(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたような帯電部材に対して直流電圧のみを印加すると、放電領域が狭くなることで感光体電位を安定に保つことが困難となる。またそれにより、トナー、その外添剤等が帯電部材表面を汚染したときに帯電ムラが発生し易い。さらには、帯電部材表面の粒子の脱落の問題もある。その結果、長寿命の帯電部材の設計が非常に困難となっている。
【0007】
また、特許文献2に開示された帯電部材では、ある程度の品質向上は期待できるものの、得られた画像の鮮明さ等の観点において依然として改善が必要であるというのが現状である。
【0008】
そこで本発明は、直流電圧のみを印加する場合であっても、長期にわたり安定した帯電特性を維持することができると共に、出力画像の高品質化を達成することができる帯電部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点に鑑み、種々の検討を行った結果、帯電部材最外層に含有されるバインダー樹脂や粒子の比誘電率を適切に調整することが、本発明の課題を解決するために極めて重要であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、導電性支持体と、該導電性支持体上に積層された導電性弾性体層と、該導電性弾性体層上に最外層として積層された導電性樹脂層を備え、導電性樹脂層がバインダー樹脂と、樹脂粒子及び無機粒子からなる群より選択される少なくとも一種の粒子と、を含有し、バインダー樹脂の比誘電率をεr1とし、粒子の比誘電率をεr2としたとき、εr2<εr1である、帯電部材である。
【0011】
このような帯電部材によれば、直流電圧のみを印加する場合であっても、長期にわたり安定した帯電特性を維持することができる共に、出力画像の高品質化を達成することができる。このような効果を奏する理由は必ずしも明らかではないが、発明者は次のように考えている。長期にわたり良好な帯電特性を維持するための方針の1つとして、帯電部材の最外層となる導電性樹脂層に粒子を含有させることが行われている。しかしながら、このような帯電部材に電圧をかけると、一般的に粒子により形成された凸部に電界が集中する。その結果、凸部より放電が生じ易くなり、出力画像の品質を判断する指標の1つである粒状性が悪化する傾向にある。これに対し、粒子の比誘電率をバインダー樹脂の比誘電率よりも小さくした本発明においては、凸部からの放電を弱めることができるため、導電性樹脂層表面における電界の斑が適度に均されているものと考えられる。これにより、導電性樹脂層表面全体から均一な放電が生じ、出力画像の粒状性を向上することができると推測される。
【0012】
本発明において、εr2が1.5以上4.0以下であることが好ましい。これにより、出力画像をより高品質化し易くなる。
【0013】
導電性樹脂層の厚みは0.5μm以上5.0μm以下であることが好ましい。これにより、安定した帯電特性をより維持し易くなる。
【0014】
導電性樹脂層の十点平均粗さRzJISは5.0μm以上25.0μm以下であり、粒子の粒子間距離Smは50μm以上250μm以下であることが好ましい。これにより、安定した帯電特性をより維持し易くなる。
【0015】
粒子の平均粒子径は5.0μm以上25.0μm以下であることが好ましい。これにより、安定した帯電特性をより維持し易くなる。
【0016】
本発明において、バインダー樹脂の含有量を100質量部としたとき、粒子の含有量は10質量部以上50質量部以下であることが好ましい。これにより、安定した帯電特性をより維持し易くなる。
【0017】
樹脂粒子はオレフィン系樹脂粒子であることが好ましく、無機粒子はシリカ粒子であることが好ましい。これにより、安定した帯電特性をより維持し易くなる。
【0018】
無機粒子は多孔質構造を有することが好ましく、さらに無機粒子の、JIS K 5101−13−1に準拠するオイル吸着量が30ml/100g以上300ml/100g以下であることがより好ましい。これにより、安定した帯電特性をより維持し易くなる。
【0019】
樹脂粒子は、超高分子量ポリエチレン粒子であることが好ましい。これにより、安定した帯電特性をより維持し易くなる。
【0020】
導電性弾性体層はエピクロルヒドリンゴムを含有することが好ましい。これにより、生産時の抵抗変動による不良を減らすことができるため、生産性をより向上させることができる。また、導電性弾性体層と導電性樹脂層との密着力をより向上させることができる。
【0021】
本発明の帯電部材は直流電圧のみが印加されることが好ましい。これにより、様々な環境下における画像出力の際に安定な帯電電位を形成できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、直流電圧のみを印加する場合であっても、長期にわたり安定した帯電特性を維持することができると共に、出力画像の高品質化を達成することができる帯電部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととする。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
<帯電部材>
本実施形態の帯電部材は、導電性支持体と、導電性支持体上に積層された導電性弾性体層と、導電性弾性体層上に最外層として積層された導電性樹脂層とからなる。
図1は、本実施形態に係る帯電部材の模式断面図である。
図1に示すとおり、帯電部材10は、導電性支持体(軸体)1の外周面上に、ロール径方向の内側から外側に向かって、導電性弾性体層2と導電性樹脂層3とが、この順に一体的に積層されている。なお、
図1はあくまでも模式図であるため、例えば導電性弾性体層と導電性樹脂層との間に、耐電圧性(耐リーク性)を高めるための抵抗調整層のような中間層が介在する態様が排除されるものではない。
【0026】
一般的な画像形成装置において、
図1に示すような帯電部材は被帯電体の帯電手段として設けられており、具体的には像担持体である感光体表面を一様に帯電処理する手段として機能する。
【0027】
[導電性支持体]
導電性支持体としては、導電性を有する金属からなるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス等からなる金属製の中空体(パイプ状)や中実体(ロッド状)等が用いられる。導電性支持体の外周面には、導電性を損なわない程度において、防錆や耐傷性付与を目的として、必要に応じてめっき処理が施されていてもよい。また、同外周面には、導電性弾性体層との接着性を高めるため、必要に応じて接着剤、プライマー等が塗布されていてもよい。その際、十分な導電性を確保するために、これら接着剤、プライマー等は必要に応じて導電化されていてもよい。
【0028】
導電性支持体は、例えば直径が5mm以上10mm以下、長さが250mm以上360mm以下の円柱状の形態を有している。
【0029】
[導電性弾性体層]
導電性弾性体層としては、感光体に対する均一な密着性を確保するために適度な弾性を有しているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、天然ゴム;エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ポリウレタン系エラストマー、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素添加NBR(H−NBR)、クロロプレンゴム(CR)等の合成ゴム;ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂;などをベースポリマーとして用いて形成される。これらは単独で又は2種以上併せて用いてもよい。
【0030】
ベースポリマーには、導電性弾性体層に所望の特性を付与することを目的として、導電剤、加硫剤、加硫促進剤、滑剤、助剤等を周知の添加剤を必要に応じて適宜に配合してもよい。ただし、安定な抵抗を形成するという観点から、導電性弾性体層はエピクロルヒドリンゴムを含有することが好ましく、主成分として含有することがより好ましい。より具体的には導電性弾性体層はエピクロルヒドリンゴムを50.0質量%以上含有することが好ましく、80.0質量%以上含有することがより好ましい。
【0031】
なお、導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、導電性酸化チタン(c−TiO
2)、導電性酸化亜鉛(c−ZnO)、導電性酸化錫(c−SnO
2)、第四級アンモニウム塩等があげられる。加硫剤としては硫黄等が挙げられる。加硫促進剤としてはテトラメチルチウラムジスルフィド(CZ)等が挙げられる。滑剤としてはステアリン酸等が挙げられる。助剤としては亜鉛華(ZnO)等が挙げられる。
【0032】
導電性弾性体層の厚みは、適度な弾性を発現させるため、1.25mm以上3.00mm以下程度であることが好ましい。
【0033】
[導電性樹脂層]
導電性樹脂層はバインダー樹脂と、樹脂粒子及び無機粒子からなる群より選択される少なくとも一種の粒子とを含有する。
図2は、本実施形態に係る帯電部材の導電性樹脂層表面を拡大して示す模式断面図である。
図2に示すとおり、導電性樹脂層3はバインダー樹脂(マトリックスとなる材料)3aと、同材料中に分散された樹脂粒子及び無機粒子からなる群より選択される少なくとも一種の複数の粒子3bとを有している。
【0034】
バインダー樹脂としては、被帯電体である感光体を汚染しないものであれば特に限定されるものではなく、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(SEBC)、オレフィン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(CEBC)等のベースポリマーが挙げられる。これらは単独で又は2種以上併せて用いてもよい。本実施形態においては、取り扱いの容易性、材料設計の自由度の大きさ等の観点から、バインダー樹脂は、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリウレタン樹脂及びシリコーン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、ナイロン樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種であることがより好ましい。
【0035】
ここで、導電性樹脂層の厚み、すなわち、バインダー樹脂単独で形成される部分の層厚(層の厚み:
図2中の「A」部分)は、0.5μm以上5.0μm以下であることが好ましい。具体的には、導電性樹脂層の厚みは、最寄りの粒子同士の中間点におけるバインダー樹脂の厚みである。厚みが0.5μm以上であることにより、添加する樹脂粒子及び/又は無機粒子を長期に渡って脱落させずに、継続的に保持し易くなり、一方で5.0μm以下であることにより、帯電性能を良好に維持し易くなる。このような観点から、導電性樹脂層の厚みは1.0μm以上4.5μm以下であることがより好ましく、2.0μm以上4.0μm以下であることがさらに好ましい。なお、導電性樹脂層の厚みは、ローラ断面を鋭利な刃物で切り出して、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察することで測定することができる。
【0036】
粒子としては、放電点を十分に確保するべく導電性樹脂層の表面に対し凹凸を形成することができ、なおかつ後述する特定の比誘電率を満たすことができるものであれば特に限定されるものではない。樹脂粒子に好適な材料としては、オレフィン系樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。無機粒子に好適な材料としては、シリカ、アルミナ等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上併せて用いてもよい。本実施形態においては、好適な誘電特性、粒子の強度等の観点から、オレフィン系樹脂及びシリカからなる群より選択される少なくとも一種の粒子が好ましい。なお、オレフィン系樹脂粒子の具体例としては、超高分子量ポリエチレン粒子等が挙げられる。ここで、超高分子量ポリエチレン粒子とは、重量平均分子量が100万以上(かつ700万以下程度)であるポリエチレンからなる粒子である。なお、これらの粒子は絶縁性粒子であることが好ましい。
【0037】
粒子として無機粒子を採用する場合、無機粒子は多孔質構造を有することが好ましい。より具体的には、無機粒子は多孔質シリカ粒子であることが好ましく、無機粒子の多孔の程度はJIS K 5101−13−1に準拠するオイル吸着量により評価することができる。本実施形態においては、無機粒子のオイル吸着量は30ml/100g以上300ml/100g以下であることが好ましい。オイル吸着量が30ml/100g以上であることにより、粒子強度の制御がし易くなり、300ml/100g以下であることにより、比誘電率の制御がし易くなる。このような観点から、オイル吸着量は50ml/100g以上200ml/100g以下であることがより好ましい。
【0038】
本実施形態において、粒子の平均粒子径は、初期画像不良である帯電ムラ抑制という観点から、5.0μm以上25.0μm以下であることが好ましい(
図2中の「B」部分)。同様の観点から、粒子の平均粒子径は10.0μm以上20.0μm以下であることがより好ましい。なお、粒子の平均粒子径は、SEM観察により複数の粒子の母集団から任意に100個の粒子を抽出し、それらの粒子径の平均値をとることで導出することができる。ただし、粒子形状が真球状ではなく、楕円球状(断面が楕円の球)や不定形等のように一律に粒子径が定まらない場合には、最長径と最短径との単純平均値をその粒子の粒子径とする。
【0039】
導電性樹脂層表面における粒子の粒子間距離Sm(導電性樹脂層表面における凸部間の距離とも言える)は50μm以上250μm以下であることが好ましい。粒子間距離が50μm以上であることにより、導電性樹脂層表面の粒子脱落が抑制し易くなり、一方で250μm以下であることにより、画像ガサツキが抑制し易くなる。同様の観点から、粒子間距離Smは70μm以上200μm以下であることが好ましく、100μm以上150μm以下であることがより好ましい。なお、粒子間距離は、JIS B0601−1994に則り、計測することができる。
【0040】
本実施形態においては、バインダー樹脂の比誘電率をεr1とし、粒子の比誘電率をεr2としたとき、εr2<εr1である。ここで、バインダー樹脂の比誘電率εr1は、粒子添加により生じる表面凹凸の凹部分の放電を制御し易くするという観点から、4.5以上10.0以下であることが好ましく、4.5以上7.0以下であることがより好ましい。一方、粒子の比誘電率εr2は、逆に上記表面凹凸の凸部分の放電を制御し易くするという観点から、1.5以上4.0以下であることが好ましく、2.0以上3.5以下であることがより好ましい。バインダー及び粒子の比誘電率は、例えば、東陽テクニカ製インピーダンスアナライザー 126096W誘電体インピーダンス測定システム(測定条件:AC印加バイアス3V、測定周波数1MHz)により計測することができる。
【0041】
粒子の含有量は、導電性樹脂層に含まれるバインダー樹脂の含有量を100質量部としたとき、10質量部以上50質量部以下であることが好ましい。含有量が10質量部以上であることにより、帯電性能をより満足し易くなる傾向があり、一方で50質量部以下であることにより、塗料化した際の粒子沈降の制御がより容易になり、塗料安定性が悪化し難い傾向がある。同様の観点から、粒子の含有量は15質量部以上45質量部以下であることが好ましく、20質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。導電性樹脂層に含まれる粒子の含有量は、次のようにして定量することができる。例えば、導電性樹脂層を帯電部材からサンプリングし、それを加熱することによって生じる重量変化(TG)、示差熱(DTA)、熱量(DSC)及び揮発成分の質量(MS)を測定することで、粒子の含有量を定量化することができる(TG−DTA−MS、DSC(熱分析))。
【0042】
粒子の形状は、導電性樹脂層の表面に対し凹凸を形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、真球状、楕円球状、不定形等であってもよい。
【0043】
なお、バインダー樹脂(ベースポリマー)中には、上述の粒子の他、各種導電剤(導電性カ−ボン、グラファイト、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉、導電性酸化錫、導電性酸化チタン、イオン導電剤等)、帯電制御剤などが必要に応じて含まれていてもよい。
【0044】
導電性樹脂層表面における十点平均粗さRzJISは、5.0μm以上25.0μm以下であることが好ましい。十点平均粗さが5.0μm以上であることにより、帯電性能をさらに確保し易くなる傾向があり、一方で25.0μm以下であることにより、塗料の安定性をさらに得易くなる傾向がある。同様の観点から、十点平均粗さは8.0μm以上20.0μm以下であることが好ましく、10.0μm以上15.0μm以下であることがより好ましい。十点平均粗さは、(株)小坂研究所製の表面粗さ測定器SE−3400を用いて測定することができる。より詳しくは、十点平均粗さは、本測定器により測定された粗さ曲線から基準長さだけを抜き取った部分において、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高の絶対値の平均値との和として得ることができる。
【0045】
本実施形態の帯電部材は、直流電圧のみが印加されることが好ましく、特に感光体寿命まで画像出力中に印加されるバイアス電圧が−1500V以上−1000V以下であることがより好ましい。これにより様々な環境下における帯電性能を維持し、画像濃度や各種条件を制御し易くなる。具体的には、バイアス電圧が−1000Vより大きいと、画像形成に必要な現像条件を適性化し難くなる。一方、バイアス電圧が−1500Vより小さいと、導電性樹脂層の粒子部分での過剰放電が生じ易くなり、画像形成後、白点状の画像不良が発生し易くなる。
【0046】
<帯電部材の製造方法>
図1に示すような本実施形態の帯電部材は、例えば、次のようにして作製することができる。すなわち、導電性弾性体層用の材料をニーダー等の混練機を用いて混練し、導電性弾性体層用材料を調製する。また、導電性樹脂層用の材料をロール等の混練機を用いて混練し、この混合物に有機溶剤を加えて混合、攪拌することにより、導電性樹脂層用塗布液を調製する。つぎに、導電性支持体となる芯金をセットした射出成形用金型内に、導電性弾性体層用材料を充填し、所定の条件で加熱架橋を行う。その後、脱型することで、導電性支持体の外周面に沿って導電性弾性体層が形成されてなるベースロールを製造する。ついで、上記ベースロールの外周面に、導電性樹脂層用塗布液を塗工して導電性樹脂層を形成する。このようにして、導電性支持体の外周面に導電性弾性体層が、そして導電性弾性体層の外周面に導電性樹脂層が、それぞれ形成されてなる帯電部材を作製することができる。
【0047】
なお、導電性弾性体層の形成方法は、射出成形法に限定されるものではなく、注型成形法や、プレス成形及び研磨を組み合わせた方法を採用してもよい。また、導電性樹脂層用塗布液の塗工方法も、特に制限するものではなく、従来公知のディッピング法、スプレーコーティング法、ロールコート法等を採用してもよい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
(導電性弾性体層形成用材料の調製)
ゴム成分としてエピクロルヒドリンゴム(ダイソー(株)製、「エピクロマーCG−102」)100.00質量部、滑剤としてソルビタン脂肪酸エステル(花王(株)、「スプレンダーR−300」)5.00質量部、軟化剤としてリシノール酸5.00質量部、受酸剤としてハイドロタルサイト類化合物(協和化学工業(株)製、「DHT−4A」)0.50質量部、導電剤としてテトラブチルアンモニウムクロリド(イオン導電剤)(東京化成工業(株)製、「テトラブチルアンモニウムクロリド」)1.00質量部、フィラーとしてシリカ(東ソー・シリカ(株)製、「Nipsil ER」)50.00質量部、架橋促進剤として酸化亜鉛5.00質量部、ジベンゾチアゾールスルフィド1.50質量部及びテトラメチルチウラムモノサルファイド0.50質量部、並びに架橋剤として硫黄1.05質量部を配合し、所定のロールを用いて混練することで、導電性弾性体層形成用材料(ゴム弾性部形成用材料)を調製した。
【0050】
(導電性樹脂層形成用塗布液の調製)
THF(テトラヒドロフラン)中に、バインダー樹脂として、可溶性ナイロンである熱可塑性N−メトキシメチル化6−ナイロン(ナガセケムテックス(製)製、「トレジンF−30K」)100.00質量部、硬化剤としてメチレンビスエチルメチルアニリン(イハラケミカル工業(株)製、「キュアハード−MED」)5.00質量部、及び導電剤としてカーボンブラック(電子導電剤)(電気化学工業(株)製、「デンカブラックHS100」)18.00質量部を混合し、これにさらに以下に示す樹脂粒子又は無機粒子を各実施例及び比較例に応じて表1のとおり添加し、溶液が均一になるまで十分に撹拌した。その後、二本ロールを用いて溶液中の各成分を分散させた。これにより、導電性樹脂層形成用塗布液を調製した。なお、表1中、粒子添加量の[phr]とは、バインダー樹脂(本実施例においてはN−メトキシメチル化6−ナイロン)100質量部に対する添加量(質量部)を示すものである。なお、得られる導電性樹脂層の層厚は、塗布液中の固形分濃度により調整した。
[無機粒子]
シリカ粒子(ADSエスアイテック社製、「サンスフェアシリーズ」)
[樹脂粒子]
オレフィン粒子(三井化学社製、「ミペロンシリーズ」)
ウレタン粒子(根上工業社製、「アートパールシリーズ」)
ただし、各粒子の粒子径は次のようにして測定した。すなわち、SEM観察により複数の粒子の母集団から任意に100個の粒子を抽出し、それらの粒子径の平均値(平均粒子径)を各粒子の粒子径とした。
【0051】
【表1】
【0052】
(帯電部材の作製)
円柱状のロール成形空間を有するロール成形金型を準備し、ロール成形空間と同軸となるように直径6mmの芯金をセットした。この芯金をセットしたロール成形空間に、上記のとおり調製した導電性弾性体層形成用材料を注入し、170℃にて30分間加熱した後、冷却、脱型した。これにより、導電性の軸体としての芯金の外周面に沿って形成された、厚み3mmの導電性弾性体層を得た。
【0053】
次いで、ロールコート法により、ロール体の導電性弾性体層の表面に、上記のとおり調製した導電性樹脂層形成用塗布液を塗工した。この際、所望の膜厚となるようにスクレーパーで不要な塗布液を欠き落としながら塗工を行った。塗膜形成後、これを150℃で30分間加熱し、厚み1.0μmの導電性樹脂層を形成した。これにより、軸体(導電性支持体)と、軸体の外周面に沿って形成された導電性弾性体層と、導電性弾性体層の外周面に沿って形成された導電性樹脂層とを有する帯電部材を作製した。
【0054】
(各種評価)
得られた帯電部材について以下の評価を行った。評価結果をまとめて表2に示す。
【0055】
a)導電性樹脂層の層厚及び粒子間距離
導電性樹脂層の層厚Aは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率5000倍で数箇所測定することにより計測した。また、粒子間距離Smは、JIS B0601−1994評価に則した方法で、(株)小坂研究所製の表面粗さ測定器SE−3400を用い、カットオフを0.8mm、測定長さを8mmとして測定した。より詳しくは、本測定器により、帯電部材の任意の6か所を測定し、その6か所の平均値をもって各測定値とした。
【0056】
b)導電性樹脂層の十点平均粗さ
導電性樹脂層の十点平均粗さ(RzJIS)は、JIS B0601−1994における十点平均粗さ評価に則した方法で、(株)小坂研究所製の表面粗さ測定器SE−3400を用い、カットオフを0.8mm、測定速度を0.5mm/s、測定長さを8mmとして測定した。より詳しくは、本測定器により、帯電部材の任意の6か所を測定し、その6か所の平均値をもって十点平均粗さとした。
【0057】
c)画像形成性評価
画像形成装置としてSamsung製MultixpressC8640NDを用いた。これに上記のとおり得られた帯電部材を組み込み、以下の条件に従って画像形成性評価を行った。
<画像形成条件>
印刷環境:常温常湿度環境下(23℃/60%RH)
印刷条件:印刷通常スピード305mm/secとその半速スピード、印刷枚数(360kPV)、紙の種類(OfficePaperEC)
導電性支持体端部への荷重:片側5.88N
印加バイアス:感光体表面電位が−600Vとなるように便宜調整して決定した。
【0058】
c−1)帯電均一性評価
上記画像形成装置を用いて、ハーフトーン画像を通常スピード(1/1)と半速スピード(1/2)で、初期と耐久後の360kPV後出力した。この画像中に現れる帯電不良(マイクロジッター)を目視にて観察し、以下の基準に基づき評価した。
評価A:均一なハーフトーン画像が得られた。
評価B:画像端部にのみわずかに帯電ムラが発生した。
評価C:画像端部にのみ帯電ムラが発生した。
評価D:画像全面に帯電ムラが発生した。
【0059】
c−2)画像品質評価
画像処理装置PIAS−II(PIAS社製、パーソナルイメージアナリシスシステムLA−555)を用いて評価した。具体的には、上記画像形成装置を用いて形成した2×2のドットから形成された印字パターンをPIAS−IIにて画像データとして取り込み、そこで数値化された画像濃度と、Grainness及びMottleの値とを読み取った。本実施例においては、画像濃度とMottleに相関があった為、濃度0.2でのMottleの値を以て画像品質を評価した。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例の帯電部材を備える画像形成装置によれば、直流電圧のみを印加する場合であっても、長期にわたり安定した帯電特性を維持することができると共に、出力画像の高品質化を達成することができる。