特許第6691369号(P6691369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6691369レーザ投射表示装置およびレーザ光源の駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691369
(24)【登録日】2020年4月14日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】レーザ投射表示装置およびレーザ光源の駆動方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/02 20060101AFI20200421BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20200421BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   G09G3/02 A
   G02B26/10 C
   H04N5/74 H
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-207419(P2015-207419)
(22)【出願日】2015年10月21日
(65)【公開番号】特開2017-78811(P2017-78811A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大木 佑哉
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 欣穂
【審査官】 橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−538145(JP,A)
【文献】 特開2010−217647(JP,A)
【文献】 特開2010−217646(JP,A)
【文献】 特開2011−028065(JP,A)
【文献】 特開2011−039324(JP,A)
【文献】 特開2012−078533(JP,A)
【文献】 特開2009−212422(JP,A)
【文献】 特開2013−130832(JP,A)
【文献】 特開2010−161152(JP,A)
【文献】 特開2015−108750(JP,A)
【文献】 特開2007−003687(JP,A)
【文献】 特開2001−092015(JP,A)
【文献】 特開2006−041368(JP,A)
【文献】 特開2012−155019(JP,A)
【文献】 特開2013−015738(JP,A)
【文献】 特開2012−108397(JP,A)
【文献】 特開2011−090076(JP,A)
【文献】 特開2003−205640(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0169777(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/02
G02B 26/10
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に応じたレーザ光を投射して画像を表示するレーザ投射表示装置において、
前記レーザ光を発生するレーザ光源と、
前記レーザ光源を駆動するレーザ光源駆動部と、
前記レーザ光源駆動部に表示用の画像信号を供給する画像処理部と、を備え、
前記画像信号を表示するための動作レベルは、前記レーザ光源を最大光量が得られる明画像領域で動作させる場合と、前記レーザ光源の最大光量を低下させて暗画像領域で動作させる場合とがあり、
前記画像処理部は、前記画像信号が黒画素継続期間を有するとき、黒画素から黒画素以外の信号に切り替わる直前の所定期間において、前記画像信号に対し予備発光を行うための予備発光信号を印加する予備発光処理を行う機能を有しており、
前記画像処理部は前記画像信号の動作レベルに応じて、前記レーザ光源を前記暗画像領域で動作させる場合に前記予備発光処理を実行し、前記レーザ光源を前記明画像領域で動作させる場合には前記予備発光処理を実行しない、
ことを特徴とするレーザ投射表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ投射表示装置において、
前記画像処理部は、前記画像信号のレベルを閾値Qthと比較して黒画素を検出し、該検出した黒画素の継続期間が閾値Cthより大きいとき前記予備発光処理を行うことを特徴とするレーザ投射表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザ投射表示装置において、
前記画像処理部は、前記画像信号を表示するために前記レーザ光源をその閾値電流Ithの近傍で動作させるときに前記予備発光処理を行うことを特徴とするレーザ投射表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載のレーザ投射表示装置において、
前記画像処理部は、前記予備発光信号として、前記レーザ光源の前記暗画像領域における最大光量の1/10以下に相当する信号を印加することを特徴とするレーザ投射表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載のレーザ投射表示装置において、
前記画像処理部は、前記予備発光信号として、前記予備発光を予め定められたタイミングで繰り返し行うための間欠信号を印加することを特徴とするレーザ投射表示装置。
【請求項6】
画像信号に応じたレーザ光を投射して画像を表示する際のレーザ光源の駆動方法において、
前記画像信号を表示するための動作レベルが、前記レーザ光源を最大光量が得られる明画像領域で動作させる場合と、前記レーザ光源の最大光量を低下させて暗画像領域で動作させる場合とのいずれの場合かを判定するステップと、
前記画像信号が黒画素継続期間を有するか否かを判定するステップと、
前記画像信号が前記黒画素継続期間を有するとき、黒画素から黒画素以外の信号に切り替わる直前の所定期間において、前記画像信号に対し予備発光を行うための予備発光信号を印加するステップと、
前記予備発光信号が印加された前記画像信号をレーザ光源駆動部に供給し、該レーザ光源駆動部により前記レーザ光源を駆動して、前記画像信号に応じたレーザ光を発生させるステップと、を備え、
前記予備発光信号を印加するステップでは、前記画像信号の動作レベルの判定の結果に応じて、前記レーザ光源を前記暗画像領域で動作させる場合に前記予備発光信号を印加し、前記レーザ光源を前記明画像領域で動作させる場合には前記予備発光信号を印加しないことを特徴とするレーザ光源の駆動方法。
【請求項7】
請求項6に記載のレーザ光源の駆動方法において、
前記予備発光信号を印加するステップでは、前記画像信号のレベルを閾値Qthと比較して黒画素を検出し、該検出した黒画素の継続期間が閾値Cthより大きいとき前記予備発光信号を印加することを特徴とするレーザ光源の駆動方法。
【請求項8】
請求項6に記載のレーザ光源の駆動方法において、
前記予備発光信号を印加するステップでは、前記画像信号を表示するために前記レーザ光源をその閾値電流Ithの近傍で動作させるときに前記予備発光信号を印加することを特徴とするレーザ光源の駆動方法。
【請求項9】
請求項6に記載のレーザ光源の駆動方法において、
前記予備発光信号を印加するステップでは、前記予備発光信号として、前記レーザ光源の前記暗画像領域における最大光量の1/10以下に相当する信号を印加することを特徴とするレーザ光源の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ等のレーザ光を2次元走査ミラー等で走査して画像表示を行うレーザ投射表示装置、およびこれに用いるレーザ光源の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体レーザとMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー等を用いて画像を投射するレーザ投射表示装置が実用化され、例えば自動車の運転支援用のヘッドアップディスプレイとして使用されている。このようなレーザ投射表示装置では、2次元走査ミラーを水平及び垂直方向に走査すると同時にレーザ光源を変調することで、所望の画像を投射面に表示するものである。
【0003】
例えば特許文献1には、レーザ光をラスタースキャンし画像をスクリーンに投影する画像投影装置において、スクリーン上に表示される投影画像の明度が均一になるように、水平方向のラスタースキャン速度の変化に対応してレーザ光の発光強度を調整する構成が記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、パルス駆動磁気変調オーバーライト方式の光磁気記録再生装置において、レーザ光源を矩形状のパルスで駆動したとき、レーザ発光波形はパルスの立ち上がりでオーバーシュートして振動する現象を課題としている。そしてその対策として、レーザが発光するが記録媒体の記録膜に影響を与えない範囲で、レーザ光の発光強度を記録パワーレベルに上げる前に予備的に発光させる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−343397号公報
【特許文献2】特開2003−85845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本件発明者は、レーザ光の光強度が小さい領域で、画像信号の輝度がステップ状に増加する場とき、レーザ光の立ち上がり応答が劣化する現象を発見した。この現象を図面で説明する。
【0007】
図4(a)は投射面に表示された画像40の例を示し、黒背景41の中央部に白窓42を有する場合である。白窓42の左右端部(明暗切替位置)において、本来の白色よりも輝度が低下する部分43が発生している。本件発明者の検討によれば、この現象は、図5(a)に示すように、レーザドライバの駆動電流の立ち上がり特性が劣化することで発光波形がなまることが原因と推定され、特にレーザ光源をその閾値電流近傍で動作させる場合に生じやすいことが判明した。検討結果の詳細は後述する。
【0008】
上記特許文献1,2では、図4(a)や図5(a)に示すレーザ光の立ち上がり応答の劣化については考慮されていない。なお、特許文献2に記載の技術もパルス発光時の立ち上がり特性に関するものであるが、オーバーシュートによる振動現象(リンギング)を抑制するものであって、図4(a)や図5(a)に示す現象とは異なるものである。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、レーザ光の立ち上がり応答を改善し、画像の明暗切替位置での画質劣化をなくし高品質な画像を表示可能なレーザ投射表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、画像信号に応じたレーザ光を投射して画像を表示するレーザ投射表示装置において、前記レーザ光を発生するレーザ光源と、前記レーザ光源を駆動するレーザ光源駆動部と、前記レーザ光源駆動部に表示用の画像信号を供給する画像処理部と、を備え、前記画像処理部は、前記画像信号が黒画素継続期間を有するとき、黒画素から黒画素以外の信号に切り替わる直前の所定期間において、前記画像信号に対し予備発光を行うための予備発光信号を印加する予備発光処理を行うことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、画像信号に応じたレーザ光を投射して画像を表示する際のレーザ光源の駆動方法において、前記画像信号が黒画素継続期間を有するか否かを判定するステップと、前記画像信号が前記黒画素継続期間を有するとき、黒画素から黒画素以外の信号に切り替わる直前の所定期間において、前記画像信号に対し予備発光を行うための予備発光信号を印加するステップと、前記予備発光信号が印加された前記画像信号をレーザ光源駆動部に供給し、該レーザ光源駆動部により前記レーザ光源を駆動して、前記画像信号に応じたレーザ光を発生させるステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、画像明暗切替位置での輝度低下や色むらを改善し、高品質な画像を表示可能なレーザ投射表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1におけるレーザ投射表示装置の基本構成を示すブロック図。
図2】画像処理部およびレーザドライバの内部構成を示す図。
図3】半導体レーザの光量−順方向電流特性の一例を示す図。
図4】暗画像領域で表示した画像の一例を示す図。
図5】半導体レーザの発光波形を示す図。
図6】半導体レーザの立ち上がり応答を詳細に測定した結果を示す図。
図7】黒画素判定処理(S100)を示すフローチャート。
図8】予備発光処理(S200)を示すフローチャート。
図9】実施例2における予備発光を追加したときの半導体レーザの発光波形を示す図。
図10】実施例2における予備発光処理(S300)を示すフローチャート。
図11】実施例3におけるモニタ用発光とこれに印加する予備発光を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態を説明するためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素若しくは全要素をこれと同等なものに置換した実施形態を採用することが可能であり、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【実施例1】
【0015】
図1は、実施例1におけるレーザ投射表示装置の基本構成を示すブロック図である。レーザ投射表示装置1は、画像処理部2、フレームメモリ3、レーザドライバ(レーザ光源駆動部)4、レーザ光源5、反射ミラー6、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)走査ミラー7、MEMSドライバ8、増幅器9、光センサ10、照度センサ11、CPU(Central Processing Unit)12を有し、投射面に表示画像13を表示する。各部の動作を説明する。
【0016】
画像処理部2は、外部から入力される画像信号に各種補正を加えた投射用の画像信号を生成し、かつそれに同期した水平同期(H同期)信号及び垂直同期(V同期)信号を生成し、MEMSドライバ8へ供給する。画像処理部2で行う各種補正には、MEMS走査ミラー7の走査に起因する画像歪み補正、ルックアップテーブル(LUT)による画像の階調調整などを含む。なお、画像歪みはレーザ投射表示装置1と投射面との相対角で異なること、レーザ光源5とMEMS走査ミラー7の光軸ずれなどのために発生する。生成された画像信号は、フレームメモリ3に一旦格納され、水平同期信号と垂直同期信号に同期した読み出し信号で読み出され、レーザドライバ4に供給される。
【0017】
また、画像処理部2では予備発光処理も行う。ここで予備発光処理とは、レーザ光の立ち上がり特性を改善するために、画像信号の所定の期間にレーザ光源5に対し所定の電流値が流れるよう予備発光用の画像信号を埋め込む処理である。また、予備発光処理を行う期間を設定するため、入力する画像信号に対し黒画素判定処理も行う。これらの詳細は後述する。
【0018】
レーザドライバ4は、画像処理部2から出力される画像信号(予備発光用を含む)を受け、それに応じてレーザ光源5の駆動電流を変調する。レーザ光源5は、例えば3色(R,G,B)用に3個の半導体レーザ5a,5b,5cを有し、画像信号のRGB毎に画像信号に対応したRGBのレーザ光を出射する。
【0019】
RGBの3つのレーザ光は反射ミラー6により合成され、MEMS走査ミラー7に照射される。反射ミラー6は、特定の波長の光を反射しそれ以外の波長の光を透過する3つのダイクロイックミラー6a,6b,6cを有し、RGBのレーザ光を1つのレーザ光に合成して、MEMS走査ミラー7に供給する。
【0020】
MEMS走査ミラー7は2軸の回転機構を有する画像の走査部であって、中央のミラー部を水平方向(H方向)と垂直方向(V方向)の2方向に振動させる。MEMSドライバ8は画像処理部2からの水平同期信号に同期して正弦波を生成し、また、垂直同期信号に同期したノコギリ波を生成して、MEMS走査ミラー7の駆動を制御する。これにより、図1の表示画像13に示すような軌跡でレーザ光は走査され、その走査がレーザドライバ4による変調動作と同期することで、入力画像を投射面に2次元状に表示することができる。
【0021】
光センサ10は、レーザ光源5から出射されるレーザ光の強度を検出する。すなわち、反射ミラー6cからのレーザ光の数%の漏れ光(反射光及び透過光)を検出し、増幅器9に出力する。増幅器9は、光センサ10の出力を画像処理部2により設定された増幅率に従い増幅した後、画像処理部2へ出力する。画像処理部2は、光センサ10の検出出力を入力画像信号の輝度レベルと比較し、所定のレベルになるようレーザドライバ4を制御する。
【0022】
照度センサ11は、レーザ投射表示装置1の周囲の照度を検出しCPU12へ出力する。CPU12は、照度センサ11からの信号もしくは外部からの制御信号を受け、画像処理部2に対し、生成する表示画像13の明るさを制御するための調光要求信号を供給する。
【0023】
図2は、図1の画像処理部2およびレーザドライバ4の内部構成を示す図である。外部から入力される画像信号は、画像処理部2内の画像補正部20に入力される。
【0024】
画像補正部20は、MEMS走査ミラー7の走査に起因する画像歪み補正、およびLUTによる画像の階調調整、ならびに発光制御部22からの予備発光制御信号27に基づき予備発光処理を行う。なお、予備発光制御信号27には、予備発光処理の実施を判定するための判定用閾値が含まれている。このように画像補正部20は、外部から入力される画像信号に対し上記の画像調整や予備発光処理を行い、タイミング調整部21へ補正後の画像信号28を送出する。
【0025】
タイミング調整部21は、画像補正部20から入力される補正後の画像信号28から水平同期信号と垂直同期信号を生成し、MEMSドライバ8および発光制御部22に送出する。また、画像信号28は、一旦フレームメモリ3に格納される。フレームメモリ3に格納された画像信号は、タイミング調整部21で生成される水平同期信号と垂直同期信号に同期した読み出し信号で読み出される。またフレームメモリ3内の画像信号は、入力された画像信号に対して1フレーム分遅延させて読み出される。
【0026】
読み出された画像信号は、ラインメモリ23に入力される。ラインメモリ23は1水平期間の画像信号を取り込み、次の水平期間で順次画像信号を読み出して、レーザドライバ4へ供給する。画像信号をラインメモリ23で一旦中継させる理由は、フレームメモリ3の読出しクロック周波数と、レーザドライバ4側へ画像信号を伝送する時の伝送クロック周波数が異なる場合に、タイミングずれを調整するためである。両者のクロック周波数が一致していればラインメモリ23は不要になる。
【0027】
発光制御部22は、光センサ10が検出し増幅器9により増幅された光出力に基づき、レーザドライバ4内の電流ゲイン回路24とオフセット電流回路25を制御する。これにより、経時劣化によるレーザ光の強度不足や、周囲環境の温度変化によるレーザ光出力の変動などに対し、投射画像の明るさやホワイトバランスを補正する機能を有する。また発光制御部22は、画像補正部20に対して予備発光制御信号27を送出する。
【0028】
次に、レーザドライバ4内の電流ゲイン回路24とオフセット電流回路25について説明する。電流ゲイン回路24は、ラインメモリ23から入力される画像信号値に対して電流ゲインを乗算することで、半導体レーザ5a〜5cに流れる電流値を制御する。なお、電流ゲインは、発光制御部22により設定される。また、オフセット電流回路25は、発光制御部22が設定するオフセット電流値に応じて、半導体レーザ5a〜5cが発光する下限値を決めるオフセット電流を調整する。よって、実際に半導体レーザ5a〜5cに流れる電流26は、電流ゲイン回路24で算出された画像信号と電流ゲインの乗算電流値と、オフセット電流回路25で設定されたオフセット電流値との合計となる。
【0029】
図3は、半導体レーザの光量−順方向電流特性の一例を示す図である。一般に半導体レーザは、ある閾値電流Ithを境にして光量Lが急峻に増加する特性を有する。また、電流Iに対する光量の変化量は一定ではなく、非線形の特性を有する。
【0030】
まず、明るい画像を表示する場合を説明する。例えば、レーザ投射表示装置1を車載表示装置(ヘッドアップディスプレイ)として使用した場合、昼間の明るい環境下ではレーザ投射表示装置が投射できる大きな光量を用いて明るい画像を表示するのがよい。
【0031】
そこで、明るい画像を表示する際に用いる電流範囲は、閾値電流Ithから最大光量Lmが得られる電流Imまでの範囲(以下、明画像領域と呼ぶ)とする。つまり、画像信号を8bit(最大255階調)で表したとき、画像信号(階調値)が0もしくは1の場合は順方向電流を閾値電流Ithに、画像信号(階調値)が255の場合は最大順方向電流Imとなるよう、電流ゲイン回路24とオフセット電流回路25を制御する。具体的には発光制御部22は、電流ゲイン回路24に対し電流ゲインを(Im−Ith)/255に設定し、オフセット電流回路25に対しオフセット電流値をIthに設定する。このように設定することで、半導体レーザに対し、画像信号が0の場合はIthの電流を、画像信号が255の場合はImの電流を流すことができる。なお、画像信号が0の場合は、電流を0にすることでレーザを消灯し、コントラストを得るよう制御してもよい。
【0032】
次に、暗い画像を表示する際に使用する場合を説明する。例えば、レーザ投射表示装置1を車載表示装置として使用した場合、夜間走行時やトンネル内走行時のように車両周囲が暗い環境下においては、最大光量Lmの明るさで画像を表示すると、運転手に眩しい印象を与えてしまう。よって、レーザ投射表示装置1は、暗い画像に切り替えて表示する必要がある。
【0033】
そこで、暗い画像を形成する際に用いる電流範囲として、閾値電流Ithを含む範囲を使用し、電流0から光量Laが得られる電流Iaまでの範囲(以下、暗画像領域と呼ぶ)とする。この光量Laは暗画像領域での最大光量であるが、明画像領域の最大光量Lmと比べ十分に低下させている。そのため発光制御部22は、電流ゲイン回路24に対し電流ゲインをIa/255に設定し、オフセット電流回路25に対しオフセット電流値を0に設定する。このように設定することで、画像信号が0の場合は半導体レーザに電流は流れず、画像信号が255の場合はIaの電流を流すようにして、暗画像領域の範囲で画像信号に応じて表示画像の明るさを変化させることができる。
【0034】
なお図3には、後述する予備発光に用いる光量L0と、そのために流す電流I0を併せて示している。光量L0は光量Laの1/10以下のレベルである。
【0035】
次に、暗画像領域におけるレーザ光の立ち上り応答の劣化と本実施例による改善について、図4図6を用いて説明する。まず、従来法における課題から説明する。
【0036】
図4(a)は、上記の暗画像領域で表示した画像の一例を示す図である。表示する画像40は、画像信号0の黒背景41に画像信号255の白窓42を有するパターンである。白窓42のサイズは、画面全体に対し縦横共に50%の大きさとしている。この場合、画像の白窓42の左右端部において、本来の白色よりも輝度が低下する部分43が発生することが、本件発明者の検討で明らかになった。この現象について、レーザ光の立ち上がり応答との関係を検討した。
【0037】
図5(a)は、半導体レーザの発光波形を示す図であり、図4(a)中の鎖線45で示す位置を左側から右側に向かって走査した場合である。時刻t1およびt2は、白窓42の両端を走査する時刻に対応する。暗画像領域でレーザを駆動するため、レーザ光の光量Lは最小値0と最大値Laの間で変化する。破線で示した矩形の表示画像信号50を与えたとき、本来であれば時刻t1において光量がLaに切り替わるべきであるが、レーザ光の立ち上がり応答波形51はこれに追従できず波形なまりが生じている。この波形なまりが原因で、立ち上がり時の光量不足のため本来の白色よりも輝度が低下する部分43が発生したと考えられる。この波形なまりはレーザ光の立ち上り時に見られる現象で、立ち下り時には生じない。
【0038】
なお、図4(a)に示す画像ではレーザ光は左右に往復走査されており、操作が左向きとなる場合には時刻t1とt2が入れ替わり、白窓42の右側端部においても同様に輝度の低下する部分43が発生している。
【0039】
図6は、半導体レーザの立ち上がり応答を詳細に測定した結果であり、(a)は、光量−順方向電流特性、(b)はレーザ光の立ち上がり時間−順方向電流特性を示す。なお、立ち上がり時間Δtは目標強度の10%から90%まで遷移するのに必要な時間を測定した。この結果から明らかな通り、閾値電流Ith(この場合80mA)近傍においてレーザ光の立ち上がり時間Δtが増大している。このためレーザ光の立ち上がり波形になまりが生じて、図4(a)の符号43に示したような白窓端部の輝度低下を引き起こしている。また、RGBの各色の半導体レーザの特性が均一でないことから、白色を表示する際には白窓端部に色むらを引き起こし、画質劣化の原因ともなる。このように、立ち上がり応答の劣化は、閾値電流Ith近傍、すなわち暗画像領域でレーザ発光させるときの特有の現象と言える。
【0040】
その対策として本実施例では、レーザ発光の立ち上がり直前の所定期間に予備発光を追加する予備発光処理を導入した。
【0041】
図4(b)は、予備発光を追加して表示した画像の一例を示す図である。図4(a)と同一の画像パターンを表示しているが、白窓42の左右端部には輝度が低下する部分は認められない。
【0042】
また図5(b)は、予備発光を追加したときの半導体レーザの発光波形を示す図である。立ち上がり直前の時刻t0から時刻t1にかけて、光量L0の予備発光53を追加している。その結果、レーザ光応答波形52は、時刻t1において光量が急峻に立ち上がるようになった。この光量L0は、暗画像領域の最大光量Laの1/10以下が望ましい。また、予備発光を追加する期間(t0〜t1)は、略600ns以下であることが望ましい。何故なら、予備発光の光量L0やその印加時間が大きすぎると、予備発光による輝線が視認され易くなるためである。このように予備発光を追加することで、レーザ光の立ち上がり応答を改善し、画像明暗切替部(白窓端部)の輝度低下および色むらを低減することができる。
【0043】
ここで、上記したレーザ光の立ち上り応答の劣化原因と、上記の予備発光処理により改善した理由を考察する。レーザドライバ4にはスイッチ素子が内蔵されており、半導体レーザ5a〜5cに流れる電流をこのスイッチ素子により制御している。しかしながら、このスイッチ素子には寄生容量があるため、電流が全く流れていない状態から例えば100mAの電流を流そうとすると、ある時定数を有して電流が増加し最終的に100mAになる。つまり、電流は瞬時に100mAに到達できない。さらに、図3図6に示す半導体レーザの非線形な発光特性が原因となって、特に閾値電流Ithの近傍領域で電流を増加させる場合に、その光量の変化を鈍化させている。その結果、図5(a)において時刻t1で得られる光量がLaに達せず、符号51に示す光出力応答波形となったと推測される。
【0044】
これに対し本実施例では、予備発光53を追加すること、すなわちレーザドライバ4を介して半導体レーザに僅かな電流を流すようにした。その結果、スイッチ素子の寄生容量の影響が小さくなり、電流増加時の時定数が小さくなって、図5(b)のように、暗画像領域でのレーザ光の立ち上がり応答を改善させることが可能となる。
【0045】
本実施例では予備発光を実施するため、表示する画像信号について半導体レーザに流す電流が0に近くなる黒画素の継続時間を検出する黒画素判定処理と、これに基づき予備発光を追加する予備発光処理を導入した。以下、それらの処理方法を説明する。
【0046】
図7は、黒画素判定処理(S100)を示すフローチャートである。画像処理部2内の画像補正部20は、画像信号に黒画素が含まれているかを判定し、黒画素が所定期間継続している場合に予備発光が必要であることを示す「予備発光フラグ」をセットする処理である。
【0047】
本フローは、予備発光フラグがリセットされる度に開始される(S101)。予備発光フラグのリセット後、画像補正部20は、カウンタCをリセットしてゼロ(0)とする(S102)。カウンタCは、黒画素継続時間を計測するためのカウンタで、画素単位に計測する。カウンタCをリセットした後、現在の画素における画像信号値Qを閾値Qthと比較する(S103)。ここで閾値Qthは、発光制御部22から予備発光制御信号27として与えられた黒画素判定閾値であり、閾値Qthより小さい画像信号を黒画素と判定する。閾値Qthの値は8bit階調値で1〜3程度が望ましいが、表示部の仕様に合わせて定める。
【0048】
画像信号値が閾値Qthよりも小さい場合(Yes)、画像補正部20はカウンタCをインクリメントして(S104)、S105へ移行する。画像信号値Qが閾値Qthよりも大きい場合(No)は、S102に移行し、画像補正部20はカウンタCをリセットした後、次の画素の画像信号値Qを閾値Qthと比較する(S103)。
【0049】
S105において画像補正部20は、カウンタCを閾値Cthと比較する。ここで閾値Cthは、発光制御部22から予備発光制御信号27として与えられた黒画素継続時間閾値である。閾値Cthは水平方向の走査幅で全幅の数%程度相当とする。カウンタCが閾値Cthより小さい場合(No)はS103に戻り、カウンタCはそのままで次の画素の画像信号値Qを閾値Qthと比較する。カウンタCが閾値Cthより大きい場合(Yes)は、S106に移行する。
【0050】
S106では、使用する電流範囲が暗画像領域か否かを判定する。図3図6で示した通り、レーザ光の立ち上がり応答が劣化するのは閾値電流Ithの近傍であるため、予備発光を実施するのは暗画像領域の場合だけとする。判定の結果暗画像領域の場合(Yes)は、予備発光フラグをONにセットする(S107)。暗画像領域でない場合(No)は、予備発光フラグをセットしない。このように黒画素判定処理(S100)により、閾値Qthより小さい画像信号の画素が閾値Cthより長く継続した区間に対して、予備発光フラグをONに設定する。
【0051】
次に図8は、予備発光処理(S200)を示すフローチャートである。図7の黒画素判定処理の結果を受け、画像補正部20は、予備発光用の画像信号を生成する処理を行う。
【0052】
予備発光は、図5(b)における時刻t0から時刻t1までの間印加するが、開始時刻t0は、時刻t1より所定時間(例えば、600ns以下)だけ遡った時刻である。ここで時刻t1は、黒画素期間が終了し、黒画素以外の画素に切り替わる時刻(黒画素終了時刻)であり、図7の黒画素判定処理から既知である。また、時刻t1から時刻t0を割り出すことは、シフトレジスタを用いたパイプライン処理などを用いることで時間的に遅らせる方法や、ラインバッファを用いて予め検出しておく方法により、容易に実現できる。
【0053】
S201では、現在時刻が予備発光開始時刻t0に至ったことを確認しS202へ進む。S202では、予備発光フラグがセット(ON)されているか否かを判定する。予備発光フラグがセット状態の場合(Yes)はS203に移行し、現在の画素の画像信号に応じて予備発光処理を行う。予備発光フラグがセットされていない場合(No)はS207に移行し、予備発光処理を行わず、予備発光フラグを再度リセットする。これは、図7の黒画素判定処理を開始させるためである。
【0054】
S203では、当該画素の画像信号値Qが0か否かを判定する。画像信号値Qが0の場合(Yes)は、0以外の微小な画像信号値Q0で置き換えて予備発光させる(S204)。つまり、予備発光とは、半導体レーザに微小な電流値I0(光量L0に対応)が流れるよう画像信号を埋め込むことである。S203で画像信号値Qが0でない場合(No)は、S205に移行し、現在時刻における画像信号Qのまま発光させる。
【0055】
次に、S206において黒画素終了時刻t1に達したか否かを判定する。時刻t1に達していない場合(No)はS203に戻り、次の時刻の画素に対して同様の処理を行う。つまり、時刻t0からt1までの間、S204またはS205の処理が実施され、入力画像信号に対して予備発光の信号が埋め込まれる。時刻t1に達した場合(Yes)はS207へ進み、予備発光フラグをリセットする。
【0056】
なお、上記の説明では時刻t1の決定方法として、黒画素判定処理において黒画素期間が終了し黒画素以外の表示に切り替わる時刻としたが、それ以外でも構わない。例えば、半導体レーザに流す電流値が閾値電流Ithの近傍である画素を表示する時刻を時刻t1としてもよい。
【0057】
また、本実施例では予備発光制御信号27により予備発光処理の判定を行ったが、他の方法もある。例えば、黒画素判定処理において連続した黒画素が検出された後、次に発光する画像信号に対応する電流値が閾値電流Ithの近傍であれば予備発光を実施し、そうでなければ予備発光を実施しないというように、入力される画像信号に応じて動的に切り替える構成にしてもよい。また、黒画素判定処理と予備発光処理は画像補正部20で実施する例を記載したが、それ以外の箇所で実施してもよい。例えば、図2中のラインメモリ23の後段で、レーザドライバ4側へ画像信号を伝送する時のクロック周波数に基づいて黒画素判定処理および予備発光処理を実施する構成でもよい。
【0058】
また、本実施例では入力される画像信号に対して黒画素判定処理および予備発光処理を実施する例を記載したが、入力画像そのものに加工しても同様の効果が得られる。具体的には、時刻t0から時刻t1にかけて光量L0の光出力が追加されるように入力画像を加工してもよい。これにより、画像補正部20による処理負荷を減らすことができる。
【0059】
上記の通り実施例1によれば、黒画素継続時間を検出する黒画素判定処理と、予備発光を追加する予備発光処理により、レーザ光の立ち上がり応答(波形なまり)を改善することが可能となる。これにより、明暗画像の境界部での輝度低下や色むらを改善し、高品質な画像を表示可能なレーザ投射表示装置を提供できる。
【実施例2】
【0060】
実施例1では、予備発光を時刻t0から時刻t1まで連続的に実施したが、実施例2では、予備発光を間欠的に実施するようにした。予備発光を間欠的に実施することで、連続的に実施する場合に比べ、予備発光による輝線が視認されにくくなる効果がある。
【0061】
図9は、実施例2における予備発光を追加したときの半導体レーザの発光波形を示す図である。図4(b)中の鎖線45で示す位置を左側から右側に向かって走査する場合である。なお、実施例1と同一の要素には同一の符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【0062】
時刻t0から時刻t1にかけて、光量L0の予備発光54を間欠的に追加している。その結果、レーザ光応答波形52は、時刻t1において光量が急峻に立ち上がるようになる。ここで、光量L0は光量Laの1/10以下のレベルとする。このように、間欠動作の予備発光54であっても、レーザドライバ4を介して半導体レーザに僅かに電流を流すことで、スイッチ素子の寄生容量の影響を小さくすることができ、レーザ光の立ち上がり応答を改善させることが可能となる。
【0063】
これにより、画像明暗切替部(白窓端部)の輝度低下および色むらを低減することができる。この場合の予備発光54は間欠動作であるので、見かけ上の光量はL0以下となり、予備発光による輝線はより視認されにくくなる。言い換えれば、見かけ上の光量の減少分だけ、予備発光の開始時刻t0を実施例1(図5(b))の場合よりも早めてもよいことになる。
【0064】
図10は、実施例2における予備発光処理(S300)を示すフローチャートである。図7の黒画素判定処理の結果を受け、画像補正部20は、間欠的な予備発光用の画像信号を生成する。実施例1(図8)と同一処理については同一符号を用いており、新たな処理の部分について説明する。
【0065】
S202の判定で、予備発光フラグがセット状態(ON)の場合はS301に移行し、カウンタjをリセットする。ここで、カウンタjは間欠動作用の画素数カウンタである。その後S203では、現在の画素の画像信号に応じて予備発光処理を行う。まず、当該画素の画像信号値Qが0か否かを判定する。
【0066】
画像信号値Qが0の場合は、S302にてカウンタjをインクリメントした後、S303にてカウンタjがパラメータpの倍数か否かを判定する。このパラメータpは、予備発光制御信号27により予め与えられた整数である。カウンタjがpの倍数である場合(Yes)はS204へ移行し、0以外の微小な画像信号値Q0で置き換えて予備発光させる。カウンタjがpの倍数でない場合(No)は予備発光なしにS206へ移行する。
【0067】
その結果、例えばp=3の場合は、カウンタj=0,3,6,9・・・となるタイミングで予備発光を行い、他のタイミングには予備発光しないことで、時刻t0から時刻t1の間のおよそ1/3の期間に予備発光を間欠動作させることができる。
【0068】
実施例2においても、間欠的に予備発光を追加する予備発光処理により、レーザ光の立ち上がり応答(波形なまり)を改善することが可能となる。なお、実施例2では予備発光を間欠動作させるようにしたので、予備発光による輝線がより視認されにくくなる効果がある。
【実施例3】
【0069】
前記実施例1および2では、いずれも入力画像、つまり表示画像に予備発光を印加する構成を説明した。これに対し実施例3では、モニタ用発光に予備発光を印加する場合について説明する。レーザ投射表示装置では、表示画像用の発光以外にモニタ用発光を実施する。これは、経時劣化によるレーザ光の強度不足や、周囲環境の温度変化によるレーザ光出力の変動などに対応し、投射画像を一定のホワイトバランスにするために、モニタ用発光を行いレーザ光の発光条件を最適化するものである。そこで実施例3では、このモニタ用発光に予備発光を追加する。
【0070】
ここで、モニタ用発光によるレーザ光の調整動作について説明する。モニタ用発光は、入力画像とは異なり、レーザ投射表示装置1の内部で生成したモニタ用信号をレーザドライバ4に直接与えることで実施する。例えば、図2における発光制御部22から、モニタ用発光の信号をレーザドライバ4に与えることで、所定の電流量を半導体レーザに流しモニタ発光させる。光センサ10はその光出力を検出し、増幅器9で増幅した後、その結果を発光制御部22が受信する。発光制御部22は、電流量に対する光出力の関係を検出し、この電流量に対する光出力の関係に基づきレーザドライバ4内の電流ゲイン回路24とオフセット電流回路25を制御する。これにより、レーザ光の発光条件を最適化するものである。
【0071】
図11は、実施例3におけるモニタ用発光とこれに印加する予備発光を示す図で、(a)は表示画像を、(b)はレーザ光の発光波形を示す。(a)において、符号60は表示画像領域であり、モニタ用発光61は、表示画像領域60の外側領域で行う。よって、モニタ用発光61に輝線は視認されることはない。(b)において、時刻t4からt5の間に光量Laのモニタ用発光61を行う場合、その直前の時刻t3からt4の期間に光量L0の予備発光62を追加する。その結果、モニタ用発光波形61の立ち上がり応答を改善させることができる。
【0072】
本実施例の場合、発光制御部22はレーザドライバ4に対し、モニタ用発光61に対する予備発光62の継続時間(t3〜t4)を、図5(b)に示した表示画像用発光52に対する予備発光53の継続時間(t0〜t1)よりも長く与えている。これは、モニタ用発光61は表示画像領域60の外部で行われるので、予備発光62の継続時間を長くしても視認されることがないからである。これにより、モニタ用発光に十分な予備発光が与えられ、モニタ用発光の立ち上がり応答が改善し、電流量に対する光出力の関係をより精度良く検出することができる。その結果、レーザ光の発光条件の調整を高精度に実施することで、高品質な画像を表示可能なレーザ投射表示装置を提供できる。
【符号の説明】
【0073】
1…レーザ投射表示装置、2…画像処理部、3…フレームメモリ、4…レーザドライバ、5…レーザ光源、6…反射ミラー、7…MEMS走査ミラー、8…MEMSドライバ、9…増幅器、10…光センサ、11…照度センサ、12…CPU、13…表示画像、20…画像補正部、21…タイミング調整部、22…発光制御部、23…ラインメモリ、24…電流ゲイン回路、25…オフセット電流回路、27…予備発光制御信号、40,60…表示画像、53,54,62…予備発光。
図1
図2
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