【実施例1】
【0011】
実施例1におけるロール紙収容構造及び画像形成装置は、感熱紙に印刷を行う感熱式のサーマルプリンタに適用される。
【0012】
[サーマルプリンタの構成]
図1は、実施例1のサーマルプリンタの前カバーが閉位置の状態を示す斜視図である。
図2は、実施例1のサーマルプリンタの前カバーが開位置の状態を示す斜視図である。
図3は、実施例1のサーマルプリンタの前カバーが閉位置の状態の構成を示す断面図である。以下、
図1〜
図3に基づいて、実施例1のサーマルプリンタの構成を説明する。
【0013】
なお、サーマルプリンタ1の幅方向を幅方向Xとし、サーマルプリンタ1の前後方向を前後方向Yとし、サーマルプリンタ1の上下方向を上下方向Zとする。また、前後方向Yのうち、前方向を前方向Fとし、後方向を後方向Bとする。
【0014】
画像形成装置としてのサーマルプリンタ1は、
図1に示すように、筺体本体2と、前カバー3と、を備える筺体1Aを有する。
【0015】
筺体本体2は、
図2に示すように、サーマルプリンタ1の前側に開口部2aを有する箱状に形成される。前カバー3は、開口部2aの下側の縁に軸支され、開口部2aを閉塞する閉位置と、開口部2aを開放する開位置と、を回動可能とする。前カバー3は、起立した状態から前方向Fに倒れた状態になって開位置になり、倒れた状態から起立した状態になって閉位置となり、前方向Fに開閉可能とする。
【0016】
筺体本体2の内部には、
図3に示すように、収容部10と、サーマルヘッドユニット5と、が設けられる。
【0017】
収容部10は、底仕切部11と、後仕切部12と、上仕切部13と、から構成され、ロール紙Rを収容可能とする。ロール紙Rは、長尺状の連続紙がロール状に巻かれたものである。
【0018】
底仕切部11は、筺体本体2の内部の底面付近に、サーマルプリンタ1の前方向Fに向けて下方に傾斜した斜面で形成される。後仕切部12は、底仕切部11の後側の端部から起立して形成される。上仕切部13は、後仕切部12の上端から前方向Fに向けて延在して形成される。
【0019】
サーマルヘッドユニット5は、筺体本体2の内部に取り付けられる。前カバー3が閉位置の状態において、前カバー3に取り付けられたプラテンローラ4は、サーマルヘッドユニット5と対向するように配置される。サーマルヘッドユニット5がプラテンローラ4に当接する方向に付勢された状態で、サーマルヘッドユニット5は、記録紙Pに感熱印刷を行う。
【0020】
前カバー3の裏面には、プラテンローラ4と、前壁15と、が取り付けられる。プラテンローラ4は、図示しないモータに接続され、ロール紙Rから繰り出された記録紙Pを排出口6に搬送する給紙ローラの役割を果たす。
【0021】
前壁15は、前カバー3が閉位置の状態において、収容部10に収容されたロール紙Rを前側から支持する。すなわち、前壁15は、ロール紙Rの転動方向Eに、ロール紙Rが転がることを防止する役割を果たす。転動方向Eとは、ロール紙Rからの給紙によってロール紙Rが回転した際に、ロール紙Rが移動しようとする方向(
図3で左方向)をいう。
【0022】
前壁15と、底仕切部11と、後仕切部12と、上仕切部13と、で囲まれた空間はロール紙Rを収容する収容空間Sを構成する。
【0023】
このように構成されたサーマルプリンタ1は、プラテンローラ4が回転することで、ロール紙Rから記録紙Pが繰り出される。ロール紙Rから繰り出された記録紙Pは、搬送方向Gに搬送され、サーマルヘッドユニット5によって、感熱印刷が行われる。感熱印刷が行われた記録紙Pは、排出口6から排出される。
【0024】
[ダンパ部材と周辺の構成]
図4は、実施例1の前カバー3の構成を示す斜視図である。
図5は、実施例1のダンパ部材20と周辺を示す分解斜視図である。
図6は、実施例1の前カバー3の構成を示す断面図である。
図7は、実施例1のダンパ部材20の構成を示す断面図である。以下、
図4〜
図7に基づいて、実施例1のダンパ部材と周辺の構成を説明する。
【0025】
ダンパ部材20は、前カバー3の裏面に取り付けられた前壁15に取り付けられて、ロール紙Rを転動方向Eの反対方向に付勢する。すなわち、ダンパ部材20は、ロール紙Rの前側から、ロール紙Rを後方向Bに付勢する。
【0026】
(前壁の構成)
前壁15は、
図4〜
図6に示すように、前壁本体15aと、前壁本体15aの幅方向Xの両端部に設けられた前壁側部15b,15cと、を備える。
【0027】
前壁本体15aは、最大径のロール紙Rの形状に略沿うように、断面円弧状に形成される。前壁本体15aには、開口部15dが形成される。開口部15dは、上下方向Zで、前壁本体15aの略中央に形成される。開口部15dには、ダンパ部材20の一部が挿入される。
【0028】
前壁側部15b,15cは、前方向Fに向けて突出する突出部15eと、突出部15eより上方に位置する第1切欠き部15hと、突出部15eより下方に位置する第2切欠き部15iと、を備える。
【0029】
突出部15eは、上下方向Zで開口部15dの略中央に設けられる。突出部15eの先端には、略U字状の切欠き部15fを有する。突出部15eの基端には、後述する付勢部材30の一方の端部30aを引っ掛ける引っ掛け部15gを有する。
【0030】
第1切欠き部15hは、突出部15eより上方に設けられる。第1切欠き部15hは、前方向Fに開口するように、断面矩形状に形成される。
【0031】
第2切欠き部15iは、突出部15eより下方に設けられる。第2切欠き部15iは、前方向Fに開口するように、断面矩形状に形成される。
【0032】
(ダンパ部材の構成)
ダンパ部材20は、
図4〜
図6に示すように、上下方向Zにおいて、前壁15の中央付近に設けられる。
【0033】
ダンパ部材20は、
図7に示すように、アーム部23と、アーム部23の上端に設けられる当接部としての第1当接部21と、アーム部23の下端に設けられる当接部としての第2当接部22と、アーム部23を支持する支持部24と、第1切欠き部15hに当接可能な第1凸部25と、第2切欠き部15iに当接可能な第2凸部26と、アーム部23を後方向Bに付勢する付勢部材30と、を備える。
【0034】
アーム部23は、幅方向Xに延在した板状に形成される。アーム部23は、上端が下端より後方向Bに位置し、やや傾斜した傾斜姿勢S1で設けられる。
【0035】
第1当接部21は、アーム部23の上端に設けられる。第1当接部21は、ロール紙Rとの摺動抵抗を小さくするためにローラで形成され、ロール紙Rに当接して回転可能とする。第1当接部21は、幅方向Xに複数配置される。第1当接部21は、開口部15dから後方向Bに一部が突出するように設けられる。
【0036】
第2当接部22は、アーム部23の下端に設けられる。第2当接部22は、ロール紙Rとの摺動抵抗を小さくするためにローラで形成され、ロール紙Rに当接して回転可能とする。第2当接部22は、幅方向Xに複数配置される。第2当接部22は、開口部15dから後方向Bに一部が突出するように設けられる。
【0037】
支持部24は、上下方向Zで、アーム部23の略中央に設けられる。支持部24は、アーム支持軸31に軸支される。アーム支持軸31は、切欠き部15fに支持される。切欠き部15fはZ方向の幅においてアーム支持軸31に略嵌合するよう設定されている。そのため、アーム支持軸31は、切欠き部15fに沿って、前後方向Yに移動可能であり、上下方向Zには移動不可となる。アーム部23は、支持部24を介して、アーム支持軸31を中心として回動可能とする。すなわち、アーム部23は、支持部24によって、傾動可能に支持される。
【0038】
第1凸部25は、円柱状に形成され、アーム部23の幅方向Xの両端から、外側に突出する。第1凸部25は、上下方向Zで、アーム部23の上側に設けられる。第1凸部25は、第1切欠き部15hに当接可能とする。
【0039】
第2凸部26は、円柱状に形成され、アーム部23の幅方向Xの両端から、外側に突出する。第2凸部26は、上下方向Zで、アーム部23の下側に設けられる。第2凸部26は、第2切欠き部15iに当接可能とする。
【0040】
付勢部材30は、例えば、引張ばねとする。付勢部材30は、アーム部23の幅方向Xで両側付近に設けられる。付勢部材30の一方の端部30aは、フック状に形成され、引っ掛け部15gに引っ掛けられる。付勢部材30の他方の端部30bは、フック状に形成され、アーム支持軸31に引っ掛けられる。
【0041】
これにより、アーム支持軸31は、後方向Bに付勢される。すなわち、支持部24は、アーム支持軸31を介して、付勢部材30に付勢される。言い換えると、ダンパ部材20は、後方向Bに付勢されることになる。
【0042】
[ダンパ部材の動作]
図8は、実施例1のダンパ部材20の、大きいロール径のロール紙に対する動作を説明する説明図である。
図9は、実施例1のダンパ部材20の、大きいロール径のロール紙に対する動作を説明する説明図である。
図10は、実施例1のダンパ部材20の、小さいロール径のロール紙に対する動作を説明する説明図である。以下、
図8〜
図10に基づいて、実施例1のダンパ部材20の動作を説明する。
【0043】
(大きいロール径のロール紙)
収容部10に大きいロール径D1のロール紙R1が収容されているとする。この場合、プラテンローラ4が回転してロール紙R1が記録紙Pの給紙を開始すると、ロール紙R1は、転動方向Eに移動しようとする。
図8に示すように、ロール紙R1は、第1当接部21に当接しているので、第1当接部21を前方向Fに押すことで、付勢部材30の後方向Bへの付勢力が働く。
【0044】
更に、
図9に示すように、第2切欠き部15iに当接した第2凸部26を支点として、アーム部23が、回転する。そうすると、アーム部23は、上端が後方向Bにやや傾斜した傾斜姿勢S1から、垂直となる垂直姿勢S2になる。
【0045】
垂直姿勢S2になると、ロール紙R1は、第1当接部21と第2当接部22とに当接する。そして、ロール紙R1は、第1当接部21と第2当接部22を前方向Fに押すが、後方向Bに付勢部材30の付勢力が作用する。
【0046】
これにより、ダンパ部材20は、ロール紙R1の回転に伴う転動の衝撃や振動を抑制する。
【0047】
(小さいロール径のロール紙)
収容部10にロール径D1より小さいロール径D2のロール紙R2が収容されているとする。この場合、プラテンローラ4が回転してロール紙R2が記録紙Pの給紙を開始すると、ロール紙R2は、転動方向Eに移動しようとする。ロール紙R2は、第2当接部22に当接しているので、付勢部材30の後方向Bへの付勢力に抗して、第2当接部22を前方向Fに押す。
【0048】
次いで、
図10に示すように、第1切欠き部15hに当接した第1凸部25を支点として、アーム部23が、回転する。そうすると、アーム部23は、上端が後方向Bにやや傾斜した傾斜姿勢S1から、さらに傾斜した第2傾斜姿勢S3となる。
【0049】
そして、ロール紙R2は、第2当接部22を前方向Fに押すが、後方向Bに付勢部材30の付勢力が作用する。
【0050】
これにより、ダンパ部材20は、ロール紙R2の回転に伴う転動の衝撃や振動を抑制する。
【0051】
[ロール紙収容構造及び画像形成装置の作用]
実施例1のロール紙収容構造及び画像形成装置の作用を説明する。実施例1の画像形成装置(サーマルプリンタ1)は、収容部10に収容されたロール紙Rの転動方向Eにおいて、ロール紙Rの下流側に設けられた、ロール紙Rを支持する前壁15と、前壁15に配置された、ロール紙Rに当接可能な当接部(第1当接部21,第2当接部22)と、当接部(第1当接部21,第2当接部22)を転動方向Eとは反対方向に付勢可能な付勢部材30と、を備える(
図8)。
【0052】
これにより、ロール紙Rが転動方向Eに移動した際に、前壁15と衝突する衝撃を緩和する。そのため、衝突により発生する振動や、ロール紙Rと前壁15との摩擦力を低減し、給紙ローラ(プラテンローラ4)に過大な負荷をかけないようにすることができる。その結果、印字の乱れを防止することができる。
【0053】
実施例1の画像形成装置(サーマルプリンタ1)では、当接部は、第1当接部21と、第1当接部21より下方に配置された第2当接部22と、を備える(
図8)。
【0054】
これにより、大きいロール径D1のロール紙R1は、第1当接部21に当接させ、小さいロール径D2のロール紙R2は、第2当接部22に当接させることができる。そのため、ロール径の異なるロール紙R1,R2に対して、1つのダンパ部材20で、印字の乱れを防止することができる。
【0055】
実施例1の画像形成装置(サーマルプリンタ1)では、第1当接部21と、第2当接部22との間を繋ぐアーム部23と、アーム部23を傾動可能に支持する、付勢部材30に付勢される支持部24と、を備える(
図8)。
【0056】
これにより、大きいロール径D1のロール紙R1に対しては、アーム部23を傾動させて、第1当接部21と第2当接部22に当接させることができる。そのため、大きいロール径D1のロール紙R1に対して、安定して荷重を受けることができる。
【0057】
実施例1の画像形成装置(サーマルプリンタ1)では、当接部(第1当接部21,第2当接部22)は、ローラである(
図7)。
【0058】
これにより、ロール紙Rが回転した際の、ロール紙Rと当接部(第1当接部21,第2当接部22)との間の摩擦を低減することができる。そのため、印字品質を向上させることができる。
【0059】
実施例1の画像形成装置(サーマルプリンタ1)では、前壁15は、前方向Fに開閉可能な前カバー3に形成される(
図2)。
【0060】
ところで、当接部(第1当接部21、第2当接部22)は、付勢部材30により付勢されて前壁本体15aよりも突出している。しかし、前カバー3を開いて、新しいロール紙Rを収容部10に収容する際に、当接部(第1当接部21、第2当接部22)は、ロール紙Rの重みにより前壁本体15a側に沈んで引っ込む。そのため、当接部(第1当接部21、第2当接部22)が邪魔にならず容易にロール紙Rをセットすることができる。その結果、当接部(第1当接部21、第2当接部22)を付勢部材30により付勢して前壁本体15aよりも突出させるだけの簡単な構造により、装置を小型化することができる。
【実施例2】
【0061】
実施例2のロール紙収容構造及び画像形成装置は、アーム部の支持部の位置が異なる点で、実施例1のロール紙収容構造及び画像形成装置と相違する。
【0062】
[ロール紙収容構造の構成]
図11は、実施例2のダンパ部材の構成を示す断面図である。以下、
図11に基づいて、実施例2のダンパ部材の構成を説明する。なお、上記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0063】
実施例2のダンパ部材120の支持部124は、上下方向Zで、アーム部23の中央より上側に設けられる。言い換えると、支持部124は、上下方向Zで、第1当接部21から距離L1で、第2当接部22から距離L1より長い距離L2の位置に設けられる。
【0064】
[ロール紙収容構造及び画像形成装置の作用]
実施例2のロール紙収容構造及び画像形成装置の作用を説明する。実施例2の画像形成装置(サーマルプリンタ1)では、支持部124は、アーム部23の中央より上方に設けられる(
図11)。
【0065】
ところで、印字速度が一定の時、ロール紙Rの転動による衝撃力は、ロール紙Rのロール径が大きいほど(質量大のほど)強くなる。そのため、ロール紙Rのロール径が大きい時に、ロール紙Rに当接して衝撃を吸収する第1当接部21の付勢力を大きくすることで、大きな衝撃を吸収することができる。また、ロール紙Rのロール径が小さくなった時には、ロール紙Rの転動による衝撃力も弱くなるので、ロール紙Rのロール径が小さい時に当接して衝撃を吸収する第2当接部22の付勢力は、第1当接部21の付勢力よりも弱くてよい。
【0066】
すなわち、第1当接部21の付勢力を第2当接部22の付勢力よりも大きくすることで、ロール紙Rの大きさに適した衝撃吸収力を得ることができる。
【0067】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0068】
以上、本発明の画像形成装置を実施例1及び実施例2に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0069】
実施例1及び実施例2では、アーム部23は、アーム支持軸31を中心軸として回動可能とする例を示した。しかし、アーム部は、アーム支持軸に固定されてもよい。
【0070】
実施例1及び実施例2では、当接部は、第1当接部21と第2当接部22とする例を示した。しかし、当接部としては、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0071】
実施例1及び実施例2では、付勢部材30は、圧縮ばねとする例を示した。しかし、付勢部材としては、この態様に限定されず、アーム支持軸を後方向Bに付勢するものであればよい。
【0072】
実施例1及び実施例2では、第1当接部21と第2当接部22は、ローラとして構成する例を示した。しかし、第1当接部と第2当接部は、この態様に限定されず、例えばロール紙への当接部が、断面円弧状の曲面であってもよい。
【0073】
実施例1及び実施例2では、サーマルプリンタ1は、前側が開く前カバー3を備える例を示した。しかし、サーマルプリンタは、上側が開く上カバーを備えてもよい。
【0074】
実施例1及び実施例2では、本発明をロール紙Rが前方向Fに転動するロール紙収容構造に適用する例を示した。しかし、本発明は、ロール紙が後方向Bに転動するロール紙収容構造に適用することもできる。
【0075】
実施例1及び実施例2では、本発明を感熱紙に印刷を行う感熱式のサーマルプリンタに適用する例を示した。しかし、本発明は、インクリボンを使用するサーマルプリンタに適用することができる。また、本発明は、インパクト方式のプリンタ、レーザプリンタ、インクジェットプリンタ、プロッタ、ワードプロセッサ、ファクシミリ、複写機等、またはこれら2つ以上の機能を備えた複合機等の画像形成装置にも適用可能である。