(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1軸(41)と第2軸(43)とを同軸上に連結する弾性部材(42)のねじれ変位に基づき、前記第1軸と前記第2軸との間のねじれトルクを検出するトルク検出装置(10)において、
前記第1軸に固定される磁石(11)と、
前記第2軸に固定され、前記磁石に対して回動可能に配置される第1ヨーク(121,122)と、
前記第2軸に固定され、前記磁石に対して前記第1ヨークと共に回動可能に配置される第2ヨーク(121,122)と、
磁束を集める集磁部(13)と、
磁束密度を検出する磁気センサ(14)と、を備え、
前記集磁部は、前記第1ヨーク及び前記第2ヨークに対してそれぞれ対向するように配置されており、
前記磁気センサは、前記第1ヨーク及び前記第2ヨークのうち前記第1ヨークと前記集磁部との間に配置され、当該第1ヨークと前記集磁部との間における磁束密度を検出するように構成されており、
前記第1ヨークと前記第2ヨークは、軸方向において離間して配置され、かつ、径方向における軸心から外縁までの距離が異なるように設けられており、
前記集磁部は、
径方向において、軸心から外縁までの距離が短いヨークの径方向外側であって、かつ、軸心から外縁までの距離が長いヨークの外縁よりも内側に配置されるとともに、
軸方向において、一方の端部が前記第1ヨークと前記第2ヨークの間に配置され、他方の端部がいずれか一方のヨークよりも外側に配置されるトルク検出装置。
前記集磁部と前記第1ヨークとの間の距離、及び前記集磁部と前記第2ヨークとの間の距離は、いずれも前記第1ヨークと前記第2ヨークとの間の距離よりも短い請求項1に記載のトルク検出装置。
前記集磁部は、複数の対向箇所で前記第2ヨークと対向するように構成されており、当該複数の対向箇所は、前記第2ヨークに対して異なる方向から対向する請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のトルク検出装置。
前記集磁部から前記磁気センサの反対側に配置される第1ヨークまでの距離は、前記集磁部と前記第1ヨークとが対向する距離と比較して、短い請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のトルク検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付している。
【0014】
<ステアリングシステム100>
実施形態にかかるトルク検出装置10について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、トルク検出装置10は、例えば、車両のステアリング操作を補助するための電動パワーステアリング装置20を備えたステアリングシステム100に用いられる。
【0015】
ハンドル30は、ステアリングシャフト40と接続される。
図2に示すように、ステアリングシャフト40は、ハンドル30と接続される第1軸としての入力軸41と、入力軸41に連結されるトーションバー42と、トーションバー42を介して入力軸41と連結される第2軸としての出力軸43を有する。
【0016】
トーションバー42は、一端側が入力軸41に、他端側が出力軸43にそれぞれ固定ピン44により固定され、入力軸41と出力軸43とを同軸上に連結する。トーションバー42は、棒状の弾性部材であり、ステアリングシャフト40に加えられるねじれトルクに応じて、ねじれ変位し、弾性力を蓄える。
図1に示すように、入力軸41と出力軸43との間には、トーションバー42(すなわち、ステアリングシャフト40)に加わるねじれトルクを検出するトルク検出装置10が設けられている。
【0017】
出力軸43の先端には、ピニオンギヤ50が設けられており、ピニオンギヤ50はラック軸51にかみ合わされている。ラック軸51の両端には、タイロッド等を介して、一対の車輪52が連結されている。これにより、ドライバがハンドル30を回転させると、ハンドル30に接続されたステアリングシャフト40が回転する。ステアリングシャフト40が回転すると、ピニオンギヤ50によってラック軸51が左右方向に直線運動する。そして、ラック軸51の変位量に応じて、一対の車輪52が操舵される。
【0018】
電動パワーステアリング装置20は、ドライバによるハンドル30の操舵を補助する補助トルクを出力するモータ21と、減速ギヤ22と、制御装置23等を備える。減速ギヤ22は、モータ21の回転を減速してステアリングシャフト40に伝達する。本実施形態では、コラムアシストタイプであるが、モータ21の回転をピニオンギヤ50に伝えるピニオンアシストタイプや、モータ21の回転をラック軸51に伝えるラックアシストタイプでもよい。制御装置23は、トルク検出装置10からねじれトルクを示す電圧信号を入力し、取得した電圧信号に応じてモータ21の駆動を制御する。
【0019】
なお、以下では、単に軸方向と示した場合には、ステアリングシャフト40(入力軸41、トーションバー42、及び出力軸43も含む。以下同様)の軸方向のことを意味する。また、単に径方向と示した場合には、ステアリングシャフト40の径方向のことを意味し、単に周方向と示した場合には、ステアリングシャフト40の周方向のことを意味する。また、図では、ステアリングシャフト40の軸方向を矢印Zで示し、径方向を矢印Xで示し、周方向を矢印Yで示す。
【0020】
<トルク検出装置10>
図2に示すように、トルク検出装置10は、入力軸41に固定される磁石11と、出力軸43に固定される1対の磁気ヨーク12と、磁気ヨーク12から磁束を集める集磁部13と、磁束密度を検出する磁気センサ14等を備える。
【0021】
<磁石11>
磁石11は、硬磁性体により円筒状に形成される。磁石11の外周には、N極とS極とが周方向に交互に着磁される。本実施形態では、周方向において、N極及びS極の数は、8対、計16極である。すなわち、磁石11は、N極とS極とが周方向に磁極ピッチに応じた所定角度(22.5度)ごとに交互に着磁される。磁石11の磁極数は、16極に限らず、偶数であればよい。この磁石11は、入力軸41に同軸上に固定される。
【0022】
<磁気ヨーク12>
図2及び
図3に示すように、一対の磁気ヨーク12は、軸方向において離間した状態で配置される。なお、一対の磁気ヨーク12を樹脂モールド(樹脂成形)することによって、又は非磁性体のスペーサなどによって磁気ヨーク12間の配置が固定される。ここで、入力軸41側に配置される磁気ヨーク12をヨーク121と示し、出力軸43側に配置される磁気ヨーク12をヨーク122と示す。
【0023】
<ヨーク121,122>
ヨーク121,122について詳しく説明する。ヨーク121,122は、共に軟磁性体(例えば、パーマロイ)により環状に形成される。
図2に示すように、ヨーク121,122は、出力軸43に同軸上に固定される。ヨーク121は、その内縁に爪部151を備える。ヨーク122も同様に、その内縁に爪部152を備える。なお、ヨーク121と、ヨーク122は、対称となるように設けられている。
【0024】
図5に示すように、ヨーク121,122の内径は、磁石11の外径よりも大きく形成されている。このため、ヨーク121,122は、磁石11と離間し、非接触となる。出力軸43に固定されるヨーク121,122は、入力軸41に固定される磁石11に対して周方向に回動可能に配置されている。
図6は、
図5(b)のI−I線切断部端面図である。
図4及び
図6に示すように、ヨーク121の外径は、ヨーク122の外径と同じである。また、ヨーク121の内径と、ヨーク122の内径は同じである。
【0025】
図6に示すように、ヨーク121,122は、薄板状に形成され、軸方向に対して直交方向に延びるように設けられている。そして、ヨーク121,122は、磁石11の外周を囲むように配置される。すなわちヨーク121,122は、径方向において磁石11の外側に配置される。
【0026】
<爪部151,152>
次に、爪部151,152について説明する。
図5に示すように、爪部151,152は、磁石11の極対数と同数(本実施形態では8)設けられている。爪部151,152は、それぞれヨーク121,122の内縁に沿って等間隔に設けられる。つまり、爪部151,152は、磁石11の磁極ピッチに応じて複数設けられている。ヨーク121の爪部151と、ヨーク122の爪部152とは、周方向にずれて交互に配置されている。なお、爪部151,152の数は、磁石11の極対数と異なっていてもよい。
【0027】
爪部151,152は、磁石11の外周と対向するように配置されている。
図5(b)に示すように、トーションバー42にねじれ変位が生じていない場合、すなわち、ステアリングシャフト40にねじれトルクが加わっていない場合、各爪部151,152の中心と、磁石11のN極とS極の境界とが一致するように配置されている。なお、磁石11と磁気ヨーク12は、非接触である。
【0028】
図4及び
図6に示すように、ヨーク121の爪部151は、軸方向において、ヨーク121からヨーク122側に向かって延びるように設けられている。ヨーク122の爪部152も同様に、軸方向において、ヨーク122からヨーク121側に向かって延びるように設けられている。爪部151,152は、ヨーク121,122に対して直交するように立設しており、その先端側が根元部分よりも細くなるように形成されている。また、爪部151,152は、磁石11の外周から、距離を空けて配置されている。
【0029】
図5に示すように、ヨーク121の爪部151は、ヨーク121の内縁に沿って周方向において45度間隔で配置されている。ヨーク122の爪部152も同様である。ヨーク121は、ヨーク122に対して、爪部151,152が22.5度間隔で交互に配置されるように位置決めされる。周方向において、爪部151,152の間には、隣り合う爪部151,152と接触しないように隙間が存在する。また、爪部151,152は、他方の磁気ヨーク12と接触しないように距離を空けている。
【0030】
<集磁部13>
図3及び
図4に示すように、集磁部13は、一対の磁気ヨーク12の間に配置される。集磁部13は、軟磁性体(例えば、パーマロイ)により円弧状に形成される。集磁部13は、円弧の中心が出力軸43と同軸上になるように、出力軸43側に固定される。
【0031】
図5に示すように、集磁部13は、ヨーク121,122の外縁に沿って円弧状に形成されている。また、周方向において集磁部13の幅は、軸心から見て、周方向における端部から端部までの角度が所定角度(本実施形態では60度)となるように形成されている。
図6に示すように、集磁部13は、径方向の厚さが薄い薄板状に形成されている。
【0032】
図4及び
図6に示すように、軸方向において、集磁部13の入力軸41側の側部13bには、ヨーク121と一定の距離を空けて配置される。軸方向において、集磁部13の入力軸41側の側部13bから、ヨーク121までの距離を、距離d1とする。
【0033】
軸方向において、集磁部13の出力軸43側の側部13cには、周方向における中心に、突出部13aが設けられている。突出部13aは、軸方向に沿って出力軸43側に突出するように設けられている。突出部13aとヨーク122との間に磁気センサ14が配置される。
【0034】
図4に示すように、集磁部13が、磁気ヨーク12間に配置された場合、軸方向において当該突出部13aの先端からヨーク122までの距離を、距離d2とする。集磁部13の出力軸43側の側部13cにおいて、突出部13aが設けられていない部分からヨーク122までの距離を、距離d3とする。軸方向において、突出部13aの先端からヨーク122までの距離d2は、突出部13aが設けられていない部分からヨーク122までの距離d3よりも短くなっている。すなわち、軸方向において、集磁部13から磁気センサ14の反対側に配置されるヨーク122までの距離d2は、集磁部13とヨーク122とが対向する距離d3と比較して、突出部13aの長さ分、短くなっている。
【0035】
また、突出部13aの先端からヨーク122までの距離d2は、ヨーク121とヨーク122との間の距離よりも短い。具体的には、
図6に示すように、突出部13aの先端からヨーク122までの距離d2は、軸方向におけるヨーク121とヨーク122との間の距離d4よりも短い。また、
図4に示すように、突出部13aの先端からヨーク122までの距離d2は、爪部151と爪部152との間の距離d5よりも短い。
【0036】
また、
図4又は
図6に示すように、突出部13aの先端からヨーク122までの距離d2は、軸方向において、爪部151の先端からヨーク122までの距離d6(又は爪部152の先端からヨーク121までの距離)よりも短い。
図6に示すように、突出部13aの先端からヨーク122までの距離d2は、径方向において、爪部151,152の側面から集磁部13までの距離d7よりも短い。集磁部13の入力軸41側の側面から、ヨーク121までの距離d1も同様に、距離d4〜d7よりも短い。なお、集磁部13の入力軸41側の側面から、ヨーク121までの距離d1は、突出部13aの先端からヨーク122までの距離d2よりも短い。
【0037】
以上により、ヨーク121からヨーク122へ直接磁束が漏れることが少なくなる。例えば、爪部151がN極と対向している場合、磁束は、磁石11のN極から爪部151を介してヨーク121に入り、当該ヨーク121から集磁部13へと集められる。そして、集磁部13に集められた磁束は、その突出部13aからヨーク122に誘導され、当該ヨーク122の爪部152から磁石11のS極へ出ることとなる。極性が入れ替わっても同様である。
【0038】
<磁気センサ14>
集磁部13と、ヨーク122との間には、磁気センサ14が配置されている。より詳しくは、集磁部13の突出部13aとヨーク122との間に磁気センサ14が配置されている。すなわち、集磁部13と、ヨーク122は、磁気センサ14を挟んで両側に配置されている。そして、磁気センサ14は、集磁部13の突出部13aの先端に固定される。例えば、磁気センサ14は、集磁部13と共に樹脂モールドされることによって、集磁部13と一体成形される。より詳しくは、磁気センサ14は、集磁部13のヨーク122に対して対向する側に、ヨーク122と集磁部13との間における磁束密度を検出可能に固定される。
【0039】
磁気センサ14は、検出される磁束密度に応じて電圧信号を出力する。磁気センサ14しては、例えば、ホール素子、磁気抵抗素子などが使用される。この磁気センサ14は、軸方向における磁束密度を検出するように配置される。つまり、磁気センサ14は、突出部13aからヨーク122に誘導される磁束の磁束密度を検出する。
【0040】
<検出方法>
ここで、磁気センサ14によるねじれトルクの検出について説明する。まず、入力軸41と、出力軸43との間にねじれトルクが印加されていない場合、つまり、トーションバー42がねじれていない中立位置である場合について説明する。この場合、
図5(b)に示すように、爪部151,152の中心がそれぞれ磁石11のN極とS極との境界に一致するように配置されている。
【0041】
このとき、爪部151,152は、それぞれN極に対向する面積とS極に対向する面積が同じとなる。すなわち、爪部151,152には、磁石11のN極から入る磁束と、S極へ出る磁束が同じとなる。このため、ヨーク121,122の内部で、それぞれ磁力線が閉じられている。したがって、ヨーク121,122の外に、磁束がほとんど漏れることなく、磁気センサ14により検出される磁束密度は、ゼロ(又は限りなくゼロに近い値)となる。
【0042】
入力軸41と、出力軸43との間にねじれトルクが印加されて、トーションバー42にねじれ変位が生じると、磁石11と一対の磁気ヨーク12との相対位置が周方向に変位する。これにより、
図5(a)と
図5(c)に示すように、磁気ヨーク12に設けられた爪部151,152の中心と、磁石11のN極とS極との境界が一致しなくなる。このとき、爪部151,152は、N極に対向する面積とS極に対向する面積がそれぞれ異なることとなる。これにより、ヨーク121,122において、N極から入る磁束と、S極へ出る磁束が等しくならない。
【0043】
例えば、
図5(a)に示すように、ヨーク121の爪部151は、S極よりもN極に対向する面積が大きくなるため、N極から入る磁束の方が、S極から出る磁束よりも多くなる。一方、ヨーク122の爪部152は、N極よりもS極に対向する面積が大きくなるため、N極から入る磁束の方が、S極から出る磁束よりも少なくなる。その結果、ヨーク121から集磁部13を介してヨーク122に誘導される磁束が多くなり、集磁部13とヨーク122との間において磁気センサ14により検出される磁束密度が増加する。その際、爪部151,152に対向するN極及びS極の面積の差に応じて、検出される磁束密度が増加する。なお、
図5(c)の場合も、極性が反対となるだけで同様である。
【0044】
以上のように、磁石11に対して磁気ヨーク12との相対位置が周方向に変位した場合、集磁部13とヨーク122との間には、軸方向において、ねじれ変位に応じた磁束密度が検出される。そして、磁気センサ14により検出される磁束密度は、トーションバー42のねじれ変位量に略比例し、かつ、トーションバー42のねじれ方向に応じて極性が反転する。電圧信号の電圧は、磁束密度、すなわち、ねじれ変位量に応じたものとなる。そして、ねじれトルクは、ねじれ変位量に比例するため、電圧信号の電圧も、ねじれトルクに応じたものとなる。したがって、トルク検出装置10は、ねじれトルクに応じた電圧信号を出力することが可能となる。
【0045】
ところで、磁気センサ14が集磁部13を通過した磁束の磁束密度を検出することにより、検出される磁束密度が平均化される。すなわち、磁気ヨーク12の形状等に基づく誤差が少なくなり、ねじれトルクの検出精度を向上させることができる。また、磁気ヨーク12を通過する磁束を集磁部13に集中させるため、検出可能な磁束密度を向上させることができる。
【0046】
しかしながら、集磁部13は、磁気ヨーク12とは別部材により構成するため、磁気ヨーク12との間に隙間(エアギャップ)が形成される。隙間が多いと、磁気回路上の磁気抵抗が多くなる。すなわち、隙間において磁束が漏れやすく、磁気ヨーク12から集磁部13へ誘導される磁束が少なくなる。このため、磁気センサ14が検出可能な磁束密度が低下することとなる。
【0047】
そこで、ヨーク121,122間における隙間の数を最小限とすべく、本実施形態において、集磁部13を、ヨーク121及びヨーク122とそれぞれ対向するように配置し、磁気センサ14を、ヨーク122と集磁部13との間に配置した。すなわち、ヨーク121及びヨーク122が、集磁部13を挟んで両側に配置されている。これにより、集磁部13を設けた場合であっても、磁気ヨーク12間の隙間(エアギャップ)の数を最小限(2つ)にすることが可能となる。なお、第1実施形態では、集磁部13とヨーク122との間に磁気センサ14が配置されるため、ヨーク122が第1ヨークとなり、ヨーク121が第2ヨークとなる。
【0048】
上記構成により、以下の効果を奏する。
【0049】
集磁部13は、ヨーク121及びヨーク122に対してそれぞれ対向するように配置されており、磁気センサ14は、ヨーク122と集磁部13との間に配置され、ヨーク122と集磁部13との間における磁束密度を検出する。このため、例えば、一対の集磁部間における磁束密度を検出する場合と比較して、磁気ヨーク12間における隙間(すなわち、磁気回路上の隙間)の数を少なくすることができる。これにより、磁気センサ14が、検出可能な磁束密度を向上させることができる。
【0050】
より詳しく説明すると、一対の集磁部間における磁束密度を検出する場合、一方のヨークと一方の集磁部との間、一対の集磁部間、及び他方の集磁部と他方のヨークとの間において、合計3カ所の隙間が形成されることとなる。一方、第1実施形態のように、集磁部13を、ヨーク121及びヨーク122に対してそれぞれ対向するように配置する場合、ヨーク121と集磁部13との間、及びヨーク122と集磁部13との間において、合計2カ所の隙間が形成されることとなる。このため、磁気回路上における隙間を少なくすることができ、検出可能な磁束密度を向上させることができる。
【0051】
集磁部13とヨーク121との間における距離d1、集磁部13とヨーク122との間の距離d2、d3は、いずれもヨーク121,122間の距離よりも短く構成されている。これにより、ヨーク121からヨーク122へ直接磁束が漏れることがなくなり、ヨーク122と集磁部13との間において検出可能な磁束密度を向上させることができる。
【0052】
集磁部13の突出部13aから磁気センサ14の反対側に配置されるヨーク122までの距離d2は、集磁部13とヨーク122とが対向する距離d3と比較して短く構成されている。すなわち、集磁部13には、ヨーク122側へ軸方向に沿って延びる突出部13aが形成されており、当該突出部13aの先端とヨーク122との間に磁気センサ14が配置されている。このため、磁気センサ14が配置される間隔に磁束を集中させ、検出可能な磁束密度を向上させることができる。
【0053】
また、磁束は集磁部13を通過するため、磁気センサ14により検出される磁束密度を平均化することができる。さらに、集磁部13によりヨーク121,122から磁束が集められるため、磁束密度を向上させることができる。
【0054】
(第2実施形態)
集磁部13がヨーク121に対して対向する方向と、ヨーク122に対して対向する方向とが、同じである場合、集磁部13とヨーク121との間隔と、集磁部13とヨーク122との間隔とは互いに影響を及ぼしあうため、調整することが難しくなる場合がある。つまり、一方を狭くすれば、他方が広くなるため、調整が難しくなる場合がある。例えば、ヨーク121及びヨーク122が、第1実施形態のように、集磁部13を挟んで両側に配置される場合(共に軸方向において対向する場合)、一方を狭くすれば、他方が広くなるため、難しくなる場合がある。このため、両方とも適正な間隔となるように集磁部13を配置する際に手間がかかる。
【0055】
また、集磁部13とヨーク122との間の距離d2(磁気センサ14が配置される間隔)は、磁気センサ14が検出可能な磁束密度を向上させるため、なるべく短くすることが望ましい。その一方で、集磁部13とヨーク121との間の距離d1、及び集磁部13とヨーク122との間の距離d2,d3を、いずれもヨーク121,122間の距離d4〜d6よりも短くすることが望ましい。このことからも、適正な間隔となるように集磁部13を配置する際に手間がかかる。
【0056】
なお、一対の集磁部の間に磁気センサを配置する場合、隙間が形成される箇所が多くなっている(3カ所となっている)ことから、集磁部13をヨーク121及びヨーク122に対してそれぞれ対向させる場合と比較して、配置の自由度が高く、調整が比較的容易である。つまり、一対の集磁部の間隔を最短化しても、他の2カ所の隙間において距離を調整することが可能となっている。
【0057】
そこで、第2実施形態のトルク検出装置10では、ヨーク121,122と集磁部13の形状等を変更した。以下、
図7に基づき、詳しく説明する。
【0058】
<ヨーク121,122>
第2実施形態のヨーク121,122について説明する。
図7に示すように、ヨーク121,122は、径方向における軸心から外縁までの距離が異なるように設けられている。具体的には、ヨーク121の外径は、ヨーク122の外径よりも短くなっている。すなわち、径方向において、軸心からヨーク121の外縁までの距離は、軸心からヨーク122の外縁までの距離よりも短くなっている。このため、ヨーク122は、径方向においてヨーク121よりも外側に突出しており、ヨーク122の外縁付近は、軸方向においてヨーク121と重なっていない。
【0059】
<集磁部13>
集磁部13は、第1実施形態と同様に、軟磁性体により円弧の中心が出力軸43と同軸上になるように円弧状に形成され、出力軸43側に固定される。集磁部13は、径方向の厚さが薄い薄板状に形成されている。また、周方向において集磁部13の幅は、軸心から見て、周方向における端部から端部までの角度が所定角度(本実施形態では60度)となるように形成されている。
【0060】
そして、
図7に示すように、集磁部13は、径方向において軸心から外縁までの距離が短いヨーク121の径方向外側であって、かつ、軸心から外縁までの距離が長いヨーク122の外縁よりも内側に配置される。具体的には、集磁部13は、ヨーク121の径方向外側に一定の距離を空けて配置され、ヨーク121の外周に沿った円弧状に形成されている。また、集磁部13は、径方向においてヨーク122の外縁と内縁の間であって、ヨーク121の径方向外側に配置される。このため、集磁部13は、ヨーク122の外縁部に沿って円弧状に形成されているともいえる。なお、以下では、径方向において、集磁部13の径方向内側の面から、ヨーク121までの距離を、距離d11とする。
【0061】
また、集磁部13は、軸方向において一方の側部(端部)13cがヨーク121とヨーク122の間に配置され、他方の側部(端部)13bがヨーク121よりも外側に配置される。具体的には、軸方向において、集磁部13の出力軸43側の側部13cは、ヨーク121,122の間に配置されている。より詳しくは、集磁部13の出力軸43側の側部13cは、ヨーク122の入力軸41側の面から所定の距離d12だけ離れた位置に配置される。これにより、集磁部13の出力軸43側の側部13cは、ヨーク122の入力軸41側の面と軸方向に対向している。なお、集磁部13の周方向における端から端まで、ヨーク122から集磁部13までの距離は、距離d12のまま一定に保たれている。
【0062】
そして、集磁部13の入力軸41側の側部13bは、軸方向において、ヨーク121よりも入力軸41側に突出している。これにより、集磁部13は、径方向内側の面において、ヨーク121の外縁部と径方向において対向している。なお、集磁部13の周方向における端から端まで、ヨーク121から集磁部13までの距離は、距離d11のまま一定に保たれている。
【0063】
また、集磁部13の入力軸41側の側部13bには、径方向内側(磁石11側)に突出する第1フランジ部131が形成されている。軸方向において、この第1フランジ部131は、ヨーク121よりも入力軸41側に配置されており、周方向において集磁部13の端から端まで設けられている。そして、第1フランジ部131は、軸方向においてヨーク121の入力軸41側の面と対向している。以下では、軸方向において、第1フランジ部131から、ヨーク121までの距離を、距離d13とする。
【0064】
軸方向において、集磁部13の出力軸43側の側部13cには、径方向外側に突出する第2フランジ部132が形成されている。第2フランジ部132は、集磁部13の軸方向における出力軸43側の先端から、径方向外側に突出するように設けられている。すなわち、軸方向において、集磁部13の先端と、第2フランジ部132の位置は、一致している。
【0065】
この第2フランジ部132は、軸方向において、ヨーク122よりも入力軸41側に配置される(ヨーク121とヨーク122の間に配置される)。また、第2フランジ部132は、周方向において集磁部13の端から端まで設けられている。そして、第2フランジ部132は、軸方向においてヨーク122の入力軸41側の面と対向している。また、集磁部13の周方向中心において、第2フランジ部132とヨーク122との間に磁気センサ14が配置される。磁気センサ14は、第1実施形態と同様にして集磁部13とヨーク122との間における磁束密度を検出する。
【0066】
集磁部13の出力軸43側の側部13c(及び第2フランジ部132)からヨーク122までの距離d12は、ヨーク121とヨーク122との間の距離よりも短い。具体的には、第2フランジ部132からヨーク122までの距離d12は、距離d4〜d7よりも短い。また、集磁部13の径方向内側の面から、ヨーク121までの径方向における距離d11も同様に、距離d4〜d7よりも短い。また、軸方向において、第1フランジ部131から、ヨーク121までの距離d13も同様に、距離d4〜d7よりも短い。以上により、ヨーク121からヨーク122へ直接磁束が漏れることが少なくなる。
【0067】
上記構成により、以下の効果を奏する。
【0068】
第2実施形態では、集磁部13がヨーク121に対して対向する方向と、集磁部13がヨーク122に対して対向する方向とが、異なるようにした。具体的には、集磁部13を異なる2方向でヨーク121,122と対向させるため、径方向においてヨーク121よりもヨーク122が外側に飛び出るようにヨーク121,122を構成するとともに、ヨーク121,122を軸方向に離間するように配置した。
【0069】
また、径方向において、集磁部13を、ヨーク122の外縁と内縁の間であって、ヨーク121の外側に配置した。そして、軸方向において、集磁部13の出力軸43側の側部13cを、ヨーク121とヨーク122の間に位置するように配置するとともに、集磁部13の入力軸41側の側部13bを、ヨーク121よりも入力軸41側に突出するように構成した。
【0070】
そして、集磁部13を、軸方向においてヨーク122と対向させるとともに、径方向においてヨーク121と対向させるようにした。より詳しくは、集磁部13の出力軸43の側部13c(すなわち、第2フランジ部132)を、ヨーク122の入力軸41側の面と軸方向において対向させるようにした。また、集磁部13の径方向内側の面を、ヨーク121の外縁と径方向において対向させるようにした。
【0071】
これにより、軸方向における集磁部13とヨーク122との間隔を調整しても、径方向における集磁部13とヨーク121との間隔に影響を与えることがない。つまり、集磁部13とヨーク122の間隔を調整するために、軸方向に集磁部13を移動させても、集磁部13とヨーク121との間隔は変わらない。また、集磁部13とヨーク121の間隔を調整するために、径方向に集磁部13を移動させても、集磁部13とヨーク122との間隔は変わらない。
【0072】
このため、一方の磁気ヨーク12と集磁部13との間隔を適正に調整しても、対向する方向が異なるため、他方の磁気ヨーク12と集磁部13との間隔を適正に調整することが容易となる。また、一方向において対向させる場合と比較して、2方向から対向させるため、集磁部13の位置決めを行いやすい。
【0073】
また、径方向において、ヨーク121,122の外縁の位置を異ならせ、集磁部13を、径方向においてヨーク121の外側であって、ヨーク122の外縁と内縁の間に配置した。これにより、磁気ヨーク12の入力軸41側から軸方向に集磁部13を移動させることにより、または、径方向外側から径方向に移動させることにより、集磁部13を配置することができる。また、軸方向及び径方向に対して斜めとなる方向から、移動させることも可能となる。このように、集磁部13を磁気ヨーク12に配置する際の移動方向が一方向に固定されることがなくなり、集磁部13を組み立てる際、容易となる。
【0074】
集磁部13は、ヨーク121に対して複数の対向箇所で対向するように構成されており、当該複数の対向箇所は、ヨーク121に対して異なる2方向(軸方向及び径方向)において対向する。すなわち、集磁部13は、径方向内側の面にてヨーク121の外縁と径方向に対向し、第1フランジ部131によりヨーク121と軸方向に対向する。このため、いずれか一方の方向においてヨーク121と集磁部13との間隔が長くなってしまったとしても、他の方向におけるヨーク121と集磁部13との間隔が短ければ、ヨーク121から磁束を集めることが可能となる。例えば、集磁部13を径方向に移動させても、第1フランジ部131を介してヨーク121から磁束を集めることができる。このため、集磁部13の位置決めが容易となる。
【0075】
また、集磁部13に、径方向外側に突出する第2フランジ部132を設けた。これにより、径方向において、ヨーク122と対向させる可能な面積を大きくし、集磁部13の位置調整を容易に行うことができる。また、第2フランジ部132を設けることにより、集磁部13の径方向の厚さを薄くすることができる。
【0076】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されず、例えば以下のように実施してもよい。なお、以下では、各実施形態で互いに同一又は均等である部分には同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0077】
・上記実施形態において、ヨーク121,122から集磁部13へ延びる延出部をそれぞれ備えてもよい。例えば、
図8に示すように、延出部161,162は、ヨーク121,122の外縁から、軸方向において他方のヨーク121,122側に向かって延びるように形成されている。この延出部161,162は、ヨーク121,122の全周に亘って設けられていてもよいし、集磁部13が配置される部分だけ設けられていてもよい。そして、集磁部13は、延出部161,162の間に配置されればよい。なお、磁気センサ14は、集磁部13と延出部161,162の間に配置されていればよい。なお、
図8では、集磁部13と延出部162の間に磁気センサ14を配置している。
【0078】
・上記第1実施形態において、突出部13aをなくしてもよい。
【0079】
・上記実施形態において、磁気センサ14をヨーク121との間に配置してもよい。例えば、第1実施形態において、磁気センサ14をヨーク121との間に配置し、磁気センサ14に軸方向における磁束密度を検出させてもよい。この場合、ヨーク121が、第1ヨークに相当し、ヨーク122が、第2ヨークに相当することとなる。
【0080】
また、第2実施形態において、磁気センサ14を、集磁部13の径方向内側の面と、ヨーク121の外縁の間に配置し、径方向における磁束密度を検出させてもよい。この場合、
図9に示すように、第1フランジ部131を省いてもよい。また、第2フランジ部132の径方向外側端部から、軸方向において出力軸43側に突出する第3フランジ部133を設けてもよい。この第3フランジ部133は、ヨーク122の外縁よりも径方向外側に配置され、ヨーク122と径方向において対向する。また、第3フランジ部133は、周方向において集磁部13の端部から端部まで設けられている。これにより、ヨーク122に対して、集磁部13は、異なる2方向(軸方向及び径方向)から対向することとなる。
【0081】
・上記第2実施形態において、
図10に示すように、第1フランジ部131及び第2フランジ部132を省いてもよい。この場合、集磁部13の径方向の厚さを、磁気センサ14の径方向の長さに応じた厚さにすることが望ましい。
図10では、集磁部13の径方向の厚さと、磁気センサ14の径方向の長さを同じにしている。なお、磁気センサ14を、集磁部13の径方向内側の面とヨーク121の外縁との間に配置し、径方向の磁束密度を磁気センサ14に検出させてもよい。
【0082】
・上記第2実施形態において、
図11に示すように、第1フランジ部131を省いてもよい。なお、磁気センサ14を、集磁部13の径方向内側の面とヨーク121の外縁との間に配置し、径方向の磁束密度を磁気センサ14に検出させてもよい。
【0083】
・上記実施形態において、ヨーク121,122と対向するのであれば、集磁部13の形状を任意に変更してもよい。例えば、径方向内側又は外側に窪みを設けてもよい。
図12では、径方向内側(磁石11側)に窪みを設けた集磁部13を図示している。また、集磁部13を、リング状に形成してもよし、平板状に形成してもよい。
【0084】
・上記実施形態において、集磁部13は、
図13に示すように、ヨーク122側に設けてもよい。
【0085】
・上記実施形態において、集磁部13の形状を任意に変更してもよい。例えば、
図14(a)に示すように、周方向における集磁部13の幅を任意に変更してもよい。
図14(a)では、周方向における集磁部13の幅を、磁気センサ14の幅に合わせている。また、
図14(b)に示すように、集磁部13の周方向端部から磁気センサ14と対向する部分に向かって傾斜するような形状にしてもよい。つまり、集磁部13の周方向端部から磁気センサ14と対向する部分に近づくにつれて、集磁部13とヨーク121間の距離が徐々に短くなるように集磁部13を形成してもよい。なお、集磁部13は、周方向において左右対象に形成されていることが望ましい。