特許第6691446号(P6691446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691446
(24)【登録日】2020年4月14日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20200421BHJP
   H01R 13/10 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   H01R13/42 G
   H01R13/42 B
   H01R13/10 A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-132267(P2016-132267)
(22)【出願日】2016年7月4日
(65)【公開番号】特開2017-183264(P2017-183264A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年6月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-59699(P2016-59699)
(32)【優先日】2016年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 直樹
【審査官】 藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−090830(JP,A)
【文献】 特開2011−228143(JP,A)
【文献】 特開平08−106932(JP,A)
【文献】 特開2002−319337(JP,A)
【文献】 米国特許第5273455(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第1479416(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42
H01R 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子収容室と、この端子収容室の挿入開口から内部に挿入された円筒状の接続部を有する端子と、前記端子収容室内に撓み可能に設けられ前記端子の円筒状の前記接続部を係止した係止ランスとを備えたコネクタであって、
前記端子には、円筒状の前記接続部の中心に対して点対称の位置にそれぞれ前記係止ランスに係合可能な一対の係止突起が設けられ、
前記端子収容室には、前記挿入開口の中心と前記係止ランスとを通る中心線の両側に線対称に設けられ、前記挿入開口側から前記係止ランス側に向けて傾斜する一対のガイドレールが設けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタであって、
前記一対のガイドレールは、それぞれ前記中心線と直交する交差線の両側に線対称に設けられ、
前記ガイドレールには、前記交差線の両側に位置するそれぞれの前記挿入開口側の端部が前記交差線上で交わる拾い部が設けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項2記載のコネクタであって、
前記一対のガイドレールは、前記挿入開口の中心に対して前記拾い部から前記係止ランス側に向けて前記端子収容室内を狭めるように傾斜されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
請求項2又は3記載のコネクタであって、
前記端子収容室には、前記係止ランスと前記挿入開口の中心に対して点対称の位置に前記端子の係止突起と係合可能なガイド溝が設けられ、
前記一対のガイドレールは、それぞれ前記ガイド溝に連続して設けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載のコネクタであって、
前記一対のガイドレールの前記拾い部は、前記端子の前記端子収容室への挿入方向に対する位置が異なって配置されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコネクタであって、
前記端子収容室には、前記端子の前記係止ランスに係止された位置から前記端子収容室への挿入方向の移動を規制する規制部が設けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のコネクタであって、
前記端子は、前記端子収容室の前記挿入開口から引き出される電線の端末部に設けられ、
前記端子収容室の前記挿入開口側は、前記端子の前記一対の係止突起間の長さより広く形成されていることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。詳細には、円筒状の接続部を有する端子が挿入される端子収容室を備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタとしては、端子収容室と、この端子収容室の挿入開口から内部に挿入された円筒状の接続部を有する端子と、端子収容室内に挿入されるスペーサに設けられ端子の円筒状の接続部を係止した係合凸部とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このコネクタでは、端子に、スペーサの係合凸部に係合される係合凹部と、スペーサのランスに押圧接触される回転方向姿勢制御部とが設けられている。
【0004】
このようなコネクタでは、仮係止位置から本係止位置にスペーサを端子収容室へ挿入することにより、スペーサのランスが端子の回転方向姿勢制御部を押圧し、係合凸部と係合凹部とが正規に係合する位置まで端子を回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−228143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1のようなコネクタでは、スペーサの端子収容室への挿入によって端子を回転させているが、コネクタの小型化や端子の多極化に伴い、小型化された1つのスペーサで複数の端子を同時に正規位置まで回転させる回転力を得ることが困難であった。
【0007】
加えて、小型化されたコネクタにおいて、端子を正規位置まで回転させる回転力を得るために、スペーサの挿入力を無理に大きくしてしまうと、スペーサのランスに押圧される端子の回転方向姿勢制御部に変形を生じる恐れがあった。
【0008】
そこで、この発明は、無理なく確実に端子を回転させ、端子を係止ランスに確実に係止させることができるコネクタの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、端子収容室と、この端子収容室の挿入開口から内部に挿入された円筒状の接続部を有する端子と、前記端子収容室内に撓み可能に設けられ前記端子の円筒状の前記接続部を係止した係止ランスとを備えたコネクタであって、前記端子には、円筒状の前記接続部の中心に対して点対称の位置にそれぞれ前記係止ランスに係合可能な一対の係止突起が設けられ、前記端子収容室には、前記挿入開口の中心と前記係止ランスとを通る中心線の両側に線対称に設けられ、前記挿入開口側から前記係止ランス側に向けて傾斜する一対のガイドレールが設けられていることを特徴とする。
【0010】
このコネクタでは、端子収容室に、挿入開口の中心と係止ランスとを通る中心線の両側に線対称に設けられ、挿入開口側から係止ランス側に向けて傾斜する一対のガイドレールが設けられているので、端子の端子収容室への挿入時に、少なくとも一方のガイドレールが端子の係止突起と当接する。
【0011】
この状態から端子を端子収容室の正規位置まで挿入する間に、係止突起とガイドレールとの摺動によりガイドレールの傾斜に沿って端子が回転しながら挿入され、係止突起が係止ランスに導かれ、係止突起を係止ランスに確実に係止させることができる。
【0012】
従って、このようなコネクタでは、確実に係止突起とガイドレールとを当接でき、端子の端子収容室への挿入力で係止突起とガイドレールとを摺動させて端子を回転させることができるので、無理なく確実に端子を回転させ、端子を係止ランスに確実に係止させることができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のコネクタであって、前記一対のガイドレールは、それぞれ前記中心線と直交する交差線の両側に線対称に設けられ、前記ガイドレールには、前記交差線の両側に位置するそれぞれの前記挿入開口側の端部が前記交差線上で交わる拾い部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
このコネクタでは、一対のガイドレールが、それぞれ中心線と直交する交差線の両側に線対称に設けられているので、一対の係止突起と一対のガイドレールとをそれぞれ当接させることができ、さらに安定して端子を回転させることができる。
【0015】
また、ガイドレールには、交差線の両側に位置するそれぞれの挿入開口側の端部が交差線上で交わる拾い部が設けられているので、拾い部によって係止突起を確実にガイドレールに導くことができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のコネクタであって、前記一対のガイドレールは、前記挿入開口の中心に対して前記拾い部から前記係止ランス側に向けて前記端子収容室内を狭めるように傾斜されていることを特徴とする。
【0017】
このコネクタでは、一対のガイドレールが、挿入開口の中心に対して拾い部から係止ランス側に向けて端子収容室内を狭めるように傾斜されているので、円筒状の接続部の中心と挿入開口の中心との位置がずれて端子が端子収容室に収容されても、一対のガイドレールによって円筒状の接続部の中心と挿入開口の中心との位置を合わせるように端子収容室に対する端子の挿入姿勢を補正することができる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載のコネクタであって、前記端子収容室には、前記係止ランスと前記挿入開口の中心に対して点対称の位置に前記端子の係止突起と係合可能なガイド溝が設けられ、前記一対のガイドレールは、それぞれ前記ガイド溝に連続して設けられていることを特徴とする。
【0019】
このコネクタでは、一対のガイドレールが、それぞれガイド溝に連続して設けられているので、端子の端子収容室への挿入動作で、係止突起をガイドレールからガイド溝まで連続してスムーズに導くことができる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか1項に記載のコネクタであって、前記一対のガイドレールの前記拾い部は、前記端子の前記端子収容室への挿入方向に対する位置が異なって配置されていることを特徴とする。
【0021】
このコネクタでは、一対のガイドレールの拾い部が、端子の端子収容室への挿入方向に対する位置が異なって配置されているので、端子の挿入開始時に、いずれか一方の拾い部と係止突起とが当接し、他方の拾い部と係止突起とが当接することがなく、一対の係止突起が両方の拾い部に同時に当接して端子の回転が阻止されることを防止することができる。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコネクタであって、前記端子収容室には、前記端子の前記係止ランスに係止された位置から前記端子収容室への挿入方向の移動を規制する規制部が設けられていることを特徴とする。
【0023】
このコネクタでは、端子収容室に、端子の係止ランスに係止された位置から端子収容室への挿入方向の移動を規制する規制部が設けられているので、端子が端子収容室から突き出ることがなく、端子を端子収容室の正規位置に保持することができる。
【0024】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のコネクタであって、前記端子は、前記端子収容室の前記挿入開口から引き出される電線の端末部に設けられ、前記端子収容室の前記挿入開口側は、前記端子の前記一対の係止突起間の長さより広く形成されていることを特徴とする。
【0025】
このコネクタでは、端子収容室の挿入開口側が、端子の一対の係止突起間の長さより広く形成されているので、端子が太い電線の端末部に設けられている場合でも、端子を端子収容室に収容して電線を挿入開口から引き出すことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、無理なく確実に端子を回転させ、端子を係止ランスに確実に係止させることができるコネクタを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態に係るコネクタのハウジングの斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係るコネクタの分解斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係るコネクタの断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るコネクタの端子と電線の側面図である。
図5】本発明の実施の形態に係るコネクタの端子収容室の正面図である。
図6図5のA−A断面図である。
図7図5のB−B断面図である。
図8図5のC−C断面図である。
図9図5のD−D断面図である。
図10】本発明の実施の形態に係るコネクタの端子収容室に端子を正規位置から回転させて挿入したときの斜視図である。
図11図10の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1図12を用いて本発明の実施の形態に係るコネクタについて説明する。
【0029】
本実施の形態に係るコネクタ1は、端子収容室3と、この端子収容室3の挿入開口5から内部に挿入された円筒状の接続部7を有する端子9と、端子収容室3内に撓み可能に設けられ端子9の円筒状の接続部7を係止した係止ランス11とを備えている。
【0030】
また、端子9には、円筒状の接続部7の中心に対して点対称の位置にそれぞれ係止ランス11に係合可能な一対の係止突起13,13が設けられている。
【0031】
そして、端子収容室3には、挿入開口5の中心と係止ランス11とを通る中心線L1の両側に線対称に設けられ、挿入開口5側から係止ランス11側に向けて傾斜する一対のガイドレール15,17が設けられている。
【0032】
また、一対のガイドレール15,17は、それぞれ中心線L1と直交する交差線L2の両側に線対称に設けられ、ガイドレール15,17には、交差線の両側に位置するそれぞれの挿入開口5側の端部が交差線L2上で交わる拾い部19が設けられている。
【0033】
また、一対のガイドレール15,17は、挿入開口5の中心に対して拾い部19,19から係止ランス11側に向けて端子収容室3内を狭めるように傾斜されている。
【0034】
さらに、端子収容室3には、係止ランス11と挿入開口5の中心に対して点対称の位置に端子9の係止突起13と係合可能なガイド溝21が設けられ、一対のガイドレール15,17は、それぞれガイド溝21に連続して設けられている。
【0035】
また、一対のガイドレール15,17の拾い部19,19は、端子9の端子収容室3への挿入方向に対する位置が異なって配置されている。
【0036】
さらに、端子収容室3には、端子9の係止ランス11に係止された位置から端子収容室3への挿入方向の移動を規制する規制部23が設けられている。
【0037】
また、端子9は、端子収容室3の挿入開口5から引き出される電線25の端末部に設けられ、端子収容室3の挿入開口5側は、端子9の一対の係止突起13,13間の長さより広く形成されている。
【0038】
図1図12に示すように、コネクタ1は、合成樹脂などの絶縁性材料からなるハウジング27を有し、このハウジング27には複数の端子収容室3が設けられている。
【0039】
端子収容室3は、長さ方向の一端側が端子9を内部に挿入させる挿入開口5となっており、長さ方向の他端側が内部に収容された端子9に接続される雄型の相手端子(不図示)のタブ状の接続部が挿入される開口となっている。
【0040】
この端子収容室3の挿入開口5は、端末部に端子9が設けられた電線25が外部に引き出され、この端子収容室3の挿入開口5側は、後述する端子9の一対の係止突起13,13間の長さより広く形成されている。
【0041】
このように端子収容室3の挿入開口5側を形成することにより、図3の仮想線で示すように、端子9が太い電線25の端末部に接続されている場合であっても、端子9を端子収容室3に収容することができ、挿入開口5から太い電線25を引き出すことができる。
【0042】
このような端子収容室3が複数設けられたハウジング27は、相手端子を収容する相手ハウジング(不図示)と嵌合可能となっており、相手ハウジングと嵌合することにより端子収容室3内に収容された端子9と相手端子とが電気的に接続される。
【0043】
端子9は、導電性材料からなる1枚の板材に対して、打ち抜き加工や折り曲げ加工などを施すことによって、電線圧着部29と、接続部7とが連続する一部材で形成されている。
【0044】
電線圧着部29は、被覆圧着部31と、芯線圧着部33とを備えている。
【0045】
被覆圧着部31は、一対の加締め片からなり、電源や機器などに接続された電線25の端末部において、電線25の被覆部を加締める。
【0046】
この被覆圧着部31を電線25の被覆部に加締めることにより、端子9が電線25に固定される。
【0047】
芯線圧着部33は、接続部7と被覆圧着部31との間に設けられた一対の圧着片からなり、電線25の端末部において、電線25の被覆部から露出された芯線部を加締めて圧着される。
【0048】
この芯線圧着部33を電線25の芯線部に圧着させることにより、端子9が電線25に電気的に接続される。
【0049】
接続部7は、底壁が電線圧着部29と連続する一部材で形成され、底壁から立ち上がる両側壁を湾曲させ、それぞれの端部で上壁をなすように折り曲げ加工によって円筒状に形成された雌型の接続部からなる。
【0050】
この接続部7には、内部に接続部7と連続する一部材で所定の付勢力を有するように弾性変形可能に接点部35を有する弾性片37が設けられている。
【0051】
また、弾性片37と対向する壁部には、相手端子のタブ状の接続部を弾性片37の接点部35とで挟み込む補助接点部39,39が設けられている。
【0052】
このような接続部7には、長さ方向の一端側に開口が設けられ、この開口から内部に相手端子のタブ状の接続部が挿入され、弾性片37の付勢力によって接点部35と補助接点部39,39とがタブ状の接続部と接触することにより、端子9と相手端子とが電気的に接続される。
【0053】
一方、接続部7の外周には、円筒状の接続部7の中心に対して点対称の位置に、係止ランス11と係合可能な一対の係止突起13,13が、それぞれ接続部7の外周から外方に向けて突設されている。
【0054】
このような円筒状の接続部7を有する端子9は、端子収容室3の挿入開口5から端子収容室3内に挿入され、端子収容室3内に設けられた係止ランス11に一対の係止突起13,13のいずれか一方が係止されることにより、端子収容室3からの抜け止めがなされる。
【0055】
係止ランス11は、基端側が端子収容室3の底壁と連続する一部材で形成され、自由端側が端子収容室3の内部に向けて傾斜しタブ状の接続部が挿入される開口側に配置され、端子収容室3内の上下方向に撓み可能に設けられている。
【0056】
この係止ランス11の自由端側には、係合部41が設けられ、端子収容室3内に収容された端子9の一対の係止突起13,13のいずれか一方と係合部41とが係合することにより、端子9が端子収容室3内に係止される。
【0057】
一方、端子収容室3の係止ランス11と挿入開口5の中心に対して点対称に位置する部分には、端子9の一対の係止突起13,13と係合可能なガイド溝21が設けられている。
【0058】
このガイド溝21は、係止ランス11の係合部41より挿入開口5側から係合部41を超えて端子収容室3の長さ方向に沿って設けられており、端子9を端子収容室3に挿入したときに、端子9の一対の係止突起13,13の係止ランス11と係合しない他方と係合する。
【0059】
このようにガイド溝21と一対の係止突起13,13の他方とを係合させることにより、一対の係止突起13,13の一方を係止ランス11の係合部41に導くことができ、係止突起13,13と係止ランス11とを確実に係合させることができる。
【0060】
ここで、端子収容室3のタブ状の接続部が挿入される開口は、ハウジング27に組付けられるフロントホルダ43に形成されている。
【0061】
このフロントホルダ43には、係止ランス11の下方に位置する空間に挿入される規制部45が設けられている。
【0062】
この規制部45は、端子9を端子収容室3に挿入させる場合、フロントホルダ43がハウジング27に対して仮係止状態となっており、係止ランス11の下方に位置する空間に挿入されず、係止ランス11が撓み可能となって係止ランス11が端子9を係止することができる。
【0063】
一方、規制部45は、端子9を端子収容室3に収容させた後、フロントホルダ43をハウジング27に対して本係止状態とさせることにより、係止ランス11の下方に位置する空間に挿入され、係止ランス11が撓み不能となって係止ランス11による端子9の係止が解除されることを防止する。
【0064】
このようなコネクタ1では、端子9の接続部7が円筒状に形成されているので、単純に端子9を端子収容室3へ挿入しただけでは端子9の一対の係止突起13,13と係止ランス11との位置が合っていない場合が多く、一対の係止突起13,13と係止ランス11の係合部41とを係合できない可能性がある。
【0065】
このため、一対の係止突起13,13と係止ランス11との位置が合うように、端子9を端子収容室3内で回転させ、一対の係止突起13,13のいずれか一方と係止ランス11の係合部41とを確実に係合させる必要がある。
【0066】
そこで、端子収容室3には、一対のガイドレール15,17が設けられている。
【0067】
一対のガイドレール15,17は、挿入開口5の中心と係止ランス11とを通る中心線L1に対して中心線L1の両側に線対称となるように設けられている。
【0068】
この一対のガイドレール15,17は、それぞれランス側ガイド部47と、溝側ガイド部49と、拾い部19とを有している。
【0069】
ランス側ガイド部47は、一端側が挿入開口5側で挿入開口5の中心線L1と直交する交差線L2上に位置され、他端側が係止ランス11に位置され、挿入開口5側から係止ランス11側に向けて傾斜されている。
【0070】
このランス側ガイド部47は、端子9を端子収容室3に挿入するとき、挿入開口5側の端部側が端子9の一対の係止突起13,13のいずれか一方と当接する。
【0071】
この状態から端子9を端子収容室3にさらに挿入すると、一方の係止突起13がランス側ガイド部47の傾斜に沿って摺動しながら端子9を回転させ、一方の係止突起13を係止ランス11に導き、一方の係止突起13を係止ランス11の係合部41に確実に係合させることができる。
【0072】
このようなランス側ガイド部47は、一対のガイドレール15,17に中心線L1に対して線対称にそれぞれ設けられているので、端子9を端子収容室3に挿入するとき、端子9がどのような姿勢であっても、一対のガイドレール15,17のランス側ガイド部47,47のいずれか一方に一対の係止突起13,13のいずれか一方を必ず当接することができる。
【0073】
このため、一対のガイドレール15,17のランス側ガイド部47,47によって、確実に端子9を回転させることができ、一対の係止突起13,13のいずれか一方を確実に係止ランス11の係合部41に係合させることができる。
【0074】
溝側ガイド部49は、中心線L1と直交する交差線L2に対して交差線L2のランス側ガイド部47の反対側にランス側ガイド部47と線対称となるように設けられている。
【0075】
この溝側ガイド部49は、一端側が挿入開口5側で挿入開口5の中心線L1と直交する交差線L2上に位置され、他端側がガイド溝21に位置され、挿入開口5側からガイド溝21側に向けて傾斜されている。
【0076】
このような溝側ガイド部49は、端子9を端子収容室3に挿入するとき、挿入開口5側の端部側が端子9の一対の係止突起13,13のうちランス側ガイド部47と当接していない他方と当接する。
【0077】
この状態から端子9を端子収容室3にさらに挿入すると、他方の係止突起13が溝側ガイド部49の傾斜に沿って摺動しながら端子9を回転させ、他方の係止突起13をガイド溝21に導き、他方の係止突起13をガイド溝21に確実に係合させることができる。
【0078】
このとき、一方の係止突起13は、ランス側ガイド部47の傾斜に沿って摺動しながら端子9を回転させるので、ランス側ガイド部47と溝側ガイド部49と一対の係止突起13,13との摺動により大きな端子9の回転力を得ることができ、確実に端子9を端子収容室3内で回転させることができる。
【0079】
このような溝側ガイド部49は、一対のガイドレール15,17に中心線L1に対して線対称にそれぞれ設けられているので、端子9を端子収容室3に挿入するとき、端子9がどのような姿勢であっても、一対のガイドレール15,17の溝側ガイド部49,49のいずれか一方に一対の係止突起13,13の他方を必ず当接することができる。
【0080】
このため、一対のガイドレール15,17の溝側ガイド部49,49によって、確実に端子9を回転させることができ、一対の係止突起13,13の他方を確実にガイド溝21に係合させることができる。
【0081】
ここで、溝側ガイド部49のガイド溝21側は、ガイド溝21を構成する壁部と連続する一部材で形成されている。
【0082】
このように溝側ガイド部49とガイド溝21とを連続して設けることにより、一対の係止突起13,13の他方と溝側ガイド部49との摺動による端子9の回転しながらの移動から、一対の係止突起13,13の他方とガイド溝21との係合による端子9の直線的な移動に、連続してスムーズに移行することができる。
【0083】
このように一対のガイドレール15,17をランス側ガイド部47と溝側ガイド部49とで構成することにより、一対の係止突起13,13が、係止ランス11とガイド溝21と一致している場合を除き、挿入開口5の周方向のどの位置に位置していても、一対のガイドレール15,17と一対の係止突起13,13とを当接させることができ、確実に端子9を回転させることができる。
【0084】
しかも、端子9の端子収容室3内での回転は、端子9の端子収容室3への挿入における一対のガイドレール15,17と一対の係止突起13,13との摺動によって得ることができるので、大きな挿入力を必要とせず、一対の係止突起13,13にも大きな負荷がかかることがなく、端子9の変形を防止することができる。
【0085】
拾い部19は、ランス側ガイド部47と溝側ガイド部49とのそれぞれの挿入開口5側の端部が、中心線L1と直交する交差線L2上で交わる部分となっている。
【0086】
このように一対のガイドレール15,17に拾い部19,19を設けることにより、端子9を端子収容室3に挿入するときに、端子9の一対の係止突起13,13を拾い部19,19からランス側ガイド部47と溝側ガイド部49とに導くことができ、安定して端子9を回転させることができる。
【0087】
ここで、一対のガイドレール15,17の拾い部19,19が、端子9の端子収容室3への挿入方向の同一位置に位置している場合、端子9の一対の係止突起13,13が交差線L2上に位置した状態で、端子9が端子収容室3に挿入されると、一対の係止突起13,13と拾い部19,19とが同時に当接してしまい、端子9が回転できない恐れがある。
【0088】
そこで、一対のガイドレール15,17の拾い部19,19は、端子9の端子収容室3への挿入方向に対する位置が異なるように配置されている。詳細には、ガイドレール15の拾い部19は、ガイドレール17の拾い部19より挿入開口5側に位置されている。
【0089】
このように一対のガイドレール15,17の拾い部19,19を配置することにより、端子9を端子収容室3に挿入したときに、まず、ガイドレール15の拾い部19と一対の係止突起13,13のいずれか一方が当接し、端子9が回転を開始する。
【0090】
このため、ガイドレール17の拾い部19に一対の係止突起13,13の他方が到達するときには、端子9が回転しているので、ガイドレール17の拾い部19と一対の係止突起13,13の他方とが当接することがなく、端子9の回転が阻止されることがない。
【0091】
ここで、ランス側ガイド部47と溝側ガイド部49とからなり、拾い部19を有する一対のガイドレール15,17は、挿入開口5の中心に対して拾い部19,19から係止ランス11側に向けて端子収容室3内を狭めるように傾斜されている。
【0092】
すなわち、一対のガイドレール15,17を構成するランス側ガイド部47と溝側ガイド部49とは、挿入開口5の中心を定点として、端子収容室5の内径を、挿入開口5側から係止ランス11及びガイド溝21側に向けて徐々に小さくするように傾斜されている。
【0093】
このように一対のガイドレール15,17を傾斜させることにより、端子9の円筒状の接続部7の中心が挿入開口5の中心に対してずれるように、端子9が端子収容室3に挿入された場合、端子9が一対のガイドレール15,17と摺動することによって、接続部7の中心が挿入開口5の中心と位置を合わせるように端子9が端子収容室3内に挿入される。
【0094】
このため、端子9が端子収容室3内に完全に挿入された位置、すなわち端子9が係止ランス11に係止された位置では、端子収容室3内で端子9が傾いて収容されていることがなく、端子9と相手端子とを安定して接続することができる。
【0095】
ここで、端子収容室3のガイド溝21の端部には、ガイド溝21の端部を閉塞する壁部からなり、端子9の係止ランス11に係止された位置から端子収容室3への挿入方向の移動を規制する規制部23が設けられている。
【0096】
このように端子収容室3に規制部23を設けることにより、端子9を端子収容室3へ過剰に挿入したとしても、一対の係止突起13,13の他方と規制部23とが当接して端子9が端子収容室3から突き出ることを防止でき、端子9を端子収容室3の正規位置に配置することができる。
【0097】
なお、規制部23と対向する係止ランス11側にも、段差状に形成されたランス側規制部51が設けられ、このランス側規制部51は、一対の係止突起13,13の一方と当接可能に位置しており、端子9が端子収容室3から突き出ることを防止している。
【0098】
このようなコネクタ1では、端子収容室3に、挿入開口5の中心と係止ランス11とを通る中心線L1の両側に線対称に設けられ、挿入開口5側から係止ランス11側に向けて傾斜する一対のガイドレール15,17が設けられているので、端子9の端子収容室3への挿入時に、少なくとも一方のガイドレール15,17が端子9の係止突起13と当接する。
【0099】
この状態から端子9を端子収容室3の正規位置まで挿入する間に、係止突起13とガイドレール15,17との摺動によりガイドレール15,17の傾斜に沿って端子9が回転しながら挿入され、係止突起13が係止ランス11に導かれ、係止突起13を係止ランス11に確実に係止させることができる。
【0100】
従って、このようなコネクタ1では、確実に係止突起13とガイドレール15,17とを当接でき、端子9の端子収容室3への挿入力で係止突起13とガイドレール15,17とを摺動させて端子9を回転させることができるので、無理なく確実に端子9を回転させ、端子9を係止ランス11に確実に係止させることができる。
【0101】
また、一対のガイドレール15,17は、それぞれ中心線L1と直交する交差線L2の両側に線対称に設けられているので、一対の係止突起13,13と一対のガイドレール15,17とをそれぞれ当接させることができ、さらに安定して端子9を回転させることができる。
【0102】
さらに、ガイドレール15,17には、交差線L2の両側に位置するそれぞれの挿入開口5側の端部が交差線L2上で交わる拾い部19が設けられているので、拾い部19によって係止突起13を確実にガイドレール15,17に導くことができる。
【0103】
また、一対のガイドレール15,17は、挿入開口5の中心に対して拾い部19,19から係止ランス11側に向けて端子収容室3内を狭めるように傾斜されているので、円筒状の接続部7の中心と挿入開口5の中心との位置がずれて端子9が端子収容室3に収容されても、一対のガイドレール15,17によって円筒状の接続部7の中心と挿入開口5の中心との位置を合わせるように端子収容室3に対する端子9の挿入姿勢を補正することができる。
【0104】
また、一対のガイドレール15,17は、それぞれガイド溝21に連続して設けられているので、端子9の端子収容室3への挿入動作で、係止突起13をガイドレール15,17からガイド溝21まで連続してスムーズに導くことができる。
【0105】
さらに、一対のガイドレール15,17の拾い部19,19は、端子9の端子収容室3への挿入方向に対する位置が異なって配置されているので、端子9の挿入開始時に、いずれか一方の拾い部19と係止突起13とが当接し、他方の拾い部19と係止突起13とが当接することがなく、一対の係止突起13,13が両方の拾い部19,19に同時に当接して端子9の回転が阻止されることを防止することができる。
【0106】
また、端子収容室3には、端子9の係止ランス11に係止された位置から端子収容室3への挿入方向の移動を規制する規制部23が設けられているので、端子9が端子収容室3から突き出ることがなく、端子9を端子収容室3の正規位置に保持することができる。
【0107】
さらに、端子収容室3の挿入開口5側は、端子9の一対の係止突起13,13間の長さより広く形成されているので、端子9が太い電線25の端末部に設けられている場合でも、端子9を端子収容室3に収容して太い電線25を挿入開口5から引き出すことができる。
【0108】
なお、本実施の形態に係るコネクタでは、ハウジングにフロントホルダを組付け、端子収容室の相手端子が挿入される開口を形成させているが、これに限らず、ハウジングにフロントホルダを組付けずに、端子収容室に相手端子が挿入される開口を形成させてもよい。
【0109】
また、規制部は、ガイド溝に設けられているが、これに限らず、例えば、端子の接続部の端面と当接可能な位置に規制部を設けるなど、端子が端子収容室から突き出ることを防止できる位置であれば、規制部を端子収容室のどの部分に設けてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1…コネクタ
3…端子収容室
5…挿入開口
7…接続部
9…端子
11…係止ランス
13…係止突起
L1…中心線
15,17…ガイドレール
L2…交差線
19…拾い部
21…ガイド溝
23…規制部
25…電線
図1
図2
図3
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