(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出手段によって実時間で検出した信号を遠隔地に時系列で送信可能であること、又は、前記判定手段による状態変化を遠隔地に連絡通報可能であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び特許文献2では、着床離床検出センサーの出力信号からベッドを使用している人の心拍振動或いは呼吸などの体動による検出信号の有無と継続時間を用いて着床離床の判断を行なっているが、これらの発明では、検出信号の抽出方法及び検出信号が有る又は無しの判定方法が不明である。また、日本などで床や畳に寝具を敷く場合は適用できない。
【0010】
また、特許文献3では、記憶部の保存された人の呼吸データをもとに入床と離床とを判定しているので、即時に対応した判定ができない。また、判定基準である閾値が仰臥位(仰向け)での呼吸振幅最小値とあるが、側臥位(横向き)では呼吸振幅最小値が変化してしまい、判定が不安定となる。更に無呼吸症候群の病状などで呼吸活動が一時停止又は呼吸が浅くなった場合での呼吸信号の検出ができない時間等が所定時間以上に継続すると離床と判定してしまう。
【0011】
また、特許文献4では、寝具に設置されたピエゾシートで人の心拍、呼吸、体動の振動の出力信号X(t)の20情報の積算値の絶対値が所定値X0より小さい場合は0、それ以外は1を在不在判定結果としているが、特許文献4記載の発明は処理方法に関する発明であって具体的な実施例が無い。また20情報を取得するサンプリング間隔時間の記述が無く、仮に10秒間隔とすると呼吸や心拍に起因する振動に対しては判定が困難となり、結果が出るまでには200秒程度を要する。また、ピエゾシートからの出力信号には、人の心拍、呼吸、体動の振動の信号以外にノイズ信号も含まれているので、心拍、呼吸、体動による振動の出力信号X(t)を得るためには抽出フィルタを必要とする。
【0012】
また、特許文献5では、多孔性ポリプロピレンエレクトレットフィルム又はポリフッ化ビニリデンフィルムの振動センサーで生体の心臓の拍動、肺呼吸及び身体の動きによる振動を検出するという問題がある。また、振動センサーを設置した周辺からの外来振動も検出されて存在不在の判定が困難になる。心臓の拍動、肺呼吸及び身体の動きによる振動を検出するためには、抽出フィルタを必要とする。
【0013】
また、特許文献6では、人の身体の振動信号から心拍の0.5〜1.5Hzの周波数成分を抽出して心拍信号として、心拍信号が所定の時間以上で検出されるか否かで在床及び離床を判定しているが、0.5〜1.5Hzの周波数成分抽出では、心拍換算で30〜90回/分であり、90回以上の心拍がある場合には離床と判定されてしまう。同時に人の肺呼吸が30回/分(0.5Hz)以上となると、0.5〜1.5Hzの周波数成分抽出に含まれてしまう。また、0.5〜1.5Hzの周波数成分の抽出方法についての実施例が記述されていない。
【0014】
また、特許文献7では、動物生体がすでに生体振動センサー上に存在している状況下において、動物生体の心臓の拍動による振動、肺呼吸による振動、身体の動きによる振動を検出して何れか一つの該当する信号又は何れかの組み合わせに該当する信号が消滅することを監視して体調異変を通報する装置であって、動物生体の存在不在の検出事象についての記述は無い。不在は心臓の拍動による振動、肺呼吸による振動、身体の動きによる振動の全てが消滅した場合が不在とされ、存在は少なくとも心臓の拍動による振動と肺呼吸による振動がある場合が存在とされる。
【0015】
特許文献1〜5では、人の心拍や呼吸による振動或いは身体の振動を各々センサーで検出し出力された信号をもとに、人の存在の有無を判断しているが、各々振動センサーを設置した周辺から外来する振動(他人の歩行による床振動や隣室から伝わる床振動、近隣の車両通行振動など)も同時に検出する。このため、人に起因する振動との分離機能が無く存在不在等の判定が困難になる。
【0016】
そこで、本発明は、振動センサーで人の身体から発生する振動を検出して身体振動信号
を得るが、身体振動信号には振動センサーを設置した周辺を歩行する人の床振動なども含まれているので、対象とする人に起因する身体振動である心臓の拍動(心拍数換算:30〜240回/分、周波数帯域換算:0.5〜4Hz)や肺呼吸活動(呼吸数換算:60回/分以下、周波数帯域換算:1Hz以下)による振動だけを抽出する分離フィルタ機能を用いて処理を行なうようにしたものである。
【0017】
また、人であることの認識は「心臓の拍動による振動」をフィルタ処理にて分離抽出することで人の存在不在の要件を満たすが、人の健康状態によって頻呼吸や多呼吸などで呼吸数が上昇又は、除脈などで心拍数が低下して呼吸数と心拍数が重なる状態が起こることがあり得るので心臓の拍動による振動及び肺の呼吸活動による振動を含んだ「心肺活動による振動」も存在不在の要件としている。更に鼾をかいている状態では、肺呼吸の乱れや身体の振動も生じるので、鼾の状態も検出することで、存在不在の検出精度を上げている。
【0018】
更に人の体位の違いによる身体振動信号の強弱変化を解消する手段として身体振動信号を十分に増幅する機能を有し、フィルタ処理後に更に抽出信号を増幅することで人の存在不在を検出する人存在不在検出方法及び人存在不在検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために本発明の人存在不在検出方法及び人存在不在検出装置は、所定の場所にいる人が発する身体の振動から振動信号を検出し、該振動による振動信号をフィルタリング処理して、検出した振動信号が所定の存在継続時間以上を超えると、前記人が前記所定の場所に存在すること、及び前記振動信号が無い状態が所定の不在継続時間を超えると前記人が前記所定の場所に不在であると判定することを特徴としている。
【0020】
また、所定の場所にいる人が発する身体の振動から心臓の拍動に起因する拍動振動を抽出し、拍動振動が有りの状態が所定の存在継続時間以上を超えることで人が所定場所に存在していること、及び心拍振動が無い状態が所定の不在継続時間以上を超えることで人が所定場所に不在であると判定することを特徴としている。
【0021】
また、所定の場所にいる人が発する身体の振動から肺呼吸に起因する肺呼吸振動を抽出し、肺呼吸振動が有りの状態が所定の存在継続時間以上を超えることで人が所定場所に存在していること、及び肺呼吸振動が無い状態が所定の不存在継続時間以上を超えることで人が所定場所に不在であると判定することを特徴としている。
【0022】
また、所定の場所にいる人が発する身体の振動から心臓の拍動に起因する拍動振動と肺呼吸に起因する肺呼吸振動が共に有りの状態が所定の存在継続時間以上を超えることで、人が所定場所に存在していること、及び拍動振動と肺呼吸振動が共に無い状態が所定の不在継続時間以上を超えることで、人が所定場所に不在であると判定することを特徴としている。
【0023】
また、所定の場所にいる人が発する身体の振動から鼾に起因する鼾振動を抽出し鼾振動が有りの状態が所定の存在継続時間以上を超えることで人が所定場所に存在していること、及び鼾振動が無い状態が所定の不在継続時間以上を超えることで、人が所定場所に不在であると判定することを特徴としている。ここで、「鼾」とは、人から発せられる音声に起因する信号を総称するものであり、具体的には鼾,咳,寝言,歯ぎしり等から発せられる振動を指す。
【0024】
また、所定の場所にいる人が発する身体の振動から体動に起因する体動振動パルス群を抽出し、前記体動振動パルス群が有りの状態が所定の期間内に少なくとも2個以上あることで前記人が前記所定場所に存在していること、及び前記体動振動パルス群が1個以下の状態が所定の期間内にあることで、前記人が前記所定場所に不在であると判定することを特徴とする。
また、人の付近に設置して前記人が発する身体の振動を身体振動性電気信号に変換する振動センサー手段と、前記身体振動性電気信号から心臓の拍動に起因する拍動振動の拍動振動性電気信号を抽出する拍動フィルタ手段と、存在不在の比較判定の基準となる閾値電圧をもとに、前記拍動振動性電気信号の検出有りの状態を継続している時間が所定の存在継続時間以上を超えた時点で前記人が前記振動センサー手段の付近に存在していること、及び前記拍動性電気信号の検出無しの状態を継続している時間が所定の不在継続時間以上を超えた時点で人が振動センサー手段の付近に不在であると判定することを特徴としている。
【0025】
また、人の付近に設置して人が発する身体の振動を身体振動性電気信号に変換する振動センサー手段と、身体振動性電気信号から肺呼吸に起因する肺呼吸振動の肺呼吸振動性電気信号を検出する肺呼吸振動フィルタ手段と、存在不在の比較判定の基準となる閾値電圧をもとに肺呼吸振動性電気信号の検出有りの状態を継続している時間が所定の存在継続時間以上を超えた時点で人が振動センサー手段の付近に存在していること、及び肺呼吸振動性電気信号の検出無しの状態を継続している時間が所定の不在継続時間以上を超えた時点で人が振動センサー手段の付近に不在であると判定することを特徴としている。
【0026】
また、人の付近に設置して人が発する身体の振動を身体振動性電気信号に変換する振動センサー手段と、身体振動性電気信号から心臓の拍動に起因する拍動振動及び肺呼吸に起因する肺呼吸振動を含む拍動肺呼吸振動性電気信号を抽出する拍動肺呼吸フィルタ手段と、存在不在の比較判定の基準となる閾値電圧をもとに拍動肺呼吸振動性電気信号の検出有りの状態を継続している時間が所定の存在継続時間以上を超えた時点で人が振動センサー手段の付近に存在していること、及び拍動肺呼吸振動性電気信号の検出無しの状態を継続している時間が所定の不在継続時間以上を超えた時点で人が振動センサー手段の付近に不在であると判定することを特徴としている。
【0027】
また、人の付近に設置して人が発する身体の振動を身体振動性電気信号に変換する振動センサー手段と、身体振動性電気信号から鼾に起因する鼾振動の鼾振動性電気信号を抽出する鼾振動フィルタ手段と、存在不在の比較判定の基準となる閾値電圧をもとに鼾振動性電気信号の検出有りの状態を継続している時間が所定の存在継続時間以上を超えた時点で人が振動センサー手段の付近に存在していること、及び鼾振動性電気信号の検出無しの状態を継続している時間が所定の不在継続時間以上を超えた時点で人が振動センサー手段の付近に不在であると判定することを特徴としている。
【0028】
また、拍動フィルタ手段は、身体振動性電気信号の周波数成分にあって、1Hzに設定された遮断周波数(カットオフ周波数)以上の周波数帯域を通過させる高域通過フィルタ(HPF:High Pass Filter)及び、4Hzに設定された遮断周波数(カットオフ周波数)以下の周波数帯域を通過させる低域通過フィルタ(LPF:Low Pass Filter)を備えることを特徴としている。
【0029】
また、前記肺呼吸振動フィルタ手段は、前記身体振動性電気信号の周波数成分にあって、1Hzに設定された遮断周波数以下の周波数帯域を通過させる低域通過フィルタを備えることを特徴としている。
【0030】
また、前記拍動肺呼吸フィルタ手段は、前記身体振動性電気信号の周波数成分にあって、4Hzに設定された遮断周波数以下の周波数帯域を通過させる低域通過フィルタを備えることを特徴としている。
【0031】
また、前記鼾振動フィルタ手段は、前記身体振動性電気信号の周波数成分にあって、100Hzを超えて設定された遮断周波数以上の周波数帯域を通過させる高域通過フィルタ、及び400Hz以上から1000以下の範囲内で設定された遮断周波数以下の周波数帯域を通過させる低域通過フィルタを備えることを特徴としている。
【0032】
また、振動センサー手段は、多孔性ポリプロピレンエレクトトレットフィルム(EMFI:Electro Mechanical Film)とすることを特徴としている。
また、前記振動センサー手段は、ポリフッ化ビニリデンフィルム(PVDF)とすることを特徴としている。
【0033】
また、前記振動センサー手段は、ポリフッ化ビニリデンと三フッ化エチレン共重合体(P(VDF−TrFE))とすることを特徴としている.
また、前記振動センサー手段は、ポリフッ化ビニリデンと四フッ化エチレン共重合体
(P(VDF−TeFE))とすることを特徴としている.
また、前記振動センサー手段は、薄膜シート状であって、櫛形形状、渦巻き型形状、稲妻型形状の何れか一つの形状を有することを特徴としている。
【0034】
また、振動センサー手段は、薄膜シート状であって、5角以上で1000角以下の多角形、曲線形の何れか一方或いは両方を有する形状とすることを特徴としている。
また、前記存在及び前記不在のいずれか一方の状態で前記人の付近及び遠方のいずれか一方或いは両方に通報する通報手段を有することを特徴としている。
【0035】
また、所定の場所にいる人が発する身体の振動から、呼吸,心拍,鼾,体動の4つの信号を実時間でモニターし、モニターした各信号の有無により、無呼吸症候群を判定することを特徴とする。
また、所定の場所にいる人が発する身体の振動から、呼吸,心拍,鼾,体動の4つの信号を実時間でモニターする手段と、モニターした各信号の有無により、無呼吸症候群を判定する判定手段とを有することを特徴とする。
また、所定の場所にいる人が発する身体の振動から、呼吸,心拍,鼾,体動の4つの信号の基準値を予め求めて記憶させておき、これら4つの信号の基準値と測定した実際の4つの信号とを比較し、その人の終末期を判定することを特徴とする。
また、所定の場所にいる人が発する身体の振動から、呼吸,心拍,鼾,体動の4つの信号の基準値を予め求めて記憶させておく記憶手段と、記憶させた4つの信号の基準値と測定した実際の4つの信号とを比較する比較手段と、該比較手段の比較結果に基づきその人の終末期を判定する判定手段とを有することを特徴とする。
また、所定の場所にいる人が発する身体の振動から、呼吸,心拍,鼾,体動の4つの信号を検出し、これら4つの信号の存在不在の第1の閾値と、微弱信号を検知する第2の閾値とを設けておき、検出した信号の内の体動信号が発生した時、前記第1及び第2の閾値を元に人が起きあがったと判定することを特徴とする。
また、所定の場所にいる人が発する身体の振動から、呼吸,心拍,鼾,体動の4つの信号を検出する検出手段と、これら4つの信号の存在不在を判定するための第1の閾値と、微弱信号を検知するための第2の閾値とを記憶する記憶手段と、検出した信号の内の体動信号が発生した時、前記第1及び第2の閾値を元に人が起きあがったと判定する判定手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明によって、生体である心臓の拍動及び肺呼吸による振動等に起因する身体振動の検出の有無で、生体である人であることを認識して存在及び不在を判断することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の人存在不在検出方法及び人存在不在検出装置を図面に基づいて説明する。
図1は実施例における装置の設置例を示す図である。人の存在不在の検出を必要とするところのベッド11にあって、ベッドパッド13又はマットレス12の上部や下部に振動センサー手段10を設置する。床に敷いた寝具にあっては、敷き布団14の上部や下部に振動センサー手段10を設置する。ベッド11又は敷き布団14上に存在している人15の発する身体の振動を振動センサー手段10で検出し、身体振動の有無で人の存在及び不在を判定する。
【0039】
身体振動から心臓の拍動に起因する拍動振動を抽出して拍動振動が所定の存在継続時間以上を超えることで人15がベッド11又は敷き布団14上に存在していること、及び拍動振動が無い状態が所定の不在継続時間以上を超えることで、人15が不在であると判断する。身体振動から肺呼吸に起因する肺呼吸振動を抽出して肺呼吸振動が所定の存在継続時間以上を超えることで、人15がベッド11又は敷き布団14上に存在していること、及び肺呼吸拍動振動が無い状態が所定の不在継続時間以上を超えることで、人15が不在であると判断するようになっている。
【0040】
身体振動から心臓の拍動に起因する拍動振動と肺呼吸に起因する肺呼吸振動が共に有りの状態が所定の存在継続時間以上を超えることで人15がベッド11又は敷き布団14上に存在していること、及び拍動振動と肺呼吸振動が共に無い状態が所定の不在継続時間以上を超えることで人15が不在であること、身体振動から鼾に起因する鼾振動を抽出して鼾振動が所定の存在継続時間以上を超えることで、人15がベッド11又は敷き布団14上に存在していること、及び鼾振動が無い状態が所定の不在継続時間以上を超えることで、人15が不在であると判定する人存在不在の検出方法である。
【0041】
図2は実施例における装置構成の概要を示すブロック図である。このブロックは、振動センサー手段100である振動センサー101で人の身体振動を身体振動性電気信号102として検出する。身体振動性電気信号102は差動信号増幅アンプ110で増幅される。拍動フィルタ手段120では、身体振動性電気信号102をもとに、人の心臓の拍動に起因する拍動振動の拍動振動性電気信号123を抽出する。
【0042】
この場合において、前記拍動フィルタ手段120は、前記身体振動性電気信号の周波数成分にあって、1Hzに設定された遮断周波数以上の周波数帯域を通過させる高域通過フィルタ、及び4Hzに設定された遮断周波数以下の周波数帯域を通過させる低域通過フィルタを備えている(詳細後述)。
【0043】
また、肺呼吸振動フィルタ手段121では、前記身体振動性電気信号の周波数成分にあって、1Hzに設定された遮断周波数以下の周波数帯域を通過させる低域通過フィルタを備えている。この場合において、肺呼吸振動フィルタ手段121は人の肺呼吸に起因する肺呼吸振動の肺呼吸振動性電気信号124を抽出する(詳細後述)。
【0044】
また、鼾振動フィルタ手段122では、人の鼾に起因する鼾振動の鼾振動性電気信号125を抽出する。更に体動振動フィルタ手段150は、人の体動に起因する体動振動性電気信号151を抽出する。以上の説明で分かるように、本発明では人の振動性電気信号を振動の種類に応じたフィルタで分離し、分離したそれぞれの信号を所定の閾値と比較して、その比較結果に基づいて人の存在不存在を判定するようにしている点に特徴がある。
【0045】
図2において、260は体動振動のリファレンス値を出力するリファレンス用センサー手段、261はCPU142で演算された各種のデータを記憶する記憶装置である。該記憶装置261としては、例えばハードディスク装置が用いられる。
この種のフィルタ手段において、拍動フィルタ手段120,肺呼吸振動フィルタ手段121,鼾振動フィルタ手段122及び体動振動フィルタ手段150は、コンデンサや抵抗及びオペアンプ等で構成されたローパスフィルタ(LPF)やハイパスフィルタ(HPF)のアナログフィルタ、又は身体振動性電気信号102であるアナログ信号をA/Dコンバータでデジタル信号に変換し数値化されたデータをもとにCPU(中央処理装置)の演算処理にてフィルタリングを行なうデジタルフィルタの何れか一方又は双方で構成することができる。
【0046】
なお、デジタルフィルタにあっては、フィルタ処理部専用のA/Dコンバータ及びCPUで構成することも可能であるが、存在不在判定手段140のA/Dコンバータ141及びCPU142で処理することができる。存在不在判定手段(離床入床判定手段ともいう)140では、抽出された拍動振動性電気信号123がアナログ信号の場合には、A/Dコンバータ141を用いて数値化されたデータと、CPU142で存在不在の比較判定の基準となる閾値電圧を比較する。
【0047】
そして、この比較結果をもとに拍動振動性電気信号123の検出有りの状態を継続している時間が所定の存在継続時間以上を超えた時点で人が、拍動や肺呼吸や鼾や体動等の振動センサー手段の付近に存在していることを判定する。また、拍動振動性電気信号123の検出有りの状態を継続している時間を所定の存在継続時間と比較する。そして、拍動振動性電気信号が検出無しの状態を継続している時間が所定の不存在継続時間以上を超えた時点で、存在不在判定手段140中のCPU142は、人が振動センサー手段100の付近に不在であることを判断する。また、存在不在判定手段140は、肺呼吸振動性電気信号124の検出無しの状態を継続している時間が所定の不在継続時間以上を超えた時点で、人が振動センサー手段100の付近に不在であることを判断する。
【0048】
抽出された鼾振動性電気信号125がアナログ信号の場合には、A/Dコンバータ141で数値化されたデータをCPU142で存在不在の比較判定の基準となる閾値電圧と比較する。そして、CPU142は鼾振動性電気信号125の検出有りの状態を継続している時間が所定の存在継続時間以上を超えた時点で人が振動センサー手段100の付近に存在していると判定する。
【0049】
また、鼾振動性電気信号125の検出無しの状態を継続している時間が所定の不在継続時間以上を超えた時点で、人が振動センサー手段の付近に不在であることを判断する。更に体動振動性電気信号151の信号の検出が所定の期間内に少なくとも2回以上あれば、人が振動センサー手段100の付近に存在していると判定する。逆に、所定の時間内に体動振動性電気信号151の検出が1回以下であれば、その人は不在であると判断する。
【0050】
体動振動性電気信号だけ、人の存在不在の判断が異なるのは以下のような理由による。体動振動は人がベッドから起き上がったり、ベッドに寝たりする行動を検出するものであり、その行動は拍動や呼吸のように頻繁に起きるものではないからである。所定の時間内に体動振動が少なくとも2回以上あれば、その人はベッドから起きたり、寝たりしていると判断できる。逆に、所定の時間内に体動振動が1回以下の場合には、起き上がった人がそのまま外出したと判断できる。
【0051】
なお、体動振動は拍動等の信号を検出する場合に比較して、検出信号の振幅が非常に大きい。例えば、拍動振動信号が数10mVであるのに対して、10Vの大きさになる。つまり、他の身体振動に比較して1000倍くらい大きい。
【0052】
前述したように、本発明は1個の振動センサー101を用いて4種類の振動を検出しているため、一つのアンプの出力にこれら4個の振動の信号が混ざっている。
そこで、体動振動検出手段150は、リファレンス用センサー手段260の出力を用いて体動振動性電気信号を出力する。そして、身体振動性身体振動性電気信号102から体動振動のみを検出する。検出された体動振動信号は、差動信号増幅アンプ110の負入力に入力される。一方、差動信号増幅アンプ110の正入力には身体振動性電気信号102がそのまま入力される。従って、差動信号増幅アンプ110からは、体動振動信号が除去された身体振動性電気信号102’が出力される。
【0053】
身体振動性電気信号102’は、拍動フィルタ手段120,肺呼吸振動フィルタ手段121及び鼾振動フィルタ手段122に入力され、それぞれの振動信号が選択される。この結果、拍動フィルタ手段120は拍動振動性電気信号123のみを出力し、肺呼吸振動フィルタ手段121は肺呼吸振動性電気信号124のみを出力し、鼾振動フィルタ手段122は鼾振動性電気信号125のみを出力する。
【0054】
一方、体動振動検出手段150の出力は、体動振動フィルタ手段152に入り、該体動振動フィルタ手段152は体動振動性電気信号151のみを出力する。
図3は体動振動波形を示す図である。縦軸は電圧(V)、横軸は時間である。横軸は1秒間隔で破線で示されている。図に示すように、体動振動の波形の振幅は±4〜±4.5Vと大きく、パルス状であることが分かる。体動振動は、他の振動である拍動振動,肺呼吸振動,鼾振動(何れも出力が10mVと小さい)と比較して大きい。
【0055】
体動振動フィルタ手段152は、アナログ又はデジタルフィルタで構成され、入力された体動振動信号を最適な振幅の信号に変換して出力し、存在不在判定手段140に入力する。前述したように、体動振動信号はパルス状であるため、その出力を微分すると、パルス信号を得ることができる。このパルス信号は、体動振動性電気信号151として、存在不在判定手段140に入る。
【0056】
存在不在判定手段140では、A/Dコンバータ141が入力信号をディジタル信号に変換し、CPU142に与える。CPU142は、入力パルスの所定時間内の個数をカウントする。そして、カウントの結果、パルス数が2個以上であれば人は存在し、パルス数が1個以下であれば人は存在しないと判定する。次に、拍動振動信号,肺呼吸振動信号及び鼾振動信号の検出方法について説明する。差動振動増幅アンプ110は、差分信号の出力がVオーダとなるまで増幅する。このようにして抽出された各振動性電気信号は、後述するように、フィルタ手段によりそれぞれの振動信号に分離することができる。
【0057】
さて、通報手段160では、存在不在判定手段140からの存在不在判定信号143をもとにLEDの点灯やブザーを鳴らして通報を行なう。又はナースコール装置への通報や通信回線を通して外部に通報する。
【0058】
記憶装置261は、CPU142で作成された各種のデータを記憶しておく。例えば、時系列で拍動フィルタ手段120,肺呼吸振動フィルタ手段121,鼾振動フィルタ手段122及び体動振動フィルタ手段152の出力を記憶する。
【0059】
図4は実施例における装置の拍動フィルタ手段120の周波数特性を示す図である。図において、縦軸は入力信号電圧(V)、横軸は周波数(Hz)である。また図において、
図2に示すものと同一のものは、同一の符号を付して示す。
図2の身体振動性電気信号102から人の心臓の拍動に起因する振動の拍動振動性電気信号123を抽出する拍動フィルタ手段120であるアナログフィルタ及びデジタルフィルタの拍動フィルタ周波数特性160は、1Hzに設定されたHPF遮断周波数(カットオフ周波数)163以上の周波数帯域を通過させる高域通過フィルタ(HPF:High Pass Filter)162と、4Hzに設定されたLPF遮断周波数(カットオフ周波数)164以下の周波数帯域を通過させる低域通過フィルタ(LPF:Low Pass Filter)161の組み合わせで1〜4Hzの周波数帯域のみを通過させる特性を持つフィルタである。
【0060】
図5は実施例における装置の肺呼吸振動フィルタ手段121の周波数特性を示す図である。図において、縦軸は電圧(V)、横軸は周波数(Hz)である。
図2の身体振動性電気信号102から人の肺呼吸に起因する肺呼吸振動の肺呼吸振動性電気信号124を抽出する肺呼吸振動フィルタ手段121であるアナログフィルタ及びデジタルフィルタの肺呼吸振動フィルタ周波数特性170は、1Hzで設定されたLPF遮断周波数172以下の周波数帯域を通過させる低域通過フィルタ171で、1Hz以下の周波数帯域171で、1Hz以下の周波数帯域を通過させる特性を持つフィルタである。
【0061】
図6は実施例における装置の鼾振動フィルタ手段122の周波数特性を示す図である。図において、縦軸は入力電圧(V)、横軸は周波数(Hz)である。
図2に示すものと同一のものは、同一の符号を付して示す。
図2の身体振動性電気信号102からの人の鼾に起因する鼾振動の鼾振動性電気信号125を抽出する鼾振動フィルタ手段122であるアナログフィルタ及びデジタルフィルタの鼾振動フィルタ周波数特性180は、100Hzに設定されたHPF遮断周波数182以上の周波数帯域を通過させる高域通過フィルタ181と、400Hzから1000Hz以下の範囲内で設定されたLPF遮断周波数184以下の周波数帯域を通過させる低域通過フィルタ183の組み合わせで100〜1000Hz以下の周波数帯域のみを通過させる特性を持つフィルタである。
【0062】
図7は実施例における装置の肺呼吸振動フィルタ手段121の周波数特性を示す図である。
図2に示すものと同一のものは、同一の符号を付して示す。
図2に示す身体振動性電気信号102から人の心臓の拍動に起因する振動の拍動振動性電気信号123と、肺呼吸に起因する肺呼吸振動の肺呼吸振動性電気信号124を同時に抽出する肺呼吸振動フィルタ手段であるアナログフィルタ及びデジタルフィルタの拍動肺呼吸振動フィルタ周波数特性190は、4Hzで設定されたLPF遮断周波数192以下の周波数帯域を通過させる低域通過フィルタ191で、4Hz以下の周波数帯域を通過させる特性を持つフィルタである。
【0063】
図8と
図9は実施例における装置のフィルタ手段の出力波形を示す図である。これら図の波形(A)において、縦軸は入力電圧(V)、横軸は時間(秒)である。波形(B)において、縦軸は入力電圧(V)、横軸は時間(秒)である。波形(C)において、縦軸は入力電圧(V)、横軸は時間(秒)である。波形(D)において、縦軸は入力電圧(V)、横軸は時間(秒)である。波形(E)において縦軸は入力電圧(V)、横軸は時間(秒)である。
【0064】
波形(A)で示す身体の振動に起因する身体振動性電気信号200をもとに、波形(B)は、拍動フィルタ手段で抽出された拍動振動性電気信号202の波形であり、検出の有無は閾値電圧(V)201を基準に比較判定を行なう。比較判定は、拍動振動性電気信号202が閾値電圧201の上下に存在しているか否かを判定することで行なう。
【0065】
波形(C)は、肺呼吸振動フィルタ手段121で抽出された肺呼吸振動性電気信号204の波形であり、検出の有無は閾値電圧(V)203を基準に比較判定を行なう。波形(D)は、鼾振動フィルタ手段で抽出された鼾振動性電気信号206の波形であり、検出の有無は閾値電圧(V)205を基準に比較判定を行なう。これら閾値電圧201,203,205は、最適な検出信号が得られるように、予め決められた電圧値である。
【0066】
波形(E)は、拍動フィルタ手段にあって、肺呼吸の活動が60回/分を超えて上がった場合に拍動フィルタ手段がフィルタ処理する1〜4Hzの周波数帯域まで入りこんだ状況を示しており、肺呼吸振動が60回/分を上回る区間と、下回る区間で拍動振動が抽出されることを示す。逆に、拍動に起因する振動が60回/分を下回る状況にあって、肺呼吸振動フィルタ手段121(
図2参照)がフィルタ処理する1Hz以下の周波数帯域まで入りこんだ場合でも肺呼吸振動フィルタ手段121で捕捉することができる。
【0067】
このような肺呼吸の活動が上昇又は拍動が低下する状況であるならば、肺呼吸と振動の両方を同時に抽出するフィルタ手段として、
図7の拍動肺呼吸振動フィルタ手段で示すような4Hzで設定されたLPF遮断周波数以下の周波数帯域を通過させる低域通過フィルタを用いることもできる。
【0068】
人の肺呼吸の活動は、意識的に停止させることが可能であり、肺呼吸による振動の有無と拍動による振動の有無の両方で存在不在の判定を行なうようにする。また人が鼾をかく状況では、肺呼吸に起因する振動や拍動に起因する振動の抽出が困難となりやすいので、鼾振動フィルタ手段を用いて鼾の有無も存在不在の判定に必要な条件となる。
【0069】
図10は実施例における装置の拍動振動性電気信号での存在不在判定手段(離床入床判定手段)140の概要を示す図である。
図2に示す存在不在判定手段140における離床入床の判定において、拍動振動性電気信号211をもとに閾値電圧(V)210を基準として拍動振動性電気信号211の有無を検出し、拍動振動性電気信号211が無い状態から有る状態となり、存在判定継続時間212を超えた時点で存在213と判定する。
【0070】
逆において、拍動振動性電気信号215をもとに閾値電圧(V)214を基準として、拍動振動性電気信号215の有無を検出し、肺呼吸振動性電気信号215が有る状態から無い状態となり、不在判定継続時間216を超えた時点で不在217と判定する。ここで、存在判定継続時間212、不在判定継続時間216は、
図2に示すCPU142がA/Dコンバータ141からのデジタル信号を入力して、検出信号を入力データとしてカウントすることで、求めることができる。例えば、存在判定継続時間212が所定の数以上になった時点で存在を判定し、不在設定継続時間226が所定の時間からカウント0であれば、不存在と判定することで実行させることができる。
【0071】
図11は実施例における装置の肺呼吸振動性電気信号での存在不在判定する離床入床判定手段の概要を示す図である。図に示す存在不在判定手段(離床入床判定手段)140における離床入床の判定を行なう場合において、肺呼吸振動性電気信号221をもとに閾値電圧(V)220を基準として肺呼吸振動性電気信号221の有無を検出する。そして、肺呼吸振動性電気信号221が無い状態から有る状態となり、存在判定継続時間222を超えた時点で存在223と判定する。
【0072】
逆において、肺呼吸振動性電気信号225をもとに閾値電圧(V)224を基準として、肺呼吸振動性電気信号225の有無を検出する。そして、肺呼吸振動性電気信号225が有る状態から無い状態となり、不在判定継続時間226を超えた時点で不在227と判定する。これらの判定は、存在不在判定手段140(の中のCPU142)が行なう。
【0073】
図12は実施例における装置の鼾振動性電気信号での存在不在判定手段140の概要を示す図である。
図2の存在不在判定手段140による判定を行なう場合、鼾振動性電気信号231をもとに閾値電圧(V)230を基準として鼾振動性電気信号231の有無を検出し、鼾振動性電気信号231の不在状態から存在状態となり、CPU142は存在判定継続時間232を超えた時点で存在233と判定する。
【0074】
逆において、鼾振動性電気信号235をもとに閾値電圧(V)234を基準として鼾振動性電気信号235の有無を検出し、鼾振動性電気信号235が存在する状態から不在状態となり、不在判定継続時間236を超えた時点でCPU142は不在237と判定する。
【0075】
図13は実施例における装置の鼾の有無での存在不在判定手段140(
図2参照)の概要を示す図である。CPU142は、鼾振動性電気信号241を閾値電圧(V)240と比較する。そして、鼾振動性電気信号241の有無を検出し、鼾停止期間242及び鼾活動区間243を把握する。
【0076】
人の鼾の活動により肺呼吸の乱れや身体振動が増大する状況において、拍動振動性電気信号123及び肺呼吸振動性電気信号124の検出ができない状態が生じた場合に、存在不在判定手段140は、鼾活動区間243では、拍動振動性電気信号及び肺呼吸振動性電気信号の検出にかえて、鼾活動をもって人が存在すると判定する。鼾停止区間242にあっては、拍動振動性電気信号及び肺呼吸振動性電気信号をもとに存在不在の判定を行なう。
【0077】
図14は実施例における装置の振動センサー手段の形状の概要を示す図である。振動センサーが平面シート形状250の場合には、曲面体である身体に馴染み難く接する面積が少なくなり身体振動の検出感度が低下する。平面多角型形状251の形状にあっては、曲面体である身体の位置に応じて馴染み接する面積が広がり身体振動の検出感度が向上する。例えば平面多角形状は、くし型形状252、渦巻き型形状253、稲妻型形状254とする。この場合における振動センサー手段は、薄膜シート状であって、5角以上で1000角以下の多角形であれば身体振動の検出感度を向上させることができる。
【0078】
このような形状の振動センサー手段を用いることにより、多孔性ポリプロピレンエレクトレットフィルム(:Electro Mechanical Film(EMFI)、又はPVDF(ポリフッ化ビニリデンフィルム)又はポリフッ化ビニリデンと三フッ化エチレン共重合体(P(VDF−TrFE))、又はポリフッ化ビニリデンと四フッ化エチレン共重合体)を用いることで、人から発生する拍動,肺の呼吸及び鼾振動等の信号を効率よく検出することが可能となる。なお、本発明の人存在不在検出方法及び人存在不在検出装置は、この実施例に限定されるものではない。
1.無呼吸症候群の判定
本装置は無呼吸症候群の判定にも使用することができる。睡眠時、呼吸,心拍,鼾,体動の4つの信号を実時間でモニターする。このデータは、時系列で記憶装置に保存することができる。健康状態では、睡眠時、呼吸,心拍,鼾,体動から異常な状態は検出されない。
【0079】
しかしながら、無呼吸症候群の症状が現れる場合は、心拍信号は現れるが、鼾信号は消失する。無呼吸症候群には、二種類の症状がある。一つは、閉塞型と言われる症状であり、鼾信号以外の呼吸,心拍,体動振動は観察される。これは、実際は、睡眠時、肥満等の原因により、喉がふさがれた状態となり、本能的に呼吸しようとする自発的な動きができるため、呼吸に伴う振動は観察されるが、実際は喉が塞がっているために、空気を吸う行為はできていない状態である。更に、被験者は空気を吸えない苦しい状況にあり、体がもがき、大きく動く状態になる。即ち、閉塞型では、実呼吸はしていないが、呼吸信号、体動信号は観察されるのである。
一方、中枢型は、脳梗塞等のような原因に起因して、脳自体から、呼吸命令が出されないために、呼吸信号及び体動信号は原理的に観察されない。中枢型は、生命の危険に曝される重篤な病気であるが、従来、簡易的に、且つ無拘束状態で、中枢型、閉塞型とを見分ける方法及び装置は存在しなかった。
本装置では、呼吸,心拍,鼾,体動の4つの信号を実時間でモニターできるので、高精度に中枢型、閉塞型を見分けることができた。もちろん、原理的には、鼾,呼吸,心拍信号だけでも、最低限、見分けることは可能であるが、体動信号が加わることで、閉塞型における呼吸と体動信号との関連性を分析することにより、閉塞型のより詳しい判断が可能になる。
2.終末期(死期)の判定
更に本装置は人の終末期(死期)の判定にも使用することができる。特に、人の終末期に、医師がこの状態過程、特に人の死期を見つけることが医学的には重要な課題となっている。
【0080】
本装置を用いて、呼吸,心拍,鼾,体動の4つの信号を実時間でモニターする。このデータは、時系列で記憶装置に保存することができる。終末期ではない状態において、被験者の呼吸,心拍,鼾,体動の終末期の判定を検出する(基準データ取得)。
【0081】
その後、単位時間毎に、これら4つの信号の変化を実時間で検出する。そして、人が終末期に近くなると、これら4つの信号に変化が現れる。呼吸信号変化では、死期直前になると下顎呼吸症状が現れることが多い。この呼吸変化を知ることにより、死期が目前となっていることを知ることができる。
【0082】
本装置を用いた試験では、人の終末期において、下顎呼吸の検出以外でも、体動頻度が基準値に比べて大幅に減少し、睡眠時の鼾も減少する。終わりには、呼吸が停止し、暫く後に心拍は消失する。この呼吸停止から心拍停止の一連の流れにおける状態過程を「看取りセンサー」として用いることができた。
【0083】
この変化は、傷病に応じて異なる。例えば、肺がんの場合は、呼吸困難に陥ることがあるため、呼吸数の増加、体動の増加という症状が現れる。これらの生体信号を単位時間当たりの呼吸,体動,心拍,鼾(咳を含む)数の変化データから、死期を見つけることができる。あるいは、死期の前に危篤状態に陥ることがある。この場合は、心拍数などの単位時間当たりの数の増減だけではなく、心拍信号の強度の変化からも判定することができる。
【0084】
このように症状に応じて、終末期の生体信号は異なり、単位時間当たりの信号数の変化、又は信号強度の変化から判定することができる。
信号強度の変化は、信号判定の閾値を複数個設定することにより、定量化することができる。
【0085】
これらの症状は、従来、医師等関係者は経験的に周知しているものであるが、本装置では、これらの経験を定量化、定性化することにより、科学的に判定することができた。
更に、これらの基準データを含む時系列のデータを遠隔地の医師等関係者に実時間で送信し、状況変化を連絡通報することができるため、被験者の親族等関係者に死期を連絡通報できるものである。
【0086】
なお、本装置は終末期の判定以外の被験者の状態変化をみるために応用できることは、言うまでもない。
3.起き上がりセンサー
病院や介護施設では、被験者(患者)のベッドからの転倒が大きな問題となっている。これに対応するためには、被験者がベッドから転倒する前に、看護師等が被験者の状態を把握する必要がある。具体的には、仰向けになっている状態から、転倒に至る過程には、先ず起き上がる行為は途中過程として必要な行為であり、この「起き上がり」を判定したいという医療・介護関係者の要望は強いものがある。
【0087】
図15は起き上がりセンサーの実施例を示す図である。この場合は2つ以上の閾値を設けることで、被験者の身体状態を細かく判断する判定データを作ることができる。
存在不在判定の場合は
図2に示す存在不在判定手段140における離床入床の判定において、
図10に示す拍動振動性電気信号211を元に閾値電圧(V)210を基準として拍動振動性電気信号211の有無を検出し、拍動振動性電気信号211が無い状態から有る状態となり、存在判定継続時間212を超えた時点で存在213とするとしていた。
【0088】
起き上がりを開始する際、
図15の波形(G)に最初の大きな体動が生じる。これを体動信号として検出する。続いて起き上がった状態では、依然としてベッド等の上に被験者が存在しているので、微弱な心拍及び呼吸信号を検出することができる。僅かな時間が経過後、この微弱な信号が存在しなくなった時に、被験者は離床したと判断する。
【0089】
また、
図15の波形(H)は体動性電気信号400と、拍動性電気信号410の時間的な重なりの関係を示す。これを人存在不在検出装置で検出するためには、
図15の波形(J)において、存在不在の閾値(第1閾値電圧411)の他に、微弱信号を検知する第2の閾値(第2閾値電圧412)を設けることができる。第2の閾値(第2閾値電圧412)を、第1の閾値(第1閾値電圧411)の1/2以下に設定することにより、第2の閾値(第2閾値電圧412)以下の存在情報は被験者の心肺活動が弱くなったか、被験者が振動センサーから遠のいていることを意味する。起き上がりの判定は、第1の閾値と第2の閾値により判定された存在不在判定から決定される。
【0090】
第1の閾値は不在を示し、第2の閾値は存在を示す場合には、起き上がりと判定する。第1の閾値は不在を示し、第2の閾値も不在を示す場合は離床したと判定する。これを用いることで、離床を始める時の人の動きを認識でき、ベッド等からの起き上がりを判定することができ、この状態を医師や看護師など関係者に連絡するか、これらのデータが遠隔場所に送られて、医師等の関係者が遠隔的に知ることが可能となる。
【0091】
第2の閾値(第2閾値電圧412)の設定値は、センサーが配置された環境に応じて変更することができるが、1/2以下であることが好ましい。更に、起き上がり状態の精度を向上させるためには、第3の閾値を設定してもよい。少なくとも2つの閾値を設定することにより、対応することができる。