(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691607
(24)【登録日】2020年4月14日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】照明制御装置
(51)【国際特許分類】
H05B 47/00 20200101AFI20200421BHJP
【FI】
H05B37/02 L
H05B37/02 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-543534(P2018-543534)
(86)(22)【出願日】2016年10月5日
(86)【国際出願番号】JP2016079683
(87)【国際公開番号】WO2018066097
(87)【国際公開日】20180412
【審査請求日】2019年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】315017409
【氏名又は名称】AlphaTheta株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】川野 弘勝
(72)【発明者】
【氏名】中井 敏貴
【審査官】
山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−180311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00 − 45/58
H05B 47/00 − 47/29
G01H 1/00 − 7/12
G10K 15/00 − 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲解析情報に応じて照明機器の制御を行う照明制御装置であって、
前記照明機器の発光応答時間を含む照明機器情報を蓄積する照明機器情報蓄積部と、
制御対象となる照明機器を選択する照明機器選択部と、
前記照明機器選択部により選択された照明機器の発光応答時間を用いて、前記選択された照明機器の発光タイミングの調整を行う発光タイミング調整部と、を備えていることを特徴とする照明制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明制御装置において、
前記発光タイミング調整部は、楽曲の拍位置情報を含む前記楽曲解析情報を取得し、取得した拍位置情報に、前記選択された照明機器の発光タイミングを同期させることを特徴とする照明制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の照明制御装置において、
前記照明機器情報蓄積部は、前記照明機器のインターフェースに応じて、前記発光応答時間を蓄積することを特徴とする照明制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の照明制御装置において、
前記照明機器情報蓄積部は、前記照明機器を構成する灯体の光源の種類に応じて、前記発光応答時間を蓄積することを特徴とする照明制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽曲の再生に応じて照明機器の制御を行う照明制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンサートやクラブシーンにおいて、音楽に対応した照明または楽曲に同期して照明を変化させることは、演出効果上重要である。
このため、従来、楽曲に対応した照明操作の自動化が提案されている。たとえば、特許文献1、特許文献2に記載の技術は、楽曲に対応した照明内容に関する照明制御データを予め作成しておき、楽曲の演奏時に楽曲と同期して、照明制御データに基づき、照明機器を制御することにより、楽曲に対応した所望の照明演出効果を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第374079号公報
【特許文献2】特開2010−192155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1、特許文献2に記載の技術において、楽曲の拍位置のタイミングで照明機器を発光させる制御信号を出力したとしても、制御信号を出力した後、実際に発光するまでに、遅延が生じることがあるため、拍位置と発光タイミングにズレが生じるという課題がある。
また、一律に発光タイミングの位置をずらしたとしても、照明機器の灯体ごとの発光タイミングにばらつきがあるため、全体を同期させることができないという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、照明機器ごとに発光タイミングを調整することのできる照明制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の照明制御装置は、
楽曲解析情報に応じて照明機器の制御を行う照明制御装置であって、
前記照明機器の発光応答時間を含む照明機器情報を蓄積する照明機器情報蓄積部と、
制御対象となる照明機器を選択する照明機器選択部と、
前記照明機器選択部により選択された照明機器の発光応答時間を用いて、前記選択された照明機器の発光タイミングの同期調整を行う発光タイミング調整部と、を備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る音響照明制御システムの構造を示す模式図。
【
図2】前記実施形態における音響照明制御システムの構造を示す機能ブロック図。
【
図3】前記実施形態における照明機器情報蓄積部のテーブル構造を示す模式図。
【
図4】前記実施形態における照明機器選択部の画面表示例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
[1]音響照明制御システム1の全体構成
図1には、本発明の実施形態に係る音響照明制御システム1が示されている。音響照明制御システム1は、DJパフォーマンスにおける音響機器制御操作と、音響機器制御とともに行われる照明機器制御を同時に行うシステムであり、DJコントローラ2、コンピュータ3、スピーカー4、および照明装置5を備える。
【0009】
DJコントローラ2は、操作者が操作するDJ機器の本体部分であり、通信ケーブル6を介してコンピュータ3と接続されている。
DJコントローラ2は、左右のデッキD1、D2を備え、それぞれのデッキD1、D2には、ジョグダイヤル2A、ボリューム調整つまみ2B、パフォーマンスパッド2C等が設けられている。また、DJコントローラ2は、左右のデッキD1、D2の間にミキサーM1を備え、ミキサーM1は、左右のデッキD1、D2から出力される再生信号の音声出力を調整する。
操作者は、左右のデッキD1、D2を操作して、それぞれのデッキで再生される楽曲データの再生操作制御を行い、DJパフォーマンスを行う。
このようなDJコントローラ2は、アナログケーブル7を介してスピーカー4と接続され、操作者によるDJパフォーマンスに応じた音声がスピーカー4から出力される。
【0010】
コンピュータ3は、操作者がDJコントローラ2を操作して出力される音響機器制御操作信号に基づいて、DJコントローラ2に挿入された光ディスクに記憶された楽曲データや、コンピュータ3内に記憶されている楽曲データに、DJコントローラ2に入力された再生制御操作に応じた音響効果を施し、DJコントローラ2に出力し、アナログケーブル7を介して、スピーカー4から操作者の操作に応じた音声を出力する。
また、コンピュータ3には、通信ケーブル8を介して、照明装置5が接続されている。
【0011】
照明装置5は、ライブスペース内やイベントスペース内の照明を行うものであり、ライブ設備として多用される各種の照明機器5Aを備えている。
照明機器5Aは、舞台照明に多用される、例えばパーライト、ストロボライト、ムービングヘッドなどである。これらの照明機器5Aにおいては、それぞれ投光の断続、明るさのほか、機器によって照射方向、動作速度などのパラメータを指定することができる。
【0012】
これらのパラメータを制御するために、照明装置5の照明機器5Aは、それぞれたとえば、DMX512規格に準拠するとともに、同規格に基づいて互いに接続され、同規格に準拠した照明制御信号を送信することで、各照明機器5Aに所期の照明を実行させることができる。
なお、DMX512規格は舞台照明分野で一般的な規格であるが、コンピュータ3および照明装置5の接続は、同規格によるものに限らず、他の規格に基づくものであってもよい。
【0013】
[2]音響照明制御システム1の機能ブロック構成
図2には、照明制御装置としても機能する音響照明制御システム1の機能ブロック図が示されている。コンピュータ3は、楽曲情報処理部3Aおよび照明情報処理部3Bを備える。
楽曲情報処理部3Aは、楽曲情報の処理を行う部分であり、楽曲情報蓄積部10、楽曲再生処理部11、および楽曲構造解析部12を備える。
【0014】
楽曲情報蓄積部10は、演奏対象となる楽曲情報を蓄積するハードディスク等の記憶装置から構成される。演奏対象の決定は、操作者がDJコントローラ2を操作することにより、デッキD1で演奏する楽曲や、デッキD2で演奏する楽曲を選択し、楽曲再生処理部11に出力する。
楽曲再生処理部11は、デッキD1、D2で選択された楽曲を再生する。操作者がDJコントローラ2のジョグダイヤル2A、ボリューム調整つまみ2B、およびパフォーマンスパッド2C等を操作することにより生成される再生制御信号は、この楽曲再生処理部11に入力され、操作者が行うDJパフォーマンスに応じた楽曲再生処理がなされる。
【0015】
楽曲構造解析部12は、再生対象となる楽曲構造の解析を行い、楽曲解析情報を生成する。
具体的には、楽曲構造解析部12は、FFT(Fast Fourier Transform)解析等を利用して、楽曲を構成するイントロ(intro)、Aメロ(Verse)、サビ(Hook)、アウトロ(Outro)等の楽曲構造特徴区間の構造解析を行ったり、LPF(Low Pass Filter)を利用して、所定の周波数以下の音を検出して、拍位置、BPM等の解析を行ったりする。
【0016】
照明情報処理部3Bは、照明情報の処理を行う部分であり、照明機器情報蓄積部13、照明機器選択部14、発光タイミング調整部15、および照明制御部16を備える。
照明機器情報蓄積部13は、照明装置5に使用される照明機器5Aにおいて、照明制御に用いる照明調光用のインターフェース、照明機器5Aの種類、灯体の光源の種類に応じた発光応答時間(レイテンシ)を蓄積する。具体的には、照明機器情報蓄積部13は、
図3に示すように、コンピュータ3および照明装置5を接続する照明調光用のインターフェース規格の種別、照明機器の種類、灯体の光源の種類に応じて、レイテンシを蓄積したテーブルとして構成される。
【0017】
照明調光用のインターフェース規格の種別としては、たとえば、有線では、USB、DMX512、DALI等が挙げられ、無線では、Zig Bee等が挙げられる。照明機器5Aの種類としては、たとえば、ムービングヘッド、パーライト、ストロボ等が挙げられる。灯体の光源の種類としては、たとえば、ハロゲンランプ、LED、レーザー等が挙げられる。
【0018】
照明機器選択部14は、コンピュータ3のディスプレイ上に、ポップアップ画面を表示して、操作者に制御対象となる照明機器5Aの選択を促す。
具体的には、照明機器選択部14は、
図4に示すように、実行中の楽曲再生処理ソフトの画像G1上にポップアップ画像G2を表示し、操作者に昭明調光用のインターフェース規格のプロファイルの選択を促す。
【0019】
操作者がプロファイルの選択を行ったら、照明機器選択部14は、図示を略したが、照明機器5Aの選択を促すポップアップ画像を表示し、操作者にムービングヘッド、パーライト、ストロボ等の照明機器5Aの選択を促す。
操作者が照明機器5Aを選択したら、照明機器選択部14は、ポップアップ画像をさらに表示し、選択された照明機器5Aに使用される灯体の光源の選択を促す。これによって、選択された照明機器5Aのレイテンシが取得され、照明機器選択部14は、取得した照明機器5Aのレイテンシを発光タイミング調整部15に出力する。
【0020】
発光タイミング調整部15は、照明機器選択部14で選択された照明機器5Aの発光応答時間に基づいて、楽曲構造解析部12により解析された再生処理を行う楽曲の拍位置情報を含む楽曲解析情報を取得し、取得した拍位置情報に、照明機器の発光タイミングを同期させる。具体的には、発光タイミング調整部15は、照明機器選択部14から出力された各照明機器5Aのレイテンシに基づいて、発光応答の遅延時間を演算し、楽曲の拍位置情報よりも、時間的に先行して、発光タイミングを設定する。
【0021】
照明制御部16は、楽曲再生処理部11の再生位置を取得するとともに、楽曲構造解析部12で解析された楽曲構造特徴区間に応じて、照明制御信号を生成し、照明装置5に出力する。この際、照明制御部16は、発光タイミング調整部15で設定された発光タイミングを加味して、照明装置5を構成する照明機器5Aの発光タイミングを調整した照明制御信号を生成する。
【0022】
[3]実施形態の作用および効果
このような本実施形態によれば、音響照明制御システム1が、照明機器情報蓄積部13、照明機器選択部14、および発光タイミング調整部15を備えていることにより、予め照明調光用のインターファース規格となるプロファイルを選択し、照明機器5Aの種類、および灯体の光源の種類に応じたレイテンシを取得できるため、楽曲再生中に楽曲再生と、照明機器5Aの発光タイミングとを同期させることができる。
また、照明機器5Aのレイテンシが予め照明機器情報蓄積部13に蓄積されているため、照明装置5の照明調光用のプロファイルの選択、照明機器5Aの選択、および灯体の光源の選択という簡単な操作で楽曲再生と照明機器5Aの発光タイミングとを同期させることができる。
【0023】
[4]実施形態の変形
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、照明機器選択部14は、照明調光用のインターフェース規格のプロファイルの選択、照明機器5Aの種類の選択、照明機器5Aを構成する灯体の光源の種類の選択をすべて行っていたが、本発明はこれに限られない。すなわち、前述の選択肢のうち発光タイミングのズレの影響が大きいもののみを選択するようにしてもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1…音響照明制御システム、2…DJコントローラ、2A…ジョグダイヤル、2B…ボリューム調整つまみ、2C…パフォーマンスパッド、3…コンピュータ、3A…楽曲情報処理部、3B…照明情報処理部、4…スピーカー、5…照明装置、5A…照明機器、6…通信ケーブル、7…アナログケーブル、8…通信ケーブル、10…楽曲情報蓄積部、11…楽曲再生処理部、12…楽曲構造解析部、13…照明機器情報蓄積部、14…照明機器選択部、15…発光タイミング調整部、16…照明制御部、D1…デッキ、D2…デッキ、G1…画像、G2…ポップアップ画像、M1…ミキサー。