【文献】
Designed Monomers and Polymers (2001), Vol.4, No.1, p.1-8,2001年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セルロース繊維に対する重合性単量体のグラフト量が、修飾セルロース繊維の総量に対して、0.01〜20重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の修飾セルロース繊維。
溶媒中、ラジカル発生剤の存在下、セルロース繊維と、請求項1に記載の式(1)で表される化合物とを反応させ、請求項1〜7のいずれかに記載の修飾セルロース繊維を製造する方法。
セルロース繊維が、木材パルプ及びコットンリンターパルプから選択された少なくとも1種のパルプに由来するナノセルロースファイバーを含む請求項11記載の修飾セルロース繊維。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の修飾セルロース繊維は、セルロース繊維と、このセルロース繊維に対してグラフト結合(又はグラフト重合)した9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物(重合性フルオレン化合物)とを含んでいる。
【0031】
[セルロース繊維]
セルロースとしては、リグニン、ヘミセルロースなどの非セルロース成分の含有量が少ないパルプ、例えば、植物由来のセルロース原料{例えば、木材[例えば、針葉樹(マツ、モミ、トウヒ、ツガ、スギなど)、広葉樹(ブナ、カバ、ポプラ、カエデなど)など]、草本類[麻類(麻、亜麻、マニラ麻、ラミーなど)、ワラ、バガス、ミツマタなど]、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなど)、竹、サトウキビなど}、動物由来のセルロース原料(ホヤセルロースなど)、バクテリア由来のセルロース原料(ナタデココに含まれるセルロースなど)などから製造されたパルプなどが例示できる。これらのセルロースは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのセルロースのうち、木材パルプ(例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなど)、種子毛繊維由来のパルプ(例えば、コットンリンターパルプ)由来のセルロースなどが好ましい。なお、パルプは、パルプ材を機械的に処理した機械パルプであってもよいが、非セルロース成分の含有量が少ないことからパルプ材を化学的に処理した化学パルプが好ましい。また、セルロースは、前記例示のパルプ(例えば、化学パルプ)などを微細化(ミクロフィブリル化)したセルロース繊維、特に、セルロースナノファイバーであるのが好ましい。
【0032】
セルロース繊維と非セルロース成分との総量に対するセルロースの割合(含有量)は、例えば、70重量%以上(例えば、75〜100重量%)、好ましくは80重量%以上(例えば、85〜100重量%)、さらに好ましくは90重量%以上(例えば、95〜100重量%)程度であってもよい。
【0033】
セルロース繊維の平均繊維径は、マイクロメーターサイズ(例えば、1〜20μm)であってもよいが、樹脂の補強性の観点から、ナノメーターサイズ、例えば、2〜1000nm(例えば、4〜700nm)、好ましくは5〜500nm(例えば、7〜250nm)、さらに好ましくは10〜100nm程度であってもよく、10〜80nm(例えば、20〜70nm、特に25〜50nm)程度であってもよい。
【0034】
セルロース繊維の平均繊維長は、例えば、0.01〜500μm(例えば、0.05〜400μm)程度の範囲から選択でき、通常、0.1〜300μm(例えば、0.1〜200μm)、好ましくは0.2〜100μm(例えば、0.3〜80μm)、さらに好ましくは0.5〜30μm(例えば、0.5〜10μm)程度であってもよい。
【0035】
さらに、セルロース繊維の平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は、例えば、5以上(例えば、5〜10000程度)、好ましくは10以上(例えば、10〜5000程度)、さらに好ましくは20以上(例えば、20〜3000程度)、特に50以上(例えば、50〜2000程度)であってもよく、100以上(例えば、100〜1000程度)、さらには200以上(例えば、200〜800程度)であってもよい。アスペクト比が小さすぎると、樹脂の補強効果が低下し、アスペクト比が大きすぎても、繊維が分解(又は損傷)しやすくなる虞がある。
【0036】
セルロース繊維は、結晶性の高いセルロース繊維であってもよく、セルロース繊維の結晶化度は、例えば、40〜100%(例えば、50〜100%)、好ましくは60〜95%、さらに好ましくは70〜90%(例えば、75〜90%)程度であってもよく、通常、結晶化度が60%以上であってもよい。本発明の製造方法では、セルロース繊維の結晶性を維持できることから、結晶化度の高いセルロースを使用すれば、高結晶性の修飾セルロース繊維を得ることができる。そのため、結晶性セルロースを好適に使用してもよい。なお、セルロース繊維の結晶構造としては、例えば、I型、II型、III型、IV型などが例示でき、低線膨張特性及び弾性率などが高いI型結晶構造が好ましい。
【0037】
(重合性フルオレン化合物)
前記重合性フルオレン化合物は、9,9−ビスアリール骨格とともにラジカル重合性基を有し、下記式(1)で表される。
【0039】
(式中、環Zはアレーン環;R
1はアルキレン基;mは0又は1以上の整数;X
1及びX
2はそれぞれ独立してラジカル重合性基又は水素原子であって、X
1及びX
2のうち少なくとも一方はラジカル重合性基であり;n1及びn2は0又は1以上の整数であって、n1及びn2のうちラジカル重合性基を含む置換基の置換数に対応する少なくとも一方は1以上の整数であり;R
4及びR
5は置換基;pは0又は1以上の整数;kは0〜4の整数を示す)
【0040】
前記式(1)において、環Zで表されるアレーン環として、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。
【0041】
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン(例えば、ナフタレンなどの縮合二環式C
10−16アレーン)環、縮合三環式アレーン(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)環などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。なお、2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよい。
【0042】
環集合アレーン環としては、ビアレーン環、例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(1−フェニルナフタレン環、2−フェニルナフタレン環など)などのビC
6−12アレーン環、テルアレーン環、例えば、テルフェニレン環などのテルC
6−12アレーン環などが例示できる。好ましい環集合アレーン環としては、ビC
6−10アレーン環、特にビフェニル環などが挙げられる。
【0043】
前記式(1)において、アルキレン基R
1には、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が含まれ、直鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などのC
2−6アルキレン基(好ましくは直鎖状C
2−4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状C
2−3アルキレン基、特にエチレン基)が例示でき、分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基、1,3−ブタンジイル基などの分岐鎖状C
3−6アルキレン基(好ましくは分岐鎖状C
3−4アルキレン基、特にプロピレン基)などが挙げられる。なお、mが2以上の整数である場合、アルキレン基R
1の種類は、同一又は異なっていてもよい。また、アルキレン基R
1の種類は、同一の又は異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
【0044】
オキシアルキレン基(OR
1)の数mは、0〜20の整数(例えば、0〜15の整数)程度の範囲から選択でき、例えば、0〜10(例えば、1〜8)の整数、好ましくは0〜5(例えば、1〜5)の整数、さらに好ましくは0〜4(例えば、1〜4)の整数、特に0〜3(例えば、1〜3)程度の整数であってもよく、通常、0〜2の整数(例えば、0又は1)であってもよい。
【0045】
重合性基X
1及びX
2は、同一又は異なって、下記式(2a)で表されるアリル基、下記式(2b)で表される(メタ)アクリロイル基、又は下記式(2c)で表される基であってもよい。
【0047】
(式中、R
2は水素原子又はメチル基を示し、R
3a及びR
3bはそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を示し、R
3は水素原子又はアルキル基を示す)
【0048】
R
3a、R
3b、R
3で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−6アルキル基(好ましくはC
1−4ルキル基)などが例示できる。好ましいR
3a及びR
3bは、通常、同時にアルキル基であることはなく、R
3a及びR
3bの双方が水素原子、又はR
3a及びR
3bの一方が水素原子であり、他方がアルキル基(特にメチル基)である場合が多く、R
3は水素原子である場合が多い。
【0049】
このような重合性基X
1及びX
2を有するフルオレン化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい重合性基X
1及びX
2は、重合性不飽和二重結合を有する多価カルボン酸又はその反応性誘導体に由来する重合性基、例えば、前記式(2c)で表される重合性基が含まれる。このような重合性基X
1及びX
2(特に、マレイン酸に由来する重合性基)を有する重合性フルオレン化合物は単独重合性が低く、セルロース繊維に対して有効にグラフト結合でき、修飾率が小さくても、高い効果が発現するようである。しかも、セルロース繊維とのグラフト反応により、修飾セルロース繊維に活性なカルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を導入できる。
【0050】
なお、一部のカルボキシル基又はアルコキシカルボニル基は、セルロース繊維のヒドロキシル基と反応していてもよい。
【0051】
前記式(1)において、基[X−(OR
1)
m−](XはX
1又はX
2を示す。以下、同じ)の置換数n1及びn2は、それぞれ独立して0又は1以上の整数(例えば、0〜3の整数)であって、同時に「0」であることはなく、n1及びn2のうち少なくとも一方が、環Zの種類に応じて、1以上の整数、例えば、1〜4の整数、好ましくは1〜3の整数、さらに好ましくは1又は2の整数、特に1であってもよい。なお、置換数n1及びn2は、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、n1及びn2のうちラジカル重合性基を含む置換基の置換数に対応する少なくとも一方は1以上の整数(例えば、1〜3の整数、特に1又は2)であってもよい。
【0052】
好ましい態様では、X
1がラジカル重合性基、X
2がラジカル重合性基又は水素原子であり、n1及びn2が1であってもよく、重合性基X
1及びX
2は、アリル基、(メタ)アクリロイル基、特に式(2c)で表される重合性基であってもよい。
【0053】
なお、基[X−(OR
1)
m−]は、環Zの適当な位置に置換でき、例えば、環Zがベンゼン環である場合には、フェニル基の2−,3−,4−位(特に、3−位及び/又は4−位)に置換している場合が多く、環Zがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5〜8−位である場合が多く、例えば、フルオレンの9−位に対してナフタレン環の1−位又は2−位が置換し(1−ナフチル又は2−ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5−位、2,6−位などの関係(特にnが1である場合、2,6−位の関係)で基[X−(OR
1)
m−]が置換している場合が多い。また、nが2以上である場合、置換位置は、特に限定されない。また、環集合アレーン環Zにおいて、基[X−(OR
1)
m−]の置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9−位に結合したアレーン環及び/又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ビフェニル環Zの3−位又は4−位がフルオレンの9−位に結合していてもよく、ビフェニル環Zの4−位がフルオレンの9−位に結合しているとき、基[X−(OR
1)
m−]の置換位置は、2−,3−,2’−,3’−,4’−位のいずれであってもよく、通常、2−,3’−,4’−位、好ましくは2−,4’−位(特に、2−位)に置換していてもよい。
【0054】
前記式(1)において、置換基R
4としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C
1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C
1−4アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC
5−10シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル(トリル)基、ジメチルフェニル(キシリル)基など)、ビフェニル基、ナフチル基などのC
6−12アリール基]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−10アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロへキシルオキシ基などのC
5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC
6−10アリールオキシ基など)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキルオキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC
1−10アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロへキシルチオ基などのC
5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基などのC
6−10アリールチオ基など)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキルチオ基など)、アシル基(例えば、アセチル基などのC
1−6アシル基など)、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC
1−4アルコキシ−カルボニル基など)、ニトロ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC
1−4アルキルアミノ基など)、ジアルキルカルボニルアミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのジC
1−4アルキル−カルボニルアミノ基など)などが例示できる。
【0055】
これらの置換基R
4のうち、代表的には、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。好ましい置換基R
4としては、アルコキシ基、アルキル基など、特にメチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−4アルキル基が挙げられる。なお、置換基R
4がアリール基であるとき、置換基R
4は、環Zとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。置換基R
4の種類は、同一の又は異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
【0056】
置換数pの数は、環Zの種類などに応じて適宜選択でき、例えば、0〜8程度の整数であってもよく、0〜4の整数、好ましくは0〜3(例えば、0〜2)の整数、特に0又は1であってもよい。特に、pが1である場合、環Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、置換基R
4がメチル基であってもよい。
【0057】
置換基R
5として、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC
1−4アルコキシ−カルボニル基など)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC
1−6アルキル基)、アリール基(フェニル基などのC
6−10アリール基)などが挙げられる。
【0058】
これらの置換基R
5のうち、代表的には、アルキル基、カルボキシ基又はC
1−2アルコキシ−カルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子など、特にメチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−4アルキル基が好ましい。置換数kは0〜4(例えば、0〜3)の整数、好ましくは0〜2の整数(例えば、0又は1)、特に0である。なお、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよく、kが2以上である場合、置換基R
5の種類は互いに同一又は異なっていてもよく、フルオレン環の2つのベンゼン環に置換する置換基R
5の種類は同一又は異なっていてもよい。また、置換基R
5の置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2−位乃至7−位(2−位、3−位及び/又は7−位など)であってもよい。
【0059】
前記式(1)において、mが0であり、X
1及びX
2が式(2c)のR
3が水素原子である重合性基(3−カルボキシアクリロイル基)であり、n1及びn2が1である化合物としては、9,9−ビス((3−カルボキシアクリロイルオキシ)アレーン)フルオレン類{例えば、9,9−ビス(4−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)−1−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(3−カルボキシアクリロイルオキシC
6−12アリール)フルオレン、9,9−ビス(3−フェニル−4−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−フェニル−3−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C
6−12アリール−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)C
6−12アリール)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−メチル−3−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C
1−4アルキル−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)C
6−12アリール)フルオレンなどが例示できる。
【0060】
前記式(1)において、mが1であり、X
1及びX
2が式(2c)のR
3が水素原子である重合性基(3−カルボキシアクリロイル基)であり、n1及びn2が1である化合物としては、9,9−ビス((3−カルボキシアクリロイルオキシ)アルコキシアレーン)フルオレン類{例えば、9,9−ビス[4−(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)エトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)プロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)エトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)プロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス((3−カルボキシアクリロイルオキシ)C
2−4アルコキシC
6−12アリール)フルオレン、9,9−ビス[4−フェニル−3−(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)エトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−フェニル−3−(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)プロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[C
6−12アリール−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)C
2−4アルコキシC
6−12アリール]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)エトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−メチル−3−(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)プロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[C
1−4アルキル−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)C
2−4アルコキシC
6−12アリール]フルオレンなど}などが例示できる。
【0061】
前記式(1)において、mが0であり、X
1及びX
2が式(2c)のR
3が水素原子である重合性基(3−カルボキシアクリロイル基)であり、n1及びn2が2以上である化合物としては、9,9−ビス[(ポリ)(3−カルボキシアクリロイルオキシ)アレーン]フルオレン類{9,9−ビス(3,4−ジ(3−カルボキシアクリロイルオキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,4−ジ(3−カルボキシアクリロイルオキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジ又はトリ(3−カルボキシアクリロイルオキシ)C
6−12アリール)フルオレンなど}などが例示できる。
【0062】
前記式(1)において、mが1であり、X
1及びX
2が式(2c)のR
3が水素原子である重合性基(3−カルボキシアクリロイル基)であり、n1及びn2が2以上である化合物としては、例えば、9,9−ビス[(ポリ)(3−カルボキシアクリロイルオキシ)アルコキシアレーン]フルオレン類{9,9−ビス[3,4−ジ(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)エトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ジ又はトリ(3−カルボキシアクリロイルオキシ)C
2−4アルコキシC
6−12アリール)フルオレンなど}などが例示できる。
【0063】
前記式(1)において、mが0又は1であり、X
1が重合性基(3−カルボキシアクリロイル基)、X
2が水素原子であり、n1及びn2が1又は2以上である化合物としては、前記mが0又は1の化合物に対応し、一方のX
1が重合性基(3−カルボキシアクリロイル基)であり、他方のX
2が水素原子である化合物が例示できる。
【0064】
前記式(1)において、mが2以上の化合物としては、前記mが0又は1の化合物に対応し、オキシアルキレン基(特にオキシC
2−4アルキレン基)の繰り返し単位mが2〜10の化合物などが挙げられる。mが2以上の具体的な化合物を表1及び表2に示す。
【0065】
前記式(1)中、k=0、p=0、n1及びn2=1、X
1及びX
2が重合性基(3−カルボキシアクリロイル基)である化合物、X
1が重合性基(3−カルボキシアクリロイル基)、X
2が水素原子である化合物を表1に例示し、前記式(1)中、R
4がメチル基、k=0、p=1、n1及びn2=1、X
1及びX
2が重合性基(3−カルボキシアクリロイル基)である化合物を表2に例示する。なお、表1及び2中、Aの置換位置は、環Zに対する基A:[X−(OR
1)
m−]の置換位置を示す。また、表2中、R
4の置換位置は、環Zに対する置換位置を示す。
【0068】
これらの化合物のうち、代表的にはk=0、p=0、n1及びn2=1、X
1及びX
2が重合性基(3−カルボキシアクリロイル基)である化合物、例えば、9,9−ビス(4−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,4−ジ(3−カルボキシアクリロイルオキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(4−フェニル−3−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)エトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)エトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)エトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[4−フェニル−3−(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)エトキシ)フェニル]フルオレンなど;k=0、p=0、n1及びn2=1、X
1が重合性基(3−カルボキシアクリロイル基)、X
2が水素原子である化合物、例えば、9−(4−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)フェニル)−9−(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9−(3−メチル−4−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)フェニル)−9−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9−(3,4−ジ(3−カルボキシアクリロイルオキシ)フェニル)−9−(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレン、9−(6−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)−2−ナフチル)−9−(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン、9−(4−フェニル−3−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)フェニル)−9−(4−フェニル−3−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9−[4−(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)エトキシ)フェニル]−9−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9−[3−メチル−4−(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)エトキシ)フェニル]−9−[3−メチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9−[6−(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)エトキシ)−2−ナフチル]−9−[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9−[4−フェニル−3−(2−(3−カルボキシアクリロイルオキシ)エトキシ)フェニル]−9−[4−フェニル−3−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
【0069】
前記式(1)で表される重合性フルオレン化合物は、X
1及びX
2が水素原子である9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物(ヒドロキシ含有フルオレン化合物)と、X
1及びX
2に対応する重合性化合物とを反応させることにより調製できる。重合性化合物としては、例えば、アリル化合物(例えば、アリルクロライドなどのアリルハライド)、(メタ)アクリル酸系化合物((メタ)アクリル酸クロライドなどの酸ハライド、(メタ)アクリル酸C
1−4アルキルエステルなど)、重合性不飽和二重結合を有する多価カルボン酸又はその反応性誘導体が例示できる。多価カルボン酸又はその反応性誘導体としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水シトラコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、グルタコン酸などの重合性不飽和二重結合を有するジ又はトリカルボン酸、ムコン酸、アニコット酸などの複数の重合性不飽和二重結合を有するジ又はトリカルボン酸などが例示でき、これらの多価カルボン酸の反応性誘導体は、酸無水物、酸ハライド、低級アルキルエステル(例えば、C
1−4アルキルハーフエステルなど)などであってもよい。これらの重合性化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0070】
好ましい重合性化合物は、単独重合性の低い化合物(アリル化合物、特に重合性不飽和二重結合を有する多価カルボン酸又はその反応性誘導体)、特に重合性不飽和二重結合を有する多価カルボン酸の酸無水物である。このような重合性酸無水物は、式(2c)に対応する酸無水物、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、特に無水マレイン酸であってもよい。
【0071】
ヒドロキシ含有フルオレン化合物と重合性化合物との反応において、ヒドロキシ含有フルオレン化合物のヒドロキシル基1モルに対して、重合性化合物の反応性基(ハロゲン原子、カルボキシル基又は酸無水物基など)の割合は、0.5〜5モル(例えば、0.7〜3モル)、好ましくは1〜2.5モル程度であってもよい。反応は触媒の非存在下で行ってもよく、反応には、必要により触媒(エステル化触媒、例えば、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸、強酸性イオン交換樹脂などの酸触媒など)を使用してもよい。反応は、必要により溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、反応に不活性な溶媒、例えば、炭化水素類(ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、トルエンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミドなど)ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、セロソルブアセテート類、カルビトールアセテート類、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。溶媒としては、芳香族炭化水素類を用いる場合が多い。
【0072】
反応は、50℃〜溶媒の還流温度で行うことができる。反応終了後、反応混合物から目的化合物を分離精製することにより、前記式(1)で表される重合性フルオレン化合物を調製できる。なお、重合性フルオレン化合物は、X
1及びX
2のうち少なくとも一方が前記重合性基有していればよく、X
1及びX
2が重合性基である化合物と、X
1が重合性基であり、X
2が水素原子である化合物との混合物であってもよい。
【0073】
なお、X
1及びX
2が水素原子である9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物(ヒドロキシ含有フルオレン化合物)は、市販品を使用してもよく、慣用の方法(例えば、9−フルオレノン類と、環Zに基[H−(OR
1)
m−]が置換したヒドロキシ基含有アレーン環化合物(例えば、2−フェノキシエタノールなどのフェノキシアルカノール類など)とを酸触媒の存在下で反応させる方法、フルオレン類の9−位にヒドロキシアリール基が置換したフルオレン化合物[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]と、基OR
1に対応するアルキレンオキシド、アルキレンカーボネート及びハロアルカノールから選択された少なくとも1種とを反応させる方法)で合成してもよい。
【0074】
なお、フルオレン化合物は、様々な樹脂と相溶するため、セルロース繊維[例えば、セルロースナノファイバー(CNF)]の疎水化修飾剤として有用である。
【0075】
(修飾セルロース繊維)
修飾セルロース繊維(又は変性セルロース繊維、セルロース繊維誘導体)において、前記式(1)で表される重合性フルオレン化合物がセルロース繊維に対してグラフト結合又はグラフト重合している。なお、このグラフト結合には、ラジカルによりセルロース繊維の水素原子がランダムに引き抜かれる引き抜き反応を伴うことに加え、式(1)で表される重合性フルオレン化合物もランダムに重合するため、セルロース繊維に対する式(1)で表される重合性フルオレン化合物の結合部位を特定することは現在の分析技術をもってしても困難である。そのため、修飾セルロース繊維は、後述の方法(ラジカル発生剤の存在下、セルロース繊維と式(1)で表される重合性フルオレン化合物との反応)で得られた生成物であってもよい。
【0076】
修飾セルロース繊維では、セルロース繊維に結合(又は修飾)した前記重合性フルオレン化合物の割合が、比較的少なくても有機媒体に対して高い親和性を示す。セルロース繊維に結合した前記重合性フルオレン化合物の割合(以下、修飾率という)は、修飾セルロース繊維の総量に対して、0.01〜20重量%程度の範囲から選択でき、例えば、0.05〜15重量%、好ましくは0.1〜10重量%(例えば、0.3〜7重量%)、さらに好ましくは0.5〜5重量%(例えば、0.7〜3重量%)程度であってもよい。修飾率が大きすぎると、低線膨張係数などの特性が低下する虞があり、逆に小さすぎると、樹脂に対する分散性(又は混和性)が低下する虞がある。
【0077】
修飾セルロース繊維と非セルロース成分との総量に対する修飾セルロース繊維の割合(含有量)は前記セルロース繊維と同様の割合(例えば、90重量%以上)であってもよい。修飾セルロース繊維の含有量が小さすぎると、樹脂の補強性が低下する虞がある。
【0078】
修飾セルロース繊維の平均粒子径(平均長径と平均短径との平均径)は、例えば、3nm〜100μm(例えば、3nm〜30μm)程度の範囲から選択でき、通常、5nm〜10μm(例えば、7nm〜7μm)、好ましくは10nm〜5μm(例えば、20nm〜3μm)、さらに好ましくは30nm〜2μm(例えば、50nm〜1μm)程度であってもよい。平均粒子径が大きすぎると、樹脂に対する分散性が低下し、逆に小さすぎると取り扱い性が低下する虞がある。なお、平均粒子径は、乾式篩法、レーザー回折法などを利用して測定できる。
【0079】
修飾セルロース繊維の製造工程においてセルロース繊維の分解を抑制できるため、修飾セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長及びアスペクト比の値は、前記セルロース繊維の各特性に対応しており、前記セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長及びアスペクト比の数値をそのまま参照できる。例えば、修飾セルロース繊維の平均繊維径は、マイクロメーターサイズ(例えば、1〜10μm)であってもよいが、ナノメーターサイズの修飾セルロース繊維(セルロースナノファイバー)が好ましい。なお、修飾セルロース繊維の平均繊維径は、前記セルロース繊維と同様の範囲(例えば、5〜500nm)であってもよい。また、修飾セルロース繊維は、前記セルロース繊維と同様の範囲の平均繊維長(例えば、0.1〜200μm)及びアスペクト比(例えば、20〜3000)であってもよい。アスペクト比が所定の範囲内にあると、樹脂の補強効果を向上できる。
【0080】
また、前記(2c)で表される重合性基を有する化合物がグラフト結合した修飾セルロース繊維では、カルボキシル基又はその反応性誘導体基により活性化できる。そのため、樹脂に対して修飾セルロース繊維の親和性又は反応性を付与でき、有効に複合化できる。
【0081】
なお、修飾セルロース繊維は、前記フルオレン化合物の修飾により疎水性が向上するためか、水分含有量が少ない。すなわち、飽和吸水率は8重量%以下(例えば、5重量%以下)であってもよく、水分含有量は、温度25℃、湿度60%の条件下、1昼夜放置したとき、0〜7重量%(例えば、0〜5重量%)、好ましくは5重量%以下(例えば、0.1〜5重量%)、さらに好ましく3重量%程度以下であってもよい。なお、水分含有量は、近赤外線分析計などを用いて測定できる。
【0082】
さらに、修飾セルロース繊維の特性(例えば、低線膨張特性、強度、耐熱性など)を樹脂に有効に発現させるためには、結晶性の高い修飾セルロース繊維が好ましい。前記のように、本発明の修飾セルロース繊維はセルロース繊維の結晶性を維持できるため、修飾セルロース繊維の結晶化度は前記セルロース繊維の数値をそのまま参照できる。例えば、修飾セルロース繊維の結晶化度は、40〜95%(例えば、50〜90%)、好ましくは60〜95%(例えば、65〜90%)、さらに好ましくは70〜90%(例えば、75〜85%)程度であってもよく、通常、結晶化度が60%以上(例えば、75〜90%程度)であってもよい。結晶化度が小さすぎると、低線膨張特性や強度などの特性を低下させる虞がある。なお、結晶化度は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0083】
(製造方法)
本発明の製造方法では、溶媒(代表的には有機溶媒)中、ラジカル発生剤の存在下、セルロース繊維と、前記式(1)で表される重合性フルオレン化合物とを反応させることにより、前記修飾セルロース繊維を調製できる。
【0084】
セルロース繊維の割合は、重合性フルオレン化合物100重量部に対して、0.1〜500重量部(例えば、1〜300重量部)程度の範囲から選択でき、例えば、5〜200重量部(例えば、10〜150重量部)、好ましくは5〜100重量部(例えば、10〜50重量部)程度であってもよい。なお、単独重合体の生成を抑制し、セルロース繊維に対して重合性フルオレン化合物を効率よくグラフト結合させるためには、重合性フルオレン化合物は、アリル基、特に重合性不飽和結合を有する多価カルボン酸又はその誘導体に由来する重合性基、例えば、式(2c)で表される重合性基を有するのが好ましい。
【0085】
ラジカル発生剤としては、慣用の重合開始剤、例えば、アゾ系ラジカル重合開始剤(例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド]などのアゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物など)、有機又は無機過酸化物[ジアルキルパーオキサイド類(例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイドなど)、ジアシルパーオキサイド類(例えば、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーキサイドなど)、過酸(又は過酸エステル)類(例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過酢酸t−ブチルなど)ケトンパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシケタール類など]などが例示できる。これらの重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0086】
ラジカル発生剤の使用量は、例えば、重合性フルオレン化合物100重量部に対して、0.1〜50重量部(例えば、1〜35重量部)、好ましくは3〜25重量部(例えば、5〜20重量部)程度であってもよく、0.5〜10重量部(例えば、1〜5重量部)程度であってもよい。
【0087】
反応は有機溶媒の非存在下で行ってもよいが、通常、有機溶媒の存在下で行われる。この有機溶媒はセルロース繊維に含浸していてもよいが、セルロース繊維を有機溶媒に分散させた分散系で反応させる場合が多い。セルロース繊維を有機溶媒に分散させた分散系で、セルロース繊維(特に、ナノファイバー)と前記重合性フルオレン化合物とを反応させると、均一に反応させることができる。このような方法で得られた修飾セルロース繊維は、取り扱い性及び樹脂に対する分散性が高く、樹脂の補強効果に優れている。
【0088】
なお、セルロース繊維(特に、ミクロフィブリル化した繊維、平均繊維径がナノメータサイズのナノ繊維)を乾燥すると、繊維が絡み合って再分散できなくなる場合がある。そのため、通常、セルロース繊維は水含浸又は水分散液として市販されている場合が多い。このような水分散液では、水分散液の水を有機溶媒に置換する慣用の溶媒置換法、例えば、セルロース繊維の水分散液に水溶性溶媒を添加混合し、セルロース繊維を分離し(又は溶媒を除去し)た後、さらに有機溶媒を添加混合する操作を繰り返す方法などにより、セルロース繊維が有機溶媒に分散した分散液を調製できる。なお、沸点が水よりも高い水溶性有機溶剤を用いる場合、水を蒸留(共沸蒸留を含む)により除去し、溶媒置換することもできる。
【0089】
水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのC
1−4アルカノールなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどの(ポリ)オキシエチレングリコールジC
1−4アルキルエーテルなど)、ケトン類(アセトンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのC
2−4アルカンジオール)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ)、カルビトール類(エチルカルビトールなど)、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0090】
なお、水溶性有機溶媒を用いて溶媒置換したセルロース繊維含有分散液において、水溶性有機溶媒は、上記と同様にして、非水溶性有機溶媒に溶媒置換することもできる。非水溶性有機溶媒としては、例えば、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、セロソルブアセテート類、カルビトールアセテート類、炭化水素類(ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、トルエンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレンなど)などが例示できる。これらの非水溶性有機溶媒も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0091】
分散液中のセルロース繊維の固形分濃度は、例えば、0.01〜30重量%(例えば、0.1〜20重量%)、好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは3〜12重量%(例えば、5〜10重量%)程度であってもよい。固形分濃度が低すぎると、反応効率が低下する虞がある。
【0092】
反応は、減圧下で行ってもよいが、通常、加圧下又は常圧下で行う場合が多い。反応温度は、溶媒の沸点などにより適宜選択でき、例えば、50〜200℃(例えば、70〜170℃)、好ましくは80〜150℃(例えば、100〜130℃)程度であってもよい。なお、反応は溶媒の還流下で行ってもよい。また、反応時間は、特に限定されず、例えば、10分〜48時間(例えば、30分〜24時間)程度である。さらに、反応は、空気中又は不活性ガス(窒素、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下、攪拌しながら行うことができる。
【0093】
このような反応により生成した修飾セルロース繊維において、前記式(2c)で表される重合性基を有する重合性フルオレン化合物を用いる反応では、一部の遊離のカルボキシル基又はアルコキシカルボニル基がセルロース繊維の一部のヒドロキシル基と反応していてもよく、重合性フルオレン化合物の遊離のヒドロキシル基と反応していてもよい。
【0094】
なお、反応は、反応系を撹拌しながら行ってもよく、セルロース繊維に機械的剪断力を作用させ、セルロース繊維を微細化しながら行って修飾セルロース繊維を得てもよい。さらに、反応終了後に解繊して修飾セルロース繊維を微細化してもよい。なお、微細化工程では、セルロース繊維をナノファイバーに微細化しつつ反応させてもよく、反応により生成した修飾セルロース繊維をナノファイバーに微細化してもよい。
【0095】
反応により生成した修飾セルロース繊維は、慣用の方法(例えば、遠心分離、濾過、濃縮、抽出など)により分離精製してもよい。例えば、少なくとも前記重合性フルオレン化合物を溶解可能な溶媒を反応混合物に添加し、上記遠心分離、濾過、抽出などの分離法(慣用の方法)で未反応重合性フルオレン化合物を除去し、分離精製してもよい。なお、上記分離操作は複数回(例えば、2〜5回程度)行うことができる。さらに、分離精製した修飾セルロース繊維を加熱下又は減圧下或いは常圧下で乾燥することにより、粉末状の形態を有する修飾セルロース繊維を得てもよい。
【0096】
なお、未反応重合性フルオレン化合物を上記分離方法などにより繰り返し除去して精製した修飾セルロース繊維を、ラマン分析などの方法により分析すると、セルロース繊維に由来するピークとフルオレン化合物に由来するピークとが存在し、セルロース繊維に重合性フルオレン化合物が結合していることが確認できる。
【0097】
このようにして得られた修飾セルロース繊維は、未修飾のセルロース繊維に比べて、有機溶媒に対する分散安定性が高い。そのため、修飾セルロース繊維が有機溶媒に分散した分散液は、コーティング剤、塗料などへ容易に添加でき、塗膜の特性を向上できる。
【0098】
[樹脂組成物]
本発明の修飾セルロース繊維は、樹脂との親和性又は混和性に優れているため樹脂の複合材料(例えば、補強材)として利用できる。
【0099】
樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、非晶質ポリオレフィンなど)、ビニル系樹脂(ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン樹脂などのスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニルなど)、ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリエステル樹脂[ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンアリレート、ポリアリレート、液晶ポリエステル、脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペートなど)など]、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロンMXDなど)、ポリフェニレンエーテル樹脂(変性ポリフェニレンエーテルなど)、ポリスルホン樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、ポリフェニレンスルフィド樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂(ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミノビスマレイミドなど)、ポリエーテルケトン樹脂(ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなど)、熱可塑性エラストマー、フッ素樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アミノ樹脂(尿素樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂など)、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。さらに、樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロースエーテルなどの水溶性樹脂、アクリル系樹脂エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、スチレン系樹脂エマルジョンなどの水分散性樹脂などであってもよい。
【0100】
環境負荷低減などの観点からは、バイオマス由来の脂肪族ポリエステル系樹脂、例えば、ポリ乳酸などを使用してもよい。なお、ポリ乳酸は、耐熱性が低いなどの制約があるが、本発明の修飾セルロース繊維は、ポリ乳酸との混和性も良く、耐熱性などの欠点を補うことができる。
【0101】
修飾セルロース繊維の割合は、樹脂100重量部に対して、例えば、0.1〜50重量部(例えば、0.5〜40重量部)、好ましくは1〜30重量部(例えば、3〜20重量部)、さらに好ましくは5〜15重量部(例えば、7〜12重量部)程度であってもよい。修飾セルロース繊維の割合が小さすぎると、樹脂に対する補強性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、混和性や成形性が低下する虞がある。
【0102】
樹脂組成物は、慣用の方法、例えば、溶融混練法などで調製できる。本発明の修飾セルロース繊維は、分散液の形態で使用しなくても(乾燥状態であっても)樹脂と混和できるため、機械的に溶融混練(又は混合)する方法を好適に使用できる。なお、溶融混練において、修飾セルロース繊維は溶融することなく繊維状の形態で溶融した樹脂と混合される。
【0103】
溶融混練は、慣用の方法、例えば、ミキシングローラ、ニーダ、バンバリーミキサー、押出機(一軸又は二軸押出機など)などにより行うことができる。溶融混練の温度は、樹脂の溶融特性に応じて適宜選択でき、通常、分解開始温度よりも低く、溶融開始温度よりも高い温度が選択される。例えば、100〜300℃、好ましくは130〜260℃(例えば、150〜250℃)、さらに好ましくは170〜230℃程度であってもよい。
【0104】
なお、樹脂組成物は、樹脂と修飾セルロース繊維とを所定の割合で直接的に溶融混練してもよく、修飾セルロース繊維を含むマスターバッチと樹脂とを溶融混練して修飾セルロース繊維の含有量を調整してもよい。
【0105】
マスターバッチは、樹脂と修飾セルロース繊維とを高い修飾セルロース繊維濃度で溶融混練して調製してもよく、溶媒を用いて調製してもよい。溶媒は、樹脂の種類に応じて選択でき、樹脂を可溶な溶媒であってもよい。このような溶媒は、前記例示の水溶性有機溶媒、非水溶性有機溶媒であってもよく、水溶性樹脂又は水分散性樹脂を用いる場合には、溶媒は水であってもよい。有機溶媒を用いてマスターバッチを調製する場合、樹脂と、この樹脂を可溶な溶媒と、修飾セルロース繊維とを含む混合液を調製し、必要により分散混合機(超音波分散機、ディスパーなど)により分散混合し、溶媒を除去してもよい。なお、樹脂を溶媒に溶解した樹脂溶液と、修飾セルロース繊維とを混合してもよい。より具体的には、溶媒中(特に有機溶媒中)に分散した修飾セルロース繊維の分散液と、樹脂と、樹脂を可溶な溶媒との均一な混合物から溶媒を除去することによりマスターバッチを調製してもよい。なお、マスターバッチは、ペレット状、粉粒状などであってもよい。
【0106】
マスターバッチにおいて、修飾セルロース繊維の割合は、樹脂100重量部に対して、例えば、1〜70重量部(例えば、5〜65重量部)、好ましくは10〜60重量部、さらに好ましくは20〜50重量部(例えば、30〜45重量部)程度であってもよい。
【0107】
また、前記樹脂組成物は、慣用の成形法(例えば、圧縮成形、射出成形、押出成形など)により成形できる。特に、射出成形、押出成形法を利用すると、成形品の生産性を向上できる。
【0108】
なお、前記樹脂組成物は、種々の添加剤、例えば、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、帯電防止剤、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など)、難燃助剤、耐衝撃改良剤、流動性改良剤、補強材(充填剤など)、核剤、着色剤、滑剤、可塑剤、離型剤、色相改良剤、分散剤、抗菌剤、防腐剤などを含有していてもよい。また、樹脂が熱硬化性樹脂である場合、樹脂組成物は、硬化剤、硬化促進剤などを含んでいてもよい。
【0109】
本発明の樹脂組成物(複合材料)は、修飾セルロース繊維で補強でき、高強度、高弾性率、高耐熱性、低線膨張特性などの特性を有する。さらに、ナノメーターサイズの修飾セルロース繊維(例えば、セルロースナノファイバー)を用いると、可視光の波長領域の光散乱性が低く、前記樹脂組成物は、透明性にも優れている。例えば、ナノメーターサイズの修飾セルロース繊維を10重量%の割合で含み、厚み30μmのフィルムとしたとき、全光線透過率は、例えば、30%以上(例えば、40〜99%)、好ましくは50%以上(例えば、60〜98%)、さらに好ましくは60%以上(例えば、70〜95%)程度であってもよく、60〜90%(例えば、70〜85%)程度であってもよい。
【実施例】
【0110】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0111】
実施例1で調製した修飾セルロースナノファイバーの9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下、BPEFという)修飾率(BPEF修飾率)、形状、及び結晶化度は、以下のようにして測定又は評価した。
【0112】
(セルロースに結合したフルオレン化合物の割合(修飾率))
フルオレン化合物の修飾率の定量はFT−Raman分析により行った。酢酸セルロース((株)ダイセル製)と既定量の9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下、BPEFという)とをテトラヒドロフラン(THF)に溶解して成膜し、ラマン顕微鏡(堀場JOBIN YVON社製、「XploRA」)を使用してラマン分析を行った。芳香族環(1604cm
−1)とセルロースの環内CH(1375cm
−1)との吸収バンドの強度比(I
1604/I
1375)と、BPEFの濃度に基づき、検量線を作成した。すべてのサンプルは3回測定し、その結果を平均した。
【0113】
(溶媒分散性)
既定量のセルロース繊維をテトラヒドロフランに分散して0.2重量%のセルロース繊維分散液を調製した後、室温で放置し、沈降時間に基づいて分散性を評価した。
【0114】
実施例1
(1)重合性フルオレン化合物の調製
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、BPEFという)10.0g(22.8mmol)及び無水マレイン酸4.51g(46mmol)をトルエン60gに溶解し、還流温度で48時間反応させた後、トルエンを除去し、液状の混合組成物を得た。この混合物を水洗し、未反応の無水マレイン酸を除去した。この水洗過程で生成した固体を濾別して回収し、重合性組成物12.36gを得た。この重合性組成物をFT-IR(Thermo Scientific社製、Nicolet is50)で分析したところ、酸無水物基に特徴的な1800〜1850cm
−1の吸収ピークが認められず、エステル結合及びカルボキシル基に特有のカルボニル基に由来する吸収ピークが1700〜1750cm
−1に認められた。また、薄層クロマトグラフィーにより、BPEFとは異なる部位に2つのスポットが見られた。前記赤外線吸収スペクトル、薄層クロマトグラム並びに反応機構から、下記式(1a)および(1b)で表される化合物を含む混合組成物が生成したと推測される。
【0115】
【化5】
【0116】
(2)セルロース含有溶媒分散系の調製と重合性フルオレン化合物との反応
セルロース繊維の水分散液「セリッシュ」(ダイセルファインケム(株)製、「KY110N」、セルロース:水(重量比)=15/85)100g(固形分15g)をトリエチレングリコールジメチルエーテル(以下、TEGDME)500gに分散して遠心分離した後、沈降した固形分をさらにTEGDME 500gに分散してする操作を3回繰り返し、溶媒としての水をTEGDMEに置換した分散液(セルロース繊維の濃度20重量%)を得た。
【0117】
得られた分散液10gに、TEGDME、前記重合性組成物、アゾ系重合開始剤である2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド](和光純薬(株)製「VA−086」)を添加し、セルロース繊維1gに対して、TEGDME 20重量部、前記重合性組成物4.44g、アゾ系重合開始剤(「VA−086」)1.01重量部の割合で含む混合液を110℃で24時間反応させた。反応終了後、濾過し、濾残をテトラヒドロフランで3回洗浄し、未反応の重合性組成物を除去し、修飾セルロース繊維(ナノファイバー)を収率82%で得た。
【0118】
BPEF修飾率を求めたところ、修飾率は10.3mmol/100g(6.6重量%)であった。なお、修飾セルロース繊維の形状をFE−SEM(日本電子(株)製、「JSM−6700F」、測定条件:20mA、60秒)を用いて観察したところ、修飾セルロースナノファイバー(CNF)の繊維径(又は直径)は、10〜550nm程度であり、SEM写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して平均繊維径を算出したところ、平均繊維径は32nmであった。
【0119】
さらに、テトラヒドロフランへの分散性(沈降時間)を評価した結果、
図1に示すように、24時間以上経過しても修飾セルロース繊維(ナノファイバー)は殆ど沈降せず、上澄みは僅かであった。
【0120】
比較例1
アゾ系重合開始剤(和光純薬(株)製「VA−086」)を用いることなく、実施例1の反応条件と同様に混合し、セルロース繊維を分離したところ、セルロース繊維は重合性フルオレン化合物で全く修飾されていなかった。さらに、テトラヒドロフランへの分散性(沈降時間)を評価した結果、
図1に示すように、24時間以上経過すると、セルロース繊維の大部分が沈降し、上澄みが生成した。