(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記係止部材は、外周に複数の凸部が形成された円盤状部材、または、外周に複数の切り欠き部が形成された円盤状部材、または、外周が円形をした円盤状部材であって、外周が前記シャフト部側に傾斜していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒンジロック機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された上記従来のヒンジロック機構では、ヒンジ装置をホルダ部の取付穴から抜けなくするため、スプリングクリップ等の固定具をヒンジ装置とは別に用意する必要がある。また、スプリングクリップをアダプタ部材の溝に嵌めるために、便座や便蓋のホルダ部側方に取付穴に通じる挿入孔を設ける必要もある。したがって、上記従来のヒンジロック機構では、ヒンジ装置を使ったトイレの製造時、スプリングクリップ等の固定具をヒンジ装置とは別個に管理する管理工程が必要になる。また、便座や便蓋の製造時、ホルダ部に挿入孔を設ける加工工程も必要になる。このため、従来、これらの管理工程や加工工程がトイレや便座・便蓋の製造時におけるコスト面および作業面の負担となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
物体間を開閉自在に支持するヒンジ装置がそのシャフト部が挿入される取付穴から抜けるのを防ぐヒンジロック機構において、
シャフト部に嵌合する内径形状を有する第1内径部と、シャフト部の外径より小さな内径をして第1内径部の最深部に第1内径部に連なって開口する第2内径部とが取付穴に形成され、
シャフト部と別体に形成されて外周に雄ネジが形成され、シャフト部の先端にシャフト部の軸方向に開口したネジ穴の内周に形成された雌ネジと螺合して、シャフト部の先端に取り付けられ、第2内径部の内径より小さな外径をしてシャフト部の先端に突出し、第2内径部に差し込まれる支持柱と、
第2内径部の内径と同等以上の外径をして弾性を有し、第2内径部に差し込まれて外周が第2内径部の内周に引っ掛かる、支持柱に支えられてシャフト部の先端に取り付けられる係止部材とを備える
ことを特徴とする。
また、本発明は、
物体間を開閉自在に支持するヒンジ装置がそのシャフト部が挿入される取付穴から抜けるのを防ぐヒンジロック機構において、
シャフト部に嵌合する内径形状を有する第1内径部と、シャフト部の外径より小さな内径をして第1内径部の最深部に第1内径部に連なって開口する第2内径部とが取付穴に形成され、
シャフト部と別体に形成されて、シャフト部の先端にシャフト部の軸方向に開口した開口部に出し入れ自在に収納され、開口部に内蔵された弾性部材によって第2内径部の深部側に付勢される、第2内径部の内径より小さな外径をしてシャフト部の先端に突出し、第2内径部に差し込まれる支持柱と、
第2内径部の内径と同等以上の外径をして弾性を有し、第2内径部に差し込まれて外周が第2内径部の内周に引っ掛かる、支持柱に支えられてシャフト部の先端に取り付けられる係止部材とを備える
ことを特徴とする。
【0007】
本構成によれば、ヒンジ装置のシャフト部が取付穴に挿入されると、シャフト部が第1内径部に嵌合すると共に、シャフト部の先端に備えられる係止部材が第2内径部に差し込まれる。この際、係止部材はその弾性によって撓んで弾性変形して第2内径部に入り込み、その外周が第2内径部の内周に引っ掛かる。先端にこの係止部材を備えるシャフト部は、取付穴から抜き取る力がかかっても、係止部材が第2内径部の内周に引っ掛かってこの抜き取る力に対抗するので、取付穴から抜けなくなり、ヒンジ装置は取付穴から抜けなくなる。したがって、従来のスプリングクリップ等の固定具を使用することなく、ヒンジ装置を取付穴から抜けなくすることが出来る。このため、スプリングクリップ等の固定具をヒンジ装置と別に用意する必要がなくなり、スプリングクリップ等の固定具をヒンジ装置とは別個に管理する管理工程を削減することが出来る。また、スプリングクリップ等の固定具をホルダ部に通すための挿入孔が不要になり、ホルダ部に挿入孔を設ける加工工程を削減することが出来る。この結果、ヒンジ装置を使ったトイレの製造時や、便座・便蓋の製造時におけるコスト面および作業面の負担を軽減することが出来る。
また、支持柱を介してシャフト部の先端に係止部材が取り付けられる本構成によれば、係止部材のシャフト部先端への取り付けが容易になると共に、係止部材の撓み代を係止部材のシャフト部側に確保することが出来る。
また、本構成によれば、シャフト部と別体に形成された支持柱がシャフト部の先端に螺合して取り付けられるため、支持柱をシャフト部に対して相対的に回すことで、支持柱がシャフト部の先端から突出する長さを調整することができる。このため、係止部材が第2内径部の内周に引っ掛かって固定される位置を、第2内径部の深さに応じて所望の位置に設定することができる。また、第2内径部の実際の形状に応じて、係止部材の第2内径部内周への引っ掛かり具合が丁度よい深さに、係止部材の固定位置を設定することができる。
また、本構成によれば、シャフト部が取付穴に挿入されて係止部材が第2内径部に差し込まれた状態において、開口部に内蔵された弾性部材によって第2内径部の深部側に支持柱が付勢されることで、係止部材も第2内径部の深部側に付勢される。このため、ヒンジ装置の取付穴への組み込み後において、係止部材が第2内径部の深部側に常に付勢されることで、係止部材は第2内径部から抜けないその深部側の方向へ常に押されるので、係止部材の第2内径部内周への保持安定性が高められる。また、ヒンジ装置の取付穴への組み込み時において、シャフト部先端の係止部材が取付穴の周囲に当たると、係止部材が一旦引っ込むので、この引っ込みがシャフト部先端を取付穴に挿入する案内になって、シャフト部先端を取付穴に挿入し易くなり、ヒンジ装置の取付穴への組み込み性が向上する。
【0008】
また、本発明は、係止部材が、外周に複数の凸部が形成された円盤状部材、または、外周に複数の切り欠き部が形成された円盤状部材、または、外周が円形をした円盤状部材であって、外周がシャフト部側に傾斜していることを特徴とする。
【0009】
本構成によれば、シャフト部に取付穴から抜き取る力がかかると、係止部材の外周が第2内径部の内周に噛み込む。このため、係止部材がシャフト部を抜き取る力に対抗する力は大きくなり、ヒンジ装置は堅固に取付穴から抜けなくなる。また、係止部材の外周がシャフト部側に傾斜しているので、シャフト部に取付穴から抜き取る力がかかると、係止部材の外周は第2内径部の内周により鋭く噛み込む。このため、ヒンジ装置はより堅固に取付穴から抜けなくなる。また、係止部材の外周がシャフト部側に傾斜していると、シャフト部を取付穴に挿入する際、係止部材はスムーズに第2内径部に入り込み、ヒンジ装置の取付穴への組み込み性が向上する。
【0012】
また、本発明は、係止部材が、支持柱からシャフト部の軸方向に抜けず、かつ、支持柱に回転自在に、支持柱に取り付けられることを特徴とする。
【0013】
本構成によれば、係止部材が第2内径部の内周に引っ掛かって第2内径部の内周に固定されている状態においても、係止部材を支持する支持柱は係止部材に対して回転可能な状態に保たれる。したがって、支持柱が先端に設けられたシャフト部は、係止部材が第2内径部の内周に固定されている状態に
おいても、係止部材とは独立に回転可能であり、ヒンジ装置が開閉自在に支持する一方の物体と共に回転する。このため、ヒンジ装置が開閉自在に支持する一方の物体(例えば便蓋)とは別の物体(例えば便座)に取付穴の第2内径部が形成され、その第2内径部に係止部材が固定される場合、一方の物体に形成された取付穴の第1内径部に嵌合するシャフト部が一方の物体と共に回転しても、係止部材は、シャフト部の回転に伴って回転しない。よって、係止部材がシャフト部の回転に伴って回転することで、係止部材が固定されている別の物体との間に摩擦を生じて、別の物体を傷付けることはない。また、別の物体が回転して別の物体と共に係止部材が回転しても、その回転に伴ってシャフト部が回転することはないため、ヒンジ装置が別の物体の回転に影響されることはない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スプリングクリップ等の固定具をヒンジ装置とは別個に管理する管理工程、および、ホルダ部に挿入孔を設ける加工工程を削減することが出来、トイレの製造時や、便座・便蓋の製造時におけるコスト面および作業面の負担が軽減される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明によるヒンジロック機構を洋式トイレのヒンジ装置に適用した、本発明を実施するための形態について説明する。
【0021】
図1(a)および(b)は、本発明の一実施形態によるヒンジロック機構が適用されたヒンジ装置1の正面図および側面図である。
図2はヒンジ装置10,10’の斜視図である。
【0022】
ヒンジ装置10,10’は、着脱部11とロータリーダンパ部12とが金属や樹脂等からなる一つのケース13内に一体に成形されて、構成される。洋式トイレにおけるヒンジ装置10,10’は、一対で用いられ、便座および便器の物体間にはヒンジ装置10、便蓋および便器の物体間にはヒンジ装置10’が取り付けられる。そして、一方の物体である便座および便蓋を他方の物体である便器に対して、それぞれ開閉自在に支持する。便座・便蓋ユニットが取り付けられる便器には不図示のヒンジピンが一対立設され、ヒンジ装置10,10’の着脱部11は、その底面に開口した着脱孔11aにヒンジピンが挿入されることでヒンジピンと係合し、便器に着脱される。
【0023】
図3(a)および(b)は、便座に形成される一方のホルダ部20の正面図および断面図、
図3(d)および(e)は、便座に形成される他方のホルダ部30の断面図および正面図である。
【0024】
ロータリーダンパ部12の端部に突出するシャフト部14は、便蓋の不図示の取付穴を通された後、ホルダ部20,30の取付穴20a,30aに挿入される。
【0025】
取付穴20aには第1内径部20a1と第2内径部20a2とが形成されている。第1内径部20a1は、シャフト部14に嵌合する内径形状を有する。シャフト部14は、金属や樹脂等から形成され、円弧状の周面が対向した案内曲面部14aと、平面が平行に対向した平面部14bとを備える。第1内径部20a1の内周には、案内曲面部14aに対応した形状の円弧部20a11と、平面部14bに対応して対向する壁部20a12とが形成されている。第2内径部20a2は、シャフト部14における案内曲面部14aの外径φ11より小さな内径φ2(φ2<φ11)をした中空円筒状をしており、第1内径部20a1の最深部に第1内径部20a1に連なって開口している。この第2内径部20a2は、
図3(c)に示す断面図のように、ホルダ部20を貫通して形成される場合もある。
【0026】
また、取付穴30aには第1内径部30a1と第2内径部30a2とが形成されている。第2内径部30a2は、取付穴20aの第2内径部20a2と同様な開口形状をしており、
図3(c)に示すように、ホルダ部30を貫通して形成される場合もある。しかし、第1内径部20a1に対応する第1内径部30a1は、円弧部20a11と同じ直径の中空円筒状をしており、シャフト部14の平面部14bに嵌合する壁部20a12のような壁部を備えていない。便座の取付穴30aには便蓋の不図示の取付穴が連通して設けられ、この便蓋の不図示の取付穴には、第1内径部20a1と同様な開口形状をした不図示の第1内径部が形成されている。第2内径部30a2は、第1内径部30a1の最深部に、これら不図示の第1内径部および第1内径部30a1に連なって開口する。
【0027】
シャフト部14は先端にディスクフック15を係止部材として備える。ディスクフック15は、
図4(b)に正面図、
図4(c)に側面図が示され、外周に複数の凸部15aが形成された金属製の円盤状部材からなり、外周がシャフト部14側に傾斜している。また、正面視で鏡面対称になっている。このディスクフック15は、取付穴20a,30aの第2内径部20a2,30a2の内径φ2と同等以上の外径φ3(φ3≧φ2)をして、弾性を有し、第2内径部20a2,30a2に差し込まれて、外周が第2内径部20a2,30a2の内周に引っ掛かる。
【0028】
本実施形態では、
図4(a)の側面図に示すように、シャフト部14の先端に、第2内径部20a2,30a2に差し込まれる円柱状の支持柱16が突出して形成されている。支持柱16は、第2内径部20a2,30a2の内径φ2より小さな外径φ4(φ4<φ2)をしている。この外径φ4は、本実施形態では、シャフト部14における案内曲面部14aの外径φ11の50%以下(φ4≦0.5×φ11)で、かつ、平面部14bの外径φ12の70%以下(φ4≦0.7×φ12)に設定される。ディスクフック15は、この支持柱16に支えられて、シャフト部14の先端に取り付けられる。本実施形態では、支持柱16の先端に支持柱16より細い直径の円柱状のカシメ代16aが、ディスクフック15の円盤部の厚みtより50〜80%大きい突出長さL(=1.5t〜1.8t)で形成されている。ディスクフック15の支持柱16への取り付けは、ディスクフック15の円盤部中央に開口した穴15bにカシメ代16aが挿入され、ディスクフック15の円盤部の厚みtより突出するカシメ代16aの先端外周囲が、スピンカシメやプレスカシメ等によって外周に拡がる方向に潰されて、行われる。このカシメにより、ディスクフック15は、支持柱16からシャフト部14の軸方向に抜けず、かつ、支持柱16に回転自在に、支持柱16に取り付けられる。
【0029】
支持柱16、ディスクフック15、および第2内径部20a2,30a2は、本発明の一実施形態によるヒンジロック機構を構成する。このヒンジロック機構は、便座および便器の物体間、並びに便蓋および便器の物体間を開閉自在に支持するヒンジ装置10,10’が、そのシャフト部14が挿入される取付穴20a,30aから抜けるのを防ぐ。
【0030】
図5(a)は、ヒンジ装置10のシャフト部14がホルダ部20の取付穴20aに挿入される前の状態における一部破断側面図、
図5(b)は、シャフト部14が取付穴20aに挿入された後の状態における一部破断側面図である。なお、
図5において
図3と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0031】
図5(a)に示す状態からヒンジ装置10のシャフト部14が取付穴20aに挿入されると、
図5(b)に示す状態のように、シャフト部14が第1内径部20a1に嵌合すると共に、シャフト部14の先端に備えられるディスクフック15が第2内径部20a2に差し込まれる。この際、ディスクフック15はその弾性によって撓んで弾性変形して第2内径部20a2に入り込み、その外周が第2内径部20a2の内周に引っ掛かる。先端にこのディスクフック15を備えるシャフト部14は、取付穴20aから抜き取る力がかかっても、ディスクフック15が第2内径部20a2の内周に引っ掛かってこの抜き取る力に対抗するので、取付穴20aから抜けなくなり、ヒンジ装置10は取付穴20aから抜けなくなる。
【0032】
ヒンジ装置10’も同様にして、シャフト部14が取付穴30aに挿入されて、ディスクフック15が第2内径部30a2に差し込まれることで、取付穴30aから抜けなくなる。なお、ヒンジ装置10,10’を取付穴20a,30aからディスクフック15の対抗力より大きな力で引き抜くと、取付穴20a,30aが塑性変形してホルダ部20,30からヒンジ装置10,10’を取り外すことができる。
【0033】
したがって、本実施形態によるヒンジロック機構によれば、従来のスプリングクリップ等の固定具を使用することなく、ヒンジ装置10,10’を取付穴20a,30aから抜けなくすることが出来る。このため、スプリングクリップ等の固定具をヒンジ装置10,10’と別に用意する必要がなくなり、スプリングクリップ等の固定具をヒンジ装置10,10’とは別個に管理する管理工程を削減することが出来る。また、スプリングクリップ等の固定具をホルダ部20,30に通すための挿入孔が不要になり、ホルダ部20,30に挿入孔を設ける加工工程を削減することが出来る。この結果、ヒンジ装置10,10’を使ったトイレの製造時や、便座・便蓋の製造時におけるコスト面および作業面の負担を軽減することが出来る。また、取付穴20a,30aの第2内径部20a2,30a2は、一定以上の深さがあればよく、内径φ2に精度は必要なく、精緻な仕上げは必要とされない。
【0034】
また、本実施形態によるヒンジロック機構によれば、シャフト部14に取付穴20a,30aから抜き取る力がかかると、ディスクフック15の外周の凸部15aが第2内径部20a2,30a2の内周に噛み込む。このため、ディスクフック15がシャフト部14を抜き取る力に対抗する力は大きくなり、ヒンジ装置10,10’は堅固に取付穴20a,30aから抜けなくなる。また、ディスクフック15の外周がシャフト部14側に傾斜しているので、シャフト部14に取付穴20a,30aから抜き取る力がかかると、ディスクフック15の外周の凸部15aは第2内径部20a2,30a2の内周により鋭く噛み込む。このため、ヒンジ装置10,10’はより堅固に取付穴20a,30aから抜けなくなる。また、ディスクフック15の外周がシャフト部14側に傾斜していると、シャフト部14を取付穴20a,30aに挿入する際、ディスクフック15はスムーズに第2内径部20a2,30a2に入り込み、ヒンジ装置10,10’の取付穴20a,30aへの組み込み性が向上する。
【0035】
また、本実施形態によるヒンジロック機構によれば、支持柱16を介してシャフト部14の先端にディスクフック15が取り付けられるので、ディスクフック15のシャフト部14先端への取り付けが容易になると共に、ディスクフック15の撓み代をディスクフック15のシャフト部14側に確保することが出来る。
【0036】
さらに、本実施形態によるヒンジロック機構によれば、ディスクフック15が第2内径部20a2,30a2の内周に引っ掛かって第2内径部20a2,30a2の内周に固定されている状態においても、ディスクフック15を支持する支持柱16はディスクフック15に対して回転可能な状態に保たれる。したがって、支持柱16が先端に設けられたシャフト部14は、ディスクフック15が第2内径部20a2,30a2の内周に固定されている状態においても、ディスクフック15とは独立に回転可能であり、ヒンジ装置10,10’が開閉自在に支持する一方の物体である便座および便蓋と共に回転する。
【0037】
便座および便器の物体間に取り付けられるヒンジ装置10は、シャフト部14が便蓋の不図示の取付穴を通され、便座に設けられた第1内径部20a1に嵌合することで、シャフト部14が便座の開閉に伴って回転し、ロータリーダンパ部12によって便座の閉動作に抵抗が付与される。また、シャフト部14が通される、便蓋に形成される不図示の取付穴は、中空円筒状をしており、シャフト部14の平面部14bに嵌合する壁部を備えていないため、シャフト部14を空回りさせ、便蓋は便座の開閉動作に影響を受けない。
【0038】
一方、便蓋および便器の物体間に取り付けられるヒンジ装置10’は、便蓋に第1内径部20a1と同様な開口形状で形成された不図示の取付穴の第1内径部にシャフト部14が嵌合することで、シャフト部14が便蓋の開閉に伴って回転し、ロータリーダンパ部12によって便蓋の閉動作に抵抗が付与される。また、シャフト部14の先端に設けられたディスクフック15は、不図示の取付穴の第1内径部を通された後、便座に設けられたホルダ部30の取付穴30aにおける第2内径部30a2に引っ掛けられる。ホルダ部30の取付穴30aにおける第1内径部30a1は前述したように中空円筒状をしているため、ヒンジ装置10’のシャフト部14は便座の開閉に伴って回転せず、空回りする。
【0039】
このため、ヒンジ装置10’が開閉自在に支持する一方の物体である便蓋とは別の物体である便座に取付穴30aの第2内径部30a2が形成され、その第2内径部30a2にディスクフック15が固定される場合、シャフト部14が便蓋と共に回転しても、ディスクフック15は、シャフト部14の回転に伴って回転しない。よって、ディスクフック15がシャフト部14の回転に伴って回転することで、ディスクフック15が固定されている便座の取付穴30aとの間に摩擦を生じて、便座の取付穴30aを傷付けることはない。また、便座が回転して便座と共にディスクフック15が回転しても、その回転に伴ってヒンジ装置10’のシャフト部14が回転することはないため、ヒンジ装置10’が便座の回転に影響されることはない。
【0040】
図6(a)は、一実施形態の第1変形例によるヒンジロック機構が適用されたヒンジ装置10Aの一部破断側面図である。なお、
図6において
図5と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0041】
このヒンジ装置10Aでは、支持柱16Aがシャフト部14と別体にアダプタとして形成される。支持柱16Aは、先端側に大径部16A1が短く、根元側に小径部16A2が長く形成され、小径部16A2の外周に雄ネジが形成されている。また、シャフト部14の先端には、シャフト部14の軸方向に開口したネジ穴14cの内周に雌ネジが形成されている。支持柱16Aは、小径部16A2の雄ネジがネジ穴14cの雌ネジと螺合して、シャフト部14の先端に取り付けられる。なお、大径部16A1の先端には上述のカシメ代16aが形成されており、ディスクフック15が上記の実施形態と同様にカシメによって取り付けられている。
【0042】
この第1変形例によるヒンジロック機構によれば、シャフト部14と別体に形成された支持柱16Aがシャフト部14の先端に螺合して取り付けられるため、支持柱16Aをシャフト部14に対して相対的に回すことで、支持柱16Aがシャフト部14の先端から突出する長さを調整することができる。このため、ディスクフック15が第2内径部20a2,30a2の内周に引っ掛かって固定される位置を、第2内径部20a2,30a2の深さに応じて所望の位置に設定することができる。また、実機の便座における第2内径部20a2,30a2の実際の形状に応じて、ディスクフック15の第2内径部20a2,30a2内周への引っ掛かり具合が丁度よい深さに、ディスクフック15の固定位置を設定することができる。
【0043】
図6(b)は、一実施形態の第2変形例によるヒンジロック機構が適用されたヒンジ装置10Bの一部破断側面図である。
【0044】
このヒンジ装置10Bでも、支持柱16Bがシャフト部14と別体にアダプタとして形成される。支持柱16Bは、長い大径部16B1の端部に小径部16B2が短く形成され、シャフト部14の先端にシャフト部14の軸方向に開口した開口部14dに出し入れ自在に収納される。ヒンジ装置10Bが取付穴20a,30aに挿入されると、支持柱16Bは、開口部14dに内蔵された弾性部材である圧縮コイルスプリング17によって、第2内径部20a2,30a2の深部側に付勢される。圧縮コイルスプリング17は、一端部が開口部14dの底部に形成されたボス14eに、他端部が支持柱16Bの小径部16B2に圧入され、開口部14dから抜け出るのが防がれている。なお、大径部16B1の先端には上述のカシメ代16aが形成されており、ディスクフック15が上記の実施形態と同様にカシメによって取り付けられている。
【0045】
この第2変形例によるヒンジロック機構によれば、シャフト部14が取付穴20a,30aに挿入されてディスクフック15が第2内径部20a2,30a2に差し込まれた状態において、開口部14dに内蔵された圧縮コイルスプリング17によって第2内径部20a2,30a2の深部側に支持柱16Bが付勢されることで、ディスクフック15も第2内径部20a2,30a2の深部側に付勢される。このため、ヒンジ装置10Bの取付穴20a,30aへの組み込み後において、ディスクフック15が第2内径部20a2,30a2の深部側に常に付勢されることで、ディスクフック15は第2内径部20a2,30a2から抜けないその深部側の方向へ常に押されるので、ディスクフック15の第2内径部20a2,30a2内周への保持安定性が高められる。また、ヒンジ装置10Bの取付穴20a,30aへの組み込み時において、シャフト部14先端のディスクフック15が取付穴20a,30aの周囲に当たると、ディスクフック15が一旦引っ込むので、この引っ込みがシャフト部14の先端を取付穴20a,30aに挿入する案内になって、シャフト部14の先端を取付穴20a,30aに挿入し易くなり、ヒンジ装置10Bの取付穴20a,30aへの組み込み性が向上する。
【0046】
なお、上述した実施形態および各変形例では、係止部材を構成するディスクフック15が、
図4に示す、外周に凸部15bが形成された円盤状部材から形成される場合について説明した。しかし、係止部材の形状はこれに限定されることはない。例えば、
図7(a)および(b)の正面図および側面図に示すディスクフック18のように、外周に複数の切り欠き部18a、中央部に穴18bが形成された円盤状部材で、外周がシャフト部14の側に傾斜するように、係止部材を構成してもよい。また、
図7(c)および(d)の正面図および側面図に示すディスクフック19のように、外周が円形をし、中央部に穴19aが形成された円盤状部材で、外周がシャフト部14の側にすり鉢状に傾斜するように、係止部材を構成してもよい。
【0047】
また、上述した実施形態および各変形例では、カシメ代16aにディスクフック15がカシメによって取り付けられる場合について、説明した。しかし、
図7(e)に示すように、支持柱16,16A,16Bの先端に、溝16cが形成された取付代16bを設け、この溝16cにディスクフック15,18,19の穴15b,18b,19aを嵌めて、ディスクフック15,18,19をシャフト部14の先端に取り付けるようにしてもよい。この場合にも、ディスクフック15,18,19は、支持柱16,16A,16Bからシャフト部14の軸方向に抜けず、かつ、支持柱16,16A,16Bに回転自在に、支持柱16,16A,16Bに取り付けられる。
【0048】
このような各構成によっても上述した実施形態および各変形例と同様な作用効果が奏される。