特許第6691622号(P6691622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6691622
(24)【登録日】2020年4月14日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】導波路装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/08 20060101AFI20200421BHJP
【FI】
   H01P5/08 A
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-75660(P2019-75660)
(22)【出願日】2019年4月11日
【審査請求日】2019年11月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】上道 雄介
【審査官】 新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−023088(JP,A)
【文献】 特開2017−060104(JP,A)
【文献】 米国特許第06154106(US,A)
【文献】 HUANG et al.,A Shielded microstrip-to-Stripline Vertical Transition for Multilayer Printed Circuit Boad,2012 International Conference on Microwave and Milimeter Wave Technology,2012年,p.1-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体製の基板と、
上記基板の両主面の各々にそれぞれが形成された第1導体層及び第2導体層と、
上記両主面間を貫通し、上記第1導体層及び上記第2導体層とは電気的に接続されていない主導体ポストと、
上記両主面間を貫通し、上記第1導体層及び上記第2導体層を短絡する1又は複数の副導体ポストであって、上記主導体ポストとともにTEMモード又は準TEMモードを導波する副導体ポストと、を備えている、
ことを特徴とする導波路装置。
【請求項2】
上記副導体ポストの数は、複数である、
ことを特徴とする請求項1に記載の導波路装置。
【請求項3】
上記主導体ポストと、複数の上記副導体ポストの各々との間隔は、略等しい、
ことを特徴とする請求項2に記載の導波路装置。
【請求項4】
複数の上記副導体ポストは、上記主導体ポストを等方的に取り囲むように配置されている、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の導波路装置。
【請求項5】
上記基板の上記第1導体層の側に形成されたマイクロストリップ型又はコプレナー型の第1線路であって、一方の端部が上記主導体ポストに短絡されており、且つ、上記第1導体層とともにTEMモード又は準TEMモードを導波する第1帯状導体を含む第1線路を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の導波路装置。
【請求項6】
1又は複数の上記副導体ポストは、平面視した場合に、上記第1帯状導体と重ならない領域に配置されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の導波路装置。
【請求項7】
上記両主面間を貫通する柵状に配置された複数の導体ポストからなるポスト壁と、上記第1導体層の一部と、上記第2導体層の一部と、により取り囲まれた共振領域と、
上記基板の上記第1導体層の側に形成されたマイクロストリップ型又はコプレナー型の第2線路であって、一方の端部が上記共振領域に電磁気的に結合されており、且つ、上記第1導体層とともにTEMモード又は準TEMモードを導波する第2帯状導体を含む第2線路と、
上記第1帯状導体の他方の端部、及び、上記第2帯状導体の他方の端部の各々に接続されたトランジスタと、を更に備えている、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の導波路装置。
【請求項8】
上記基板の上記第2導体層の側に形成されたマイクロストリップ型又はコプレナー型の第3線路であって、一方の端部が上記主導体ポストに短絡されており、且つ、上記第2導体層とともにTEMモード又は準TEMモードを導波する第3帯状導体を含む第3線路を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の導波路装置。
【請求項9】
1又は複数の上記副導体ポストは、平面視した場合に、上記第3帯状導体と重ならない領域に配置されている、
ことを特徴とする請求項8に記載の導波路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体製の基板の一方の主面側から他方の主面側へ電磁波を導波する導波路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
センチメートル波帯及びミリメートル波帯に属する電磁波を扱う装置の一部には、誘電体製の基板の一方の主面側から他方の主面側へ電磁波を導波する導波路装置が用いられている。このような導波路装置を備えた装置としては、例えば、インターポーザや、発振器などが挙げられる。
【0003】
非特許文献1の図1には、多層誘電体基板の表層に設けられたマイクロストリップ線路(非特許文献の図1に記載のMS)と、内層に設けられたストリップ線路(非特許文献の図1に記載のSL)と、マイクロストリップ線路とストリップ線路とを接続するビア(非特許文献の図1に記載のSignal Via)と、マイクロストリップ線路とストリップ線路の共通のGND層となる導体層であって、マイクロストリップ及びストリップラインの各々と線路を形成し、且つ、ビアが貫通するための開口を有する導体層(非特許文献の図1に記載のGround Plane)と、ビアの周囲を囲むようにマイクロストリップ線路のGND層とストリップ線路のGND層を貫通する複数のブラインドビアとを備えた導波路装置が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Qingchou Huang, et. al., "A shielded microstrip-to-stripline vertical transition for multilayer printed circuit board", 2012 International Conference on Microwave and Millimeter Wave Technology (ICMMT), 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1の図1に記載の導波路装置は、上述したように、多層誘電体基板の表層から内層へ電磁波を導波する導波路装置であるが、非特許文献1の図1において、厚さがD2で表された層と、厚さがD3で表された層とを用い、厚さがD1で表された層を省略することによって、基板の一方の主面側から他方の主面側へ電磁波を導波する導波路装置を構成することができる。
【0006】
しかしながら、非特許文献1の図1に記載の導波路装置から厚さがD1で表された層を省略することによって得られた導波路装置には、基板の一方の主面側から他方の主面側へ電磁波を導波する場合に生じ得る損失を抑制する余地があると本願の発明者は、考えた。
【0007】
本発明の目的は、基板の一方の主面側から他方の主面側へ電磁波を導波する導波路装置であって、生じ得る損失を従来よりも抑制することができる導波路装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る導波路装置は、誘電体製の基板と、上記基板の両主面の各々にそれぞれが形成された第1導体層及び第2導体層と、上記両主面間を貫通し、上記第1導体層及び上記第2導体層とは電気的に接続されていない主導体ポストと、上記両主面間を貫通し、上記第1導体層及び上記第2導体層を短絡する1又は複数の副導体ポストであって、上記主導体ポストとともにTEMモード又は準TEMモードを導波する副導体ポストと、を備えている。
【0009】
上記の構成によれば、主導体ポストとともにTEMモード又は準TEMモードを導波する副導体ポストを備えているため、副導体ポストを備えていない場合と比較して、基板の一方の主面側から他方の主面側へTEMモード又は準TEMモードを導波する場合に生じ得る損失を抑制することができる。
【0010】
本発明の第2の態様に係る導波路装置は、上記第1の態様において、上記副導体ポストの数は、複数である、ことが好ましい。
【0011】
上記の構成によれば、副導体ポストの数が1本である場合と比較して、上記損失を更に抑制することができる。
【0012】
本発明の第3の態様に係る導波路装置は、上記第2の態様において、上記主導体ポストと、複数の上記副導体ポストの各々との間隔は、略等しい、ことが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、主導体ポストと、複数の上記副導体ポストの各々との間隔がそれぞれ異なっている場合と比較して、上記損失を確実に抑制することができる。
【0014】
本発明の第4の態様に係る導波路装置は、上記第2又は第3の態様において、複数の上記副導体ポストは、上記主導体ポストを等方的に取り囲むように配置されている、ことが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、主導体ポスト及び複数の副導体ポストにより形成される導波路装置の形状を、同軸状により近づけることができる。したがって、複数の副導体ポストの配置が等方的でない場合と比較して、上記損失を更に抑制することができる。
【0016】
本発明の第5の態様に係る導波路装置は、上記第1〜4の何れか一態様において、上記基板の上記第1導体層の側に形成されたマイクロストリップ型又はコプレナー型の第1線路であって、一方の端部が上記主導体ポストに短絡されており、且つ、上記第1導体層とともにTEMモード又は準TEMモードを導波する第1帯状導体を含む第1線路を更に備えている、ことが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、マイクロストリップ型又はコプレナー型の第1線路を用いてTEMモード又は準TEMモードを主導体ポストに結合させることができる。したがって、第1線路を主導体ポストに結合させる場合に生じ得る損失を抑制することができる。
【0018】
本発明の第6の態様に係る導波路装置は、上記第5の態様において、1又は複数の上記副導体ポストは、平面視した場合に、上記第1帯状導体と重ならない領域に配置されている、ことが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、第1帯状導体の伝送損失又は反射損失を低減することができる。
【0020】
本発明の第7の態様に係る導波路装置は、上記第5又は第6の態様において、上記両主面間を貫通する柵状に配置された複数の導体ポストからなるポスト壁と、上記第1導体層の一部と、上記第2導体層の一部と、により取り囲まれた共振領域と、上記基板の上記第1導体層の側に形成されたマイクロストリップ型又はコプレナー型の第2線路であって、一方の端部が上記共振領域に電磁気的に結合されており、且つ、上記第1導体層とともにTEMモード又は準TEMモードを導波する第2帯状導体を含む第2線路と、上記第1帯状導体の他方の端部、及び、上記第2帯状導体の他方の端部の各々に接続されたトランジスタと、を更に備えている、ことが好ましい。
【0021】
上記の構成の用に構成された導波路装置は、いわゆる発振器として好適に利用可能である。
【0022】
本発明の第8の態様に係る導波路装置は、上記第1〜7の何れか一態様において、上記基板の上記第2導体層の側に形成されたマイクロストリップ型又はコプレナー型の第3線路であって、一方の端部が上記主導体ポストに短絡されており、且つ、上記第2導体層とともにTEMモード又は準TEMモードを導波する第3帯状導体を含む第3線路を更に備えている、ことが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、マイクロストリップ型又はコプレナー型の第3線路を用いてTEMモード又は準TEMモードを主導体ポストに結合させることができる。したがって、第3線路を主導体ポストに結合させる場合に生じ得る損失を抑制することができる。
【0024】
本発明の第9の態様に係る導波路装置は、上記第8の態様において、1又は複数の上記副導体ポストは、平面視した場合に、上記第3帯状導体と重ならない領域に配置されている、ことが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、第3帯状導体の伝送損失又は反射損失を低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様に係る導波路装置よれば、基板の一方の主面側から他方の主面側へ電磁波を導波する場合に生じ得る損失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る導波路装置の上面図であり、(b)は、上記導波路装置の断面図であり、(c)は、上記導波路装置の下面図である。
図2】(a)〜(d)は、図1に示した導波路装置の第1〜第4の変形例の上面図である。
図3】(a)は、本発明の第2の実施形態に係る導波路装置の断面図であり、(b)は、上記導波路装置の下面図である。
図4】(a)は、本発明の第3の実施形態に係る発振器の上面図であり、(b)は、上記発振器の断面図であり、(c)は、上記発振器の下面図である。
図5】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る導波路装置の第1及び第2の実施例のSパラメータの周波数依存性を示すグラフであり、(c)は、図1に示した導波路装置の比較例のSパラメータを示すグラフである。
図6図1に示した導波路装置の第3の実施例のSパラメータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係る導波路装置10について、図1を参照して説明する。図1の(a)は、導波路装置10の上面図であり、図1の(b)は、図1の(a)及び(c)に示したA−A’直線に沿った断面における導波路装置10の断面図であり、図1の(c)は、導波路装置10の下面図である。
【0029】
(導波路装置10)
図1に示すように、導波路装置10は、基板11と、導体層12Aと、導体層12Bと、誘電体層13Aと、誘電体層13Bと、帯状導体14Aと、帯状導体14Bと、導体パッド15Aと、導体パッド15Bと、ビア群16Aと、ビア群16Bと、導体パッド17Aと、導体パッド17Bと、ビア群18Aと、ビア群18Bと、主導体ポストMPと、副導体ポストSP1〜SP7と、を備えている。
【0030】
(基板11)
基板11は、誘電体製(本実施形態においては石英製)の基板である。以下において、基板11の表面のうち表面積が大きな平面領域を主面と称する。したがって、基板11は、図1に示した座標系におけるz軸正方向側の主面(以下においておもて面とも称する)と、図1に示した座標系におけるz軸負方向側の主面(以下においてうら面とも称する)と、を有する。おもて面及びうら面は、特許請求の範囲に記載の両主面の一態様である。
【0031】
基板11の一部領域には、おもて面とうら面とを貫通する貫通孔(図1において、後述する主導体ポストMPが形成されている貫通孔)と、おもて面とうら面とを貫通する7つの貫通孔(図1において、後述する副導体ポストSP1〜SP7が形成されている貫通孔)からなる貫通孔群と、が形成されている。
【0032】
(導体層12A,12B)
導体層12Aは、基板11のおもて面に形成された導体膜により構成されている。本実施形態において、導体層12Aは、銅製である。導体層12Aの一部の領域であって、平面視した場合に、基板11に形成された主導体ポストMPが形成されている貫通孔を包含する領域は、円形状に導体膜が除去されている。その結果、導体層12Aの該領域には、円形状の開口12A1が形成されている(図1の(a),(b)参照)。導体層12Aは、特許請求の範囲に記載の第1導体層の一態様である。
【0033】
導体層12Bは、基板11のうら面に形成された導体膜により構成されている。本実施形態において、導体層12Bは、銅製である。導体層12Bの一部の領域であって、平面視した場合に、基板11に形成された主導体ポストMPが形成されている貫通孔を包含する領域は、円形状に導体膜が除去されている。その結果、導体層12Aの該領域には、円形状の開口12B1が形成されている(図1の(b),(c)参照)。本実施形態においては、開口12B1は、平面視した場合に開口12A1と重なるように形成されている。導体層12Bは、特許請求の範囲に記載の第2導体層の一態様である。
【0034】
(主導体ポストMP)
主導体ポストMPは、導体製(本実施形態においては銅製)の筒状部材であり、基板11の上述した貫通孔の内壁に銅製の導体膜を形成することによって得られる(図1の(b)参照)。主導体ポストMPは、導体層12A及び導体層12Bの各々とは電気的に接続されていない。
【0035】
(副導体ポストSP1〜SP7)
副導体ポストSP1〜SP7は、導体製(本実施形態においては銅製)の筒状部材であり、主導体ポストMPと同様に、基板11の上述した貫通孔群を構成する貫通孔の各々の内壁に銅製の導体膜を形成することによって得られる。副導体ポストSP1〜SP7の各々は、導体層12A及び導体層12Bを短絡する。
【0036】
本実施形態では、7本の副導体ポストSP1〜SP7を採用している。しかし、副導体ポストの数は、限定されるものではなく、1本でもよいし、任意の複数の本数でもよい。
【0037】
副導体ポストSP1〜SP7は、主導体ポストMPとともに、電磁波を導波する疑似同軸状の導波路を構成する。そのため、主導体ポストMPと、副導体ポストSP1〜SP7と、を備えた導波路は、TEMモード又は準TEMモードを低損失な状態で導波することができる。
【0038】
導体層12Aを平面視した場合に、副導体ポストSP1〜SP7の各々の中心軸は、主導体ポストMPの中心軸の位置を中心とした半径R1の円の円周上に配置されている。したがって、主導体ポストMPと、副導体ポストSP1〜SP7の各々との間隔は、等しくなるように設計されている。設計時の誤差などに起因して、主導体ポストMPと、副導体ポストSP1〜SP7の各々との間隔がばらつくことも想定されるが、この間隔は、等しいことが好ましい。なお、それぞれの間隔が等しくなるように設計したうえで、設計時の誤差などに起因してそれぞれの間隔がばらついている状態は、それぞれの間隔が略等しい状態だと見做せる。
【0039】
また、本実施形態では、副導体ポストSP1〜SP7の各々の中心軸は、主導体ポストMPの中心軸の位置を中心とした半径R1の円の円周を時計に見立てた場合に、10時半、0時、1時半、3時、4時半、6時、及び7時半に指し示す短針の位置に配置されている。すなわち、導体層12Aを平面視した場合に、副導体ポストSP1〜SP7の各々の中心軸は、上記円周を8等分した位置のうち、後述する帯状導体14A及び帯状導体14Bに重なる位置(9時に指し示す短針の位置)を除いて等方的に配置されている。
【0040】
このように、導体層12Aを平面視した場合に、副導体ポストSP1〜SP7の各々は、後述する帯状導体14A及び帯状導体14Bと重ならない領域に配置されていることが好ましい。導体層12Aを平面視した場合に、副導体ポストSP1〜SP7の何れかが、例えば帯状導体14Aと重なる領域に配置されている場合、帯状導体14Aに対してグランド層として機能する導体層12Aが均質でないことに起因して伝送損失が増加するためである。
【0041】
(誘電体層13A,13B)
誘電体層13Aは、導体層12Aの基板11とは逆側の表面に形成された誘電体膜により構成されている。本実施形態において、誘電体層13Aは、ポリイミド樹脂製である。誘電体層13Aの一部領域であって、平面視した場合に、基板11に形成された貫通孔(主導体ポストMPが形成されている貫通孔)を包含する領域には、円形の開口が形成されている。
【0042】
誘電体層13Bは、導体層12Bの基板11とは逆側の表面に形成された誘電体膜により構成されている。本実施形態において、誘電体層13Bは、ポリイミド樹脂製である。誘電体層13Bの一部領域であって、平面視した場合に、基板11に形成された貫通孔(主導体ポストMPが形成されている貫通孔)を包含する領域には、円形の開口が形成されている。
【0043】
(おもて面側のマイクロストリップ型の線路)
帯状導体14Aは、誘電体層13Aの導体層12Aとは逆側の表面に形成された導体膜により構成されている。帯状導体14Aは、特許請求の範囲に記載された第1帯状導体の一態様である。本実施形態において、帯状導体14Aは、銅製である。本実施形態では、帯状導体14Aを、主部14A1と、導体パッド14A2と、導体パッド14A3との3つの部分に分けて、その形状を説明する(図1の(a)参照)。
【0044】
主部14A1は、図1に図示した座標系におけるy軸方向に長辺が沿って配置された長方形状である。
【0045】
本実施形態において、帯状導体14Aの一方の端部を構成する導体パッド14A2は、半径が主部14A1の短辺の長さを上回るように構成された円形状である。導体パッド14A2は、平面視した場合に、上述の誘電体層13Aに形成された開口を包含する領域に配置されている(図1の(a),(b)参照)。
【0046】
本実施形態において、帯状導体14Aの他方の端部を構成する導体パッド14A3は、辺の長さが主部14A1の短辺の長さを上回るように構成された正方形状である。
【0047】
導体パッド15A及び導体パッド17Aの各々は、誘電体層13Aの導体層12Aとは逆側の表面に形成された導体膜により構成されている。導体パッド15A及び導体パッド17Aの各々は、導体パッド14A3の辺よりも各辺が長い長方形状である。導体パッド15A及び導体パッド17Aの各々は、導体パッド14A3を挟み込むように配置されている。導体パッド15Aは、図1に図示した座標系におけるx軸正方向側に配置されており、導体パッド17Aは、図1に図示した座標系におけるx軸負方向側に配置されている。
【0048】
ビア群16Aは、誘電体層13Aを貫通するように形成された複数の貫通ビアからなる。ビア群16Aは、平面視した場合に導体パッド15Aに包含される領域に配置され、導体層12Aと導体パッド15Aとを短絡する。
【0049】
ビア群18Aは、ビア群16Aと同様に構成されており、平面視した場合に導体パッド17Aに包含される領域に配置され、導体層12Aと導体パッド17Aとを短絡する。
【0050】
以上のように配置された導体パッド15A、導体パッド14A3、及び導体パッド17Aは、グランド−シグナル−グランド(G−S−G)配置の接続端子として好適に利用可能である。この接続端子には、トランジスタなどを容易に接続可能である。
【0051】
以上のように構成された帯状導体14Aと、導体層12Aとは、基板11のおもて面側(図1に図示した座標系におけるz軸正方向側)に形成されたマイクロストリップ型の線路を構成する。このマイクロストリップ型の線路は、特許請求の範囲に記載の第1線路の一態様であり、TEMモード又は準TEMモードを低損失な状態で導波することができる。
【0052】
(うら面側のマイクロストリップ型の線路)
帯状導体14Bは、誘電体層13Bの導体層12Bとは逆側の表面に形成された導体膜により構成されている。帯状導体14Bは、特許請求の範囲に記載された第3帯状導体の一態様である。誘電体層13Aの表面ではなく誘電体層13Bの表面に形成されている点を除いて、帯状導体14Bは、帯状導体14Aと同じ構成を有する(図1の(c)参照)。具体的には、帯状導体14Bの主部14B1、導体パッド14B2、及び導体パッド14B3の各々は、それぞれ、主部14A1、導体パッド14A2、及び導体パッド14A3に対応する。
【0053】
同様に、誘電体層13Aの表面ではなく誘電体層13Bの表面に形成されている点を除いて、(1)導体パッド15B及び導体パッド17Bの各々は、それぞれ、導体パッド15A及び導体パッド17Aと同じ構成を有し、(2)ビア群16B及びビア群18Bの各々は、それぞれ、ビア群16A及びビア群18Aと同じ構成を有する。
【0054】
したがって、本実施形態では、帯状導体14B、導体パッド15B、ビア群16B、導体パッド17B、及びビア群18Bの詳しい説明を省略する。
【0055】
以上のように構成された帯状導体14Bと、導体層12Bとは、基板11のうら面側(図1に図示した座標系におけるz軸負方向側)に形成されたマイクロストリップ型の線路を構成する。このマイクロストリップ型の線路は、特許請求の範囲に記載の第3線路の一態様であり、TEMモード又は準TEMモードを低損失な状態で導波することができる。
【0056】
(おもて面側及びうら面側の線路同士の接続)
本実施形態においては、平面視した場合に開口12A1に包含される領域に形成された空芯円筒状の導体であって、帯状導体14Aと主導体ポストMPとを短絡する導体が形成されている(図1の(b)参照)。図1の(b)において、この空芯円筒状の導体には、符号を付していない。
【0057】
同様に、平面視した場合に開口12B1に包含される領域に形成された空芯円筒状の導体であって、帯状導体14Bと主導体ポストMPとを短絡する導体が形成されている。したがって、帯状導体14Aと、帯状導体14Bとは、短絡されている。
【0058】
そのうえで、導体層12Aと導体層12Bとは、副導体ポストSP1〜SP7により短絡されている。したがって、おもて面側に形成されたマイクロストリップ型の線路と、うら面側に形成されたマイクロストリップ型の線路とは、互いに接続されている。
【0059】
上述したように、主導体ポストMPと副導体ポストSP1〜SP7とを含む線路、おもて面側のマイクロストリップ型の線路、及びうら面側のマイクロストリップ型の線路は、何れも、TEMモード又は準TEMモードを低損失な状態で導波することができる。したがって、導波路装置10は、基板11のおもて面側からうら面側へ、又は、基板11のうら面側からおもて面側へ電磁波を導波する場合に生じ得る損失を抑制することができる。
【0060】
(おもて面側及びうら面側の線路の変形例)
本実施形態では、基板11のおもて面側及びうら面側の線路の各々として、マイクロストリップ型の線路を採用している。しかし、これらの線路は、マイクロストリップ型の線路に限定されるものではなく、例えば、コプレナー型の線路であってもよいし、同軸状あるいは疑似同軸状の線路であってもよい。これらの線路は、主導体ポストMPと副導体ポストSP1〜SP7とを含む線路と同様に、TEMモード又は準TEMモードを低損失な状態で導波することができる線路であることが好ましい。
【0061】
また、基板11のおもて面側の線路の態様と、うら面側の線路の態様とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0062】
〔第1〜第4の変形例〕
導波路装置10の第1〜第4の変形例について、図2の(a)〜(d)を参照して説明する。図2の(a)〜(d)の各々は、それぞれ、導波路装置10の第1〜第4の変形例の上面図である。
【0063】
第1の変形例の導波路装置10は、1本の副導体ポストSP1を備えている(図2の(a)参照)。1本であっても、主導体ポストMPと並走するように副導体ポストSP1が配置されていることによって、主導体ポストMPと副導体ポストSP1とを備えた線路は、副導体ポストSP1が配置されていない場合と比較して、TEMモード又は準TEMモードを低損失な状態で導波することができる。
【0064】
第2の変形例の導波路装置10は、2本の副導体ポストSP1,SP2を備えている(図2の(b)参照)。
【0065】
第3の変形例の導波路装置10は、6本の副導体ポストSP1〜SP6を備えている(図2の(c)参照)。
【0066】
第4の変形例の導波路装置10は、8本の副導体ポストSP1〜SP8を備えている(図2の(d)参照)。
【0067】
以下において、副導体ポストの本数を特に区別する必要がない場合には、副導体ポストSPi(iは、任意の正の整数)と記載する。
【0068】
副導体ポストSPiの本数を多くすれば多くするほど、主導体ポストMPと副導体ポストSPiとを備えた線路の擬似的な同軸性は、高まっていく。その一方で、副導体ポストSPiの本数を多くすれば多くするほど、主導体ポストMPを含む領域における基板11の強度は低下する。これらのメリット及びデメリットを考慮して、副導体ポストSPiの本数は、適宜設計することができる。
【0069】
また、第2〜第4の変形例の導波路装置10において、各副導体ポストSPiは、主導体ポストMPを等方的に取り囲むように配置されている。別の表現を使えば、第2〜第4の変形例の導波路装置10において、各副導体ポストSPiの配置されているパターンは、n回の回転対称性を有する。ここで、nは、任意の正の整数から選択可能であり、第2の変形例の導波路装置10ではn=2であり、第3の変形例の導波路装置10ではn=6であり、第4の変形例の導波路装置10ではn=8である。
【0070】
これらのように、導波路装置10において、各副導体ポストSPiは、主導体ポストMPを等方的に取り囲むように配置されていることが好ましい。
【0071】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係る導波路装置10Aについて、図3を参照して説明する。図3の(a)は、図3の(b)に示したA−A’直線に沿った断面における導波路装置10Aの断面図であり、図3の(b)は、導波路装置10Aの下面図である。
【0072】
導波路装置10Aと、図1に示した導波路装置10とを比較した場合、導波路装置10Aは、導波路装置10から基板11のうら面側のマイクロストリップ型の線路を省略したうえで、基板11のうら面側に、同軸形状の接続ポートを追加することによって得られる。この接続ポートには、同軸型の線路を接続することもできるし、図4を参照して説明するように、回路基板50が備えている線路(基板51のおもて面に形成されたグランド層52と信号ライン53とにより構成された線路)を接続することもできる。本実施形態では、接続ポートと、同軸線路を接続するための接続部材とについて説明する。なお、同軸線路とは、該線路の中心部分に配置された中心導体と、中心導体の外側を取り囲む同軸状の絶縁層と、絶縁層の外側を取り囲む同軸状の外側導体とを備えた線路を指す。
【0073】
なお、導波路装置10Aを構成する部材のうち、導波路装置10を構成する部材と同じ部材には、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0074】
導波路装置10Aにおいて、導体層12Bの一部の領域であって、平面視した場合に、基板11に形成された主導体ポストMPが形成されている貫通孔を取り囲む領域は、環状に導体膜が除去されている。その結果、導波路装置10Aの導体層12Bには、上記貫通孔を取り囲む円形の開口12B1が形成されており、且つ、開口12B1の内側には、開口12B1の縁と離間した円環状の導体パッド12B2が形成されている。図3の(a)に示すように、導体パッド12B2は、主導体ポストMPと短絡されている。
【0075】
導体パッド12B2には、同軸線路の中心導体を接続可能であり、導体層12Bの一部の領域であって、開口12B1の外側の領域には、同軸線路の外側導体を接続可能である。したがって、導体パッド12B2と、導体層12Bにおける開口12B1の外側の領域とは、同軸線路を接続するための接続ポートを構成する。
【0076】
同軸線路と、接続ポートとを接続するための接続部材としては、例えば、図3の(a)及び(b)に示すように、半田ボールSBと、半田製の導体リングCRとを好適に利用可能である。
【0077】
半田ボールSBは、樹脂製の球状部材により構成されたコアと、コアの表面を覆う半田層と、により構成されている。半田ボールSBを用いて中心導体と、導体パッド12B2と、を接続することによって、接続時に半田が主導体ポストMPの内側に流れてしまうことを防ぐことができ、両者を確実に接続することができる。
【0078】
導波路装置10Aは、同軸線路を接続ポートに接続した場合に、基板11のおもて面側に配置されたマイクロストリップ型の線路と、基板11のうら面側に配置された同軸線路との間で電磁波を導波する場合に生じ得る損失を抑制することができる。
【0079】
なお、本実施形態において、導波路装置10Aは、導波路装置10に対して副導体ポストSP8を、上述した9時の位置に追加している。上述したように、導体層12Aを平面視した場合に、帯状導体14Aは、副導体ポストSPiと重ならない位置に配置されていることが好ましい。しかし、本発明の一態様において、このように、複数の副導体ポストの1本である副導体ポストSP8は、導体層12Aを平面視した場合に、帯状導体14Aと重なる位置に形成されていてもよい。帯状導体14Aは、誘電体層13Aにより支持されているため、副導体ポストSP8の開口と重なった場合であっても、その形状を保つことができる。
【0080】
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態に係る発振器1について、図4を参照して説明する。図4の(a)は、発振器1の上面図であり、図4の(b)は、図4の(a)及び(c)に示したA−A’直線に沿った断面における発振器1の断面図であり、図4の(c)は、発振器1の下面図である。
【0081】
図4の(a)〜(c)に示すように、発振器1は、導波路装置10Aと、導波路装置20と、トランジスタ30と、複数の半田ボールとを備えている。
【0082】
(導波路装置10A)
本実施形態の導波路装置10Aは、図3に示した導波路装置10Aと同様の構成を有し、且つ、基板11の長辺の長さを延長したものである。導体層12A及び誘電体層13Aの各々は、基板11のおもて面側に積層されており、導体層12Bは、基板11のうら面に形成されている。したがって、本実施形態に係る導波路装置10Aにおいて、導体層12A、誘電体層13A、及び導体層12Bの各々も、図3に示した導波路装置10Aと比較して長辺の長さが延長されている。
【0083】
これらの構成を除いた場合、本実施形態の導波路装置10Aは、図3に示した導波路装置10Aと同じ構成を有する。そのため、本実施形態では、導波路装置10Aの詳細な説明を省略する。
【0084】
(導波路装置20)
図4の(b)に示すように、導波路装置20は、導波路装置10Aと、基板11、導体層12A、誘電体層13A、及び導体層12Bを共有している。別の言い方をすると、導波路装置20は、基板11の一部の領域であって、導波路装置10Aが形成されている領域とは異なる領域に形成されている。
【0085】
導波路装置20は、基板11と、導体層12Aと、誘電体層13Aと、導体層12Bと、導体ポスト群CPGと、帯状導体24Aと、を備えている。帯状導体24Aは、特許請求の範囲に記載の第2帯状導体の一態様である。
【0086】
基板11、導体層12A、誘電体層13A、及び導体層12Bは、上述したように導波路装置10Aと共有している構成なので、その説明を省略する。
【0087】
<共振領域29>
導体ポスト群CPGは、20本の導体ポストCP1〜CP20により構成されている。以下において、導体ポストCP1〜CP20の各々を特に区別する必要がない場合には、導体ポストCPj(jは、任意の正の整数)と記載する。
【0088】
導体ポストCPjは、導波路装置10Aの主導体ポストMP及び副導体ポストSPiと同様に、基板11に貫通孔を形成し、その貫通孔の内壁に銅製の導体膜を形成することによって得られる。したがって、導体ポスト群CPGについては、各導体ポストCPjの配置パターンについてのみ説明する。
【0089】
誘電体層13Aを平面視した場合、各導体ポストCPjは、各々の中心軸を結んだ線の形状が四角形状(本実施形態においては正方形状)となるように配置されている(図4の(a)及び(c)参照)。4本の導体ポストCP1,CP6,CP11,CP16の各々は、それぞれの中心軸が正方形の4つの角を形成するように配置されている。導体ポストCP2〜CP5の各々は、導体ポストCP1の中心と、導体ポストCP6の中心とを結ぶ直線上に、等間隔となるように配置されている。導体ポストCP7〜CP10の各々は、導体ポストCP6の中心と、導体ポストCP11の中心とを結ぶ直線上に、等間隔となるように配置されている。導体ポストCP12〜CP15の各々は、導体ポストCP11の中心と、導体ポストCP16の中心とを結ぶ直線上に、等間隔となるように配置されている。導体ポストCP17〜CP20の各々は、導体ポストCP16の中心と、導体ポストCP1の中心とを結ぶ直線上に、等間隔となるように配置されている。
【0090】
なお、図4の(a)及び(c)には、各導体ポストCPjのうち導体ポストCP1,CP6,CP11,CP16についてのみ符号を付している。
【0091】
このように柵状に配置された導体ポストCP1〜CP20により構成されている導体ポスト群CPGは、電磁波を反射するポスト壁として機能する。導体ポストCPjと導体ポストCPj+1との間隔は、所望の帯域(後述するように共振周波数を含む予め定められた帯域)の電磁波を反射するように適宜設計すればよい。
【0092】
導体ポスト群CPGと、導体層12Aと、導体層12Bとにより取り囲まれた領域は、共振領域29を形成する。
【0093】
共振領域29は、その形状及びサイズに応じた共振周波数を有する。発振器1は、後述するトランジスタ30と共振領域29とを備えていることによって、上記予め定められた帯域の電磁波を生成する(発振する)ことができる。
【0094】
(おもて面側のマイクロストリップ型の線路)
帯状導体24Aは、誘電体層13Aに形成された導体膜により構成されている。帯状導体24Aは、特許請求の範囲に記載された第2帯状導体の一態様である。誘電体層13Aの異なる領域に形成されている点を除いて、帯状導体24Aは、帯状導体14Aと同じ構成を有する(図4の(a)参照)。具体的には、帯状導体24Aの主部24A1、導体パッド24A2、及び導体パッド24A3の各々は、それぞれ、帯状導体14Aの主部14A1、導体パッド14A2、及び導体パッド14A3に対応する。
【0095】
同様に、誘電体層13Aの異なる領域に形成されている点を除いて、導体パッド25A及び導体パッド27Aの各々は、それぞれ、導体パッド15A及び導体パッド17Aと同じ構成を有している。また、図4の(a)では図示を省略しているが、導体パッド25A及び導体パッド27Aの各々の下層には、それぞれ、ビア群16A及びビア群18Aと同様に構成されたビア群が形成されている。
【0096】
したがって、本実施形態では、帯状導体24A、導体パッド25A、導体パッド27A、及び上記ビア群の詳しい説明を省略する。
【0097】
以上のように構成された帯状導体24Aと、導体層12Aとは、基板11のおもて面側(図4に図示した座標系におけるz軸正方向側)に形成されたマイクロストリップ型の線路を構成する。このマイクロストリップ型の線路は、特許請求の範囲に記載の第2線路の一態様であり、TEMモード又は準TEMモードを導波することができる。
【0098】
なお、本実施形態では、導波路装置20の線路として、マイクロストリップ型の線路を採用している。しかし、導波路装置20の線路は、マイクロストリップ型の線路に限定されるものではなく、例えば、コプレナー型の線路であってもよい。
【0099】
(ブラインドビアBB)
導体層12Aのうち、平面視した場合に、共振領域29の中央を含む領域には、円形状の開口12A2が形成されている。ここで、共振領域29の中央とは、上述した正方形状の2本の対角線の交点(導体ポストCP1の中心と導体ポストCP11の中心とを結ぶ直線と、導体ポストCP6の中心と導体ポストCP16の中心とを結ぶ直線と、の交点)である。
【0100】
平面視した場合に開口12A2に包含され、且つ平面視した場合に共振領域29の中央を含む領域には、基板11のおもて面側から共振領域29の内部に向かって形成されたブラインドビアBBが配置されている。ブラインドビアBBは、基板11のおもて面側から基板11の内部に向かって非貫通孔を形成したうえで、この非貫通孔の内壁に銅製の導体膜を形成することによって得られる。本実施形態では銅製の導体膜としたがそれに限らない。
【0101】
平面視した場合に開口12A2に包含される領域に形成された空芯円筒状の導体であって、帯状導体24AとブラインドビアBBとを短絡する導体が形成されている。図4の(b)において、この導体には、符号を付していない。なお、この導体の形状は、空芯円筒状に限定されるものではなく、適宜定めることができる。
【0102】
帯状導体24AとブラインドビアBBとは、上述の空芯円筒状の導体により短絡されている。
【0103】
(トランジスタ30)
トランジスタ30は、増幅器としての機能を有し、共振領域29の共振周波数を含む予め定められた帯域の電磁波を増幅し、外部へ出力する。
【0104】
トランジスタ30は、入力ポートと、出力ポートとを備えている。入力ポートの信号ラインは、帯状導体24Aの他方の端部である導体パッド24A3に半田ボールを用いて接続されており、入力ポートのグランドラインは、導体パッド25A及び導体パッド27Aに半田ボールを用いて接続されている。出力ポートの信号ラインは、帯状導体14Aの他方の端部である導体パッド14A3に半田ボールを用いて接続されており、出力ポートのグランドラインは、導体パッド15A及び導体パッド17Aに半田ボールを用いて接続されている。なお、本実施形態では、半田ボールを用いて、導体パッド24A3とトランジスタ30とを接続し、且つ、導体パッド14A3とトランジスタ30とを接続している。しかし、導体パッド24A3とトランジスタ30との接続、及び、導体パッド14A3とトランジスタ30との接続には、半田ボールの代わりに半田を用いてもよい。
【0105】
(回路基板50)
発振器1は、トランジスタ30が出力した電磁波を、基板11のおもて面側からうら面側へ、低損失な状態で導波することができる。したがって、基板11とは異なる基板(例えば図4の(b)に図示した回路基板50)の表面に発振器1を接続するだけで、トランジスタ30が出力した電磁波を回路基板50に供給することができる。
【0106】
回路基板50は、例えば樹脂製の基板51と、基板51のおもて面に形成されたグランド層52と、基板51のおもて面のうちグランド層52とは異なる領域に形成された信号ライン53とを備えている。基板51は、いわゆるプリント基板と呼ばれる基板である。
【0107】
導波路装置10Aの導体層12Bは、半田ボールを用いてグランド層52と接続されており、導波路装置10Aの導体パッド12B2は、半田ボールを用いて信号ライン53と接続されている。本実施形態では、半田ボールを用いて、導体層12Bとグランド層52とを接続している。しかし、導体層12Bとグランド層52との接続には、半田ボールの代わりに半田を用いてもよい。なお、導体パッド12B2と信号ライン53とを半田により接続した場合、主導体ポストMPの内部に半田が流れ込んでしまう。そのため、導体パッド12B2と信号ライン53とは、半田ボールにより接続されていることが好ましい。
【0108】
このように、発振器1は、導波路装置10Aを回路基板50に接続することによって、トランジスタ30が出力した電磁波を、低損失な状態で、且つ、容易に回路基板50に供給することができる。
【0109】
〔第1〜第3の実施例〕
本発明の一実施形態に係る導波路装置10の第1〜第2の実施例のSパラメータの周波数依存性を図5に示し、第3の実施例のSパラメータの周波数依存性を図6に示す。
【0110】
図5の(a)は、第1の実施例のSパラメータS(1,1)及びS(2,1)の周波数依存性を示すグラフであり、図5の(b)は、第2の実施例のSパラメータS(1,1)及びS(2,1)の周波数依存性を示すグラフである。また、図5の(c)は、導波路装置10の比較例のSパラメータS(1,1)及びSパラメータS(2,1)の周波数依存性を示すグラフである。図6は、第3の実施例のSパラメータS(1,1)及びS(2,1)の周波数依存性を示すグラフである。
【0111】
第1の実施例は、図1に示した導波路装置10の構成を有し、20GHz以上40GHz以下の帯域を動作帯域として設計したものである。すなわち、第1の実施例は、7本の副導体ポストSPiを備えている。そのうえで、基板11の厚さとして520μmを採用し、半径R1として300μmを採用した。
【0112】
第2の実施例は、図2の(a)に示した導波路装置10の構成を有し、20GHz以上40GHz以下の帯域を動作帯域として設計したものである。すなわち、第2の実施例は、1本の副導体ポストSP1を備えている。基板11の厚さ及び半径R1は、第1の実施例と同一である。
【0113】
第3の実施例は、図1に示した導波路装置10の構成を有し、70GHz以上90GHz以下の帯域を動作帯域として設計したものである。すなわち、第3の実施例は、第1の実施例と同様に7本の副導体ポストSPiを備えている。そのうえで、基板11の厚さとして520μmを採用し、半径R1として300μmを採用した。
【0114】
比較例は、第1の実施例から7本の副導体ポストSPiを省略したものである。すなわち、比較例は、副導体ポストSPiを備えていない。基板11の厚さは、第1の実施例及び第2の実施例と同一である。
【0115】
第1の実施例、第2の実施例、及び比較例の各々について、SパラメータS(1,1)及びSパラメータS(2,1)の周波数依存性をシミュレーションした結果が図5に示すグラフである。
【0116】
図5の(a)を参照すれば、第1の実施例において、SパラメータS(2,1)は、動作帯域の全域において0dBと見做せるレベルであり、SパラメータS(1,1)は、動作帯域の全域において−30dBを下回っていることが分かった。
【0117】
一方、図5の(c)を参照すれば、比較例において、SパラメータS(2,1)の最低値は、−2.5dB程度であり、SパラメータS(1,1)は、−13dB以上−10dB以下の範囲に含まれることが分かった。
【0118】
したがって、第1の実施例は、比較例よりも、動作帯域の全域において、基板11のおもて面側からうら面側へ、又は基板11のうら面側からおもて面側へ電磁波を導波する場合の損失を大幅に抑制できることが分かった。
【0119】
図5の(b)を参照すれば、第2の実施例において、SパラメータS(2,1)の最低値は、−1.5dB程度であり、SパラメータS(1,1)は、−16dB以上−13dB以下の範囲に含まれることが分かった。
【0120】
したがって、第2の実施例は、比較例よりも、動作帯域の全域において、基板11のおもて面側からうら面側へ、又は電磁波を導波する場合の損失を抑制できることが分かった。
【0121】
図6を参照すれば、第3の実施例において、SパラメータS(2,1)は、動作帯域の全域において0dBと見做せるレベルであり、SパラメータS(1,1)は、動作帯域の全域において−39dBを下回っていることが分かった。したがって、第3の実施例は、動作帯域の全域において、基板11のおもて面側からうら面側へ、又は基板11のうら面側からおもて面側へ電磁波を導波する場合の損失を抑制できることが分かった。
【0122】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0123】
10,10A 導波路装置
11 基板
MP 主導体ポスト
SP1〜SP8 副導体ポスト
12A,12B 導体層(第1導体層,第2導体層)
R1 半径
13A,13B 誘電体層
14A,14B 帯状導体(第1帯状導体,第3帯状導体)
14A1,14B1 主部
14A2,14B2 導体パッド(一方の端部)
14A3,14B3 導体パッド(他方の端部)
CP1〜CP20 導体ポスト
CPG 導体ポスト群(ポスト壁として機能する)
1 発振器
20 導波路装置
24A 帯状導体(第2帯状導体)
29 共振領域
30 トランジスタ
1 発振器
【要約】
【課題】基板の一方の主面側から他方の主面側へ電磁波を導波する場合に生じ得る損失を抑制すること。
【解決手段】導波路装置は、基板と、上記基板の両主面に積層された第1導体層及び第2導体層と、上記両主面間を貫通している主導体ポストと、上記両主面間を貫通し、且つ、上記主導体ポストとともにTEMモード又は準TEMモードを導波する1又は複数の副導体ポストと、を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6