(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691331
(24)【登録日】2020年4月14日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】吹矢に付けるカートリッジ
(51)【国際特許分類】
A01M 29/16 20110101AFI20200511BHJP
F41B 1/00 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
A01M29/16
F41B1/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-213307(P2018-213307)
(22)【出願日】2018年10月26日
(65)【公開番号】特開2020-65528(P2020-65528A)
(43)【公開日】2020年4月30日
【審査請求日】2018年11月2日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】318014164
【氏名又は名称】安達 正男
(72)【発明者】
【氏名】安達 正男
【審査官】
吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−061112(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3106427(JP,U)
【文献】
独国特許出願公開第10323269(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/16
F41B 1/00
F42B 4/02
F42B 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に金属ピンがある吹矢の矢に装着される円筒形のカートリッジにおいて、先端に火薬が装填され、当該火薬と前記金属ピンとが接するように前記矢の先端から挿入され、前記矢と一体化して飛行し、硬質の物体に衝突した衝撃によって前記火薬が爆発する構造をもつカートリッジ。
【請求項2】
後部筒口から円筒面に平行な切込みを有したカートリッジにおいて、矢の挿入時に矢の円錐面によって形状が変化した円筒が、元の形状に戻ろうとする力によって、矢の円錐面を把持・挟持して密着する構造をもち、矢と一体化構造となって空気抵抗を減ずることを特徴とする請求項1のカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥獣おどしを目的とした吹矢の矢先に付ける、火薬を装填したカートリッジとその構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、火薬を用いた鳥獣おどしは、「特許文献1」に記載されているような固定式の装置や「特許文献2」に記載されるロケット花火、人間の手元近くで音の出る玩具の銃や爆竹が一般的であった。汎用はされていないが「特許文献3」に類する弾丸も範疇に入る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再表2005/044000号広報
【特許文献2】特開2012−013367号広報
【特許文献3】実開昭55−029340号広報
【特許文献4】特許第4910074号広報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】野津喬著「鳥獣被害対策のポイント」大成出版社 2011年7月30日発行 p.38
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術の「特許文献1」は設置場所に鳥獣が居ない状況でも爆発することがある。「特許文献2」は発射音や煙で気づかれて意外性に欠けるほか、爆発位置も空中であったり逃げた後であったりして爆発のタイムラグが生じる。「特許文献3」は火薬の量不足のため必要な爆発音が得られない。人の持つ玩具の銃や爆竹は、鳥獣からの距離が遠過ぎて与える脅威や心理的ショックが薄れる。
【0006】
鳥獣を撃退するためには、不意の爆発音を足元で起こして大きな驚愕を与え、ここが危険な場所だと認識させる必要がある。
【0007】
本発明は、油断している鳥獣の足元へ小さな発射音で火薬を撃ちこみ、突発的な爆発音を作ることのできる吹矢の特性を活用した。
【0008】
過去の歴史の中で、吹矢に火薬を装填して発射するという概念が希有なる理由は、吹矢は長い間狩猟の道具として扱われて来たという経緯がある。小動物を麻痺させる薬を先端に塗付して発射することが主流であり、音の出る火薬を付けて動物を追い払うような発想は生まれなかったと推測される。また、吹矢は発射音が小さいので、忍者のような特別な人物が暗殺等の武器として使用していたという記録から、自ら音を発して居場所を特定されるような発想も無かったと思われる。本発明は、鳥獣おどしという狩猟外の分野で吹矢の特性を活用するというものであり鳥獣おどしの道具として極めて新しい存在価値を生み出す。
【0009】
そのような仕儀の中で、本発明は、鳥獣おどしのための吹矢として、火薬の装填位置と矢の飛行性能の維持の二点を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一発明は、吹矢の矢が使い捨てではなく常に繰り返し使われている現状から、矢の保護策として火薬を矢から分離し、「請求項1」記載のカートリッジに装填したことである。
【0011】
第二発明は、矢のもつ飛行性能の高さに着目し、「請求項2」記載のカートリッジと矢を一体化して、矢の飛行性能を維持するための一体化構造にしたことである。
【発明の効果】
【0012】
「請求項1」記載の発明は、火薬をカートリッジ側に装填して矢を保護し、矢の複数回の再利用を可能にしたことである。
【0013】
「請求項2」記載の発明は、一体化構造にした矢の飛行性能の維持の効果によって、鳥獣の足元に火薬を正確に撃ちこむことを可能にしたことである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のカートリッジは矢の複数回の再利用と飛行性能の維持を、最少の部品点数と簡単な構造で実現した。以下、図面に沿って本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0016】
カートリッジの構造は円筒形であって、
図1に示すように、火薬を装填した先端部分と中空の中央部分、後部筒口から円筒面に平行した切込みを形成した切込み部分で構成する。
【0017】
矢の先端にある金属のピンは
図3の10に示すように、カートリッジ先端の火薬に接して位置する。
【0018】
図1の円筒面の切込み部分3は、矢の円錐8に押し出されて
図2の9のように開き、円筒の断面の円形は
図4のE位置に示した変形した形状の円弧になる。
【0019】
カートリッジの材質である合成樹脂には弾力性があるため、加わった力で変形すると元の形状に戻ろうとする性質がある。
図2のA線で切った断面を拡大した図が
図4である。
【0020】
図4の変形した円弧部分E位置には、元の円形に戻ろうとする力が生じる。したがって、この円弧部分では内向きの力で矢の円錐面D位置を把持する作用が働き、矢に密着する。
【0021】
また、
図3と
図5のC位置では、カートリッジの円筒面が矢の円錐8に押し曲げられ外側へ屈曲する。屈曲部分では元の状態に戻ろうとする力が生じ、円錐面の母線に平行した内向きの力で矢を挟持する作用が働き矢に密着する。
【0022】
カートリッジの内側に位置する矢の円錐側では、上記二つの作用に反発する反作用の力が発生し、それぞれの力を押し返す作用でカートリッジに密着する。
【0023】
結果的に矢とカートリッジは互いにくっ付き合い、カートリッジと矢の境界部分は密着して間隙が無くなり、空気抵抗を減ずる一体化構造の形状となる。
【実施例2】
【0024】
本発明で重視するところは、矢の再利用の回数と飛行性能の維持を目的とする一体化構造にある。以下、本発明の検証実験によってその効果を実証する。
【0025】
近年、吹矢はスポーツとして社会的に普及し「特許文献4」により、矢の飛行性能は格段に向上した。命中の正確性を競う吹矢の競技会は、一般的に「社団法人日本スポーツ吹矢協会」の主催する大会が代表される。したがって、以下に示した検証実験に用いた矢は、飛行性能の高い当協会認定の矢を使用した。実験者は3段位所有の男性が立ち姿勢で行った。
【0026】
また、カートリッジは直径4.5mm、長さ70mm、切込みの長さ23mmの円筒形でプロピレピレン製のストロー筒を使用し、火薬は市販化されているキャップ火薬を使用した。
【0027】
以下は、本発明の効果を確認する検証実験の結果である。
【0028】
下表は、一体化構造の矢の複数回の再利用に関する、使用可能回数の実験結果である。
【表1】
【0029】
上記の表において示したように、一体化した矢5本について検証した。矢が火薬の爆発によって受ける先端の被膜剥離の損傷が認められる平均使用可能回数は33.8回であった。また、矢のフィルムの被膜剥離後も衝撃によるねじれ等を戻すことで発射は可能であり、最大の再使用回数は153回であった。
【0030】
下表は、飛行性能の指標となる空気抵抗を飛距離によって数値化した実験結果である。
【表2】
【0031】
上記の表において示したように、一体化構造の矢10本の平均飛距離は56.3mで無装着の矢を100%とした平均飛距離の94.1%の性能を維持した。
【0032】
下表は、飛行性能の指標となる直進性を点数化して比較した実験結果である。的の距離は10m、点数は的の中央から直径6cmを7点、12cmを5点、18cmを3点、24cmを1点とし、1回5本で35点満点とする。
【表3】
【0033】
上記の表において示したように、一体化構造の矢5本の合計点は172点で無装着の矢の平均点数を100%とした合計点の94.5%の的中率を維持した。この点数は日本スポーツ吹矢協会の定める段級位の4段位合格点にあたり、直進性は非常に高いと言える。
【0034】
検証実験の結果、一体化構造の矢の再利用回数は33回以上可能、空気抵抗と直進性では無装着の矢の94%以上の数値を示し、一定の飛行性能を維持できることを実証した。
【実施例3】
【0035】
本発明のカートリッジの直径と長さ、切込みの長さ、材質や装飾、火薬の質と量、先端の形状等は「実践例1」に記載した一体化構造の形状下で限定されない。
【0036】
的として指定する物体は、動物の周囲にある樹木の幹や根、トタン板、岩石、ブロック壁、電柱等の硬質の材質。水平面では堅い土面、コンクリート、アスファルト、タイル、コンパネ板、鉄板等で仰角45度から60度で発射し、50m以上離れた地点で爆発を起こすことができる。
【0037】
誤ってスズメ、ハト、猫等の小動物に当っても、衝撃力不足で爆発が起きないばかりでなく先端が扁平のために傷を負わせることは無い。しかし、多少の驚きと痛みは与えることができ鳥獣おどしの一助になる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のカートリッジは、構造が簡単で製造過程が簡易的であり、火薬を用いた通常の鳥獣おどしの用具より生産性コストが極端に低い。
【0039】
また、矢の再利用としての回収効果により、放った矢は放置ゴミとならず環境保全活動の一助となる。
【0040】
硬質の物体に命中させることで爆発音を得られるため、号砲や合図、セレモニー、祝い事、各種イベントや大会等でゲーム性をもった応用と楽しみ方ができる。
【0041】
本発明のカートリッジは、装着方法の変形例、発射装置や用具の開発、矢の色彩や模様、弓矢への応用など、産業上多くの考案や意匠を産む要素を多分に有している。
【符号の説明】
【0042】
1 火薬
2 カートリッジの中央部分
3 切込み
4 後部筒口
5 金属のピン
6 カートリッジ内の矢
7 カートリッジと矢の密着部分
8 矢の円錐
9 円錐面によって押し開かれた切込み部分
10 火薬とピンの接点
A
図4に示した断面図の切り取り位置
B カートリッジの円筒面
C 円筒面の屈曲部
D 矢の円錐面
E 切込み部分の円形が変形した円弧部分