(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記当接板の垂直な板面が、前記左右側面板の板面に接触し、且つ前記当接板の垂直な縁部が、前記背面板の板面に接触し、前記背板が変形して、前記左右側面板及び前記背面板に対する押圧力を生じさせる、請求項6に記載の什器。
前記前板の短手方向の幅が、前記背板の短手方向の幅よりも小さく、前記前板の垂直な縁部と、前記左右側面板の板面との間に隙間が形成された、請求項5〜7のいずれか1項に記載の什器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10(a)、(b)は、従来の什器を構成する本体板100及び後補強部材200を示す斜視図である。本体板100及び後補強部材200は、例えば、机の袖及びワゴン等の本体を構成する。本体板100は、一の金属板を折り曲げることにより形成され、互いに連続する左右側面板100A、100B及び背面板100Cを有する。左右側面板100A、100Bの前辺には、一の金属板を折り曲げることにより、前補強111が連続して形成される。後補強部材200は、他の金属板を折り曲げることにより形成される。後補強部材200は、左右側面板100A、100Bの後辺の付近に溶接される。ここで、前補強111及び後補強部材200には、図示しない引出しのレールが取り付けられる。前補強111には、前記レールを取り付けるための三つの孔が、上下方向に間隔をおいて形成される。後補強部材200には、前補強111の前記孔に対応する三つの孔が、上下方向に間隔をおいて形成される。
【0006】
1.スポット溶接の問題
図11に示すように、従来の什器では、後補強部材200が左右側面板100A、100Bの内面にスポット溶接されていた。スポット溶接は、専用のマルチスポット溶接機によって実施される。このため、左右側面板100A、100Bに後補強部材200をスポット溶接するためだけの専用の設備、作業スペース、作業工程及び作業員が必要である。特に、
図10(b)に示す本体板100は、机の袖又はワゴンを構成するものであるが、いずれの場合であっても、本体板100の下端には、図示しない底面板がCO
2溶接によって接合される。このため、CO
2溶接とスポット溶接とのそれぞれに専用の設備、作業スペース、作業工程及び作業員が必要となるのである。
【0007】
また、左右側面板100A、100Bに後補強部材200をスポット溶接すると、
図11に示すような複数の溶接痕201が形成されてしまう。溶接痕201は、研磨作業によって消去することが可能である。しかし、溶接痕201の研磨作業には、手間と時間が掛かり、有害な粉塵が発生する問題がある。
【0008】
2.位置決めの問題
図12(a)、(b)に示すように、左右側面板100A、100Bに後補強部材200をスポット溶接するためには、専用の治具300を用いて、後補強部材200を位置決めする必要があった。すなわち、異なる什器製品ごとに、本体板100のサイズや後補強部材200の配置が相違する。このため、異なる什器製品ごとに、後補強部材200を位置決めするための専用の治具300を用意しなければならない。
【0009】
3.本発明の目的
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、下記の技術的な課題を解決することを目的とする。
第一に、補強部材を本体板に強固に嵌合させることができ、スポット溶接の使用を排除する。
第二に、補強部材を本体板に容易に嵌合させることができ、補強部材の嵌合工程を他の作業工程に集約させる。
第三に、補強部材と本体板との間の嵌合力が低下しない構造を提供する。
第四に、本体板に嵌合された補強部材にがたつきが生じない構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するために、本発明の什器は、折り曲げられた複数の金属板を結合して構成された什器であって、一の金属板を折り曲げることにより形成され、互いに連続する左右側面板及び背面板を有する本体板と、他の金属板を折り曲げることにより形成され、前記左右側面板にそれぞれ嵌合される一対の補強部材と、を含み、前記左右側面板の上辺及び下辺のうちの一方に第一連結部が設けられ、他方に第二連結部が設けられ、前記補強部材の一端及び他端のうちの一方が前記第一連結部に嵌合され、他方が前記第二連結部に嵌合される。
【0011】
(2)好ましくは、上記(1)の什器において、前記第一連結部は、前記左右側面板の上辺及び下辺のうちの一方に連続する水平な板面を有し、前記第二連結部は、前記左右側面板の上辺及び下辺のうちの他方に連続する水平な板面及び垂直な板面を有し、前記第一連結部の水平な板面には、嵌合孔が形成され、前記第二連結部の垂直な板面の縁部には、第一ガイド傾斜及び第一嵌合溝が形成され、前記補強部材は、前記第一連結部から前記第二連結部に達する長さを有し、前記補強部材の一端には、前記嵌合孔に嵌合される嵌合爪が形成され、前記補強部材の他端には、前記
第一ガイド傾斜に案内されて前記第一嵌合溝に嵌合される第二嵌合溝が形成される。
【0012】
(3)好ましくは、上記(1)又は(2)の什器において、前記補強部材が、前記左右側面板の中心よりも後側にそれぞれ嵌合される。
【0013】
(4)好ましくは、上記
(2)の什器において、前記嵌合孔が、四角形状の輪郭を有し、前記嵌合爪が、断面略L字形に連続する二つの垂直な板面を有し、一の垂直な板面の縁部には、第二ガイド傾斜が形成され、他の垂直な板面は、前記嵌合孔との当接面となり、前記第二ガイド傾斜は、前記嵌合爪を前記嵌合孔に嵌合させる過程において、前記嵌合孔の一辺に接触するように構成され、前記当接面は、前記第二嵌合溝が前記第一嵌合溝に嵌合されたときに、前記嵌合孔の一辺に対向する他辺に接触するように構成される。
【0014】
(5)好ましくは、上記(4)の什器において、前記補強部材が、断面略U字形に連続する垂直な前板、側板及び背板を有し、前記嵌合爪が、前記補強部材の一端において、前記前板及び前記側板の両方に連続して形成され、前記第二嵌合溝が、前記補強部材の他端において、前記前板及び前記側板の境界に沿って形成される。
【0015】
(6)好ましくは、上記(5)の什器において、前記補強部材が、前記背板から直角に連続する当接板を有し、前記当接板の垂直な板面が、前記左右側面板に接触するように構成される。
【0016】
(7)好ましくは、上記(6)の什器において、前記当接板の垂直な板面が、前記左右側面板の板面に接触し、且つ前記当接板の垂直な縁部が、前記背面板の板面に接触し、前記背板が変形して、前記左右側面板及び前記背面板に対する押圧力を生じさせる。
【0017】
(8)好ましくは、上記(5)〜(7)の什器において、前記前板の短手方向の幅が、前記背板の短手方向の幅よりも小さく、前記前板の垂直な縁部と、前記左右側面板の板面との間に隙間が形成される。
【0018】
(9)好ましくは、上記(6)の什器において、前記前板の垂直な縁部の少なくとも一部に、前記左右側面板の板面に接触する当接片が設けられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第一に、補強部材を本体板に強固に嵌合させることができ、スポット溶接の使用を排除することが可能となる。第二に、補強部材を本体板に容易に嵌合させることができ、補強部材の嵌合工程を他の作業工程に集約させることが可能となる。第三に、補強部材と本体板との間の嵌合力が低下しない構造を提供することができる。第四に、本体板に嵌合された補強部材にがたつきが生じない構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1(a)〜(c)は、本発明の第一実施形態に係る什器の本体板及び後補強部材を示す斜視図である。
図1(d)は、
図1(a)の拡大図である。
図1(e)、(f)は、
図1(b)の拡大図である。
図1(g)は、
図1(c)の拡大図である。
【
図2】
図2(a)は、本体板を構成する左側面板と後補強部材とを示す部分平面図である。
図2(b)は、左側面板と後補強部材とを示す部分正面図である。
図2(c)は、左側面板と後補強部材とを示す部分側面断面図である。
【
図4】
図4(a)は、後補強部材を左側面板に嵌合させる工程を示す側面断面図である。
図4(b)は、後補強部材の嵌合爪と左側面板の嵌合孔との嵌合過程を示す部分平面図及び部分側面断面図である。
図4(c)は、後補強部材の嵌合爪と左側面板の嵌合孔との嵌合状態を示す部分平面図及び部分側面断面図である。
【
図5】
図5(a)は、後補強部材の前板に設けられた当接片及び隙間の技術的意義を説明するための部分正面図である。
図5(b)、(c)は、後補強部材の前板から当接片を省略した構成を示す部分正面図である。
図5(d)、(e)は、後補強部材の前板から隙間を省略した構成を示す部分正面図である。
【
図6】
図6(a)は、後補強部材の第二嵌合溝と左側面板の第一嵌合溝との嵌合過程を示す部分正面図である。
図6(b)、(c)は、本発明の嵌合構造の変更例を示す部分正面図である。
図6(d)は、嵌合構造の変更例を示す斜視図である。
【
図7】
図7(a)〜(c)は、本発明の第二実施形態に係る什器の本体板及び後補強部材を示す斜視図である。
【
図8】
図8(a)は、本体板を構成する左側面板と後補強部材とを示す部分平面図である。
図8(b)は、左側面板と後補強部材とを示す部分正面図である。
図8(c)は、左側面板と後補強部材とを示す部分側面断面図である。
【
図9】
図9(a)は、後補強部材を左側面板に嵌合させる工程を示す側面断面図である。
図9(b)は、後補強部材の嵌合爪と左側面板の嵌合孔との嵌合過程を示す部分平面図及び部分側面断面図である。
図9(c)は、後補強部材の嵌合爪と左側面板の嵌合孔との嵌合状態を示す部分平面図及び部分側面断面図である。
【
図10】
図10(a)、(b)は、従来の什器の本体板及び後補強部材を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、従来の什器を構成する左側面板及び後補強部材を示す部分側面断面図である。
【
図12】
図12(a)、(b)は、左側面板に対して後補強部材を位置決めする工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態に係る什器について、
図1〜
図6を参照しつつ説明する。本実施形態の什器は、図示しない鋼板製の机である。
図1(a)〜(c)に示す本体板1及び後補強部材2は、図示しない机の袖を構成する。
【0022】
1.全体構成
図1(a)〜(c)に示すように、本実施形態に係る什器は、本体板1と、二つの後補強部材2とを含む。本体板1及び後補強部材2は、それぞれ折り曲げられた一枚の金属板により構成される。本体板1及び後補強部材2は、スポット溶接を一切用いずに、本発明の嵌合構造により連結される。
【0023】
2.本体板
図1(a)に示すように、本体板1は、図示しない机の袖の本体を構成する。本体板1は、一の金属板を折り曲げることにより形成され、互いに連続する左右側面板1A、1B及び背面板1Cを有する。本体板1は、左右対称であり、左側面板1Aと右側面板1Bとの構成は、対称であることを除いて同一である。したがって、本実施形態では、右側面板1Bと後補強部材2との嵌合構造についてのみ図示し、左側面板1Aの嵌合構造については図示を省略する。
【0024】
2−1.第一連結部
図1(a)に示すように、左右側面板1A、1Bの上辺には、当該箇所に連続する金属板を内側に折り曲げることにより、第一連結部12が設けられる。第一連結部12は、左右側面板1A、1Bの上辺に連続する水平な板面と、この水平な板面から下方に向かって折り曲げられた垂直な板面とを有する。
図1(d)に示すように、第一連結部12の水平な板面には、四角形状の輪郭を有する嵌合孔12aが形成される。本実施形態の嵌合孔12aの形成位置は、左右側面板1A、1Bの中心よりも後側であり、背面板1Cの左右辺の手前である(
図1(a)を参照)。
【0025】
2−2.第二連結部
図1(a)に示すように、左右側面板1A、1Bの下辺には、当該箇所に連続する金属板を内側に折り曲げることにより、第二連結部13が設けられる。第二連結部13は、左右側面板1A、1Bの下辺に連続する水平な板面と、この水平な板面から上方に向かって折り曲げられた垂直な板面とを有する。
図1(f)に示すように、第二連結部13の垂直な板面は、その長手方向に沿って一部が切り欠かれている。この第二連結部13の垂直な板面の切り欠かれた部分の後端側には、第一ガイド傾斜13a及び第一嵌合溝13bが形成される。第一ガイド傾斜13aは、前方から後方に向かって高くなる傾斜である。第一嵌合溝13bは、第一ガイド傾斜13aの後端に連続する凹状の切り欠きである。
図1(b)、
図2(c)に示すように、第一嵌合溝13bの形成位置は、上述した四角形状の嵌合孔12aの前辺の位置にほぼ等しい。
【0026】
2−3.前補強
図1(a)〜(c)に示すように、左右側面板1A、1Bの前辺には、当該箇所に連続する金属板を内側に折り曲げることにより、前補強11が設けられる。前補強11は、略U字形の断面を有し、左右側面板1A、1Bの上辺から下辺に達する長さを有する。
【0027】
3.後補強部材
図1(a)〜(c)に示すように、後補強部材2は、他の金属板を折り曲げることにより形成され、左右側面板1A、1Bの第一連結部12から第二連結部13に達する長さを有する。後補強部材2の上端には、嵌合爪21が形成される。
図1(d)、(e)に示すように、嵌合爪21は、第一連結部12の嵌合孔12aに嵌合される。一方、
図1(a)〜(c)に示すように、後補強部材2の下端には、第二嵌合溝22が形成される。
図1(f)、(g)に示すように、第二嵌合溝22は、第二連結部13の第一ガイド傾斜13aに案内され、第一嵌合溝13bに嵌合される。
【0028】
このような後補強部材2は、前補強11と対になる。上述したように、本実施形態の本体板1は、図示しない机の袖の本体を構成するものである。このため、前補強11及び後補強部材2には、三つの孔が、上下方向に間隔をおいてそれぞれ形成される。前補強11の三つの孔と、後補強部材2の三つの孔とは、互いに同じ高さに位置し、前後の二つの孔が対応する。図示しないレールは、前補強11及び後補強部材2の対応する前後の二つの孔に水平に取り付けられる。
【0029】
3−1.嵌合爪
図3は、本実施形態の後補強部材2の詳細な構成を示す。
図3において、後補強部材2は、断面略U字形に連続する垂直な前板2A、側板2B及び背板2Cを有する。上述した嵌合爪21は、後補強部材2の上端において、垂直な前板2A及び側板2Bの両方に連続して形成される。つまり、本実施形態の嵌合爪21は、断面略L字形に連続する二つの垂直な板面を有する。一の垂直な板面の縁部には、第二ガイド傾斜21aが形成され、他の垂直な板面は、嵌合孔12aとの当接面21bとなる。
【0030】
ここで、
図4(a)に示すように、本実施形態の後補強部材2は、嵌合孔12aに挿入された嵌合爪21を支点にして回転されることにより、左右側面板1A、1Bの第一連結部12及び第二連結部13のそれぞれに嵌合される。上述した第二ガイド傾斜21aは、嵌合爪21を嵌合孔12aに嵌合させる過程において、嵌合孔12aの一辺に接触するように構成される。
【0031】
具体的には、
図4(b)に示すように、第二ガイド傾斜21aは、嵌合爪21を嵌合孔12aに嵌合させる過程において、四角形状の嵌合孔21aの後辺に接触する。これにより、後補強部材2の回転に伴って、嵌合爪21が嵌合孔12aの中へ案内され、嵌合爪21と嵌合孔12aとが円滑に嵌合される。
【0032】
一方、
図4(c)に示すように、当接面21bは、第二嵌合溝22が第一嵌合溝13bに嵌合されたときに(
図1(c)、(g)を参照)、四角形状の嵌合孔12aの前辺に接触するように構成される。これにより、後補強部材2は、左右側面板1A、1Bの第一連結部12と第二連結部13との間に固定される。
【0033】
3−2.第二嵌合溝
図3に示すように、上述した第二嵌合溝22は、後補強部材2の下端において、垂直な前板2A及び側板2Bの境界に沿って形成される。つまり、本実施形態の第二嵌合溝22の形成位置は、嵌合爪21の当接面21bの位置にほぼ等しい。この構成により、第二嵌合溝22が第一嵌合溝13bに嵌合されたときに、当接面21bが嵌合孔12aの前辺に接触するようになる(
図2(c)を参照)。
【0034】
3−3.当接板
図2(a)、(c)に示すように、本実施形態の後補強部材2は、背板2Cから後方に向かって直角に連続する当接板2Dを有する。当接板2Dの垂直な板面は、左右側面板1A、1Bの板面に接触する。当接板2Dの全面を左右側面板1A、1Bの板面に接触させると、第二嵌合溝22が、第二連結部13の垂直な板面と同じ仮想面上に位置する。したがって、当接板2Dの全面を左右側面板1A、1Bの板面に接触させながら、
図4(a)に示すように後補強部材2を回転させると、第二嵌合溝22が第一嵌合溝13bと同じ仮想面上に位置し、両者を容易に嵌合させることができる。
【0035】
3−4.隙間
図5(a)に示すように、後補強部材2の前板2Aの短手方向の幅は、背板2Cの短手方向の幅よりも小さい。この結果、前板2Aの垂直な縁部と、左右側面板1A、1Bの板面との間に隙間25が形成される。この隙間25は、左右側面板1A、1Bの板面の塗装を支援する。すなわち、後補強部材2を嵌合させた後に、左右側面板1A、1Bの板面を塗装する場合は、スプレーされた塗料が、隙間25から後補強部材2の内部に侵入することができる。これにより、左右側面板1A、1Bの板面のうち、後補強部材2の下に位置する部分を塗装することが可能となる。この結果、無塗装の部分の錆を防止することができる。
【0036】
すなわち、
図5(d)に示すように、後補強部材2の前板2Aに隙間25がなければ、左右側面板1A、1Bの板面のうち、後補強部材2の下に位置する部分を塗装することはできない。そして、
図5(e)に示すように、左右側面板1A、1Bに撓みが生じた場合は、後補強部材2の下の無塗装部分が露出してしまい、錆が生じるおそれがある。後補強部材2の前板2Aに隙間25を設けることで、このような左右側面板1A、1Bの無塗装部分に起因する錆を防止することが可能となる。
【0037】
3−5.当接片
図5(a)に示すように、後補強部材2の前板2Aの上端には、水平方向に突出する当接片24が設けられる。当接片24を含む前板2Aの短手方向の幅は、背板2Cの短手方向の幅と等しい。つまり、当接片24の先端は、背板2Cに連続する当接板2Dの板面と同じ仮想面上に位置する。このような当接片24は、
図4(a)に示す後補強部材2の回転操作を支援する。すなわち、後補強部材2の回転操作の最中に、当接片24の先端が、左右側面板1A、1Bの板面に接触する。この結果、後補強部材2が前板2A側に傾くことがなく、回転操作の最中における後補強部材2の平衡が保たれる。この構成により、後補強部材2を左右側面板1A、1Bに嵌合させる作業がより円滑になる。
【0038】
例えば、
図5(b)に示すように、後補強部材2の前板2Aに当接片24がなければ、後補強部材2が隙間25の方向に傾いてしまい、嵌合爪21を嵌合孔12aに一致させることすら難しい。また、
図5(c)に示すように、嵌合爪21を嵌合孔12aに挿入させることができたとしても、前板2Aの隙間25を保ちながら、後補強部材2を平衡に回転操作することは難しい。したがって、後補強部材2の前板2Aに当接片24を設けることで、後補強部材2を左右側面板1A、1Bに嵌合させる作業は極めて容易になる。
【0039】
3−6.切欠部
図3に示すように、後補強部材2の下端後方には、切欠部23が形成される。
図2(c)に示すように、切欠部23は、後補強部材2の側板2B、背板2C及び当接板2Dに連続して形成される。切欠部23によって、後補強部材2の下端後方が大きく開口し、後補強部材2の内側に、第二連結部13の垂直な板面が導入され易くなる。
図1(f)、(g)に示すように、第二嵌合溝22が第一嵌合溝13bに嵌合される過程において、まず、第二連結部13の垂直な板面が、切欠部23を介して、後補強部材2の側板2Bの内側に導入される。その後は、後補強部材2の側板2Bが第二連結部13の垂直な板面に接触し、第二嵌合溝22が、第一ガイド傾斜13aから第一嵌合溝13bへ案内される。したがって、後補強部材2の下端後方に切欠部23を設けることで、第二嵌合溝22を第一嵌合溝13bに嵌合させる作業は極めて容易になる。
【0040】
4.作用効果
上述した本実施形態の嵌合構造によれば、後補強部材2を左右側面板1A、1Bに強固に嵌合させることができ、スポット溶接の使用を排除することが可能となる。そして、後補強部材2は、嵌合孔12aに挿入された嵌合爪21を支点にして回転させるだけで、左右側面板1A、1Bに極めて容易に嵌合させることができる。つまり、後補強部材2を左右側面板1A、1Bに嵌合させるための専用の設備、作業スペース、作業工程及び作業員は、一切不要である。したがって、後補強部材2の嵌合工程を他の作業工程に集約させることが可能となる。
【0041】
さらに、
図6(a)に示す原理により、本実施形態の嵌合構造は、後補強部材2と左右側面板1A、1Bとの間の嵌合力が低下しない。すなわち、左右側面板1A、1Bの第一嵌合溝13bは、第二連結部13の塑性変形(永久変形)を効果的に防止することが可能な構成となっている。
図6(a)に示すように、左右側面板1A、1Bの第一嵌合溝13bと、後補強部材2の第二嵌合溝22とが嵌合する過程において、第二連結部13の水平な板面が、左右側面板1A、1Bの下辺を支点にして下方に変形する。本実施形態の第一嵌合溝13bは、変形の支点となる左右側面板1A、1Bの下辺から最も離れた位置に形成される。この構成により、嵌合過程において、第二連結部13の水平な板面が広範囲に変形する(
図6(a)中の「大」を参照)。この結果、嵌合過程における第二連結部13の水平な板面の変形量が小さくなる(
図6(a)中の「小」を参照)。このような原理により、本実施形態の嵌合構造では、第二連結部13の塑性変形が効果的に防止され、後補強部材2と左右側面板1A、1Bとの間の嵌合力が低下しない。
【0042】
ここで、
図6(b)、(d)は、第二連結部13の構成の変更例を示す。
図6(b)、(d)に示す第二連結部13は、水平な板面の上に嵌合突起13cが形成された構成となっている。
図4(a)に示す回転操作により、後補強部材2の前板2Aが嵌合突起13cを乗り越える。これにより、嵌合突起13cが後補強部材2の前板2Aに接触し、両者が嵌合される。このような構成とした場合は、
図6(b)に示すように、嵌合過程において、第二連結部13の水平な板面が変形する範囲が小さい(
図6(b)中の「小」を参照)。また、嵌合突起13cは、十分な嵌合力を得るための高さを必要とする。このため、第二連結部13の水平な板面の変形量が大きくなる(
図6(b)中の「大」を参照)。したがって、嵌合過程において、第二連結部13の水平な板面に掛かる負荷が大きくなり、第二連結部13が塑性変形してしまう可能性がある。
【0043】
なお、
図6(c)に示すように、嵌合突起13cを、変形の支点となる左右側面板1A、1Bの下辺から離れた位置に形成することは、現実的に困難である。嵌合突起13cの形成位置が第二連結部13の垂直な板面に極めて近いので、このような嵌合突起13cを形成するための金型を作ることができないからである。
【0044】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態に係る什器について、
図7〜
図9を参照しつつ説明する。本実施形態の什器は、図示しない鋼板製のワゴンである。
図7(a)〜(c)に示す本体板1及び後補強部材2は、ワゴンの本体を構成する。
【0045】
1.第一実施形態との相違
一般なワゴンは、移動のためのキャスターが設けられる。本発明の嵌合構造により、後補強部材2を左右側面板1A、1Bに嵌合させた場合は、後補強部材2のがたつきを確実に防止する必要がある。そこで、以下に説明する第二実施形態の嵌合構造は、上述した第一実施形態にない、後補強部材2のがたつき防止構造を備える。
【0046】
2.特徴の概要
図8(a)に示すように、本実施形態の嵌合構造は、後補強部材2の当接板2Dの垂直な縁部が、背面板1Cの板面に接触し、背板2Cが変形して、左右側面板1A、1B及び背面板1Cに対する押圧力を生じさせる構成となっている。この押圧力によって、後補強部材2と左右側面板1A、1Bとの嵌合がより強固なものとなる。この結果、ワゴンを移動させたときの振動による、後補強部材2のがたつきが確実に防止される。
【0047】
3.嵌合孔、第一ガイド傾斜及び第一嵌合溝の形成位置
図7(a)〜(c)に示すように、本体板1の第1連結部12における嵌合孔12aの形成位置が、上述した第一実施形態と相違する。
図8(a)、(c)に詳細に示すように、本実施形態の嵌合孔12aは、第一連結部12のより後方の位置であって、背面板1Cのより近傍の位置に形成される。このような嵌合孔12aの形成位置に対応して、本実施形態の第一ガイド傾斜13a及び第一嵌合溝13bも、第二連結部13のより後方の位置であって、背面板1Cのより近傍の位置に形成される。
【0048】
上述した第一実施形態と同様に、第一連結部12の嵌合孔12aには、後補強部材2の嵌合爪21が嵌合される。第二連結部13の第一嵌合溝13bには、後補強部材2の第二嵌合溝22が嵌合される(
図8(b)、(c)を参照)。
【0049】
4.後補強部材の嵌合工程
本実施形態における後補強部材2の嵌合工程は、上述した第一実施形態と全く同じである。
図9(a)〜(c)に示すように、後補強部材2は、嵌合孔12aに挿入された嵌合爪21を支点にして回転されることにより、左右側面板1A、1Bの第一連結部12及び第二連結部13のそれぞれに嵌合される。
【0050】
5.作用効果
図8(c)に示すように、後補強部材2を、左右側面板1A、1Bの第一連結部12及び第二連結部13のそれぞれに嵌合させる。すると、後補強部材2の当接板2Dの垂直な縁部が、背面板1Cの板面に接触する。これにより、
図8(a)に示すように、後補強部材2の背板2Cが変形して、左右側面板1A、1B及び背面板1Cに対する押圧力を生じさせる。この押圧力によって、後補強部材2と左右側面板1A、1Bとの嵌合がより強固なものとなる。この結果、ワゴンを移動させたときの振動による、後補強部材2のがたつきが確実に防止される。これに加え、本実施形態の嵌合構造は、上述した第一実施形態と全く同様の作用効果を奏する。