(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ダンプトラックに設けられた筒状のスピンドルと、前記スピンドルに回転可能に取付けられ車輪と一体に回転する筒状の車輪取付筒と、前記車輪取付筒内に設けられ駆動源の回転を前記車輪取付筒に減速して伝える減速歯車機構と、前記減速歯車機構に潤滑油を供給する潤滑油供給装置とを備え、
前記減速歯車機構は、太陽歯車、遊星歯車およびキャリアをそれぞれ有する第1,第2の遊星歯車減速機構を備え、前記第2の遊星歯車減速機構の一部を構成する前記キャリアは、前記スピンドルに設けられた非回転のキャリアからなり、
前記潤滑油供給装置は、前記車輪取付筒内で潤滑油を循環させるための潤滑ポンプと、前記潤滑ポンプの吸込側に接続され前記車輪取付筒内に溜められた潤滑油を吸込む吸込管路と、前記潤滑ポンプの吐出側に接続され前記潤滑ポンプからの潤滑油を前記車輪取付筒内に向けて供給する供給管路とを備えてなるダンプトラックの走行装置において、
前記非回転のキャリアには、前記潤滑油を吸込むため上,下方向の下側へと延びる油通路が設けられ、
前記油通路は、流入側が前記車輪取付筒内で前記第1の遊星歯車減速機構に向けて開口する流入端となり、流出側には前記吸込管路が接続されていることを特徴とするダンプトラックの走行装置。
前記油通路の流入端は、前記非回転のキャリアのうち、前記遊星歯車を回転可能に支持する遊星軸よりも上,下方向の下側となる位置で前記車輪取付筒内に開口していることを特徴とする請求項1に記載のダンプトラックの走行装置。
前記非回転のキャリアには、前記車輪取付筒の回転によって前記車輪取付筒内を流動する潤滑油を前記油通路の流入端へと導く導油部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のダンプトラックの走行装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態によるダンプトラックの走行装置を、後輪駆動式のダンプトラックに適用した場合を例に挙げ、添付図面の
図1ないし
図5に従って詳細に説明する。
【0011】
図1において、ダンプトラック1は、頑丈なフレーム構造をなす車体2と、該車体2上に起伏可能に搭載された荷台としてのベッセル3とを含んだ大型車両として構成されている。ベッセル3は、砕石物に代表される重い荷物を多量に積載するため全長が9〜13メートルにも及ぶ大型の容器として形成されている。ベッセル3の後側底部は、車体2の後端側に連結ピン4を介して起伏(傾転)可能に連結されている。ベッセル3の前側上部には、後述のキャブ5を上側から覆う庇部3Aが一体に設けられている。
【0012】
キャブ5は庇部3Aの下側に位置して車体2の前部に設けられている。該キャブ5は、ダンプトラック1の運転者が乗降する運転室を形成している。キャブ5の内部には、運転席、起動スイッチ、アクセルペダル、ブレーキペダル、操舵用のハンドルおよび複数の操作レバー(いずれも図示せず)が設けられている。ベッセル3の庇部3Aは、キャブ5を上側からほぼ完全に覆うことにより、岩石等の飛び石からキャブ5を保護すると共に、車両(ダンプトラック1)の転倒時にもキャブ5内の運転者を保護する機能を有している。
【0013】
左,右の前輪6は車体2の前部側に回転可能に設けられている。左,右の前輪6は、ダンプトラック1の運転者、または外部からの自動運転によってステアリング操作される操舵輪を構成するものである。前輪6は後述の後輪7と同様に、例えば2〜4メートルに及ぶタイヤ径(即ち、外径寸法)をもって形成されている。車体2の前部と前輪6との間には、油圧緩衝器からなる前輪側サスペンション6SPがそれぞれ設けられている。
【0014】
左,右の後輪7は車体2の後部側に回転可能に設けられている。左,右の後輪7は、ダンプトラック1の駆動輪を構成し、
図2、
図3に示す後述の走行駆動装置11により車輪取付筒18と一体に回転駆動される。後輪7は、複輪式タイヤからなるインナタイヤ7Aおよびアウタタイヤ7A(
図3参照)と、該各タイヤ7Aの径方向内側に配設されるリム7Bとを含んで構成されている。車体2の後部と後輪7との間には、油圧緩衝器からなる後輪側サスペンション7SPがそれぞれ設けられている。
【0015】
エンジン8はキャブ5の下側に位置して車体2内に設けられている。このエンジン8は、例えば大型のディーゼルエンジンにより構成され、車載の発電機、油圧源となる油圧ポンプ(いずれも図示せず)を回転駆動する。前記油圧ポンプから吐出される圧油は、後述のホイストシリンダ9、パワーステアリング用の操舵シリンダ(図示せず)等に供給される。
【0016】
ホイストシリンダ9はベッセル3を起伏させるための一対のシリンダ装置である。
図1に示すように、このホイストシリンダ9は、前輪6と後輪7との間に位置して車体2の左,右両側にそれぞれ配設されている。ホイストシリンダ9は、車体2とベッセル3との間に上,下方向で伸縮可能に取付けられている。即ち、ホイストシリンダ9は、前記油圧ポンプからの圧油が給排されることにより上,下方向に伸縮し、後部側の連結ピン4を中心にしてベッセル3を起伏(傾転)させるものである。
【0017】
図1に示すように、作動油タンク10は、ベッセル3の下方に位置して車体2の側面等に取付けられている。作動油タンク10内に収容した作動油は、前記油圧ポンプにより吸込まれつつ吐出され、圧油となってホイストシリンダ9および前記パワーステアリング用の操舵シリンダ等に給排されるものである。
【0018】
次に、ダンプトラック1の後輪7側に設けられた走行装置としての走行駆動装置11について説明する。
【0019】
走行駆動装置11は、後述のアクスルハウジング12、走行用モータ16、車輪取付筒18および減速歯車機構24を含んで構成されている。走行駆動装置11は、走行用モータ16の回転を減速歯車機構24により減速し、車両の駆動輪となる後輪7を車輪取付筒18と一緒に大なる回転トルクで走行駆動するものである。
【0020】
後輪7用のアクスルハウジング12は、車体2の後部側に非回転状態で設けられている。このアクスルハウジング12は、左,右の後輪7,7間を軸方向に延びる筒状体として形成されている。アクスルハウジング12は、車幅方向(左,右方向)に延びる筒状体として形成され前記各後輪側サスペンション7SPを介して車体2の後部側に取付けられた懸架筒13と、該懸架筒13の左,右両側にそれぞれ設けられたスピンドル14とにより構成されている。
【0021】
ここで、スピンドル14は筒状体として形成され、アクスルハウジング12の軸方向両端側にそれぞれ設けられている。
図2中に示すように、スピンドル14は、軸方向一側に位置してテーパ形状をなし懸架筒13にボルト15を介して着脱可能に固着された大径筒部14Aと、該大径筒部14Aの軸方向他側に一体形成された支持筒部14Bとにより構成されている。この支持筒部14Bは、後述の車輪取付筒18内を軸方向に延びるように配置されている。支持筒部14Bの外周側は、後述の車輪支持軸受20,21を介して後輪7側の車輪取付筒18を回転可能に支持するものである。
【0022】
一方、スピンドル14の外周側には、大径筒部14Aの長さ方向(軸方向)中間部から径方向外向きに突出し後述の湿式ブレーキ40が取付けられる環状フランジ部14Cと、後述のリテーナ42を軸方向に位置決めするため支持筒部14Bの軸方向一側に設けられた環状の段差部14Dとが一体に形成されている。大径筒部14Aの軸方向一側には、径方向の内向きに突出する複数のモータ取付座14Eが一体に形成され、このモータ取付座14Eには後述の走行用モータ16が取付けられている。
【0023】
また、支持筒部14Bの軸方向他側(先端側)は開口端となり、その内周側には後述のキャリア38が連結筒体39を介してスプライン結合されている。さらに、支持筒部14Bの軸方向の中間部には、その内周側に環状の内側突部14Fが一体に形成されている。この内側突部14Fには、後述の外側リテーナ51がボルト等を介して固定されている。
【0024】
走行用モータ16は後輪7の駆動源として用いられている。この走行用モータ16は、アクスルハウジング12内に着脱可能に設けられている。走行用モータ16は、車体2に搭載された発電機(図示せず)からの電力供給によって回転駆動される大型の電動モータにより構成されている。走行用モータ16は、左,右の後輪7,7を互いに独立して回転駆動するため、懸架筒13の左,右両側に位置してスピンドル14内にそれぞれ取付けられている。
【0025】
走行用モータ16は、その外周側に複数の取付フランジ16Aを有し、これらの取付フランジ16Aがスピンドル14のモータ取付座14Eにボルトを用いて着脱可能に取付けられている。走行用モータ16は、前記発電機から電力が供給されることにより、後述のシャフト17を回転駆動するものである。
【0026】
シャフト17は走行用モータ16の出力軸を構成するものである。このシャフト17は、走行用モータ16によって正方向または逆方向に回転駆動される。シャフト17は、スピンドル14の内周側を軸方向(左,右方向)に延びる1本の長尺な棒状体により構成され、シャフト17の一端側は走行用モータ16の出力側に連結されている。一方、シャフト17の他端側は、スピンドル14を構成する支持筒部14Bの開口端側から軸方向の外側へと突出している。シャフト17の突出端側には、後述する第1の太陽歯車26が一体回転するように設けられている。
【0027】
シャフト17の軸方向の中間部は、スピンドル14の支持筒部14B内に後述のシャフトベアリング52を用いて回転可能に支持されている。シャフト17の軸方向の中間部(即ち、シャフトベアリング52の取付位置)は、スピンドル14の外周側で車輪取付筒18を回転可能に支持する後述の車輪支持軸受20,21に対し、両者の間となる軸方向位置に配置されている。
【0028】
車輪取付筒18は所謂ホイールハブを構成し、車輪としての後輪7と一体に回転する。車輪取付筒18の外周側には、後輪7の各リム7Bが圧入等の手段を用いて着脱可能に取付けられている。この車輪取付筒18は、後述の車輪支持軸受20,21間にわたって軸方向に延び中空構造をなした中空筒部18Aと、該中空筒部18Aの外周側端部から後述の第2の内歯車35に向けて軸方向の他側(即ち、軸方向の外側)に一体に延びた延設筒部18Bとにより段付筒状体として形成されている。
【0029】
車輪取付筒18の延設筒部18Bには、後述の第2の内歯車35と外側ドラム22とが長尺ボルト23を用いて一体的に固着されている。これにより、車輪取付筒18は、第2の内歯車35と一体に回転される。リムスペーサ19は筒状のリングにより形成されている。該リムスペーサ19は、後輪7のインナタイヤ7Aとアウタタイヤ7Aとの間に予め決められた軸方向の隙間を確保するため、車輪取付筒18の外周側に配置されている。
【0030】
車輪支持軸受20,21は、スピンドル14の外周側で車輪取付筒18を回転可能に支持する軸受である。これらの車輪支持軸受20,21は、例えば円錐ころ軸受を用いて構成されている。車輪支持軸受20,21は、スピンドル14の支持筒部14Bと車輪取付筒18の中空筒部18Aとの間に軸方向に離間して配設されている。
【0031】
外側ドラム22は第2の内歯車35と共に車輪取付筒18の一部を構成している。
図2、
図3に示すように、この外側ドラム22は、車輪取付筒18の軸方向の外側となる位置に後述の第2の内歯車35を挟んで取付けられ、複数の長尺ボルト23を用いて車輪取付筒18に着脱可能に固着されている。
【0032】
次に、シャフト17の突出端(他端)側と車輪取付筒18との間にスピンドル14を介して設けられた減速歯車機構24について説明する。
【0033】
この減速歯車機構24は、後輪7側の車輪取付筒18に対し走行用モータ16(即ち、シャフト17)の回転を減速して伝えるものである。これにより、後輪7側の車輪取付筒18は、減速して得られた大きな回転力(トルク)をもって後輪7と一緒に回転駆動される。減速歯車機構24は、1段目の遊星歯車減速機構25(以下、第1の遊星歯車減速機構25という)と2段目の遊星歯車減速機構33(以下、第2の遊星歯車減速機構33という)とにより構成されている。
【0034】
このうち最終段となる第2の遊星歯車減速機構33は、その前段側(即ち、第1の遊星歯車減速機構25)よりもスピンドル14の開口端に近い位置に配設されている。即ち、第2の遊星歯車減速機構33は、第1の遊星歯車減速機構25よりも車輪取付筒18の軸方向の内側となる位置に配置されている。換言すると、第1の遊星歯車減速機構25は、第2の遊星歯車減速機構33よりも車輪取付筒18の軸方向の外側となる位置に配置されている。
【0035】
第1の遊星歯車減速機構25は、減速歯車機構24の1段目の減速段を構成している。第1の遊星歯車減速機構25は、シャフト17の自由端となる突出端側(軸方向の外側端部)にスプライン結合された第1の太陽歯車26と、該太陽歯車26とリング状の内歯車27とに噛合する複数(例えば、3〜4個)の第1の遊星歯車28と、該各遊星歯車28をそれぞれ遊星軸29を介して回転可能に支持する第1のキャリア30とにより構成されている。
【0036】
ここで、第1のキャリア30の外周側は、車輪取付筒18に一体化された外側ドラム22の開口端(軸方向外側の端面)にボルトを介して着脱可能に固定され、車輪取付筒18、外側ドラム22と一体に回転する。第1のキャリア30の内周側には、例えば円板状の蓋板31が着脱可能に取付けられている。蓋板31は、例えば太陽歯車26と遊星歯車28の噛合部を保守、点検する場合にキャリア30から取外されるものである。
【0037】
リング状の内歯車27は、太陽歯車26、各遊星歯車28を径方向の外側から取囲むリングギヤを用いて形成されている。内歯車27は、外側ドラム22の径方向の内側に相対回転可能に配置され、外側ドラム22の内周面と内歯車27との間には、小さな径方向の隙間が形成されている。内歯車27の回転(公転)は、後述のカップリング32を介して第2の遊星歯車減速機構33に伝えられる。
【0038】
第1の遊星歯車減速機構25は、走行用モータ16によってシャフト17と一体に太陽歯車26が回転すると、この太陽歯車26の回転を各遊星歯車28の自転運動と公転運動とに変換する。各遊星歯車28の自転(回転)は、リング状の内歯車27に減速した回転として伝えられる。内歯車27の回転は、後述のカップリング32を介して第2の遊星歯車減速機構33に伝達される。一方、各遊星歯車28の公転は、キャリア30の回転となって車輪取付筒18側の外側ドラム22に伝達される。しかし、車輪取付筒18は、後述する第2の内歯車35と一体に回転するため、各遊星歯車28の公転は、第2の内歯車35(車輪取付筒18)に同期した回転に抑えられる。
【0039】
カップリング32は第1の内歯車27と一体に回転するもので、該カップリング32は、第1の遊星歯車減速機構25と第2の遊星歯車減速機構33との間に位置する環状の回転伝達部材として形成されている。即ち、カップリング32の外周側は、第1の内歯車27にスプライン結合されている。カップリング32の内周側は、後述する第2の太陽歯車34にスプライン結合されている。これにより、カップリング32は、第1の内歯車27の回転を第2の太陽歯車34に伝達し、この第2の太陽歯車34を第1の内歯車27と一体に回転させる。
【0040】
第2の遊星歯車減速機構33は、減速歯車機構24の最終段の減速段を構成している。第2の遊星歯車減速機構33は、シャフト17と車輪取付筒18との間に第1の遊星歯車減速機構25を介して配設され、第1の遊星歯車減速機構25と共にシャフト17の回転を減速するものである。第2の遊星歯車減速機構33は、シャフト17と同軸に配置されカップリング32と一体に回転する円筒状の第2の太陽歯車34と、該第2の太陽歯車34とリング状の第2の内歯車35とに噛合する複数の第2の遊星歯車36と、該各第2の遊星歯車36をそれぞれ第2の遊星軸37を介して回転可能に支持する第2のキャリア38とにより構成されている。
【0041】
第2の太陽歯車34は、筒状の平歯車として形成され、第2の太陽歯車34の内周側には、シャフト17が隙間をもって挿通されている。第2の太陽歯車34は、シャフト17の周囲を相対回転(シャフト17よりも遅い速度で回転)する。第2の太陽歯車34の外周側は、複数(例えば、3〜4個)の第2の遊星歯車36と噛合している。
【0042】
ここで、第2の内歯車35は、第2の太陽歯車34および各第2の遊星歯車36を径方向の外側から取囲むリングギヤを用いて形成されている。第2の内歯車35は、車輪取付筒18の一部を構成する延設筒部18Bと外側ドラム22との間に長尺ボルト23を用いて一体的に固着されている。第2の内歯車35の内周側に形成された内歯には、第2の遊星歯車36それぞれが噛合するものである。
【0043】
図3、
図4に示すように、第2のキャリア38は、互いに板厚が異なる2枚の環状体からなりシャフト17(即ち、車輪取付筒18の軸中心)と同心上で軸方向に離間(対向)して配置された環状の支持板38A,38Bと、これらの支持板38A,38B間に各第2の遊星歯車36(
図4参照)を配置するため周方向に一定の間隔をもって配置され環状の支持板38A,38B間を一体的に連結する複数(例えば、4個)の連結部38Cとを含んで構成されている。
【0044】
第2のキャリア38の支持板38A,38Bのうち軸方向一側の支持板38Aには、スピンドル14(支持筒部14B)の開口端側に向けて軸方向に延びる筒状連結部38Dが一体形成されている。この筒状連結部38Dは、後述の連結筒体39を介してスピンドル14の支持筒部14Bにスプライン結合されている。第2のキャリア38は、スピンドル14に結合して設けられた非回転のキャリアを構成している。
【0045】
図4に示すように、第2のキャリア38には、例えば4個の第2の遊星歯車がそれぞれ遊星軸37を介して回転可能に取付けられている。第2のキャリア38の支持板38A,38Bのうち軸方向他側に位置する支持板38Bは、外周円38B1に沿って延びる環状体であり、その外周円38B1を
図5中では二点鎖線で示している。第2のキャリア38(非回転のキャリア)には、後述の油通路53が形成されている。後述の導油部材55(ガイド筒56)は、前記外周円38B1の接線方向(即ち、車輪取付筒18の内側で車両の前,後方向)に沿って延びている。
【0046】
連結筒体39は、スピンドル14の開口側とキャリア38との間に着脱可能に設けられている。この連結筒体39は、スピンドル14、キャリア38とは別部材からなる段付筒状体として形成されている。連結筒体39の内周側(中心側)にはシャフト17が隙間をもって挿通され、シャフト17と連結筒体39との間には、後述の吸込管路46および供給管路47が隙間をもって挿入されている。
【0047】
連結筒体39は、軸方向の一側の外周がスピンドル14(支持筒部14B)の開口端内周側にスプライン結合され、軸方向の他側外周はキャリア38の筒状連結部38Dの内周側にスプライン結合されている。また、連結筒体39の軸方向の中間部には、環状の段差部39Aが形成されている。この段差部39Aには、後述のエンドリテーナ43が当接し、連結筒体39はスピンドル14の開口側で抜止め状態に保持されている。また、連結筒体39の内周側には、後述する吸込管路46用のガイド凹部39Bが形成されている。このガイド凹部39Bは、連結筒体39の内周面のうち上,下方向の下側となる位置に配置され、連結筒体39の軸方向に延びている。
【0048】
ここで、第2の遊星歯車減速機構33は、第2のキャリア38の筒状連結部38Dがスピンドル14の支持筒部14Bに連結筒体39を介してスプライン結合されている。これによって、第2のキャリア38は、スピンドル14に対して回転が拘束された非回転のキャリアとなり、第2の遊星歯車36も公転が拘束される。従って、第2の遊星歯車減速機構33は、第2の太陽歯車34がカップリング32と一体に回転すると、この第2の太陽歯車34の回転を第2の遊星歯車36の自転に変換する。第2の遊星歯車36の自転は、第2の内歯車35に伝達され、第2の内歯車35は、減速された状態で回転する。これにより、第2の内歯車35が固定された車輪取付筒18には、第1の遊星歯車減速機構25と第2の遊星歯車減速機構33とにより2段階で減速された大出力の回転トルクが伝達される。
【0049】
湿式ブレーキ40は、車輪取付筒18の回転(即ち、左,右の後輪7)に制動力を与えるもので、湿式多板型の油圧ブレーキにより構成されている。この湿式ブレーキ40は、アクスルハウジング12のスピンドル14と車輪取付筒18との間に後述のブレーキハブ41を介して設けられている。湿式ブレーキ40は、車輪取付筒18と一体に回転するブレーキハブ41に対して制動力を付与するものである。
【0050】
ブレーキハブ41は湿式ブレーキ40の一部を構成し、車輪取付筒18と一体に回転するものである。このブレーキハブ41は、スピンドル14と湿式ブレーキ40との間を軸方向に延びる筒状体として形成されている。ブレーキハブ41の軸方向一側には、湿式ブレーキ40の各回転側ディスクが廻止め状態で、軸方向に移動可能に取付けられている。ブレーキハブ41の軸方向他側は、車輪取付筒18の中空筒部18Aに複数のボルトを介して着脱可能に固定されている。
【0051】
リテーナ42はスピンドル14の支持筒部14Bに車輪支持軸受20の内輪側を位置決めしている。このリテーナ42は、支持筒部14Bの外周面に嵌合して設けられている。リテーナ42の軸方向一側は、スピンドル14の環状の段差部14Dに当接している。リテーナ42の軸方向他側は、車輪支持軸受20の内輪側に軸方向で当接している。これにより、車輪支持軸受20は、その外輪側が車輪取付筒18の中空筒部18Aにより軸方向に位置決めされ、内輪側がリテーナ42により軸方向に位置決めされている。
【0052】
他のリテーナ(以下、エンドリテーナ43という)は、スピンドル14の支持筒部14Bの開口端に複数のボルトを介して取付けられている。エンドリテーナ43は、車輪支持軸受21の内輪側を支持筒部14Bの外周側で軸方向に位置決めしている。即ち、車輪支持軸受21は、その外輪側が車輪取付筒18の中空筒部18Aにより軸方向に位置決めされ、内輪側がエンドリテーナ43により軸方向に位置決めされている。エンドリテーナ43は、環状のリング体として形成され、その内周側は連結筒体39の段差部39Aに当接している。これにより、エンドリテーナ43は、スピンドル14の開口側で連結筒体39の抜止めを行っている。
【0053】
次に、減速歯車機構24(即ち、第1,第2の遊星歯車減速機構25,33)および車輪支持軸受20,21等を潤滑しつつ、冷却する潤滑油供給装置44について説明する。
【0054】
この潤滑油供給装置44は、後述の隔壁45、吸込管路46、供給管路47、潤滑ポンプ48、オイルクーラ49、内側リテーナ50、外側リテーナ51および油通路53等を含んで構成されている。
図2および
図3に示すように、車輪取付筒18の内部には潤滑油100が貯留されている。第1,第2の遊星歯車減速機構25,33は、潤滑ポンプ48からオイルクーラ49、供給管路47を介して潤滑油100が供給された状態で作動する。
【0055】
図2に示す車両の停車状態(車輪取付筒18の停止状態)において、潤滑油100の液面は、例えばスピンドル14を構成する支持筒部14Bの最下部よりも低い位置にあり、かつ車輪支持軸受20,21の下側部位が潤滑油100中に浸漬されるような位置に設定されている。これにより、車両の走行時(走行駆動装置11の作動時)には、潤滑油100が各遊星歯車減速機構25,33によって攪拌されて温度上昇するのを抑えることができ、かつ潤滑油100の攪拌による抵抗を小さく抑えることができる。
【0056】
隔壁45はスピンドル14内に設けられている。この隔壁45は、環状の板体により形成されている。隔壁45の外周側は、スピンドル14の大径筒部14Aの内周側にボルト等を用いて着脱可能に取付けられている。ここで、隔壁45は、スピンドル14内を、軸方向一側に位置し走行用モータ16が収容されるモータ収容空間部45Aと、軸方向他側に位置しスピンドル14の支持筒部14B内と連通する筒状空間部45Bとに画成している。
【0057】
吸込管路46は車輪取付筒18内に貯溜された潤滑油100を回収するための吸込側配管部である。この吸込管路46は、長さ方向の一側がモータ収容空間部45A内に配置されると共に、アクスルハウジング12の懸架筒13内を軸方向に延びて設けられ、後述する潤滑ポンプ48の吸込側に接続されている。筒状空間部45B内に位置する吸込管路46の長さ方向の中間部は、車輪取付筒18側に向けてスピンドル14内を軸方向に延びている。吸込管路46の先端側(長さ方向他側)は、スピンドル14内で後述の外側リテーナ51を貫通し、連結筒体39のガイド凹部39Bに沿って軸方向に延びている。
【0058】
さらに、吸込管路46の先端側は、連結筒体39のガイド凹部39Bの端部から下側へとL字状に屈曲して延びた吸込み部46Aを有している。この吸込み部46Aは、後述する油通路53の流出側に接続されている。これにより、吸込管路46の吸込み部46Aは、車輪取付筒18内の潤滑油100を油通路53を介して吸い上げ、この潤滑油100を潤滑ポンプ48の吸込側に回収させる。
【0059】
供給管路47は、減速歯車機構24に潤滑油100を供給する配管部である。この供給管路47は、スピンドル14内で吸込管路46、シャフト17よりも上方となる位置に配置され、スピンドル14とシャフト17との間を軸方向に延びている。供給管路47の先端部47Aは自由端となって、連結筒体39(第2のキャリア38)内へと延びている。
図3に示すように、供給管路47の先端部47Aは、キャリア38の筒状連結部38D内に向けて潤滑油を供給するように連結筒体39の内側に挿入されている。
【0060】
図2、
図3に示すように、供給管路47の長さ方向一側(基端側)は、潤滑ポンプ48の吐出側にオイルクーラ49を介して接続されている。潤滑ポンプ48は、後輪7の駆動源として用いられる走行用モータ16とは別のモータで駆動される。潤滑ポンプ48から吐出される潤滑油100は、オイルクーラ49により冷却される。冷却された潤滑油100は、供給管路47の先端部47A(長さ方向他側)からキャリア38の筒状連結部38D(連結筒体39)内に向けて供給される。この潤滑油100は、シャフト17の周囲を流下して該シャフト17を冷却すると共に、連結筒体39の内側から車輪取付筒18の下部側へと流下するように供給される。
【0061】
車輪取付筒18の下部側に貯留された潤滑油100は、潤滑ポンプ48の駆動により後述する油通路53の流入側から吸込管路46を介して吸込まれる。潤滑ポンプ48により吸込まれた潤滑油100は、オイルクーラ49によって冷却される。冷却された潤滑油100は、供給管路47を通じて第1,第2の遊星歯車減速機構25,33に供給され、これらの遊星歯車減速機構25,33を潤滑するものである。
【0062】
内側リテーナ50は、シャフト17の軸方向中間部に嵌合して設けられた環状体として形成されている。外側リテーナ51は、該内側リテーナ50の外周側にシャフトベアリング52を位置決めして保持する部材である。ここで、内側リテーナ50は、その内周側がシャフト17の中間部に圧入されることにより、シャフト17と一体に回転する。外側リテーナ51は、スピンドル14の内側突部14Fにボルト等を用いて固定されている。
図2および
図3に示すように、吸込管路46および供給管路47の途中部位は、外側リテーナ51を軸方向に貫通して延びている。これにより、吸込管路46および供給管路47の途中部位は、スピンドル14内に外側リテーナ51を介して位置決めされ、固定されている。
【0063】
シャフトベアリング52は、シャフト17側の内側リテーナ50とスピンドル14側の外側リテーナ51との間に配設されている。シャフトベアリング52は、シャフト17の軸方向中間部をスピンドル14の支持筒部14B内で内側リテーナ50、外側リテーナ51を介して回転可能に支持している。これにより、長尺なシャフト17は、軸方向の中間部での芯振れが抑制され、第1の太陽歯車26に対してシャフト17の安定した回転を伝えることができる。
【0064】
図3、
図4に示すように、第2のキャリア38(非回転のキャリア)には、車輪取付筒18内に溜められた潤滑油100を吸込むため油通路53が設けられている。この油通路53は、第2のキャリア38の支持板38A内を上,下方向(即ち、径方向)の下側へと延びた第1通路部53Aと、該第1通路部53Aの下端側部位から第2のキャリア38の連結部38C内を軸方向他側に向けて延びた第2通路部53Bとにより構成されている。閉塞プラグ54は、第1通路部53Aの下端側を第2のキャリア38の径方向の外側(外周面側)から閉塞している。これにより、第1通路部53Aと第2通路部53Bとは、L字状をなす油通路53を第2のキャリア38内に形成している。
【0065】
油通路53の第2通路部53Bは、第2のキャリア38の支持板38A,38B間を連結する4個の連結部38C(
図4参照)のうち、最も下側に位置する連結部38C内を軸方向に伸長して形成されている。即ち、第2通路部53Bは、その軸方向一側が第1通路部53Aの下端側に連通し、軸方向他側(流入側)は、第1の遊星歯車減速機構25側に向けて車輪取付筒18内に開口する流入端53Cとなっている。第1通路部53Aの上端側(径方向内側)部位は油通路53の流出側であり、この流出側には、吸込管路46の吸込み部46Aが接続されている。
【0066】
油通路53の流入端53Cは、第2のキャリア38の軸方向他側に位置する支持板38Bの端面(カップリング32と軸方向で対向する端面)のうち、第1の遊星歯車減速機構25の第1の内歯車27、カップリング32の径方向の外側部位、または第1のキャリア30と軸方向で対向する部位で、これらに向けて軸方向に開口している。
図4に示す如く、流入端53Cは、第2のキャリア38(非回転のキャリア)のうち、各第2の遊星歯車36をそれぞれ回転可能に支持する4個の遊星軸37よりも上,下方向の下側となる位置で車輪取付筒18内に開口している。
【0067】
第2のキャリア38の支持板38Bの端面には、油通路53の流入端53Cを外側から覆うように導油部材55が設けられている。この導油部材55は、車輪取付筒18の回転(
図5中の矢示A方向または矢示B方向の回転)によって車輪取付筒18内を流動する潤滑油100を、
図5中の矢示A1方向または矢示B1方向に油通路53の流入端53C内へと導くためのガイドである。車輪取付筒18は、例えば車両の前進時に矢示A方向に回転し、車両の後進時には矢示B方向に回転する。
【0068】
導油部材55は、
図5に示すように、略半円形状の筒体からなるガイド筒56と、該ガイド筒56の長さ方向の中間部に固定して設けられたダム形成板57とにより構成されている。ダム形成板57は、ガイド筒56の内周面に沿って接合された半円形状の平板(仕切板)からなり、導油部材55のガイド筒56内を2つの導入開口55A,55Bとして仕切っている。これにより、車輪取付筒18内の潤滑油100は、
図5中の矢示A1方向に流動するときに導入開口55A側から油通路53の流入端53C内へと導かれ、矢示B1方向に流動するときには、導入開口55B側から油通路53の流入端53C内へと導かれる。
【0069】
導油部材55のガイド筒56には、径方向の外側へと延びる上,下のフランジ板56A,56Bが設けられている。これら上,下のフランジ板56A,56Bは、第2のキャリア38の端面に当接した状態でビス等のねじ部材58により固定されている。
図4に示すように、第2のキャリア38の支持板38Bには、合計4個の連結部38Cのうち最も下側に位置する連結部38Cと対応する位置にねじ穴59が設けられ、これらのねじ穴59には、ガイド筒56を固定するねじ部材58(
図5参照)がそれぞれ螺着される。
【0070】
換言すると、導油部材55のガイド筒56は、第2のキャリア38(非回転のキャリア)の軸方向他側に位置する支持板38Bの端面(外側面)に油通路53の流入端53Cを覆った状態で設けられ、環状体からなる支持板38Bの外周円38B1の接線方向に延びている。導油部材55のダム形成板57は、第2のキャリア38の支持板38Bの端面とガイド筒56(筒体)との間に設けられている。ダム形成板57は、車輪取付筒18の回転(
図5中の矢示A方向または矢示B方向の回転)により前記筒体(導入開口55A,55B)内へと矢示A1方向または矢示B1方向に流入した潤滑油100を、油通路53の流入端53Cの周囲に滞留させつつ、油通路53内に流入させるガイド板である。
【0071】
本実施の形態によるダンプトラック1の走行駆動装置11は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0072】
ダンプトラック1のキャブ5に乗り込んだ運転者がエンジン8を起動すると、油圧源となる油圧ポンプが回転駆動されると共に、発電機(いずれも図示せず)により発電が行われる。ダンプトラック1の走行駆動時には、前記発電機から走行用モータ16に電力が供給されることにより、走行用モータ16が作動してシャフト17が回転する。
【0073】
このシャフト17の回転は、1段目の遊星歯車減速機構25の太陽歯車26から各遊星歯車28に減速されて伝達され、各遊星歯車28の回転は、内歯車27およびカップリング32を介して2段目の遊星歯車減速機構33の第2の太陽歯車34に減速されて伝達される。2段目の遊星歯車減速機構33では、第2の太陽歯車34の回転が各第2の遊星歯車36に減速されて伝達される。このとき、各第2の遊星歯車36を支持する第2のキャリア38は、別体の連結筒体39を用いてスピンドル14の支持筒部14Bにスプライン結合されているため、各第2の遊星歯車36の公転は拘束され、第2のキャリア38はスピンドル14と同様に非回転となっている。
【0074】
これにより、各第2の遊星歯車36は、第2の太陽歯車34の周囲で自転のみを行い、車輪取付筒18に固定された第2の内歯車35には、第2の遊星歯車36の自転により減速された回転が伝達される。これにより、車輪取付筒18は、1段目の遊星歯車減速機構25と2段目の遊星歯車減速機構33とで2段階に減速された大出力の回転トルクをもって回転する。この結果、駆動輪となる左,右の後輪7は、車輪取付筒18と一体に回転し、ダンプトラック1を走行駆動することができる。
【0075】
スピンドル14から車輪取付筒18内へと軸方向に延びるシャフト17は、その軸方向の中間部が内側リテーナ50と外側リテーナ51とによりシャフトベアリング52を介して回転可能に支持されている。これにより、シャフト17が高速回転したときに、シャフト17の偏心によって軸方向中間部が径方向に撓んだり、芯振れしたりするのをシャフトベアリング52の位置で抑えることができ、シャフト17の耐久性を高めることができる。
【0076】
また、走行駆動装置11の作動時においては、車輪取付筒18内に貯溜された潤滑油100が、車輪取付筒18の回転と第1,第2の遊星歯車減速機構25,33の各遊星歯車28,36等によって順次上方へと掻き上げられ、各歯車の噛合部位、スピンドル14の支持筒部14Bと車輪取付筒18との間の車輪支持軸受20,21等に供給される。そして、潤滑油100は順次下方へと滴下し、車輪取付筒18の下部側へと溜められる。
【0077】
車輪取付筒18の下部側に収容された潤滑油100は、潤滑ポンプ48により第2のキャリア38の下端側(即ち、油通路53の流入端53C側)から吸込管路46を介して強制的に吸い上げられる。潤滑ポンプ48から吐出される潤滑油100は、オイルクーラ49で冷却された後に供給管路47内を下流側へと流通する。そして、供給管路47の先端部47Aから車輪取付筒18内の減速歯車機構24(即ち、第1,第2の遊星歯車減速機構25,33)に向けて潤滑油100を連続的に供給することができる。
【0078】
ところで、ダンプトラック1の路上走行時、特に、高速走行時には、遠心力の影響によって車輪取付筒18内の潤滑油100が、
図3中に実線で示す位置から二点鎖線で示す位置へと車輪取付筒18の内壁側に張り付くように流動する。このため、小型の潤滑ポンプでは潤滑油の吸込みが難しくなり、従来技術では潤滑ポンプを停止させることがある。また、従来技術の場合は、車両の停車中は潤滑ポンプも停止するために、潤滑油の吸込みができなくなる。しかも、高速走行中は前述の如く遠心力の影響により油面が変動し、潤滑油の吸込みが難しくなる。これにより、装置全体の冷却、潤滑性能が低下してしまう。
【0079】
そこで、本実施の形態によるダンプトラック1の走行駆動装置11は、最終段の遊星歯車減速機構33に用いる第2のキャリア38を、スピンドル14の開口側に非回転状態で取付け、第2のキャリア38には、車輪取付筒18内の潤滑油100を吸込み、吸込管路46内へと流通させる油通路53を設けている。この油通路53は、第2のキャリア38の支持板38A内を上,下方向(即ち、径方向)の下側へと延びた第1通路部53Aと、該第1通路部53Aの下端側部位から第2のキャリア38の連結部38C内を支持板38Bへと軸方向に延びた第2通路部53Bとにより構成されている。
【0080】
油通路53の第2通路部53Bは、その軸方向一側が第1通路部53Aの下端側に連通し、軸方向他側(流入側)は、第1の遊星歯車減速機構25と支持板38Bとの間で車輪取付筒18内に開口する流入端53Cとなっている。第1通路部53Aの上端側(径方向内側)部位は油通路53の流出側であり、この流出側には、吸込管路46の吸込み部46Aが接続されている。
【0081】
これにより、車輪取付筒18内に収容された潤滑油100は、高速走行時の遠心力の影響等で
図3中に二点鎖線で示す位置へと車輪取付筒18の内壁側に張り付くように流動した状態でも、潤滑ポンプ48によって潤滑油100を確実に吸込むことができる。この潤滑油100は、第2のキャリア38の下端側(即ち、油通路53の流入端53C側)から吸込管路46を介して潤滑ポンプ48により強制的に吸い上げられる。潤滑ポンプ48から吐出される潤滑油100は、オイルクーラ49で冷却された後に供給管路47内を下流側へと流通し、供給管路47の先端部47Aから車輪取付筒18内の減速歯車機構24(即ち、第1,第2の遊星歯車減速機構25,33)に向けて潤滑油100を連続的に供給することができる。
【0082】
特に、油通路53の流入端53Cは、第2のキャリア38の軸方向他側に位置する支持板38Bの外側面(カップリング32と軸方向で対向する端面)のうち、第1の遊星歯車減速機構25の第1の内歯車27、カップリング32の径方向の外側部位、または第1のキャリア30と軸方向で対向する部位で、これらに向けて軸方向に開口している。
図4に示す如く、流入端53Cは、第2のキャリア38(非回転のキャリア)のうち、各第2の遊星歯車36をそれぞれ回転可能に支持する4個の遊星軸37よりも上,下方向の下側となる位置で車輪取付筒18内に開口している。
【0083】
これにより、車両の停車中でも、高速走行中でも、油通路53の流入端53Cを車輪取付筒18内の潤滑油100に浸漬された状態に保持することができる。このため、例えば高速走行時の遠心力で
図3中に二点鎖線で示す位置へと車輪取付筒18の内壁側に張り付くように流動している潤滑油100を、潤滑ポンプ48は、油通路53の流入端53Cから吸込管路46を介して吸込むことができ、潤滑油100に対する吸込性能を良好に保つことができる。
【0084】
しかも、第2のキャリア38の支持板38Bの端面には、油通路53の流入端53Cを外側から覆うように導油部材55が設けられている。この導油部材55は、車輪取付筒18の回転(
図5中の矢示A方向または矢示B方向の回転)によって車輪取付筒18内を流動する潤滑油100を、
図5中の矢示A1方向または矢示B1方向に油通路53の流入端53C内へと導く。
【0085】
このため、例えば車両の前進時に車輪取付筒18が矢示A方向に回転駆動されるときに、車輪取付筒18内の潤滑油100は、
図5中の矢示A1方向に流動して導油部材55の導入開口55A側からダム形成板57により油通路53の流入端53C内へと導かれる。また、車両の後進時には車輪取付筒18が矢示B方向に回転駆動され、車輪取付筒18内の潤滑油100は、
図5中の矢示B1方向に流動してダム形成板57により導油部材55の導入開口55B側から油通路53の流入端53C内へと導かれる。これにより、車両の前進,後進時に車輪取付筒18内の潤滑油100を油通路53の流入端53Cから、潤滑ポンプ48により吸込管路46を介して効率的に吸込むことができ、潤滑油100に対する吸込性能をより一層高めることができる。
【0086】
また、本実施の形態では、潤滑ポンプ48が後輪7の駆動源(走行用モータ16)とは別のモータで駆動される。このため、車両の停車時でも潤滑ポンプ48を駆動して車輪取付筒18内の潤滑油100を冷却し続けることができる。従って、ダンプトラック1の停車時でも、高速運転時でも潤滑油100の吸込み、循環を安定して行うことができ、装置全体の冷却、潤滑性能を向上することができる。
【0087】
しかも、本実施の形態によれば、第2のキャリア38に設けた油通路53の流入端53Cは、支持板38Bの外側面のうち第1の遊星歯車減速機構25の構成部品と軸方向で対向する部位で、これに向けて開口している。第1の遊星歯車減速機構25の構成部品(例えば、第1の内歯車27)およびカップリング32は、第2の遊星歯車減速機構33よりも高速で回転する。このため、第2のキャリア38に設けた油通路53の流入端53C近傍では、潤滑油100がより高温となって粘度が低くなる。これにより、油通路53の流入端53C側に導油部材55を設けることで、第2のキャリア38に対して速く流れている潤滑油100の流れ(動圧)を利用して、油通路53の流入端53Cから潤滑油100を効率的に吸込むことができ、潤滑ポンプ48の吸込性能を向上することができる。
【0088】
さらに、導油部材55のダム形成板57は、第2のキャリア38の支持板38Bの端面とガイド筒56(筒体)との間に設けられている。ダム形成板57は、車輪取付筒18の回転(
図5中の矢示A方向または矢示B方向の回転)により前記筒体(導入開口55A,55B)内へと矢示A1方向または矢示B1方向に流入した潤滑油100を、油通路53の流入端53Cの周囲に滞留させつつ流入させることができる。これにより、相対的に低粘度の潤滑油100を油通路53の流入端53Cから効率的に吸込むことができ、潤滑ポンプ48の吸込性能を向上することができる。
【0089】
なお、前記実施の形態では、
図5に示すように、導油部材55のガイド筒56を半円形状の筒体として形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、導油部材55のガイド筒56は、必ずしも半円形状の筒体として形成する必要はなく、他の円弧形状または非円形状をなす筒体であってもよい。即ち、導油部材55のガイド筒56は、支持板38Bの端面(外側面)で油通路53の流入端53Cを覆い、外周円38B1の接線方向(車両の前,後方向)に開口する筒体であればよく、長円形状の筒体であっても、多角形(例えば、三角形、四角形)状の筒体であってもよい。
【0090】
また、前記実施の形態では、スピンドル14(支持筒部14B)の開口端側に別体の連結筒体39を用いて、第2のキャリア38をスプライン結合する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、別体の連結筒体39は必ずしも設ける必要はない。例えば、第2のキャリア38に設けた筒状連結部38Dをスピンドルの開口端側に直接的にスプライン結合して、第2のキャリアを非回転にする構成としてもよい。
【0091】
また、前記実施の形態では、減速歯車機構24を2段の遊星歯車減速機構25,33により構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば減速歯車機構を3段以上の遊星歯車減速機構により構成してもよい。
【0092】
さらに、前記各実施の形態では、後輪駆動式のダンプトラック1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば前輪駆動式のダンプトラック、または前,後輪を共に駆動する4輪駆動式のダンプトラックにも適用することができる。