特許第6691257号(P6691257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6691257
(24)【登録日】2020年4月13日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20200421BHJP
   H01M 8/06 20160101ALI20200421BHJP
   H01M 8/1011 20160101ALI20200421BHJP
【FI】
   H01M8/04 J
   H01M8/06
   H01M8/1011
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-154524(P2019-154524)
(22)【出願日】2019年8月27日
【審査請求日】2019年8月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】菅 博史
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】 吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−176802(JP,A)
【文献】 特開2019−129146(JP,A)
【文献】 特開2017−199592(JP,A)
【文献】 特開2011−181406(JP,A)
【文献】 特開2010−049912(JP,A)
【文献】 特開2010−027347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 − 8/0668
H01M 8/1011
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気極と、燃料極と、前記空気極及び前記燃料極の間に配置され、水酸化物イオン伝導性を有する固体電解質体と、前記空気極に酸素を供給する酸素供給部と、前記燃料極にメタノールを供給するメタノール供給部とを有する固体アルカリ型燃料電池と、
前記メタノール供給部から排出される第1排出ガスに含まれるメタノール及び水をメタノール水溶液として回収する回収タンクと、
前記回収タンクに回収された前記メタノール水溶液に含まれるメタノールを濃化させるメタノール濃化部と、
前記メタノール濃化部から排出される水に含まれる残メタノールを除去する残メタノール除去部と
を備え
前記残メタノール除去部は、前記酸素供給部から排出される第2排出ガスに含まれる残酸素を用いて、前記残メタノールを触媒燃焼させる、
燃料電池装置。
【請求項2】
空気極と、燃料極と、前記空気極及び前記燃料極の間に配置され、水酸化物イオン伝導性を有する固体電解質体と、前記空気極に酸素を供給する酸素供給部と、前記燃料極にメタノールを供給するメタノール供給部とを有する固体アルカリ型燃料電池と、
前記メタノール供給部から排出される第1排出ガスに含まれるメタノールを回収する回収タンクと、
前記メタノール供給部及び前記回収タンクの間に配置され、前記第1排出ガスに含まれるメタノールを濃化させるメタノール濃化部と、
前記メタノール濃化部から排出される水に含まれる残メタノールを除去する残メタノール除去部と、
を備え
前記回収タンクは、前記メタノール濃化部によって濃化されたメタノールを回収し、
前記残メタノール除去部は、前記酸素供給部から排出される第2排出ガスに含まれる残酸素を用いて、前記残メタノールを触媒燃焼させる、
燃料電池装置。
【請求項3】
前記酸素供給部に供給される酸素に圧力を印加する圧縮機を備え、
前記残メタノール除去部は、前記圧縮機によって前記第2排出ガスに印加される圧力を利用して前記残メタノール及び前記残酸素を圧縮した状態で、前記残メタノールを触媒燃焼させる、
請求項1又は2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
メタノールを貯留するメタノールタンクと、
前記メタノール濃化部によって濃化されたメタノールと、前記メタノールタンクに貯留されたメタノールとを混合した混合メタノールを前記メタノール供給部に供給するメタノール混合部と、
を備える、
請求項1又は2に記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アノードと、カソードと、アノード及びカソードの間に配置された水酸化物イオン伝導性を有する電解質とを備え、メタノールを燃料として作動する固体アルカリ型燃料電池が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
固体アルカリ型燃料電池では、以下の電気化学反応が生じる。
【0004】
・アノード: CHOH+6OH→6e+CO+5H
・カソード: 3/2O+3HO+6e→6OH
・全体 : CHOH+3/2O→CO+2H
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−071948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、固体アルカリ型燃料電池のアノードでは供給されるメタノールの全量を完全に消費することは困難であり、アノードからの排出ガスにはメタノールが含まれる。そのため、アノードからの排出ガスに含まれるメタノールを効率的に再利用したいという要望がある。
【0007】
本発明は、メタノールの利用効率を向上可能な燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る燃料電池装置は、固体アルカリ型燃料電池と、メタノール供給部から排出される第1排出ガスに含まれるメタノールを回収する回収タンクとを備える。固体アルカリ型燃料電池は、空気極と、燃料極と、空気極及び燃料極の間に配置され、水酸化物イオン伝導性を有する固体電解質体と、空気極に酸素を供給する酸素供給部と、燃料極にメタノールを供給するメタノール供給部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メタノールの利用効率を向上可能な燃料電池装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る電力供給システムの構成を示す模式図
図2】実施形態に係る燃料電池装置の構成を示す模式図
図3】変形例1に係る燃料電池装置の構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(電力供給システム1の全体構成)
図1は、電力供給システム1の構成を示す模式図である。
【0012】
電力供給システム1は、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、商業施設、病院、一般家庭などに設置される。電力供給システム1は、燃料電池装置2、蓄電装置3、DC/DCコンバータ4、DC/ACインバータ5及び電力消費装置6を備える。
【0013】
燃料電池装置2は、蓄電装置3に電力を供給する。燃料電池装置2の構成については後述する。
【0014】
蓄電装置3は、燃料電池装置2と電気的に接続される。蓄電装置3は、燃料電池装置2から供給される直流電力を蓄電する。蓄電装置3は、燃料電池装置2以外の電力源(例えば、家庭電源などの外部電源)から供給される電力を蓄電可能であってもよい。蓄電装置3としては、液系の二次電池、全固体型の二次電池、或いは、キャパシタなどを用いることができるが、特に限定されない。
【0015】
液系の二次電池は、有機溶媒を含む非水系電解液を用いた二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、空気亜鉛電池など)と、有機溶媒を含まない水系電解液を用いた二次電池(例えば、ニッケル亜鉛二次電池)とに分類されるが、水系電解液を用いた二次電池は、燃焼リスクが低いため特に好ましい。
【0016】
全固体型の二次電池は、燃焼リスクが低いだけでなく、液漏れも発生しないため更に好ましい。全固体型の二次電池とは、正極層と負極層との間に固体電解質層が配置された構造を有し、構成成分が固体である二次電池をいう。全固体型の二次電池としては、例えばリチウムイオン全固体型の二次電池、ナトリウムイオン全固体型の二次電池、カルシウムイオン全固体型の二次電池などが挙げられる。
【0017】
DC/DCコンバータ4は、蓄電装置3と電気的に接続される。DC/DCコンバータ4は、蓄電装置3から供給される直流電力の電圧を、電力消費装置6の駆動に適した電圧まで昇圧させる。
【0018】
DC/ACインバータ5は、DC/DCコンバータ4と電力消費装置6とに電気的に接続される。DC/ACインバータ5は、DC/DCコンバータ4から供給される直流電力を、電力消費装置6に供給する交流電力へと変換する。
【0019】
電力消費装置6は、DC/ACインバータ5から供給される交流電力を消費する。電力消費装置6としては、電動機、補機、電子機器及び家電などが挙げられるが、これに限られない。電力消費装置6の個数は特に制限されない。
【0020】
(燃料電池装置2の構成)
図2は、燃料電池装置2の構成を示す模式図である。
【0021】
燃料電池装置2は、固体アルカリ型燃料電池10、圧縮機20、回収タンク30、メタノール濃化部40、残メタノール除去部50、メタノールタンク60、及びメタノール混合部70を備える。
【0022】
1.固体アルカリ型燃料電池10
固体アルカリ型燃料電池10は、比較的低温で作動するアルカリ型燃料電池(AFC)の一種である。本実施形態に係る固体アルカリ型燃料電池10の作動温度は、50℃〜250℃である。固体アルカリ型燃料電池10は、メタノールを燃料として作動する。固体アルカリ型燃料電池10は、以下の電気化学反応によって発電する。
【0023】
・空気極12(カソード): 3/2O+3HO+6e→6OH
・燃料極14(アノード): CHOH+6OH→6e+CO+5H
・全体 : CHOH+3/2O→CO+2H
【0024】
固体アルカリ型燃料電池10は、空気極12、酸素供給部13、燃料極14、メタノール供給部15、及び固体電解質体16を有する。
【0025】
空気極12は、カソードとして機能する電極である。空気極12は、アルカリ型燃料電池に使用される公知の空気極触媒を含むものであればよく、特に限定されない。空気極触媒の例としては、白金族元素(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、鉄族元素(Fe、Co、Ni)等の第8〜10族元素(IUPAC形式での周期表において第8〜10族に属する元素)、Cu、Ag、Au等の第11族元素(IUPAC形式での周期表において第11族に属する元素)、ロジウムフタロシアニン、テトラフェニルポルフィリン、Coサレン、Niサレン(サレン=N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン)、銀硝酸塩、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。空気極12における触媒の担持量は特に限定されないが、好ましくは0.1〜10mg/cm、より好ましくは、0.1〜5mg/cmである。空気極触媒はカーボンに担持させるのが好ましい。空気極12ないしそれを構成する触媒の好ましい例としては、白金担持カーボン(Pt/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
【0026】
空気極12の作製方法は特に限定されないが、例えば、空気極触媒及び所望により担体をバインダーと混合してペースト状にし、このペースト状混合物を固体電解質体16の一方の面に塗布することにより形成すればよい。
【0027】
酸素供給部13は、空気極12に酸素を含む酸化剤を供給する。酸化剤には、少なくとも酸素が含まれていればよい。酸化剤としては、空気を用いることが好ましく、空気は加湿されていることがより好ましい。酸素供給部13は、空気極12における電気化学反応に利用されなかった酸素(以下、「残酸素」という。)を含む排出ガス(「第2排出ガス」の一例。以下、「第2排出ガス」という。)を残メタノール除去部50に供給する。
【0028】
燃料極14は、アノードとして機能する電極である。燃料極14は、アルカリ型燃料電池に使用される公知の燃料極触媒を含むものであればよく、特に限定されない。燃料極触媒の例としては、Pt、Ni、Co、Fe、Ru、Sn、及びPd等の金属触媒が挙げられる。金属触媒は、カーボン等の担体に担持されるのが好ましいが、金属触媒の金属原子を中心金属とする有機金属錯体の形態としてもよく、このような有機金属錯体を担体として担持されていてもよい。また、燃料極触媒の表面には多孔質材料等で構成された拡散層を配置してもよい。燃料極14ないしそれを構成する触媒の好ましい例としては、ニッケル、コバルト、銀、白金担持カーボン(Pt/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
【0029】
燃料極14の作製方法は特に限定されないが、例えば、燃料極触媒及び所望により担体をバインダーと混合してペースト状にし、このペースト状混合物を固体電解質体16の空気極12と反対側の面に塗布することにより形成すればよい。
【0030】
メタノール供給部15は、メタノール混合部70から供給される混合メタノールを燃料極14に供給する。メタノール供給部15は、混合メタノールを気体状態、液体状態、或いは気液混合状態で燃料極14に供給することができる。メタノール供給部15は、燃料極14における電気化学反応に利用されなかったメタノールと、燃料極14における電気化学反応によって生成される水(HO)及び二酸化炭素(CO)とを含む排出ガス(「第1排出ガス」の一例。以下、「第1排出ガス」という。)を回収タンク30に供給する。
【0031】
固体電解質体16は、水酸化物イオン伝導性を有するセラミックスである。固体電解質体16の水酸化物イオン伝導度は、高ければ高いほど好ましく、典型的には10−4〜10−1S/cmである。アルキメデス法で算出される固体電解質体16の相対密度は、90%以上が好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。固体電解質体16は、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide、以下「LDH」という。)によって構成することができる。
【0032】
LDHは、一般式:M2+1−x3+(OH)n−x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオンであり、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数であり、xは0.1〜0.4である)によって表される基本組成を有する。上記一般式において、M2+は、任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはMg2+、Ca2+及びZn2+が挙げられ、より好ましくはMg2+である。M3+は、任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはAl3+又はCr3+が挙げられ、より好ましくはAl3+である。An−は、任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはOH及びCO2−が挙げられる。従って、上記一般式において、M2+がMg2+を含み、M3+がAl3+を含み、An−がOH及び/又はCO2−を含むのが特に好ましい。nは、1以上の整数であるが、好ましくは1又は2である。xは、0.1〜0.4であるが、好ましくは0.2〜0.35である。mは、任意の実数である。また、上記一般式においてM3+の一部または全部を4価以上の価数の陽イオンで置き換えてもよく、その場合は、上記一般式における陰イオンAn−の係数x/nは適宜変更されてよい。
【0033】
固体電解質体16は、水酸化物イオン伝導性を有する無機固体電解質を含む粒子群と、この粒子群の緻密化や硬化を助ける補助成分との複合体であってもよい。あるいは、固体電解質体16は、基材としての開気孔性の多孔質体と、この多孔質体の孔を埋めるように孔中に析出及び成長させた無機固体電解質(例えばLDH)との複合体であってもよい。多孔質体は、アルミナ及びジルコニアなどのセラミックス材料や、発泡樹脂又は繊維状物質からなる多孔性シート等の絶縁性材料によって構成することができる。
【0034】
固体電解質体16は、板状、膜状及び層状のいずれの形態であってもよい。固体電解質体16が膜状又は層状である場合、固体電解質体16は、膜状又は層状の固体電解質体が多孔質基材上又は多孔質基材中に形成されたものであるのが好ましい。固体電解質体16が膜状又は層状である場合、固体電解質体16の厚さは、100μm以下とすることができ、好ましくは75μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは25μm以下、特に好ましくは5μm以下である。固体電解質体16を薄くすることによって、固体電解質体16の抵抗を低減できる。固体電解質体16の厚さの下限値は、用途に応じて設定可能であるが、ある程度の堅さを確保するには1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。固体電解質体16が板状である場合、固体電解質体16の厚さは、0.01mm〜0.5mmとすることができ、好ましくは0.02mm〜0.2mmであり、より好ましくは0.05mm〜0.1mmである。
【0035】
2.圧縮機20
圧縮機20は、固体アルカリ型燃料電池10に設けられた酸素供給部13の上流に配置される。圧縮機20は、酸素供給部13に供給される酸素を含む酸化剤に圧力を印加する。これによって、酸化剤は、酸素供給部13に所定圧力で圧送される。
【0036】
3.回収タンク30
回収タンク30は、固体アルカリ型燃料電池10に設けられたメタノール供給部15の下流に配置される。回収タンク30は、メタノール供給部15から排出される第1排出ガスに含まれるメタノールを回収する。具体的には、回収タンク30は、第1排出ガスを気液分離することによって、第1排出ガスに含まれるメタノール及び水をメタノール水溶液として回収する。また、回収タンク30は、メタノール水溶液から分離された二酸化炭素を外部に排出する。
【0037】
4.メタノール濃化部40
メタノール濃化部40は、回収タンク30の下流に配置される。メタノール濃化部40は、回収タンク30に回収されたメタノール水溶液に含まれるメタノールを濃化させる。本実施形態において、メタノール濃化部40は、メタノール水溶液から水を分離することによってメタノールを濃化させる。
【0038】
具体的には、メタノール濃化部40は、供給側空間41、水分離膜42及び透過側空間43を有する。供給側空間41には、回収タンク30からメタノール水溶液が供給される。水分離膜42は、供給側空間41に供給されたメタノール水溶液に含まれる水を選択的に透過させる。水分離膜42は、無機材料によって構成されることが好ましい。水分離膜42を構成する無機材料としては、ゼオライト、シリカ、アルミナ、或いは、これらの複合材料を用いることができ、ゼオライトが特に好適である。水分離膜42を透過した水は、透過側空間43に流出する。透過側空間43に流出した水には、微量のメタノール(以下、「残メタノール」という。)が含まれる。残メタノールを含む水は、透過側空間43から残メタノール除去部50に排出される。一方、供給側空間41に残留するメタノールは、メタノール混合部70に排出される。
【0039】
5.残メタノール除去部50
残メタノール除去部50は、メタノール濃化部40に設けられた透過側空間43の下流に配置される。残メタノール除去部50には、残メタノールを含む水が透過側空間43から供給される。
【0040】
残メタノール除去部50は、固体アルカリ型燃料電池10に設けられた酸素供給部13の下流に配置される。残メタノール除去部50には、残酸素を含む第2排出ガスが酸素供給部13から供給される。
【0041】
残メタノール除去部50は、透過側空間43から排出される水から残メタノールを除去する。具体的には、残メタノール除去部50は、酸素供給部15から排出される第2排出ガスに含まれる残酸素を用いて、残メタノールを触媒燃焼させる。燃焼用触媒としては、例えば白金やパラジウムなどの白金系触媒を用いることができる。
【0042】
また、残メタノール除去部50は、圧縮機20によって第2排出ガスに印加される圧力を利用して、残メタノール及び残酸素を圧縮する。このように、残メタノール及び残酸素を圧縮した状態で触媒燃焼させることによって、残メタノールの燃焼効率を向上させることができる。
【0043】
残メタノール除去部50は、残メタノールの燃焼によって生じる水及び二酸化炭素を外部に排出する。
【0044】
6.メタノールタンク60
メタノールタンク60は、メタノール混合部70の上流に配置される。メタノールタンク60は、メタノールを貯留する。メタノールタンク60に貯留されるメタノールの純度は、メタノール濃化部40に設けられた供給側空間41から排出されるメタノールの純度に応じて適宜設定される。
【0045】
7.メタノール混合部70
メタノール混合部70は、メタノール濃化部40及びメタノールタンク60の下流に配置される。メタノール混合部70には、メタノール濃化部40によって濃化されたメタノールと、メタノールタンク60に貯留されたメタノールとが供給される。
【0046】
メタノール混合部70は、メタノール濃化部40及びメタノールタンク60それぞれから供給されるメタノールを混合することによって混合メタノールを生成する。メタノール濃化部40及びメタノールタンク60それぞれから供給されるメタノールの混合比は、混合メタノールが所望の純度になるように適宜設定すればよい。
【0047】
メタノール混合部70は、固体アルカリ型燃料電池10のメタノール供給部15に生成した混合メタノールを供給する。
【0048】
(特徴)
燃料電池装置1は、固体アルカリ型燃料電池10と、固体アルカリ型燃料電池10のメタノール供給部15から排出される第1排出ガスに含まれるメタノールを回収する回収タンク30とを備える。従って、固体アルカリ型燃料電池10において利用されなかったメタノールを回収して再利用することができる。
【0049】
燃料電池装置1は、回収タンク30において回収されたメタノール水溶液に含まれるメタノールを濃化させるメタノール濃化部40を備える。従って、メタノールの純度を上げて再利用することができる。
【0050】
燃料電池装置1は、メタノール濃化部40から排出される水に含まれる残メタノールを除去する残メタノール除去部50を備える。従って、残メタノールが外部に排出されることを抑制できる。
【0051】
残メタノール除去部50は、固体アルカリ型燃料電池10の酸素供給部15から排出される第2排出ガスに含まれる残酸素を用いて残メタノールを触媒燃焼させる。従って、残メタノールを簡便に除去することができる。
【0052】
残メタノール除去部50は、圧縮機20によって第2排出ガスに印加される圧力を利用して残メタノール及び残酸素を圧縮した状態で残メタノールを触媒燃焼させる。従って、残メタノールの燃焼効率を向上させることができる。
【0053】
燃料電池装置1は、メタノール濃化部40によって濃化されたメタノールと、メタノールタンク60に貯留されたメタノールとを混合するメタノール混合部70を備える。従って、固体アルカリ型燃料電池10の燃料極14に、電気化学反応に適した濃度のメタノールを供給することができる。
【0054】
(他の実施形態)
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形又は変更が可能である。
【0055】
[変形例1]
上記実施形態において、メタノール濃化部40は、回収タンク30の下流に配置されることとしたが、図3に示すように、回収タンク30の上流に配置されていてもよい。すなわち、メタノール濃化部40は、固体アルカリ型燃料電池10のメタノール供給部15と回収タンク30との間に配置されていてもよい。
【0056】
この場合、メタノール濃化部40には、メタノール供給部15から直接的に第1排出ガスが供給される。メタノール濃化部40では、気体状の水が水分離膜42を透過し、気体状のメタノール及び二酸化炭素が透過側空間43に残留する。
【0057】
供給側空間41に残留する気体状のメタノール及び二酸化炭素は、回収タンク30においてメタノール水溶液と二酸化炭素とに気液分離される。
【0058】
透過側空間43に透過した水は、水タンク80に回収された後、水タンク80から残メタノール除去部50に供給される。
【0059】
[変形例2]
上記実施形態において、メタノール濃化部40は、水分離膜42を有することとしたが、周知のメタノール分離膜を有していてもよい。メタノール濃化部40がメタノール分離膜を有する場合には、供給側空間41と透過側空間43との配置を逆にすればよい。
【0060】
[変形例3]
上記実施形態において、電力消費装置6は、交流電力を消費することとしたが、直流電力を消費する装置であってもよい。この場合、DC/ACインバータ5は省略することができる。
【0061】
[変形例4]
上記実施形態において、燃料電池装置2の電力は、すべて蓄電装置3に充電されることとしたが、これに限られるものではない。例えば、燃料電池装置2の電力の一部は、蓄電装置3以外の蓄電装置に充電されてもよいし、蓄電装置3を介さず電力消費装置6に供給されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 電力供給システム
2 燃料電池装置
10 固体アルカリ型燃料電池
12 空気極
13 酸素供給部
14 燃料極
15 メタノール供給部
16 固体電解質体
20 圧縮機
30 回収タンク
40 メタノール濃化部
50 残メタノール除去部
60 メタノールタンク
70 メタノール混合部
【要約】
【課題】メタノールの利用効率を向上可能な燃料電池装置を提供する。
【解決手段】燃料電池装置1は、固体アルカリ型燃料電池10と、固体アルカリ型燃料電池10のメタノール供給部15から排出される第1排出ガスに含まれるメタノールを回収する回収タンク30とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3