(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691465
(24)【登録日】2020年4月14日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】スタッドピン及びスタッドピンを備えた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/16 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
B60C11/16 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-209203(P2016-209203)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-69822(P2018-69822A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 憲司
【審査官】
岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−097836(JP,A)
【文献】
特開2013−023111(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤのピン穴に装着されるスタッドピンであって、
円柱状で、少なくとも軸心方向の一端部が、前記軸心と直交する直線に対して平行に延びるエッジ部と、前記軸心を中心とする円弧状部とで構成されているボディと、
前記ボディの前記軸心方向の他端部に設けられ、前記軸心に直交する横軸を中心として、前記軸心および前記横軸に直交する縦軸方向に非対称に形成され、前記縦軸方向の端部に前記軸心を中心とする円弧状部を備える台座部と、
を備え、
前記台座部は、前記縦軸が前記空気入りタイヤのタイヤ周方向に沿うように配置され、前記軸心方向から見て前記縦軸方向の長さが前記横軸方向の長さよりも大きくなっていることを特徴とするスタッドピン。
【請求項2】
前記台座部は、前記軸心方向から見て、前記縦軸を挟んで両側から前記縦軸に向かって傾斜する直線状の傾斜部を有し、
前記傾斜部が接続されることによって前記縦軸方向の端部に突出部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスタッドピン。
【請求項3】
前記台座部は、前記横軸によって分割される第1領域と第2領域とで構成され、
前記傾斜部は、前記第1領域に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスタッドピン。
【請求項4】
前記軸心方向から見て、前記台座部では、前記傾斜部と他の部分との境界部分が角部で構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のスタッドピン。
【請求項5】
前記台座部は、前記軸心方向から見て、前記ボディから全周ではみ出すように形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスタッドピン。
【請求項6】
前記ボディは、上端外縁部にテーパ面を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のスタッドピン。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のスタッドピンと、
トレッド部に形成され、前記スタッドピンが装着されるピン穴と、
を備えていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッドピン及びスタッドピンを備えた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スタッドピンとして、平面視台形状のボディと、その下端部に設けた同じく平面視台形状のベースとを備えた構成のものが公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/122570号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のスタッドピンでは、ボディおよびベースが平面視台形状であり、スタッドピンを装着するタイヤのピン穴との密着度にばらつきが生じる。このため、スタッドピンをタイヤのピン穴に装着した状態で路面からスタッドピンに力が作用すると、スタッドピンがタイヤのピン穴から脱落しやすい。
【0005】
本発明は、タイヤのピン穴からの耐抜け性に優れ、路面に対して十分なエッジ効果を発揮できるスタッドピン及びこのスタッドピンを備えた空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
空気入りタイヤのピン穴に装着されるスタッドピンであって、
円柱状で、少なくとも軸心方向の一端部が、前記軸心と直交する直線に対して平行に延びるエッジ部と、前記軸心を中心とする円弧状部とで構成されているボディと、
前記ボディの前記軸心方向の他端部に設けられ、前記軸心に直交する横軸を中心として、前記軸心および前記横軸に直交する縦軸方向に非対称に形成され、前記縦軸方向の端部に前記軸心を中心とする円弧状部を備える台座部と、
を備えていることを特徴とするスタッドピンを提供する。
【0007】
この構成により、スタッドピンをタイヤのピン穴に装着すれば、ボディおよび台座部の円弧状部がピン穴の内面に密着するため、高い保持性を確保できる。また、台座部は、横軸を中心として縦軸方向に非対称に形成されているので、ピン穴への装着方向によって、特定の方向への耐抜け性を向上できる。特に、台座部は縦軸方向の端部に円弧状部を備え、即ち軸心方向から見て(以下、平面視という場合がある)、縦軸方向に膨出しているため、縦軸方向の耐抜け性を向上できる。また、ボディの一端部にエッジ部が設けられているため、エッジ効果により走行開始時、コーナリング時あるいは制動時に、トラクション性能、コーナリング性能あるいは制動性能を発揮させることが可能となる。
【0008】
前記台座部は、
前記縦軸が前記空気入りタイヤのタイヤ周方向に沿うように配置され、前記軸心方向から見て、前記縦軸方向の長さが、前記横軸方向の長さに比べて長くてもよい。
【0009】
この構成により、スタッドピンをタイヤに装着した際に縦軸方向に台座部が強く締め付けられる。従って、縦軸方向に作用する力に対して良好な耐抜け性を確保できる。
【0010】
前記台座部は、前記軸心方向から見て、前記縦軸を挟んで両側から前記縦軸に向かって傾斜する
直線状の傾斜部を有し、
前記傾斜部が接続されることによって前記縦軸方向の端部に突出部が形成されていてもよい。
【0011】
この構成により、スタッドピンをタイヤに装着した際に、第1領域側では、縦軸方向の端部に形成された突出部がタイヤに強く食い込み、その反力でスタッドピンが強く締め付けられる。従って、縦軸方向に作用する力に対して良好な耐抜け性を確保できる。
【0012】
前記台座部は、前記横軸によって分割される第1領域と第2領域とで構成され、
前記傾斜部は、前記第1領域に形成されていてもよい。
また、前記軸心方向から見て、前記台座部では、前記傾斜部と他の部分との境界部分が角部で構成されていてもよい。
【0013】
この構成により、台座部の傾斜部が第1領域側に設けられていることで、シャフトが延びる方向から見て台座部の傾斜部がボディよりも外側に配置される。台座部の傾斜部がボディよりも外側に配置されるため、スタッドピンがタイヤから抜けようとする際に台座部の傾斜部が引っ掛かり、スタッドピンの耐抜け性を向上できる。
【0014】
前記台座部は、前記軸心方向から見て、前記ボディから全周ではみ出すように形成されていてもよい。
【0015】
この構成により、スタッドピンがタイヤから抜けようとする際に、平面視において台座部が全周においてタイヤに引っ掛かるため、台座部による耐抜け性を向上できる。
【0016】
前記ボディは、上端外縁部にテーパ面を有してもよい。
【0017】
この構成により、ドライ路面を走行する際に、ボディの路面に衝突する部分はテーパ面であり、その際に路面に作用する衝撃力を緩和できる。従って、路面割れ等の発生を抑制できる。
【0018】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
前記いずれかに記載のスタッドピンと、
トレッド部に形成され、前記スタッドピンが装着されるピン穴と、
を備えていることを特徴とする空気入りタイヤを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スタッドピン及びそれを備えた空気入りタイヤにおいて、ボディおよび台座部に円弧状部を形成しているのでタイヤのピン穴からの高い耐抜け性を確保でき、ボディがエッジ部を有しているので路面に対して十分なエッジ効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係るスタッドピンの斜視図である。
【
図4】
図1に示すスタッドピンを装着するタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図6】他の実施形態に係るスタッドピンの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。さらに、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0022】
図1及び
図2は、本実施形態に係るスタッドピン1を示す。スタッドピン1は、アルミニウム、アルミニウム合金等を成形加工等により形成したもので、ボディ2と、このボディ2の下方側に続くシャンク3と、さらにその下方側に続く台座部4と、ボディ2の上面中央部に設けられるシャフト5とで構成されている。
【0023】
ボディ2は、ほぼ円柱状であるが、外周面の一部には軸心Lと平行な側面6が形成されている。これにより、少なくともボディ2の上端外縁部には、軸心Lに直交する直線と平行なボディ側エッジ部8aと、それ以外の円弧状部8bとが形成される。
【0024】
また、ボディ2の上面外縁部はテーパ面7で構成されている。テーパ面7は、スタッドピン1を空気入りタイヤ(スタッドタイヤ)に装着し、路面を走行した際、路面に接触する最初の領域となる。ここでは、ボディ側エッジ部8aに形成されるテーパ面7が最初に路面に衝突する領域となる。したがって、ボディ側エッジ部8aが路面に衝突する際、面当たりとなる。但し、路面に対して尖った部分が衝突しないようにできるのであれば、ここで言うテーパ面7には多少の湾曲面形状を含むものと解する。また、円弧状部8bには、円弧のみに限らず、複数の線分で繋がった多角形状の一部も含む。但し、線分の長さはボディ側エッジ部8aよりも短い。
【0025】
さらに、ボディ2では、平面視で、円柱部分の直径L1とボディ側エッジ部8aの長さL2との関係は、1/4<L2/L1<3/4を満足するように設定されている。1/4以下では、接地時の部分的な接触圧が大きくなり過ぎ、3/4以上では、接地時に破損しやすくなる。
【0026】
図3に示すように、台座部4は、平面視で、縦軸(図において上下方向に延びる一点鎖線)方向の最大長さaと横軸(図において左右方向に延びる一点鎖線)方向の最大長さbがa>bを満足する縦長形状に形成されている。以下では、縦軸方向のことを縦方向、横軸方向のことを横方向という場合がある。台座部4の縦方向の一端側には、軸心Lを中心とする円弧状部12が形成されている。また、台座部4には、縦方向の他端側に2つの傾斜部10によって三角形状に突出する突出部11が形成されている。ここでは、突出部11は縦軸を挟んで左右対称である。そして、傾斜部10が縦軸となす角度が、90°未満となるように設定されている。即ち、平面視において、台座部4は、円弧状部12と、傾斜部10と、突出部11とによって構成されている。また、台座部4は、平面視において横軸によって分割される第1領域S1と、第2領域S2とを有する。傾斜部10および突出部11は、第1領域S1に形成されており、第2領域S2には形成されていない。換言すれば、傾斜部10は、第1領域S1と第2領域S2とにまたがって形成されているわけではない。また、台座部4は、平面視でボディ2から全周ではみ出すように形成されている。また、台座部4の外縁部下面にはテーパ面13が形成されている(
図2参照)。
【0027】
シャフト5は、平面視奇数角形(ここでは、五角形)をした第1突部14を備えている。第1突部14の1つの辺(エッジ)を含む第1エッジ部15は、ボディ2の側面6と平行な平面である。第1エッジ部15は、ボディ側エッジ部8aの長さよりも短く設定されている。また、第1エッジ部15に隣接する両側の第2エッジ部16及び第3エッジ部17は、台座部4の円弧部分に対向している。さらに、第2エッジ部16に隣接する第4エッジ部18と、第3エッジ部17に隣接する第5エッジ部19は、台座部4の各傾斜部10に対向している。
【0028】
第1突部14の上面には第2突部20が形成されている。第2突部20は平面視矩形状で、その長辺の一方が第1突部14の第1エッジ部15と平行な第6エッジ部21となっている。但し、第2突部20の他のエッジ部(第7エッジ部22、第8エッジ部23及び第9エッジ部24)は第1突部14の他のエッジ部とは延びる方向が相違している。
【0029】
また、シャフト5は、その軸心がボディ2の軸心と合致するように設けられている。これにより、ボディ2の外縁からシャフト5までに全方位で十分な距離を確保することができる。また、第1突部14に比べて第2突部20のエッジ部の数を少なくしている。具体的に、第1突部14では5箇所、第2突部20では4箇所としている。さらにここでは、シャフト5の高さを0.5mm以上、2.5mm以下としている。0.5mm未満では、シャフト5としての機能を十分に発揮できないからであり、2.5mmを超えると、ボディ2よりも先にシャフト5が接地してしまい損傷しやすいからである。また、第1突部14に対する第2突部20の高さの比率を10%以上、80%以下としている。10%未満では、第2突部20のエッジ効果が不十分であり、80%を超えると、第1突部14のエッジ効果を十分に発揮できなくなる。
【0030】
このようにシャフト5を2段で形成することにより、エッジ長さの総計を大きくすることができ、十分なエッジ効果を発揮させることができる。しかも、路面には第1突部14と第2突部20の種々の方向に延びるエッジが衝突することになり、直進方向のみならず、コーナリング時等、種々の方向に対してエッジ効果を発揮させることができる。なお、シャフト5は3段以上で構成することも可能である。
【0031】
前記構成のスタッドピン1は、
図4に示すように、スタッドタイヤのトレッド部25に形成したピン穴26に装着して使用する。ピン穴26は、
図5に示すように、同一内径の小径部27と、その先端の拡径部28とで構成されている。ピン穴26へのスタッドピン1の装着作業は、ピン打ち込み装置(図示せず)によって自動的に行う。この場合、台座部4の形状を円形等の点対称な形状ではなく、前述のような縦長の異形状としているため、その方向を容易に把握してピン穴26へと正確に装着することができる。ここでは、ボディ2の側面6(シャフト5の第1側面)がタイヤ蹴出側で、タイヤ周方向に直交してタイヤ幅方向に延びるように位置決めする。この状態では、トレッド部25の表面からスタッドピン1のボディ2の上端部(テーパ面7)よりも上の部分が露出する。
【0032】
このようにタイヤに装着されたスタッドピン1によれば、走行する際、まずボディ2の上端部分のボディ側エッジ部8aが路面に衝突する。ボディ側エッジ部8aは、十分な長さと面積を有する。このため、ボディ側エッジ部8aが路面に衝突しても、路面への単位面積当たりの衝撃力を抑制することができる。この結果、ドライ路面を走行する場合であっても、路面割れ等の不具合を回避することが可能となる。また、凍結した路面(氷面)を走行する際、ボディ側エッジ部8aが路面に噛み込み、優れた駆動力を発揮する。
【0033】
続いて、シャフト5が路面に衝突する。この場合、ボディ2とシャフト5との間には十分な距離が確保されている。このため、路面にボディ2が衝突する前にシャフト5が衝突することが回避される。これにより、路面衝突時のシャフト5の損傷を防止することができる。
【0034】
また、路面に衝突するシャフト5は、2段で構成され、周囲の尖った辺の方向が第1突部14と第2突部20とで1箇所を除いて相違している。したがって、そのエッジ効果を十分に発揮させることができる。すなわち、直進であれば、第1突部14の第4エッジ部18、第5エッジ部19及び両者が交差する頂点部分と、第2突部20の第8エッジ部23第1エッジ部15が路面(氷面)に作用する。また、カーブを走行するコーナリング時であれば、第1突部14の第2エッジ部16又は第3エッジ部17と、第2突部20の第7エッジ部22又は第9エッジ部24が路面に対する横ずれを防止する。さらに、ブレーキを踏んだ際には、第1突部14の第1エッジ部15と、第2突部20の第6エッジ部21第4エッジ部18及び第5エッジ部19が路面に対して制動力を作用させる。
【0035】
このとき、スタッドピン1には、ボディ2やシャフト5を介してピン穴26から脱落させるような力が作用する。スタッドピン1では、ボディ2よりも小径となったシャフト5と、これに続くボディ2よりも大径となった台座部4とを備えており、その脱落が有効に防止される。
【実施例】
【0036】
ボディ2及び台座部4の平面視形状が円形の比較例、及び、
図1から
図3に示す実施例のスタッドピンを使用して耐抜け性及びエッジ性能について試験を行った。テストタイヤとして、タイヤサイズ:195/65R15、空気圧Fr/Re:220/220(kPa)を使用した。耐抜け性試験では、ピン穴26に装着したスタッドピン1にワイヤを接続し、前後、斜め及び横方向に一定速度で引っ張った。引っ張り力を徐々に大きくし、スタッドピン1がピン穴26から抜けたときの引っ張り力で評価した。エッジ性能試験では、テストタイヤをテスト車両(1500cc、4WDミドルセダン車)に装着してアイス路面を走行し、エッジ性能(駆動性能、制動性能及び旋回(コーナリング)性能)を評価した。エッジ性能の評価では、比較例1の場合を100として実施例1から9を指数評価した。駆動性能については、アイス路面において停止状態から走行距離が30mに到達するまでの経過時間により評価した。制動性能については、速度40km/hでABS(Antilock Brake System)により制動力を作用させたときの制動距離で評価した。旋回性能については、同じく速度40km/hで旋回した際の旋回半径で評価した。
【0037】
評価結果は、表1に示す通りである。
【表1】
【0038】
このように、実施例では、縦長の非対称形状をした台座部4により縦方向の耐抜け性を大幅に向上させると共に、斜め方向の耐抜け性も向上させることができた。また、ボディ2に形成したボディ側エッジ部8aと、シャフト5に形成した各辺エッジ部とにより、エッジ効果の全ての項目で優れた効果を発揮した。このエッジ効果は、ボディ2にボディ側エッジ部8aを形成したこと、シャフト5を2段にすることにより、エッジ部の方向を自由に設定することができたことと、エッジ部を長くすることができたこととがその要因である。
【0039】
本実施形態のスタッドピン1の構成から得られる効果をまとめると以下のようになる。
【0040】
本実施形態によれば、スタッドピン1をタイヤのピン穴26に装着すれば、ボディ2および台座部4の円弧状部8bがピン穴26の内面に密着するため、高い保持性を確保できる。また、台座部4は、横軸を中心として縦軸方向に非対称に形成されているので、ピン穴26への装着方向によって、特定の方向への耐抜け性を向上できる。特に、台座部4は縦軸方向の端部に円弧状部12を備え、即ち、平面視において縦軸方向に膨出しているため、縦軸方向の耐抜け性を向上できる。また、ボディ2の一端部にエッジ部8aが設けられているため、エッジ効果により走行開始時、コーナリング時あるいは制動時に、トラクション性能、コーナリング性能あるいは制動性能を発揮させることが可能となる。
【0041】
また、台座部4が縦長形状であるため、スタッドピン1をタイヤに装着した際に縦軸方向に台座部4が強く締め付けられる。従って、縦軸方向に作用する力に対して良好な耐抜け性を確保できる。
【0042】
また、スタッドピン1をタイヤに装着した際に、第1領域S1側では、縦軸方向の端部に形成された突出部11がタイヤに強く食い込み、その反力でスタッドピン1が強く締め付けられる。従って、縦軸方向に作用する力に対して良好な耐抜け性を確保できる。
【0043】
また、台座部4の傾斜部10が第1領域S1側に設けられていることで、平面視において台座部4の傾斜部10がボディ2よりも外側に配置される。台座部4の傾斜部10がボディ2よりも外側に配置されるため、スタッドピン1がタイヤから抜けようとする際に台座部4の傾斜部10が引っ掛かり、スタッドピン1の耐抜け性を向上できる。
【0044】
また、スタッドピン1がタイヤから抜けようとする際に、平面視において台座部4が全周においてタイヤに引っ掛かるため、台座部4による耐抜け性を向上できる。
【0045】
また、ドライ路面を走行する際に、ボディ2の路面に衝突する部分はテーパ面7であり、その際に路面に作用する衝撃力を緩和できる。従って、路面割れ等の発生を抑制できる。
【0046】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0047】
前記実施形態では、タイヤの蹴出側に、ボディ側エッジ部8aを、タイヤ周方向と直交してタイヤ幅方向に延びるように配置したが、タイヤの踏込側に配置するようにしてもよい。これによれば、ボディ側エッジ部8aにより制動力を作用させやすくなる。
【0048】
前記実施形態では、ボディ2のボディ側エッジ部8aと、台座部4の突出部11とを横軸を中心として縦軸方向に分割した領域の反対側にそれぞれ設けるようにしたが、
図6に示すように、同じ側に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…スタッドピン
2…ボディ
3…シャンク
4…台座部
5…シャフト
6…側面
7…テーパ面
8a…ボディ側エッジ部(エッジ部)
8b…円弧状部
10…傾斜部
11…突出部
12…円弧状部
13…テーパ面
14…第1突部
15…第1エッジ部
16…第2エッジ部
17…第3エッジ部
18…第4エッジ部
19…第5エッジ部
20…第2突部
21…第6エッジ部
22…第7エッジ部
23…第8エッジ部
24…第9エッジ部
25…トレッド部
26…ピン穴
27…小径部
28…拡径部