレスインターフェース426)を組み込んだ、地中に埋め込まれた充電器(図示せず)から電力を受信し得る電気車両バッテリーユニットにとって、低バッテリー位置は有益であり得る。
図4において、電気車両バッテリーユニットは、再充電可能バッテリーユニットであってよく、バッテリーコンパートメント424に収容されてよい。電気車両バッテリーユニットはワイヤレス電力インターフェース426も提供し、ワイヤレス電力インターフェース426は、共振誘導コイル、電力変換回路、ならびに地上ベースワイヤレス充電ユニットと電気車両バッテリーユニットとの間の効率的かつ安全なワイヤレスエネルギー伝達のために必要な他の制御および通信機能を含む電気車両ワイヤレス電力サブシステム全体を組み込み得る。
【0052】
電気車両誘導コイルは、突き出た部分がないように、および地上/車体の指定間隔が維持され得るように、電気車両バッテリーユニットまたは車体の下側と面一に組み込まれるのが有益であり得る。この構成は、電気車両ワイヤレス電力サブシステム専用の電気車両バッテリーユニット内の何らかの余地を必要とし得る。電気車両バッテリーユニット422はまた、バッテリー/EVコードレスインターフェース428、および非接触電力および電気車両412と
図1に示す基地ワイヤレス充電システム102aとの間の通信を提供する充電器/バッテリーコードレスインターフェース426を含むことができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、
図1を参照すると、基地システム誘導コイル104aおよび電気車両誘導コイル116は固定位置にあってよく、これらの誘導コイルは、基地ワイヤレス充電システム102aに対する電気車両誘導コイル116の全体的配置によって近距離場結合領域内に置かれる。しかしながら、エネルギー伝達を迅速、効率的および安全に実行するために、基地システム誘導コイル104aと電気車両誘導コイル116との間の距離は、結合を改善するために短縮される必要があり得る。したがって、いくつかの実施形態では、基地システム誘導コイル104aおよび/または電気車両誘導コイル116は、それらの位置合わせを改善するように配置可能および/または移動可能であり得る。
【0054】
図5A、
図5B、
図5C、および
図5Dは、例示的な実施形態による、バッテリーに対する誘導コイルおよびフェライト材料の配置に関する例示的な構成の図である。
図5Aは、完全なフェライト埋込み型誘導コイル536aを示している。ワイヤレス電力誘導コイルは、フェライト材料538aおよびフェライト材料538aの辺りに巻かれたコイル536aを含むことができる。コイル536a自体は、標準的なリッツワイヤから作られ得る。導電性シールド532aは、車両の同乗者を過剰なEMFトランスミッションから保護するために提供される。導電性シールディングは、プラスチックまたは複合物から作られた車両では特に有益であり得る。
【0055】
図5Bは、結合を高めるための、および導電性シールド532bにおける渦電流(熱放散)を減らすための最適に寸法決定されたフェライトプレート(すなわち、フェライトバッキング)を示している。コイル536bは、非導電性の非磁性(たとえば、プラスチック)材料に完全に埋め込まれ得る。たとえば、
図5A〜
図5Dに示すように、コイル536bは、保護筐体534bに埋め込まれ得る。磁気結合とフェライトヒステリシス損との間のトレードオフの結果として、コイル536bとフェライト材料538bとの間に分離があり得る。
【0056】
図5Cは、コイル536c(たとえば、銅リッツワイヤ多巻きコイル)が横(「X」)方向で移動可能であり得る別の実施形態を示している。
図5Dは、誘導コイルモジュールが下方向に配置される別の実施形態を示している。いくつかの実施形態では、バッテリーユニットは、ワイヤレス電力インターフェースの一部として、配置可能な電気車両誘導コイルモジュール542dおよび配置不可能な電気車両誘導コイルモジュール542dのうちの1つを含む。磁場がバッテリー空間530dに、また車両の内部に浸透するのを防ぐために、バッテリー空間530dと車両との間に導電性シールド532d(たとえば、銅板)があり得る。さらに、導電性シールド532d、コイル536d、およびフェライト材料538dを環境の影響(たとえば、機械的損傷、酸化など)から保護するために、非導電性(たとえば、プラスチック)保護層534dが使用され得る。さらに、コイル536dは、横X方向および/またはY方向で移動可能であり得る。
図5Dは、電気車両誘導コイルモジュール542dがバッテリーユニット本体に対して下方Z方向に配置された一実施形態を示している。
【0057】
この配置可能な電気車両誘導コイルモジュール542dの設計は、電気車両誘導コイルモジュール542dに導電性シールディングがないことを除いて、
図5Bの設計と同様である。導電性シールド532dは、バッテリーユニット本体に付帯している。電気車両誘導コイルモジュール542dが配置状態にないときに、保護層534d(たとえば、プラスチック層)は、導電性シールド532dと電気車両誘導コイルモジュール542dとの間に提供される。電気車両誘導コイルモジュール542dをバッテリーユニット本体から物理的に分離することで、誘導コイルのパフォーマンスに好ましい影響が生じ得る。
【0058】
上述したように、配置された電気車両誘導コイルモジュール542dは、コイル536d(たとえば、リッツワイヤ)およびフェライト材料538dのみを含むことがある。フェライトバッキングは、結合を高めるために、および車体の底面または導電性シールド532dにおける過剰な渦電流損から保護するために提供され得る。さらに、電気車両誘導コイルモジュール542dは、電力変換電子機器およびセンサ電子機器への柔軟なワイヤ接続を含み得る。このワイヤ束は、電気車両誘導コイルモジュール542dを配置するための機械ギアに組み込まれ得る。
【0059】
図1を参照すると、上述の充電システムは、電気車両112を充電するために、または電力網に戻す形で電力を伝達するために、様々な場所で使用され得る。たとえば、電力の伝達は、駐車場環境で生じることがある。「駐車エリア」は、本明細書で「駐車スペース」と呼ばれることもあることに留意されたい。車両ワイヤレス電力伝達システム100の効率性を高めるために、電気車両112は、電気車両112内の電気車両誘導コイル116が関連駐車スペース内の基地ワイヤレス充電システム102aと適切に位置合わせできるようにX方向およびY方向に沿って位置合わせされ得る。
【0060】
さらに、開示する実施形態は、1つまたは複数の駐車スペースまたは駐車エリアを有する駐車場に適用可能であり、駐車場内の少なくとも1つの駐車スペースは基地ワイヤレス充電システム102aを含むことができる。案内システム(図示せず)を使用して、電気車両112内の電気車両誘導コイル116が基地ワイヤレス充電システム102aと位置合わせされるように、車両オペレータが電気車両112を駐車エリアに位置付けるのを支援することができる。案内システムは、電気車両112内の電気車両誘導コイル116が充電基地(たとえば、基地ワイヤレス充電システム102a)内の充電誘導コイルと適切に位置合わせできるように、電気車両オペレータが電気車両112を位置付けるのを支援するための、電子ベースの手法(たとえば、無線位置付け、方向発見原理、ならびに/または光学、準光学および/もしくは超音波感知方法)または機械ベースの手法(たとえば、車輪ガイド、トラックまたはストップ)またはそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0061】
上記で説明したように、電気車両充電システム114は、電力を送信し、かつ基地ワイヤレス充電システム102aから電力を受信するために、電気車両112の下面に配置され得る。たとえば、電気車両誘導コイル116は、好ましくは中心位置の近くで車体底面に組み込まれてよく、それにより、EM露出に関して最大の安全な距離がもたらされ、電気車両の前進駐車および後進駐車が可能になる。
【0062】
図6は、例示的な実施形態による、電気車両をワイヤレス充電するために使用され得る例示的な周波数を示す周波数スペクトルのチャートである。
図6に示すように、電気車両へのワイヤレス高電力伝達のための潜在的周波数範囲は、3kHz〜30kHz帯域のVLF、いくつかの除外がある30kHz〜150kHz帯域の低LF(ISMなどの用途)、HFの6.78MHz(ITU−R ISM−帯域6.765〜6.795MHz)、HFの13.56MHz(ITU−R ISM−帯域13.553〜13.567)、およびHFの27.12MHz(ITU−R ISM−帯域26.957〜27.283)を含み得る。
【0063】
図7は、例示的な実施形態による、電気車両をワイヤレス充電するのに有用であり得る例示的な周波数および送信距離を示すチャートである。電気車両のワイヤレス充電に有用であり得るいくつかの例示的な送信距離は、約30mm、約75mmおよび約150mmである。いくつかの例示的な周波数は、VLF帯域の約27kHzおよびLF帯域の約135kHzであり得る。
【0064】
本明細書で説明する様々な実施形態の態様は、オブジェクト、たとえば指定領域内の金属オブジェクトの検出を対象とする。本明細書で説明する金属オブジェクトの検出のためのシステムおよび方法は、ワイヤレス電力伝達のための上述したシステムに組み込まれ得る。たとえば、後述するオブジェクトの検出のための実施形態は、エアギャップをはさんだ一次構造から二次構造への電気エネルギーの誘導伝達のための上述したシステムなどのシステムの一部として組み込まれ得る。エネルギーの誘導伝達のための例示的な周波数は、20kHz〜150kHzの範囲内にあり得るが、この周波数範囲に限定されない。より詳細には、オブジェクトの検出のための実施形態および本明細書で説明する方法の1つの適用例は、静止電気道路車両の誘導充電であり、特に、地上に磁気構造(充電パッド)があり、車両の下側(車体の底面)にピックアップパッドが取り付けられた実施形態である。他の適用例は、移動中の電気車両の誘導電力供給または充電(動的充電)、ポータブル電気および電子デバイスの誘導充電、誘導加熱または強い交番磁場を生成する任意の他のシステムであり得る。
【0065】
その上、いくつかの実施形態はワイヤレス電力伝達システムに使用され得るが、本明細書で説明する様々な実施形態は、交番磁場を生成するシステムとは関係ない、所定の空間において金属オブジェクトを検出するための他の適用場面に適用可能であり得ることを諒解されたい。たとえば、本明細書で説明する実施形態の態様は、所定の空間から除去された金属オブジェクトを検出するための盗難防止検出器、セキュリティシステム、品質保証システム、電子商品監視、電子商品管理などで使用され得る。
【0066】
本明細書では以下の頭文字が使用され得る。
EMF 電磁場
FOD 外来オブジェクト検出
HF 高周波数
IF 中間周波数
LF 低周波数
LMS 最小平均2乗
MTBF 平均故障間隔
MUX マルチプレクサ
NCO 数値制御発振器
PCB プリント回路板
PSTN 公衆交換電話網
PWB プリント配線板
SNR 信号対雑音比
【0067】
本明細書で説明する原理、方法および実施形態のいくつかの記述は、電気車両(EV)またはハイブリッド電気車両(HEV)の誘導充電を指しており、この文脈で考慮されなければならない。基本原理のいくつかは、上述のように他の適用場面にも有益であり得る。ただし、実施形態を修正して、これらの適用場面の特定の要件に適合させてよい。
【0068】
誘導充電に関して、エネルギー伝達レート(電力レベル)、動作周波数、一次磁気構造および二次磁気構造のサイズおよび設計、ならびにそれらの間の距離に応じて、いくつかの場所でのエアギャップにおける束密度は0.5mTを上回ることがあり、数ミリテスラに達することもある。ある量の導電性の良い材料(たとえば、金属)を含むオブジェクトが一次構造と二次構造との間の空間に挿入された場合、このオブジェクトに渦電流が生成され(レンツの法則)、それが電力散逸およびその後の加熱効果をもたらすことがある。この誘導加熱効果は、磁束密度、交番磁場の周波数、オブジェクトの導電性構造のサイズ、形状、方位および導電率に依存する。オブジェクトは、十分に長い時間にわたって磁場にさらされたとき、以下に関して危険と考えられ得る温度まで加熱することがある。
・オブジェクトが可燃材料を含んでいる場合、またはオブジェクトがそのような材料、たとえば薄い金属化箔を含むシガレットパッケージと直接接触している場合に、自己発火、
・そのような熱いオブジェクト、たとえばコインまたは鍵を取る人の手が焼けること、または
・一次構造または二次構造のプラスチック筐体、たとえばプラスチックに溶け込んだオブジェクトの損傷。
【0069】
実質的に非導電性であり得る強磁性体を含むが、顕著なヒステリシス効果を示すオブジェクトにおいて、またはヒステリシスと渦電流損の両方をもたらす材料において、温度上昇も予想され得る。したがって、そのようなオブジェクトを検出することは、対応する有害な結果を回避するために有益である。ワイヤレス電力を提供するためのシステムの中にオブジェクト検出システムが組み込まれている場合、有害なオブジェクトを検出したことに応答して、システムは、有害なオブジェクトを除去するための措置が講じられるまで、電力レベルを低減するか、またはシャットダウンすることができる。
【0070】
家庭内または公的なゾーンにおける電気車両の充電などの誘導電力伝達のいくつかの適用場面では、人々および機器の安全のために、臨界温度まで加熱する可能性を有する外来オブジェクトを検出できることは必須であり得る。これは、臨界空間が開かれていてアクセス可能であるために、外来オブジェクトがこの空間に偶然入り込むこと、または意図的に置かれる(たとえば、妨害行為の場合)ことがあるシステムに特に当てはまり得る。
【0071】
たとえば、電気道路車両の誘導充電に関するドイツのVDE/DKEガイドライン(VDE−AR−E 2122−4−2 Elektrische Ausrustung von Elektro−Strasenfahrzeugen−Induktive Ladung von Elektrofahrzeugen−Teil 4−2:Niedriger Leistungsbereich)(以下「VDE−AR−E」)(非特許文献1)はたとえば、誘導充電システムの機能し得る空間における熱的効果の保護限度を定義している。これらの限度は、低電圧電気設備に関する国際規格(IEC 60364−4−42:2010−05「Low−voltage electrical installations−Part 4−42:Protection for safety − Protection against thermal effects」)(非特許文献2)に従って選択されている。ドイツのガイドラインVDE−AR−Eはまた、準拠テストに使用される参照オブジェクト、たとえば5セントのユーロコインおよびアルミニウム被覆箔を定めている。
【0072】
本明細書で説明する実施形態は、所定の空間に位置し得る以下の危険な外来オブジェクト(たとえば、「金属オブジェクト」)を自動的に検出することを対象とする。特に、いくつかの実施形態は、磁束密度が特定の値(たとえば、0.5mT)を上回り得る一次磁気構造または二次磁気構造の表面に隣接して位置する小さい金属オブジェクト(たとえば、コイン)を検出することを対象とする。
【0073】
金属検出は、産業、軍事およびセキュリティに関係する様々な分野において多くの適用場面を有する。金属検出器は、たとえば、地雷除去(地雷の検出)、たとえば空港警備でのナイフおよび銃などの武器の検出、地球物理学的調査、考古学、および宝さがしに使用される。金属検出器はまた、食品の中の外来オブジェクトを検出するために、および建設業界では、コンクリートの中の鉄筋ならびに壁および床に埋められたパイプおよびワイヤを検出するために使用される。
【0074】
多くのアプリケーションにおいて、金属検出器は、それらのセンサおよび回路を頻繁に再較正することによって、必要な高感度を達成する。これらのアプリケーションでは、金属オブジェクトの存在は、ユーザ入力に基づく再較正のプロセス中に除外され得る。対照的に、高電力誘導充電アプリケーションは、概ね自動的に、自律的に、および無人で動作する必要があり得る。したがって、様々な実施形態のいくつかの態様は、大幅な再較正を必要とせずに数年にわたって固有の検出感度および安定性を実現するように構成されたオブジェクト検出システムを対象とする。
【0075】
可視光および/または赤外線短波で感応するカメラを使用する(Conductix−Wampfler、Abschlussbericht zum Verbundvorhaben「Kabelloses Laden von Elektrofahrzeugen」、im Rahmen des FuE−Programms「Forderung von Forschung und Entwicklung im Bereich der Elektromobilitat」、Weil am Rhein、2011年10月(以下「Conductix−Wampfler」)(非特許文献3)に記述されている)受動的光学感知が、所定のエリアにおいて外来オブジェクトを検出するために使用され得る。概して「金属オブジェクト」はこの波長範囲において特有の特性を有しないので、この方法は、十分な選択力を提供しないことがあり、その結果、危険性を表さないものを含め、任意の外来オブジェクトが検出されることになる。これは、システムのユーザにとって望ましくない場合がある。その上、光学センサは、車両の下で予想されるような、通常は強い汚染および機械的影響による損傷のリスクがある厳しい環境において特にふさわしいとは限らない。自動クリーニングなどのような特別な保護措置が必要とされ得る。
【0076】
可視または短波IR範囲において光信号を発することによる外来オブジェクトの能動的光学感知が実現され得る。この技法は、Ringbeck,T、Hagebeuker,B.「A 3D time of flight camera for object detection」、Optical 3−D Measurement Techniques、ETH Zurich、Plenary Session 1:Range Imaging I、2007年7月9〜12日(以下「Rinkbeck」)(非特許文献4)に記述されている飛行時間測距技法に基づく3Dカメラとともに使用される。能動的光学感知を使用しても、エネルギー伝達パッドの表面にある小さくて薄いオブジェクト(たとえば、コイン)を分解することができない場合もある。さらに、受動的光学感知の場合と同様に、この方法は、金属オブジェクトと非金属オブジェクトとを区別することができないことがある。光学波長で不明瞭に見える任意のオブジェクトが検出され得る。
【0077】
危険なオブジェクトは、臨界温度まで加熱する可能性を有するオブジェクトであるので、Conductix−Wampflerに記述されている熱感知は、環境要因を無視する別の手法である。1つのソリューションは、エネルギー伝達パッドの筐体に温度センサを組み込むことによって達成され得る。小さくて熱いオブジェクトを局所化するために、たとえば30mmのラスタサイズの高センサ密度がもたらされ得る。センサは、機械的に保護される必要があるので、プラスチック筐体の十分に深いところに埋め込まれることがあり、それにより、それらの感度が低下し、熱伝搬遅延によりそれらの検出レイテンシが増大することがある。そのような手法は、高い点火リスクを有するオブジェクト、たとえば薄い金属化紙箔の検出では、緩慢で望ましくないことがある。
【0078】
Conductix−Wampflerに記述され、国際公開第2011/006876号(Wechlin M.、Green, A. (Conductix−Wampfler AG)、「Device for the inductive transfer of electric energy」)(特許文献1)に記述されている焦電受動型赤外線(PIR:pyro−electric passive infrared)センサの使用は、代替的な熱感知ソリューションを提供することができる。人の動きによって人を検出するために通常使用されるこれらのセンサは、100℃未満の温度にあるオブジェクトの場合に放射線スペクトル密度が最大となる(ウィーンの法則)長波IR範囲において感応的である。単位面積当たりのセンサの数とコストとの間のトレードオフの結果として、PIRセンサアレイは、わずか20mmのオブジェクトを電気車両誘導充電パッドなどのより大きいエリア上で検出するための十分な空間分解能を提供しないことがある。これは、たとえば車両が充電のために駐車する前に生じていることのある日光照射によるパッドの加熱の場合に、外来オブジェクトとパッド表面との間の温度差が小さくなっている場合に特に当てはまり得る。感度が限られていること以外に、このソリューションは汚染および機械的影響に弱いことがある。
【0079】
ボロメータ型フォーカルアレイ(bolometer focal array)に基づくConductix−Wampflerに記述されているIRカメラは、最適波長範囲において十分な分解能を提供することができる。ただし、これらのカメラはコストがかかることがある。これは、たとえば車両の下の設置に適した厳しい設計に特に当てはまり得る。そのようなカメラは、熱検出が使用されておらず、車両が移動している場合に閉じている機械的シャッターなどの特別な保護措置を必要とし得る。追加として、小さいワイパーを使用したIRレンズ保護ウィンドウの自動的クリーニングまたは同様の概念が必要とされ得る。さらに、車両下部取り付けカメラは、臨界空間全体を監視するには好ましくない画角を有することがあり、最低地上高さを考慮しなければならない場合にカメラを取り付けるには限られた空間を有することがある。カメラが磁気構造の近くに取り付けられた場合に、カスタマイズされた超広角IRレンズが必要とされることがあり、またはカメラが、景色が非常に遠近法的に見える距離で取り付けられ、商用オフザシェルフボロメータアレイとあまり整合しない場合に、高分解能(多数のピクセル)が必要とされることがある。
【0080】
Conductix−Wampflerに記述された音響感知は、外来オブジェクトを検出するための代替手法であり得る。音響感知は、レーダーの原理を使用して、超音波信号を発し、受信された応答を分析することによって、能動的に実行され得る。たとえば200kHzを超える超音波周波数は、小さくて薄いオブジェクト、たとえばエネルギー伝達パッドの表面にあるコインの存在を検出するための十分な分解能を提供し得る。ただし、ある密度のオブジェクトすべてが検出され、それによりフォールスアラームを起こしやすいことがある。
【0081】
超音波レーダーとは反対に、Conductix−Wampflerに記述されている受動的音響感知は、金属オブジェクトを選択的に検出する可能性を有する。導電性オブジェクトは、強い磁場にさらされると、磁気構造の動いている電荷(電流)および外来オブジェクトの動いている電荷(渦電流)の間で生じる力のために、振動し始める。これらの力は、レンツの法則およびローレンツ力によって説明され得る。これらの力は交番磁場の第1の高調波(二重周波数)で交互に起こる。20kHzを超える磁場周波数の場合、これらのアコースティックエミッションは超音波範囲内で40kHzを超えることがある。したがって、金属オブジェクトは、それらのアコースティックエミッションによって、二重周波数で、またはさらにはその高調波で検出され得る。磁気構造全体がその周波数で振動しているので、小さいオブジェクトの存在を検出するために高空間分解能が提供され得る。これは、多数のトランスデューサを必要とするフェーズドアレイ技術を使用して超音波周波数で達成され得る。誘導加熱および許容できない渦電流損のために、パッドの表面にセンサを組み込むのが難しい場合もある。センサは、たとえばConductix−Wampflerで示唆されているように車両パッドの周囲に沿って配列される必要があり得るが、このソリューションは小さいオブジェクトを確実に検出するために十分な分解能をもたらさない可能性が高い。光学およびIRセンサの場合と同様に、超音波トランスデューサは、汚染および機械的影響による損傷に見舞われやすい。
【0082】
Conductix−Wampflerに記述されている容量性感知は、電場感知に基づく手法である。容量性感知はタッチスクリーンで使用される。容量性センサアレイは、たとえば漏洩電場を生成する薄い開ループワイヤ構造を使用して達成され得る。このワイヤ構造は、パッドのプラスチック筐体に埋め込まれ得る。光学感知の場合と同様に、容量性感知は金属の選択的検出を実現することができない。容量性感知は、電場ひいてはキャパシタンスを変えるあらゆるオブジェクトを感知し得る。これは、導電性材料および非導電性誘電材料、たとえば小石、湿った葉などを含む。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、磁場を介して感知され得るオブジェクトは、潜在的に危険なオブジェクトであり得るので、磁場に基づく誘導感知が使用されるのが好ましいことがある。磁場感知は、導電性および強磁性オブジェクトに対して非常に選択的であり得る。磁場が準定常状態にあると考えられ得る周波数、たとえば20MHz未満では、非導電性誘電材料との相互作用は実質的になく、導電性が悪い材料、たとえば塩分の多い水、または水でぬれた紙、湿った木および葉などとの相互作用はほとんどないことがある。
【0084】
場合によっては、範囲が限られているために、小さいオブジェクトを検出するのが多少難しいことがある。より小さいオブジェクトが、センサに極めて近接している場合に検出される場合もある。オブジェクトが検出される必要がある空間には、より小さいオブジェクトが検出できない場所があり得る。これは、機械的保護および頑健性の理由により、磁場センサがエネルギー伝達パッドの筐体に組み込まれる場合に特に当てはまる。
【0085】
国際公開第2011/006758号(Wechlin, M.、Green, A. (Conductix−Wampfler AG)、「Device for the inductive transfer of electric energy」)(以下「Wechlin」)(特許文献2)は、一次インダクタンスと二次インダクタンスとの間の所定の空間内に位置する金属オブジェクトの存在を検出するためのデバイスを開示している。これは、インダクタンスを測定するための少なくとも1つのユニット、測定インダクタンスのインピーダンスを測定するための測定ユニットおよび測定ユニットに接続された評価ユニットを有する。
【0086】
Wechlinによれば、測定インダクタンスは一次インダクタンスに類似していることがあり、一次インダクタンスは、金属オブジェクトを検出するために使用される。これは、たとえばオブジェクトが大きくなると、必要な検出感度が低くなるソリューションに適用可能であり得る。たとえば一次構造よりもはるかに小さいオブジェクトの場合に検出感度を上げるために、測定インダクタンスのサイズが低減され得る。
【0087】
Wechlinの感知デバイスは、複数のより小さい測定インダクタンスを備えてよく、これらの測定インダクタンスは、1つの平面にほぼ広がる規則的2次元配列を形成する。平面は、動作中に一次インダクタンスによって生成された磁場の主たる方向に直角に置かれる。コストの低減および作成の容易化の点で、これらの測定インダクタンスは共通基板(たとえば、多層PCB)上の平面コイルであり得る。コイルパッケージング密度(コイル重複)の増大を実現することに関して、Wechlinは、等しいラスタサイズを有するが、第1のアレイに対してラスタサイズの半分のオフセットを有する二次コイルアレイの組み込みについて説明している。
【0088】
Wechlinはまた、測定インダクタンスが連結されてグループを形成し、グループごとにインピーダンス測定ユニットがあることを述べている。別の実施形態では、Wechlinは、アレイ全体に共通するインピーダンス測定ユニットについて述べている。本実施形態では、インピーダンス測定ユニットは、単一の測定インダクタンスまたは測定インダクタンスのグループにアナログマルチプレクサ(スイッチ)を介して接続され得る。
【0089】
Wechlinで述べられている評価ユニットは、測定されたインピーダンス値を事前記憶された参照値と比較し、所定の値を上回る偏差を示す出力を提供する。これらの出力が制御ユニットおよびインジケータデバイスにつながって、光学または音響警報信号を出力することができる。制御ユニットはまた、誘導エネルギー伝達を非アクティブ化するためのコマンドを出力することができる。
【0090】
Conductix−Wampflerでは、導電性オブジェクトまたは磁化可能オブジェクトを検出するための代替方法について説明されている。この方法は、一次構造の上部に配置されたいくつかの測定コイルを使用する。本方法では、金属オブジェクトまたは強磁性オブジェクトの検出は、それらが一次構造の表面に存在するときに磁場を変更するか、または混乱させる効果に基づく。Conductix−Wampflerは、誘導電力送信周波数でコイルの各々に誘起された電圧を測定することについて述べている。Conductix−Wampflerはまた、この方法がxおよびyの変位に敏感であることを示しており、これは、二次構造対一次構造の変位(位置合わせオフセット)を指しているとみられるが、それを明確には指していない。
【0091】
Conductix−Wampflerはまた、「trafo」と呼ばれる別の方法について説明している。「trafo」方法は、共振トランスフォーマを形成する1MHz近くの周波数に合わせられた容量性装荷コイルを使用する。トランスフォーマコイル上に置かれた金属オブジェクトは、場ひいては送信電力を変える。
【0092】
図8Aは、一実施形態による、感知ループ822aに誘起された電圧を測定することを通してオブジェクト824aを検出するように構成された例示的なオブジェクト検出回路の一部分の図である。様々な実施形態によれば、感知ループ822aは、たとえば感度を上げるための多巻きループ(コイル)であり得る。ループの近傍に置かれた金属オブジェクト824aにおける渦電流は、ループを通る磁束ひいては誘起電圧を変える。磁場B
exは、動作周波数で誘導エネルギー伝達のために生成された外部場である。たとえば、基地システム誘導コイル104aは磁場B
exを生成し得る。一般に感知ループ誘起電圧は、オブジェクトの電気特性および磁気特性に応じて振幅と位相の両方が変化する。
【0093】
図8Bは、一実施形態による、感知ループインピーダンスを測定することを通してオブジェクト824bを検出するように構成された例示的なオブジェクト検出回路の一部分の別の図である。一般に、感知ループ822bは多巻きループ(コイル)であり得る。ループインピーダンスを測定するために、小さい高周波感知電流I
senseが感知ループ822bに注入される。ループの近傍にある金属オブジェクト824bは、感知ループ電流I
senseによって生成された磁束を変え、ひいてはループのインダクタンスおよび抵抗(インピーダンスの虚部および実部)を変える。
【0094】
外部磁場(たとえば、ワイヤレスエネルギー伝達のために提供された別の磁場)の基本波および高調波による干渉を回避するために、外部磁場とは異なる周波数がインピーダンス測定に使用され得る。
【0095】
図8Cは、一実施形態による、一次感知ループ構造822cと二次感知ループ構造822dとの間の結合インピーダンスまたは相互インピーダンス(相互インダクタンス)を測定することを通してオブジェクト824cを検出するように構成された例示的なオブジェクト検出回路の一部分のさらに別の図である。一般に、感知ループ822cおよび822dは多巻きループ(コイル)であり得る。一次ループ822cに小さい高周波電流を注入し、二次ループにおける開回路電圧(振幅および位相)を測定することによって、相互インダクタンスまたは相互インピーダンスの変化が感知され得る。代替として、二次ループは抵抗装荷型であってよく、負荷へのエネルギー伝達が測定される。ここで、金属オブジェクトは、一次ループ電流I
senseによって生成され、二次ループを通っている磁束を変え、ひいては一般に虚部および実部を有する相互インピーダンスを変える。
【0096】
相互インピーダンス方法は、ループ誘起電圧方法として理解されることもあるが、相違点として、(たとえば、ワイヤレス電力伝達に使用される)外部磁場は、たとえばエネルギー伝達に使用される外部磁場の周波数とは異なる周波数で専用一次感知ループ822cによる金属検出の目的で特に生成された磁場に取って代わられる。一次ループは、保護されるエリア全体またはエリアの実質的部分をカバーし得る。
【0097】
[誘導感知]
いくつかの実施形態のいくつかの態様によれば、誘導感知または磁場感知はたとえば以下のようないくつかの利点をもたらすことができる。
・誘導感知は導電性の良い(金属)オブジェクトに対してかなり選択的であり得る。
・他の非金属(誘電性)オブジェクトによる障害が予想されない。
・パフォーマンスを少し劣化させてセンサを環境の影響(汚染、機械的影響)から保護するために、エネルギー伝達パッドのプラスチック筐体に誘導感知回路が組み込まれ得る。
・たいていの場合、基地パッドの表面にオブジェクトが置かれていることがあるので、充電基地に誘導感知回路が組み込まれ得る。これにより、車載機器のコスト削減が可能になり得る。
【0098】
[誘導感知を改良するための方法および概念]
上述のように、大きいループは、保護されるエリアよりもはるかに小さいことがあるコイン、鍵または飲料用缶の蓋を検出するために必要な十分に高い感度をもたらさないことがある。様々な実施形態によれば、小さいオブジェクトを検出するために、様々な実施形態による複数のより小さいループが使用され得る。
【0099】
図9は、例示的な実施形態による、ワイヤレス充電パッド926内に埋め込まれた感知ループ922の側面図であり、感知ループ922は、オブジェクト924を検出するように構成されている。パッドはプラスチック筐体928を有しており、平面感知ループ922を保持し、パッド926の表面上のどこかに置かれたオブジェクトを検出するように構成され得る。充電パッド926は、
図1〜
図3を参照して上述したように基地システム誘導コイル104a(
図1)および関連回路をさらに含むことができ、パッド926上のオブジェクトを検出するように構成され得る。パッド構成のさらなる例が
図5A〜
図5Dに示されている。
【0100】
センサの本質的感度は、最も小さいオブジェクト(参照オブジェクト)が最悪ケースの位置に置かれた場合にそのオブジェクトの存在によって引き起こされた測定量(たとえば、ループ誘起電圧、ループインピーダンス)の変化率として定義され得る。外来オブジェクト検出器の全体的感度は、センサの本質的感度に依存し、たとえば評価ユニットの一部であり得る追加の後処理方法のパフォーマンスに依存する。
【0101】
ループサイズよりも小さいオブジェクトの場合、本質的感度は、ループサイズの縮小に伴って高まる。ループサイズの縮小は、所与のエリアをカバーするのに必要なループの数が増大し、結果的に、複雑性およびコストが増大すること、ならびにフォールスアラームおよび障害の確率が高まることを暗示している。
【0102】
いくつかの実施形態によれば、本質的感度と回路の複雑性との間の適切なトレードオフが、検出される最小オブジェクトのサイズに等しいか、またはその2倍であるループラスタサイズで達成され得る。たとえば、最小オブジェクトが直径20mmのコインである場合、適切なループラスタサイズは30mmであり得る。これは、ループ誘起電圧方法とループインピーダンス方法の両方に当てはまり得る。
【0103】
図10は、例示的な実施形態による、感知ループ1022に対して様々な部分に位置するオブジェクト1024を検出するための例示的なオブジェクト検出回路の一部分の図である。一例として、
図10は、方形ワイヤループ1022上の様々な位置に置かれた(たとえば、直径25mmおよび厚さ1.7mmの)コイン1024を使用して、40kHzによるループ誘起電圧の変化をパーセントで示すことができる。ループは、3回巻きの薄いエナメル銅線から作られ得る。
図9に示すように磁気パッド926のプラスチック筐体928にループアレイを将来組み込むことも考えられ、そのループ構造よりも上の高所にコインは置かれ得る。たとえば、感知ループ1022の左上隅にオブジェクト1024が置かれたとき、ループ誘起電圧のパーセントによる変化は、たとえばマイナス6パーセント程度であり得る。感知ループ1022の中心にオブジェクト1024が置かれたとき、ループ誘起電圧のパーセントによる変化は、たとえばマイナス22パーセント程度であり得る。感知ループ1022の右上隅に向かってオブジェクト1024が置かれたとき、ループ誘起電圧のパーセントによる変化は、たとえばマイナス15パーセント程度であり得る。これらの値は、オブジェクト1024が様々な位置に位置するときのループ誘起電圧のパーセントによる変化の相対的度合いを示すために提供されており、例にすぎない。
【0104】
同様に、
図10に示す構成では様々な位置について、ループインピーダンスの変化ももたらされ得る。オブジェクト1024の場合、測定されたインピーダンスの変化は、実質的にその変化したインダクタンスに起因する変化である。たとえば、感知ループ1022の左上隅にオブジェクト1024が置かれたとき、ループインピーダンスのパーセントによる変化は、たとえばマイナス2パーセント程度であり得る。感知ループ1022の中心にオブジェクト1024が置かれたとき、ループインピーダンスのパーセントによる変化は、たとえばマイナス8パーセント程度であり得る。感知ループ1022の右上隅に向かってオブジェクト1024が置かれたとき、ループインピーダンスのパーセントによる変化は、たとえばマイナス5パーセント程度であり得る。これらの値は、オブジェクト1024が様々な位置に位置するときのループインピーダンスのパーセントによる変化の相対的度合いを示すために提供されており、例にすぎない。
【0105】
誘導ループ方法は、相対的に高い本質的感度を示すが、隣接する磁気パッドの変動する位置(オフセットおよび距離)、車体の底面構造または導電性接地によって引き起こされた磁場の大きい変化に対処する必要があり得る。これらの影響を考慮する必要があり得る。
【0106】
一方、ループインピーダンス方法は、相対的に低い本質的感度を示すが、その金属および強磁性環境の変化に対する感度も低くなり得る。誘導ループ方法とは反対に、その感度は、接続リードを介して測定された場合に若干劣化し得る。ループアレイのサイズおよびインピーダンスアナライザの場所に応じて、インピーダンスアナライザが磁気パッド926に組み込まれると仮定すると、考えられる最悪ケースのリードの長さは1mであり得る。
【0107】
両方の方法において、オブジェクト924は、ループ922の中心に置かれた場合に最強の影響を有し、端、特に隅に置かれた場合に最弱の影響を有し得る。しかしながら、「端」および「隅」の位置の場合、ループのアレイを仮定すると、インピーダンス/誘起電圧が隣接ループで変化することもある。様々な実施形態によれば、隣接ループの同時変化を後処理で用いて、全体の検出感度を改善することができる。
【0108】
[感知ループの形状、方位およびパッキング]
図11A、
図11Bおよび
図11Cは、例示的な実施形態による、オブジェクトを検出するように構成された感知ループのための様々な例示的な構成の図である。たとえば
図11Aに示されているような図示の重複ループ1122aおよび1122bのアレイ1122を使用することで、誘導センサシステムの本質的感度が改善し得る。この構成では、ループ1122aおよび1122bはアレイのラスタサイズよりも多少大きい。
図11Aに示すようにループを重ねることで、最良ケースの感度(ループの中心にあるコイン)を犠牲にして最悪ケースの感度が改善する。重複は、感知ループアレイ1122における感度の小波を低減する。プリント回路板を使用する実施形態の場合、行および列の重複は、たとえば、少なくとも4つの銅層を使用し得る。
【0109】
本質的感度の変動は、ラスタサイズよりも若干大きいループをx方向とy方向の両方で等しく寸法決定することによって等化され得る。非重複エリアに対する重複エリアの比率は、0.5〜2の範囲内であってよく、これは様々な利益をもたらし得る。
【0110】
様々な実施形態によれば、ループ1122aおよび1122bは、正方形または長方形を使用する代わりに、円形、六角形、三角形であり得る。ループアレイ1122では、密に詰まった六角形ループは、プリント回路板中に実装されるときに、より少ない数の銅層を必要とする非重複構造により感度の改善をもたらし得る。
【0111】
その上、ループのサイズ、形状またはラスタサイズは局所的感度要件に適合され得る。磁束密度が局所的に変動する表面上では、たとえば、熱的効果の可能性が低下し、そのため感度要件が緩和されるエリア/ゾーンが存在することがある。これらのさほど臨界的ではないエリアは、感度、配線および回路の複雑性のトレードオフにより、より大きいループが配置され得る。
【0112】
ループインピーダンス測定方法では、
図11Bに示す二重ループ、三重ループ(クローバー葉形)、さらには四重ループなどの他のループトポロジーが、感知電流によって駆動されているときに1つの極エリアから別の極エリアに磁束アーチを生成する。
図11Bは、感知電流方向を示す二重ループ1122cのトポロジーを示している。これらの構造は、たとえば優勢水平場成分が金属オブジェクトを検出するために有用である適用場面において、検出性能の最適化に使用され得る。
【0113】
異なる方位の磁場を生成する構造の組合せ(たとえば、二重ループと単一ループ)は、90°の位相オフセットで駆動されている場合に回転磁気ベクトル場を生成する。いくつかの適用例では、そのような円形または楕円形の偏波界(polarized field)の使用が検出性能の改善につながることもある。
【0114】
一実施形態によれば、ループ誘起電圧方法の本質的感度は、ワイヤループ922を通る束が実質的にゼロになるように磁場線に実質的に平行である平面でワイヤループ922を使用することによって大幅に増大し得る。充電パッド926の筐体に組み込むために、
図11Cに示すようなロープロファイルソレノイドコイル1122は、磁場の方向に実質的に平行な平面にあり得る。
【0115】
小さい金属オブジェクトでも、磁場線の方向を変えるときにループを通る束を劇的に引き起こし得る。概してこの場合にループ誘起電圧の位相は、外部磁場に対するオフセットである。すでに上で述べたように、この位相オフセットは、オブジェクトの電気特性および磁気特性に依存する。導電性オブジェクトは、強磁性オブジェクトとは異なる位相シフトをもたらす。
【0116】
しかしながら、磁気パッドが変位した場合またはパッド電流が変わった場合に、束の増大および位相シフトが見られることもある。共振誘導エネルギー伝達は、一次電流と二次電流との間の90°位相シフトによって特徴付けられる。これが感知電圧において位相シフトを引き起こすこともある。
【0117】
いくつかの実施形態によれば、直交ループシステム(実質的に直角の平面にあるループ、たとえば平面コイルおよびソレノイド)を使用することで、ループ誘起電圧方法の感度を高めることもできる。金属オブジェクトは一般に周囲の磁場の方向を変え得るので、直交ループ構成による束成分の感知は、検出器のパフォーマンスを改善するための追加情報を提供することができる。
【0118】
その上、たとえば二重D字構成におけるループのペアを使用する誘導平衡は、たとえば地雷の検出に使用されるような、金属検出器で実施される技法である。平衡は、較正プロセスを継続的に実行することによって維持される。外来オブジェクトは、2つのコイルを通る束をわずかに変化させ得る。一般にこの変化は2つのループにおいて等しくなく、そのため一時的にブリッジの平衡が失われることがある。この方法は、磁場が他の要因により変化していることのある状況に敏感であり得る。
【0119】
誘導平衡は、
図8Aのループインピーダンスまたは
図8Cの2つの結合ループを使用する相互インピーダンス方法に基づいて達成されることもある。後者の場合、一次ループ822cによって生成された束が二次ループ822dにおいて事実上または実質的に無効になる(ゼロ結合)ような方法でループ822cおよび822dが位置付けられ得る。これらのループ822cおよび822dの敏感なエリアにオブジェクトが置かれているとき、二次を通る束の平衡が失われ、ひいては結合が劇的に増大する。パッドの磁気構造がシステムの平衡を失わせることもある。プリント回路板レイアウトでこれらの影響を考慮しても、ソリューションは、製作公差に対して極めて敏感であり得る。
【0120】
感知ループにおける短絡という起こりそうにない事象が生じた場合に、過剰な加熱およびPWBの損傷という結果を回避するために、ループのヒューズを飛ばすことができる。ヒューズは、意図的に薄いワイヤまたは薄いPWBトレースを使用して、または電気抵抗の増大が許容できない場合は、定められた場所でPWBトレースに減衰を挿入することによって達成され得る。
【0121】
[磁場感知を向上させるための方法]
図12は、例示的な実施形態による、磁場感知に基づいてオブジェクトを検出するように構成された例示的な回路1200の機能ブロック図である。本セクションでは、磁気構造、たとえば所定のエリアにある充電パッド926によって生成された磁場(束密度)を感知することに基づく金属オブジェクト検出器のパフォーマンスを向上させるための実施形態について説明する。充電パッド926は、
図1〜
図3を参照して上述した充電システムに対応し得る。回路1200は、いくつかの感知ループ1222a、1222b、1222c、および1222d(本明細書では以下まとめて感知ループ1222と呼ぶ)を含むことができる。感知ループ1222は、金属オブジェクトが検出され得る保護されるエリアをカバーする密に詰まったループのアレイの一部を形成することができる。上述のように、オブジェクト924の検出は、感知ループ1222に誘起された電圧を測定することによって達成され得る。回路1200は、マルチプレクサ1228を介して感知ループ1222の各々に選択的に結合する検出回路1230を含む。検出回路1230は、感知ループ1222の各々の磁場強度を測定するように構成された磁場測定ユニット1234を含む。比較器1236および判定器1238を含む評価ユニット1232に、感知ループの測定値B
kが提供される。比較器は、磁場測定値B
kを受信し、値B
kを磁場参照値B
ref,kと比較する。磁場参照値は、検出されたオブジェクトがまったくない場合の感知ループ1222aの磁場の期待値に対応し得る。比較器1236の出力に基づいて、判定器1238はオブジェクトが存在するかどうかを判断するように構成される。たとえば、判定器1238は、測定値B
kと参照値との間の差がしきい値よりも大きいと判断し、応答してオブジェクトが検出されたことを示す信号を出力することがある。判定器1238はさらに、増大する結果に影響を与え得る既知の動作特性に基づいて、比較器の出力を補償することができる。
【0122】
代替として、
図12の回路に関して、巨大磁気抵抗(GMR)効果または磁場を感知するのに適した任意の他の方法に基づくホール効果センサのアレイまたはセンサが使用され得る。
【0123】
個別に磁場ベクトルのx成分、y成分およびz成分のうちの少なくとも1つを感知することも有益であり得る。
【0124】
図12の回路による実施形態は、たとえば車両ピックアップパッドの存在および様々な垂直位置および水平位置(様々な位置合わせオフセット)にあり得る車体の金属底面構造に起因する時間的変化(摂動、歪み)が生じる基地パッド表面に磁場がある使用事例に有益であり得る。評価は、最小平均2乗誤差基準に基づいてよく、検出器の評価ユニット1232に導入され得る。他の誤差メトリクスおよび反復プロセスを使用する他のより洗練された方法、たとえばRANSAC(ランダムサンプルコンセンサス方法)も使用され得る。
【0125】
オブジェクトを検出するための例示的なプロセスは、次のように公式化され得る。
【0126】
磁気充電パッドの表面に存在するときに磁場パターンに対し小さい影響(歪み、摂動、乱れ)を及ぼしている小さい金属オブジェクトを発見する。この場パターンは、不均一な磁気構造(コイル、フェライト)に起因する束密度の強い変動のほか、車両パッドの様々な位置および車体の金属底面構造に起因する時間的変動(歪み)を示し得る。たとえば、著しい場歪みおよびパッド位置合わせオフセットによる他の影響があり得る。
【0127】
しかしながら、小さい金属オブジェクト(たとえば、特に、ループごとの本質的感度がより低い4つ程度の隣接ループに置かれている場合のコイン)がパッド926の表面上の磁場に及ぼす影響は、位置合わせオフセットに起因する場歪みと比較して小さいことがある。そのような場合、磁束密度パターンに対する影響は小さいことがある。
【0128】
しかしながら、オブジェクト924の影響は、オブジェクト924がない状況で測定された場パターン(参照場パターン)をオブジェクトがある状況で測定された場パターンから差し引くことによって見えるようになり得る。
【0129】
場合によってはそれは、参照パターンに対して歪められた磁場パターンでオブジェクト924が検出されなければならない場合には難しいことがある。ゼロオフセット状況で、かつ定められたエアギャップ距離で較正手順の一部として参照パターンを取って、システムに記憶することができる。しかしながらオブジェクトは、現実的な使用事例となるように様々な状況で検出されなければならないことがある。差分場パターンを計算する方法は、場合によっては、オブジェクトの影響よりもはるかに大きくなり得るオフセット状況における磁場歪みに起因する誤差により、十分ではないことがあり、より洗練された方法が求められる。
【0130】
したがって、一実施形態によれば、改善された検出方法は次のように最小平均2乗手法に基づき得る。
定義:
B
ref(x
i,y
j):たとえば、外来オブジェクト検出システムに記憶され、工場の生産で所定の状況において較正によって取得される束密度参照値(x方向およびy方向に広がる参照場パターン)
【0132】
:現実的シナリオで、たとえばオフセットおよび異なるエアギャップ距離が存在する状況で測定される束密度実効値(歪められた場パターン)
γ(x
i,y
i;a
1,a
2,...,a
L):実際の場パターンにおける歪み効果を補償する複数のパラメータを有する補正関数。最も単純な場合、この関数は、z−オフセットならびにx−傾きおよびy−傾きがパラメータa
1,a
2,a
3によって変更され得る平面であり得る。
【0133】
本方法は、実際に測定された場値に補正関数を適用し、束密度参照値を差し引いた後に生じる場差分値の平均2乗誤差を計算することを含み得る。
【0135】
さらに、方法は、パラメータセットa
1,a
2,...,a
Lの最適値を判断し、平均2乗誤差を最小化することを含み得る。
【0137】
本方法は、最適パラメータを有する補正関数を測定された場パターンに適用し、得られたLMS差分パターンに対してオブジェクト検出を実行することをさらに含む。
【0139】
以下の判定ルールが適用され得る。
・少なくとも1つの束密度差分値が所定のしきい値を上回った場合の仮説「オブジェクトあり」。
・仮説:それ以外の場合、「オブジェクトなし」。
【0140】
この方法は、単一の参照パターンB
ref(x
i,y
i)の代わりに参照パターンのセットを使用することによって大幅に改善され得る。これらの参照パターンは、工場において実行される較正手順の一部として異なるオフセットおよびエアギャップ状況で取得されていることがある。最小平均2乗誤差をもたらす参照パターンが、差分場パターンを計算するために選択される。
【0141】
最小平均2乗方法は、大きい金属オブジェクトが存在する状況では、予想される方法で機能しないことがある。そのような大きい金属オブジェクトは容易に認識できるので、最小平均2乗方法は条件付きで使用されるか、または相応に適合され得る。
【0142】
[ループインピーダンス感知方法を向上させるための代替概念]
ここで、ループインピーダンスベースの金属オブジェクト検出器のパフォーマンスを改善し、かつ/または配線および回路の複雑性を低減するいくつかの方法および実施形態についてさらに説明する。これらは特に、
・共振ループのアレイを使用し、それらの共振周波数を測定して金属オブジェクトを感知する。
・たとえば、誘導結合または容量結合のいずれかを使用する弱結合共振ループを使用する。
・信号伝搬媒体としての働きをする結合共振器フィルタを形成する誘導結合共振ループまたは容量結合共振ループの標準的構造を使用する。
【0143】
[共振ループおよびそれらの共振周波数の測定]
図13は、例示的な実施形態による、感知ループインピーダンス測定に基づいてオブジェクトを検出するように構成された例示的な回路1300の機能ブロック図である。回路1300は、いくつかの感知ループ1322a、1322b、1322c、および1322d(本明細書では以下まとめて感知ループ1322と呼ぶ)を含むことができる。感知ループ1322は、金属オブジェクトが検出され得る保護されるエリアをカバーする密に詰まったワイヤループのアレイの一部を形成することができる。回路1300は、マルチプレクサ1328を介して感知ループ1322の各々に選択的に結合する検出回路1330を含む。検出回路1330は、インピーダンス測定ユニット1334を含む。マルチプレクサポートにおけるインピーダンスZ
kは、インピーダンス測定ユニット1334を介して連続的および周期的にマルチプレクサ1328によって選択されたループ1322ごとに測定される。比較器1336および判定器1338を含む評価ユニット1332に、感知ループの測定値Z^
kが提供される。比較器1336によって示されるように、k=1...Nにおいてインピーダンス測定値Z^
kからインピーダンス参照値Z
ref,kを差し引くことによって生じる差分インピーダンスに基づいてオブジェクト924が検出される。判定器ユニット1338は、比較器1336から入力を受信し、オブジェクトが検出されているかどうかを判断する。たとえば、測定値と参照値との間の差がしきい値を上回り、たとえば最小平均2乗方法に関して上述した機能のいずれかを組み込む場合。
【0144】
図14Aは、一実施形態による、感知ループ共振周波数測定に基づいてオブジェクト924を検出するように構成された例示的な回路1400Aの機能ブロック図である。回路1400Aは、ループインピーダンスを測定して共振周波数を判断することに基づいてオブジェクト924を検出するように構成され得る。回路1400Aは、感知ループ1422A−aおよび1422A−bを含む。感知ループはインダクタンスLを有し得る。本明細書で使用するように、感知ループ1422A−aは感知回路と呼ばれるか、または感知回路として構成され得る。感知ループ1422A−aおよび1422A−bは、結合回路1426Aを介して検出回路1430Aに結合される。結合回路1426Aならびに感知ループ1422A−aおよび1422A−bの何らかの組合せが共振回路を形成する。たとえば、一実施形態では、感知ループ1422A−aおよび1422A−bは、特定の周波数で共振するように構成された共振回路を形成するために、無効分(たとえば、キャパシタ)を含む。別の実施形態では、結合回路1426Aは、特定の周波数で共振するように構成された共振回路を形成するために、感知ループ1422A−aおよび1422A−bの各々に電気的に結合された無効分を含む。直列同調または並列同調のいずれかが使用され得る。共振回路の構成の例示的な実施形態について以下で説明する。少なくとも各感知ループ1422A−aおよび1422A−bによって形成された共振回路の周波数が同じである実施形態もあれば、かかる周波数が異なる実施形態もある。結合回路1426Aは、感知ループ1422A−aおよび1422A−bの各々を検出回路1430Aに選択的に結合するためのマルチプレクサを含むことができる。結合回路1426Aは、オブジェクトがない場合に検出回路1430Aによる感知ループ1422A−aおよび1422A−bの共振周波数の変動を低減するように構成される。
【0145】
検出回路1430Aは、たとえばシステムの一部としての参照用テーブルに記憶された参照/較正値に対する各感知ループ1422A−aおよび1422A−bの共振周波数の変化に基づいてオブジェクトを検出するように構成される。たとえば、検出回路1430Aは、それぞれ感知ループ1422A−aおよび1422A−bの第1および第2の共振周波数に依存する第1および第2の特性を測定するように構成され得る。検出回路1430Aは、第1の測定された特性と第1の共振周波数に依存する対応する特性との間の差または第2の測定された特性と第2の共振周波数に依存する対応する特性との間の差を検出したことに応答して、オブジェクトの存在を検出するように構成される。特性は、測定された共振周波数、Q係数、または感知ループ1422A−aが共振している周波数が判断される際に元になる他の特性であり得る。さらに、複数の感知ループ1422A−aおよび1422A−bの使用により、検出回路は、感知ループ1422A−aおよび1422A−bのうちの少なくとも1つに対するオブジェクト924の位置を検出することが可能になり得る。感知ループ1422A−aおよび1422A−bは、たとえば保護されるワイヤレス充電パッド926のエリアをカバーする平面形式に配列された密に詰まった感知ループのアレイの一部であり得る。感知ループ1422A−aおよび1422A−bを含む感知ループの各々は、検出回路1430Aに選択的に結合されてよく、所定の空間において検出されるオブジェクト924の位置情報の判断を可能にし得る。
【0146】
図14Bは、一実施形態による、感知ループ共振周波数測定に基づいてオブジェクト924を検出するように構成された例示的な回路1400Bの機能ブロック図である。回路1400Bは、感知ループ1422B−aおよび1422B−bを含む。感知ループはインダクタンスLを有し得る。
図14Aと比較して、感知ループ1422B−aおよび1422B−bは、各感知ループ1422B−aおよび1422B−bが共振回路を形成するようにキャパシタC1およびC2などの無効分を含む。直列同調または並列同調のいずれかが使用され得る。感知ループ1422B−aおよび1422B−bは、結合回路1426Bを介して検出回路1430Bに結合される。
図14Bに示す実施形態によれば、結合回路1426Bは共振回路の一部を形成しないことがある。少なくとも各感知ループ1422B−aおよび1422B−bによって形成された共振回路の周波数が同じである実施形態もあれば、かかる周波数が異なる実施形態もある。結合回路1426Bは、オブジェクトがない場合に検出回路1430Bによる感知ループ1422B−aおよび1422B−bの共振周波数の変動を低減するように構成される。検出回路1430Bは、
図14Aの検出回路1430Aと同様に機能し得る。
【0147】
ループインピーダンスおよび特に共振周波数を測定するために、好ましくはメガヘルツの範囲で電力をワイヤレス伝達するために使用される交番磁場の周波数よりもはるかに高い周波数が使用され得る。しかしながら、誘電オブジェクトに対する感度が低く維持されなければならない場合には、感知周波数は高すぎてはならず、たとえば20MHz未満であり得る。
【0148】
図15は、例示的な実施形態による、感知ループ共振周波数測定に基づいてオブジェクト924を検出するように構成された例示的な回路1500の別の機能ブロック図である。回路は、感知ループのアレイの一部であり得る感知ループ1522a、1522b、1522cおよび1522d(本明細書では以下まとめて感知ループ1522と呼ぶ)を含むことができる。いくつかの実施形態では、感知ループ1522は実質的に、保護される所定のエリアに共通の平面を画定するように構成され得る。感知ループ1522は検出回路1530に、共振周波数測定ユニット1534および評価ユニット1532を含む検出回路1530に感知ループ1522の各々を選択的に結合するように構成されたマルチプレクサ1528を介して結合される。共振周波数測定ユニット1534は、共振周波数測定ユニット1534に結合された感知ループ1522aが、特定の共振周波数で共振するように構成された共振回路を形成するように、キャパシタCを含む。
図14Aを参照すると、結合回路1426Aはマルチプレクサ1528と各共振回路を形成するためにすべての感知ループ1522によって共有されるキャパシタCを含む共振周波数測定ユニット1534とを含み得ることに留意されたい。共振周波数測定ユニット1534は、周波数範囲で結合感知ループ1522aを駆動して感知ループ1522aに特定の周波数で共振させるように構成された発振器1546を含む。共振周波数測定ユニット1534は、測定された電圧と電流との間の位相(たとえば位相関数のゼロ交差)を検出するように構成された位相比較器1548をさらに含む。さらに、利得/フィルタ1550も含まれ得る。
【0149】
共振周波数測定ユニット1534の出力は、検出回路1530の評価ユニット1532に提供される、感知ループ1522aの測定された共振周波数に対応し得る。評価ユニット1532は、感知ループ1522aの受信された共振周波数測定値を周波数参照値と比較するように構成された比較器1536を含む。比較器1536の出力は、オブジェクト924が検出されたかどうかを測定値と参照値との間の差に少なくとも部分的に基づいて判断するように構成された判定器1538に提供される。複数のループ1522からの情報を組み合わせることで、検出されるオブジェクト924に関する位置情報を判断することが可能になり得る。さらに、以下でさらに説明するように、評価ユニット1532は、外来オブジェクト以外の条件に起因して測定された共振周波数に影響を与え得る動作条件を補償するための感知温度入力を受信することができる。
【0150】
いくつかの態様では、
図14および
図15に関して説明し、さらには以下(たとえば
図16)で説明する共振ループ方法は、少なくとも以下を含む様々な利益をもたらし得る。
・共振周波数の測定は、インピーダンスまたはインダクタンスの測定よりも単純および正確であり得る。検出回路1430または1530は、構成要素がより少なく、いくつかの態様では、発振器および測定された電圧と電流との間の位相、たとえば位相関数のゼロ交差を検出する位相比較器を使用することに限定されることがある。
・パッドの表面に存在するときにワイヤレス電力伝達に使用される強い交番磁場によって誘起された電圧およびその高調波雑音を抑制するためにキャパシタがすでに提供されていることもある。したがって、キャパシタの追加がさらなる複雑性をもたらすことはない。共振は、ループ1522aが金属オブジェクトによって離調されている場合に、やはり相応に動く感知信号事前調整(雑音低減)フィルタとしての働きをすることができる。
・キャパシタの温度の変動または経年変化は、すべての共振周波数に共通の影響を与えることがあり、そのため、評価ユニットで容易に推定し訂正することができる(以下のセクション参照)。
【0151】
図16は、例示的な実施形態による、感知ループ共振周波数測定に基づいてオブジェクトを検出するように構成された例示的な回路1600のさらに別の機能ブロック図である。感知ループ1622a、1622b、1622cおよび1622dの各々は共振キャパシタに電気的に結合されている。
図14Aを参照すると、結合回路1426AがキャパシタC
Nを含み得ることに留意されたい。したがって、各共振回路は、結合回路1426AのキャパシタC
Nおよび対応する感知ループ1622aを含む。キャパシタC
Nは、マルチプレクサ1628および検出回路1630のさらなる回路による共振周波数の変動を低減するように構成される。たとえば、各キャパシタC
1、C
2、C
kおよびC
Nは、共振周波数よりも低い周波数を減衰させる(たとえば、ワイヤレス電力伝達に使用される場の周波数に対応する周波数を減衰させる)ように構成された低域フィルタになるように構成される。キャパシタはさらに、マルチプレクサ1628を含む検出回路1630の構成要素と感知ループとの間の隔離をもたらす。
図16に示すさらなる構成要素は、
図15に関して上述した構成要素と同様である。
図15および
図16の検出回路1530および1630ならびに後述する他の検出回路を参照すると、検出回路1530および1630は、感知ループを含む共振回路の各々の共振周波数に依存するか、または共振周波数の関数である特性を測定するように構成され得ることに留意されたい。たとえば、各共振回路が共振する周波数を測定することに加えて、Q係数または他の特性を測定し、記憶された対応するQ係数またはネイティブ共振回路(すなわち、外部要素によって変更されていない)の他の対応する特性と比較して、オブジェクトの存在を判断することができる。
【0152】
いくつかの態様では、
図16に示す実施形態は追加の利益をもたらし得る。たとえば、各ループ1622のキャパシタンスは、多重化する前にパッドの表面上に強い磁場によって誘起された低周波成分を除去し、それにより、好ましくは半導体(FET)型スイッチを使用するアナログフロントエンド回路に対する要件を緩和することができる。数ボルトに達し得る誘起された低周波数の結果として、アナログマルチプレクサ1628で非線形歪み効果が生じ得ることを諒解されたい。これは、本質的検出感度を高める一方で誘起電圧も高める多巻きループに特に当てはまる。各キャパシタは、マルチプレクサ1628によって引き起こされ得る共振周波数の変動を低減することができる。
【0153】
一態様では、ループの共振周波数の温度変動は等しくなく、各感知ループに固有であることがあり、そのため評価ユニットで査定し補償するのがより難しくなり得る。温度安定性が高いキャパシタ、たとえばNP0型を使用することで、温度変動は最小化され、概ね感知ループの温度変動まで低減され得る。
【0154】
図15を参照すると(さらに
図16にも当てはまる)、共振周波数を測定するための高周波発振器1546は、数値制御発振器(NCO)であり得る。追加信号1550増幅器は、ループに十分な感知電流を生成するために、またバッファとして低インピーダンス出力(電圧源のような出力)を提供するために必要とされ得る。低インピーダンス出力は、感知ループ回路のQ係数ひいては共振における位相関数の傾きを保持するのに有利であり得る(以下参照)。
【0155】
それぞれ少なくとも1つの電圧および1つの電流センサ1544および1542が、共振周波数測定ユニット1534の入力ポートで見られるような感知ループ1522aのインピーダンスまたは位相関数を分析するための入力を提供するために使用される。
【0156】
一実施形態では、位相比較器1548は、たとえば、狭帯域低中間周波数(IF)増幅器に至る感知信号を混ぜ、IFで位相比較を実行することによって、ヘテロダイン受信機手法を実施し得る。この手法は、信号対雑音比ひいては測定精度を上げるために選択され得る。
【0157】
共振周波数探索が掃引周波数生成器(swept frequency generator)によって、発振器1546を使用して、たとえば関係する感知ループの予想共振周波数よりも多少低い周波数で開始し、差分位相が所定の値に達したときに掃引を停止する形で実行され得る。検出プロセスを促進し、応答時間を最小化するために、特に大きいセンサアレイの場合に、開始周波数を、評価ユニット1532で使用される参照値から導出して、掃引範囲を最小化し、それによりループごとの感知時間を最小化することができる。
【0158】
掃引周波数生成器の代わりに、インパルス生成器(図示せず)または任意の他の擬似ランダム雑音生成器を使用して、インピーダンス関数を解析し、共振周波数を測定することができる。スペクトル解析技法、たとえばフーリエ変換技法(DFT、FFT、Gortzelアルゴリズム)および数字ドメインで動作する同様の技法が使用され得る。これらの技法は、適切なアナログデジタル変換器を使用した感知信号(電圧および電流)のサンプリングおよびデジタル化を必要とし得る。
【0159】
エネルギー伝達システムによって生成される場合のある感知ループ誘導一時雑音を抑制するために、掃引またはパルシングが、低周波スイッチング過渡現象の間の間隔で実行され得る。この方法は、追加のフィルタ処理要件なしに雑音を効果的に低減することができる。
【0160】
図13〜
図16に関して説明し、ここでさらに説明する実施形態は、周囲温度の変化に対する安定性を高めるために、温度センサ(図示せず)を様々な場所で、たとえば(ループセンサアレイの下の)充電パッドで、およびインピーダンス測定ユニットで追加することによって改良され得る。環境的要件、たとえば−30〜+80℃が、屋外充電パッドに組み込まれた金属オブジェクト検出ソリューションに適用され得ることに留意されたい。様々なセンサから測定された温度を使用して、温度モデルを使用してインピーダンスまたは共振周波数の測定値を事前補償することができる。代替または追加として、定められた温度範囲で適用可能な様々な記憶された参照値を使用することができる。これらの参照パターンは、様々なパッドおよび周囲温度レベルで較正手順の一部として製造中に生成されていることがある。
【0161】
上述した最小平均2乗方法と概念的に同様の方法を使用して、たとえば温度変動または回路の経年変化に起因する測定されたインピーダンスパターンの「大域的」変化を補償することができる(以下のセクション参照)。
【0162】
さらに、以下でさらに説明するように、パターン認識方法および人工知能を用いて検出性能を高め、フォールスアラーム確率を低減することができる。
【0163】
[共振ループおよびそれらのQ係数の追加測定]
共振周波数測定に基づく検出について記述した
図14〜
図16に関して上述した実施形態は、感知ループ1522aのQ係数を追加的に測定することによってさらに改良され得る。直列同調ループの場合、共振周波数およびQ係数は、
p=−σ
z±jω
z
と表され得るインピーダンス関数Z(f)の複素数「ゼロ」を表し、ここでσ
pおよびω
pは、それぞれ減衰係数および共振周波数を示す。
【0164】
減衰係数は、次のようにQ係数に関係する。
【0166】
ω
zとσ
zの両方を測定することで、検出確率を高め、フォールスアラーム確率を低減するのに有用な追加情報が提供され得る。
【0167】
上のセクションですでに述べた周波数領域および/または時間領域の分析技法を使用してQ係数を測定する多くの方法が存在する。位相の傾きの測定または共振における抵抗の測定は例であり得る。
【0168】
[弱結合共振ループ]
上記のように、いくつかの態様では、感知ループリードおよびアナログマルチプレクサは、ループインピーダンス方法の本質的感度に悪影響を及ぼし得る。これは、小さいループ、たとえば30×30mmの3〜5回巻き、およびリードの長さがたとえば0.5mを超えるものに特に当てはまり得る。ループは、本質的感度の点で好ましくないことがあるワイヤレス電力伝達に使用される強い磁場にさらされたときの著しい渦電流損を回避するために、非常に薄い銅線/トレースから作られ得ることに留意されたい。
【0169】
ループインピーダンス方法の精度は、インピーダンス関数における位相の傾きに関係し、ひいてはループのQ係数に関係する。ループを中央のインピーダンス測定ユニットに接続する長いリードは、抵抗を加えることでQ係数を低下させ、それにより位相の傾きを鈍化させ得る。リードはまた、かなりのインダクタンスを加え得る。オブジェクトは通常はループインダクタンスのみを変化させるので、インピーダンス全体の相対的変化は、リードが長くなるのに伴って小さくなり得る。さらに、感知回路の温度および経年変化の安定性は、長いリードの場合に悪化し得る。
【0170】
温度安定性ならびにセンサの精度および信頼性を低下させる同様の欠陥は、スイッチキャパシタンスおよびかなりの抵抗を加えるアナログマルチプレクサに起因し得る。
【0171】
したがって、上述したループインピーダンス方法および関連ループ共振周波数方法は、アナログマルチプレクサおよびインピーダンス測定ユニットをループアレイにできるだけ近づけて置くことを必要とすることがあり、これは、能動回路が充電パッド926に組み込まれる必要があり得ることを意味する。これは、厳しい環境、地中への埋込み、およびインフラ機器に必要とされるMTBFを考慮すると、困難な設計問題につながることがある。しかしながら、上記のように、いくつかの実装形態では、たとえば
図16に関して示したキャパシタが、検出回路およびマルチプレクサによる共振周波数の変動を低減する結合回路として十分であり得る。
【0172】
感知周波数で感知ループに誘起された高調波雑音は、一般にセンサの精度を損なうこともある。
【0173】
さらなる実施形態によれば、これらの欠点のうちの少なくとも一部は、
図14Aに関して上述した結合回路またはネットワークを使用することによって是正され得る。結合回路1426は、リード線を含む検出回路による、少なくとも感知ループによって形成された共振回路の共振周波数の変動を低減するように構成される。たとえば、一実施形態によれば、弱結合共振ループのアレイが使用され得る。弱結合は一般に、検出回路または検出回路から感知ループまでのリード線が、共振周波数および/または感知ループの他の電気的特性に対する影響を低減するように、またはそれらを変えることを低減するように、感知ループを検出回路に結合することを指し得る。この方法では、ループは、たとえば結合ループを使用して誘導結合されるか、またはたとえば容量性分圧器を使用して容量結合されるかのいずれかであり得る。
図17A、
図17Bおよび
図17Cは、例示的な実施形態による、例示的な弱結合共振感知ループ構成の図である。
図17Aは、結合ループ1726aに誘導結合された共振感知ループ1722aを示している。結合ループ1726は、
図14Aに関して説明した結合回路1426の少なくとも一部分を形成する。結合ループ1726は次いで、以下でさらに説明するように検出回路に結合される。
図17Bは、容量性分圧器を使用して容量結合された共振感知ループ1722bを示している。
図17Cは、自己共振し(たとえば、別個の周波数で共振をもたらす感知ループ1722cの固有キャパシタンス)、結合ループ1726cに誘導結合された感知ループ1722cを示している。
【0174】
誘導結合は主に、追加のキャパシタンスなしに、またはわずかな追加のキャパシタンスで
図17Cに示す自己共振ループを可能にすることができ、これは大幅にループアレイを簡素化し、生産コストを低減することができる。ここで、高いLC比設計またはたとえば20MHzを超えるより高い周波数を必要とする共振を生成するために、巻線キャパシタンスが使用される。自己共振ループはもはや磁気が優勢ではないことがある。自己共振ループは、センサを誘電オブジェクトに敏感にする著しいE場をもたらすことがあり、これは望ましくない場合がある。
【0175】
弱結合は、接続リードおよびマルチプレクサによる共振周波数およびQ係数に対する影響を効果的に低減し、それにより温度および経年変化の安定性を高めることができる。
【0176】
いくつかの態様では、弱結合に基づく実施形態が様々な利益をもたらし得る。共振周波数およびQ係数は主に、感知ループのインダクタンスL、損失抵抗Rおよび同調キャパシタCに依存し得る。したがって、外来オブジェクトによってもたらされる小さい変化は十分に効力を持つことがあり、リードおよびアナログマルチプレクサ回路の無給電素子によって損なわれることはもはやない。共振でインピーダンスアナライザによって見られる位相関数の傾きは、共振ループのみの傾きであることがあり、したがって格段に険しくなり得る。雑音が存在する場合の測定の精度は、測定されたインピーダンス関数で共振が確実に識別され得るように、雑音が比較的小さい限り、大幅に改善し得る。
【0177】
密に詰まったループアレイでは、感知ループの共振周波数は、その直接の近隣によって影響され得る。そのような共振離調さらには共振分割の効果は、近隣ループが同一または同様の周波数で共振する場合に特に顕著であり得る。しかしながら、これらの効果は本方法の感度にそれほど影響を与えないこともある。以下でさらに説明するように、隣接ループの共振周波数を意図的にオフセットすることが有用であり得る。共振周波数が周波数再使用パターンに従って割り当てられ得る。
【0178】
ループは、意図的に、たとえば適切に巻き数、配線の長さを選択し、標準価値系列、たとえばE系列からキャパシタを選択することによって、所望の共振周波数に合わせられ得る。
【0179】
プリント回路板(PCB)実装形態では、キャパシタは、突き出ず、十分に保護されるように、PCBのエポキシに埋め込まれるか、または小さい収納部に取り付けられ得る。
【0180】
弱結合の効果は、誘導結合の場合の以下に示す等価回路を使用して説明され得る。
図18Aおよび
図18Bは、例示的な実施形態による、例示的な誘導結合共振感知ループ1822aの等価回路1800aおよび1800bの概略図である。回路1800aは、(たとえば、結合回路1426Aの一部分を形成し得る)リードインダクタンスL
c、結合ループ/リード損失抵抗R
cを有する結合ループ1826aからなる。キャパシタCcは、低周波磁場誘起電圧を抑制する働きをする。しかしながら、感知周波数において、結合ループ1826aは非共振と考えられ得る。実際の感知ループ1822aは、ループインダクタンスL、損失抵抗Rおよび同調キャパシタCから構成される。
【0181】
図18Bの回路1800bは、上の回路1800aを結合ループ1826bに縮小することによって取得される。ここで、回路1800bは、共振にわたって周波数を掃引するときにインピーダンスZの顕著および急激な変化をもたらす変形された並列同調L−Cトポロジー(L’、C’、R’)として示されている。等価回路1800bから、共振および共振での位相の傾きは主に、感知ループの要素によって決定される。それらは総じて、結合ループのパラメータおよびリードの長さに鈍感である。
【0182】
図19は、例示的な実施形態による、検出回路1930と感知回路1922との間の結合回路1926を使用してオブジェクトを検出するように構成された例示的な回路1900の機能ブロック図である。回路1900は、別個の周波数で共振する(すなわち、キャパシタC2および感知ループが実質的に共振周波数を決定する)ために感知ループおよびキャパシタC2(または自己共振の場合の固有キャパシタンス)を有する感知回路1922を含むことができる。回路1900は、感知回路1922の電流共振周波数に依存する特性を測定するように構成され、測定された特性と共振周波数に依存する対応する参照特性との間の差を検出したことに応答してオブジェクトの存在を検出するように構成された検出回路1930をさらに含む。一例として、検出回路1930は、
図15の検出回路1530に関して上述した構成要素のうちの1つまたは複数を有してよく、共振周波数測定に基づいてオブジェクトを検出するための本明細書で説明する方法および/または技法のうちのいずれかを使用し得る。さらに、回路1900は、検出回路1930による感知回路1922の共振周波数の変動を低減するように構成された結合回路1926を含む。たとえば、一実施形態では、結合回路1926は、感知回路1922と検出回路1930との間の弱結合を提供することができる。
図19の実施形態では、キャパシタC2(または自己キャパシタンス)および感知ループのみが、結合回路1926を含まなくてよい共振感知回路1922を形成する。
【0183】
図20は、例示的な実施形態による、検出回路2030が結合ループ2026を介して感知回路2022と誘導結合された、
図19に示すような回路2000の機能ブロック図である。したがって、
図19の結合回路1926は、検出回路2030に導電接続され、感知ループおよびキャパシタンスC2を含む感知回路2022に誘導結合されたキャパシタンスC1を随意に含む結合ループ2026を含むことができる。別の言い方をすれば、感知回路2022は検出回路2030からガルバニック絶縁される。結合ループ2026の動作は、検出回路2030から結合ループ2026へのリード線を含む検出回路2030による感知回路2022の共振周波数の変動を低減することができる。
【0184】
図21は、例示的な実施形態による、検出回路2130が感知回路2122と容量結合された、
図19に示すような回路2100の機能ブロック図である。回路2100は、結合回路2126を形成するために感知回路2122の間にキャパシタC1およびC2を含む容量性分圧器を含む。(感知ループを含む)感知回路2122の共振周波数が主に小さい方のキャパシタによって定められるように、キャパシタC1およびC2のサイズに差が設けられ得る。キャパシタ分圧器は、検出回路2130または検出回路2130から感知回路2122へのリード線による感知回路2122の共振周波数の変動を低減する。
【0185】
上述の弱結合を使用する実施形態は基本的に、格段に長いリードを許容し得る。これは、充電パッド926における完全に受動的なセンサ回路による、および遠隔に位置するユニット、たとえば充電電源ユニット236(
図2)に組み込まれた能動回路(上述した検出回路などの外来オブジェクト検出電子回路)による実施形態を可能にし得る。
【0186】
一実施形態によれば、インピーダンスアナライザユニットの入力部(測定ポート)でk番目の感知ループの共振周波数を測定するために、検出回路1930によって以下の方法が使用され実施され得る。ただし、上記のように、共振周波数に依存する他の特性が追加的に測定されてよい。
1.十分に大きい周波数範囲で複素インピーダンス関数Z
k(f)を測定する。
2.複素インピーダンス関数を解析することによって、結合ループ/リードインピーダンスを推定する。
3.推定された結合ループ/リードインピーダンス関数Z^
c,k(f)を測定されたインピーダンス関数Z
k(f)から差し引く。
4.得られた差分インピーダンス関数ΔZ
k(f)=Z
k(f)−Z^
c,k(f)において感知ループ1922の共振を識別する。
5.位相関数の対応するゼロ交差arg{ΔZ
k(f)}またはインピーダンス関数の虚部Im{ΔZ
k(f)}の周波数を測定し、かつ/またはループの共振で生成された差分インピーダンス関数の実部Re{ΔZ
k(f)}の極大値の周波数を測定する。
【0187】
すでに上述したように、複素極周波数
p=−σ
p±jω
p
の実部として定義されたQ係数または減衰係数が、弱結合手法に基づく金属オブジェクト検出を向上させるために追加的に測定され得る。
【0188】
配線の複雑性および用意されなければならないアナログスイッチの多さは、多数の感知ループを使用する誘導感知の別の主要問題である。したがって、配線および回路の複雑性を低減する方法が望まれる。これは、パッドにおける純粋に受動的なセンサネットワークおよび遠隔に位置する検出回路によるソリューションが対象とされる場合に特に当てはまり得る。
【0189】
実際、弱結合手法は、単一の/共通の結合ネットワークに各々が関連するグループ(クラスタ)に近隣ループを組み合わせることによって、配線および回路の複雑性を大幅に低減する可能性を有し得る。
【0190】
複数結合共振ループと呼ばれるこの新しい構成は、一般に結合を弱めることがあるが、個別にいくつかのループの各々の共振周波数を明白および正確に判断するために十分な結合をなお提供することができる。
【0191】
図22は、一実施形態による、検出回路2230と複数の感知ループとの間の結合回路を使用してオブジェクトを検出するように構成された例示的な回路2200の機能ブロック図である。回路2200は、各々が結合ループ2226a、2226b、2226cおよび2226dを含むいくつかの結合ネットワーク(たとえば、
図19および
図20に関して上述した結合回路)を含む。結合ループ2226a、2226b、2226cおよび2226dの各々は、感知ループおよびキャパシタンス(たとえば、自己キャパシタンスまたは追加キャパシタのいずれか)を各々が有する複数の感知回路に誘導結合される。たとえば、結合ループ2226aは、感知回路2222a1および2222aN(本明細書では以下まとめて2222と呼ぶ)を含む複数の感知回路を含む結合ネットワークを形成することができる。特定の結合ループ2226aに結合された各感知回路2222の共振周波数を測定するように構成された検出回路2230に結合ネットワークの各々が選択的に結合されるように、結合ループ2226a、2226b、2226cおよび2226dはマルチプレクサ2228に結合される。結合ループ2226a、2226b、2226cおよび2226dは、検出回路2230による各感知回路2222の共振周波数の変動を低減するように各々構成される。検出回路2230は、共振周波数を測定するためのインピーダンスアナライザユニット2234、および測定値を参照値と比較し、感知回路2222を介して感知されたオブジェクトに関する情報を判断するための評価ユニット2232を含む。感知回路2222は、感知回路2222が構成された平面の表面上に置かれたオブジェクトを検出するように構成された平面内のループの密に詰まった多次元アレイを形成することができる。上述のように、検出回路2230は、感知回路2222の各々の共振周波数の関数である他の特性を測定することができる。
【0192】
したがって、
図22に示す実施形態によれば、単一の/共通の結合ネットワークに関連するグループに複数の感知ループが結び付けられる。さらに、感知ループ2222は様々な共振周波数に合わせられて、別個の極およびゼロを有するインピーダンス一端子対回路網(impedance one port network)を形成し、関連する極周波数および/またはゼロ周波数は動作条件の下で区別可能および測定可能である。
【0193】
そのようなネットワークから生じる極およびゼロは、密に詰まったアレイにおいて近隣ループ間で生じ得るすべての交差結合効果(相互インダクタンス)を含む各誘導性要素および容量性要素の非常に複雑な関数であり得る。そのようなループアレイの上に置かれた金属オブジェクトは一般に、極およびゼロの一部を変化させ、この変化は適切な方法を使用して、たとえば、測定された極およびゼロを参照テンプレートと比較して検出され得る。
図22は、結合ループ2226a〜dを介して検出回路に誘導結合された感知回路2222を示すが、別の実施形態によれば、感知回路2222は、
図21に示す概念に基づいて容量結合され得ることを諒解されたい。
【0194】
上述のように、一実施形態では、感知回路2222の各々は、いかなるオブジェクトもない場合に異なる共振周波数を有するように固有に構成され得る。
図23は、例示的な実施形態による、様々な共振周波数を有するように構成された複数の感知回路2322aおよび2322b(各々は感知ループを有する)を使用してオブジェクトを検出するように構成された例示的な回路2300の機能ブロック図である。回路2300は、キャパシタンスC1を有する感知回路2322aおよびC1とは異なり得るキャパシタンスC2を有する感知回路2322bを含む。したがって、各感知回路2322aおよび2322bは、感知回路2322aおよび2322bが共振する特定の周波数を本来的に有することができる。回路2300は、オブジェクトの有無を判断するために感知回路2322aおよび2322bの各々の共振周波数の関数である特性を測定するように構成された検出回路2330を含む。検出回路2330は、たとえば
図13〜
図22に関して上述した技法および構成要素のうちの1つまたは複数を実現し、かつ/または含むことができる。回路2300は、検出回路2330と感知回路2322aおよび2322bとの間で結合された結合回路2326を含む。いくつかの実施形態では、結合回路2326は、リード線を含む検出回路2330による感知回路2322aおよび2322bの共振周波数の変動を低減するように構成される。複数の感知回路2322aおよび2322bを使用することによって、検出システムの感度を高めることができ、結果として検出回路2330は、感知回路2322aおよび2322bの位置に対するオブジェクトの位置を測定するように構成され、それによりシステムは、システム内のオブジェクトの位置を検出することができる。
【0195】
様々な共振周波数を有する感知回路2322aおよび2322bを使用することで、感度を改善し、かつ複雑性を低減することが可能になり得る。たとえば、
図24は、例示的な実施形態による、様々な共振周波数を有する感知回路2422aおよび2422bに検出回路2430が誘導結合された、
図23に示すような回路2400の機能ブロック図である。検出回路2430は、結合ループ2426を駆動するときに感知回路2422aおよび2422bの両方の電流共振周波数を測定するように構成され得る。これは、たとえば、単一の結合ループ2426を駆動することにより多数の感知回路2422aおよび2422bの共振周波数が測定され得るので、複雑性の低減および感度の改善を可能にし得る。
【0196】
結合タイプにかかわらず、結合ネットワークは、グループの各ループへの最適および同様の結合を提供するように構成され得る。
【0197】
一実施形態では、グループの各ループ2222は、外側輪郭/周辺部の線上に少なくとも1つの側面/端を有するそのグループの輪郭/周辺部の一部であり得る。グループは、本質的にそのグループの輪郭/周辺部に沿った結合ループによって取り囲まれ得る。以下の図に示すループの単一の列および二重の列は可能な構成である。結合は、輪郭/周辺部の線上に2つ以上の側面/端を有するそれらのループに関して意図的に低減され得る。これは、結合ループの隅をクロッピングすることによって達成され得る。
【0198】
図25A、
図25B、
図25C、
図25D、
図25Eおよび
図25Fは、例示的な実施形態による、検出回路に誘導結合または容量結合された例示的な構成の感知ループアレイの図である。たとえば、
図25Aに示すように単一のループ結合から、感知ループアレイの一実施形態が導出され得る。
図25Aは、感知ループ2522a1および2522a2を含む感知ループの多次元アレイに誘導結合された結合ループ2526aを含む。
図25Bは、感知ループ2522b1および感知ループ2522b2を含む単一の感知ループの列に結合ループ2526bが誘導結合された別の構成を示している。
図25Cは、感知ループ2522c1および感知ループ2522c2を含む感知ループの行に誘導結合された結合ループ2526の別の実施形態を示している。
図25Cに示す構成は、実質的に等しい結合係数を各感知ループ2522c1および2522c2に提供することもできる。ループの線形の行、蛇行形状または曲がりくねった形状の構成がグループに接続され得る。
【0199】
他の構成、たとえば、感知ループのすべての近傍にあるわけではない結合ループを有するループの三重列は、中央におけるループへの弱結合を示している。一態様では、この技法は、ループアレイが磁気パッドの筐体に組み込まれ、結合ループの中央の磁場がさらに減衰する場合に使用され得る。
【0200】
複数の誘導結合共振ループの概念は、グループおよびサブグループからなる階層(連結)構造に拡大され得る。グループは、結合ループに動作可能に結合された複数の共振ループによって形成され得る。そして、このグループの共振ループは、サブグループ(より低い階層レベル)に属する共振ループのための結合ループとしての働きをすることができ、以下同様である。
【0201】
代替として、
図25Dに示すように容量性分圧器を使用して、単一のフィードライン2526dに複数のループ2522d1および2522d2が容量結合され得る。
図25Dに示す得られるトポロジーは、複数の誘導結合共振ループの電気的に二重のトポロジーと考えられ得る。
図25Dの各感知ループ2522d1および2522d2は、それぞれキャパシタ2525d1および2525d2と直列に結合されて、共振回路が形成される(すなわち、それらは直列同調される)。感知ループ2522d1およびキャパシタ2525d1は実質的に、共振周波数を決定する。すべての感知ループ2522d1および2522d2に共通の結合キャパシタ2527dが、共振キャパシタ2525d1および2525d2と並列に結合されて、容量性分圧器が形成される。一態様では、結合キャパシタ2527dは「より大きい」キャパシタであり、一方で共振キャパシタ2525d1および2525d2の各々は「より小さい」キャパシタである。
図14Aに関して、結合回路1426Aは結合キャパシタ2527dを含むことができ、各感知回路は共振キャパシタ2525d1と直列同調された感知ループ2522d1を含むことができることに留意されたい。
【0202】
図25Eは、一実施形態による、弱結合をもたらすために容量性分圧器を使用する別のトポロジーである。この場合、各感知ループ2522e1および2522e1は、それぞれ共振キャパシタ2525e1および2525e2を使用して並列同調される。感知ループ2522e1および共振キャパシタ2525e1は実質的に、共振周波数を決定する。すべての感知ループ2522e1および2522e2に共通の結合キャパシタ2527eは、共振キャパシタ2525e1および2525e2と直列に結合される。一態様では、結合キャパシタ2527eは「より大きい」キャパシタであり、一方で共振キャパシタ2525e1および2525e2の各々は「より小さい」キャパシタである。
図14Aに関して、結合回路1426Aは結合キャパシタ2527eを含むことができ、各感知回路は共振キャパシタ2525e1と並列同調された感知ループ2522e1を含むことができることに留意されたい。
【0203】
図25Fは、一実施形態による、弱結合をもたらすために容量性分圧器を使用する別のトポロジーである。この場合、各感知ループ2522f1および2522f2は、それぞれ共振キャパシタ2525f1および2525f2を使用して並列同調される。感知ループ2522f1および共振キャパシタ2525f1は実質的に、共振周波数を決定する。結合キャパシタ2527f1および2527f2は、各感知ループ2522f1および2522f2のために、各々がそれぞれ共振キャパシタ2525f1および2525f2と並列に接続されるように含まれる。一態様では、各結合キャパシタ2527f1および2527f2は「より大きい」キャパシタであり、一方で共振キャパシタ2525f1および2525f2の各々は「より小さい」キャパシタである。
図14Aに関して、各々が結合キャパシタ2527f1および2527f2を含む複数の結合回路があってよく、一方で各感知回路は、共振キャパシタ2525e1と並列同調された感知ループ2522e1を含むことができることに留意されたい。
【0204】
他の、たとえば混合結合トポロジーも可能である。
【0205】
図26A、
図26B、
図26C、
図26D、
図26Eおよび
図26Fは、例示的な実施形態による、誘導結合および容量結合された共振ループアレイの例示的な等価回路2600aおよび2600bの概略図である。回路2600aは、低周波数抑制キャパシタCc、結合ループの/リードのインダクタンスL
c、および損失抵抗R
cを含む結合ループ2626aを含む。回路2600aは、L、C、R要素ならびに結合ループと各共振ループとの間の相互インダクタンス(結合係数)を含む複数の感知ループ2622a1および2622a2を含む。他の考えられる交差結合は無視される。
【0206】
すでに上記で説明したように、共振回路2622a1および2622a2は一次側(結合ループ)に縮小され、結果として
図26Bに示すように概ね表され得る等価回路2600bが生じ得る。ここでも、各共振ループ2622a1および2622a2は、インピーダンス関数Z(f)に応答が見られる並列共振回路として現れる。
【0207】
図26Cは、
図25Dに示す感知ループ構成の等価な概略図である。図示のように、インダクタンス2522c1およびキャパシタンス2525c1を含む各感知回路は直列同調され、すべての感知回路は共通の結合キャパシタ2527cに並列に結合される。
図26Dは、
図25Eに示す感知ループ構成の等価な概略図であり、インダクタンス2522d1およびキャパシタンス2525d1を含む各感知回路は並列同調され、各感知回路は共通の結合キャパシタ2527dに直列に結合される。
図26Eは、
図25Fに示す感知ループ構成の等価な概略図であり、インダクタンス2522e1およびキャパシタンス2525e1を含む各感知回路は並列同調され、各結合キャパシタ2527e1および2527e2に並列に結合される。さらに、
図26Fは、別の感知ループ構成の等価な概略図であり、インダクタンス2522f1および2522fならびにキャパシタンス2525f1および2525f2を含む各感知回路は直列同調され、各結合キャパシタ2527f1および2527f2に直列に結合される。上記のトポロジーのうちのいずれかにおいて、自己共振ループに固有の共振キャパシタンスを有する自己共振ループが使用され得るか、または追加共振キャパシタが追加され得ることに留意されたい。
【0208】
一実施形態によれば、検出回路は、インピーダンスアナライザユニット2234(
図22)の入力部(測定ポート)で誘導結合共振感知ループのk番目のアレイ/グループの共振周波数を測定するための以下の方法を実施することができる。ただし、上記のように、共振周波数に依存する他の特性が追加的に測定されてよい。
1.十分に大きい周波数範囲で複素インピーダンス関数Z
k(f)を測定する。
2.複素インピーダンス関数を解析することによって、結合ループ/リードインピーダンスを推定する。
3.インピーダンス関数Z^
c,k(f)を測定されたインピーダンス関数Z
k(f)から差し引く。インピーダンス関数Z^
c,k(f)は、推定された結合ループ/リードインピーダンス関数および以下のステップを最適に実行するために必要な他の補正関数を含み得る。
4.得られた差分インピーダンス関数ΔZ
k(f)=Z
k(f)−Z^
c,k(f)において各感知ループの共振を識別する。
5.位相関数の対応するゼロ交差arg{ΔZ
k(f)}またはインピーダンス関数の虚部Im{ΔZ
k,n(f)}のすべての周波数を測定し、かつ/またはループの共振で生成された差分インピーダンス関数の実部Re{ΔZ
k(f)}の極大値のすべての周波数を測定する。
【0209】
図27は、例示的な実施形態による、結合ループのインピーダンスを補償する前または補償した後の誘導結合共振ループアレイの位相応答を示すプロット2700である。
図27は、推定された結合ループ/リードインピーダンスを差し引き、得られた差分インピーダンス関数の位相関数の共振周波数を測定する手順を示している。
【0210】
同様の方法/手順が容量結合ループアレイに適用され得る。項目5は、Z
k(f)における極大値を探索する代わりに、差分インピーダンス関数の実部Re{ΔZ
k(f)}の極小値に変更され、各感知ループの共振によって生成された極小値を判断する。
【0211】
インピーダンス関数の第1、第2および第3の導関数のうちの少なくとも1つを計算し評価することは、インピーダンス関数Z
k(f)の極/ゼロの位置を識別するのに有用であることもある。
【0212】
上のサブセクションですでに説明したように、インピーダンス関数Z
k(f)の複素極または複素ゼロ
p
k,i=−σ
p,k,i±jω
p,k,iまたはz
k,i=−σ
z,k,i±jω
z,k,i
の実部として定義されるQ係数または減衰係数はそれぞれ、複数結合共振ループ手法に基づく金属オブジェクト検出を向上させるために共振ω
k,iごとに追加的に測定され得る。
【0213】
すでに上述したように、感知ループにスイッチ雑音が誘起され得る。信号対雑音比ひいては共振周波数における測定精度を最大化するために、誘導結合の場合には、Z
k(f)を測定するために電流源のような高周波生成器が使用されてよく、一方で容量結合の場合には、電圧源のような生成器が用いられるのが好ましい。この手法は、最小電流ひいては低い信号対雑音比でインピーダンスを測定するのを回避する。HF源が十分な高電圧を生成するとすれば、結合ループ/リードのインダクタンスは電流源のような特性を模するのにすでに十分であり得る。
【0214】
上述のように、たとえば
図23および
図24に関して、感知ループに共振周波数を割り当てることも行われ得る。同じグループに属する感知ループの共振周波数(極/ゼロ)は、容易に識別できかつ正確に測定できるように、十分および適切に離間されるのが好ましい。この割り当ては、感知ループのQ係数、インピーダンスアナライザ回路の設計制約、帯域幅制約、雑音および環境上の妨害効果、ならびにターゲット磁気パッドに感知ループアレイを組み込んだときに生じ得る離調効果を考慮し得る。
【0215】
たとえば、35×35mmのサイズの感知ループの場合、50〜80の範囲のQ係数が、0.02〜0.013の3dB比帯域幅に対応して達成され得る。たとえば5〜15MHzの範囲で動作している高周波感知システムの場合に1の比帯域幅全体を仮定すると、最大40個程度の共振周波数が割り振られ、たとえば等間隔に離間され得る。これらの共振周波数は、様々なループグループで利用可能な帯域幅を最適に使用しかつ再使用するために、ループおよびループグループに選択的に割り当てられなければならないことがある。グループごとのループの数は、複雑性と検出感度との間のトレードオフの結果であり得る。
【0216】
一実施形態によれば、グループごとのループの数は、利用可能帯域幅の上記の例では20から30の間で変動し得る。したがって、最大30倍までの配線および多重化の複雑性低減が予想され得る。
【0217】
帯域幅の測定は、さらに高い周波数の方へ拡大され得る。しかしながら、誘電オブジェクト(たとえば、水、雪、氷、葉)に対する感度が高まることもあることに留意されたい。この望ましくない影響は、上端周波数(upper edge frequency)に合わせられたそれらの感知ループ/コイルの巻き数を少なくすることによって減少し得る。これにより最終的に1回巻きループとなることがある。多巻きループは、最大Q係数をターゲットとする必要がある場合に、より低い周波数、たとえば10MHz未満において最も適切と考えられる。
【0218】
図28は、例示的な実施形態による、電力をワイヤレスに送信するように構成された誘導充電パッド2802内に組み込まれたオブジェクトを検出するための例示的な装置2800の機能ブロック図である。誘導充電パッド2802は、負荷に電力供給するか、または負荷を充電するのに十分なレベルで磁場を介して電力をワイヤレスに送信するように構成された導電性構造2804(たとえば、
図1に関して上述した誘導コイル104a)を含む。装置2800は、パッド2802の表面にわたって提供され得る、オブジェクトを検出するための感知ループ2822a、2822b(以下2822)のアレイを含む。感知ループ2822のアレイは、ケーブル2850に示されるリード線を介して検出回路2830に複数の感知ループ2822aおよび2822bを誘導結合するように構成されたループ2826のような結合ループを含むことができる。検出回路2830は、充電電源ユニット2836内に組み込まれ得る。
図28に示すように、複数結合共振ループ手法は、配線の複雑性の大幅な低減を必要とする、充電パッド2802に完全に受動的なセンサネットワークを組み込むソリューションを提供することができる。ツイストペア線の束、たとえばPSTNケーブルを使用して、遠隔に位置する検出回路2830(すなわち、外来オブジェクト検出電子回路)の一部であり得るマルチプレクサに共振感知ループアレイを接続することができる。別の実施形態によれば、充電パッド上にマルチプレクサを有する完全に受動的ではないソリューションも提供され得る。装置2800は、
図14〜
図24の感知ループ/結合回路構成のうちのいずれかを使用するように適合され得ることに留意されたい。
【0219】
[結合共振フィルタ]
結合共振ループの標準的構造を使用して伝搬媒体(伝送回線)を形成することが、金属オブジェクト検出の別の手法であり得る。
図29は、例示的な実施形態による、オブジェクトを検出するための例示的な誘導結合共振フィルタ2900の機能ブロック図である。
図29は、誘導結合ワイヤループ2922aおよび2922bを使用する実施形態を示している。回路2900はまた、誘導結合入力/出力端子2926を有する高次フィルタと考えられ得る。共振器はすべて、オブジェクトの最適な感度および検出可能性に必要な周波数と同じ周波数に、または若干異なる周波数に合わせられ得る。
【0220】
ここで、金属オブジェクトは、金属オブジェクトが存在する場合に変化し得るポート1および/もしくはポート2における反射特性ならびに/またはポート1とポート2との間の送信特性を測定することによって検出され得る。
【0221】
複数結合共振ループ手法を結合共振器フィルタ手法と組み合わせた他の構造、または容量結合を使用するトポロジーも提供され得る。2次元または3次元で延びる、複数の測定ポートを定義するループ構造も考えられる。
【0222】
[評価(後処理)方法および手順]
上の概念図に示すように、磁場またはインピーダンスアナライザの出力は、検出回路の評価ユニット(たとえば、
図22の評価ユニット2232)でさらに処理される必要があり得る。
図22を参照すると、たとえば、参照/較正値を差し引いて判定を下す以外に、評価ユニット2232は、アナライザユニットによって提供された測定サンプルに対する変更を実行することができる。この変更は、後処理方法の一部であり得る。そのような変更および方法の一例が、磁場感知方法(最小平均2乗方法)の場合について上で提供されている。
【0223】
類似の方法を用いてループインピーダンスまたはループ共振周波数感知手法を向上させることで、たとえば車両パッド、車体の底面構造、温度変動、誘電オブジェクト(水、雪、氷、葉)、経年変化などからの残留効果を補償することもできる。
【0224】
これらの残留効果は、行および列からなる2次元値行列をもたらす、ループセンサのアレイによる2次元アレイに測定値/サンプルがマッピングされた場合に生成されたパターンで認識され得る。
【0225】
神経回路網、あいまい論理などを含む人工知能を使用することによって、そのような影響を効果的に補償または相殺して、検出確率を高め、かつ/または金属オブジェクト検出器のフォールスアラーム確率を低下させることができる。
【0226】
そのような方法は、金属オブジェクトを、絶対検出基準を使用せずにそれらの状況または背景パターンで検出すること、たとえば背景パターンに基づいて検出しきい値および検出ルールを自動的に分析することを含み得る。
【0227】
パターンに雑音が多いように見える場合、すなわち、時間系列で取得されたパターンが分散を示す場合、時間および/または空間平均化技法は、たとえば移動平均、時間系列で取得されたパターンでの指数関数的減衰平均化(たとえば、1次無限応答フィルタ)および/または空間フィルタ処理/平準化を適用することができる。
【0228】
判定しきい値は、たとえば、測定されたパターンにおける突然/急激および局所的な変化を検出するために、低めに設定されることがあり、その理由は、そのような変化は温度変動および経年変化から、または充電パッド上の車両駐車から生じる可能性が低いことにある。この手法は、FODがアクティブであるときに、臨界空間に入るオブジェクトを検出するための感度を高めることができる。
【0229】
サンプルのアレイでの、たとえば行および列での空間補間は、本質的感度がより低いことがある感知ループの隅または端に置かれた小さいオブジェクトの場合は特に、検出を向上させることができる。補間を使用することで、4つの隣接ループの隅に位置するオブジェクトは、ループの中央に位置するコインと同様の応答を提供することができる。
【0230】
その上、他のセンサ、車両測位システム、車両検出および識別システム、エネルギー伝達システム上での電力および効率測定(電力バジェット)からの情報が、パターン認識および判定プロセスにおいて考慮され得る。
【0231】
上述の様々な検出技法、方法、手順を合わせて使用することで、検出感度、確実性および/または環境上の影響に対する弾性を高めるソリューションがもたらされ得る。たとえば、ループ誘起電圧がループインピーダンス測定方法と組み合わせられてよく、または誘導感知方法のいずれかが光学、音響またはuW感知方法のうちの少なくとも1つと組み合わせられ得る。
【0232】
[トラブルシューティングならびに較正方法および手順]
実施形態はさらに、オブジェクト検出システムのトラブルシューティングおよび較正を行うことができる。
【0233】
長年の間に、パッド組み込みループアレイの1つまたは複数のループは、たとえば機械的または環境的影響(損傷)、機械的ストレス、経年変化のためまたは他の理由により、そのインピーダンスを破ること、または変えることがある。そのような場合にこれらのループポートで測定されるインピーダンスは、完全に範囲外にあることがあり、または実際には存在しない外来オブジェクトに似ることがある。
【0234】
そのような障害事象が検出され、インフラストラクチャ事業者の中央管理システムに、またはたとえば家のガレージにシステムが設置されている場合にはシステムのユーザ/所有者の電子デバイスに報告され得る。報告は、充電インフラストラクチャの監視および管理に利用可能な標準的通信リンクを介し得る。
【0235】
以下のトラブルシューティングおよび較正方法が適用され得る。
1.サービス担当者/トラブルシューティング担当者(公共インフラストラクチャの場合)、または私有システムのユーザ/所有者による充電パッドの目視検査を要求する
2.パッドに金属オブジェクトがないか確認する
3.システムに問い合わせて、欠陥のあるループセンサおよび仕様外のループの数に関するエラーステータス情報を取得する
4.欠陥のあるループの数が許容数を上回っていない場合、また欠陥のあるループが容認できないクラスタを形成していない場合には、FODシステムを較正し、それ以外の場合には、パッドの交換を開始する。
【0236】
障害を示していない充電インフラストラクチャの他のパッドは、周期的再較正および保守を必要としないことがある。
【0237】
他の実施形態によれば、誘導感知を使用する実装形態とは対照的に、他のタイプのシステムが提供され得る。オブジェクトのマイクロ波またはミリメートル波のレーダー感知が、Li,Yong et al.、「A microwave measurement system for metallic object detection using swept−frequency radar」、Millimetre Wave and Terahertz Sensors and Technology、Proc. of SPIE Vol. 7117 71170K−1、2008年(非特許文献5)に説明されているセキュリティシステムで使用されている。たとえばテラヘルツ範囲における超高周波数および超ワイドな処理帯域幅を使用して、小さくて薄いオブジェクト、たとえば表面上に置かれたコインを分解することができる。しかしながら、一般にマイクロ波レーダー技法は、固い表面上に位置せず、一次磁気構造と二次磁気構造との間の空間(エアギャップ)のどこかにある小さい危険なオブジェクトを検出するのに有用であり得る。能動的な音響感知と同様に、電磁波は、外来オブジェクトによって反射または散乱し、エネルギー伝達パッドの周辺エリアに組み込まれているマイクロ波センサアレイによって検出され得る。伝搬遅延は、外来オブジェクトと地面、隣接磁気パッドまたは車体の底面構造の反射とを区別する基準として使用され得る。しかしながら、この方法は、金属オブジェクトと他の固いが危険ではないオブジェクトとを区別することが可能ではないことがある。
【0238】
別の実施形態では、マイクロ波感知は、金属オブジェクトと非金属オブジェクトとを区別するための特有の特性として、金属オブジェクトの振動を使用し得る。強い交番磁場にさらされた金属オブジェクトは、磁場の周波数の2倍の周波数で振動する。マイクロ波源によって照らされた場合、この振動は、反射または散乱した波にマイクロ位相(周波数)変調を引き起こす。このマイクロドップラー効果は、周波数
f
1,2=f
c±2
fmでの2つの弱い応答として見えることがある。
【0239】
ここでf
mは、磁場周波数を示し、f
cはマイクロ波キャリア周波数を示す。言い換えれば、金属オブジェクトは、ドップラー周波数領域において金属オブジェクトの特性シグネチャによって検出され得る。
【0240】
マイクロ波ドップラーベースの手法は、磁気パルス生成器によって補完され得る。強い十分な磁気パルスは、金属オブジェクトを揺らし、より顕著なドップラー応答を生じさせることになる。そのような磁気パルスは、誘導エネルギー伝達に使用される磁気構造に高電圧パルス生成器を一時的に接続することによって生成され得る。高電流パルスは、大きい高電圧キャパシタを充電し、パッドのコイルを介して直接そのキャパシタを放電することによって生成され得る。この方法は、かなりの量のエネルギーを消費することがあり、たとえば周期的パルシングによって継続的に適用される場合、EMC問題をもたらすことがある。しかしながらそれは、一時的に比較的短い時間、第1の方法を使用して取得された正検出仮説を実証するための第2の(検出後分析)方法として機能し得る。継続的に実行されている第1の方法は、上述の方法の少なくとも1つを使用することができる。外来オブジェクトに対するこの2段階の手法は、確実性を高めること(検出確率を高めること、および/またはフォールスアラーム確率を低下させること)ができる。
【0241】
図30Aは、例示的な実施形態による、オブジェクト3024を検出するための別の例示的なシステム3000の機能ブロック図である。システムは、電源3008、基地充電システム電力変換器3036および
図2に関して上述したような基地システム誘導コイル3004を含む送信回路3006を含む。これらの構成要素は少なくとも部分的に、磁場を生成し、たとえば、磁場を介して電気車両に電力供給するか、または電気車両を充電するのに十分なレベルで電力をワイヤレスに伝達するように構成された電力回路を形成することができる。システムはさらに、信号を送信し、信号の反射に基づいてオブジェクト3024の振動の周波数を検出するように構成された検出回路3030を含む。たとえば、検出回路3030は、マイクロ波信号を送信するように構成され、上述のマイクロドップラー効果に基づいて振動の周波数を検出するように構成され得る。たとえば、検出回路3030は、振動の特定の周波数(たとえば、周波数で交番磁場を生成するために使用される電源3008の交流の周波数の2倍)に基づいて、オブジェクト3024が金属であることを検出するように構成され得る。システム3000はさらに、電力回路によって生成された磁場よりも強い磁気パルスを生成するように構成された磁気パルス生成器3062を含む。これは、オブジェクトを最初に検出したことに応答して行われ得る。パルスが生成された後、検出回路3030は、検出された周波数に基づいて金属オブジェクト3024の正検出を確認するためにオブジェクト3024の振動の周波数を再検出するように構成され得る。
【0242】
この実施形態によれば、生成された磁場を活用して、オブジェクトの検出のための磁場をさらに提供することができる。電力伝達に使用される既存の磁場を使用して、検出回路3030は、金属オブジェクトを識別するためにオブジェクトの振動を検出するように構成され得る。
【0243】
図30Bは、例示的な実施形態による、
図30Aのシステムの検出回路3030の機能ブロック図である。図示のように、検出回路3030は、たとえば、充電パッドの上のエリアに対応する何らかのエリアをカバーするアレイを形成し得るいくつかのセンサ3064aおよび3064bを含む。センサ3064aおよび3064bの各々は、信号を送信するように構成されてよく、各々は、反射された信号に基づいて他の情報とともにオブジェクトの振動の周波数を判断する。このようにして、空間分解能が提供されて、検出回路3030がタイプ、形状または検出回路からのオブジェクトの距離を判断することが可能になり得る。したがって、検出されるオブジェクトの様々な特性を検出することを可能にするための空間分解能をもたらすセンサのアレイが提供される。一面では、センサのアレイを使用してパッドの「画像」が提供され得る。パッド自体が磁場から振動する場合、センサのアレイは、パッドと他のオブジェクトとを区別することを可能にし得る。別の言い方をすれば、パッドとオブジェクトを検出するためのエリアとの間の空間中でオブジェクトを検出するために3次元「マイクロ波」画像が提供され得る。
【0244】
さらに、上述のように、上記で説明した実施形態は多種多様なアプリケーションで使用され得る。たとえば、上記で説明した実施形態による一実施形態は、たとえば盗難防止システムの場合にオブジェクトの不在を検出するように構成され得る。たとえば、検出回路および感知ループは、オブジェクトに近接して置かれ、感知ループの電気的特性の変化に基づいてオブジェクトが除去されたかどうかを検出するように構成され得る。より詳細には、別の例として、検出回路は、オブジェクトが除去されたときに、感知ループが共振する周波数が変化したことを検出するように構成され得る。この場合、参照共振周波数は、オブジェクトが存在する場合に感知ループが共振する周波数であり得る。
【0245】
図31は、例示的な実施形態による、オブジェクトの存在を検出するための例示的な方法3100のフローチャートである。ブロック3102において、共振周波数を有する共振回路に信号が印加され得る。共振回路は、導電性構造を含む感知回路を含む。感知回路に結合回路が結合される。ブロック3104において、結合回路を介して感知回路に結合された検出回路を介して、共振回路が共振している周波数に依存する測定された特性と共振回路の共振周波数に依存する対応する特性との間の差を検出したことに応答して、オブジェクトの存在が検出される。結合回路は、オブジェクトがない場合に検出回路による共振周波数の変動を低減するように構成される。一実施形態では、方法3100は、回路1400Aによって実行することができる。
【0246】
図32は、例示的な実施形態による、オブジェクトの存在を検出するための装置3200の機能ブロック図である。装置3200は、
図1〜
図29に関して論じられた様々なアクションのための手段3202、3204および3206を含む。
【0247】
図33は、例示的な実施形態による、磁場においてオブジェクトの存在を検出するための例示的な方法3300のフローチャートである。ブロック3302において、磁場が生成され、磁場を介して負荷に電力供給するか、または負荷を充電するのに十分なレベルで電力がワイヤレスに伝達される。磁場は、オブジェクトの振動を引き起こす。ブロック3304において、信号が送信され、送信された信号の反射に基づいて、磁場によって引き起こされたオブジェクトの振動の周波数が検出される。
【0248】
図34は、例示的な実施形態による、磁場においてオブジェクトの存在を検出するための装置の機能ブロック図である。装置3400は、
図30A、30Bおよび
図33に関して論じられた様々なアクションのための手段3402および3404を含む。
【0249】
上記の方法の様々な動作は、様々なハードウェアおよび/またはソフトウェア構成要素、回路および/またはモジュールなどの、動作を実行することができる任意の適切な手段によって実行することができる。一般に、図に示される任意の動作は、動作を実行することが可能な対応する機能手段によって実行することができる。たとえば、磁場を生成するための手段は、アンテナまたは他の導電性構造を含むことができる。さらに、共振するための手段は、共振回路を含むことができる。検出するための手段は、検出回路または他のコントローラを含むことができる。共振周波数の変動を低減するための手段は、結合回路を含むことができる。
【0250】
多種多様な技術および技法のうちのいずれかを使用して情報および信号を表すことができる。たとえば、上記の説明全体にわたって言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、およびチップは、電圧、電流、電磁波、磁場もしくは磁性粒子、光場もしくは光学粒子、またはそれらの任意の組合せによって表され得る。
【0251】
本明細書で開示する実施形態に関して説明する様々な例示的な論理ブロック、モジュール、回路、および方法ステップは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、またはその両方の組合せとして実装され得る。ハードウェアおよびソフトウェアのこの互換性を明確に示すために、様々な例示的な構成要素、ブロック、モジュール、回路、およびステップが、概してそれらの機能に関して上記で説明されている。そのような機能をハードウェアとして実装するか、またはソフトウェアとして実装するかは、特定の適用例および全体的なシステムに課される設計制約に依存する。説明した機能は、特定の適用例ごとに様々な方法で実装できるが、そのような実装上の決定は、本発明の実施形態の範囲からの逸脱を生じさせると解釈すべきではない。
【0252】
本明細書で開示する実施形態に関して説明する様々な例示的なブロック、モジュール、および回路は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)もしくは他のプログラマブル論理デバイス、個別ゲートもしくはトランジスタ論理、個別ハードウェア構成要素、または、本明細書で説明する機能を実行するように設計されたそれらの任意の組合せで、実装または実行されてよい。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであり得るが、代替として、プロセッサは、任意の従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、または状態機械であり得る。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組合せ、たとえば、DSPとマイクロプロセッサとの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連携する1つもしくは複数のマイクロプロセッサ、または任意の他のそのような構成として実装され得る。
【0253】
本明細書で開示する実施形態に関して説明する方法および機能のステップは、直接ハードウェアで具現化されても、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールで具現化されても、またはその2つの組合せで具現化されてもよい。ソフトウェアで実装される場合、機能は、1つまたは複数の命令またはコードとして、有形な非一時的コンピュータ可読媒体上に記憶すること、または有形な非一時的コンピュータ可読媒体を介して送信することができる。ソフトウェアモジュールは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読取り専用メモリ(ROM)、電気的にプログラム可能なROM(EPROM)、電気的に消去可能およびプログラム可能なROM(EEPROM)、レジスタ、ハードディスク、着脱可能ディスク、CD ROM、または当技術分野で知られた任意の他の形態の記憶媒体内に存在することができる。記憶媒体は、プロセッサが記憶媒体から情報を読み取り、かつ記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサに結合される。代替として、記憶媒体はプロセッサと一体であり得る。ディスク(diskおよびdisc)は、本明細書で使用される場合、コンパクトディスク(CD)、レーザディスク、光ディスク、デジタル多用途ディスク(DVD)、フロッピー(登録商標)ディスク、およびブルーレイ(登録商標)ディスクを含み、ディスク(disk)は、通常、磁気的にデータを再生し、一方、ディスク(disc)は、レーザを用いて光学的にデータを再生する。上記の組合せも、コンピュータ可読媒体の範囲の中に含まれるべきである。プロセッサおよび記憶媒体はASIC内に存在することができる。ASICはユーザ端末内に存在することができる。代替として、プロセッサおよび記憶媒体は、ユーザ端末内に個別構成要素として存在することができる。
【0254】
本開示の概要を述べるために、いくつかの態様、利点、および新規の特徴について本明細書で説明してきた。任意の特定の実施形態に従って、そのような利点の必ずしもすべてを実現できない場合があることを理解されたい。したがって、本発明は、本明細書に教示される1つの利点または利点の群を、本明細書に教示または示唆され得る他の利点を必ずしも実現することなく実現または最適化するように具現化または実行され得る。
【0255】
上述の実施形態への様々な修正が容易に明らかになり、本明細書に定義する一般原理は、本発明の趣旨または範囲を逸脱することなく他の実施形態に適用され得る。したがって、本発明は、本明細書に示された実施形態に限定されるものではなく、本明細書に開示された原理および新規の特徴に一致する最大の範囲を与えるものである。