特許第6691370号(P6691370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691370
(24)【登録日】2020年4月14日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】筆記具用リフィール
(51)【国際特許分類】
   B43K 7/02 20060101AFI20200421BHJP
   B43K 7/08 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   B43K7/02
   B43K7/08
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-216763(P2015-216763)
(22)【出願日】2015年11月4日
(65)【公開番号】特開2017-87457(P2017-87457A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 敬幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩之
【審査官】 金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−033682(JP,U)
【文献】 実開平07−015374(JP,U)
【文献】 実開昭64−007581(JP,U)
【文献】 特開平08−230374(JP,A)
【文献】 特開平08−175076(JP,A)
【文献】 実開平06−023788(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00−1/12
5/00−8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂素材により筒状に形成されたインク収容管と、前記インク収容管の端部内周面に圧入されることで取り付けられた筆記チップを支持する継手部材とを備えた筆記具用リフィールであって、
前記継手部材は、記筆記チップを支持する樹脂素材により形成された第1継手と、前記第1継手に接続され、第1接手と前記インク収容管との間に位置して金属素材又は非鉄金属素材により形成された第2継手とからなり、
前記第2継手における前記インク収容管に接する外周面には、前記筆記チップの先端部側に向かって外径を除々に拡大するテーパ状の傾斜面および前記傾斜面に続いて外径を縮小する立下がり面とを備えたエッジ部と、前記エッジ部に続いて段状に外径を太くする第1円筒面と、第2円筒面とが、筆記チップの先端部側に向かって順に形成され、
前記エッジ部の軸方向の切断面における前記テーパ状の傾斜面と前記立下がり面との交差角度が、鋭角(90度未満)に設定されると共に、前記第2継手に接続されるインク収容管の肉厚は0.1mm〜0.5mmであることを特徴とする筆記具用リフィール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばボールペン等に用いられる筆記具用リフィールに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールペン等に用いられる筆記具用リフィールは、一般にインク収容管の一端部(前端部)に筆記チップとしてのボールペンチップが、圧入嵌合されて取り付けられている。
そして、インク収容管には、成形の容易性とインク量の視認性を確保するために、透明もしくは半透明の樹脂素材、例えばポリプロピレンが用いられている。
【0003】
図8は、従来のボールペンリフィールの一例を断面図で示したものであり、この図8に示す例は、円筒状に成形されたインク収容管1の前端部に、継手部材3を介してボールペンチップ2を取り付けた構成を示している。また、インク収容管1の外周面は面一の円筒状に形成されており、継手部材3を嵌合させるインク収容管1の前端部の内径と、インク収容部を構成するインク収容管1の軸方向中央部の内径とは、ほぼ同一寸法となるストレート状に構成されている。このような外周面と内周面がストレート状のインク収容管を用いたボールペンリフィールは、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
ところで、前記したボールペンリフィールにおいては、特にボールペンチップを嵌合させるインク収容管の前端部は、その取り付け強度を確保するために一定の肉厚を備える必要がある。したがって、前記した特許文献1に開示された構成のボールペンリフィールによると、インク収容管の長さ方向の全体に一定の肉厚を備えることから、インクの貯留量を十分に確保することができないという実用上の問題点を抱えることになる。
【0005】
そこで、肉厚を薄くしたインク収容管を採用することができれば、インク収容管の外径寸法を拡張することなく、十分なインクの貯留量を確保することができる。しかしながら肉厚の薄いインク収容管は、その前端部に取り付けられるボールペンチップもしくは継手部材に対する嵌合力を十分に確保することができず、ボールペンチップがインク収容管から外れ易くなるという問題が招来される。
【0006】
ところで、ボールペンチップがインク収容管側から外れるのを防止するために、ボールペンチップの外周面に環状の溝を形成すると共に、インク収容管に圧入嵌合される継手部材の内周面に、環状の突部を備えたボールペンリフィールが提案されている。これは例えば特許文献2に開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示された機能は、ボールペンチップと継手部材との間の圧入嵌合に配慮したものであり、肉厚を薄くした可撓性のインク収容管と、ボールペンチップもしくは継手部材との間の外れ防止機能に、特許文献2に開示の構成をそのまま採用しても、その効果を発揮することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−59682号公報
【特許文献2】特開2002−52885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明はインク収容管の外径寸法を拡張することなく、必要十分なインクの貯留量を確保するために、肉厚を薄くしたインク収容管を採用しようとするものである。
この場合、薄肉状のインク収容管側には特別な加工を施すことなく、筆記チップ(ボールペンチップ)もしくは継手部材が介在される場合には、継手部材との間で十分な嵌合作用を確保することが可能となる筆記具用リフィールを提供しようとするものであり、これによりインク収容管から筆記チップ側が外れ易い問題を解消することができる筆記具用リフィールを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る筆記具用リフィールは、樹脂素材により筒状に形成されたインク収容管と、前記インク収容管の端部内周面に圧入されることで取り付けられた筆記チップを支持する継手部材とを備えた筆記具用リフィールであって、前記継手部材は、記筆記チップを支持する樹脂素材により形成された第1継手と、前記第1継手に接続され、第1接手と前記インク収容管との間に位置して金属素材又は非鉄金属素材により形成された第2継手とからなり、前記第2継手における前記インク収容管に接する外周面には、前記筆記チップの先端部側に向かって外径を除々に拡大するテーパ状の傾斜面および前記傾斜面に続いて外径を縮小する立下がり面とを備えたエッジ部と、前記エッジ部に続いて段状に外径を太くする第1円筒面と、第2円筒面とが、筆記チップの先端部側に向かって順に形成され、前記エッジ部の軸方向の切断面における前記テーパ状の傾斜面と前記立下がり面との交差角度が、鋭角(90度未満)に設定されると共に、前記第2継手に接続されるインク収容管の肉厚は0.1mm〜0.5mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
前記した構成の筆記具用リフィールによると、樹脂素材により筒状に形成されたインク収容管の前端部には、筆記チップもしくは筆記チップを支持する継手部材が、圧入されることで取り付けられる。
この場合、筆記チップもしくは筆記チップを支持する継手部材における前記インク収容管に接する外周面には、テーパ状の傾斜面と、これに続く立下がり面とを備えたエッジ部が備えられるので、このエッジ部が樹脂素材により可撓性を有するインク収容管の内面に食い込むようにして当接し、インク収容管との間で十分な嵌合作用を得ることができる。
【0013】
さらに、エッジ部を構成する前記した立下がり面が、筆記チップの先端部側に向かって形成されているので、この立下がり面がインク収容管の内周面に係止して、筆記チップもしくは継手部材が、インク収容管から抜け出るのを阻止するように作用する。
これにより、インク収容管から筆記チップが脱落するのを効果的に阻止し得る筆記具用リフィールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明に係る筆記具用リフィールをボールペンリフィールに採用した状態の外観図である。
図2図1に示す筆記具用リフィールの中央断面図である。
図3図1に示す筆記具用リフィールの継手部材の部分拡大断面図である。
図4】継手部材を構成する継手受け座の単体構成を拡大して示した斜視図である。
図5】同じく継手受け座の単体構成を視点を変えて示した斜視図である。
図6】同じく継手受け座の正面図である。
図7】同じく継手受け座の中央断面図である。
図8】従来の筆記具用リフィールの一例を示した中央断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明に係る筆記具用リフィールについて、ボールペンリフィールを例にした図に示す実施の形態に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、例えばポリプロピレン等の樹脂素材により円筒状に形成されたインク収容管1の一端部(前端部)には、予め金属素材や樹脂素材で形成されたボールペンチップ2が装着された継手部材3が圧入されることにより取り付けられている。
【0016】
図2に示すように、この実施の形態に係るボールペンリフィールは、図8に示した従来のボールペンリフィールに比較して、肉厚の薄いインク収容管1が用いられている。したがって、この実施の形態によるとインク収容管1の外径寸法を拡張することなく、十分なインクの貯留量を確保することができる。
なお、この実施の形態における円筒状に形成されたインク収容管1の好ましい肉厚は、0.1mm〜0.5mm程度になされる。
【0017】
一方、前記した継手部材3は、図3に一部を拡大して示したように、ボールペンチップ2の後端部が圧入されることで、ボールペンチップ2を取り付けた第1継手3aと、この第1継手3aの後半部における径が縮小された縮径部4の外側に、圧入により取り付けられた継手受け座3bより構成されている。
【0018】
すなわち、前記継手受け座3bには、前記第1継手3aの縮径部4が圧入されることで取り付けられる軸孔5を備えることで、外観がほぼ円筒状となるように構成されている。なお、以下においては前記継手受け座3bを、第2継手3bと称呼する。
前記継手部材3は、第1継手3aと第2継手3bによる二つの部材により構成されており、したがって前記第1継手3aは例えば樹脂素材により形成し、前記第2継手3bは金属素材により形成することができる。
【0019】
例えば真鍮などの金属素材により形成された第2継手3bの単体構成が、図4図7に示されている。この第2継手3bにおけるインク収容管1への挿入側には、その外周面に環状に突出するエッジ部6が形成されている。このエッジ部6は、前記した筆記チップ2の先端部側に向かって外径を除々に拡大するテーパ状の傾斜面6aと、前記傾斜面6aに続いて外径を縮小する立下がり面6bとにより構成されている。
【0020】
この場合、前記エッジ部6の軸方向の切断面における前記テーパ状の傾斜面6aと、前記立下がり面6bとの交差角度は、鋭角(90度未満)に設定されていることが望ましい。一例として、図7に断面図で示すテーパ状の傾斜面6aにおける軸線に対する傾斜角度は20度にされており、また前記立下がり面6bは軸方向に直交する面と平行となるように形成されている。
したがって、この実施の形態におけるエッジ部6における前記したテーパ状の傾斜面6aと、前記した立下がり面6bとの交差角度θは、図7に示したように70度に設定されている。
【0021】
前記第2継手3bには、前記したエッジ部6に続いて、ボールペンチップ2の先端部側に向かって段状に外径を太くする第1円筒面7、第2円筒面8、および円環状の鍔部9が形成されている。そして、前記円環状の鍔部9の周面は、図3に示すようにインク収容管1および第1継手3aの外径寸法とほぼ同一となるように設定されている。
すなわち、段状に外径を太くする第1円筒面7と、第2円筒面8は、前記したインク収容管1の接続部として機能することになる。
【0022】
前記インク収容管1の前端部に、ボールペンチップ2と継手部材3との結合体を圧入する場合には、インク収容管1の前端部内面が、第2継手3bに形成されたエッジ部6を乗り越えるようにして装着される。
この場合、前記エッジ部6にはインク収容管1に向かってテーパ状の傾斜面6aが形成されているので、インク収容管1の可撓性を生かして、比較的容易にインク収容管1の前端部に継手部材3を装着することができる。
【0023】
このようにして、インク収容管1の前端部に、ボールペンチップ2と継手部材3との結合体を圧入した図3に示す状態においては、前記継手部材3(特に第2継手3b)は、インク収容管1よりも高硬度の素材、例えば真鍮やステンレス等の金属素材、アルミ等の非鉄金属素材等により形成されているので、継手部材3に形成されたエッジ部6が、樹脂素材により形成されたインク収容管1の内面に食い込むようにして当接する。これにより、継手部材3はインク収容管1との間で十分な嵌合作用を得ることができる。
【0024】
しかも、エッジ部6を構成する前記した立下がり面6bが、ボールペンチップの先端部側に向かって形成されているので、この立下がり面6bがインク収容管1の内周面に効果的に係止して、継手部材3がインク収容管1から抜け出るのを阻止するように作用する。
これにより、インク収容管1から筆記チップ2が脱落するのを確実に阻止することができる筆記具用リフィールを提供することができる。
また、第1継手3aと第2継手3bとが一体となった継手部材3とした形態も採用することができる。その場合は、インク収容管1と筆記チップ2とは異なる硬度の素材で形成することが好ましい。
【0025】
なお、以上説明した実施の形態においては、インク収容管1の前端部に継手部材3を介して筆記チップとしてのボールペンチップ2を取り付けた例を示したが、この発明は継手部材を介さずに筆記チップを直接インク収容管の前端部に取り付ける構成にも採用することができる。この場合においては、筆記チップの後部外周面に前記したエッジ部6を形成することによって、同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 インク収容管
2 筆記チップ(ボールペンチップ)
3 継手部材
3a 第1継手
3b 第2継手(継手受け座)
4 縮径部
5 軸孔
6 エッジ部
6a テーパ状傾斜面
6b 立下がり面
7 第1円筒面
8 第2円筒面
9 鍔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8