(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
魚介類の養殖池や湖沼・河川・湖水等の閉鎖水域,排水処理場,汚水処理場等において,水質の改善・改良等を目的として,水中(液体中)に微細気泡を供給することがある(特許文献1及び2参照)。微細気泡は,ファインバブル,マイクロバブル又はナノバブルとも呼ばれる粒径が100μm以下(例えば数10μm〜数μm)の微細な気泡であり,通常の気泡(例えば粒径1mm以上の気泡)には見られない特徴,例えば浮力が小さく水中に長時間浮遊して様々な部位に到達する,水中で浮遊しながら縮小して消滅(完全溶解)する等の特徴を有している。
【0003】
微細気泡は,例えば水中に供給して完全溶解させることにより,水中の様々な部位の溶存酸素濃度を効率的に向上させて水質を改善・改良することが期待できる。また,微細気泡を含む水は微生物,植物,動物に対する活性効果があることも報告されており,例えばナスやトマト等の収穫量を高めるために利用できる(非特許文献1参照)。更に,医薬品や食品等の分野においても様々なガス(酸素,オゾン,窒素等)を閉じ込めた微細気泡が利用されており,例えばオゾンガスを閉じ込めた微細気泡は強力な殺菌効果を有することが認められている。
【0004】
水中(液体中)に微細気泡を供給する従来方法の一例は,エジェクタの小径管路に液体を高速で通過させ,その液流によって生じる負圧を利用して気相Paから液相Pb中に気体を吸引(自吸)し,その下流の管路拡大で生じるキャビテーションによって吸引した気体を微細に破砕して微細気泡を発生させるものである(非特許文献2参照)。例えば
図6(A)に示すように,エジェクタ62を利用した微細気泡発生装置60(以下,エジェクタ式微細気泡発生装置ということがある)は,液体貯留槽61内の液相Pb中にポンプ63及びエジェクタ62を配置し,ポンプ63で吸引した加圧液Qを液体流路64及び流量調整バルブ65を介してエジェクタ62に循環させる。また,エジェクタ62に気体供給路66の一端を接続し,気体供給路66の他端の開閉コック67を気相Paに連通させて配置する(特許文献1参照)。
【0005】
図6(B)は,エジェクタ62の一例の断面図を示す。図示例のエジェクタ62は,液体流路64から加圧液Qを取り入れる中空部62aを有し,その上流側に拡径された入口(管路 入口)62bを設けることにより断面を略T字形状とし,入口に比して縮径された管路中間部分(小径管路)に微細吸気孔62eを設けて気体供給路66の一端を接続する。管路入口62bから流入した加圧液Qは小径管路を通過する際に負圧を生じ,気体供給路66から微細吸気孔62eを介して気体Gが吸引されて液体に混合される。混合された気体Gは加圧液Qと共に管路出口62cへ送られ,出口の管路拡大で生じるキャビテーションによって微細に破砕され,微細気泡Sとなって放出される。
【0006】
図6(C)は,中空管路62aの中間部分に縮径部(小径管路)62dを設けたエジェクタ(ベンチュリー)62の他の一例の断面図を示す。図示例のエジェクタ62は,縮径部62dに気体供給路66の一端を接続する微細吸気孔62eを設けており,管路入口62bから流入した加圧液Qは縮径部62dを通過する際に負圧を生じ,気体供給路66から微細吸気孔62eを介して気体Gが吸引されて液体に混合される。加圧液Qに混合した気体Gは,その下流側の管路拡大で生じるキャビテーションによって破砕され,微細気泡Sとなって管路出口62cから放出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし,
図6に示す従来のエジェクタ式微細気泡発生装置60は,例えば加圧液Qに含まれる浮遊物等によってエジェクタ62の微細吸気孔62eに閉塞が生じうる問題点がある。微細吸気孔62eの閉塞は,加圧液Q中の浮遊物だけでなく金属腐食(例えばステンレス鋼の局部腐食)等によっても発生しうる。例えば養魚場や閉鎖水域等では微細気泡の供給を長期間継続しなければならないことも多いが,微細吸気孔62が閉塞すると気体Gの吸引が止まって微細気泡Sの発生が停止するので,無人の養魚場や海洋等でエジェクタ式微細気泡発生装置60を利用する場合は,微細気泡Sの発生停止を防止する対策が別途必要となる。無人の海洋上や養魚場等における微細気泡Sの利用を図るため,気体Gの吸引が止まりにくく長期間継続的に使用しても微細気泡Sを安定的に供給できるエジェクタ式微細気泡発生装置の開発が望まれている。
【0010】
そこで本発明の目的は,長期間継続的に微細気泡を供給できるエジェクタ式の微細気泡発生方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
図1及び図2の実施例を参照するに,本発明による微細気泡発生方法は,入口12及び出口13が所定内径R1で所定深さ部位L1の内周面15aに縮径部14が形成された中空外管10の出口側周壁15に
その出口側周壁15の内周面15aの接線方向に中心軸線Iを揃えた通気孔16を穿
つと共にその出口側周壁15の内周面15aを凹凸のない曲面とし(図2(B)参照),中空外管10の所定内径R1より小さい外径R3及び縮径部14と同じ内径R2で所定深さ部位L2の外周面25bに所定内径R1より大きい外径R0のフランジ24が形成された中空内管20の一端22を中空外管10の出口13に芯合わせして差し込
むと共に差し込み端の外周面25bを凹凸のない曲面とし(
図1(A)の矢印B
及び図2(B)参照),中空外管10の出口13の周囲に中空内管20のフランジ24を固定すると共に中空内管20の差し込み端22を中空外管10の縮径部14と微小間隙E(=L1−L2)で対向させ(
図1(B)
及び図2(A)参照),中空外管10の通気孔16を気相Pa(
図6参照)に連通させつつ入口12から加圧液Qを導入し,通気孔16及び微小間隙Eを介して気相Paから
中空外管10と中空内管20との間に形成された環状で内面に凹凸のない気体チャンバー28及び微小間隙Eを介して中空内管20に気体Gを吸引し且つ吸引した気体Gを中空内管20の他端23から破砕しながら放出してなるものである。
【0012】
また
図1及び図2の実施例を参照するに,本発明による微細気泡発生装置は,入口12及び出口13が所定内径R1で所定深さ部位L1の内周面15aに縮径部14が形成され且つ出口側周壁15に
その出口側周壁15の内周面15aの接線方向に中心軸線Iを揃えた通気孔16
を穿
つと共にその出口側周壁15の内周面15aを凹凸のない曲面(図2(B)参照)とした中空外管10,中空外管10の所定内径R1より小さい外径R3及び縮径部14と同じ内径R2で所定深さ部位L2の外周面25bに所定内径R1より大きい外径R0のフランジ24が形成され且つ中空外管10の出口13に一端22を芯合わせして差し込む
と共に差し込み端の外周面25bを凹凸のない曲面(図2(B)参照)とした中空内管20,並びに中空外管10の出口13の周囲に中空内管20のフランジ24を固定する固定部材30を備え,中空内管20のフランジ24の形成部位L2をその中空内管20の差し込み端22が中空外管10の縮径部14と微小間隙E(=L1−L2)で対向するように設定
すると共に,中空外管10と中空内管20との間に環状で内面に凹凸のない気体チャンバー28を形成してなるものである(
図1(B)
及び図2(A)参照)。
【0014】
望ましい実施例では,
図2(C)に示すように,中空内管20の内径R2を一端22側から他端23側へ向けて徐々に拡大させ,中空内管20に吸引した気体Gを内径R2の拡大により粉砕する。更に望ましい実施例では,
図4(E)に示すように,中空内管20の差し込み端22に内周方向に沿った凹凸22cを設け,微小間隙Eの外周縁に凹凸を形成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による微細気泡発生方法及び装置は,所定深さ部位L1の内周面15aに縮径部14が形成された中空外管10の所定内径R1の出口側周壁15に
その出口側周壁15の内周面15aの接線方向に中心軸線Iを揃えた通気孔16を穿
つと共にその出口側周壁15の内周面15aを凹凸のない曲面とし,その所定内径R1より小さい外径R3及び縮径部14と同じ内径R2で所定深さ部位L2の外周面25bに所定内径R1より大きい外径R0のフランジ24が形成された中空内管20の一端22を中空外管10の出口13に芯合わせして差し込
むと共に差し込み端の外周面25bを凹凸のない曲面とし,中空外管10の出口13の周囲に中空内管20のフランジ24を固定すると共に中空内管20の差し込み端22を中空外管10の縮径部14と微小間隙E(=L1−L2)で対向させ,中空外管10の通気孔16を気相Paに連通させつつ入口12から加圧液Qを導入し,通気孔16及び微小間隙Eを介して気相Paから
中空外管10と中空内管20との間に形成された環状で内面に凹凸のない気体チャンバー28及び微小間隙Eを介して中空内管20に気体Gを吸引し且つ吸引した気体Gを中空内管20の他端23から破砕しながら放出するので,次の有利な効果を奏する。
【0016】
(イ)内周面15aに縮径部14が形成された中空外管10の内径R1の出口13に,内径R1より小さい外径R3の中空内管20aを差し込み,中空外管10の出口側周壁15に通気孔16を穿つことにより,加圧液Qを導入する中空内管20の周囲に中空内管20の外周面25bと中空外管10の内周面15aとで囲まれた筒状に延びる環状の気体チャンバー28を形成することができる。
(ロ)また,中空内管20の差し込み端22を中空外管10の縮径部14と微小間隙Eで対向させることにより,加圧液Qを導入する中空内管20の断面全周(360度)にわたり気体チャンバー28と接する環状スリットを形成することができる。
【0017】
(ハ)全周にわたる微小間隙Eの環状スリットを介して気体チャンバー28の気体Gを加圧液Qに吸引することにより,従来のポイント的な微細吸気孔62e(
図6参照)に比して,目詰まり等による気体Gの吸引停止が起こりにくく,長期間継続的に使用しても微細気泡Sを安定的に発生させることができる。
(ニ)環状の気体チャンバー内の気体Gを中空外管10の内周壁に沿って旋回させることにより,気体チャンバー28内の気体Gのバラツキを避け,全周にわたる環状スリットから加圧液Qに吸引される気体(気泡)Gの混合を均一化することができる。
【0018】
(ホ)また,通気孔16に連なる中空外管10の内周面15aを凹凸のない曲面とし,内周面15aに沿った気体流路の摩擦損失を抑えることにより,加圧液Qに吸引される気体Gの混合の更なる均一化を図り,ひいては発生させる微細気泡Sの均一化を図ることが期待できる。
(ヘ)更に,中空内管20の差し込み端22に内周方向に沿った凹凸22cを設け,環状スリットの外周縁に凹凸を形成することにより,環状スリットから気体Gを粉砕しながら加圧液Qに吸引することができ,ひいては発生させる微細気泡Sの小径化を図ることが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は,例えば養魚場や閉鎖水域等の対象水域に微細気泡Sを供給する本発明の微細気泡発生装置1の実施例を示す。
図1(A)に示す発生装置1は,所定内径R1の中空部11の周壁15に通気孔16が穿たれた中空外管10aと,その中空外管10aの出口13に一端22を芯合わせして差し込む中空内管20aと,中空外管10aの入口12に芯合わせして押し当てる接続導管40aとを有している。
図1(B)に示すように,中空外管10aと中空内管20aと接続導管40aとを組み合わせ,固定手段30によって一体化することによりエジェクタを構成する。各管10a,20a,40aの材質は任意に選択できるが,例えばステンレス鋼製又は合成樹脂製とすることができる。ただし,接続導管40aは後述するように本発明に必須のものではなく,省略可能である。
【0021】
図1(B)において,中空外管10aの通気孔16は,例えば気体供給路66(
図6参照)と接続することにより気相Paと連通させる。そのうえで,例えば液体流路64(
図6参照)を接続導管40aに接続し,接続導管40aを介して中空外管10aの入口12に加圧液Qを導入し,通気孔16から加圧液Q中に気体Gを吸引(自吸)して混合する。気体Gの混合した加圧液Qは,中空外管10aの出口13から中空内管20aの一端22に導入され,中空内管20aの他端23から放出されるが,その放出時の急激な管路拡大で生じるキャビテーションによって混合した気体(気泡)Gが破砕されて微細気泡Sを生成する。
【0022】
図示例の中空外管10aは,入口12及び出口13が所定内径R1の中空部11を有し,中空部11の出口13から所定深さ部位L1の内周面15aに縮径部14が形成され,その縮径部14よりも出口側の周壁15に通気孔16を穿ったものである。所定内径R1の入口12と出口13との間に小さい内径R2の縮径部(小径管路)14を設けることにより,入口12から導入された加圧液Qが縮径部14を通過する際に負圧を生じ,通気孔16から気体Gを吸引することができる。
【0023】
図示例では中空外管10aの入口12と出口13とを同じ内径R1としているが,所定深さ部位L1に縮径部14を形成することができれば,入口12及び出口13の内径は異なる大きさとしてもよい。通気孔16からの吸気量は,例えば通気孔16に接続する気体供給路66にバルブを設けて調節することができる。従って,通気孔16の口径は任意に設定可能であり,目詰まり等を防ぐために通気孔16を比較的大径とすることも有効である(
図3(A)参照)。
【0024】
図3(A)は中空外管10aの他の実施例を示し,その入口側の側面図を
図3(B)に示す。中空外管10aの入口12の周囲端面には後述する接続導管40aのフランジ44を押し当てて固定するが,
図3(B)に示すように,入口周囲面12aに接続導管40aを固定するための固定手段30(ボルト穴等)を設けることができる。また,中空外管10aの入口12には,接続導管40aのフランジ44の押し当て面に設けた嵌め込み突起43b(
図5(A)参照)を嵌め合わせる嵌合部(拡径部)12bを設けることができる。
【0025】
また,
図3(A)の中空外管10aの出口側の側面図を
図3(D)に示す。中空外管10aの出口13の周囲端面には後述する中空内管20aのフランジ24を押し当てて固定するが,
図3(D)に示すように,出口周囲面13aに中空内管20aを固定するための固定手段30(ボルト穴等)を設けることができる。また,中空外管10aの出口13には,中空内管20aのフランジ24の押し当て面に設けた嵌め込み突起22b(
図4(A)参照)を嵌め合わせる嵌合部(拡径部)13bを設けることができる。
【0026】
図1の実施例に戻り,図示例の中空内管20aは,中空外管10aの出口13の所定内径R1より小さい外径R3の中空部21を有し,その中空部21を縮径部14と同じ内径R2とし,その中空部21の一端(差し込み端)22から所定深さ部位L2の外周面25bに所定内径R1より大きい外径R0のフランジ24を形成したものである。図示例では中空内管20aのフランジ24を中空外管10aの出口と同じ外径R0としているが,フランジ24は中空外管10aの出口内径R1より大きいものであれば足り,必ずしも出口外径R0と同じ大きさでなくてもよい。また,図示例ではフランジ24を中空内管20aの他端23から深さL3の部位としているが,フランジ24と他端23との距離は図示例に限定されず,例えばフランジ24と他端23との距離L3をゼロとし,中空内管20aの他端23の外周面にフランジ24を形成してもよい。
【0027】
図1(A)の矢印Bで示すように,中空内管20aの一端22を中空外管10aの出口13に芯合わせしながら差し込み,中空内管20aのフランジ24を中空内管20aの出口周囲面13aに押し当て,中空内管20aの差し込み端22を中空外管10aの縮径部14と対向させる。中空内管20aのフランジ24を形成する部位(一端22からの所定深さ部位)L2は,
図1(B)に示すように,中空内管20aの差し込み端22が中空外管10aの縮径部14と微小間隙E(=L1−L2)で対向するように,すなわち中空外管10aの縮径部14の所定深さL1より若干小さくなるように設定する。例えば,中空内管20aの差し込み端22と中空外管10aの縮径部14とが0.1mm〜10mm程度,好ましくは0.5mm〜6mm程度の微小間隙Eを介して対向するように設定する。
【0028】
中空内管20aを中空外管10aの出口13に差し込んだのち,中空内管20aのフランジ24を中空外管10aの出口周囲面13aに固定する。例えば接着剤・溶接等の固定手段30を用いて強固に固定することも可能であるが,望ましくはボルト等の固定手段30を用いて中空内管20aと中空外管10aとを分離可能に固定する。ボルト等の固定手段30を用いることにより,必要に応じて中空内管20aと中空外管10aとを分離して保守・修理等を行うことができる。また,必要に応じてボルト等の締め付け強度を調節し又はガスケット等を挟み込むことにより,中空内管20aの差し込み端22と中空外管10aの縮径部14との微小間隙Eを調整することも可能である。
【0029】
図1(B)に示すように,中空内管20aの外径R3を中空外管10aの出口内径R1より小さくしているので,中空外管10aに嵌合した中空内管20aの外周面25bと中空外管10aの内周面15aとの間に筒状に延びる環状の気体チャンバー28を形成することができる(
図1(D)も参照)。また,中空外管10aの出口側周壁15には通気孔16が穿たれているので,通気孔16を気相Paに連通させることにより,環状の気体チャンバー28に気相Paから気体Gを取り入れることができる。
【0030】
更に,中空内管20aの中空部21を中空外管10aの縮径部14と同じ内径R2にすると共に,中空内管20aの差し込み端22を中空外管10aの縮径部14と微小間隙Eで対向させることにより,縮径部14と中空内管20aの中空部21とが連なる小径管路に,360度の全周にわたって気体チャンバー28と接する微小間隙Eの環状スリットを形成することができる(
図1(C)も参照)。すなわち,後述するように中空外管10aの縮径部14と中空内管20aの中空部21とが連なる小径管路に加圧液Qを導入した際に,その小径管路の全周から微小間隙Eの環状スリットを介して気体チャンバー28の気体Gを吸引(自吸)することができる。
【0031】
図4(A)は中空内管20aの他の実施例を示し,その差し込み端側の側面図を
図4(B)に示す。同図に示すように,中空内管20aのフランジ24には,中空外管10aの出口周囲面13aに固定するための固定手段30(ボルト穴等)を設けることができる。また,中空内管20aのフランジ24の押し当て面には,中空外管10aの出口13の嵌合部(拡径部)13bに嵌め合わせる嵌め込み突起22bを設けることができる。
【0032】
再び
図1の実施例に戻り,図示例の接続導管40aは,中空外管10aの入口12と同じ所定内径R1の中空部41を有し,その一端43の外周面に所定内径R1より大きい外径R0のフランジ44を形成したものである。図示例では接続導管40aのフランジ44を中空外管10aの出口と同じ外径R0としているが,フランジ44は中空外管10aの入口内径R1より大きいものであれば足りる。
【0033】
図1(A)の矢印Bで示すように,接続導管40aの一端43のフランジ44を中空外管10aの入口12に芯合わせしながら押し当て,入口周囲面12aに固定する。例えば接着剤・溶接等の固定手段30を用いて強固に固定することも可能であるが,中空内管20aの場合と同様に,接続導管40aもボルト等の固定手段30を用いて分離可能に中空外管10aと固定することが望ましい。ボルト等の固定手段30を用いることにより,必要に応じて接続導管40aと中空外管10aとを分離して保守・修理等を行うことができる。
【0034】
図5(A)は接続導管40aの他の実施例を示し,その押し当て端側の側面図を
図5(B)に示す。同図に示すように,接続導管40aのフランジ44には,中空外管10aの入口周囲面12aに固定するための固定手段30(ボルト穴等)を設けることができる。また,接続導管40aのフランジ44の押し当て面には,中空外管10aの入口12の嵌合部(拡径部)12bに嵌め合わせる嵌め込み突起43bを設けることができる。
【0035】
本発明において接続導管40aは,中空外管10aの入口12に液体流路64(
図6参照)を接続する機能を果たす。すなわち,接続導管40aの一端43を中空外管10aの入口12に固定し,他端42に液体流路64を接続する。
図5(C)の接続導管40bに示すように,必要に応じて接続導管40aの外周面に液体流路64の取付け部(例えば螺合部)45を設けることができる。接続導管40aを介して液体流路64から中空外管10aの入口12に導入された加圧液Qは,中空外管10aの縮径部14と中空内管20aの中空部21とが連なる小径管路を通過する際に負圧を生じ,
図1(C)に示すように,その小径管路の全周にわたって形成された微小間隙Eの環状スリットから気体チャンバー28の気体Gが吸引(自吸)されて混合される。
【0036】
ただし,接続導管40aは本発明に必須のものではなく,中空外管10aの入口12に液体流路64を直接接続できる場合は,接続導管40aを省略することができる。すなわち,中空外管10a及び中空内管20aのみによりエジェクタを構成し,その中空外管10aの入口12に液体流路64(
図6参照)を直接接続する。中空外管10aの入口12の外周面に液体流路64の取付け部(例えば螺合部)を設けることも有効である。この場合も,中空外管10aの縮径部14と中空内管20の中空部21とが連なる小径管路を通過する際に,微小間隙Eの環状スリットから気体チャンバー28の気体Gを吸引(自吸)されて加圧液Qに混合される。
【0037】
本発明の微細気泡発生装置1は,加圧液Qの小径管路に全周にわたる微小間隙Eの環状スリットを形成し,その環状スリットを介して加圧液Qに気体Gを吸引するので,
図6を参照して上述した従来のポイント的な微細吸気孔62eによる気体Gの吸引に比して,目詰まり等による気体Gの吸引停止のおそれをなくすことができる。金属腐食等によってスリットの一部分が閉塞した場合でも,全周にわたる環状スリットとすることにより,スリット全体の閉塞を避け,気体Gの吸引を継続することができる。また,全周にわたる環状スリットから気体Gを吸引することにより,従来のポイント的な吸引に比して気体Gの吸引力を高め,加圧液Qに混合する気体Gの量,ひいては中空外管10aの出口13から中空内管20aを介して放出される微細気泡Sの量を増やすことができる。
【0038】
また,本発明の微細気泡発生装置1は,環状スリットの微小間隙Eの大きさを調整することにより,放出される微細気泡Sの粒径を調整することもできる。すなわち,微小間隙Eを小さく又は大きくすることにより,微小間隙Eから加圧液Qに吸引されて混合される気体(気泡)Gの粒径を小さく又は大きくすることができる。本発明において加圧液Qに混合された気体Gは,加圧液Qの放出時に破砕されて微細気泡Sとなるが,加圧水Qに混合する段階において気体Gの粒径を小さく又は大きくすることにより,放出される微細気泡Sの粒径を調整できる。
【0039】
こうして本発明の目的である「長期間継続的に微細気泡を供給できるエジェクタ式の微細気泡発生方法及び装置」の提供を達成することができる。
【0040】
なお,全周にわたる微小間隙Eの環状スリットは,小径管路の周囲全体を気体Gと接触させるので,気体Gと接する部分ごとに加圧液Qと気体Gとの混合が不均一になることも考えられる。部分ごとの混合の不均一は,発生させる微細気泡Sの粒径の不均一につながる原因となり得る。本発明の微細気泡発生装置1は,小径管路の周囲に筒状に延びる環状の気体チャンバー28を形成し,環状スリットを介して気体チャンバー28と加圧液Qとを接触させているので,気体チャンバー28内の気体Gのバラツキを避けることにより,加圧液Gと気体Gとの混合が部分ごとの不均一になることを抑制できる。
【0041】
具体的には,
図1(D)に示すように,環状の気体チャンバー28内の気体Gを中空外管10aの内周壁に沿って旋回させることが望ましい。同図は,
図1(B)に示すエジェクタの線D−Dにおける断面図を示し,中空外管10aの通気孔16の中心軸線Iを中心からずらして中空外管10aの内周面15aの接線方向に沿って揃えることを示している。このような通気孔16の配置により,内周面15aの接線方向に沿って気相Paから気体Gを吸引し,吸引した気体Gを中空外管10aの内周壁に沿って旋回させることができる。気体チャンバー28内の気体Gを旋回させることにより,全周にわたる加圧液Gと気体Gとの混合のバラツキをなくし,ひいては発生させる微細気泡Sの粒径を均一化することが期待できる。
【実施例1】
【0042】
図2(A)は,中空外管10aの通気孔16に連なる出口側周壁15の内周面15aを凹凸のない曲面とした本発明の微細気泡発生装置1の他の実施例を示す。上述したように,本発明の微細気泡発生装置1は,小径管路の周囲に筒状に延びる環状の気体チャンバー28を形成し,全周にわたる微小間隙Eの環状スリットを介して気体チャンバー2の気体Gと加圧液Qとを接触させるので,部分ごとに加圧液Qと気体Gとの混合が不均一になりうる。気体チャンバー28内の気体Gを旋回させることにより混合のバラツキを一定程度抑制できるが,均一な粒径の微細気泡Sを発生させるためには,混合のバラツキをできる限り小さくすることが望ましい。
【0043】
図2(A)に示す微細気泡発生装置1は,出口側周壁15の内周面15aを凹凸のない曲面とした中空外管10bを用い,内周面15aに沿った気体流路の摩擦損失を小さく抑えたものである。内周面15aを凹凸のない曲面とした中空外管10bの他の一例を
図3(C)に示す。図示例の中空外管10bは,
図3(B)及び(D)に示す入口側及び出口側の側面図は上述した中空外管10aと同様であるが,気体チャンバー28内の気体Gが流れる中空外管10aの内周面15aを凹凸のない曲面とすることにより,気体チャンバー28内の乱流の発生を防止してスムーズな流れを確保したものである。
【0044】
好ましくは,
図2(A)に示すように,差し込み端22側の外周面25bを凹凸のない曲面とした中空内管20bと組み合わせる。外周面25bを凹凸のない曲面とした中空外管10bの他の一例を
図4(C)に示す。すなわち,中空外管10bの内周面15aを凹凸のない曲面にすると共に,その中空外管10aの出口13に芯合わせして差し込む中空内管20aの外周面25bを凹凸のない曲面とし,小径管路の周囲の気体チャンバー28の内面全体を凹凸のない曲面として気体Gの乱流の発生を防止する。
図2(B)に示すように,気体チャンバー28の内面全体を曲面構造とすることにより,微小間隙Eの環状スリットを介して気体チャンバー2の気体Gを滑らかに流動させることができ,加圧液Qと気体Gとの混合のバラツキを小さく抑えることが期待できる。
【実施例2】
【0045】
図2(C)は,中空内管20の内径R2を一端22側から他端23側へ向けて徐々に拡大させた本発明の微細気泡発生装置1の他の実施例を示す。上述したように,本発明の微細気泡発生装置1は,加圧液Qの放出時の管路拡大で生じるキャビテーションによって気体(気泡)Gを破砕して微細気泡Sを発生させるが,放出前の中空内管20の内径R2を徐々に拡大させることにより,
図6(C)を参照して上述したエジェクタ(ベンチュリー)62と同様に中空内管20を機能させ,中空内管20の内側において圧力変化により気体(気泡)Gを崩壊させることができ,放出する微細気泡Sの小径化を図ることができる。
【0046】
図2(C)に示す微細気泡発生装置1は,フランジ24と他端23との距離を長くすると共に内径R2を他端23側へ向けて徐々に拡大させた中空内管20cを用いている。内径R2を徐々に拡大させた中空内管20cの他の一例を
図4(D)に示す。図示例の中空内管20cは,
図4(B)に示す差し込み端側の側面図は上述した中空内管20a,20cと同様であるが,一端22側から他端23側へ向けて内径R2が徐々に拡大するようにフランジ24と他端23との距離L4を長くしたものである。
【0047】
好ましくは,
図4(E)に示すように,中空内管20の差し込み端22に内周方向に沿った凹凸22cを設け,加圧液Qと気体Gとを混合させる微小間隙Eの環状スリットの外周縁に凹凸を形成する。環状スリットを介して加圧液Qに吸引される気体Gは,環状スリットの外周に形成される渦巻状せん断流によって分解された気泡となって混合されるが,環状スリットの外周縁を長く且つ複雑な形状とすることにより,混合させる気泡を分解させ,粒径を小さくすることが期待できる。
図4(D)のように中空内管20bの内径R2を他端23側へ向けて徐々に拡大することで放出前の加圧水Q中の微細気泡Sを細かくできるが,加圧水Qに混合する段階で気体(気泡)Gの粒径を小さくすることにより,放出する微細気泡Sの更なる小径化を図ることが期待できる。