【文献】
田中広義、他,アスコルビン酸誘導体の製剤学的研究(第1報),薬学雑誌,1966年,Vol.86(5),p.376-383
【文献】
TAKAHASHI Mareyuki, et al.,Oxidation of lipids. XIV. Inhibition of oxidation of methyl linoleate by fatty acid esters of L-as,Bulletin of the Chemical Society of Japan,1986年,Vol.59(10),p.3179-3183
【文献】
Journal of Agricultural and Food Chemistry,2004年,Vol.52,p.2092-2096
【文献】
Theodora W. GREENE,PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,John Wiley & Sons, Inc.,1998年10月 2日,Second Edition,p.10-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0047】
<アスコルビン酸誘導体(2,5,6−トリ−O−アシルアスコルビン酸)>
本発明の化合物(アスコルビン酸誘導体)は、下記式(A)で表される。すなわち、本発明のアスコルビン酸誘導体は、アスコルビン酸の2、5及び6位のみがアシル化(アシルエステル化)された化合物(2,5,6−トリ−O−アシルアスコルビン酸)ということができる。
【0048】
【化18】
(式中、R
1はアシル基を示す。)
【0049】
上記式(A)において、アシル基R
1としては、オキソ酸としてのカルボン酸からヒドロキシル基を除いた基、例えば、脂肪族アシル基[例えば、アルカノイル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などのC
1−10アルカノイル基、好ましくはC
1−6アルカノイル基、さらに好ましくはC
1−4アルカノイル基)などの飽和脂肪族アシル基]、芳香族アシル基[例えば、アロイル基(例えば、ベンゾイル基などのC
6−10アロイル基)]などが挙げられる。また、アシル基には、オキソ酸としての非カルボン酸(スルホン酸、リン酸など)からヒドロキシル基を除いた基[例えば、アルカンスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基)など]も含まれる。
これらのうち、アルカノイル基などの脂肪族アシル基が好ましく、特に、アセチル基が好ましい。
なお、前記式(A)において、3つのR
1は同一の又は異なるアシル基であってもよく、通常、同一のアシル基であってもよい。
【0050】
代表的なアスコルビン酸誘導体には、すなわち、2、5および6位の3つのR
1がすべてアセチル基である化合物(すなわち、2,5,6−トリ−O−アセチルアスコルビン酸)が含まれる。
【0051】
このようなアスコルビン酸誘導体は、例えば、配糖体におけるアグリコン又はその前駆体(中間体)として有用である。例えば、このようなアスコルビン酸誘導体は、3位にのみヒドロキシル基を有するため、効率よく3位に糖[単糖(グルコース、ガラクトースなど)などの後述の糖]を結合(配糖化)できる。特に、本発明のアルコルビン酸誘導体は、後述するように、式(1)で表される特定の化合物(すなわち、アスコルビン酸の2位に糖が結合した配糖体)の原料(中間体、前駆体)として有用である。
【0052】
[アスコルビン酸誘導体の製造方法]
アスコルビン酸誘導体は、特に限定されないが、例えば、下記式(A’)で表される化合物(すなわち、2,3,5,6−テトラ−O−アシルアスコルビン酸)(詳細には、下記式(A’)で表される化合物の3位に置換する基−OR
1)を脱アシル化(脱アシル化処理)することで製造できる。
【0053】
【化19】
(式中、R
1は前記と同じ。)
【0054】
上記式(A’)において、R
1は前記式(A)と同じである。代表的な化合物(A’)には、2,3,5および6位の4つのR
1がすべてアセチル基である化合物(すなわち、2,3,5,6−テトラ−O−アシルアスコルビン酸)が含まれる。
【0055】
(式(A’)で表される化合物の製造方法)
式(A’)で表される化合物は、アスコルビン酸(L−アスコルビン酸)とアシル化剤とを反応させることで得ることができる。
アシル化剤としては、基R
1に対応するアシル化剤、例えば、酸無水物(例えば、無水酢酸など)、酸ハライド(例えば、酢酸クロリドなど)、酸エステルなどが挙げられる。アシル化剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0056】
アシル化剤の使用割合は、アスコルビン酸の4つのヒドロキシル基をすべてアシル化(アシルエステル化)できる範囲であればよく、例えば、アスコルビン酸1モルに対して4モル以上(例えば、4〜10モル)であってもよい。
【0057】
なお、反応は、アシル化剤の種類などに応じて、無溶媒中で行ってもよく、溶媒(後述の溶媒など)中で行ってもよい。
【0058】
アスコルビン酸とアシル化剤との反応は、酸触媒(例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸など)の存在下で行ってもよい。また、反応は、加温下[例えば、反応温度50℃以上(例えば、60〜180℃、好ましくは80〜150℃)、さらに好ましくは100〜140℃]で行ってもよい。また、反応は、撹拌下で行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよい。
【0059】
反応時間は、特に限定されないが、例えば、1分以上(例えば、2分〜48時間)、好ましくは3分以上(例えば、4分〜24時間)、さらに好ましくは5分以上(例えば、10分〜12時間)程度であってもよい。なお、薄層クロマトグラフィー(TLC)などの慣用の方法を用い、反応の進行を確認してもよい。
【0060】
なお、反応混合物(式(A’)で表される化合物を含む混合物)は、分離(又は回収)することなく、そのまま、後述の脱アシル化反応に供してもよく、分離(又は回収)してもよい。
反応混合物からの分離(又は精製)には、慣用の方法(例えば、濾過、抽出、濃縮、洗浄、吸着、膜分離、クロマトグラフィーなど)を利用できる。
【0061】
(脱アシル化)
式(A’)で表される化合物の脱アシル化(脱アシル化反応)は、通常、塩基を用いて(又は塩基と反応させて)行うことができる。
【0062】
塩基としては、有機塩基[アミン類、アルコキシド(例えば、アルカリ金属アルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムイソプロポキシドなどのナトリウムアルコキシド)などの金属アルコキシド)など]、無機塩基[例えば、炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸アルカリ金属塩又は炭酸アルカリ土類金属塩)の弱酸の塩など]などが挙げられる。特に、塩基として、精製の観点などから、アミン類を好適に使用してもよい。本発明では、意外にも、アスコルビン酸の2位のアシル基での脱アシル化が生じにくく、3位のアシル基を高い選択性で脱アシル化できる。
【0063】
アミン類としては、第1級アミン、第2級アミンなどを使用でき、特に第2級アミンを好適に使用してもよい。
第1級アミンとしては、例えば、鎖状脂肪族アミン(例えば、エチルアミン、イソプロピルアミンなどのアルキルアミン)、芳香脂肪族アミン(例えば、ベンジルアミンなど)などが挙げられる。
また、第2級アミンとしては、例えば、鎖状アミン[例えば、鎖状脂肪族アミン(例えば、ジイソプロピルアミンなどのジアルキルアミン)]、環状アミン[又はヘテロ環式アミン、例えば、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、N−モノ置換ピペラジン(例えば、1−メチルピペラジン、1−エチルピペラジンなどの1−アルキルピペラジン、好ましくは1−C
1−4アルキルピペラジン)、モルホリン、チオモルホリンなどの単環式アミン]などが挙げられる。
【0064】
これらの第2級アミンの中でも、特に、N−モノ置換ピペラジン(1−アルキルピペラジンなど)などの第3級アミノ基を有する第2級アミンが好ましい。このような第2級アミンを用いると、酸洗浄により容易に生成物(式(A’)で表される化合物)を回収(精製)しやすい。
【0065】
塩基(アミン類など)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0066】
脱アシル化において、塩基の量は、塩基の種類等に応じて選択でき、例えば、式(A’)で表される化合物に対して、0.3モル当量以上(例えば、0.4〜10モル当量)、0.5モル当量以上(例えば、0.6〜5モル当量)、好ましくは0.7モル当量以上(例えば、0.8〜3モル当量)程度であってもよい。
【0067】
特に、式(A’)で表される化合物は、塩基を当量又はほぼ当量用いることで、3位における選択的な脱アシル化反応が生じやすい。そのため、式(A’)で表される化合物に対して、塩基を当量又はほぼ当量(例えば、0.7〜1.5モル当量、好ましくは0.8〜1.2モル当量、さらに好ましくは0.9〜1.1モル当量、特に0.95〜1.05モル当量)用いてもよい。
なお、塩基を2当量又はほぼ2当量用いると、2位及び3位を選択的に脱アシル化しやすい。すなわち、2当量又はほぼ2当量用いることで、下記式(A’’)で表される化合物(すなわち、5,6−ジ−O−アシルアスコルビン酸)を効率よく得ることもできる。
【0068】
【化20】
(式中、R
1は前記と同じ。)
【0069】
脱アシル化は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、脱アシル化を阻害しない溶媒であれば特に限定されず、例えば、炭化水素類[例えば、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)など]、ハロゲン化炭化水素類(例えば、塩化メチレン、クロロホルムなど)、エーテル類[例えば、鎖状エーテル類(例えば、ジエチルエーテルなど)、環状エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)など]、アミド類[例えば、N−置換アミド(N,N−ジメチルホルムアミドなどのN−アルキル置換アルカンアミド)]、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルカノール)などが挙げられる。
特に、選択的な脱アシル化のためには、脱アシル化反応に不活性な溶媒(例えば、炭化水素類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類など)などを好適に用いてもよい。
これらの溶媒は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0070】
溶媒を使用する場合、溶媒の使用量は、特に限定されず、例えば、式(A’)で表される化合物(及び塩基)1重量部に対して、例えば、0.5〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは2〜30重量部程度であってもよい。
【0071】
反応は、常温(又は室温)下、冷却下、又は加温下で行ってもよい。
また、反応は、撹拌下で行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよい。
【0072】
反応時間は、特に限定されないが、例えば、1分以上(例えば、2分〜48時間)、好ましくは3分以上(例えば、4分〜24時間)、さらに好ましくは5分以上(例えば、10分〜12時間)程度であってもよい。なお、薄層クロマトグラフィー(TLC)などの慣用の方法を用い、反応の進行を確認してもよい。
【0073】
上記のようにして、アスコルビン酸誘導体(式(A)で表される化合物)が得られる。反応混合物(式(A)で表される化合物を含む混合物)は、分離(又は回収)することなく、そのまま、後述の反応に供してもよく、分離(又は回収)してもよい。
【0074】
反応混合物からの分離(又は精製)には、慣用の方法(例えば、濾過、抽出、濃縮、洗浄、吸着、膜分離、クロマトグラフィーなど)を利用できる。特に、脱アシル化による副生成物(カルボン酸アミドなど)は、前記のように、特定の塩基を用いると、抽出物からの酸洗浄により容易に分離除去しやすい。
【0075】
<式(1)で表される化合物(又はその誘導体)及びその製造方法>
本発明には、下記式(1)で表される化合物又はその誘導体(配糖体)が含まれる。
【0076】
【化21】
(式中、Suは糖からグリコシド性ヒドロキシル基を除いた基を示す。)
【0077】
上記式(1)において、Suは、糖(又は糖鎖)からグリコシド性ヒドロキシル基(ヘミアセタール性ヒドロキシル基)を除いた基(残基)である。換言すれば、基−OSuは、糖からグリコシド性ヒドロキシ基(アノマー炭素に結合したヒドロキシル基)を構成する水素原子を除いた基(残基)ということもできる。
【0078】
すなわち、式(1)で表される化合物は、アスコルビン酸をアグリコンとするO−グリコシド(アスコルビン酸の2位のヒドロキシル基と糖のグリコシド性ヒドロキシル基との間で縮合(グリコシド結合)した配糖体)ということができる。
【0079】
式(1)において、基Suに対応する糖(すなわち、Su−OH)としては、特に限定されず、単糖(単糖類)、オリゴ糖、多糖(多糖類)などであってもよい。なお、オリゴ糖及び多糖は、ホモ多糖、ヘテロ多糖のいずれであってもよい。
【0080】
単糖において、炭素数は特に限定されず、例えば、ペントース、ヘキソースであってもよい。また、単糖は、例えば、フラノース又はピラノースであってもよい。
【0081】
具体的な糖には、単糖[例えば、ペントース(例えば、リボース、アラビノース、キシロース、デオキシリボースなど)、ヘキソース(例えば、フルクトース、タガトース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、ラムノース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸)など]、これらの単糖類が結合したオリゴ糖又は多糖[例えば、二糖(例えば、マルトース、コージビオース、セロビオース、イソマルトース、ゲンチビオース、ラクトースなど)など]などが挙げられる。
【0082】
これらのうち、代表的な糖には、単糖(例えば、グルコース、ガラクトースなどのヘキソース)が含まれる。
【0083】
なお、糖は、D体、L体、これらの混合物のいずれであってもよい。
【0084】
また、式(1)で表される化合物は、α体(αアノマー、α−グリコシド)、β体(βアノマー、β−グリコシド)、これらの混合物のいずれであってもよく、特に、β体であってもよい。本発明では、後述のように、糖として、α体や、α体とβ体との混合物を用いても、1,2−トランス体である式(1)で表される化合物が得られる場合が多い。
例えば、糖がグルコースである場合にはβ体が得られ、マンノースである場合にはα体が得られる。
【0085】
代表的な式(1)で表される化合物には、例えば、下記式(1A)で表される化合物(式(1)において、糖がD−グルコースであるβ−グリコシド)、下記式(1B)で表される化合物(すなわち、式(1)において、糖がD−ガラクトースであるβ−グリコシド)などが含まれる。
【0088】
式(1)で表される化合物のうち、式(1A)で表される化合物(すなわち、式(1)において、糖がD−グルコースであるβ−グリコシド)以外の化合物[例えば、式(1B)で表される化合物]は、新規化合物である。そのため、本発明には、このような新規化合物(新規配糖体)も含まれる。
【0089】
式(1)で表される化合物の誘導体としては、例えば、式(1)で表される化合物のヒドロキシル基(アスコルビン酸骨格及び糖(Su)骨格を構成するヒドロキシル基)が、塩を形成した化合物(すなわち、式(1)で表される化合物の塩)や脱離基に置換した化合物などが挙げられる。塩としては、例えば、金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などのアルカリ又はアルカリ土類金属塩)、アミン塩、アンモニウム塩などのアルカリとの塩が挙げられる。
【0090】
また、脱離基としては、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、オクタノイルオキシ基、パルミトイルオキシ基、ステアロイルオキシ基などの脂肪族アシルオキシ基など)などが挙げられる。このようなアシルオキシ基を有する化合物は、式(1)で表される化合物のアシル化物(アシルエステル)ということができる。
【0091】
そして、本発明の配糖体(式(1)で表される化合物又はその誘導体)は、通常、下記式(B)で表される化合物と、下記式(C)で表される化合物とを反応させて下記式(D)で表される化合物を得るグルコシル化工程と、式(D)で表される化合物の基R
1及び基R
2を脱離させる脱離工程とを経て製造できる。
【0092】
【化24】
(式中、R
2はアリールメチル基を示し、R
1は前記と同じ。)
【0093】
【化25】
(式中、ASuはアシル化された糖からグリコシド性ヒドロキシル基を除いた基、Xは脱離基を示す。)
【0094】
【化26】
(式中、R
1、R
2及びASuは前記と同じ。)
以下、製造方法について詳述する。
【0095】
<式(B)で表される化合物>
式(B)において、R
2はアリールメチル基である。アリールメチル基(R
2)としては、例えば、ベンジル基、置換ベンジル基[例えば、アルキルベンジル基(例えば、4−メチルベンジル基などのC
1−4アルキルベンジル)など]などが挙げられる。好ましいアリールメチル基は、ベンジル基である。
【0096】
また、式(B)において、R
1は前記と同じ(すなわち、アシル基)であり、好ましい態様も前記と同じである。
【0097】
代表的な式(B)で表される化合物には、5および6位のR
1がアセチル基、R
2がベンジル基である化合物(すなわち、3−O−ベンジル−5,6−ジ−O−アセチル−アスコルビン酸)が含まれる。
【0098】
[式(B)で表される化合物の製造方法]
式(B)で表される化合物は、例えば、前記式(A)を原料(中間体、前駆体)として製造できる。すなわち、式(B)で表される化合物は、式(A)で表される化合物をアリールメチル化剤と反応(アリールメチル化反応)させた後、脱アシル化処理(詳細には、アスコルビン酸又は式(A)で表される化合物の2位に置換する基−OR
1を脱アシル化する)工程(アリールメチル化・脱アシル化工程)を経て得ることができる。
【0099】
なお、式(B)で表される化合物を得るのに、5,6位のみがアシル化されたアスコルビン酸(5,6−ジアシルアスコルビン酸)を用いることも考えられる。
しかし、5,6−ジアシルアスコルビン酸は、アスコルビン酸をアシル化剤(例えば、無水酢酸など)と反応させて得られる化合物であるが、5及び6位を選択的にアシル化することが難しく、通常、5位又は6位のみがアシル化されたアスコルビン酸、3位のみがアシル化されたアスコルビン酸などの副生成物を含む混合物として得られる。そして、この混合物から5,6−ジアシルアスコルビン酸のみを選択的に分離することは困難である。また、5,6−ジアシルアスコルビン酸を分離できても、3位のみを選択的にアリールメチルエーテル化(ベンジルエーテル化など)することは困難である。
そのため、本発明では、式(B)で表される化合物の原料として、5,6−ジアシルアスコルビン酸を用いず、式(A)で表される化合物(2,5,6−トリアシルアスコルビン酸)を用いる。
【0100】
アリールメチル化剤としては、例えば、アリールメチルハライド(又はハロメチルアレーン、例えば、塩化ベンジル、臭化ベンジルなどのベンジルハライド)などのアリールメチル基に対応する試薬が挙げられる。
【0101】
アリールメチル化反応において、アリールメチル化剤の使用割合は、式(A)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.8モル以上(例えば、0.9〜10モル)、好ましくは1モル以上(例えば、1.1〜5モル)、さらに好ましくは1.2モル以上(例えば、1.3〜3モル)であってもよい。
【0102】
アリールメチル化反応は、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、例えば、炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどの炭酸アルカリ金属塩)酸化銀、ピリジン類(ピリジン、ピコリン)などが挙げられる。塩基は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0103】
塩基の使用割合は、例えば、式(A)で表される化合物(又はアリールメチル化剤)に対して、例えば、1モル当量以上(例えば、1〜5モル当量)であってもよい。
【0104】
また、アリールメチル化反応は、ハイドロサルファイトナトリウム(亜ジチオン酸ナトリウム)、チオ硫酸ナトリウムなどの還元剤の存在下で行ってもよい。還元剤の使用割合は、例えば、式(A)で表される化合物に対して、例えば、1モル当量以上(例えば、1〜5モル当量)であってもよい。
【0105】
なお、アリールメチル化反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、前記例示の溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類)などが挙げられる。
【0106】
溶媒を使用する場合、溶媒の使用量は、特に限定されず、例えば、式(A)で表される化合物1重量部に対して、例えば、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部程度であってもよい。
【0107】
反応は、常温(又は室温)下、冷却下、又は加温下で行ってもよい。反応温度は、例えば、30〜150℃、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは50〜100℃程度であってもよい。反応は、撹拌下で行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよい。
【0108】
反応時間は、例えば、1分以上(例えば、1.5分〜24時間)、好ましくは2分以上(例えば、3分〜12時間)、さらに好ましくは5分以上(例えば、10分〜3時間)程度であってもよい。なお、薄層クロマトグラフィー(TLC)などの慣用の方法を用い、反応の進行を確認してもよい。
【0109】
上記のようにして、式(A)で表される化合物のアリールメチル化物、すなわち、下記式(B’)で表される化合物が得られる。
【0110】
【化27】
(式中、R
1及びR
2は前記と同じ。)
【0111】
なお、代表的な式(B’)で表される化合物には、2、5および6位のR
1がアセチル基、R
2がベンジル基である化合物(すなわち、3−O−ベンジル−2,5,6−トリ−O−アセチル−アスコルビン酸)が含まれる。
【0112】
反応混合物(式(B’)で表される化合物を含む混合物)は、分離(又は回収)することなく、そのまま、後述の反応(脱アシル化)に供してもよく、分離(又は回収)してもよい。反応混合物からの分離(又は精製)には、慣用の方法(例えば、濾過、抽出、濃縮、洗浄、吸着、クロマトグラフィーなど)を利用できる。
【0113】
(脱アシル化)
アリールメチル化に引き続き、脱アシル化を行うことにより、式(B)で表される化合物を得ることができる。
脱アシル化(脱アシル化反応)は、通常、塩基を用いて(又は塩基と反応させて)行うことができる。
【0114】
塩基としては、アミン類を好適に用いてもよい。アミン類としては、前記例示のアミン類(例えば、第2級アミン)などが挙げられる。アミン類として、N−モノ置換ピペラジン(1−アルキルピペラジンなど)などの第3級アミノ基を有する第2級アミンを用いると、前記と同様に、酸洗浄により容易に生成物(式(B)で表される化合物)を回収(精製)しやすい。
【0115】
脱アシル化において、塩基の量は、塩基の種類等に応じて選択でき、例えば、式(A)で表される化合物又は式(B’)で表される化合物に対して、0.5モル当量以上(例えば、0.7〜10モル当量)、0.8モル当量以上(例えば、0.9〜5モル当量)、好ましくは1モル当量以上(例えば、1〜3モル当量)程度であってもよい。
【0116】
脱アシル化は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、脱アシル化を阻害しない溶媒であれば特に限定されず、前記例示の溶媒などが使用できる。
なお、アリールメチル化反応混合物をそのまま脱アシル化に供する場合、アリールメチル化反応で用いた溶媒を、脱アシル化での溶媒として用いてもよい。
【0117】
反応は、常温(又は室温)下、冷却下、又は加温下で行ってもよい。
また、反応は、撹拌下で行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよい。
【0118】
反応時間は、特に限定されないが、例えば、1分以上(例えば、2分〜48時間)、好ましくは3分以上(例えば、4分〜24時間)、さらに好ましくは5分以上(例えば、10分〜12時間)程度であってもよい。なお、薄層クロマトグラフィー(TLC)などの慣用の方法を用い、反応の進行を確認してもよい。
【0119】
上記のようにして、式(B)で表される化合物が得られる。反応混合物(式(B)で表される化合物を含む混合物)は、分離(又は回収)することなく、そのまま、後述の反応(グリコシド反応)に供してもよく、分離(又は回収)してもよい。
【0120】
反応混合物からの分離(又は精製)には、慣用の方法(例えば、濾過、抽出、濃縮、洗浄、吸着、膜分離、クロマトグラフィーなど)を利用できる。特に、脱アシル化による副生成物(カルボン酸アミドなど)は、前記のように、特定の塩基を用いると、抽出物からの酸洗浄により容易に分離除去しやすい。
【0121】
<式(C)で表される化合物>
式(C)において、ASuは、アシル化(アシルエステル化)された糖からグリコシド性ヒドロキシル基(ヘミアセタール性ヒドロキシル基、アノマー炭素に結合したヒドロキシル基)を除いた基(残基)である。換言すれば、ASuは、前記式(1)における基Suにおいて、グリコシド性ヒドロキシル基以外のすべてのヒドロキシル基がアシル化された基(又はヒドロキシル基がアシルオキシ基に置換した基)である。
【0122】
そのため、アシル化されていること以外は、ASuとSuとは共通しており、好ましい態様もSuの場合と同じである。
【0123】
アシル化された糖(又はアシルオキシ基)において、アシル基としては、前記R
1(アセチル基など)と同様のアシル基が例示できる。アシル基は、同一又は異なるアシル基であってもよい。
【0124】
なお、式(C)で表される化合物(又は基ASu)は、α体(αアノマー、α−グリコシド)、β体(βアノマー、β−グリコシド)、これらの混合物のいずれであってもよい。特に、本発明では、プロセス効率の点から、α体とβ体との混合物を好適に使用してもよい。
【0125】
具体的な基ASuとしては、例えば、下記式(ASu−1)で表される基、下記式(ASu−2)で表される基(すなわち、SuがD−グルコース又はD−ガラクトースに対応する基、テトラ−O−アシル−D−グルコピラノシル基、テトラ−O−アシル−D−ガラクトピラノシル基)などが含まれる。
【0126】
【化28】
(式中、波線はα体、β体又はその混合物を示し、R
1は前記と同じ。)
【0127】
式(C)において、基Xは脱離基である。すなわち、式(C)で表される化合物は、ASuのアノマー炭素に基Xが結合した化合物(又はASuのグリコシド性ヒドロキシル基が脱離基に置換した化合物)ということができる。
【0128】
脱離基Xとしては、式(B)で表される化合物のヒドロキシル基(2位のヒドロキシル基)と反応して、グリコシド結合を形成可能な基(ASuのアノマー炭素又はアノマー位を活性化させる基)であれば特に限定されず、例えば、イミダート基{例えば、2,2,2−トリクロロアセトイミドイルオキシ基(基−O−C(=NH)−CCl
3)、(N−フェニル)トリフルオロアセトイミドイルオキシ基(基−O−C(=NPh)−CF
3)など}、カーボネート基(又は炭酸エステル基、例えば、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニルオキシ基など)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基などの前記基−OR
1で表される基)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)などが挙げられる。
【0129】
これらのうち、イミダート基は、式(C)で表される化合物(又はASu)がα体、β体のいずれであっても、式(B)で表される化合物とグリコシド結合可能である(さらには、1,2−トランス体を得ることができる)ため、式(C)で表される化合物としてα体や、α体とβ体の混合物を用いる場合などにおいて、好適である。特に、α体とβ体とを分離する必要がないため、α体とβ体との混合物を好適に使用してもよい。
【0130】
代表的な式(C)で表される化合物としては、イミダート体、例えば、下記式(C1)で表される化合物、下記式(C2)で表される化合物(すなわち、ASuがアシル化されたD−グルコース又はD−ガラクトース、Xが2−トリクロロアセトイミドイルオキシ基である化合物)などが含まれる。
【0131】
【化29】
(式中、波線はα体、β体又はその混合物を示し、R
1は前記と同じ。)
【0132】
[式(C)で表される化合物の製造方法]
式(C)で表される化合物は、入手可能であれば市販品を用いてもよく、合成(製造)したものを用いてもよい。
【0133】
式(C)で表される化合物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、下記式(C’)で表される化合物を脱アシル化処理(脱アシル化)し、下記式(C’’)で表される化合物を得る工程(脱アシル化工程)、式(C’’)で表される化合物と、脱離基Xに対応する化合物とを反応させる工程(脱離基導入工程)を経て得ることができる。
なお、式(C’)で表される化合物と式(C)で表される化合物とが同じ[すなわち、脱離基Xが式(C)におけるアシルオキシ基(−OR
1)である]場合は、このような工程を経る必要はない。
【0134】
【化30】
(式中、R
1及びASuは前記と同じ。)
【0135】
【化31】
(式中、ASuは前記と同じ。)
【0136】
(式(C’)で表される化合物)
式(C’)において、R
1は前記と同じ(すなわち、アシル基)である。前記の通り、ASuは、アシル化された糖からグリコシド性ヒドロキシル基を除いた基であり、基−OR
1は、アシルオキシ基(すなわち、アシル化又はアシルエステルされたヒドロキシル基)である。すなわち、式(C’)で表される化合物は、グリコシド性ヒドロキシル基を含むすべてのヒドロキシル基がアシル化(アシルエステル化)された化合物である。
【0137】
なお、式(C’)で表される化合物は、前記の通り、α体(αアノマー、α−グリコシド)、β体(βアノマー、β−グリコシド)、これらの混合物のいずれに対応する基であってもよい。本発明では、α体、β体にかかわらず、配糖体を得ることができる。
【0138】
代表的な式(C’)で表される化合物は、下記式(C’1)で表される化合物、下記式(C’2)で表される化合物[すなわち、ASuがアシル化されたD−グルコース又はD−ガラクトース、R
1がアシル基である化合物(ペンタ−O−アシル−D−グルコース、ペンタ−O−アシル−D−ガラクトース)]などが含まれる。
【0139】
【化32】
(式中、波線はα体、β体又はその混合物を示し、R
1は前記と同じ。)
【0140】
(式(C’)で表される化合物の製造方法)
式(C’)で表される化合物は、糖とアシル化剤とを反応させることで得ることができる。
【0141】
糖としては、前記例示の糖(例えば、グルコース、ガラクトースなどの単糖)などが挙げられる。なお、糖は、α体、β体、これらの混合物のいずれであってもよい。
【0142】
アシル化剤としては、基R
1に対応するアシル化剤、例えば、酸無水物(例えば、無水酢酸など)、酸ハライド(例えば、酢酸クロリドなど)などが挙げられる。アシル化剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0143】
アシル化剤の使用割合は、糖のすべてのヒドロキシル基をすべてアシル化(アシルエステル化)できる範囲であればよく、例えば、糖のヒドロキシル基1モルに対して1モル以上(例えば、1〜5モル、好ましくは1.2〜3モル)であってもよい。
【0144】
なお、反応は、アシル化剤の種類などに応じて、無溶媒中で行ってもよく、溶媒(前記溶媒など)中で行ってもよい。
【0145】
糖とアシル化剤との反応は、塩基[例えば、弱酸の塩(酢酸ナトリウムなど)、水酸化物(水酸化ナトリウムなど)]、酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸など)などの存在下で行ってもよい。
【0146】
また、反応は、加温下又は還流下で行ってもよい。また、反応は、撹拌下で行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよい。
【0147】
反応時間は、特に限定されないが、例えば、1分以上(例えば、2分〜48時間)、好ましくは3分以上(例えば、4分〜24時間)、さらに好ましくは5分以上(例えば、10分〜12時間)程度であってもよい。なお、薄層クロマトグラフィー(TLC)などの慣用の方法を用い、反応の進行を確認してもよい。
【0148】
なお、反応混合物(式(C’)で表される化合物を含む混合物)は、分離(又は回収)することなく、そのまま、後述の脱アシル化反応に供してもよく、分離(又は回収)してもよい。
【0149】
反応混合物からの分離(又は精製)には、慣用の方法(例えば、濾過、抽出、濃縮、洗浄、吸着、膜分離、クロマトグラフィーなど)を利用できる。
【0150】
上記のようにして、式(C’)で表される化合物が得られる。糖として、α体とβ体の混合物を用いる場合(さらには、α体又はβ体のみを用いる場合)には、式(C’)で表される化合物においてもα体とβ体との混合物が得られる。
【0151】
なお、このような混合物は、再結晶などの方法により、α体とβ体とを分離することもできるが、本発明では、このような分離を行うことなく、混合物をそのまま後述の脱アシル化に供することができる。
【0152】
(脱アシル化工程)
式(C’)で表される化合物の脱アシル化(脱アシル化反応)は、通常、塩基を用いて(又は塩基と反応させて)行うことができる。
【0153】
塩基としては、アミン類、ヒドラジド(酢酸ヒドラジドなどのカルボン酸ヒドラジド)などを好適に用いてもよい。アミン類としては、前記例示のアミン類(例えば、第2級アミン)などが挙げられる。アミン類として、N−モノ置換ピペラジン(1−アルキルピペラジンなど)などの第3級アミノ基を有する第2級アミンを用いると、前記と同様に、酸洗浄により容易に生成物(式(C’’)で表される化合物)を回収(精製)しやすい。
【0154】
脱アシル化において、塩基の量は、塩基の種類等に応じて選択でき、例えば、式(C’)で表される化合物に対して、0.5モル当量以上(例えば、0.7〜10モル当量)、0.8モル当量以上(例えば、0.9〜5モル当量)、好ましくは1モル当量以上(例えば、1〜3モル当量)程度であってもよい。
【0155】
脱アシル化は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、脱アシル化を阻害しない溶媒であれば特に限定されず、前記例示の溶媒などが使用できる。
【0156】
反応は、常温(又は室温)下、冷却下、又は加温下で行ってもよい。
また、反応は、撹拌下で行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよい。
【0157】
反応時間は、特に限定されないが、例えば、1分以上(例えば、2分〜72時間)、好ましくは5分以上(例えば、10分〜48時間)、さらに好ましくは30分以上(例えば、1〜36時間)程度であってもよい。なお、薄層クロマトグラフィー(TLC)などの慣用の方法を用い、反応の進行を確認してもよい。
【0158】
上記のようにして、式(C’’)で表される化合物が得られる。反応混合物(式(C’’)で表される化合物を含む混合物)は、分離(又は回収)することなく、そのまま、後述の反応に供してもよく、分離(又は回収)してもよい。
【0159】
反応混合物からの分離(又は精製)には、慣用の方法(例えば、濾過、抽出、濃縮、洗浄、吸着、膜分離、クロマトグラフィーなど)を利用できる。特に、脱アシル化による副生成物(カルボン酸アミドなど)は、前記のように、特定の塩基を用いると、抽出物からの酸洗浄により容易に分離除去しやすい。
【0160】
なお、代表的な式(C’’)で表される化合物は、下記式(C’’1)で表される化合物、下記式(C’’2)で表される化合物(すなわち、ASuがアシル化されたD−グルコース又はD−ガラクトースである化合物)などが含まれる。
【0161】
【化33】
(式中、波線はα体、β体又はその混合物を示し、R
1は前記と同じ。)
【0162】
(脱離基導入工程)
脱離基導入工程では、式(C’’)で表される化合物と、脱離基Xに対応する化合物とを反応させる。
【0163】
脱離基Xに対応する化合物としては、前記脱離基を式(C’’)で表される化合物と反応して脱離基Xを導入できる化合物であればよく、例えば、イミダート基導入剤(例えば、トリクロロアセトニトリルなど)、カーボネート基導入剤(例えば、クロロギ酸2,2,2−トリクロロエチル(TrocCl)など)、ハロゲン導入剤(例えば、塩化水素、臭化水素などのハロゲン化水素)などが挙げられる。
【0164】
脱離基Xに対応する化合物の使用割合は、例えば、式(C’’)で表される化合物1モルに対して、1モル以上(例えば、1〜5モル、好ましくは1.2〜3モル)であってもよい。
【0165】
反応は、脱離基Xに対応する化合物の種類などに応じて、塩基の存在下で行ってもよい。塩基(又は塩基触媒)としては、前記例示の塩基、例えば、アミン(第2級アミンなど)、ピリジン類、炭酸塩などが挙げられる。
【0166】
塩基の使用割合は、例えば、式(C’’)で表される化合物1モルに対して、0.01モル当量以上(例えば、0.05〜3モル当量、好ましくは0.1〜2モル当量、さらに好ましくは0.2〜1.5モル当量)であってもよい。
【0167】
反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されず、前記例示の溶媒(例えば、ハロゲン化炭化水素類)などが使用できる。
【0168】
反応は、常温(又は室温)下、冷却下、又は加温下で行ってもよい。
また、反応は、撹拌下で行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよい。
【0169】
反応時間は、特に限定されないが、例えば、1分以上(例えば、2分〜72時間)、好ましくは5分以上(例えば、10分〜48時間)、さらに好ましくは30分以上(例えば、1〜36時間)程度であってもよい。なお、薄層クロマトグラフィー(TLC)などの慣用の方法を用い、反応の進行を確認してもよい。
【0170】
上記のようにして、式(C)で表される化合物が得られる。反応混合物(式(C)で表される化合物を含む混合物)は、分離(又は回収)することなく、そのまま、後述の反応(グリコシド反応)に供してもよく、分離(又は回収)してもよい。
反応混合物からの分離(又は精製)には、慣用の方法(例えば、濾過、抽出、濃縮、洗浄、吸着、膜分離、クロマトグラフィーなど)を利用できる。
【0171】
<グルコシル化工程>
グリコシル化工程では、式(B)で表される化合物と、式(C)で表される化合物とを反応させて式(D)で表される化合物を得る。なお、反応に用いる式(C)で表される化合物は、前記と同様に、α体、β体、これらの混合物のいずれであってもよい。
【0172】
グリコシル化工程において、式(B)で表される化合物と式(C)で表される化合物との使用割合は、例えば、式(B)で表される化合物/式(C)で表される化合物(モル比)=1/0.5〜1/2、好ましくは1/0.7〜1/1.5、さらに好ましくは1/0.8〜1/1.2程度であってもよい。
【0173】
グリコシル化工程は、特に、酸(酸触媒)の存在下で行ってもよい。式(B)で表される化合物は酸に対して安定であるため、本発明では、酸存在下でのグリコシル化反応が可能である。そのため、高い反応効率でグリコシル化できる。
【0174】
酸としては、プロトン酸{例えば、無機酸[例えば、ハロゲン化水素(塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素など)、硫酸、硝酸、リン酸など]、有機酸[例えば、カルボン酸類(例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸など)、スルホン酸類(例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸)]など}、スルホン酸エステル類(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルなどのトリフラート類)、ルイス酸{例えば、ホウ素錯体[例えば、三フッ化ホウ素錯体(例えば、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素モノアルキルアミン錯体、三フッ化ホウ素水和物など)]などの非金属錯体;金属アルコシド[例えば、アルミニウムアルコキシド(トリエトキシアルミニウムなど)、チタンアルコキシド(テトラエトキシチタンなど)、ジルコニウムアルコキシド(テトラブトキシジルコニウムなど)など]、金属ハロゲン化物(例えば、塩化鉄、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、テトラクロロチタン)、金属トリフラート、金属アセチルアセトナトなどの金属錯体(又は金属化合物)など}などが挙げられる。酸は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0175】
酸の使用割合は、酸の種類等に応じて適宜選択できるが、例えば、式(B)で表される化合物(又は式(C)で表される化合物)1モルに対して、0.001モル当量以上(例えば、0.001〜2モル当量、好ましくは0.005〜1モル当量、さらに好ましくは0.01〜0.5モル当量)であってもよく、通常0.001〜0.3モル当量(例えば、0.01〜0.2モル当量)であってもよい。
【0176】
反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されず、前記例示の溶媒(例えば、ハロゲン化炭化水素類)などが使用できる。
【0177】
反応は、常温(又は室温)下、冷却下、又は加温下で行ってもよい。特に、本発明では、酸触媒を使用できるため、非加熱下(常温又は冷却下)で反応しても、効率よくグリコシル化反応を進行できる。そのため、本発明では、例えば、40℃以下(例えば、−20℃〜35℃)、好ましくは30℃以下(例えば、−10℃〜25℃)程度の反応温度で反応させてもよい。
【0178】
また、反応は、撹拌下で行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよい。
【0179】
反応時間は、特に限定されないが、例えば、1分以上(例えば、2分〜48時間)、好ましくは5分以上(例えば、10分〜24時間)、さらに好ましくは20分以上(例えば、30分〜12時間)程度であってもよい。なお、薄層クロマトグラフィー(TLC)などの慣用の方法を用い、反応の進行を確認してもよい。
【0180】
上記のようにして、式(D)で表される化合物が得られる。反応混合物(式(D)で表される化合物を含む混合物)は、分離(又は回収)することなく、そのまま、後述の反応に供してもよく、分離(又は回収)してもよい。
【0181】
反応混合物からの分離(又は精製)には、慣用の方法(例えば、濾過、抽出、濃縮、洗浄、吸着、膜分離、クロマトグラフィーなど)を利用できる。
【0182】
特に、グリコシド反応の副生成物(例えば、トリクロロアセトアミドなど)を除去するため、反応混合物をアルカリ洗浄してもよい。
【0183】
また、反応混合物に、未反応の脱離基Xに対応する化合物(例えば、トリクロロアセトニトリルなど)が含まれる場合には、再結晶[例えば、アルコール(メタノールなど)中での再結晶]により、生成物(式(D)で表される化合物)を分離(精製)してもよい。
なお、前記の通り、式(C)で表される化合物は、α体、β体、これらの混合物のいずれであってもよいが、これらのいずれを使用した場合においても、通常、1,2−トランス体の式(D)で表される化合物を得ることができる。
【0184】
代表的な式(D)で表される化合物には、下記式(D1)で表される化合物、下記式(D2)で表される化合物(すなわち、ASuがアシル化されたD−グルコース又はD−ガラクトースである化合物)などが含まれる。
【0185】
【化34】
(式中、R
1及びR
2は前記と同じ。)
【0186】
<脱離工程>
脱離工程では、式(D)で表される化合物の基R
1及び基R
2を脱離させる。脱離(脱離反応)は、基R
1と基R
2との脱離の順序は特に限定されず、基R
1及び基R
2のいずれか一方の基を脱離した後、他方の基を脱離してもよく、基R
1及びR
2を同時に(又は同一反応系)において脱離してもよい。
【0187】
特に、基R
2を脱離した後に、基R
1を脱離してもよい。このような順序で脱離させると、副生成物(又は不純物)の生成等を効率よく抑えることができるようである。
【0188】
[基R
2の脱離(水素化処理工程)]
式(D)で表される化合物において、基R
2の脱離方法は、特に限定されないが、例えば、式(D)で表される化合物を水素化処理(水素化分解)する方法が挙げられる。
【0189】
水素化処理は、式(D)で表される化合物を水素(水素ガス)と反応(接触)させることで行うことができる。
【0190】
水素化処理は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、金属触媒(又は金属錯体)、例えば、パラジウム、ニッケル、ルテニウム、イリジウム、白金、ロジウムなどの遷移金属を含む触媒[特に、パラジウム/炭素などの貴金属(特に白金族金属)触媒]などが挙げられる。
【0191】
また、水素化処理は、反応を促進するため、酸の存在下で行ってもよい。酸としては、前記例示の酸、例えば、カルボン酸類(例えば、酢酸など)など挙げられる。
【0192】
反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されず、前記例示の溶媒(例えば、エーテル類、アルコール類)などが使用できる。
反応は、常温(又は室温)下、冷却下、又は加温下で行ってもよい。また、反応は、撹拌下で行ってもよい。
【0193】
反応時間は、特に限定されないが、例えば、10分以上(例えば、30分〜10日)、好ましくは1時間以上(例えば、2時間〜5日)、さらに好ましくは3時間以上(例えば、5〜36時間)程度であってもよい。なお、薄層クロマトグラフィー(TLC)などの慣用の方法を用い、反応の進行を確認してもよい。
【0194】
上記のようにして、生成物が得られる。反応混合物(例えば、生成物を含む混合物)は、分離(又は回収)することなく、そのまま、後述の反応に供してもよく、分離(又は回収)してもよい。
反応混合物からの分離(又は精製)には、慣用の方法(例えば、濾過、抽出、濃縮、洗浄、吸着、膜分離、クロマトグラフィーなど)を利用できる。
【0195】
なお、基R
1の脱離を基R
2の脱離よりも先に行う場合、生成物として、下記式(E)で表される化合物が得られる。
【0196】
【化35】
(式中、R
1及びASuは前記と同じ。)
【0197】
特に、代表的な式(E)で表される化合物には、下記式(E1)で表される化合物、下記式(E2)で表される化合物(すなわち、ASuがアシル化されたD−グルコース又はD−ガラクトースである化合物)などが含まれる。
【0198】
【化36】
(式中、R
1は前記と同じ。)
【0199】
[基R
1の脱離(脱アシル化工程)]
式(D)で表される化合物(又は式(E)で表される化合物)において、基R
1の脱離(脱アシル化)方法は、特に限定されないが、例えば、式(D)で表される化合物を、塩基を用いて脱アシル化することで行うことができる。
【0200】
塩基としては、例えば、弱酸の塩(例えば、炭酸塩(例えば、炭酸カリウムなどの前記例示の炭酸塩))、アミン(前記例示のアミンなど)、水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物)などが挙げられる。塩基は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0201】
脱アシル化は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、脱アシル化を阻害しない溶媒であれば特に限定されず、前記例示の溶媒(例えば、アルコールなど)などが使用できる。
【0202】
反応は、常温(又は室温)下、冷却下、又は加温下で行ってもよい。
また、反応は、撹拌下で行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよい。
【0203】
反応時間は、特に限定されないが、例えば、1分以上(例えば、2分〜72時間)、好ましくは5分以上(例えば、10分〜48時間)、さらに好ましくは30分以上(例えば、1〜36時間)程度であってもよい。なお、薄層クロマトグラフィー(TLC)などの慣用の方法を用い、反応の進行を確認してもよい。
【0204】
上記のようにして、式(1)で表される化合物が得られる。なお、使用する塩基の種類や、精製方法によっては、式(1)で表される化合物が、塩(例えば、アルカリ金属塩)などの誘導体の形態で得られる場合がある。
反応混合物からの式(1)で表される化合物の分離(又は精製)には、慣用の方法(例えば、濾過、抽出、濃縮、洗浄、吸着、膜分離、クロマトグラフィーなど)を利用できる。
【0205】
なお、式(1)で表される化合物の誘導体は、慣用の方法により得ることができる。例えば、塩は、式(1)で表される化合物と、対応するアルカリ[例えば、アルカリ又はアルカリ土類金属水酸化物(水酸化ナトリウムなど)、アミン、アンモニアなど]と反応させることで得ることができる。また、アシル化物は、式(1)で表される化合物と、対応するアシル化剤(例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸などの酸無水物、酸ハライドなど)とを反応させることで得ることができる。
【0206】
<式(1)で表される化合物(又はその誘導体)の用途>
本発明の配糖体(すなわち、前記式(1)で表される化合物又はその誘導体)は、種々の用途に利用できる。なお、配糖体は、前記の方法で製造されたものであってもよい。
【0207】
このような配糖体は、組成物を構成してもよい。このような組成物(又は配糖体)の用途としては、例えば、飲食物、医薬、医薬部外品、化粧品などが挙げられる。
【0208】
飲食物(飲食品)としては、例えば、食品、飲料、調味料、機能食品(機能性食品)、健康食品、栄養補助食品、特定保健用食品、サプリメントなどが挙げられる。
具体的な飲食物としては、例えば、飴、トローチ、ガム、ヨーグルト、アイスクリーム、プディング、ゼリー、水ようかん、アルコール飲料、コーヒー飲料、ジュース、果実飲料、炭酸飲料、清涼飲料、牛乳、乳清飲料、乳酸菌飲料などが挙げられ、粉末[例えば、用時溶解用粉末(例えば、コーヒー、紅茶、ジュース、ヨーグルト、スープなどに溶解させる粉末、料理に混ぜて用いる粉末など)]であってもよい。
【0209】
医薬及び医薬部外品は、例えば、経口剤(例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、エキス剤など)、外用剤又は非経口剤(例えば、軟膏、眼軟膏、ローション、クリーム、貼付剤、坐剤、点眼剤、点鼻剤、注射剤など)などの形態であってもよい。外用剤は、皮膚用、非皮膚用のいずれであってもよく、皮膚用外用剤には、例えば、洗顔料、石鹸、口腔用ケア製品(洗口液、歯磨き粉など)、シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアクリーム、整髪料、ヘアトニック、育毛・羊毛料、化粧水、乳液、クリームなどが含まれる。
【0210】
なお、組成物は、ヒト用に限られず、動物用組成物[例えば、動物用飲食品(例えば、ペット用飲食物、家畜用飼料など)など]であってもよい。
【0211】
組成物の構成成分[前記配糖体以外の成分(他の成分)]としては、組成物の用途や形態に応じて適宜選択でき、例えば、糖類又は甘味料(ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、マンニトールなど)、酸味料(クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸など)、油脂(植物油、動物油など)、ロウ(ラノリン、ミツロウなど)、炭化水素(又はパラフィン、白色ワセリンなど)、脂肪酸、脂質(セラミドなど)、アルコール(エタノールなど)、多価アルコール(プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなど)、高級アルコール、エステル(グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなど)、アミノ酸、ペプチド又はタンパク質(コラーゲンペプチド、エラスチンペプチド、プロテオグリカン、カゼイン、ゼラチンなど)、セルロース、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル類)、デンプン(コーンスターチなど)、デンプン加工物(デキストリンなど)、ミネラル成分(カルシウム塩類など)、ビタミン類[ビタミンB類(ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウムなど)、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェノールなど]、アルギン酸塩(アルギン酸ナトリウムなど)、アラビアガム、カラギーナン、ペクチン、乳成分、果汁、コーヒー抽出物、寒天、界面活性剤、保湿剤、美白剤、色素、着色剤、顔料、栄養強化剤、香料、植物・動物抽出成分(例えば、オウゴン、メマツヨイグサ、さとうきびなどの植物原料から得られる抽出物又は粉砕物)、紫外線吸収剤、抗酸化剤(エリソルビン酸ナトリウムなど)、酸化防止剤、保存剤、防腐・殺菌剤、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸マグネシウムなど)、消臭成分[例えば、マスキング剤、吸着剤、多孔質材料、消臭剤(例えば、抗酸化剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、抗菌剤、マスキング・ハーモナージュ香料、エタノールアミンなど)など]、各種薬理作用を有する物質{例えば、自律神経調節作用を有する物質(交感神経作用物質、副交感神経作用物質など)、血圧低下作用を有する物質、抗肥満作用を有する物質[食欲抑制系刺激作用を有する物質、満腹中枢に作用する物質、エネルギー代謝に関与する物質(例えば、β3受容体作用物質、エネルギー消費促進作用を有する物質)など]}などが挙げられる。
これらの他の成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0212】
組成物において、本発明の配糖体の割合は、組成物の用途や形態に応じて適宜選択でき、例えば、固形分(又は乾燥重量)換算で、0.0001〜90重量%、好ましくは0.0005〜50重量%、さらに好ましくは0.001〜10重量%程度であってもよい。
【0213】
なお、組成物の用量は、対象年齢、体重、健康状態などに応じて適宜選択できるが、例えば、本発明の配糖体のヒト成人1日あたりの摂取量は、1〜5000mg、好ましくは10〜3000mg、さらに好ましくは30〜1000mg程度であってもよい。
【0214】
なお、組成物は、前記配糖体と他の成分とを混合することにより製造できる。また、混合とともに、公知の方法を利用して、種々の形態に成形することもできる。
【0215】
例えば、組成物の形態が、粉末である場合、常用の賦形剤(例えば、デキストリン、高分子澱粉加水分解物、高分子ペプチドなど)を用いて乾燥粉体化してもよい。
【0216】
また、医薬品や医薬部外品を調製する場合には、配糖体と他の成分とを混合し、各種剤形の医薬品として調製することができる。なお、各種剤形の調製に用いる他の成分には特に制限はなく、通常用いられているものを使用することができるが、その例としては、デンプン、乳糖、白糖、マンニトール、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等の固形担体;蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノール等のアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの液体担体;各種の動植物油、白色ワセリン、パラフィン、ロウ類等の油性担体などを挙げることができる。
【0217】
さらに、配糖体と食用素材とを混合して粉末、顆粒、ペレット、錠剤などの形状に加工したり、常法により前記例示の飲食品に加工処理したり、これらを混合した液状物をゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースなどの被膜剤で被膜してカプセルを成形したり、飲料(ドリンク類)の形態に加工することができる。
【0218】
具体的な組成物の例を以下に示す。なお、以下の例において、配糖体としては、例えば、前記式(1A)で表される化合物や前記式(1B)で表される化合物などを用いることができる。
【0234】
【表16】
なお、上記用時溶解用粉末は、水、果汁又はコンソメスープに溶解すると、いずれも分散性に優れ、得られた飲料は、用時溶解飲料として適切である。
また、ソフトカプセル剤(ゼラチン60.0%、グリセリン30.0%、パラオキシ安息香酸メチル0.15%、パラオキシ安息香酸プロピル0.51%、及び適量の水からなる剤)皮の中に、上記用時溶解用粉末を常法により充填することで、ソプトカプセルが得られる。
【0235】
【表17】
なお、上記錠剤は、上記に示す配合の混合物を常法により造粒ならびに成型することで得られる。
【実施例】
【0236】
以下に本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0237】
実施例1(2,5,6−トリ−O−アセチル−アスコルビン酸の合成)
下記工程を経て、2,5,6−トリ−O−アセチル−アスコルビン酸(化合物3)を得た。
【0238】
【化37】
(式中、Acはアセチル基、Etはエチル基を示す。)
【0239】
化合物1(アスコルビン酸)(10.00g,57mmol)を無水酢酸(25mL,250mmol)に懸濁し、120℃に加熱した。激しく発熱しながら溶けるので、溶けてから30分加熱還流した。冷却してメタノール5mLを加えて反応を終了させた。溶媒を減圧留去し、残渣にトルエンを加えて減圧留去する操作を3回行い、油状の化合物2を得た。
【0240】
(化合物2)
1H−NMR(CDCl
3):2.06(3H,s),2.09(3H,s),2.26(3H,s),2.28(3H,s),4.31(1H,dd,J=7.3,11.6Hz),4.40(1H,dd,J=5.6,11.6Hz),5.39(1H,d,J=1.6Hz),5.48(1H,ddd,J=1.6,5.6,7.3Hz).
13C−NMR(CDCl
3):20.05,20.34,20.62,62.03,66.36,74.91,122.05,149.82,164.78,165.08,166.12,170.00,170.28.
HRMS(ESI,M+H
+)calcd for C
14H
17O
10 345.0822, found 345.0813.
【0241】
得られた化合物2を塩化メチレン80mLに溶かし、室温にて1−エチルピペラジン(7.2mL,57mmol)および塩化メチレン20mLを5分で滴下し、30分撹拌した。酢酸エチルで希釈し、1N塩酸(1回)、飽和食塩水(2回)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去して油状の化合物3(16.4g,95%)を得た。
【0242】
(化合物3)
1H−NMR(CDCl
3):2.05(3H,s),2.06(3H,s),2.29(3H,s),4.27(1H,dd,J=6.9,11.6Hz),4.37(1H,dd,J=5.4,11.6Hz),4.99(1H,d,J=1.6Hz),5.46(1H,ddd,J=1.6,5.4,6.9Hz).
13C−NMR(CDCl
3):20.30,20.42,20.58,61.94,67.29,74.12,114.78,157.13,166.87,169.74,169.88,170.68.
HRMS (ESI,M+H
+)calcd for C
12H
15O
9 303.0716, found 303.0708.
【0243】
実施例2(3−O−ベンジル−5,6−ジ−O−アセチル−アスコルビン酸の合成)
下記工程を経て、3−O−ベンジル−5,6−ジ−O−アセチル−アスコルビン酸(化合物5)を得た。
【0244】
【化38】
(式中、Acはアセチル基、Bnはベンジル基、Etはエチル基を示す。)
【0245】
実施例1で得られた化合物3(9.32g,30mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)90mLに溶かし、アルゴン雰囲気下でハイドロサルファイトナトリウム(13.1g,75mmol),炭酸カリウム(7.45g,54mmol)を加えて懸濁させた。室温で臭化ベンジル(5.34mL,45mmol)を加え、オイルバスで60℃で20分加熱した(化合物4の生成)。化合物4の生成は、TLC(酢酸エチル/ヘキサン=1/1)にて確認した。
【0246】
(化合物4)
1H−NMR(CDCl
3):2.04(3H,s),2.07(3H,s),2.22(3H,s),4.28(1H,dd,J=7.0,11.5Hz),4.33(1H,dd,J=6.0,11.5Hz),4.91(1H,d,J=1.5Hz),5.15(1H,d,J=11.1Hz),5.26(1H,d,J=11.1Hz),5.43(1H,ddd,J=1.5,6.0,7.0Hz),7.33−7.42(5H,m).
【0247】
室温まで冷却し、1−エチルピペラジン(5.7mL,45mmol)を加えて1時間撹拌した。不溶物をセライト濾過し、濾液を酢酸エチルで希釈し、1N塩酸(1回)、飽和食塩水(2回)で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去して得られた油状残渣をシリカゲルカラム(酢酸エチル/ヘキサン=1/2〜1/1)で精製し、黄色油状の化合物5(6.05g,58%)を得た。
【0248】
(化合物5)
1H−NMR(CDCl
3):1.94(3H,s),2.04(3H,s),4.24(1H,dd,J=6.8,11.6Hz),4.33(1H,dd,J=5.4,11.6Hz),4.84(1H,d,J=2.4Hz),5.37(1H,ddd,J=2.4,5.4,6.8Hz),5.42(1H,d,J=11.6Hz),5.45(1H,d,J=11.6Hz),6.35(1H,bs),7.35−7.43(5H,m).
13C−NMR(CDCl
3):20.39,20.59,62.05,67.56,73.48,74.47,119.50,128.39,128.64,128.81,135.34,147.59,169.54,170.44,170.87.
HRMS(ESI,M+H
+)calcd for C
17H
19O
8 341.1080, found 351.1076.
【0249】
実施例3(グルコースペンタアセテートの合成)
下記工程を経て、D−グルコースペンタアセテート(化合物7)を得た。
【0250】
【化39】
(式中、Acはアセチル基を示す。)
【0251】
無水酢酸(25mL,264mmol)に酢酸ナトリウム(1.14g,13.9mmol)を懸濁し、緩やかに加熱還流させた。D−グルコース(α体/β体の混合物)(化合物6)(5.00g,27.8mmol)を15分間かけて段階的に加えた。加え終わってからさらに15分間加熱還流させた後、室温まで冷却した。氷片を加えて反応をクエンチした後、溶媒を減圧留去した。得られた白色固体残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和重曹水(1回)、飽和食塩水(2回)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去して白色固体の化合物7(10.42g,96%)を得た。化合物7の生成は、NMRにて確認した。
【0252】
実施例4(グルコーステトラアセテート及びそのイミダート体の合成)
下記工程を経て、D−グルコーステトラアセテート(化合物8)及びそのイミダート体を得た。
【0253】
【化40】
(式中、Acはアセチル基を示す。)
【0254】
実施例3で得られたグルコースペンタアセテート(化合物7)(11.7g,30mmol)の塩化メチレン溶液(60mL)に氷冷下で1−エチルピペラジン(5.7mL,45mmol)を加えた後、室温で一晩撹拌した。酢酸エチルで希釈して、2N塩酸(1回)、飽和食塩水(2回)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去して得られた化合物8(TLC(酢酸エチル/ヘキサン=1/1)にて生成を確認)を塩化メチレン溶液(60mL)に溶解し、室温で炭酸カリウム(2.07g,15mmol)とトリクロロアセトニトリル(6.45g,45mmol)を加えて一晩撹拌した。不溶物を濾過し、濾液を酢酸エチルで希釈して飽和食塩水(2回)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去して黄色油状のイミダート体(化合物9)(13.8g,93%、α体及びβ体の混合物)を得た。
【0255】
(化合物9)
1H−NMR(CDCl
3):(異性体の6:1混合物のため主要な異性体)2.01(3H,s),2.02(3H,s),2.04(3H,s),2.07(3H,s),4.12(1H,dd,J=1.9,12.4Hz),4.20(1H,ddd,J=1.9,4.0,10.2Hz),4.27(1H,dd,J=4.0,12.3Hz),5.13(1H,dd,J=3.7,10.2Hz),5.18(1H,dd,J=9.9,9.9Hz),5.56(1H,dd,J=9.9,9.9Hz),6.55(1H,d,J=3.7Hz),8.69(1H,s).
13C−NMR(CDCl
3):20.40,20.54,20.63,61.53,67.73,69.67,69.82,69.96,92.85,160.74,169.46,169.81,169.96,170.52.
【0256】
実施例5(グリコシル化)
下記工程の通り、化合物5と化合物9との反応(グリコシル化反応)を行った。
【0257】
【化41】
(式中、Acはアセチル基、Bnはベンジル基、Etはエチル基を示す。)
【0258】
実施例2で得られた化合物5(保護アスコルビン酸)(6.0g,17mmol)の塩化メチレン溶液(20mL)と、実施例4で得られた化合物9(イミダート体)(11.0g,22mmol)の塩化メチレン溶液(20mL)を混合し、氷冷下で三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(122mL,0.86mmol)を加え2時間撹拌した。なお、反応の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)(酢酸エチル/ヘキサン=1/1)にて確認した。飽和重曹水(2mL)を加えてクエンチし、酢酸エチルで希釈して、飽和重曹水(2回)、飽和食塩水(2回)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去して得られた油状残渣にメタノールを加えて再度溶媒を留去すると固体の化合物10(β体のみ)が得られた。メタノールから再結晶し、薄黄色結晶(9.22g,80%)を得た。
【0259】
(化合物10)
1H−NMR(CDCl
3):1.93(3H,s),1.997(3H,s),2.001(3H,s),2.015(3H,s),2.020(3H,s),2.11(3H,s),3.76(1H,ddd,J=2.2,4.2,10.0Hz),4.14(1H,dd,J=2.0,12.2Hz),4.21(1H,dd,J=6.7,11.7Hz),4.26−4.33(2H,m),4.84(1H,d,J=2.2Hz),5.12(1H,dd,J=9.7,9.7Hz),5.16(1H,dd,8.2,9.4Hz),5.25−5.36(4H,m),5.48(1H,d,J=11.5Hz),7.35(5H,m).
13C−NMR(CDCl
3):20.38,20.49,20.54,20.67,61.28,61.77,67.55,67.95,70.89,72.16,72.31,73.75,74.39,98.71,118.11,128.43,128.65,128.94,134.73,157.67,167.40,169.34,169.39,169.86,170.16,170.36.
HRMS(ESI,M+H
+)calcd for C
31H
37O
17 681.2031, found 681.2034.
【0260】
実施例6(脱ベンジル化)
下記工程の通り、化合物10の脱ベンジル化(水素化分解)を行った。
【0261】
【化42】
(式中、Acはアセチル基、Bnはベンジル基を示す。)
【0262】
実施例5で得られた化合物10(配糖体)(200mg,0.29mmol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(5mL)に酢酸0.5mLと10%Pd炭素(20mg)を加え、1気圧の水素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。触媒を濾去し、濾液を減圧濃縮し、化合物11を得た。
【0263】
(化合物11)
1H−NMR(CDCl
3):1.98(3H,s),2.02(3H,s),2.05(3H,s),2.09(3H,s),2.096(3H,s),2.101(3H,s),3.85(1H,m),4.21−4.24(2H,m),4.26(1H,dd,J=7.0,11.6Hz),4.37(1H,d,J=5.3,11.6Hz),4.91(1H,d,J=2.7Hz),5.01−5.10(3H,m),5.24(1H,dd,J=9.2,9.2Hz),5.39(1H,m).
HRMS(ESI,M+H
+)calcd for C
24H
31O
17 591.1561, found 591.1552.
【0264】
実施例7(脱アセチル化)
下記工程の通り、化合物11の脱アセチル化を行った。
【0265】
【化43】
(式中、Acはアセチル基、Meはメチル基を示す。)
【0266】
実施例6で得られた化合物11(脱ベンジル体)のメタノール溶液(3mL)に1MNaOH水溶液(2.24mL)を室温で滴下し、一晩撹拌した。陽イオン交換樹脂(ダウ・ケミカル社製、Dowex 50Wx8(H
+ form))をゆっくり加え、pH3に調整した。樹脂を濾過し、50%メタノール−水で洗いこんだ。濾液を減圧濃縮し、メタノールを除去した後、凍結乾燥して得た残渣を陽イオン交換樹脂(オルガノ社製、Amberlite FPC3500(Na
+ form))に付し、水で溶出した。溶出液を凍結乾燥し、化合物12(104mg、98%)を薄黄色アモルファスとして得た。
【0267】
(化合物12)
1H−NMR(100mM リン酸緩衝液/D
2O,pH7.0):3.38−3.58(4H,m),3.69−3.79(3H,m),3.86(1H,m),4.03(1H,m),4.56(1H,d,1.9Hz),4.72(1H,d,J=7.8Hz).
13C−NMR(100mM リン酸緩衝液/D
2O,pH7.0):60.38,62.30,69.23,69.44,72.78,75.37,76.12,78.39,103.13,114.60,176.92,179.27.
HRMS(ESI,M+H
+) calcd for C
12H
18O
11Na 361.0747, found 361.0722.
【0268】
実施例8(化合物5の単離なしグリコシド化)
実施例5では、単離した化合物5と化合物9とを反応させているが、以下のように、化合物3から合成される化合物5を単離(精製)することなく、化合物9との反応に供した。
【0269】
実施例1で得られた化合物3(1.50g,5.0mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)8mLに溶かし、アルゴン雰囲気下で炭酸カリウム(1.25g,9.0mmol)を加えて懸濁させた。室温で臭化ベンジル(0.90mL,7.5mmol)を加え、1時間撹拌した。さらに、室温で1−エチルピペラジン(1.2mL,75mmol)を加えて30分撹拌した。不溶物をセライト濾過し、濾液を酢酸エチルで希釈し、1N塩酸(1回)、飽和食塩水(2回)で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去して得られた油状残渣をクロロホルムに溶かし、シリカゲル15gを敷いたグラスフィルターに付し、酢酸エチル/ヘキサン(1/1混合液、100mL)で溶出した。濾液を濃縮し、DMFを留去するためにトルエンを加えて55℃で減圧濃縮する操作を3回繰り返した。
【0270】
得られた残渣の塩化メチレン溶液(2mL)と、実施例4で得られた化合物9(イミダート体の塩化メチレン溶液(2mL)を混合し、氷冷下で三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(30mL)を加え、1時間撹拌した。飽和重曹水(2mL)を加えてクエンチし、酢酸エチルで希釈して、飽和重曹水(2回)、飽和食塩水(2回)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去して得られた油状残渣にメタノールを加えて、薄黄色結晶(1.10g、33%)として化合物10を得た。母液を濃縮し、再度メタノールから結晶化させ、さらに、化合物10(0.24g、7%)を回収した(すなわち、合計で1.24g、40%)。
【0271】
グルコース以外の糖でも配糖体が得られることを確認すべく、以下の実験を行った。
【0272】
実施例9(ガラクトーステトラアセテート及びそのイミダート体の合成)
下記工程を経て、D−ガラクトーステトラアセテート(化合物14)及びそのイミダート体を得た。
【0273】
【化44】
(式中、Acはアセチル基を示す。)
【0274】
実施例3において、D−グルコースに替えてD−ガラクトースを用いたこと以外は同様にして、ガラクトースペンタアセテート(化合物13)を得た。
得られたガラクトースペンタアセテート(化合物13)(2.0g,5.0mmol)の塩化メチレン溶液(20mL)に氷冷下で1−エチルピペラジン(760μL,6.0mmol)を加えた後、室温で一晩撹拌した。酢酸エチルで希釈して、2N塩酸(1回)、飽和食塩水(2回)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去して得られた化合物14(TLC(酢酸エチル/ヘキサン=1/1)にて生成を確認)を塩化メチレン溶液(20mL)に溶解し、室温で炭酸カリウム(345mg,2.5mmol)とトリクロロアセトニトリル(1.1mL,7.5mmol)を加えて一晩撹拌した。不溶物を濾過し、濾液を酢酸エチルで希釈して飽和食塩水(2回)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去して黄色油状のイミダート体(化合物15)(1.98g,80%、α体/β体=約2/1の混合物)を得た。
【0275】
(化合物15)
1H−NMR(CDCl
3):1.99−2.04(9H,m),2.16(3Hx2/3,s),2.18(3Hx1/3,s),4.04−4.45(3H,m),5.10−5.57(3H,m),5.83(1Hx1/3,d,J=8.2Hz),6.59(1Hx2/3,d,J=3.4Hz),8.66(1Hx2/3,s),8.71(1Hx1/3,s).
【0276】
実施例10(グリコシル化)
下記工程の通り、化合物5と化合物15との反応(グリコシル化反応)を行った。
【0277】
【化45】
(式中、Acはアセチル基、Bnはベンジル基、Etはエチル基を示す。)
【0278】
実施例2で得られた化合物5(保護アスコルビン酸)(700mg,2.0mmol)の塩化メチレン溶液(10mL)と、実施例9で得られた化合物15(イミダート体)(1.08g,2.2mmol)の塩化メチレン溶液(10mL)を混合し、氷冷下で三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(30mL,0.1mmol)を加え1時間撹拌した。なお、反応の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)(メタノール/クロロホルム=1/20)にて確認した。飽和重曹水(2mL)を加えてクエンチし、酢酸エチルで希釈して、飽和重曹水(2回)、飽和食塩水(2回)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去して得られた油状残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール/クロロホルム=1/20)にて精製し、薄黄色結晶(1.10g,81%)の化合物16を得た。
【0279】
(化合物16)
1H−NMR(CDCl
3):1.94(3H,s),2.00(3H,s),2.033(3H,s),2.036(3H,s),2.14(3H,s),2.15(3H,s),3.98(1H,ddd,J=0.9,6.6,6.6Hz),4.12(1H,dd,J=6.5,11.3Hz),4.19(1H,dd,J=6.6,11.3Hz),4.23(1H,dd,J=6.8,11,6Hz),4.32(1H,dd,J=5.6,11.6Hz),4.85(1H,d,J=2.3Hz),5.10(1H,dd,J=3.5,10.3Hz),5.27(1H,d,J=8.0Hz),5.31−5.38(2H,m),5.39(1H,d,J=11.5Hz),5.44(1H,dd,J=0.9,3.3Hz),5.52(1H,d,J=11.5Hz),5.39(5H,m).
13C−NMR(CDCl
3):20.43,20.51,20.62,20.86,60.83,61.86,66.75,67.62,68.44,70.50,71.37,73.78,74.46,99.47,118.30,128.01,128.75,129.04,134.86,157.64,167.51,169.41,169.87,169.97,170.04,170.25,170.30.
HRMS(ESI,M+H
+)calcd for C
31H
37O
17 681.2031, found 681.2068.
【0280】
実施例11(脱ベンジル化)
下記工程の通り、化合物16の脱ベンジル化(水素化分解)を行った。
【0281】
【化46】
(式中、Acはアセチル基、Bnはベンジル基を示す。)
【0282】
実施例10で得られた化合物16(配糖体)(1.10g,1.6mmol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(20mL)に酢酸1mLと10%Pd炭素(50mg)を加え、1気圧の水素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。触媒を濾去し、濾液を減圧濃縮し、白色のアモルファスである化合物17を得た(840mg、88%)。
【0283】
(化合物17)
1H−NMR(CDCl
3):2.00(3H,s),2.07(3H,s),2.09(3H,s),2.10(3H,s),2.15(3H,s),2.18(3H,s),4.09(1H,dd,J=5.8,6.4Hz),4.19−4.23(2H),4.29(1H,dd,J=6.8,11.6Hz),4.40(1H,dd,J=5.2,11.6Hz),4.93(1H,d,J=2.8Hz),4.94(1H,d,J=8.3Hz),5.08(1H,dd,J=3.4,10.5Hz),5.34(1H,dd,J=8.2,10.5Hz),5.42−5.47(2H,m),8.76(1H,bs).
13C−NMR(CDCl
3):20.28,20.46,20.49,20.57,66.76,66.95,67.34,70.09,72.47,73.40,101.33,119.11,156.91,166.57,169.68,169.72,169.78,170.35.
HRMS(ESI,M+H
+)calcd for C
24H
31O
17 591.1561, found 591.1585.
【0284】
実施例12(脱アセチル化)
下記工程の通り、化合物17の脱アセチル化を行った。
【0285】
【化47】
(式中、Acはアセチル基、Meはメチル基を示す。)
【0286】
実施例11で得られた化合物17(脱ベンジル体)(500mg、0.85mmol)のメタノール溶液(10mL)に1MNaOH水溶液(6.8mL)を室温で滴下し、一晩撹拌した。陽イオン交換樹脂(ダウ・ケミカル社製、Dowex 50Wx8(H
+ form))をゆっくり加え、pH3に調整した。樹脂を濾過し、50%メタノール−水で洗いこんだ。濾液を減圧濃縮し、メタノールを除去した後、凍結乾燥し、化合物18(205mg、71%)を薄黄色アモルファスとして得た。
【0287】
(化合物18)
1H−NMR(100mM リン酸緩衝液/D
2O,pH7.0):3.62−3.82(7H,m),3.92(1H,bs),4.04(1H,dd,J=6.3,6.3Hz),4.56(1H,bs),4.67(1H,d,J=6.8Hz).
13C−NMR(100mM リン酸緩衝液/D
2O,pH7.0):60.89,62.30,68.50,69.42,70.59,72.47,75.44,78.38,103.73,114.73,176.95,179.16.
HRMS(ESI,M+H
+)calcd for C
12H
19O
11 339.0927, found 361.0903.
【0288】
実施例13(炭酸カリウムによる化合物2の脱アシル化)
実施例1で得られた化合物2(345mg)を、ジメチルホルムアミド(DMF)7mLに溶かし、室温にて炭酸カリウム(166mg,1.2mmol)を加えて1.5時間撹拌した。不溶物を濾去し、酢酸エチルで希釈し、1N塩酸(1回)、飽和食塩水(2回)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去して油状の化合物3(260mg,86%)を得た。
【0289】
実施例14(化合物3の3位配糖化)
下記の通り、化合物3の3位の配糖化を行った。
【0290】
【化48】
(式中、Acはアセチル基、Etはエチル基を示す。)
【0291】
実施例1で得られた化合物3(保護アスコルビン酸)(350mg,1.16mmol)の塩化メチレン溶液(20mL)と、実施例4で得られた化合物9(イミダート体)(680mg,1.39mmol)の塩化メチレン溶液(20mL)を混合し、氷冷下で三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(18μL,0.06mmol)の塩化メチレン溶液1mLを加え2時間撹拌した。なお、反応の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)(酢酸エチル/ヘキサン=1/1)にて確認した。飽和重曹水(2mL)を加えてクエンチし、酢酸エチルで希釈して、飽和重曹水(2回)、飽和食塩水(2回)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去して得られた油状残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/3)にて精製し、化合物19(391mg,62%)を得た。
【0292】
(化合物19)
1H−NMR(CDCl
3):1.97(3H,s),1.98(3H,s),2.01(3H,s),2.02(3H,s),2.03(3H,s),2.05(3H,s),2.25(3H,s),3.75(1H,ddd,J=3.2,5.7,8.1Hz),4.03(1H,dd,J=2.3,12.4Hz),4.22−4.27(3H,m),4.93(1H,d,J=1.4Hz),5.04(1H,dd,J=9.4,9.6Hz),5.10(1H,dd,J=7.6,9.4Hz),5.17−5.27(3H,m).
13C−NMR(CDCl
3):19.93,20.16,20.32,20.33,20.34.20.46,20.47,61.54,61.60,66.32,67.80,70.06,71.64,72.54,73.91,98.21,115.99,155.15,165.49,166.72,169.15,169.28,169.38,169.84,170.03,170.35.