(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中筒の前記ハニカム構造体を覆う部分の面積に対する、前記中筒の前記ハニカム構造体を覆う部分に形成された前記連通孔の開口面積の割合が、50%以下である、請求項1に記載の熱交換部品。
前記ハニカム構造体の径方向における、前記内筒と前記中筒との距離が、前記ハニカム構造体の径の0.1〜10%に相当する長さである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱交換部品。
前記ケーシングが、2つ以上の前記中筒を有し、前記2つ以上の中筒は、前記内側外周流路と前記外側外周流路との間に形成される、1つ以上の中間外周流路を区画形成し、
前記2つ以上の中筒のうち、前記内筒側の中筒に、前記連通孔として、前記内側外周流路と前記中間外周流路とを連通する内側連通孔が形成され、前記外筒側の中筒に、前記連通孔として、前記中間外周流路と前記外側外周流路とを連通する外側連通孔が形成されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱交換部品。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0022】
(1)熱交換部品:
本発明の熱交換部品の一の実施形態は、
図1〜
図2Bに示すような、セラミックを主成分とする隔壁を有する柱状のハニカム構造体1と、ハニカム構造体1の外周面4を覆うように配置されたケーシング(Casing)10とを備える熱交換部品100である。ハニカム構造体1には、隔壁3によって、第一の端面から第二の端面まで延び、第一の流体の流路となる複数のセル2が区画形成されている。ケーシング10は、ハニカム構造体1の外周面4に嵌合するように配置された内筒11と、内筒11を覆うように配置された中筒12と、中筒12を覆うように配置された外筒13とを有している。また、内筒11と外筒13との間に、第二の流体の流路となる外周流路16が形成されている。また、外周流路16は、内筒11の少なくとも一部と中筒12の少なくとも一部との間に形成された内側外周流路16a、及び、中筒12の少なくとも一部と外筒13の少なくとも一部との間に形成された外側外周流路16bを含む。そして、中筒12のハニカム構造体1を覆う部分に、内側外周流路16aと外側外周流路16bとを連通する少なくとも一つの連通孔17が形成されている。
図1〜
図2Bに示す熱交換部品100においては、ケーシング10の外筒13に、第二の流体F1を外周流路16に導入するための導入口14、及び第二の流体F1を外周流路16から排出するための排出口15が形成されている。導入口14、及び排出口15は、外筒13に少なくとも一対形成されていることが好ましい。また、本明細書において、「嵌合する」とは、ハニカム構造体1と、内筒11とが、相互にはまり合った状態で固定されていることをいう。このため、ハニカム構造体1と内筒11との嵌合においては、すきま嵌め、締まり嵌め、焼き嵌め等の嵌め合いによる固定方法に限定されることはなく、例えば、ろう付けや拡散接合等により、ハニカム構造体1と内筒11とが相互に固定されていてもよい。
【0023】
ここで、エンジンの排ガスから排熱を回収し、回収した排熱をエンジンに与えるような熱交換器に、熱交換部品を用いる場合には、排熱の回収を促進させる必要がある場合と、排熱の回収を抑制させる必要がある場合がある。即ち、エンジンの始動時等のエンジンが低温となっている時(低負荷時)には排熱を回収し、回収した排熱によりエンジンの温度を早期に上げることが望まれるため、排熱の回収を促進する必要がある。また、エンジンが高温となっている時(高負荷時)には、排熱を回収し、回収した排熱によりエンジンの温度を上げる必要がないため、排熱の回収を抑制する必要がある。本実施形態の熱交換部品は、エンジンの排ガスから排熱を回収する熱交換器の一部として使用する際に、外部から制御することなく、熱交換部品の熱交換(具体的には、第一の流体と第二の流体の熱交換)の促進と抑制の切り替えが可能である。即ち、本実施形態の熱交換部品は、内側外周流路の、第二の流体の状態変化によって、熱交換の促進と抑制の切り替えが可能である。例えば、第一の流体として「排ガス」、第二の流体として「熱交換部品を構成する内筒(内筒の外周面)の最高到達温度よりも沸点の低い冷媒」を用いると、以下のような場合には、熱交換が促進される。すなわち、熱交換部品を構成する内筒(具体的には、内筒の外周面)の温度が、冷媒の沸点未満である場合には、外周流路が液体の冷媒で満たされることとなる。このような場合には、第一の流体(例えば、排ガス)と、第二の流体(液体の冷媒)の熱交換が促進される。一方、熱交換部品を構成する内筒(内筒の外周面)の温度が、冷媒の沸点以上である場合には、内側外周流路の冷媒が沸騰気化し、内側外周流路に、沸騰気化により生じた気体状態の冷媒が存在するようになる。このような場合には、第一の流体と、第二の流体(液体の冷媒)の熱交換が抑制される。即ち、内側外周流路に、沸騰気化により生じた気体状態の冷媒が存在する場合に、第一の流体と、第二の流体(液体の冷媒)の熱交換が抑制される。例えば、内側外周流路に気体状態の冷媒が存在することにより、液体状態の冷媒が、内筒の表面の少なくとも一部と接触していない状態を維持し易くなり、第一の流体と第二の流体(液体の冷媒)の熱交換が抑制される。また、内側外周流路の全体積に占める、沸騰気化により生じた気体状態の冷媒の体積比率が高いほど、第一の流体と、第二の流体(液体の冷媒)の熱交換がより抑制される。即ち、内側外周流路が、沸騰気化により生じた気体状態の冷媒で満たされている場合に、第一の流体と、第二の流体(液体の冷媒)の熱交換が極めて有効に抑制される。このため、熱交換を抑制させたい温度以下の沸点を持つ冷媒を選択し、且つ、熱交換を抑制させたい温度において内側外周流路に、沸騰気化により生じた気体状態の冷媒が存在するような外周流路の構成とすれば、熱交換を抑制させたい温度において、熱交換が抑制される。また、熱交換部品の温度が、熱交換を抑制させたい温度以下(熱交換を促進させたい温度)となった場合には、気体状態の冷媒が液体となり、外周流路が液体状態の冷媒で満たされるため、熱交換が促進される。なお、第一の流体は、排ガスに限られるものではなく、液体であっても気体であってもよい。また、本明細書において、「外周流路、外側外周流路、又は内側外周流路が、液体状態、又は気体状態の冷媒で満たされる」とは、「外周流路、外側外周流路、又は内側外周流路の全体積の80%以上を液体状態、又は気体状態の冷媒が占めている」ことをいう。
【0024】
ここで、
図1は、本発明の熱交換部品の一の実施形態を示す模式的な断面図であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面を示す断面図である。
図2Aは、
図1に示す熱交換部品の外周流路が、液体状態の第二の流体で満たされ、第一の流体の流路を第一の流体が通過している状態(熱交換促進時)を示す模式的な断面図である。
図2Bは、
図1に示す熱交換部品の内側外周流路が、気体状態の第二の流体で満たされ、外側外周流路が液体状態の第二の流体で満たされ、第一の流体の流路を第一の流体が通過している状態(熱交換抑制時)を示す模式的な断面図である。
【0025】
ここで、
図2A及び
図2Bを参照し、熱交換促進時、及び熱交換抑制時の熱交換部品の第二の流体F1,F2の様子について、詳細に説明する。第一の流体Eとして排ガス、第二の流体F1,F2として、内筒11(内筒11の外周面)の最高到達温度よりも沸点の低い冷媒を用いた場合には、熱交換促進時、及び熱交換抑制時の熱交換部品の第二の流体F1,F2の様子は、以下のようになる。内筒11(内筒11の外周面)の温度が第二の流体F1の沸点よりも低い場合には、
図2Aに示すように、第一の流体Eと第二の流体F1との内筒11を介した熱の授受(熱交換)において、第二の流体F1が液体状態で存在する。ここで、符号F1は、液体状態の第二の流体を示す。第二の流体F1が液体状態で存在する場合には、外周流路16の内側外周流路16a及び外側外周流路16bは、共に液体状態の第二の流体F1で満たされることとなる。このような状態においては、第一の流体Eと、液体状態の第二の流体F1とは、内筒11を介して、直に熱交換する。したがって、内筒11(内筒11の外周面)の温度が第二の流体F1の沸点よりも低い場合は、第一の流体Eと液体状態の第二の流体F1との間の熱交換が促進される。一方で、内筒11(内筒11の外周面)の温度が第二の流体F1の沸点よりも高い場合には、
図2Bに示すように、内筒11の外周面側にて、第二の流体F1の気化が生じ、内側外周流路16a内に、気体状態の第二の流体F2が存在することとなる。このような状態においては、第一の流体Eと、気体状態の第二の流体F2とが、内筒11の一部を介して熱交換すると同時に、第一の流体Eと液体状態の第二の流体F1とが、内筒11の一部を介して熱交換する。したがって、第一の流体Eと液体状態の第二の流体F1との間の熱交換が抑制される。また、内側外周流路16aの全体積に占める、沸騰気化により生じた気体状態の第二の流体F2の体積比率が高いほど、第一の流体Eと液体状態の第二の流体F1との熱交換が抑制される。ここで、符号F2は、気体状態の第二の流体を示す。第二の流体F1の気化が継続に生じると、内側外周流路16a内は、徐々に気体状態の第二の流体F2で満たされることとなる。ただし、外周流路16のうちの外側外周流路16bは、中筒12によって内側外周流路16aと一部隔絶されているため、第二の流体F1の気化は、主に、内筒11の外周面近傍にて生じることとなる。即ち、外側外周流路16bは液体状態の第二の流体F1で満たされる状態が維持されている。このような状態においては、第一の流体Eと、気体状態の第二の流体F2とが、内筒11を介して、熱交換する。ただし、気体状態の第二の流体F2は、液体状態の第二の流体F1に比して単位体積当たりの熱容量が小さいため、第一の流体Eと第二の流体F1,F2との間の熱交換が抑制されることとなる。別言すれば、このような状態においては、第一の流体Eと、外側外周流路16bを通過する液体状態の第二の流体F1とは、内筒11及び内側外周流路16a内に存在する気体状態の第二の流体F2を介して熱交換することとなる。このため、内側外周流路16a内が、気体状態の第二の流体F2で満たされていない場合に比して、更に熱交換が抑制されることとなる。この際、内側外周流路16a内の気体状態の第二の流体F2が、熱交換時の断熱材として機能し、第一の流体Eと、液体状態の第二の流体F1との間の熱交換が抑制される。なお、熱交換促進時においては、内側外周流路16aに、液体状態の第二の流体F1が存在していてもよく、外側外周流路16bに気体状態の第二の流体F2が存在することがあってもよい。また、内側外周流路16a内の気体状態の第二の流体F2は、例えば、第一の流体Eの温度が低下すると、相変化して液体状態の第二の流体F1となる。
【0026】
中筒に形成された連通孔の形状に特に制限はない。連通孔の形状は、例えば、円形状、楕円形状、多角形状等としてもよいし、セルの延びる方向に平行なスリット形状、中筒の表面に沿った螺旋状のスリット形状等としてもよい。
【0027】
中筒のハニカム構造体を覆う部分の面積に対する、中筒のハニカム構造体を覆う部分に形成された連通孔の開口面積の割合が、50%以下であることが好ましく、20%以下であることが更に好ましく、10%以下であることが特に好ましい。なお、「中筒のハニカム構造体を覆う部分の面積」とは、「中筒のハニカム構造体を覆う部分における、実体部分及び連通孔が形成された部分の総面積」のことである。このように構成することにより、熱交換部品の熱交換の抑制と促進の切り替えを好適に制御することができる。例えば、内側外周流路の全体積に占める、沸騰気化により生じた気体状態の第二の流体の体積比率が高いほど、熱交換が抑制される。そして、中筒のハニカム構造体を覆う部分の面積に対する、中筒のハニカム構造体を覆う部分に形成された連通孔の開口面積の割合によっても、内側外周流路の全体積に占める、沸騰気化により生じた第二の流体の体積比率を調節することができる。したがって、中筒のハニカム構造体を覆う部分の面積に対する、中筒のハニカム構造体を覆う部分に形成された連通孔の開口面積の割合によっても、熱交換部品の熱交換の抑制と促進の切り替えを制御することができる。以下、「中筒のハニカム構造体を覆う部分」のことを、単に「ハニカム構造体被覆部分」ということがある。
【0028】
中筒のハニカム構造体を覆う部分(ハニカム構造体被覆部分)に、複数の連通孔が形成されていてもよい。また、ハニカム構造体被覆部分に、複数の連通孔が形成されている場合には、ハニカム構造体被覆部分の面積に対する、ハニカム構造体被覆部分に形成された複数の連通孔の開口面積の和の割合が50%以下であることが好ましく、20%以下であることが更に好ましく、10%以下であることが特に好ましい。このように構成することにより、熱交換部品の熱交換の抑制と促進の切り替えを制御することができる。即ち、内側外周流路の全体積に占める、気体状態の第二の流体の体積比率が高いほど、熱交換が抑制される。そして、ハニカム構造体被覆部分の面積に対する、ハニカム構造体被覆部分に形成された複数の連通孔の開口面積の和の割合によっても、内側外周流路の全体積に占める、沸騰気化により生じた気体状態の第二の流体の体積比率を調節することができる。したがって、ハニカム構造体被覆部分の面積に対する、ハニカム構造体被覆部分に形成された複数の連通孔の開口面積の和の割合によっても、熱交換部品の熱交換の抑制と促進の切り替えを制御することができる。
【0029】
中筒のハニカム構造体を覆う部分(ハニカム構造体被覆部分)に、複数の連通孔が形成されている場合には、1つの連通孔の開口面積が、0.5〜5000mm
2であることが好ましく、1〜1000mm
2であることが更に好ましく、2〜100mm
2であることが特に好ましい。このように構成することにより、熱交換部品の熱交換の抑制と促進の切り替えを制御することができる。例えば、内側外周流路の全体積に占める、沸騰気化により生じた気体状態の第二の流体の体積比率が高いほど、熱交換が抑制される。そして、1つの連通孔の開口面積によっても、内側外周流路の全体積に占める、沸騰気化により生じた第二の流体の体積比率を調節することができる。したがって、1つの連通孔の開口面積によっても、熱交換部品の熱交換の抑制と促進の切り替えを制御することができる。
【0030】
中筒のハニカム構造体を覆う部分に、複数の連通孔が形成されている場合には、以下のように構成されていることが好ましい。なお、ハニカム構造体を覆う部分を、「ハニカム構造体被覆部分」ということがある。ハニカム構造体被覆部分の面積に対する、ハニカム構造体被覆部分に形成された複数の連通孔の開口面積の和の割合が50%以下であり、且つ、1つの連通孔の開口面積が0.5〜5000mm
2であることが好ましい。また、ハニカム構造体被覆部分の面積に対する、ハニカム構造体被覆部分に形成された複数の連通孔の開口面積の和の割合が10%以下であり、且つ、1つの連通孔の開口面積が0.5〜1000mm
2であることが更に好ましい。更に、ハニカム構造体被覆部分の面積に対する、ハニカム構造体被覆部分に形成された複数の連通孔の開口面積の和の割合が5%以下であり、且つ、1つの連通孔の開口面積が0.5〜500mm
2であることが特に好ましい。このように構成することにより、熱交換部品の熱交換の抑制と促進の切り替えを高度に制御することができる。
【0031】
中筒のハニカム構造体を覆う部分(ハニカム構造体被覆部分)に、複数の連通孔が形成されている場合は、連通孔の数が、2〜1000個であることが好ましく、10〜1000個であることが更に好ましく、20〜1000個であることが特に好ましい。
【0032】
中筒のハニカム構造体を覆う部分(ハニカム構造体被覆部分)に、複数の連通孔が形成されている場合は、複数の連通孔が、ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面において、下記の第一領域、及び第二領域のみに設けられていてもよい。第一領域、及び第二領域とは、以下のことを意味する。ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する、熱交換部品の断面において、まず、ハニカム構造体の幾何学的な中心を原点OとするXY座標を仮想的に規定する。上記したXY座標は、X軸とY軸が互いに直交している座標系であれば、特に制限はない。例えば、X軸は、ハニカム構造体の断面の長さをノギスで計測した際に、最も長さが長くなる方向にとってもよい。また、X軸は、ハニカム構造体の断面の長さをノギスで計測した際に、最も長さが短くなる方向にとってもよい。次に、上記したXY座標に対して、原点Oを通過する仮想直線A及びBを引く。仮想直線A及びBが、それぞれX軸となす角は、+60°及び−60°とする。そして、仮想直線A及びBにより4つに分けられた熱交換部品の断面のうち、仮想直線A及びBが120°で交わる領域の一方を第一領域とし、仮想直線A及びBが120°で交わる領域の他方を第二領域とする。なお、複数の連通孔が、第一領域、及び第二領域のうちの一方の領域のみに設けられていてもよいし、第一領域、及び第二領域の両方の領域のみに設けられていてもよい。
【0033】
ハニカム構造体の径方向における、内筒と中筒との距離が、ハニカム構造体の径の0.1〜10%に相当する長さであることが好ましく、0.1〜5%に相当する長さであることが更に好ましく、0.1〜2.5%に相当する長さであることが特に好ましい。また、別の態様として、上述した距離が、ハニカム構造体の径の0.5〜10%に相当する長さであることが好ましく、0.5〜5%に相当する長さであることが更に好ましく、0.5〜2.5%に相当する長さであることが特に好ましい。このように構成することにより、熱交換部品の熱交換の抑制と促進の切り替えを制御することができる。熱交換部品においては、内側外周流路の全体積に占める、沸騰気化により生じた気体状態の第二の流体の体積比率が高いほど、熱交換が抑制される。そして、ハニカム構造体の径に対する、ハニカム構造体の径方向における、内筒と中筒との距離の割合によっても、内側外周流路の全体積に占める、沸騰気化により生じた気体状態の第二の流体の体積比率を調節することができる。したがって、ハニカム構造体の径に対する、ハニカム構造体の径方向における、内筒と中筒との距離の割合によっても、熱交換部品の熱交換の抑制と促進の切り替えを制御することができる。なお、ハニカム構造体の径方向とは、ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する方向のことである。また、ハニカム構造体の径は、ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面における、ハニカム構造体の断面形状が円である場合には、当該円の半径とする。また、ハニカム構造体の断面形状が円でない形状である場合には、ハニカム構造体の径は、当該形状に内接する最大内接円の半径とする。また、内筒と中筒との距離は、内筒と中筒との最短距離のことである。熱交換時(別言すれば、排熱回収時)においては、内側外周流路内の冷媒を介して熱交換が行われるため、内筒と中筒との距離が大き過ぎると、排熱回収性が低下することがある。内筒と中筒との距離を、ハニカム構造体の径の0.1〜10%に相当する長さとすることで、高水温時の回収熱量を増やすことなく、低水温時の回収熱量を向上させることができる。
【0034】
図5に示すように、内筒11と中筒12との間であって、中筒12に連通孔17が形成されている箇所に、網目構造を有するメッシュ部材18が配設されていてもよい。
図5は、本発明の熱交換部品の他の実施形態を示す模式的な断面図であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面を示す断面図である。
図5において、
図1〜
図2Bに示す熱交換部品100と同様の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0035】
図5に示すような熱交換部品102によれば、内側外周流路16a内で沸騰気化した第二の流体(例えば、気体状態の冷媒)の抜けを変えずに、内側外周流路16a内に侵入しようとする液体の第二の流体の通過抵抗を大きくすることができる。このため、
図5に示すような熱交換部品102によれば、内側外周流路16a内が気体で満たされ易くなり、内側外周流路16aによる熱遮断性を向上させることができる。また、内側外周流路16a内が気体で満たされた状態を維持するためには、内側外周流路16a内に一定量の液体の第二の流体(例えば、液体状態の冷媒)が導入されることが好ましい。メッシュ部材18を配設することで、メッシュ部材18の網目を伝って、液体の第二の流体を緩やかに流れ込むようにすることができる。例えば、メッシュ部材18が無い場合には、液体状態の第二の流体が、液滴の状態で間欠的に内側外周流路16a内に導入されることがある。液滴の第二の流体が一気に沸騰気化すると、急激な体積膨張によって熱交換部品内に振動が発生したり、大きな沸騰音が発生したりすることがある。メッシュ部材18を配設し、液体の第二の流体を緩やかに流れ込むようにすることにより、振動や沸騰音の発生を有効に抑制することができる。
【0036】
メッシュ部材18のメッシュの粗さ等については特に制限はないが、例えば、メッシュの目開きが、0.02〜4.5mmであることが好ましく、0.1〜1.0mmであることが更に好ましい。このように構成することによって、沸騰気化した気体状態の第二の流体の抜けを変えずに、液体の第二の流体の通過抵抗を大きくすることができる。
【0037】
図6〜
図8に示す熱交換部品103のように、連通孔17が、ハニカム構造体1の端部に相当する位置に形成されていてもよい。この際、ハニカム構造体1の端部に相当する位置に形成された連通孔17が、ハニカム構造体1の外周を囲うような環状に形成されていてもよい。ここで、
図6は、本発明の熱交換部品の他の実施形態を示す模式的な断面図であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向に平行な断面を示す断面図である。
図7は、
図6のA−A’断面を模式的に示す断面図である。
図8は、
図6のB−B’断面を模式的に示す断面図である。
図6〜
図8において、
図1〜
図2Bに示す熱交換部品100と同様の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0038】
図6〜
図8に示す熱交換部品103は、内側外周流路16a内が気体で満たされた場合であっても、ハニカム構造体1の端部側において、「内筒11の外周面に、液体の第二の流体が接触している状態」を維持することができる。このため、内筒11の端部が過剰に加熱され難く、内筒11の過剰な熱膨張を有効に抑制することができる。したがって、
図6〜
図8に示す熱交換部品103によれば、内筒11の過剰な熱膨張に伴う、ハニカム構造体1に対する拘束力の低下を有効に抑制することができる。即ち、
図6〜
図8に示す熱交換部品103は、内筒11の端部が第二の流体によって継続的に冷却されているため、特に、熱交換が抑制されている状態において、内筒11からのハニカム構造体1の抜け落ちや位置ずれを有効に抑制することができる。
【0039】
ケーシングが、2つ以上の中筒を有し、2つ以上の中筒は、内側外周流路と外側外周流路との間に形成される1つ以上の中間外周流路を区画形成していてもよい。中間外周流路が区画形成されている場合には、連通孔として、内筒側の中筒に、内側外周流路と中間外周流路とを連通する内側連通孔が形成されている。連通孔として、外筒側の中筒に、中間外周流路と外側外周流路とを連通する外側連通孔が形成されている。ケーシングが、3つ以上の中筒を有し、内側外周流路と外側外周流路との間に2つ以上の中間外周流路が区画形成されている場合には、連通孔として、内筒側の中筒、及び外筒側の中筒以外の中筒に、それぞれ中間外周流路同士を連通する中間連通孔が形成されている。このように構成することにより、第一の流体と第二の流体とで熱交換が行われる際に、第二の流体に生じる対流が、中間外周流路が区画形成されていない場合に比べて複雑になる。このため、例えば、内側外周流路内の第二の流体が突沸し、内側外周流路を区画形成している中筒の一部と内筒とに局所的に大きな圧力がかかることを有効に抑止することができる。また、内側外周流路が気体状態の第二の流体で満たされる際には、内側外周流路と中間外周流路とを連通する内側連通孔において、以下のような力の釣り合いが生じる。即ち、重力の影響を除くと、内側外周流路内の気体状態の第二の流体が外側外周流路へ向かう力と、外側外周流路内の液体状態の第二の流体が内側外周流路へ向かう力とが釣り合っている。このため、外側外周流路内の液体状態の第二の流体の、内側外周流路へと向かう力が減少すると、内側外周流路内は気体状態の第二の流体で満たされやすくなる。したがって、上記のように構成することにより、内側外周流路内の液体状態の第二の流体は、中間外周流路が区画形成されていない場合に比べて、内側外周流路内へ流れ込みにくくなるため、内側外周流路内は気体状態の第二の流体で満たされやすくなる。
【0040】
ケーシングが、2つの中筒を有し、2つの中筒が内側外周流路と外側外周流路との間に形成される1つの中間外周流路を区画形成している場合は、内側連通孔と、外側連通孔とが、以下のように形成されていることが好ましい。まず、2つの中筒のうち、より内側に配置されている中筒を「内側中筒」とし、より外側に配置されている中筒を「外側中筒」とする。そして、内側中筒に形成された一の内側連通孔を「内側連通孔a」とし、外側中筒に形成された一の外側連通孔を「外側連通孔b」とする。また、内側中筒の中心軸に直交する断面において、当該内側中筒の中心軸から放射状に延びる法線を、「内側中筒の法線」とする。また、内側中筒のそれぞれの法線の延びる方向を、適宜、「内側中筒の法線方向」ということがある。内側連通孔aと、外側連通孔bとは、内側中筒の法線方向において相互の開口部の位置が重なる部分の面積が、内側連通孔a及び外側連通孔bのうちの開口面積が大きい連通孔の開口面積に対して、80%以下であることが好ましい。上記した面積の比率は、50%以下であることが更に好ましく、30%以下であることがより更に好ましく、0%である(相互の開口部が重なっていない)ことが特に好ましい。「内側中筒の法線方向において相互の開口部の位置が重なる」とは、以下のような部分のことをいう。まず、内側連通孔aの周縁を通過する「内側中筒の法線」を、外側中筒の内面まで延長し、外側中筒の内面において、延長した法線によって囲われる部分を、開口部の重複範囲とする。そして、この「開口部の重複範囲」に、外側連通孔bの少なくとも一部が形成されている場合を、「相互の開口部の位置が重なっている」とする。外側連通孔bにおいては、上記した開口部の重複範囲に形成される部分を、「外側連通孔bの開口部の位置が重なる部分」とする。内側連通孔aにおいては、外側連通孔bの「開口部の位置が重なる部分」の周縁を通過する「内側中筒の法線」を、内側中筒の表面まで戻し、内側中筒の表面において、戻した法線によって囲われる部分を、「内側連通孔aの開口部の重なる部分」とする。上述した開口部の位置が重なる部分の面積の比率については、内側連通孔a及び外側連通孔bのうちの開口面積が大きい連通孔の開口面積に対して、当該開口面積が大きい方の連通孔における「開口部の位置が重なる部分」の面積の比率として求める。例えば、内側連通孔a及び外側連通孔bのうち、外側連通孔bの開口面積が大きい場合には、外側連通孔bの開口面積に対する、「外側連通孔bの開口部の位置が重なる部分」の面積の比率として求める。
【0041】
ケーシングが3つ以上の中筒を有し、3つ以上の中筒が内側外周流路と外側外周流路との間に形成される2つ以上の中間外周流路を区画形成している場合には、内側連通孔と、中間連通孔とが、以下のように形成されていることが好ましい。まず、3つ以上の中筒のうち、最も内側に配置されている中筒を「内側中筒」とし、内側中筒よりも外側、且つ内側中筒の最も近傍に配置される中筒を「中間中筒」とする。また、内側中筒に形成された一の内側連通孔を「内側連通孔a1」とし、「中間中筒」に形成された一の連通孔を「中間連通孔c1」とする。そして、「内側連通孔a1」及び「中間連通孔c1」が、上述した「内側連通孔a」及び「外側連通孔b」と同様の位置関係に形成されていることが好ましい。このように構成することにより、例えば、熱交換抑制時において、外周流路内の液体状態の第二流体は、内側外周流路内へ流れ込みにくくなる。このため、熱交換抑制時において、内側外周流路内が、気体状態の第二の流体で満たされやすくなる。
【0042】
上述したように、外側外周流路内の液体状態の第二の流体の、内側外周流路へと向かう力が減少すると、内側外周流路内は気体状態の第二の流体で満たされやすくなる。即ち、気体状態の第二の流体の蒸気圧が小さくても、内側外周流路内は気体状態の第二の流体で満たされやすくなる。このため、外側外周流路内の液体状態の第二の流体の、内側外周流路内へと向かう力が減少するようにする構成を適宜採用してもよい。例えば、外側外周流路内に凹凸を設けたり、内側連通孔、中間連通孔、及び外側連通孔の少なくとも1つの連通孔の開口部周縁に凸部を設けたりする等して、外側外周流路内の液体状態の第二の流体の、内側外周流路内へと向かう力が減少するように構成してもよい。
【0043】
また、図示は省略するが、本実施形態の熱交換部品においては、これまでに説明した熱交換部品を2つ以上備え、2つ以上の熱交換部品が第一の流体の流れ方向に直列に接続されたものであってもよい。例えば、ハニカム構造体の長さを半分にした熱交換部品を2つ備え、2つの熱交換部品が直接に接続されたものであってもよい。2つ以上の熱交換部品が直列に接続されたものとすることで、熱交換の抑制を行う高負荷時において、回収熱量を低減させることができる。なお、2つ以上の熱交換部品は、相互間に配管等を設けて、互いに間隔を空けて直列に接続されていてもよいし、上記した配管等を設けずに、隣接する熱交換部品同士を近接させた状態で接続されていてもよい。
【0044】
ハニカム構造体には、隔壁によって、第一の端面から第二の端面まで延び、第一の流体の流路となる複数のセルが区画形成されている。このように構成されていることにより、ハニカム構造体のセルを流通する第一の流体の熱を効率よく集熱し、外部に伝達することができる。
【0045】
ハニカム構造体の外形は、特に制限はない。ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面における断面形状は、円形、楕円形、四角形、またはその他の多角形であってもよい。
【0046】
ハニカム構造体の隔壁は、セラミックを主成分とするものである。「セラミックを主成分とする」とは、「隔壁の全質量に占めるセラミックの質量比率が50質量%以上であること」をいう。
【0047】
隔壁の気孔率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることが更に好ましく、3%以下であることが特に好ましい。隔壁の気孔率を10%以下とすることにより、熱伝導率を向上させることができる。なお、隔壁の気孔率は、アルキメデス法により測定した値である。
【0048】
隔壁は、熱伝導性が高いSiC(炭化珪素)を主成分として含むことが好ましい。なお、主成分とは、ハニカム構造体の50質量%以上がSiCであることを意味する。
【0049】
さらに具体的には、ハニカム構造体の材料としては、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、再結晶SiC、Si
3N
4、及びSiC等を採用することができる。
【0050】
ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面におけるセル形状としては、特に制限はない。円形、楕円形、三角形、四角形、六角形その他の多角形等の中から所望の形状を適宜選択すればよい。
【0051】
ハニカム構造体のセル密度(即ち、単位面積当たりのセルの数)については特に制限はない。セル密度は、適宜設計すればよいが、4〜320セル/cm
2の範囲であることが好ましい。セル密度を4セル/cm
2以上とすることにより、隔壁の強度、ひいてはハニカム構造体自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分なものとすることができる。また、セル密度を320セル/cm
2以下とすることにより、第一の流体が流れる際の圧力損失が大きくなることを防止することができる。
【0052】
ハニカム構造体のアイソスタティック強度は、1MPa以上が好ましく、5MPa以上が更に好ましい。ハニカム構造体のアイソスタティック強度が、1MPa以上であると、ハニカム構造体の耐久性を
、十分なものとすることができる。なお、ハニカム構造体のアイソスタティック強度の上限値は、100MPa程度である。ハニカム構造体のアイソスタティック強度は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505−87に規定されているアイソスタティック破壊強度の測定方法に準じて測定することができる。
【0053】
セルの延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造体の直径は、20〜200mmであることが好ましく、30〜100mmであることが好ましい。このような直径とすることにより、熱交換効率を向上させることができる。セルの延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造体の形状が円形でない場合には、当該ハニカム構造体の断面の形状に内接する最大内接円の直径を、セルの延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造体の直径とする。
【0054】
ハニカム構造体のセルの隔壁の厚さについても、目的に応じて適宜設計すればよく、特に制限はない。隔壁の厚さは、0.1〜1mmとすることが好ましく、0.2〜0.6mmとすることが更に好ましい。隔壁の厚さを0.1mm以上とすることにより、機械的強度を十分なものとし、衝撃や熱応力によって破損することを防止することができる。また、隔壁の厚さを1mm以下とすることにより、第一の流体の圧力損失が大きくなったり、熱媒体が透過する熱交換効率が低下したりするといった不具合を防止することができる。
【0055】
隔壁の密度は、0.5〜5g/cm
3であることが好ましい。隔壁の密度を0.5g/cm
3以上とすることにより、隔壁を十分な強度とし、第一の流体が流路内(セル内)を通り抜ける際の抵抗により隔壁が破損することを防止することができる。また、隔壁の密度を5g/cm
3以下とすることにより、ハニカム構造体を軽量化することができる。上記の範囲の密度とすることにより、ハニカム構造体を強固なものとすることができ、熱伝導率を向上させる効果も得られる。なお、隔壁の密度は、アルキメデス法により測定した値である。
【0056】
ハニカム構造体の熱伝導率は、50W/(m・K)以上であることが好ましく、100〜300W/(m・K)であることが更に好ましく、120〜300W/(m・K)であることが特に好ましい。ハニカム構造体の熱伝導率を、このような範囲とすることにより、熱伝導性が良好となり、効率よくハニカム構造体内の熱を、ケーシングの内筒に伝達することができる。なお、熱伝導率の値は、レーザーフラッシュ法により測定した値である。
【0057】
ハニカム構造体のセルに、第一の流体として排ガスを流す場合、ハニカム構造体の隔壁に触媒を担持させることが好ましい。隔壁に触媒を担持させると、排ガス中のCOやNO
xやHCなどを触媒反応によって無害な物質にすることが可能になり、これに加えて、触媒反応の際に生じる反応熱を熱交換に用いることが可能になる。触媒としては、貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、及び金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、及びバリウムからなる群から選択され
た少なくとも一種
の元素を含有
するものであることが好ましい。上記元素は、金属単体、金属酸化物、およびそれ以外の金属化合物として含有されていてもよい。
【0058】
触媒(触媒金属+担持体)の担持量としては、10〜400g/Lであることが好ましい。また、貴金属を含む触媒であれば、担持量が0.1〜5g/Lであることが好ましい。触媒(触媒金属+担持体)の担持量を10g/L以上とすると、触媒作用が発現しやすい。一方、400g/L以下とすると、圧力損失を抑え、製造コストの上昇を抑えることができる。担持体とは、触媒金属が担持される担体のことである。担持体としては、アルミナ、セリア、及びジルコニアからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものであることが好ましい。
【0059】
ケーシングの形状としては、内筒がハニカム構造体の外周面に嵌合するように配置され、中筒が内筒を覆うように配置され、且つ、外筒が中筒を覆うように構成されたものであれば、特に制限はない。
【0060】
ケーシングの材質としては、特に制限はない。ケーシングの材質としては、例えば、金属、セラミック等が挙げられる。金属としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮等を用いることができる。また、熱交換部品を、エンジンの排ガスから排熱を回収する用途に使用する場合等には、ケーシングの両端部分が、エンジンの排ガスが通過する配管に対して接続可能に構成されていてもよい。排ガスが通過する配管の内径と、ケーシングの両端部分の内径と、が異なる場合には、配管とケーシングとの間に、配管の内径が漸増又は漸減するガス導入管を有していてもよいし、配管とケーシングとが直接接続されていてもよい。ガス導入管を有さず、配管とケーシングとが直接接続されている場合には、ケーシングの内側外周流路に排ガスが当たることで、内側外周流路内の第二の流体が沸騰気化し易くなり、熱遮断性が向上する。
【0061】
第一の流体に、特に制限はない。熱交換部品が、自動車に搭載される熱交換器の一部として用いられる場合には、第一の流体は、排ガスであることが好ましい。
【0062】
第二の流体に、特に制限はない。熱交換部品が、自動車に搭載される熱交換器の一部として用いられる場合には、第二の流体は、水、または不凍液(JIS K 2234で規定されるLLC)であることが好ましい。
【0063】
次に、本発明の熱交換部品の他の実施形態について説明する。本実施形態の熱交換部品は、
図3A及び
図3Bに示すような熱交換部品101である。
図3Aは、本発明の熱交換部品の他の実施形態を示す模式的な断面図であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面を示す断面図である。
図3Bは、本発明の熱交換部品の他の実施形態における、内筒を示す模式的な斜視図である。
図3Bにおいては、内筒以外の構成を省略して図示している。即ち、
図3Bには、内筒と内筒に形成されたフィン(fin)のみが図示されている。
図3A及び
図3Bにおいて、
図1〜
図2Bに示す熱交換部品100と同様の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0064】
図3A及び
図3Bに示すように、他の実施形態の熱交換部品101は、内筒41のハニカム構造体1に接しない側の面(内筒41の外周面)に、フィン48が形成されていること以外は、
図1〜
図2Bに示す熱交換部品100と同様に構成されている。このように、内筒41にフィン48を形成することにより、内筒41の表面積が増大し、第一の流体と第二の流体との熱交換の速度を速くすることができる。また、第一の流体の温度変化が、内側外周流路16aを通過する第二の流体に伝達され易くなるため、第二の流体の温度の上昇及び下降が迅速となり、熱交換の促進と抑制の切り替えのタイミングを早めることもできる。なお、熱交換部品101においては、内筒41に形成されたフィン48は、中筒12に接触していない。
【0065】
また、内筒41にフィン48が形成されていることにより、第二の流体が気体状態の場合において、内筒41の放熱を促進し、内筒41の過剰な温度上昇を抑制することができる。
【0066】
フィンが、内筒のハニカム構造体に接しない側の面において、内筒のハニカム構造体と嵌合する部分の表面積が増大するように形成され、且つ中筒に接触しないように形成されていれば、フィンの形状に、特に制限はない。フィンの形状としては、例えば、内筒に突起が形成され、突起が直線状、曲線状、螺旋状等に延びる形状、内筒に突起が形成され、突起が点線状に延びる形状等を挙げることができる。
【0067】
フィンの表面積が、フィンを除いた内筒の表面積の10%以上に相当する面積であることが好ましく、20%以上に相当する面積であることが更に好ましく、30%以上に相当する面積であることが特に好ましい。ここで、「フィンを除いた内筒の表面積」とは、内筒を、一定の厚さの筒状体とした場合の表面積である。なお、内筒を一定の厚さの筒状体とする場合において、当該内筒の厚さは、内筒の厚さのうち、最も薄い部分の厚さとする。このように構成することにより、第一の流体と第二の流体との間で行われる熱交換の速度を向上させることができる。内筒のハニカム構造体を嵌合する部分とは、セルの延びる方向に平行な断面において、ハニカム構造体の第一端面を通る第一直線と、第二端面を通る第二直線を引き、当該第一直線と当該第二直線の間に存在する内筒のことである。
【0068】
フィンの材質に特に制限はない。フィンは、内筒と一体的に形成されたものであってもよく、内筒に取り付けられたものであってもよい。製造の簡便さの観点からは、フィンは内筒と一体的に形成されたものであることが好ましい。例えば、フィンは、内筒をエンボス加工する等して、内筒に形成されたものであってもよい。
【0069】
また、
図4に示すように、内筒41aのハニカム構造体1(
図3A参照)に接しない側の面(内筒41aの外周面)において、ハニカム構造体1(
図3A参照)の両端部側のみに、フィン48aが形成されていてもよい。
図4は、本発明の熱交換部品の更に他の実施形態における、内筒を示す模式的な斜視図である。
図4には、内筒と内筒に形成されたフィンのみが図示されている。
【0070】
(熱交換部品の製造方法)
次に、熱交換部品の製造方法を説明する。本発明の熱交換部品は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、セラミック粉末を含む坏土を所望の形状に押し出し、ハニカム成形体を作製する。ハニカム構造体の材料としては、前述のセラミックを用いることができる。例えば、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム構造体を製造する場合、所定量のSiC粉末に、バインダーと、水又は有機溶媒とを加え、得られた混合物を混練し坏土とし、成形して所望形状のハニカム成形体を得ることができる。そして、得られたハニカム成形体を乾燥し、減圧の不活性ガス又は真空中で、ハニカム成形体中に金属Siを含浸焼成することによって、隔壁によって第一の流体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造体を得ることができる。
【0071】
次に、ハニカム構造体をステンレスからなる内筒に挿入して、焼き嵌めにより、ハニカム構造体に嵌合するように内筒を配置する。なお、ハニカム構造体と内筒との嵌合は、焼き嵌め以外に、圧入やろう付け、拡散接合等を用いてもよい。
【0072】
次に、ステンレスからなり、中筒と外筒とを有し、ケーシングの一部となるケーシング部材を作製する。ケーシング部材は、中筒と外筒との間に、第二の流体の流路となる外周流路の一部(外側外周流路)が形成された二重管構造となっている。ケーシング部材の中筒には、その表裏面側に貫通する少なくとも1つの開口部を形成する。この開口部が、熱交換部品における、内側外周流路と外側外周流路とを連通する連通孔となる。また、ケーシング部材の外筒には、第二の流体の導入口、及び第二の流体の排出口を形成することが好ましい。
【0073】
次に、作製したケーシング部材の内部に、ハニカム構造体と、ハニカム構造体に嵌合するように配置された内筒とを配置する。この際、ケーシング部材の中筒と、内筒との間には、内側外周流路を形成するための隙間を設ける。次に、ケーシング部材と、内筒とを接合して、ハニカム構造体の外周面に嵌合するように配置された内筒と、内筒を覆うように配置された中筒と、中筒を覆うように配置された外筒と、を有するケーシングを作製する。
【0074】
このように構成することによって、本発明の熱交換部品を製造することができる。但し、本発明の熱交換部品を製造する方法は、これまでに説明した製造方法に限定されることはない。例えば、ハニカム構造体と内筒とを嵌合させる前に、内筒と、中筒と、外筒と、を有するケーシングを作製し、作製したケーシングの内筒内に、ハニカム構造体を配置することによって、熱交換部品を製造してもよい。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0076】
以下のようにして、実施例1及び比較例1の熱交換部品を製造した。
【0077】
(実施例1)
(ハニカム構造体の製造)
SiC粉末を含む坏土を所望の形状に押し出した後、乾燥させ、所定の外形寸法に加工後、Si含浸焼成することによって、円柱状のハニカム構造体を製造した。ハニカム構造体は、端面の直径(外形)が55.4mm、セルの延びる方向の長さが40mmのものであった。ハニカム構造体のセル密度は、23セル/cm
2、隔壁の厚さ(壁厚)は0.3mmであった。ハニカム構造体の熱伝導率は150W/(m・K)であった。
【0078】
(熱交換部品の製造)
次に、ステンレスからなる内筒を作製した。内筒は、内径が55.2mmで、軸方向の長さが44mmの円筒状であり、肉厚が1.0mmであった。次に、作製した内筒の内部にハニカム構造体を挿入し、焼き嵌めにより、ハニカム構造体の外周面に嵌合するように内筒を配置した。
【0079】
次に、ステンレスからなり、中筒と外筒とを有するケーシング部材を作製した。中筒は、内径が59.2mmで、軸方向の長さが42.5mmの円筒状であり、肉厚が1.5mmであった。外筒は、内径が66.2mmで、軸方向の長さが47mmの円筒状であり、肉厚が1.5mmであった。中筒には、この中筒の内外に連通し、開口面積が3.14mm
2の連通孔を、4個形成した。連通孔の形成位置は、ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する熱交換部品の断面において、第一領域、及び第二領域にそれぞれ2箇所ずつとした。また、外筒には、熱媒体となる第二の流体が導入される導入口、及び当該第二の流体が排出される排出口を形成した。
【0080】
次に、作製したケーシング部材の中筒の内部に、ハニカム構造体が嵌合により固定された内筒を配置し、中筒と内筒とを溶接により接合し、ハニカム構造体とケーシングとを備える熱交換部品を製造した。ケーシングの内筒と中筒との間には、ハニカム構造体の径方向に、内筒と中筒との距離が1mmの内側外周流路が形成されていた。また、ケーシングの中筒と外筒との間には、ハニカム構造体の径方向に、中筒と外筒との距離が2.7mmの外側外周流路が形成されていた。中筒に形成された連通孔は、ケーシングのハニカム構造体を覆う部分に位置しており、この連通孔によって、内側外周流路と外側外周流路とが連通するものとなっていた。
【0081】
(熱交換試験)
作製した熱交換部品について、以下の方法で、熱交換試験を行った。即ち、ハニカム構造体に形成されたセルに、一の熱媒体となる第一の流体を通過させ、且つ、ケーシングの外周流路に、他の熱媒体となる第二の流体を通過させながら、熱交換部品に流入した入熱量、熱交換部品が回収した回収熱量、及び中筒温度を測定した。具体的には、まず、400℃の第一の流体と80℃の第二の流体とを、熱交換部品に5分間通過させた。次に、第一の流体及び第二の流体の温度を、それぞれ順に800℃及び100℃まで昇温させながら、第一の流体と第二の流体とを、熱交換部品に通過させた。次に、800℃の第一の流体と100℃の第二の流体とを、熱交換部品に5分間通過させた。次に、第一の流体及び第二の流体の温度を、それぞれ順に400℃及び80℃まで降温させながら、第一の流体と第二の流体とを、熱交換部品に通過させた。そして、400℃の第一の流体と80℃の第二の流体とを熱交換部品に5分間通過させた。第一の流体としては、空気を用い、第二の流体としては、水を用いた。そして、セルには、加熱した空気を、流量10g/secにて通過させ、外周流路には、水を流量10L/minにて通過させた。また、「熱交換部品に流入した入熱量と、熱交換部品から回収された回収熱量、及び中筒温度の測定」である、熱交換試験測定は、以下に示す第一低温条件、第一高温条件、及び第二低温条件の3つの状態の時に行った。第一低温条件は、400℃の第一の流体と80℃の第二の流体とを、熱交換部品に5分間通過させた直後とした。第一高温条件は、800℃の第一の流体と100℃の第二の流体とを、熱交換部品に5分間通過させた直後とした。第二低温条件は、第一高温条件の後であり、且つ、400℃の第一の流体と80℃の第二の流体とを、熱交換部品に5分間通過させた直後とした。第一低温条件、及び第二低温条件における、熱交換試験測定の結果は同一であった。第一低温条件(第二低温条件)、及び第一高温条件における熱交換試験測定の結果を、それぞれ表1及び表2に示す。表1が、第一低温条件(第二低温条件)における熱交換試験測定の結果を示し、表2が、第一高温条件における熱交換試験測定の結果を示す。なお、入熱量と回収熱量とは、オーエヌ総合電機社製の熱交換部材評価装置を用いて測定した。
【0082】
入熱量は、「熱交換部品通過前の第一の流体と第二の流体との温度差」、「第一の流体の比熱容量」、及び「第一の流体の質量流量」の積として求めることができる。なお、「熱交換部品通過前の第一の流体と第二の流体との温度差」とは、熱交換部品に流入する直前の第一の流体の温度から、熱交換部品に流入する直前の第二の流体の温度を引いた値のことである。また、回収熱量は、「熱交換部品通過前後の第二の流体の温度差」、「第二の流体の比熱容量」、及び「第二の流体の質量流量」の積として求めることができる。なお、「熱交換部品通過前後の第二の流体の温度
差」とは、熱交換部品から流出した直後の第二の流体の温度から、熱交換部品に流入する直前の第二の流体の温度を引いた値のことである。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
(比較例1)
実施例1と同様のハニカム構造体を製造し、ステンレスからなる内筒をハニカム構造体に嵌合するように配置した。そして、ステンレスからなり、外筒を有するケーシング部材に、ハニカム構造体と、ハニカム構造体に嵌合するように配置された内筒とを配置し、ハニカム構造体とケーシングとを備える熱交換部品を製造した。比較例1におけるケーシング部材は、中筒を有していないため、外周流路が、内側外周流路と外側外周流路とを含むものではなかった。比較例1の熱交換部品においても、実施例1と同様に、上記熱交換試験を行った。結果を表1及び表2に示す。なお、比較例1の熱交換部品は、中筒を有していないため、中筒温度ではなく外筒温度を測定した。
【0086】
(結果)
(実施例1)
実施例1の熱交換部品は、第一低温条件及び第二低温条件においては、比較例1の熱交換部品とほぼ同程度の回収熱量であり、中筒温度もほぼ同じであった。一方、第一高温条件においては、実施例1の熱交換部品の中筒温度は380℃であり、比較例1の熱交換部品の中筒温度は106℃であった。また、第一高温条件の実施例1の熱交換部品による回収熱量は、第一低温条件及び第二低温条件の実施例1の熱交換部品による回収熱量よりも少なかった。
【0087】
(比較例1)
比較例1の熱交換部品の第一高温条件における回収熱量は、第一低温条件及び第二低温条件における回収熱量よりも多かった。また
、比較例1の熱交換部品の回収熱量は、第一低温条件及び第二低温条件における比較例1の熱交換部品の回収熱量の3倍以上であった。
【0088】
以上より、第一高温条件においては、実施例1の熱交換部品の内側外周流路は、水蒸気で満たされており、この内側外周流路中の水蒸気が断熱材となり、熱交換が抑制されていると考えられる。また、実施例1の第二低温条件時においては、第一低温条件時と同一の結果が得られた。このため、外部から制御することなく、熱交換の抑制と熱交換の促進とが切り替わっているものと考えられる。
【0089】
(実施例2)
実施例1の熱交換部品の内筒と中筒との間であって、中筒に連通孔が形成されている箇所に、メッシュ部材を配設して、実施例2の熱交換部品を作製した。メッシュ部材は、目開きが0.13mmのものを用いた。
【0090】
実施例1の熱交換部品及び実施例2の熱交換部品について、同一の条件で熱交換試験を行った。熱交換試験では、水温を40℃、60℃、80℃とした3点で試験を行った。水温が40℃、60℃の場合においては、それぞれの温度効率に大きな変化は見られなかった。水温が80℃の場合においては、実施例1の熱交換部品と比較して、実施例2の熱交換部品の温度効率の低下が見られた。したがって、メッシュ部材を配設した実施例2の熱交換部品は、熱遮断性に優れていることが分かった。
【0091】
また、実施例1の熱交換部品及び実施例2の熱交換部品について、下記条件にて、熱遮断時における、第二の流体の沸騰音の検証を行った。第一の流体として、空気を用い、第二の流体として、水を用いた。ハニカム構造体のセルには、700℃の加熱した空気を、流量20g/secにて通過させ、外周流路には、水を、流量10L/minにて通過させた。水温を40℃、60℃、80℃、90℃とした4点で、沸騰音の検証を行った。実施例1の熱交換部品は、水温が40℃の場合には、沸騰音がほぼ無く、水温が60℃、80℃と上昇するにつれて、沸騰音が大きくなった。一方、実施例2の熱交換部品は、水温が40℃、60℃、80℃の場合において、実施例1の水温60℃の状態よりも、沸騰音が小さかった。以上の結果より、実施例2の熱交換部品は、実施例1の熱交換部品に比して、第二の流体の蒸発気化時における沸騰音が低減されたものであった。
【0092】
(実施例3、4)
実施例3の熱交換部品として、内筒と中筒との距離を0.5mmとしたこと以外は、実施例1と同様の構成された熱交換部品を作製した。実施例4の熱交換部品として、内筒と中筒との距離を0.3mmとしたこと以外は、実施例1と同様の構成された熱交換部品を作製した。
【0093】
実施例3の熱交換部品及び実施例4の熱交換部品について、同一の条件で熱交換試験を行った。熱交換試験では、水温を40℃、60℃、80℃、90℃とした4点で試験を行った。内筒と中筒との距離を0.3mmとした実施例4の熱交換部品は、実施例3の熱交換部品と比較して、水温が低い場合に、回収熱量が向上していることが分かった。具体的には、水温が90℃の場合には、両者の回収熱量は同程度であったが、80℃、60℃、40℃と温度が低下するにしたがって、実施例4の熱交換部品の回収熱量が向上していた。このため、内筒と中筒との距離を小さくすることにより、高水温時の回収熱量を増やすことなく、低水温時の回収熱量を向上させることができることが分かった。