特許第6691381号(P6691381)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691381
(24)【登録日】2020年4月14日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】電動掃除機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/14 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   A47L9/14 Z
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-2175(P2016-2175)
(22)【出願日】2016年1月8日
(65)【公開番号】特開2016-131879(P2016-131879A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2018年11月16日
(31)【優先権主張番号】10 2015 100 818.1
(32)【優先日】2015年1月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】592022394
【氏名又は名称】フォルヴェルク・ウント・ツェーオー、インターホールディング・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VORWERK & COMPAGNIE INTERHOLDING GESELLSHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(72)【発明者】
【氏名】ミロン・セルネッキ
(72)【発明者】
【氏名】フランク・シュタルフリンゲル
【審査官】 山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭46−003084(JP,Y1)
【文献】 米国特許第06342084(US,B1)
【文献】 特開2004−351232(JP,A)
【文献】 特開平10−137162(JP,A)
【文献】 実公昭44−004625(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引物を含む空気を搬送するためのファン(2)と、フィルタ材(4)を具備するフィルタ袋であるフィルタ要素(5)を受容するべく該ファン(2)の吸引側に配置されたフィルタ室(3)とを有し、該ファン(2)の稼働中に該フィルタ材(4)が少なくとも部分的に該フィルタ室(3)の内壁(6)の方へ吸引される、電動式の真空掃除機(1)において、
前記フィルタ室(3)の内壁(6)が、該フィルタ室(3)の内部空間(7)に突出する少なくとも1つの成形要素(8)を有し、該フィルタ室(3)に突出する1又は複数の該成形要素(8)の全体積の大きさが、該成形要素(8)を除いた該フィルタ室(3)の残りの体積の大きさの少なくとも25%から100%までであり、
前記成形要素(8)が、前記ファン(2)の吸引側における前記フィルタ室(3)との連結部から該フィルタ室(3)の内部空間(7)に突出する、中空構造を有する心棒(9)であって、該心棒(9)が星形断面を有することを特徴とする真空掃除機。
【請求項2】
1又は複数の前記成形要素(8)により形成された前記フィルタ室(3)の内壁部分の表面積が、該フィルタ室(3)の内壁(6)全体の表面積の少なくとも10%から100%までであることを特徴とする請求項に記載の真空掃除機。
【請求項3】
1又は複数の前記成形要素(8)により形成された前記フィルタ室(3)の内壁部分の表面積が、該フィルタ室(3)の内壁(6)全体の表面積の少なくとも25%から100%までであることを特徴とする請求項に記載の真空掃除機。
【請求項4】
前記成形要素(8)がロッド形状に形成されており、複数のロッド形状の成形要素(8)が互いに平行にかつ/又は前記ファン(2)の吸引方向に平行に配置されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の真空掃除機。
【請求項5】
吸引物を含む空気を搬送するためのファン(2)と該ファン(2)の吸引側に配置されたフィルタ室(3)とを具備する請求項1〜のいずれかに記載の電動式の真空掃除機(1)と、該真空掃除機(1)の該フィルタ室(3)に取り付けられるフィルタ袋であるフィルタ要素(5)と、を有し、前記フィルタ要素(5)が、前記フィルタ室(3)に固定される着脱可能な底板(10)と前記ファン(2)の稼働中少なくとも部分的に該フィルタ室(3)の内壁(6)の方へ吸引されるフィルタ材(4)とを具備するシステムにおいて、
前記フィルタ室(3)の内壁(6)が該フィルタ室(3)の内部空間(7)に突出する少なくとも1つの成形要素(8)を有し、1又は複数の該成形要素(8)により形成された該フィルタ室(3)の内壁部分の表面積は、該フィルタ室(3)の内壁(6)全体の表面積の少なくとも10%から100%までを占めることを特徴とするシステム。
【請求項6】
1又は複数の該成形要素(8)により形成された該フィルタ室(3)の内壁部分の表面積は、該フィルタ室(3)の内壁(6)全体の表面積の少なくとも25%から100%までを占めることを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記フィルタ材(4)のフィルタ有効表面の表面積が、1又は複数の前記成形要素(8)により形成された内壁部分を含みかつ前記フィルタ要素(5)における前記フィルタ室(3)に面した前記底板(10)の表面を除いた前記フィルタ室(3)の内壁(6)全体の表面積の90%から100%までを占めることを特徴とする請求項又はに記載のシステム。
【請求項8】
前記フィルタ材(4)によりフィルタリングされた空気の前記ファン(2)への流路(11)を設けるために、前記フィルタ要素(5)が前記フィルタ室(3)の内壁(6)から少なくとも部分的に離間していることを特徴とする請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記フィルタ材(4)が、フリース及び/又は織布であるフレキシブルな材料であることを特徴とする請求項のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引物を含む空気を搬送するためのファンと、フィルタ材を具備するフィルタ要素特にフィルタ袋を受容するためにファンの吸引側に配置されたフィルタ室とを有する電動式の真空掃除機に関し、フィルタ材は、ファンの稼働中、少なくとも部分的にフィルタ室の内壁の方へ吸引される。
【背景技術】
【0002】
このタイプの電動掃除機は公知技術である。これらは、床掃除機又は手持ち型バッテリ式掃除機として構築することができる。ファンは、床から引き離した吸引物をフィルタ室に配置されたフィルタ要素に吸引する。その後、吸引された空気は、ファンに到達するべくフィルタ要素のフィルタ材を通過し、そこで空気の中に含まれる吸引物がフィルタ材に捕捉される。それにより、清浄化された空気のみがファンに到達する。フィルタ要素は、大部分がフレキシブルな材料からなり、ファンの稼働中は、ファンの方向に吸引され、それによりフィルタ室の内部で拡張する。フィルタ材が拡張することにより、フィルタリングプロセスのために可能な最大限のフィルタ有効表面が得られることになる。
【0003】
また、フィルタ室の利用可能な一定の容積におけるフィルタ有効表面の大きさをさらに増すために、フィルタ材を改変する別の手段も技術的に公知である。特許文献1は、例えば、フィルタ材がジグザグ形状に折り畳まれた硬い表面を有するフィルタ要素に関するものである。特許文献2もまた、多層フィルタ材からなるプリーツ状のフィルタ要素に関し、連続的な多層が融合したポリマー領域を含み、それによりフィルタ材が硬化されることにより、プリーツの各折り目を離間させるためのスペーサが不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第867216号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第1134013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の手段は、フィルタ有効表面の大きさを実際に増すものであるが、これらは、製造工程が極めて複雑であるため、製造コストが非常に高いものとなる。
【0006】
従って本発明の目的は、上述した欠点が無く、フィルタ要素のフィルタ有効表面を増すことができる別の手法を提供することである。、
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、フィルタ室の内壁がフィルタ室の内側に突出する少なくとも1つの成形要素を有する電動式の真空掃除機を提供する。フィルタ室に突出する1つの成形要素の、又は複数の成形要素全ての体積の大きさは、その成形要素の外側に残るフィルタ室の体積の大きさの少なくとも10%から100%まで、好ましくは少なくとも25%から100%までを有する。
【0008】
本発明によれば、フィルタ要素が用いられる真空掃除機のフィルタ室の改変による改善が行われる。具体的には、フィルタ室の内壁が、フィルタ材の少なくとも一部を支持するべくその表面を拡張した構造を有するように改変される。この構造によるフィルタ材の支持は、この構造がフィルタ材に対して迫り出されることによってフィルタ材のフィルタ有効表面が拡張させられ、かつフィルタ室の拡張も真空掃除機の望ましくない拡張も無いことを意味する。本発明を最適に利用するために、より大きなフィルタ要素すなわちより大きな表面積のフィルタ材を備えたフィルタ要素をフィルタ室に挿入することが推奨される。本発明によるフィルタ室の内壁は、フィルタ室の内側に突出する成形要素により改変される。1つの成形要素のみが設けられるか、又は、別の例では複数の成形要素が同時に設けられる。1又は複数の成形要素は、フィルタ室の内壁と一体に設けることができ、又は、例えば接着、溶接若しくは類似の接合方法により接続することができる。
【0009】
フィルタ要素の使用によって常に生じる圧力低下を補償するとともに、フィルタ要素を通過して得られる空気流を増大させるために、フィルタ室に突出する1つの成形要素の体積の大きさ、又は、1つより多い成形要素がフィルタ室に設けられている場合は全ての成形要素の体積の大きさは、フィルタ室において成形要素の外側に残された体積の大きさの少なくとも10%から100%まで、好ましくは少なくとも25%から100%までが推奨される。吸引物の収集のために掃除機の内部に実際に必要な体積に依って、1又は複数の成形要素の体積が、フィルタ室において吸引物のために利用可能な体積の10%〜100%を占めることにより、吸引物のために適切な大きさの体積が得られるだけでなく同時に、ユーザがフィルタ要素を耐え難い程頻繁に交換する必要がなくなる。汎用的な家庭用掃除機においては、フィルタ室に突出する成形要素の体積の大きさは、最大でも、吸引物の収集に利用可能なフィルタ室における残りの体積と同じとすることが適切であると判明している。加えて、フィルタ室における成形要素の突出体積の最小値もまた実際的であることが判明しており、それよりも小さい場合は、フィルタ有効表面の実質的な増大が見られず、よって、真空掃除機のフィルタ室のための製造コストは、得られる効果の程度に見合う有利性がないものとなってしまう。
【0010】
さらに、1又は複数の成形要素により形成されるフィルタ室の内壁部分の大きさは、フィルタ室の内壁全体の大きさの少なくとも10%から100%まで、好ましくは少なくとも25%から100%までとすることが好適である。1又は複数の成形要素は、フィルタ室の内壁の所定の部分のみを形成するか、又は、別の例では内壁全体を形成することができる。特に、複数の成形要素は、内壁の規則的な構造を形成し、例えばリブ、ロッド、タペット、ピラミッド等の規則的な繰り返し要素を呈する。
【0011】
成形要素は、フィルタ室においてファンの吸引側に位置する箇所からフィルタ室の内側に突出する、中空構造を有する心棒であることが、好適である。この実施形態においては、ファンの稼働中、フィルタ材が心棒の周囲に設置されるので、吸引された空気がフィルタ材を通過して心棒の中空内に流入することができ、それから流路ダクトのようにファンへと誘導される。この目的のために心棒は、その心棒壁に心棒孔を有し、それらを通ってフィルタリングされた空気が心棒の中空内に流入することができる。心棒はまた、その前面に1又は複数の心棒孔を有することも好ましく、それらを通しても、フィルタリングされた空気が心棒の中空内に流入できる。
【0012】
さらに、心棒が星形断面を有することにより、(同じ外径が必要な場合に)円形断面で形成された場合よりも心棒の周面に大きい表面を設けることができる。
【0013】
好適には、心棒は真空掃除機の第1のハウジング部分領域上に配置できる一方、フィルタ室はこれに接続される第2のハウジング部分領域に形成できる。例えば、フィルタ要素が第2のハウジング部分領域に挿入され、それに続いて、第1のハウジング部分領域が第2のハウジング部分領域と接続されることにより、真空掃除機の組立状態において、心棒が第2のハウジング部分領域の空間に突出し、そしてそれによりフィルタ室にも突出する。
【0014】
さらに、それに替えて又はそれに加えて、心棒に対してロッド形状要素が形成される。特に、複数のバー形状要素が互いに実質的に平行に、かつ/又は、実質的にファンの吸引方向に配置される。変形形態においては、フィルタ室の内壁が、平行な複数のリブのタイプのロッド形状要素を有し、その場合、ファンへの流路を設けるために、それらのロッドはファンの吸引方向に配置されることが好ましい。このことは、特に、真空掃除機においてフィルタ室とファンが直線上に並んで配置されている場合に好ましい。この場合、成形要素は同時に、フィルタ要素のフィルタ材がフィルタ室の内壁と完全に接触しないようにするスペーサーとしても機能する。特に、成形要素の所定の部分領域のみがフィルタ材と接触する一方、成形要素におけるフィルタ室内部空間の中心側から外側に向かって延在する部分領域はフィルタ材と接触しないように設けることができる。このことは、特に、成形要素がフィルタ室の内側にどれだけ突出しているかに依存し、かつ、フィルタ要素の体積がフィルタ室の体積に対してどれだけの大きさであるかに依存する。
【0015】
上述した真空掃除機に加えて、本発明により、吸引物を含む空気を搬送するためのファンとファンの吸引側に配置されたフィルタ室とを具備する電動式の真空掃除機、特に上述した真空掃除機と、その真空掃除機のフィルタ室に配置されるフィルタ要素特にフィルタ袋と、を有するシステムが提供される。この場合、フィルタ要素は、フィルタ室に固定される着脱可能な底板とフィルタ材とを具備する。フィルタ材は、ファンの稼働中、少なくとも部分的にフィルタ室の内壁の方へ吸引され、フィルタ室の内壁はフィルタ室の内側に突出する少なくとも1つの成形要素を有し、1又は複数の成形要素により形成されるフィルタ室の内壁部分の大きさは、フィルタ室の内壁全体の大きさの少なくとも10%から100%まで、好ましくは少なくとも25%から100%までである。
【0016】
これにより得られる利点は、真空掃除機に関して上述した利点と同じである。
【0017】
さらに、フィルタ材のフィルタ有効表面の大きさは実質的に、1又は複数の成形要素を形成された内壁部分の大きさを含みかつフィルタ要素におけるフィルタ室に面した底板の表面の大きさを引いたフィルタ室の内壁全体の大きさの特に90%から100%までが好ましい。これにより、真空掃除機とフィルタ要素とを有し、フィルタ要素のフィルタ材のフィルタ有効表面の大きさをフィルタ室の内壁の大きさに最適に適応させられるシステムが提供される。フィルタ材の表面が極めて大きくなるので、フィルタ室の内壁の表面は、(ファンが稼働して)フィルタ要素が最大に拡張すると、その内壁がほぼ完全に覆われる。ここで特に、フィルタ有効表面が、内壁(フィルタ要素の底板により覆われる面を除く)の大きさの90%から100%までであることが好ましい。もしフィルタ有効表面が最小限に小さい場合は、フィルタ室の内壁上にフィルタ材と接触しない領域が存在することになり、フィルタリングされた空気が容易にフィルタ材を通過することができる。
【0018】
フィルタ要素が少なくとも部分的にフィルタ室の内壁から離間していることにより、フィルタリングされた空気のフィルタ材からファンへの流路が形成されることが好ましい。この間隙は、フィルタ室の内壁全体から底板により覆われた面積を引いた大きさに対してフィルタ材のフィルタ有効表面の大きさを選択することにより実現されることが好ましい。成形要素は、一方ではフィルタ材に対し特に大きなフィルタ有効表面を確保できるように形成させる機能を有し、他方ではフィルタ材をフィルタ室の内壁の一部から離間させる機能を有する。それにより、フィルタ材を通過した空気がフィルタ要素の外向きの面に沿って流れることができ、ファンに到達することができる。
【0019】
フィルタ材が実質的にフレキシブルな材料であり、特にフリース(不織布)及び/又は織布であることが好ましい。このような材料は、ファンが稼働すると、フィルタ室の内壁の方へ容易に吸引されることができ、それによりフィルタ要素が特に速やかに望ましい形状をとることができ、内壁における成形要素を構成する構造に対して可能な限り忠実な形状を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明による真空掃除機の斜視図である。
図2図2は、真空掃除機の部分断面図である。
図3図3は、第1の実施形態による真空掃除機のフィルタ室を示す図である。
図4図4は、第2の実施形態によるフィルタ室を示す図である。
図5図5は、第3の実施形態によるフィルタ室を示す図である。
図6図6は、第4の実施形態によるフィルタ室を示す図である。
【発明の実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明による真空掃除機1であり、一例として手持ち型バッテリ式掃除機として構成されている。真空掃除機1のハウジングは、ハウジング上部14とハウジング下部15とから構成されている。ハウジング上部14には、掃除プロセス中にユーザが真空掃除機1を持ち運べるようにグリップ部24が設けられている。ハウジング上部14内に、スイッチ13によりオンオフすることができるファン2が配置されている。ファン2によって掃除対象の床から吸引物が吸引され、ファン2を出た空気は排気口12を通って大気中に出て行く。ハウジング下部15は、例えばディテント(回り止め)機構又はプラグ機構によりハウジング上部14と接続されている。その場合、ハウジング上部14とハウジング下部15は互いに蝶番により接続可能であることが有用であり、それにより接続されたハウジング上部14と下部15は互いに旋回可能である。ハウジング下部15は、吸引口25を設けられており、ファン2の稼働中これを通して吸引物を含む空気をハウジング下部15内に吸引することができる。ハウジング下部15内にフィルタ室3があり、フィルタ室3内にフィルタ材4を具備するフィルタ要素5が挿入されている。ファン2により吸引口25を通って真空掃除機1に吸引された空気が先ずフィルタ室3に配置されたフィルタ要素5を通った後、フィルタリングされた空気がファン2へと流れ、最終的に排気口12を通って再び大気中に戻るように放出される。
【0023】
図2は、ハウジング上部14及びハウジング下部15の一部の断面を示す図である。ハウジング下部15はフィルタ室3を有し、その中にフィルタ要素5が配置されている。フィルタ要素5は、底板10と、その上に配置されたフィルタ材4とを具備する。底板10は、プラスチック及び/又はボール紙から作製されている。その上に配置されたフィルタ材4は、例えばマイクロファイバフリース(不織布)、織布等である。底板10がフィルタ室の内側に固定されることにより、底板10はフィルタ室3の内壁6にしっかりと接続される。
【0024】
底板10は、フィルタ弁17を具備するフィルタ口16を有し、吸引された空気はこのフィルタ口16を通ってフィルタ要素5を通過することができる。フィルタ材4のフロー抵抗によってフィルタ要素5が膨張することにより、フィルタ材4はフィルタ室3の内壁6の方に向かって拡張し、この場合、フィルタ材4と内壁6の間には少なくとも部分的に流路11が残る。これにより、フィルタリングされた空気がフィルタ要素5から再び離れていくことができる。
【0025】
真空掃除機1のハウジング上部14は、吸引ダクト26を有し、その中にファン2が配置されている。吸引ダクト26は、真空掃除機1の組立状態においてハウジング下部15と接触しているハウジング部分端部21から排気口12まで繋がっている。ハウジング上部14のハウジング部分端部21は、1又は複数の吸引開口22を有し、これを通して空気がハウジング下部15のフィルタ室3からハウジング上部14の吸引ダクト26に流入することができる。ハウジング部分端部21は、ここでは心棒9として形成された成形要素8を有する。心棒9は実質的に円筒形状を有し、その内側に中空を形成されており、それにより吸引ダクト26の延長部分を構成する。心棒9の外郭すなわち心棒壁19は、心棒孔18により部分的に通気可能に構成されていることにより、ここから空気が心棒9内に流入し、ファン2に到達することができる。
【0026】
図3は、ハウジング上部14のハウジング部分端部21と接続されたフィルタ室3の拡大断面を示している。ハウジング部分端部21の一実施形態が示され、ハウジング部分端部21は、実質的に外リング27を具備し、そこを基点として延びるスポーク28が中心リング29まで繋がり、中心リング29は心棒9を搭載している。隣り合うスポーク28の間に吸引開口22が形成されている。心棒9は、多数の心棒孔18を具備する心棒壁19を有し、それらの心棒孔18は、心棒9の円筒形の側面と、フィルタ室3に対向する前面の双方に分散されている。同様に、前面には、1つの大きな心棒孔18を形成することもできる。フィルタ要素5のフィルタ材4は、心棒壁19を含めたフィルタ室3の内壁6に向かって移動させられる。その場合、フィルタ材4とフィルタ室3の内壁6の間に流路11が残ることにより、フィルタ材4を通過した空気がファン2へと流れることができる。
【0027】
図4は、フィルタ室3に突出する成形要素8の別の実施形態を示し、その成形要素8もまた実質的に心棒9として形成されている。ここでは心棒9は、中心リング29を基点としてハウジング下部15のフィルタ室3内に突出する複数の心棒ロッド20から構成されている。隣り合う心棒ロッド20の間に心棒孔18が形成され、これらを通してフィルタ要素5から出た空気が心棒9の中空構造内に入ることができる。
【0028】
図5及び図6は、本発明のさらに別の実施形態の断面を示しており、これらにおいては、成形要素8が、星形断面をもつ心棒9として形成されている。これらの図は、フィルタ室3の内部空間7に挿入されたフィルタ要素5を示しており、そのフィルタ材4は、流路11を設けるようにフィルタ室3の内壁6に対して近づけられている。ここで、フィルタ材4は、心棒9の心棒壁19にも沿っている。空気がフィルタ要素5から心棒9に流れるために、心棒壁19に心棒孔18が形成されている。加えて、心棒9の前面には別の心棒孔18が形成されている。心棒壁19の星形断面によりこれらの心棒は、円形断面をもつ同等の心棒に比べて大きな表面を有する。
【0029】
図6によれば、フィルタ室3は、心棒9に加えてさらに壁ロッド23を有しており、これらもまた本発明の成形要素8を構成する。壁ロッド23は、フィルタ室3の長手方向と平行に内壁6上に形成されている。この場合、壁ロッド23は、フィルタ材4のために内壁6の一部に対するスペーサとして機能するとともに、フィルタ材4の形状維持のための成形要素8としても機能する。
【0030】
本発明は、真空掃除機1のユーザが、フィルタ要素5をフィルタ室3に挿入するためにハウジング上部14をハウジング下部15から分離するように機能し、例えば、ハウジング部分14、15の一方をハウジング部分14、15の他方から旋回させて離す。ここで、ハウジング下部15に形成されたフィルタ室3が、フィルタ要素5を受容するために開かれる。ユーザーが、フィルタ要素5の底板10をフィルタ室3に嵌め込むことにより、フィルタ要素はハウジング下部15に固定され配置される。その後、ユーザがハウジング下部15をハウジング上部14と接続することにより、真空掃除機1は吸引可能な状態となる。
【0031】
ファン2の稼働中、吸引物を含む空気がハウジング下部15の吸引口25に吸い込まれ、底板10に設けられたフィルタ口16を通ってフィルタ要素5内に入る。このために、ファン2により生じた負圧によって底板10の弁17が開く。フィルタ要素5のフィルタ材4はフィルタ要素5に流入する空気の抵抗となることにより、フィルタ材4が膨張させられ、フィルタ室3内に拡張する。それによりフィルタ材4は、フィルタ室3内に形成された成形要素8すなわち心棒9と、そしておそらくは壁ロッド23と接触することとなる。
【0032】
フィルタ材4の表面の大きさは、内壁6により全体として利用可能な導入面の大きさに適合する。具体的には、図示した実施形態におけるフィルタ材4の大きさは、フィルタ材4が心棒9に完全に沿っておりかつ流路11を形成しつつフィルタ室3の内壁6の残り部分に近接したときの寸法である。流路11のために、フィルタ材4と内壁6の間に数ミリメートル、例えば5mm未満の間隙が残される。内壁6からフィルタ材4までの間隙を一定とするために、すなわち少なくとも部分的に流路11を確保するために、フィルタ室3に壁ロッド23として形成された成形要素8が、同時にスペーサとしても機能することができる。その場合、フィルタ材4は、フィルタ室3の内部空間7に突出する壁ロッド23の先端部に沿うのみでなく、壁ロッド23の基部においては流路11を形成しつつ内壁6から離間している。
【0033】
従って、真空掃除機1の動作のために、フィルタ材4のフィルタ有効表面の大きさと、フィルタ要素5に吸引された吸引物が利用可能な成形要素8の周りに残される体積との間の好ましい関係は、この場合、フィルタ室3に突出する成形要素8の大きさを、フィルタ室3の残りの体積の約10%〜20%とすることである。これにより、吸引物を収集するために利用可能なフィルタ室3の主要部が設けられると同時に、フィルタ材4のフィルタ有効表面が成形要素8上への配置により拡張させられる。成形要素8がフィルタ室3のさらに大きな部分を占めるような、他の多様な構成も考え得る。この場合、フィルタ室3内における吸引物に利用可能な体積が減少するが、フィルタ材4のフィルタ有効表面の大きさは増大する。真空掃除機1の所望される特性に応じて、1つの又は他の特性がより好ましい形態を採り得る。
【符号の説明】
【0034】
1 真空掃除機
2 ファン
3 フィルタ室
4 フィルタ材
5 フィルタ要素
6 内壁
7 内部空間
8 成形要素
9 心棒
10 底板
11 流路
12 排気口
13 スイッチ
14 ハウジング上部
15 ハウジング下部
16 フィルタ口
17 弁
18 心棒孔
19 心棒壁
20 心棒ロッド
21 ハウジング部分端部
22 吸引開口
23 壁ロッド
24 グリップ部
25 吸引口
26 吸引ダクト
27 リング
28 スポーク
29 リング
図1
図2
図3
図4
図5
図6