(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係るレーザ加工システムについて、実施例1及び実施例2のレーザ加工システムST1及びレーザ加工システムST2により説明する。
【0012】
(実施例1)
実施例1のレーザ加工システムST1(以下、加工システムST1)の構成を、ブロック図である
図1と模式図である
図2を参照して説明する。
レーザ加工システムST1は、N台(N:2以上の整数)のレーザ加工装置と1台のレーザ発振装置とを含んで構成されている。
実施例1において、レーザ発振装置は、レーザ加工装置と同数のN個のレーザ発振モジュールを有する。
【0013】
実施例1の加工システムST1は、レーザ加工装置の台数を2(N=2)とした例である。
加工システムST1は、二台のレーザ加工装置M1,M2と、その二台のレーザ加工装置M1,M2に共有されるレーザ発振装置L1と、加工システム全体を制御する制御装置CTと、を含んで構成されている。
【0014】
この例において、レーザ加工装置M1は、レーザ光照射装置としてのレーザ溶接トーチM1aを備えたレーザ溶接機である。レーザ加工装置M2は、レーザ光照射装置としてのレーザ加工ヘッドM2aを備えたレーザ切断機である。
レーザ発振装置L1は、レーザ溶接トーチM1a及びレーザ加工ヘッドM2aからワーク(図示せず)に対して照射するレーザ光Lzwの元となるレーザ光を供給する。
制御装置CTは、加工システムST1の全体の動作を制御する。
【0015】
図1では、レーザ加工装置M1及びレーザ加工装置M2を、概略の平面図と、各装置に備えられたレーザ溶接トーチM1a及びレーザ加工ヘッドM2aの断面図と、で模式的に示してある。
【0016】
加工システムST1において、レーザ発振装置L1は、二つのレーザモジュール体L11,L21を備えている。
レーザモジュール体L11とレーザモジュール体L21は、同じ構成を有し、
図1では、左右対称に記載されている。以下、代表としてレーザモジュール体L11について詳述する。
【0017】
レーザモジュール体L11は、レーザ光Lz12(
図2参照)を発振生成するレーザモジュール12及びスイッチャ13を備える。
スイッチャ13は、一つの入力ポート13a及び二つの出力ポート13c,13dを有する。
レーザモジュール12とスイッチャ13の入力ポート13aとは、光ファイバ12aで接続されており、レーザモジュール12で生成されたレーザ光Lz12は、光ファイバ12aを介してスイッチャ13に入力される。
【0018】
スイッチャ13は、入力ポート13aに接続された光ファイバ12aの端部から発散出光したレーザ光Lz12の発散レーザ光Lzaを、平行レーザ光Lzbにするコリメートレンズ13bを有する。
スイッチャ13は、コリメートレンズ13bを通過した平行レーザ光Lzbを、二つの出力ポート13c,13dのいずれかに選択的に導くための誘導部13e,13fを有する。誘導部13e,13fは、平行レーザ光Lzbの経路に沿って誘導部13eが上流側となるように並設されている。
【0019】
誘導部13e及び誘導部13fは、それぞれ反射鏡13e1及び反射鏡13f1を有する。反射鏡13e1及び反射鏡13f1は、全反射鏡である。
反射鏡13e1と反射鏡13f1とは、制御装置CTの制御の下、エアシリンダなどを用いた駆動部(図示せず)の動作によって、平行レーザ光Lzbの光路に進入した進入位置と、光路から退避した退避位置と、の間で独立して個別に移動する。
【0020】
詳しくは、制御装置CTは、光路上流側の反射鏡13e1が進入位置にある状態A〔
図2(a)〕と、反射鏡13e1が退避位置にあり、反射鏡13f1が進入位置にある状態B〔
図2(b)〕と、のいずれかの状態になるよう制御する。
【0021】
また、
図2には、誤動作や故障などにより、反射鏡13e1及び反射鏡13f1が共に退避位置に移動した場合の状態C〔
図2(c)〕を併せて記載してある。
【0022】
図1は、実線で、反射鏡13e1が進入位置にあり、反射鏡13f1が退避位置にある状態Aが記載されている。
【0023】
スイッチャ13は、反射鏡13e1及び反射鏡13f1が状態Cにある場合に、平行レーザ光Lzbが所定外部位に照射されないよう受光吸収するビームダンパ13gを、平行レーザ光Lzbの光路上に有している。
【0024】
反射鏡13e1及び反射鏡13f1は、反射面が、光束に対し
図1において下向き45°となる傾斜姿勢で平行レーザ光Lzbの光路内に進入するようになっている。
反射鏡13e1は、平行レーザ光Lzbの光路内に進入した状態Aで、平行レーザ光Lzbを全反射し出力ポート13cに向け偏向する。
反射鏡13f1は、平行レーザ光Lzbの光路内に進入した状態Bで、平行レーザ光Lzbを全反射し出力ポート13dに向け偏向する。
【0025】
誘導部13eは、反射鏡13e1によって偏向された平行レーザ光Lzbを出力ポート13cに収束誘導するレンズ13e2を有する。
誘導部13fは、反射鏡13f1によって偏向された平行レーザ光Lzbを出力ポート13dに収束誘導するレンズ13f2を有する。
【0026】
これにより、状態Aでは、平行レーザ光Lzbは、反射鏡13e1によって偏向され、出力ポート13cに誘導される。
状態Bでは、平行レーザ光Lzbは、反射鏡13f1によって偏向され、出力ポート13dに誘導される。
【0027】
一方、レーザモジュール体L21は、レーザモジュール体L11が備えるレーザモジュール12,光ファイバ12a,及びスイッチャ13に対応した、レーザモジュール22,光ファイバ22a,及びスイッチャ23を備える。
【0028】
スイッチャ23は、スイッチャ13における、入力ポート13a、コリメートレンズ13b、出力ポート13c,13d、誘導部13e,13f、反射鏡13e1,13f1、ビームダンパ13g、及びレンズ13e2,13f2にそれぞれ対応する、入力ポート23a、コリメートレンズ23b、出力ポート23c,23d、誘導部23e,23f、反射鏡23e1,23f1、ビームダンパ23g、及びレンズ23e2,23f2を有する。
スイッチャ23は、スイッチャ13と同じ機能を有し、動作は制御装置CTにより制御される。
【0029】
すなわち、スイッチャ23において、レーザモジュール22から出力されたレーザ光Lz22(
図2参照)は、状態Aにおいて出力ポート23cに誘導され、状態Bにおいて出力ポート23dに誘導される。
【0030】
レーザ発振装置L1は、レーザモジュール12,22及びスイッチャ13,23に加えて、さらにレーザ光照射装置M1a,M2aそれぞれに対応する光合成器31,32を有する。
スイッチャ13及びスイッチャ23のいずれか一方から出力されたレーザ光は、光合成器31及び光合成器32のいずれか一方を通るようになっている。
そして、光合成器31を通ったレーザ光は、レーザ光照射装置M1aに供給され、光合成器32を通ったレーザ光はレーザ光照射装置M2aに供給される。
【0031】
すなわち、スイッチャ13,23と光合成器31,32とレーザ加工装置M1,M2とは、光ファイバによって次のように接続されている。
出力ポート13cは、光合成器31と光ファイバ13c1で接続されている。
出力ポート13dは、光合成器32と光ファイバ13d1で接続されている。
出力ポート23cは、光合成器32と光ファイバ23c1で接続されている。
出力ポート23dは、光合成器31と光ファイバ23d1で接続されている。
【0032】
光合成器31は、レーザ溶接トーチM1aと光ファイバ31aで接続されている。光合成器32は、レーザ加工ヘッドM2aと光ファイバ32aで接続されている。
【0033】
これにより、スイッチャ13の出力ポート13cから出力されたレーザ光と、スイッチャ23の出力ポート23dから出力されたレーザ光と、が、光合成器31で合成されてレーザ溶接トーチM1aに供給可能である。
また、スイッチャ13の出力ポート13dから出力されたレーザ光と、スイッチャ23の出力ポート23cから出力されたレーザ光と、が、光合成器32で合成されてレーザ加工ヘッドM2aに供給可能である。
すなわち、光合成器31,32は、それぞれ入力された二系統のレーザ光を合成し、一系統のレーザ光にして出力する。
【0034】
スイッチャ13,23が状態A〜状態Cにあるときのレーザ光の光路は、既述のように
図2(a)〜(c)にそれぞれ模式的に示される。
図2(a)〜(c)それぞれは、説明容易のため、スイッチャ13,23が共に同じ状態となっている例を示しているが、それぞれ独立的に状態遷移可能とされている。すなわち、スイッチャ13がA状態でスイッチャ23がB状態、或いはその逆の状態、に設定可能である。
【0035】
図2(a)で示される状態Aでは、レーザモジュール12,22から出力したレーザ光Lz12,Lz22は、光路に進入した反射鏡13e1,23e1で反射して偏向され、出力ポート13c,23cから光合成器31,32を通り、それぞれレーザ光照射装置M1a,M2aに供給される。
【0036】
図2(b)に示される状態Bでは、レーザモジュール12,22から出力したレーザ光Lz12,Lz22は、光路に進入した反射鏡13f1,23f1で反射して偏向され、出力ポート13d,23dから、状態Aとは逆に光合成器32,31を通り、それぞれレーザ光照射装置M2a,M1aに供給される。
【0037】
正常稼動時には取りえない状態Cでは、レーザモジュール12,22から出力したレーザ光Lz12,Lz22は、ビームダンパ13g,23gに達して吸収され、外部に出力されない。
【0038】
以上の構成により、スイッチャ13の二つの誘導部13e,13f及びスイッチャ23の二つの誘導部23e,23fの合計四つの誘導部が、それぞれ状態A〜状態Bのいずれにあるか、で、レーザ光がOFFとなる場合を除き、12通りの組み合わせ(モード)が得られる。
【0039】
その組み合わせとしてのモード1〜モード12が、
図3に示されている。
図3は、スイッチャ13,23のそれぞれの状態と、レーザモジュール12,22の出力ON/OFFの状態と、の組み合わせに応じた、レーザ光照射装置M1a,M2aに供給されるレーザ光の内容について、白丸及び黒丸などで示したものである。
【0040】
詳しくは、供給されるレーザ光がレーザモジュール12から出力されたレーザ光Lz12の場合に白丸、レーザモジュール22から出力されたレーザ光Lz22の場合に黒丸、としてある。星印はレーザ光の供給がないことを示している。
【0041】
図3では、レーザモジュール12及びレーザモジュール22の両方共にレーザ光を出力していない場合を除いてある。
【0042】
図3に示されるように、モード6,9で、レーザ光Lz12とレーザ光Lz22とが合成される。
合成されたレーザ光は、モード6では、レーザ光照射装置M1aに供給され、モード9では、レーザ光照射装置M2aに供給される。
また、モード3及びモード12のように、二つのレーザ光照射装置M1a,M2aに同時供給されるレーザ光Lz12,Lz22を、逆にできる。
【0043】
モード1及びモード4と、モード5及びモード11と、に示されるように、レーザ光照射装置M1aのみに供給されるレーザ光を、レーザ光Lz12とレーザ光Lz22とのいずれか一方に選択できる。
また、モード2及びモード8と、モード7及びモード10と、に示されるように、レーザ光照射装置M2aのみに供給されるレーザ光を、レーザ光Lz12とレーザ光Lz22とで逆にできる。
【0044】
従って、レーザモジュール12から出力するレーザ光Lz12の出力値と、レーザモジュール22から出力するレーザ光Lz22の出力値と、を同じにした場合、各レーザ光照射装置M1a,M2aに供給されるレーザ光の強度として、レーザ光Lz12(レーザ光Lz22)の強度と、その2倍の強度と、の二種類を設定することができる。
【0045】
また、レーザ光Lz12の出力値とレーザ光Lz22の出力値とを、異なる値にすれば、各レーザ光照射装置M1a,M2aに供給されるレーザ光は、レーザ光Lz12の強度,レーザ光Lz22の強度,及びレーザ光Lz12とレーザ光Lz22との合算強度、の三種類の出力値を設定することができる。
【0046】
実施例1の加工システムST1によれば、複数のレーザ光照射装置M1a,M2aに対しレーザ発振装置L1を共有化しても、そのレーザ発振装置L1からビームスプリッタを用いることなく複数のレーザ光照射装置M1a,M2aに選択的及び同時的にレーザ光を供給できる。
そのため、供給できるレーザ光の最高強度が低くなることがなく、レーザ光照射装置M1a,M2aを高能力化できる。
【0047】
また、レーザ発振装置L1は、複数のレーザ光照射装置の数であるN個と同じ数のN個のレーザモジュール体L11,L21を備える。そして、各レーザモジュール体L11,L21は、一つのレーザモジュール12,22と、各レーザモジュール12,22から出力されたレーザ光Lz12,Lz22をN個の出力ポート(13c,13d),(23c,23d)に振り分けるスイッチャ13,23を有する。
【0048】
さらに、レーザ発振装置L1は、スイッチャ13,23それぞれの一方の出力ポート13c,23dに一端側が接続された光ファイバ13c1,23d1と、他方の出力ポート13d,23cに一端側が接続された光ファイバ13d1,23c1と、光ファイバ13c1,23d1の他端側が共に接続された光合成器31と、光ファイバ13c1,23d1の他端側が共に接続された光合成器32と、を有する。
そして、出力ポート13c,23dからのレーザ光を光合成器31で合成してレーザ光照射装置M1aに供給し、出力ポート13d,23cからのレーザ光を光合成器32で合成してレーザ光照射装置M2aに供給するようになっている。
【0049】
これにより、レーザモジュール12から出力されるレーザ光Lz12の強度と、レーザモジュール22から出力されるレーザ光Lz22の強度と、を異なる強度とすることで、各レーザ光照射装置M1a,M2aには、三種類の強度のレーザ光を供給することができるので、レーザ光照射装置M1a,M2aは、レーザ加工可能な加工条件が拡張し汎用性が向上する。
また、レーザモジュール体L11,L12の内の一方が故障した際に、他方のレーザモジュール体で代用できる場合があるので、レーザ光照射装置の稼働効率の低下を抑制できる。
【0050】
(実施例2)
本発明の実施例の形態に係るレーザ加工システムの実施例2であるレーザ加工システムST2(以下、加工システムST2)の構成を、
図4及び
図5を参照して説明する。
加工システムST2も、N台(N:2以上の整数)のレーザ加工装置と1台のレーザ発振装置とを含んで構成されている。
また、レーザ発振装置は、レーザ加工装置と同数のN個のレーザ発振モジュールを有する。
図4は、実施例1における
図1に相当するブロック図であり、
図5は、実施例1における
図2に相当し、加工システムST2における状態D〜Fを説明するための模式図である。
【0051】
実施例2の加工システムST2も、実施例1の加工システムST1と同様に、複数(N台:Nは2以上の整数)のレーザ加工装置を含み、以下、まずN=2とした場合を説明する。
すなわち、加工システムST2は、二台のレーザ加工装置M1,M2と、その二台のレーザ加工装置M1,M2に共有されるレーザ発振装置L51と、加工システム全体を制御する制御装置CTと、を含んで構成されている。
【0052】
レーザ加工装置M1及びレーザ加工装置M2は、実施例1のものと同じである。
レーザ発振装置L51は、レーザ溶接トーチM1a及びレーザ加工ヘッドM2aがワーク(図示せず)に対し照射するレーザ光Lzwを供給する。
制御装置CTは、加工システムST2の全体の動作を制御する。
【0053】
加工システムST2において、レーザ発振装置L51は、レーザモジュール52と、一つのレーザモジュール体L61と、を備えている。
レーザモジュール体L61は、実施例1の加工システムST1におけるレーザモジュール体L21と構成は同じである。
【0054】
すなわち、レーザモジュール体L61は、レーザモジュール体L21におけるレーザモジュール22及びスイッチャ23に対応した、レーザモジュール62及びスイッチャ63を有する。
【0055】
スイッチャ63における、入力ポート63a、コリメートレンズ63b、出力ポート63c,63d、誘導部63e,63f及びその反射鏡63e1,63f1、ビームダンパ63g、レンズ63e2,63f2は、それぞれスイッチャ23における、入力ポート23a、コリメートレンズ23b、出力ポート23c,23d、誘導部23e,23f及びその反射鏡23e1,23f1、ビームダンパ23g、レンズ23e2,23f2に対応してそれぞれ同じ機能を有し、動作は制御装置CTにより制御される。
【0056】
レーザ発振装置L51において、レーザモジュール52から出力されたレーザ光Lz52(
図5参照)は、光ファイバ52a,光合成器71,及び光ファイバ71aを通りレーザ溶接トーチM1aに供給される。
【0057】
一方、レーザモジュール62から出力されたレーザ光Lz62は、誘導部63e及び誘導部63fの動作により、状態D〔
図5(a)〕では、出力ポート63cに誘導され、状態E〔
図5(b)〕では、出力ポート63dに誘導される。
【0058】
図4及び
図5に示されるように、出力ポート63cとレーザ加工ヘッドM2aとは、光ファイバ63c1で接続されている。
出力ポート63dと光合成器71とは、光ファイバ63d1で接続されている。
従って、レーザ光Lz62は、状態Dにおいてレーザ加工ヘッドM2aに供給され、状態Eにおいてレーザ溶接トーチM1aに供給される。
また、状態Eにおいて、レーザ光Lz62は、レーザモジュール52からレーザ光Lz52が出力されている場合、光合成器71においてそのレーザ光Lz52と合成されてレーザ溶接トーチM1aに供給される。
すなわち、光合成器71は、入力された二系統のレーザ光を合成し、一系統のレーザ光として出力する。
【0059】
また。誘導部63e及び誘導部63fの誤動作や故障などにより、反射鏡63e1及び反射鏡63f1が共に退避位置に移動してしまった場合の状態F〔
図5(c)参照〕では、平行レーザ光Lzb(
図4参照)が所定外の部位に照射されないように受光吸収するビームダンパ63gが、平行レーザ光Lzbの光路上に設けられている。
【0060】
以上の構成により、レーザ発振装置L51は、スイッチャ63の二つの誘導部63e,63fを状態D及び状態Eのいずれかにすることによって、レーザ溶接トーチM1aとレーザ加工ヘッドM2aとに供給されるレーザ光の有無と、有の場合の強度とが、次に説明するモード21〜モード26の七つのモードの中から制御装置CTによって選択制御される。
【0061】
モード21〜モード26は、
図6に示される。
図6は、スイッチャ63の状態と、レーザモジュール52,53の出力ON/OFFの状態と、の組み合わせに応じた、レーザ光照射装置M1a,M2aに供給されるレーザ光の内容について、白丸及び黒丸などで示したものである。
【0062】
詳しくは、供給されるレーザ光がレーザモジュール52から出力されたレーザ光Lz52の場合に白丸、レーザモジュール62から出力されたレーザ光Lz62の場合に黒丸、としてある。星印はレーザ光の供給がないことを示している。
【0063】
図6では、レーザモジュール52及びレーザモジュール62の両方共に出力がない場合は除いてある。
【0064】
図6に示されるように、モード26で、レーザ光Lz52とレーザ光Lz62とが合成されて、レーザ光照射装置M1aに供給される。
また、モード21及びモード24と、モード25と、に示されるように、レーザ光照射装置M1aのみに供給されるレーザ光を、レーザ光Lz52とレーザ光Lz62とのいずれか一方に選択できる。
【0065】
従って、レーザモジュール52から出力するレーザ光Lz52の出力値と、レーザモジュール62から出力するレーザ光Lz62の出力値と、を同じにした場合、レーザ光照射装置M1aに供給されるレーザ光の強度として、レーザ光Lz52(レーザ光Lz62)の強度と、その2倍の強度と、の二種類を設定することができる。
【0066】
また、レーザモジュール52から出力するレーザ光Lz52の出力値と、レーザモジュール62から出力するレーザ光Lz62の出力値と、を、異なる値にした場合、レーザ光照射装置M1aに、レーザ光Lz52,レーザ光Lz62,及び(レーザ光Lz52+レーザ光Lz62)の三種類の出力値を設定することができる。
【0067】
実施例2の加工システムST2によれば、複数のレーザ光照射装置M1a,M2aに対しレーザ発振装置L51を共有化しても、そのレーザ発振装置L51からビームスプリッタを用いることなく複数のレーザ光照射装置M1a,M2aに選択的及び同時的にレーザ光を供給できる。
そのため、供給できるレーザ光の最高強度が低くなることがなく、レーザ光照射装置M1a,M2aを高能力化できる。
【0068】
また、実施例2において、レーザ発振装置L51は、複数のレーザ光照射装置の数であるNよりも少ないK(K<Nなる正の整数)個のレーザモジュール体L61を備え、それぞれのレーザモジュール体L61には、一つのレーザモジュール(62)と、レーザモジュール62から出力されたレーザ光Lz62をN個の出力ポート63c,63dに振り分けるスイッチャ63を有している。
【0069】
さらに、レーザ発振装置L51は、スイッチャ63の一方の出力ポート63dに一端側が接続された光ファイバ63d1と、レーザモジュール52に一端側が接続された光ファイバ52aと、光ファイバ63d1及び光ファイバ52aの他端側が共に接続された光合成器71を有する。
そして、レーザモジュール52から出力されたレーザ光と出力ポート63dから出力されたレーザ光とを光合成器71で合成してレーザ光照射装置M1aに供給し、出力ポート63cからのレーザ光を、光ファイバ63c1を通してレーザ光照射装置M2aに供給するようになっている。
【0070】
これにより、レーザモジュール52から出力されるレーザ光Lz52の強度と、レーザモジュール62から出力されるレーザ光Lz62の強度と、を異なる強度とすることで、レーザ光照射装置M1aには、三種類の強度のレーザ光を供給することができるので、レーザ光照射装置M1aは、加工可能なレーザ加工の種類が増え汎用性が向上する。
【0071】
次に、
図7を参照してN=3とした加工システムST2Aの概略を説明する。
【0072】
N=3の加工システムST2Aは、三つのレーザ加工装置M1〜M3を有する。
各加工装置には、レーザ光照射装置M1a〜M3aが備えられている。
加工システムST2Aは、レーザ発振装置L51A及び制御装置CTを有する
レーザ発振装置L51Aは、三つのレーザモジュール52A,62A,72Aと、二つのスイッチャ63A,73Aと、三つの光合成器71Aa〜71Acを有する。
光合成器71Aa〜71Acとレーザ光照射装置M1a〜M3aとは、それぞれ光ファイバF71a〜F71cにより一対一に接続されている。
【0073】
スイッチャ63A,73Aは、それぞれ三つの出力ポート(63Aa〜63Ac),(73Aa〜73Ac)を有する。
スイッチャ63Aは、レーザモジュール62Aからのレーザ光Lz62Aを、図示しない誘導部により、制御装置CTの制御の下、選択的に出力ポート63Aa〜63acに誘導する。
スイッチャ73Aは、レーザモジュール72Aからのレーザ光Lz72Aを、図示しない誘導部により、制御装置CTの制御の下、選択的に出力ポート73Aa〜73acに誘導する。
【0074】
出力ポート63Aa及び出力ポート73Aaは、光合成器71Aaに光ファイバにより接続されている。
出力ポート63Ab及び出力ポート73Abは、光合成器71Abに光ファイバにより接続されている。
出力ポート63Ac及び出力ポート73Acは、光合成器71Acに光ファイバにより接続されている。
【0075】
光合成器71Aaには、さらにレーザモジュール52Aと光ファイバにより接続されている。
すなわち、光合成器71Aaは、入力された三系統のレーザ光を合成し、一系統のレーザ光としてレーザ光照射装置M1aに供給する。
また光合成器71Aa,71Acは、入力された二系統のレーザ光を合成し、一系統のレーザ光としてそれぞれレーザ光照射装置M2a,M3aに供給する。
【0076】
この構成により、レーザ加工システムST2Aは、レーザ加工システムST2と同様の効果を奏する。
【0077】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0078】
実施例1のレーザ加工システムST1は、レーザモジュール体の数を、Nを越える数K(K:K>Nなる整数)にしたレーザ加工システムST3(以下、加工システムST3)に変形してもよい。
【0079】
(変形例1)
加工システムST3においても、各レーザモジュール体は、N個の出力ポートと、出力するレーザ光をN個の出力ポートに選択的に振り分けるスイッチャと、を有する。
【0080】
図8は、この変形例1の加工システムST3の構成を説明するための模式的ブロック図である。加工システムST3は、K>Nの条件を満たすK=3,N=2とした例である。
図8において、加工システムST3は、レーザ発振装置L81と、レーザ加工装置としての二台のレーザ加工装置M1及びレーザ加工装置M2と、制御装置CTと、を含んで構成されている。
【0081】
レーザ発振装置L81は、三つのレーザモジュール体LA1〜LA3を備えている。
各レーザモジュール体LA1〜LA3は、同じ構成を有する。
例えば、レーザモジュール体LA1〜LA3は、実施例1のレーザモジュール体L11と同様に、それぞれ、レーザモジュール91a〜93a及びスイッチャ91b〜93bを有する。
【0082】
スイッチャ91b〜93bは、それぞれ、二つの誘導部(S1a,S1b),(S2a,S2b),(S3a,S3b)と、二つの出力ポート(91b1,91b2),(92b1,92b2),(93b1,93b2)と、を有する。
【0083】
スイッチャ91bは、レーザモジュール91aから出力されたレーザ光Lz91を、制御装置CTに制御された誘導部S1a,S1bの動作により、出力ポート91b1,91b2に選択的に振り分ける。
スイッチャ92bは、レーザモジュール92aから出力されたレーザ光Lz92を、制御装置CTに制御された誘導部S2a,S2bの動作により、出力ポート92b1,92b2に選択的に振り分ける。
スイッチャ93bは、レーザモジュール93aから出力されたレーザ光Lz93を、制御装置CTに制御された誘導部S3a,S3bの動作により、出力ポート93b1,93b2に選択的に振り分ける。
【0084】
出力ポート91b1,92b1,93b1から出力されたレーザ光は、それぞれ光ファイバF1a,F2a,F3aを通って光合成器94で合成される。合成されたレーザ光は、光ファイバ94aを通ってレーザ光照射装置M1aに供給される。
出力ポート91b2,92b2,93b2から出力されたレーザ光は、それぞれ光ファイバF1b,F2b,F3bを通って光合成器95で合成される。合成されたレーザ光は、光ファイバ95aを通ってレーザ光照射装置M2aに供給される。
【0085】
スイッチャ91b〜93bそれぞれにおいて、レーザ光Lz91〜Lz93を、光合成器94に誘導するように出力ポート91b1〜93b1に振り分ける動作状態を状態Fとし、光合成器95に誘導するように出力ポート91b2〜93b2に振り分ける動作状態を状態Gとする。
【0086】
制御装置CTは、各スイッチャ91b〜93bの六つの誘導部(S1a,S1b),(S2a,S2b),(S3a,S3b)のそれぞれについて、独立的に状態Fと状態Gとのいずれかになるよう制御する。
従って、レーザ光Lz91〜Lz93のいずれか一つをONとしたとき、各スイッチャ91b〜93bの状態Fと状態Gとの組み合わせにより、そのレーザ光のレーザ光照射装置M1a,M2aへの供給モードとして、
図9及び
図10に示されるモード101〜モード156の56通りが得られる。
【0087】
図9は、スイッチャ91b〜93bそれぞれの状態(状態Fか状態Gか)と、レーザモジュール91a〜93aの出力の有無状態(ON/OFF)と、の組み合わせに応じて異なる、レーザ光照射装置M1a,M2aに供給されるレーザ光の内容について、白丸,黒丸,及び三角などで示したものである。
詳しくは、供給されるレーザ光がレーザモジュール91aから出力されたレーザ光Lz91の場合に白丸、レーザモジュール92aから出力されたレーザ光Lz92の場合に黒丸、レーザモジュール93aから出力されたレーザ光Lz93の場合に三角、としてある。星印はレーザ光の供給がないことを示している。
【0088】
図9では、レーザモジュール91a〜93aのすべてがレーザ光を出力していない場合を除いてある。
また、モード数が多いので、
図9では、一部(モード101〜116、149〜156)のみを表示してある。
【0089】
図10は、スイッチャ91b〜93bそれぞれの状態の組み合せと、対応するモードとの関係を示す表である。
一つの組み合わせについて、レーザ光の出力ON/OFFから7通りのモードが得られる。
【0090】
図9に示されるように、一つのレーザ光照射装置に供給されるレーザ光を、レーザモジュール91a〜93aの、いずれかの一つのレーザ光,いずれかの二つのレーザ光の合成光,及び三つの合成光、のいずれかに設定することができる。
また、一方のレーザ光照射装置に供給されるレーザ光を、レーザモジュール91a〜93aの、いずれか一つのレーザ光及びいずれか二つのレーザ光の合成光、に設定したときに、他方のレーザ光照射装置に、残りのレーザモジュールからのレーザ光を同時的に供給することができる。
【0091】
従って、レーザモジュール91a〜93aからそれぞれ出力するレーザ光Lz91〜Lz93の出力値を同じにした場合、各レーザ光照射装置M1a,M2aに供給されるレーザ光の強度として、一つのレーザ光の強度と、その2倍の強度と、3倍強度と、の三種類を設定することができる。
【0092】
また、レーザモジュール91a〜93aからそれぞれ出力するレーザ光Lz91〜Lz93の出力値を、互いに異なる値にした場合、各レーザ光照射装置M1a,M2aに供給されるレーザ光は、レーザ光Lz91〜Lz93の各強度の三種類と、任意の二つを合成した強度の三種類と,三つを合成した強度の一種類の、合計七種類の出力値を設定することができる。
【0093】
変形例1の加工システムST3によれば、複数のレーザ光照射装置M1a,M2aに対しレーザ発振装置L1を共有化しても、そのレーザ発振装置L1からビームスプリッタを用いることなく複数のレーザ光照射装置M1a,M2aに対し選択的及び同時的にレーザ光を供給できる。
そのため、供給できるレーザ光の最高強度が低くなることがなく、レーザ光照射装置M1a,M2aを高能力化できる。
【0094】
さらに、レーザ発振装置L81は、スイッチャ91b〜93bそれぞれの一方の出力ポート91b1〜93b3に一端側が接続された光ファイバF1a〜F3aと、他方の出力ポート91b2〜93b2に一端側が接続された光ファイバF1b〜F3bと、光ファイバF1a〜F3aの他端側が共に接続された光合成器94と、光ファイバF1b〜F3bの他端側が共に接続された光合成器95と、を有する。
【0095】
そして、出力ポート91b1〜93b3からのレーザ光を光合成器94で合成して光ファイバ94aを通してレーザ光照射装置M1aに供給し、出力ポート91b2〜93b2からのレーザ光を光合成器95で合成して光ファイバ95aを通してレーザ光照射装置M2aに供給するようになっている。
【0096】
これにより、レーザモジュール91a〜93aから出力されるレーザ光Lz91〜93の強度と、互いに異なる強度とすることで、各レーザ光照射装置M1a,M2aには、七種類の強度のレーザ光を供給することができる。
そのため、レーザ光照射装置M1a,M2aは、加工可能なレーザ加工の種類が増え汎用性が向上する。
【0097】
上述の実施例1及び実施例2は、それぞれN=2とした例であったが、一般化すると各実施例は、次の特徴を有する。 すなわち、実施例1は、N(N:2以上の整数)台のレーザ光照射装置と、前記N台のレーザ光照射装置にレーザ光を供給するレーザ発振装置と、を備え、前記レーザ発振装置は、レーザ光を出力するN個のレーザモジュールと、前記N個のレーザモジュールそれぞれに対応して設けられ、各前記レーザモジュールから出力されたレーザ光が入力される入力ポートと、N個の出力ポートと、前記入力ポートに入力された前記レーザ光を前記N個の出力ポートそれぞれに選択的に誘導するN個の誘導部と、を有するN個のスイッチャと、それぞれが各前記N個のスイッチャから出力されたN系統のレーザ光を合成して一系統にするN個の光合成器と、前記N個の光合成器と前記N台のレーザ光照射装置とを一対一で接続するN本の光ファイバと、を備えたことを特徴とするレーザ加工システムである。
【0098】
また、実施例1は、一台のレーザ発振装置からN(Nは2以上の整数)台のレーザ光照射装置にレーザ光を供給するレーザ光供給方法であって、
レーザ発振装置に第1〜第NなるN個のレーザモジュールを設けておき、前記第1のレーザモジュールから出力されたレーザ光をN系統に選択的に振り分けると共に、N系統の内のk(1≦k≦N)番目の系統のレーザ光を、第2のレーザモジュールから出力されN系統に選択的に振り分けた内の(N−k+1)番目の系統のレーザ光と合成して前記N台のレーザ光照射装置の内のk番目のレーザ光照射装置に供給することを特徴とするレーザ光供給方法である。
【0099】
実施例2は、 N(N:2以上の整数)台のレーザ光照射装置と、前記N台のレーザ光照射装置にレーザ光を供給するレーザ発振装置と、を備え、前記レーザ発振装置は、レーザ光を出力するN個のレーザモジュールと、前記N個のレーザモジュールの内のK(KはN未満の正の整数)個のレーザモジュールに対応して設けられ、各前記K個のレーザモジュールから出力されたレーザ光が入力される入力ポートと、N個の出力ポートと、前記入力ポートに入力された前記レーザ光を前記N個の出力ポートそれぞれに選択的に誘導するN個の誘導部と、を有するK個のスイッチャと、さらに、2≦Kの場合、それぞれが各前記K個のスイッチャから出力されたK系統のレーザ光を一系統に合成するN個の光合成器と、前記N個の光合成器と前記N台のレーザ光照射装置とを一対一で接続するN本の光合成器接続用光ファイバと、前記K個のスイッチャに非対応の(N−K)個の前記レーザモジュールと、前記N個の光合成器の内の(N−K)個の光合成器と、を一対一で接続するK本のレーザモジュール接続用光ファイバと、を備え、K=1の場合、前記K個のスイッチャから出力されたK系統のレーザ光と、前記(N−K)個の前記レーザモジュールの内の一つから出力されたK系統のレーザ光と、を一系統に合成する(N−K)個の光合成器と、前記(N−K)個の光合成器と前記N台のレーザ光照射装置の内の(N−K)台のレーザ光照射装置とを一対一で接続する(N−K)本の光合成器接続用光ファイバと、前記K個のスイッチャにおけるN系統の出力の内のK系統と、前記N台のレーザ光照射装置の内の前記光合成器と接続されていないK台と、一対一で接続するK本のスイッチャ接続用光ファイバと、を備えていることを特徴とするレーザ加工システムである。
【0100】
以上詳述した変形例は、K=3,N=2とした例であったが、一般化すると、次の特徴を有する。 すなわち、変形例は、N(N:2以上の整数)台のレーザ光照射装置と、前記N台のレーザ光照射装置にレーザ光を供給するレーザ発振装置と、を備え、前記レーザ発振装置は、レーザ光を出力するM(Nを越える整数)個のレーザモジュールと、前記M個のレーザモジュールそれぞれに対応して設けられ、前記レーザモジュールから出力されたレーザ光が入力される入力ポートと、N個の出力ポートと、前記入力ポートに入力された前記レーザ光を前記N個の出力ポートそれぞれに選択的に誘導するN個の誘導部と、を有するM個のスイッチャと、それぞれが各前記M個のスイッチャから出力されたM系統のレーザ光を一系統に合成するN個の光合成器と、前記N個の光合成器と前記N台のレーザ光照射装置とを一対一で接続するN本の光ファイバと、を備えたことを特徴とするレーザ加工システムである。
【0101】
レーザ加工装置M1,M2は、レーザ溶接装置やレーザ切断機に限定されず、他の加工を行うレーザ加工装置であってもよい。
制御装置CTは、レーザ発振装置L1,L51,L81内に備えられていてもよい。
【0102】
上述の構成から明らかなように、実施例1及び実施例2、並びに、変形例において、光合成器(31,32)、71、(94,95)は、光ファイバで入力された複数系統のレーザ光を合成し、一系統のレーザ光にして光ファイバへ出力する光合成素子を用いている。
レーザ光の合成を、空間伝播されたレーザ光を鏡等の光学素子を用いて行ってもよいが、光合成素子を用いて各実施例及び変形例の構成で合成を行う方が、各レーザ光の光軸及び位相を高度に合わせた合成が可能であり、取扱いも容易で、設置位置も限定されず、高い自由度で各部材のレイアウトが可能になり、好ましい。