特許第6691608号(P6691608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691608
(24)【登録日】2020年4月14日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】照明制御装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/00 20200101AFI20200421BHJP
【FI】
   H05B37/02 L
   H05B37/02 B
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-543535(P2018-543535)
(86)(22)【出願日】2016年10月5日
(86)【国際出願番号】JP2016079684
(87)【国際公開番号】WO2018066098
(87)【国際公開日】20180412
【審査請求日】2019年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】315017409
【氏名又は名称】AlphaTheta株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】川野 弘勝
(72)【発明者】
【氏名】中井 敏貴
【審査官】 山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−180311(JP,A)
【文献】 特開2010−139946(JP,A)
【文献】 特開平07−122102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00 − 45/58
H05B 47/00 − 47/29
G10K 15/00 − 15/12
G10H 1/00 − 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲の再生に応じて照明機器の制御を行う照明制御装置であって、
一定間隔で音声を出力させる音声信号出力部と、
一定間隔で前記照明機器を発光させる発光信号出力部と、
前記音声信号出力部による音声出力のタイミング、および前記発光信号出力部による前記照明機器の発光タイミングのうち、少なくともいずれか一方のタイミングを、操作者の操作により、時間軸上で調整させる手動タイミング調整部と、
前記手動タイミング調整部により調整した調整量を記憶する調整量記憶部と、
前記調整量記憶部に記憶された過去の調整量を取得する調整量取得部と、を備え、
前記調整量取得部で取得された調整量に基づいて、前記照明機器の制御を行うことを特徴とする照明制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明制御装置において、
前記音声信号出力部による音声出力のタイミングと、前記発光信号出力部による前記照明機器の発光タイミングとは、初期値で同期していることを特徴とする照明制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の照明制御装置において、
複数の照明機器を制御するように構成され、
前記複数の照明機器のうち、いずれかの照明機器を操作者に選択させる照明機器選択部を備えていることを特徴とする照明制御装置。
【請求項4】
請求項に記載の照明制御装置において、
前記複数の照明機器は、それぞれが異なる発光原理による異なる光源を有し、
前記照明機器選択部は、異なる光源に応じて照明機器の選択を可能とすることを特徴とする照明制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の照明制御装置において、
前記音声信号出力部による音声出力のタイミング、および前記発光信号出力部による照明機器の発光タイミングを同じ時間軸上で表示するタイミング表示部を備えていることを特徴とする照明制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の照明制御装置において、
前記楽曲の再生制御を行う楽曲再生制御装置が接続され、
前記手動タイミング調整部は、前記楽曲再生制御装置の操作子により操作が可能とされていることを特徴とする照明制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽曲の再生に応じて照明機器の制御を行う照明制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンサートやクラブシーンにおいて、音楽に対応した照明または楽曲に同期して照明を変化させることは、演出効果上重要である。
このため、従来、楽曲に対応した照明操作の自動化が提案されている。たとえば、特許文献1、特許文献2に記載の技術は、楽曲に対応した照明内容に関する照明制御データを予め作成しておき、楽曲の演奏時に楽曲と同期して、照明制御データに基づき、照明機器を制御することにより、楽曲に対応した所望の照明演出効果を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第374079号公報
【特許文献2】特開2010−192155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1、特許文献2に記載の技術において、楽曲の拍位置のタイミングで照明機器を発光させる制御信号を出力したとしても、制御信号を出力した後、実際に発光するまでに、遅延が生じることがあるため、拍位置と発光タイミングにズレが生じるという課題がある。
また、一律に発光タイミングの位置をずらしたとしても、照明機器の灯体ごとの発光タイミングにばらつきがあるため、全体を同期させることができないという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、照明機器ごとに発光タイミングを調整することのできる照明制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の照明制御装置は、
楽曲の再生に応じて照明機器の制御を行う照明制御装置であって、
一定間隔で音声を出力させる音声信号出力部と、
一定間隔で前記照明機器を発光させる発光信号出力部と、
前記音声信号出力部による音声出力のタイミング、および前記発光信号出力部による前記照明機器の発光タイミングのうち、少なくともいずれか一方のタイミングを、操作者の操作により、時間軸上で調整させる手動タイミング調整部と、
前記手動タイミング調整部により調整した調整量を記憶する調整量記憶部と、
前記調整量記憶部に記憶された過去の調整量を取得する調整量取得部と、を備え、
前記調整量取得部で取得された調整量に基づいて、前記照明機器の制御を行うことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る音声照明制御システムの構成を示す模式図。
図2】前記実施形態における音声照明制御システムの機能ブロック図。
図3】前記実施形態におけるディスプレイ上に表示された音声信号波形および発光信号波形を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
[1]音響照明制御システム1の全体構成
図1には、本発明の実施形態に係る音響照明制御システム1が示されている。音響照明制御システム1は、DJパフォーマンスにおける音響機器制御操作と、音響機器制御とともに行われる照明機器制御を同時に行うシステムであり、DJコントローラ2、コンピュータ3、スピーカー4、および照明装置5を備える。
【0009】
楽曲再生制御装置としてのDJコントローラ2は、操作者が操作するDJ機器の本体部分であり、通信ケーブル6を介してコンピュータ3と接続されている。
DJコントローラ2は、左右のデッキD1、D2を備え、それぞれのデッキD1、D2には、ジョグダイヤル2A、ボリューム調整つまみ2B、パフォーマンスパッド2C等が設けられている。また、DJコントローラ2は、左右のデッキD1、D2の間にミキサーM1を備え、ミキサーM1は、左右のデッキD1、D2から出力される再生信号の音声出力を調整する。
操作者は、左右のデッキD1、D2を操作して、それぞれのデッキで再生される楽曲データの再生操作制御を行い、DJパフォーマンスを行う。
このようなDJコントローラ2は、アナログケーブル7を介してスピーカー4と接続され、操作者によるDJパフォーマンスに応じた音声がスピーカー4から出力される。
【0010】
コンピュータ3は、操作者がDJコントローラ2を操作して出力される音響機器制御操作信号に基づいて、DJコントローラ2に挿入された光ディスクに記憶された楽曲データや、コンピュータ3内に記憶されている楽曲データに、DJコントローラ2に入力された再生制御操作に応じた音響効果を施し、DJコントローラ2に出力し、アナログケーブル7を介して、スピーカー4から操作者の操作に応じた音声を出力する。
また、コンピュータ3には、通信ケーブル8を介して、照明装置5が接続されている。
【0011】
照明装置5は、ライブスペース内やイベントスペース内の照明を行うものであり、ライブ設備として多用される各種の照明機器5Aを備えている。
照明機器5Aは、舞台照明に多用される、たとえばパーライト、ストロボライト、ムービングヘッドなどである。これらの照明機器5Aにおいては、それぞれ投光の断続、明るさのほか、機器によって照射方向、動作速度などのパラメータを指定することができる。
【0012】
これらのパラメータを制御するために、照明装置5の照明機器5Aは、それぞれたとえば、DMX512規格に準拠するとともに、同規格に基づいて互いに接続され、同規格に準拠した照明制御信号を送信することで、各照明機器5Aに所期の照明を実行させることができる。
なお、DMX512規格は舞台照明分野で一般的な規格であるが、コンピュータ3および照明装置5の接続は、同規格によるものに限らず、他の規格に基づくものであってもよい。
【0013】
[2]音響照明制御システム1の機能ブロック構成
図2には、照明制御装置としても機能する音響照明制御システム1の機能ブロック図が示されている。コンピュータ3は、楽曲情報処理部3Aおよび照明情報処理部3Bを備える。
【0014】
楽曲情報蓄積部10は、演奏対象となる楽曲情報を蓄積するハードディスク等の記憶装置から構成される。演奏対象の決定は、操作者がDJコントローラ2を操作することにより、デッキD1で演奏する楽曲や、デッキD2で再生する楽曲を選択し、楽曲再生処理部11に出力する。
楽曲再生処理部11は、デッキD1、D2で選択された楽曲を再生する。操作者がDJコントローラ2のジョグダイヤル2A、ボリューム調整つまみ2B、およびパフォーマンスパッド2C等を操作することにより生成される再生制御操作信号は、この楽曲再生処理部11に入力され、操作者が行うDJパフォーマンスに応じた楽曲再生処理がなされる。
【0015】
楽曲構造解析部12は、再生対象となる楽曲構造の解析を行う。
具体的には、楽曲構造解析部12は、FFT(Fast Fourier Transform)解析等を利用して、楽曲を構成するイントロ(Intro)、Aメロ(Verse)、サビ(Hook)、アウトロ(Outro)等の楽曲構造特徴区間の構造解析を行ったり、LPF(Low Pass Filter)を利用して、所定の周波数以下の音を検出して、拍位置、BPM等の解析を行ったりする。
【0016】
照明情報処理部3Bは、照明情報の処理を行う部分であり、音声信号出力部13、発光信号出力部14、照明機器選択部15、照明制御部16、タイミング表示部17、手動タイミング調整部18、調整量記憶部19、および調整量取得部20を備える。
音声信号出力部13は、一定間隔で音を発する制御信号を楽曲再生処理部11に出力し、楽曲再生処理部11は、入力された制御信号に基づいて、一定間隔で音声出力を行う。
発光信号出力部14は、音声信号出力部13の音声出力と同期した一定間隔で発光させる制御信号を照明装置5に出力し、照明装置5は、照明機器5Aを一定間隔で発光させる。なお、音声信号出力のタイミングと、発光信号のタイミングは、調整開始の時点では初期値として同期している。
【0017】
照明機器選択部15は、制御対象となる照明機器5Aを選択する部分であり、選択される照明機器5Aとしては、たとえばパーライト、ストロボライト、ムービングヘッドなどが挙げられる。具体的には、照明機器選択部15は、コンピュータ3のディスプレイ31上に照明機器5Aを選択するリストを表示して、操作者に選択を促す。また、照明機器選択部15は、ハロゲンランプ、LED、レーザー等の異なる発光原理による異なる光源を選択できるように、光源の種類を複数リスト中に表示して、操作者に光源の選択を促す。
照明制御部16は、楽曲再生処理部11の再生位置を取得するとともに、楽曲構造解析部12で解析された楽曲構造特徴区間に応じて、照明制御信号を生成し、照明装置5に出力する。
【0018】
タイミング表示部17は、音声信号出力部13から出力される音声信号のタイミングと、発光信号出力部14から出力された発光信号のタイミングとを、コンピュータ3のディスプレイ31上に表示する。具体的には、図3に示すように、音声信号波形W1と、発光信号波形W2を同じ時間軸上に表示し、音声信号と発光信号とのズレを操作者に視覚的に視認させる。なお、本実施形態では、コンピュータ3のディスプレイ31上に表示するように構成しているが、これに限らず、DJコントローラ2がディスプレイを備えている場合には、DJコントローラ2のディスプレイ上に表示させてもよい。
【0019】
手動タイミング調整部18は、音声信号出力部13および発光信号出力部14の信号出力の開始のタイミングを、操作者に手動で調整させる。操作者による手動調整に際しては、コンピュータ3のキーボードやマウスを操作して行ってもよいが、DJコントローラ2のボリューム調整つまみ2B(図1参照)を操作し、調整することも可能となっている。なお、前述した説明では、ボリュームつまみ2Bにより設定しているが、ジョグダイヤル2Aを操作して調整できるようにしてもよい。
発光信号の開始タイミングの調整に際しては、デッキD1、D2のいずれかのボリューム調整つまみ2Bを指定し、照明制御用の操作子として設定する。なお、図3では、発光信号波形W2に遅れが生じているので、操作者は、ボリューム調整つまみ2Bを回転させて、時間軸上で音声信号波形W1に一致するように、発光信号波形W2を移動させる。
【0020】
調整量記憶部19は、たとえば、メモリ等の記憶装置から構成され、手動タイミング調整部18で調整された照明機器5Aの発光開始のタイミングの調整量を記憶する。具体的には、調整量記憶部19は、照明機器選択部15により選択された照明機器5Aについて、操作者が、ボリューム調整つまみ2Bを回転させた操作量を調整量として記憶する。
【0021】
調整量取得部20は、照明機器選択部15により照明機器5Aが選択されると、過去の調整量の値を調整量記憶部19から読み出し、調整量を取得して、照明制御部16に出力する。
照明制御部16は、楽曲再生処理部11の再生処理に応じて照明制御信号を、照明装置5に出力する際に、照明制御信号のタイミングを、調整量取得部20で取得された調整量分だけずらして出力する。
【0022】
[3]実施形態の作用および効果
このような本実施形態によれば、音響照明制御システム1が手動タイミング調整部18を備えていることにより、操作者が手動タイミング調整部18を操作して、楽曲再生処理部11からの音声出力のタイミングと、照明機器5Aの発光タイミングとの調整を行うことができる。したがって、音声出力のタイミングと発光タイミングを操作者の好みに応じて調整することができ、音響照明制御システム1によるDJパフォーマンスを向上させることができる。
【0023】
また、調整量記憶部19および調整量取得部20を備えていることにより、照明機器選択部15により選択された照明機器5Aの調整量が記憶されるので、次回使用時には、その調整量を調整量取得部20により取得して、照明制御部16による照明制御を行うことができる。したがって、同じ調整作業を繰り返すことなく、照明機器5Aの調整量の設定を行うことができる。
【0024】
照明機器選択部15を備えていることにより、操作者が調整対象となる照明機器5Aを選択できるため、照明機器5Aのバリエーションを操作者の好みに応じて設定して、DJパフォーマンスを向上させることができる。
手動タイミング調整部18が、DJコントローラ2のボリューム調整つまみ2B等により調整可能とされているため、操作者はDJコントローラ2の再生制御操作中に、照明機器5Aの発光タイミングを調整することができるため、操作者のDJパフォーマンスに応じて、好きな照明演出を行うことができる。
【符号の説明】
【0025】
1…音響照明制御システム、2…DJコントローラ、2A…ジョグダイヤル、2B…ボリューム調整つまみ、2C…パフォーマンスパッド、3…コンピュータ、3A…楽曲情報処理部、3B…照明情報処理部、4…スピーカー、5…照明装置、5A…照明機器、6…通信ケーブル、7…アナログケーブル、8…通信ケーブル、10…楽曲情報蓄積部、11…楽曲再生処理部、12…楽曲構造解析部、13…音声信号出力部、14…発光信号出力部、15…照明機器選択部、16…照明制御部、17…タイミング表示部、18…手動タイミング調整部、19…調整量記憶部、20…調整量取得部、31…ディスプレイ、D1…デッキ、D2…デッキ、M1…ミキサー、W1…音声信号波形、W2…発光信号波形。
図1
図2
図3