特許第6691352号(P6691352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691352
(24)【登録日】2020年4月14日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】耕耘爪
(51)【国際特許分類】
   A01B 33/10 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   A01B33/10 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-75630(P2015-75630)
(22)【出願日】2015年4月2日
(65)【公開番号】特開2016-192949(P2016-192949A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2018年1月9日
【審判番号】不服2019-6692(P2019-6692/J1)
【審判請求日】2019年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】池田 俊朗
【合議体】
【審判長】 秋田 将行
【審判官】 西田 秀彦
【審判官】 小林 俊久
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭58−40802(JP,Y2)
【文献】 実開平3−99906(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B33/00-33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作業機の回転軸に取り付けられる取付基部から連続して延びる縦刃部および横刃部を有し、前記縦刃部から前記横刃部にかけて回転方向とは反対方向に湾曲するとともに、前記横刃部が前記縦刃部に対して一側方に湾曲した耕耘爪において、
前記横刃部のうち前記回転方向の後端側である峰縁側には、断面S字状の屈曲板部が形成され、
前記横刃部は、断面直線状の本体板部と、この本体板部に連設された前記屈曲板部とを有し、
前記屈曲板部は、前記本体板部に対して前記横刃部の湾曲方向とは反対側である前記横刃部の外面側に向かって湾曲した第1板部分と、この第1板部分に対して前記横刃部の内面側に向かって湾曲した第2板部分とにて構成され、かつ、前記横刃部の峰縁側のうち少なくとも前記横刃部の先端部を含む部分に形成され、
前記屈曲板部の前記第1板部分および前記第2板部分の両方の内面および外面は、いずれも湾曲面になっており、
前記本体板部、前記第1板部分および前記第2板部分は、前記回転方向とは反対方向に順に並んでいる
ことを特徴とする耕耘爪。
【請求項2】
断面S字状の屈曲板部は、横刃部の峰縁側において前記横刃部の折曲開始線の近接位置から前記横刃部の先端位置にわたって長手状に形成され
前記横刃部の本体板部の外面は、平面になっており、
前記屈曲板部の第1板部分および第2板部分の両方の外面は、いずれも前記本体板部の外面よりも外面側に位置している
ことを特徴とする請求項1記載の耕耘爪。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機の回転軸に取り付けて使用する耕耘爪に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された耕耘爪が知られている。
【0003】
この従来の耕耘爪は、農作業機の回転軸(耕耘軸)に取り付けられる取付基部から連続して延びる縦刃部および横刃部を有し、縦刃部から横刃部にかけて回転方向とは反対方向に湾曲するとともに、横刃部が縦刃部に対して一側方(内面側)に湾曲し、横刃部の先端部分の峰縁側には反り返し部が形成されている。そして、この反り返し部は、一側方に湾曲する横刃部の湾曲方向とは反対方向にわずかに反り返るように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−92918号公報(図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の耕耘爪では、横刃部の反り返し部が圃場面の草や稈等を持ち回ったり切断したりするため、すきこみ性に問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、すきこみ性の向上を図ることができる耕耘爪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の耕耘爪は、農作業機の回転軸に取り付けられる取付基部から連続して延びる縦刃部および横刃部を有し、前記縦刃部から前記横刃部にかけて回転方向とは反対方向に湾曲するとともに、前記横刃部が前記縦刃部に対して一側方に湾曲した耕耘爪において、前記横刃部のうち前記回転方向の後端側である峰縁側には、断面S字状の屈曲板部が形成され、前記横刃部は、断面直線状の本体板部と、この本体板部に連設された前記屈曲板部とを有し、前記屈曲板部は、前記本体板部に対して前記横刃部の湾曲方向とは反対側である前記横刃部の外面側に向かって湾曲した第1板部分と、この第1板部分に対して前記横刃部の内面側に向かって湾曲した第2板部分とにて構成され、かつ、前記横刃部の峰縁側のうち少なくとも前記横刃部の先端部を含む部分に形成され、前記屈曲板部の前記第1板部分および前記第2板部分の両方の内面および外面は、いずれも湾曲面になっており、前記本体板部、前記第1板部分および前記第2板部分は、前記回転方向とは反対方向に順に並んでいるものである。
【0008】
請求項2記載の耕耘爪は、請求項1記載の耕耘爪において、断面S字状の屈曲板部は、横刃部の峰縁側において前記横刃部の折曲開始線の近接位置から前記横刃部の先端位置にわたって長手状に形成され、前記横刃部の本体板部の外面は、平面になっており、前記屈曲板部の第1板部分および第2板部分の両方の外面は、いずれも前記本体板部の外面よりも外面側に位置しているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、横刃部の峰縁側に断面S字状の屈曲板部が形成されているため、すきこみ性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る耕耘爪を備えた農作業機の側面図である。
図2】同上耕耘爪の側面図である。
図3】同上耕耘爪の底面図である。
図4図2におけるA−A拡大断面図である。
図5】同上耕耘爪の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、そのトラクタの走行により圃場(水田や畑等)を進行方向である前方に移動しながら耕耘整地作業する耕耘作業機である。
【0013】
農作業機1は、図示しないトラクタの後部の3点リンク(農作業機昇降支持装置)に連結された機体2を備えている。
【0014】
機体2は、前後方向の入力軸3が前方に向かって突設されたミッションケース4を左右方向中央部に有している。なお、入力軸3は、トラクタのPTO軸にジョイントを介して接続され、そのPTO軸の回転時に回転してトラクタ側からの動力を農作業機1側へ入力する。
【0015】
ミッションケース4の左右の側面部には、左右方向長手状のフレームパイプ5の内端部がそれぞれ取り付けられている。左側のフレームパイプ5の外端部である左端部にはチェーンケース6の上端部が取り付けられている。右側のフレームパイプ5の外端部である右端部には板状のブラケット(図示せず)の上端部が取り付けられている。
【0016】
そして、互いに離間対向するチェーンケース6の下部およびブラケットの下部間には、入力軸3側からの動力によって所定の回転方向(例えばダウンカット方向)に回転しながら耕耘作業をする耕耘体(ロータリー)11が架設されている。
【0017】
また、機体2は、耕耘体11の上方部を覆う板状の耕耘カバー部10を有し、この耕耘カバー部10の後端部には、耕耘体11の後方で整地作業をする板状の整地体(均平板)12が左右方向の軸13を中心として上下方向に回動可能に設けられている。
【0018】
さらに、整地体12には背板15が立設され、この背板15と機体2との間には整地体12の接地圧を調整するための接地圧調整手段16が設けられている。また、機体2の前部には、耕耘体11の耕耘深さを調整するためのゲージ輪17が高さ位置調節可能に設けられている。
【0019】
そして、耕耘体11は、左側のチェーンケース6と右側のブラケットとによって回転可能に支持され入力軸3側からの動力で回転する左右方向の回転軸(耕耘軸)21と、この回転軸21に脱着可能に取り付けられ左右方向の回転中心軸線(回転軸21の軸芯)Xを中心として回転軸21とともに所定の回転方向に回転しながら耕耘作業をする細長板状の複数の耕耘爪22とを有している。
【0020】
ここで、耕耘爪22の具体的構成について、図2ないし図4を参照して説明する。
【0021】
耕耘爪22は、農作業機1の回転軸21に図示しない取付具(例えばボルトおよびナット等)にて脱着可能に取り付けられる取付基部25から連続して順に延びる縦刃部26および横刃部27を有している。
【0022】
つまり、耕耘爪22は、長手状の1枚の金属製の板部材のみからなるもので、長手方向一端側である基端側(耕耘体11の回転中心側)から長手方向他端側である先端側(耕耘体11の外周側)に向かって順に連続して位置する同じ幅(略同じ幅を含む)の3つの板部、つまり取付基部25、縦刃部26および横刃部27にて構成されている。
【0023】
なお、取付基部25には、複数、すなわち例えば2つの取付孔(ボルト用孔)28が形成されている。縦刃部26の幅方向一端側である回転方向前端側には断面三角形状の縦刃縁29が形成され、かつ、横刃部27の幅方向一端側である回転方向前端側には断面三角形状の横刃縁30が縦刃縁29に連続して形成されている。
【0024】
そして、耕耘爪22は、縦刃部26から横刃部27にかけて回転方向とは反対方向に湾曲するとともに、横刃部27が縦刃部26に対して一側方(図3では、上方)に湾曲しており、横刃部27の峰縁側(横刃部27の幅方向他端側である回転方向後端側)には、この横刃部27の長手方向に沿った細長板状で断面S字状(断面略S字状を含む)の屈曲板部31が形成されている。
【0025】
このS字状屈曲部である屈曲板部31は、横刃部27の峰縁側に横刃部27の折曲開始線(縦刃部26と横刃部27との境界線)Lの近接位置(折曲開始線Lの付近)から横刃部27の先端位置(耕耘爪22の先端)にわたって長手状に形成されている。つまり、屈曲板部31は、横刃部27の峰縁側の全長(略全長を含む)にわたって長手状に形成されている。なお、この図示した例では、屈曲板部31の端が折曲開始線Lに一致していないが、屈曲板部31の端が折曲開始線Lに一致するようにしてもよい。
【0026】
そして、屈曲板部31は、横刃部27の本体板部32に対して横刃部27の外面側(横刃部27の湾曲方向と反対側)に向かってわずかに湾曲した第1板部分31aと、この第1板部分31aに対して横刃部27の内面側(横刃部27の湾曲方向と同じ側)に向かってわずかに湾曲した第2板部分31bとにて構成されている。
【0027】
つまり、屈曲板部31は、本体板部32から緩やかなR状に湾曲した第1板部分31aと、この第1板部分31aからこの第1板部分31aの湾曲方向とは反対方向に緩やかなR状に湾曲した第2板部分31bとにて構成されており、その断面形状が緩やかなS字状(縦に延びたS字状)となっている。
【0028】
なお、第2板部分31bの長手方向に沿った端面(図4では、上端面)が、横刃部27の峰縁面27aとなっている。また、縦刃部26の内面および横刃部27の内面が、耕耘爪22の作用面22aとなっている。
【0029】
次に、上記農作業機1の作用等を説明する。
【0030】
トラクタの後部に農作業機1を連結して、トラクタの走行により農作業機1を前方に移動させると、耕耘体11の各耕耘爪22が回転中心軸線Xを中心として所定の回転方向に回転しながら耕耘作業をし、この耕耘体11の後方では整地体12が整地作業をする。
【0031】
この際、図5に示すように、耕耘爪22の断面S字状の屈曲板部31は、圃場面の夾雑物(例えば草や稈等)aを引っ張り込んで耕盤上に置いていくように作用する。つまり、この屈曲板部31は、圃場面の夾雑物aを持ち回ったり切断したりすることが少なく、すきこみ性が良好である。
【0032】
そして、このような耕耘爪22によれば、横刃部27の峰縁側に細長板状で断面S字状の屈曲板部31が形成されているため、すきこみ性の向上を図ることができる。
【0033】
また、屈曲板部31は、横刃部27の外面側に向かって湾曲した第1板部分31aと、横刃部27の内面側に向かって湾曲した第2板部分31bとにて構成されているため、これら両板部分31a,31bの内面および外面がいずれも滑らかな湾曲面(R面)になっており、耕耘作業時の振動の低減も図ることができる。
【0034】
なお、耕耘爪22の断面S字状の屈曲板部は、例えば横刃部27の先端部分の峰縁側のみに形成してもよい。
【0035】
また、耕耘爪22の断面S字状の屈曲板部は、例えば縦刃部26の峰縁側に延在するように形成してもよい。
【0036】
さらに、耕耘爪22は、耕耘作業機のほかに、耕耘作業を伴う各種の農作業機に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 農作業機
21 回転軸
22 耕耘爪
25 取付基部
26 縦刃部
27 横刃部
31 屈曲板部
31a 第1板部分
31b 第2板部分
32 本体板部
L 横刃部の折曲開始線
図1
図2
図3
図4
図5