(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般的に、はんだ付けに用いられるフラックスは、はんだ及びはんだ付けの対象となる接合対象物の金属表面に存在する金属酸化物を化学的に除去し、両者の境界で金属元素の移動を可能にする効能を持つ。このため、フラックスを使用してはんだ付けを行うことで、はんだと接合対象物の金属表面との間に金属間化合物が形成できるようになり、強固な接合が得られる。
【0003】
ソルダペーストは、はんだ合金の粉末とフラックスとを混合させて得られた複合材料である。ソルダペーストを使用したはんだ付けは、基板の電極等のはんだ付け部にソルダペーストが印刷され、ソルダペーストが印刷されたはんだ付け部に部品が搭載され、リフロー炉と称される加熱炉で基板を加熱してはんだを溶融させて、はんだ付けが行われる。
【0004】
ソルダペーストの供給方法としては、スクリーン印刷法等が一般的であるが、ソルダペーストを局所に塗布する塗布方法として、エアーディスペンス法、ジェットディスペンス法を用いた技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エアーディスペンス法、ジェットディスペンス法を用いた塗布方法では、はんだの飛散やノズル詰まり等の吐出不良が発生しやすく、安定塗布が困難であった。従来、ロジンや固形溶剤と任意の高粘性溶剤による粘度調整、チキソ剤によるチキソ比の調整等で対応してきたが、安定塗布は困難であった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、エアーディスペンス法、ジェットディスペンス法で安定塗布を可能としたフラックス及びフラックスを用いたソルダペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
溶剤と高粘性溶剤を含み、高粘性溶剤として1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールを含むフラックスを使用したソルダペーストでは、エアーディスペンス法で安定塗布が可能であることを見出した。
【0009】
そこで、本発明は、溶剤と高粘性溶剤とチキソ剤を含み、高粘性溶剤が1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールからなるフラックスである。
【0010】
なお、溶剤と高粘性溶剤とチキソ剤を含み、高粘性溶剤が1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールからなり、ロジンを含まないフラックスでは、無残渣用途で使用できる。
【0011】
一方、さらに、ロジンを含むことで、エアーディスペンス法に加えてジェットディスペンス法で安定塗布が可能であることを見出した。
【0012】
そこで、本発明は、ロジンと溶剤と高粘性溶剤とチキソ剤を含み、高粘性溶剤が1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールからなるフラックスである。
【0013】
本発明のフラックスでは、1,2,6−ヘキサントリオール及びイソボルニルシクロヘキサノールを、それぞれ5質量%以上20質量%以下含むことが好ましい。
【0014】
また、本発明のフラックスは、ロジンを含む場合、ロジンを20質量%以上40質量%以下含むことが好ましい。
【0015】
更に、本発明のフラックスは、溶剤を30質量%以上60質量%以下、チキソ剤を7質量%以上20質量%以下含むことが好ましい。また、本発明は、更に活性剤を3質量%以上10質量%以下含むことが好ましい。
【0016】
更に、本発明は、上述したフラックスと、金属粉を含むソルダペーストである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のフラックスでは、溶剤と高粘性溶剤を含み、高粘性溶剤が1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールからなることで、このフラックスと金属粉を含むソルダペーストの加圧時の流動性を向上させることができる。これにより、エアーディスペンス法で安定塗布が可能である。また、ロジンを含まないフラックスでは、無残渣用途で使用できる。
【0018】
更に、本発明のフラックスでは、ロジンと溶剤と高粘性溶剤を含み、高粘性溶剤が1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールからなることで、このフラックスと金属粉を含むソルダペーストの加圧時の流動性を向上させることができると共に、液滴形状を安定させることができる。これにより、エアーディスペンス法に加えてジェットディスペンス法で安定塗布が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<本実施の形態のフラックスの一例>
本実施の形態のフラックスは、溶剤と高粘性溶剤とチキソ剤を含み、ロジンを含まず、高粘性溶剤が1,2,6−ヘキサントリオール(高級アルコール)とイソボルニルシクロヘキサノール(テルペン誘導体)からなる。
【0020】
また、本実施の形態のフラックスは、ロジンと溶剤と高粘性溶剤とチキソ剤を含み、高粘性溶剤が1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールからなる。
【0021】
1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールを含むフラックスと、金属粉が混合されたソルダペーストは、加圧時の流動性を向上させることができ、ロジンや固形溶剤と任意の高粘性溶剤による粘度調整、チキソ剤によるチキソ比の調整と比較して、エアーディスペンス法での安定塗布が可能となる。
【0022】
また、フラックスがロジンを含まないことで、無残渣の用途で使用できる。一方、フラックスにロジンを含むことで、ソルダペーストの加圧時の流動性を向上させることができると共に、液滴形状を安定させることができ、エアーディスペンス法に加えてジェットディスペンス法で安定塗布が可能である。
【0023】
1,2,6−ヘキサントリオールは、エアーディスペンス法、ジェットディスペンス法で安定塗布を可能とする本実施の形態のフラックスにおいて必須添加の成分であり、1,2,6−ヘキサントリオールの含有量は、フラックスの全量を100とした場合に5質量%以上20質量%以下である。
【0024】
イソボルニルシクロヘキサノールは、エアーディスペンス法、ジェットディスペンス法で安定塗布を可能とする本実施の形態のフラックスにおいて必須添加の成分であり、イソボルニルシクロヘキサノールの含有量は、フラックスの全量を100とした場合に5質量%以上20質量%以下である。
【0025】
溶剤としては、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、グリコール系溶剤、テルピネオール類等が挙げられる。アルコール系溶剤としてはイソプロピルアルコール、1,2−ブタンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,2′−オキシビス(メチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルプロピレントリグリコール、ブチルプロピレントリグリコール、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。グリコール系溶剤としては、トリメチロールプロパン等が挙げられる。また、溶剤として25℃で固形の固形溶剤を含んでもよく、固形溶剤としては、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(2、2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、ジオキサングリコール等が挙げられる。
【0026】
溶剤は、エアーディスペンス法、ジェットディスペンス法で安定塗布を可能とする本実施の形態のフラックスにおいて必須添加の成分であり、これらの1種または2種以上を使用することができる。溶剤の含有量は、フラックスの全量を100とした場合に30質量%以上60質量%以下である。
【0027】
チキソ剤としては、ワックス系チキソ剤、アマイド系チキソ剤が挙げられる。ワックス系チキソ剤としては例えば硬化ヒマシ油等が挙げられる。アマイド系チキソ剤としてはラウリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ステアリン酸アマイド(ステアリン酸アミド)、ベヘン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、不飽和脂肪酸アマイド、p−トルアミド(p−トルエンメタンアマイド)、芳香族アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、メチレンビスオレイン酸アマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイド、m−キシリレンビスステアリン酸アマイド、芳香族ビスアマイド、飽和脂肪酸ポリアマイド、不飽和脂肪酸ポリアマイド、芳香族ポリアマイド、置換アマイド、メチロールステアリン酸アマイド、メチロールアマイド、脂肪酸エステルアマイド等が挙げられる。
【0028】
チキソ剤は、エアーディスペンス法、ジェットディスペンス法で安定塗布を可能とする本実施の形態のフラックスにおいて任意添加の成分であり、これらの1種または2種以上を使用することができる。チキソ剤の含有量は、フラックスの全量を100とした場合に7質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0029】
ロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等の原料ロジン、並びに該原料ロジンから得られる誘導体が挙げられる。該誘導体としては、例えば、精製ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、酸変性ロジン、フェノール変性ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物等が挙げられる。
【0030】
ロジンは、ジェットディスペンス法で安定塗布を可能とする本実施の形態のフラックスにおいて必須添加の成分であり、これらの1種または2種以上を使用することができる。ロジンの含有量は、フラックスの全量を100とした場合に20質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0031】
本実施の形態のフラックスは、活性剤を含んでもよい。活性剤としては、有機酸、イミダゾール系化合物、ハロゲン化合物等が挙げられる。
【0032】
有機酸としては、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン二酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、サリチル酸、ジグリコール酸、ジピコリン酸、ジブチルアニリンジグリコール酸、スベリン酸、セバシン酸、チオグリコール酸、テレフタル酸、ドデカン二酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、ピコリン酸、フェニルコハク酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、ラウリン酸、安息香酸、酒石酸、イソシアヌル酸トリス(2−カルボキシエチル)、グリシン、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2−キノリンカルボン酸、3−ヒドロキシ安息香酸、リンゴ酸、p−アニス酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0033】
イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−ウンデシルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−エチル−4′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、エポキシ−イミダゾールアダクト、2−メチルベンゾイミダゾール、2−オクチルベンゾイミダゾール、2−ペンチルベンゾイミダゾール、2−(1−エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンゾイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール等が挙げられる。
【0034】
ハロゲン化合物としては、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1−ブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール等が挙げられる。
【0035】
活性剤は、エアーディスペンス法、ジェットディスペンス法で安定塗布を可能とする本実施の形態のフラックスにおいて任意添加の成分であり、これらの1種または2種以上を使用することができる。活性剤の含有量は、フラックスの全量を100とした場合に3質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0036】
<本実施の形態のソルダペーストの一例>
本実施の形態のソルダペーストは、上述したフラックスと、金属粉を含む。金属粉は、Sn単体、または、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Bi系、Sn-In系、Sn−Pb系等、あるいは、これらの合金にSb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P、Pb等を添加したはんだの粉体で構成される。なお、金属粉は、Pbを含まないはんだであることが好ましい。
【0037】
<本実施の形態のフラックス及びソルダペーストの作用効果例>
エアーディスペンス法、ジェットディスペンス法において、ノズルの詰まり抑制には、加圧時に速やかに流動することが重要である。また、ジェットディスペンス法での安定塗布には、ジェット吐出時のソルダペーストの液滴形状を安定させることが重要で、ソルダペーストの着弾時(基板等の塗布対象に当たった時)の飛散を抑制するには、ソルダペーストの液滴の尾の部分が切れずに着弾することが重要である。
【0038】
そこで、溶剤と高粘性溶剤とチキソ剤を含み、高粘性溶剤が1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールからなるフラックス、及び、このフラックスを用いたソルダペーストでは、ソルダペーストの加圧時の流動性を向上させることができ、ロジンや固形溶剤と任意の高粘性溶剤による粘度調整、チキソ剤によるチキソ比の調整と比較して、エアーディスペンス法での安定塗布が可能となる。
【0039】
また、フラックスがロジンを含まないことで、無残渣の用途で使用できる。一方、フラックスにロジンを含むことで、ソルダペーストの加圧時の流動性を向上させることができると共に、液滴形状を安定させることができ、エアーディスペンス法に加えてジェットディスペンス法で安定塗布が可能である。
【実施例】
【0040】
以下の表1に示す組成で実施例と比較例のフラックスを調合し、このフラックスを使用してソルダペーストを調合して、塗布性について検証した。フラックスにロジンを含むソルダペーストについては、エアーディスペンス法とジェットディスペンス法のそれぞれで塗布性を検証した。フラックスにロジンを含まないソルダペーストについては、エアーディスペンス法でのみ塗布性を検証した。なお、表1における組成率は、フラックスの全量を100とした場合の質量%である。
【0041】
ソルダペーストは、エアーディスペンス法で塗布する場合、フラックスが11質量%、金属粉が89質量%である。また、ジェットディスペンス法で塗布する場合、フラックスが15質量%、金属粉が85質量%である。更に、ソルダペースト中の金属粉は、Agが3.0質量%、Cuが0.5質量%、残部がSnであるSn−Ag−Cu系のはんだ合金であり、金属粉の粒径は5μm〜15μmである。
【0042】
<エアーディスペンス法での塗布性の評価>
(1)検証方法
ガラスエポキシ基板のCu張積層基板へ、エアーディスペンサーを用いて実施例のフラックスを使用したソルダペースト、比較例のフラックスを使用したソルダペーストを塗布した。各実施例、各比較例のソルダペーストについて、それぞれ6万ショットを連続塗布して、塗布性を判定した。判定結果は以下の判定基準に従って行った。なお、エアーディスペンサーのニードル、ノズル内径は、好ましくは0.1mm以上1.5mmであり、本検証では、0.35mmのものを使用した。また、塗布圧は、好ましくは80kpa以上200kpa以下であり、本検証では、100kpaとした。更に、塗布時間は、好ましくは80mmsec以上500mmsec以下であり、本検証では100mmsecとした。また、塗布温度は、本検証では25℃とした。なお、ノズルと基板のクリアランスの最適値は、吐出量により変化するが、本検証では0.2mmとした
【0043】
(2)判定基準
〇:連続して安定した塗布量が得られた。
△:塗布量が安定しなかった。
×:塗布量が安定せず、未転写部が発生した。
【0044】
<ジェットディスペンス法での塗布性の評価>
(1)検証方法
ガラスエポキシ基板のCu張積層基板へ、ジェットディスペンサーを用いて実施例のフラックスを使用したソルダペースト、比較例のフラックスを使用したソルダペーストを塗布した。ジェットディスペンサーとしてはピエゾ式のジェットプリンターを用い、各実施例、各比較例のソルダペーストについて、それぞれ1万ショットを連続塗布して、塗布性を判定した。判定結果は以下の判定基準に従って行った。
【0045】
(2)判定基準
〇:全パターンを狙い位置に塗布できた。
×:位置ずれ、ミッシングが発生又は多発した。またははんだが飛ばなかった。
【0046】
【表1】
【0047】
本発明では、実施例1〜実施例3に示すように、高粘性溶剤として1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールを、本発明で規定された範囲内でそれぞれ5質量%以上20質量%以下含み、他の高粘性溶剤は含まず、溶剤としてジエチレングリコールモノヘキシルエーテルを、本発明で規定された範囲内で30質量%以上60質量%以下含み、チキソ剤としてステアリン酸アミドと硬化ひまし油を、本発明で規定された範囲内で7質量%以上20質量%以下含み、ロジンとして酸変性ロジンまたは重合ロジンを、本発明で規定された範囲内で20質量%以上40質量%以下含み、活性剤として有機酸であるコハク酸、グルタル酸、アゼライン酸、イミダゾールとして2−フェニルイミダゾール、ハロゲン化合物としてトランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオールの所定の組み合わせを、本発明で規定された範囲内で3質量%以上10質量%以下含むフラックスでは、エアーディスペンス法及びジェットディスペンス法のいずれでも所望の塗布性が得られた。
【0048】
また、実施例4〜実施例5に示すように、高粘性溶剤として1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールを、本発明で規定された範囲内でそれぞれ5質量%以上20質量%以下含み、溶剤としてジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルとトリメチロールプロパンの組み合わせ、更には固形溶剤である2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2、2−ジメチル−1,3−プロパンジオールの組み合わせを、本発明で規定された範囲内で30質量%以上60質量%以下含み、チキソ剤としてステアリン酸アミドとp−トルアミドの組み合わせを、本発明で規定された範囲内で7質量%以上20質量%以下含み、活性剤とロジンを含まないフラックスでは、エアーディスペンス法で所望の塗布性が得られた。
【0049】
更に、実施例6に示すように、高粘性溶剤として1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールを、本発明で規定された範囲内でそれぞれ5質量%以上20質量%以下含み、溶剤としてジエチレングリコールジブチルエーテルとトリメチロールプロパンの組み合わせを、本発明で規定された範囲内で30質量%以上60質量%以下含み、チキソ剤としてステアリン酸アミドとp−トルアミドの組み合わせを、本発明で規定された範囲内で7質量%以上20質量%以下含み、活性剤とロジンを含まないフラックスでは、エアーディスペンス法で所望の塗布性が得られた。なお、実施例4〜実施例6では、評価結果に記載していないが、ロジンを含まないことで無残渣の用途に使用できた。
【0050】
これに対し、比較例1に示すように、高粘性溶剤として1,2,6−ヘキサントリオールを、本発明で規定された範囲内で含むが、イソボルニルシクロヘキサノールを含まないフラックスでは、溶剤、チキソ剤、ロジン及び活性剤を、本発明で規定された範囲内で含んでも、エアーディスペンス法では所望の塗布性を満たさないものの多少の塗布性が得られたが、ジェットディスペンス法で所望の塗布性が得られなかった。
【0051】
また、比較例2に示すように、高粘性溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを、本発明で規定された範囲内で含むが、1,2,6−ヘキサントリオールを含まないフラックスでは、溶剤、チキソ剤、ロジン及び活性剤を、本発明で規定された範囲内で含んでも、エアーディスペンス法、ジェットディスペンス法のいずれでも所望の塗布性が得られなかった。
【0052】
更に、比較例3に示すように、高粘性溶剤として1,2,6−ヘキサントリオールを、本発明で規定された範囲内で含むが、イソボルニルシクロヘキサノールを含まないフラックスでは、溶剤、チキソ剤を、本発明で規定された範囲内で含み、ロジン、活性剤を含まなくても、エアーディスペンス法で所望の塗布性が得られなかった。
【0053】
また、比較例4に示すように、高粘性溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノールを、本発明で規定された範囲内で含むが、1,2,6−ヘキサントリオールを含まないフラックスでは、溶剤、チキソ剤を、本発明で規定された範囲内で含み、ロジン、活性剤を含まなくても、エアーディスペンス法では所望の塗布性を満たさないものの多少の塗布性が得られたが、ジェットディスペンス法で所望の塗布性が得られなかった。
【0054】
以上のことから、溶剤と高粘性溶剤とチキソ剤を含み、高粘性溶剤が1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールからなるフラックス、及び、このフラックスを用いたソルダペーストでは、ロジンや固形溶剤と任意の高粘性溶剤による粘度調整、チキソ剤によるチキソ比の調整と比較して、エアーディスペンス法での安定塗布が可能となる。
【0055】
また、フラックスがロジンを含まないことで、無残渣の用途で使用できる。
【0056】
更に、溶剤と高粘性溶剤とチキソ剤とロジンを含み、高粘性溶剤が1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールからなるフラックス、及び、このフラックスを用いたソルダペーストでは、エアーディスペンス法に加えてジェットディスペンス法で安定塗布が可能である。
【0057】
また、本発明のフラックスは、活性剤として有機酸、イミダゾール系化合物、ハロゲン化合物の何れかまたはその組み合わせを含むことでも、高粘性溶剤が1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールからなることによる塗布性が阻害されず、これらに対して十分な効果が得られた。
【解決手段】エアーディスペンス法で用いるフラックスは、溶剤と高粘性溶剤とチキソ剤を含み、ロジンを含まず、高粘性溶剤が1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールからなる。また、エアーディスペンス法及びジェットディスペンス法で用いるフラックスは、溶剤と高粘性溶剤とチキソ剤とロジンを含み、高粘性溶剤が1,2,6−ヘキサントリオールとイソボルニルシクロヘキサノールからなる。